メインコンテンツへスキップ
       

旧司法試験の成績分布,成績通知及び成績開示(AIリライト)

本記事は,昭和58年度から平成22年度までの旧司法試験の得点別人員調を直接参照できるように整理し,「人員累計」の読み方,得点表の前提となる科目改正,論文式試験の得点計算について確認できる範囲,成績通知の変遷及び現在の開示請求を説明するものである。

得点別人員調の収録最終年度は平成22年度であるのに対し,法務省が保有する旧司法試験第二次試験ファイルの対象は平成23年までであるため,両者の対象期間は一致しない。

第1 旧司法試験の得点別人員調

1 掲載資料と対象期間

旧司法試験の得点分布が分かる法務省文書として,次の2資料を掲載している。

司法修習の期でいえば,38期(昭和59年4月採用)から65期(平成23年7月採用)までが受けた試験に関する資料である。

得点別人員調には,短答式試験(択一試験),論文式試験及び口述試験について,得点ごとの人数,累計,割合,合格点等が収録されているが,掲載項目は年度及び試験段階によって異なる。

2 「人員累計」は順位ではなく当該得点以上の人数であること

「人員累計」は,最高得点から当該得点までの受験者数,すなわち当該得点以上の人数を示す。

したがって,人員累計は,同点者各人の順位そのものではない。

例えば,昭和58年度の短答式試験(得点別人員調のPDF1頁)では,68点が1人で人員累計は1人,その次の65点が2人で人員累計は3人である。

65点の2人は,高得点順の並びでは2番目及び3番目を占めるが,通常の同順位の表示でいえば,いずれも2位である。

一般化すると,ある得点より上の受験者がH人,同点者がn人である場合,人員累計はH+n人,同点者の通常の順位はH+1位であり,高得点順の並びではH+1番目からH+n番目までを占める。

3 昭和62年度の論文式試験得点分布表の読み方

平成3年度までは,論文式試験に非法律選択科目(いわゆる教養選択科目)があった。

そのため,当時の論文式試験得点分布表には,6科目の法律得点の合計と,非法律選択科目1科目を含む7科目の総得点の両方が記載されている。

例えば,昭和62年度司法試験論文式試験得点分布表(全員)(得点別人員調のPDF14頁)では,総得点196点は9人であり,その内訳は,法律得点168点が7人,162点が2人である。

また,総得点175点は71人であり,その内訳は,法律得点157点が1人,155点が1人,154点が6人,153点が7人,152点が10人,151点が12人,150点が8人,149点が8人,148点が11人,147点が4人,146点が1人,145点が1人,144点が1人である。

総得点175点以上の人員累計は572人であり,175点の同点者各人の順位を意味するものではない。

第2 得点表を読む上で重要な科目改正

1 平成4年度からの非法律選択科目の廃止

司法試験法の一部を改正する法律(平成3年法律第34号)は,論文式試験及び口述試験の7科目を6科目に改め,平成4年1月1日から施行された。

この改正により,政治学,経済原論,財政学,会計学,心理学,経済政策又は社会政策から1科目を選択した非法律選択科目が廃止された(法務大臣官房司法法制調査部編『司法試験制度はこう変わる 法曹養成制度改革』1頁~3頁及び43頁)。

そのため,平成3年度までの論文式試験得点分布表と,平成4年度以降の得点分布表は,合計科目数を同じものとして比較することができない。

2 平成12年度からの法律選択科目の廃止等

司法試験法の一部を改正する法律(平成10年法律第48号)は,論文式試験の第5科目及び第6科目を民事訴訟法及び刑事訴訟法とし,口述試験を5科目に改め,平成12年1月1日から施行された。

その結果,論文式試験は,憲法,民法,刑法,商法,民事訴訟法及び刑事訴訟法の6科目となった。

口述試験は商法が廃止され,憲法,民法,刑法,民事訴訟法及び刑事訴訟法の5科目となった。

第3 論文式試験の科目別得点の計算

1 平成9年度について文献から確認できること

芳賀淳『最新 司法試験情報』(辰巳法律研究所,1998年)15頁は,平成9年度の論文式試験について,各1問を2人が1点刻みで採点し,2問に対する4つの得点の合計を4で除して1科目の得点としたため,科目別得点は0.25点刻みであったと説明している。

この記載は法務省の一次資料ではないため,平成9年度の得点分布を読む際の文献上の説明として位置付ける必要がある。

2 平成14年の公式申合せと確認できる範囲

司法試験第二次試験合否判定方法・基準(平成14年1月23日司法試験考査委員会議申合せ事項)(PDF2頁)は,論文式試験について,6科目の得点合計で合否を決め,1科目の得点は第1問と第2問の平均点とする方法を定めていた。

同資料(PDF5頁及び6頁)は,各考査委員及び問題による採点格差を調整し,調整後の得点により合計点及び平均点を算出するとしていた。

もっとも,平成14年の申合せ又は昭和58年度の得点分布表から,平成14年と同じ採点者数,計算式及び採点格差の調整方法が昭和58年当時から用いられていたと確認することはできない。

