保釈保証金の没取

Pocket

目次
1 総論
2 保釈保証金の没取金額の推移
3 被告人の保釈に関する統計
4 出国確認の留保,カルロス・ゴーンの密出国及び国外逃亡被疑者等の追跡
5 未決勾留による拘禁関係に信義則上の安全配慮義務はないこと
6 保釈中の逃亡事件に関する国会答弁
7 保釈保証金に関する弁護士会照会
8 保釈者等の視察に関する犯罪捜査規範の条文

1 総論
(1) 被告人が逃亡したり,罪証隠滅を図ったり,保釈条件に違反したりした場合,裁判所は保釈を取り消すことができます(刑訴法96条1項)。
(2)ア 裁判所が保釈を取り消す場合,保釈保証金の全部又は一部を没取できます(刑訴法96条2項)。
イ 刑訴法96条2項に基づく保釈保証金没取決定は,保釈保証金若しくはこれに代わる有価証券を納付し又は保証書を差し出した者に対し,その者の国に対する保釈保証金等の還付請求権を消滅させ,また,その者に対して保証書に記載された金額を国庫に納付することを命ずることを内容とする裁判です(最高裁昭和52年4月4日決定)。

2 保釈保証金の没取金額の推移
(1) 保釈保証金の没取金額の推移は以下のとおりです。
2019年:18億5860万円
平成30年:1億6760万円
平成29年:1億9120万円
平成28年:1億1370万円
平成27年:1億2055万円
平成26年:8120万円
平成25年:7580万円
(2) 以下の文書を掲載しています。
・ 各庁ごとの保釈保証金の没取金(2019年度分)
・ 各庁ごとの保釈保証金の没取金(平成30年度分)
・ 令和元年6月14日付の開示文書
→ 平成25年度から平成29年度までの金額が載っています。
(3) 日本保釈支援協会HP「保釈に関する数値データ」が載っています。

3 被告人の保釈に関する統計
(1) 裁判所HPの「刑事事件Q&Aの更新について」に保釈に関する統計が載っています。
(2) 最高裁判所の開示文書を以下のとおり掲載しています。
・ 通常第一審における終局人員のうち保釈された人員の保釈の時期(昭和59年から平成28年まで)
・ 勾留された被告人の保釈の取消しに関する統計(2019年)
・ 勾留された被告人の保釈の取消しに関する統計(平成30年)
・ 被告人の保釈に関する人員数-全裁判所及び裁判所種別(平成14年~平成30年)
・ 被告人の保釈に関する人員数-全裁判所及び裁判所種別(令和元年)


4 出国確認の留保,カルロス・ゴーンの密出国及び国外逃亡被疑者等の追跡
(1) 出国確認の留保
ア 外国人が国外に出国する場合,入国審査官から出国の確認を受けなければならず,出国の確認を受けなければ出国できません(入管法25条)。
イ 長期3年以上の罪で訴追されていたり,勾留状等が発せられたりしている場合,24時間以内で出国確認を留保されます(入管法25条の2)。
ウ 外国人被告人の出国確認留保の通知に係る事務の取扱いについて(平成12年8月28日付の最高裁判所刑事局長,家庭局長通達)を掲載しています。
(2) カルロス・ゴーンの密出国
ア 41期の島田一 東京地裁14刑部総括は,平成31年3月5日,保釈金10億円でカルロス・ゴーンの保釈を許可し,同年4月25日,保釈金5億円で被告人カルロス・ゴーンの保釈を再び許可しました(外部HPの「保釈をめぐる事件経過一覧」参照)。
イ カルロス・ゴーンは,保釈条件に違反して国籍国であるレバノンに出国していたことが令和元年12月31日に発覚しました。
   そのため,同日付で15億円の保釈保証金が没取されました。
ウ カルロス・ゴーンの国外出国に対する高野隆弁護士のコメントが,同人のブログの「彼が見たもの」(2020年1月4日付)に載っています。
エ igaki.workブログ「カルロス・ゴーン氏が逃げた理由、日本の刑事司法の10個の闇。」(2020年1月5日付)が載っています。
オ 佐々木聖子出入国在留管理庁長官は,令和2年1月30日の参議院予算委員会において以下の答弁をしています。
   入管法上、一定の罪につき訴追されていること又は逮捕状、勾留状等が発せられているなどの一定の事由があるとして関係機関から当庁に対して通知があった外国人が出国しようとした場合には、入国審査官は二十四時間に限り当該外国人の出国の確認を留保する、つまり出国をさせないことができることとされており、そのことが出国の審査ブースで分かる仕組みになっています。
   仮にカルロス・ゴーン被告人が出国確認手続を経ていれば、出国を止める体制ができておりました。
(3) 国外逃亡被疑者等の追跡
   令和元年警察白書の「第2部 本編」→「第4章 組織犯罪対策」→「第3節 来日外国人犯罪対策」→「第3項 国際組織犯罪に対処するための取組」には,「国外逃亡被疑者等の追跡」として以下の記載があります。
   国外逃亡被疑者等の数の推移は、図表4-18のとおりである。
   警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、出入国在留管理庁に手配するなどして、出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認等を行っており、所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約(注2)等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして、確実な検挙に努めている。
   このような取組の結果、平成30年中は、出国直前の外国人被疑者17人のほか、国外逃亡被疑者113人(うち外国人64人)を検挙した。
   このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。
(6) 逃亡犯罪人引渡法に関する書式例(平成12年10月31日付の法務大臣訓令)を掲載しています。


5 未決勾留による拘禁関係に信義則上の安全配慮義務はないこと
   最高裁平成28年4月21日判決(裁判所HPに掲載)は,以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
   未決勾留は,刑訴法の規定に基づき,逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として,被疑者又は被告人の居住を刑事施設内に限定するものであって,このような未決勾留による拘禁関係は,勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され,法令等の規定に従って規律されるものである。
   そうすると,未決勾留による拘禁関係は,当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とはいえない。
   したがって,国は,拘置所に収容された被勾留者に対して,その不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである(なお,事実関係次第では,国が当該被勾留者に対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合があり得ることは別論である。)。

6 保釈中の逃亡事件に関する国会答弁
43期の安東章最高裁判所刑事局長は,令和2年2月25日の衆議院予算委員会第三分科会において以下の答弁をしています。
 まず、委員御指摘ありましたカルロス・ゴーン被告人の保釈中の逃亡事件についてでございますけれども、個別裁判の当否についての言及は差し控えますが、保釈中の被告人が不正に出国して刑事裁判が開けなくなるというのは本来あってはならない事態と事務当局としても考えておりまして、今回の件については重く受けとめておるところでございます。
 それから、裁判所での取組でございます。
 先ほど委員からも御指摘ありました、昨年夏ごろから保釈中の被告人の逃走事案が相次いで発生しておりまして、一部の地方裁判所におきましては、保釈が取り消された実例を素材として、保釈の運用に関する議論がされていたところです。
 これを受けまして、昨年秋に開催された司法研修所の刑事事件を担当する裁判官の研究会におきまして、事務当局の方からその地裁の議論状況を紹介したところでございます。その後、その内容は各庁に還元され、各庁で議論が行われたものと承知しております。
 また、こうした各庁での議論を踏まえまして、先月から高裁単位で刑事事件担当の裁判官の協議会を開いておりまして、そちらでも、保釈保証金を含む保釈条件のあり方、それからその設定に必要な情報を当事者から把握するための審査手続のあり方などについて、更に議論がなされたところでございます。
 このように裁判官の間での議論を積み重ねていくことによりまして、個々の事案に応じた適切な保釈の運用が行われていく、そのように考えているところでございます。


7 保釈保証金に関する弁護士会照会
(1)  弁護人が保釈を請求し,かつ,保釈保証金を納付した場合において,たとえ実質上の出捐者が被告人であつたとしても,国に対して保釈保証金返還請求権を有する者は,弁護人であって被告人ではありません(最高裁昭和59年6月26日判決)。
(2) 仮差押え又は差押えのために保釈保証金の有無を調べたい場合,被告人の刑事事件が係属している地方裁判所に対し,照会事項として以下のような記載をして弁護士会照会をすればいいです(弁護士会照会ハンドブック196頁及び197頁)。
・ ○○地方裁判所令和2年(わ)第○○○○号・○○被告事件の被告人○○○○の保釈保証金について,以下の事項をご回答下さい。
① 保釈保証金の金額
② 保釈保証金の提出者の氏名及び住所
③ 保釈保証金納付の方法
④ 競合する仮差押え,差押えの有無
⑤ ④で有りの場合,その債権者の氏名及び差押え金額

8 保釈者等の視察に関する犯罪捜査規範の条文
第十七章 保釈者等の視察
(保釈者等の視察)
第二百五十三条 警察署長は、検察官から、その管轄区域内に居住する者について、保釈し、又は勾留の執行を停止した者の通知を受けたときは、その者に係る事件の捜査に従事した警察官その他適当な警察官を指定して、その行動を視察させなければならない。
2 前項に規定する視察は、一月につき、少なくとも一回行うものとする。
(事故通知)
第二百五十四条 前条に規定する視察に当たり、その者について次の各号の一に該当する理由があるときは、これを前条に規定する通知をした検察官に速やかに通知しなければならない。
一 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
二 罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
四 住居、旅行、治療等に関する制限その他保釈又は勾留の執行停止について裁判所又は裁判官の定めた条件に違反したとき。
五 その他特に検察官に通知する必要があると認められる理由があるとき。
(視察上の注意)
第二百五十五条 第二百五十三条(保釈者等の視察)に規定する視察は、穏当適切な方法により行うものとし、視察中の者又はその家族の名誉及び信用を不当に害することのないように注意しなければならない。
(視察簿)
第二百五十六条 第二百五十三条(保釈者等の視察)に規定する視察を行つたときは、視察簿(別記様式第二十四号)により、これを明らかにしておかなければならない。

スポンサーリンク