第4 旧司法試験の成績通知の変遷

試験当時に受験者へ送付された成績通知について,確認できる主な変更は次のとおりである。

時期対象確認できる通知内容根拠
昭和56年度から論文式試験の不合格者成績『司法試験制度はこう変わる』63頁
平成16年度の第二次試験から成績通知を希望する論文式試験合格者科目別順位ランク,総合順位ランク及び総合得点司法試験委員会会議(第3回)議事要旨及び議事録(PDF3頁),試験成績の本人通知の拡充について(案)(PDF1頁)
平成16年度の第二次試験から成績通知を希望する口述試験合格者総合得点同上
平成18年度の第二次試験から成績通知を希望する論文式試験及び口述試験の合格者総合順位旧司法試験の試験成績の本人通知の拡充について(平成17年12月15日司法試験委員会決定)(PDF1頁)

この成績通知は試験実施時の通知制度であり,現在,法務省に対して行う保有個人情報の開示請求とは別の制度である。

第5 旧司法試験の成績開示

1 東京高裁平成17年7月14日判決

東京高裁平成17年7月14日判決・平成16年(行コ)第357号(原審・東京地裁平成15年(行ウ)第396号,裁判所ID 14815)は,旧司法試験第二次試験の成績に関する本人の開示請求を扱った判決である。

同判決は,論文式試験の科目別得点及び口述試験の科目別得点を不開示とした部分は適法である一方,論文式試験の総合順位を不開示とした部分は違法であると判断した。

したがって,同判決は旧司法試験のあらゆる科目別得点の開示を命じたものではなく,開示を認めた情報と不開示を適法とした情報を区別して読む必要がある。

2 平成20年度(行個)答申第1号

平成20年度(行個)答申第1号(平成20年4月14日)は,平成11年度の旧司法試験第二次試験ファイルに関し,合格枠制対象者である合格者の論文式試験の総合得点及び総合順位を不開示とした決定を検討したものである。

情報公開・個人情報保護審査会は,これらの情報は当時の法14条1号及び7号柱書きの不開示情報に該当せず,開示すべきであると判断した(PDF1頁及び10頁~13頁)。

この答申は,合格枠制対象者である合格者の総合得点及び総合順位という対象情報についての判断であり,科目別得点一般の開示可否を判断したものではない。

3 現在の保有個人情報開示請求

(1) 対象年度と保有範囲

法務省「各種試験に係る保有個人情報開示請求について」及び同省の「よくある質問」によれば,旧司法試験第二次試験ファイルは,昭和58年度から平成23年までの出願者に係るものが保存されている。

ただし,記録項目21「論文式合計点」及び22「論文式成績」は,平成4年度以降のものに限って保有されている。

このため,昭和58年度から平成3年度までについて,旧司法試験第二次試験ファイル自体が保存されていることと,論文式合計点及び論文式成績が保存されていることを同一に扱うことはできない。

(2) 請求できる者と現行手続

開示請求ができるのは本人又は代理人であり,法務省の現行案内には,請求書様式,記録項目の指定方法,本人等確認書類,手数料及び提出先が掲載されている。

必要書類,手数料,郵送方法等は改定される可能性があるため,請求時には法務省の現行案内を確認すべきである。

なお,次のX投稿は,最高裁が法務省から司法試験合格者の順位が分かる文書を受領した際の理由説明書を紹介する関連資料であり,現在の開示対象及び請求手続は上記の法務省資料によって確認している。

第6 関連記事及び制度改革資料

第7 出典

1 歴史的法令

  • ① 衆議院「司法試験法の一部を改正する法律(平成3年法律第34号)」
  • ② 衆議院「司法試験法の一部を改正する法律(平成10年法律第48号)」

2 統計及び公文書

  • ① 法務省「昭和58年度から平成10年度までの司法試験の得点別人員調」(PDF全53頁。本文で使用した箇所はPDF1頁及び14頁)
  • ② 法務省「平成11年度から平成22年度までの司法試験の得点別人員調」(PDF全48頁)
  • ③ 司法試験考査委員会議「司法試験第二次試験合否判定方法・基準」(平成14年1月23日申合せ事項。PDF2頁,5頁及び6頁)
  • ④ 司法試験委員会「司法試験委員会会議(第3回)議事要旨及び議事録」(平成16年2月23日。PDF3頁)
  • ⑤ 司法試験委員会「試験成績の本人通知の拡充について(案)」(平成16年度。PDF1頁)
  • ⑥ 司法試験委員会「旧司法試験の試験成績の本人通知の拡充について」(平成17年12月15日決定。PDF1頁)
  • ⑦ 法務省「各種試験に係る保有個人情報開示請求について」(令和7年9月8日)及び「よくある質問」
  • ⑧ 法務省「司法試験制度等改革の経緯(公表済み)」(PDF全3頁)

3 裁判例及び答申

  • ① 東京高裁平成17年7月14日判決・平成16年(行コ)第357号(原審・東京地裁平成15年(行ウ)第396号,裁判所ID 14815。裁判所ウェブサイトの「判例集等巻・号・頁」欄は空欄)
  • ② 情報公開・個人情報保護審査会「平成20年度(行個)答申第1号」(平成20年4月14日。PDF全13頁。本文で使用した箇所はPDF1頁及び10頁~13頁)

4 文献

  • ① 法務大臣官房司法法制調査部編『司法試験制度はこう変わる 法曹養成制度改革』(ジュリスト増刊,有斐閣,1991年)1頁~3頁,43頁及び63頁(書籍頁)
  • ② 芳賀淳『最新 司法試験情報』(辰巳法律研究所,1998年)15頁(書籍頁)