司法書士資格の変遷


目次
第1 司法書士資格の変遷
第2 法務大臣認定に基づく司法書士の新規登録者数
第3 司法書士に関するメモ書き
第4 関連記事その他

第1 司法書士資格の変遷
1(1) 明治5年8月3日布告の「司法職務定制」の中の「代書人職制」により司法書士制度が誕生しました。
(2) 同時に,代言人(後の弁護士)及び証書人(後の公証人)も誕生しました。

2 司法代書人法(大正8年4月9日法律第48号)により,代書人が司法代書人となりました。

3 司法代書人法中改正法律(昭和10年4月2日法律第36号)による改正により,司法代書人法が司法書士法となり,司法代書人が司法書士となりました。
    その際,弁護士会は司法書士への名称変更に強く反対していました(外部HPの「昭和10年司法書士法改正運動と『夜明け』」参照)。

4 昭和25年7月1日施行の司法書士法では,主として,裁判所事務官,裁判所書記官,法務局登記官,検察事務官等を3年以上経験した人が,法務局又は地方法務局の長の認可を受けて司法書士になるものとされました(司法書士法2条及び4条1項)。

5 司法書士法の一部を改正する法律(昭和31年3月22日法律第18号)による改正後の司法書士法では,主として,裁判所事務官,裁判所書記官,法務局登記官,検察事務官等を5年以上経験した人が,法務局又は地方法務局の長の選考によってする認可を受けて司法書士になるものとされました(司法書士法2条及び4条1項)。

6(1) 司法書士法の一部を改正する法律(昭和53年6月23日法律第82号)(昭和54年1月1日施行)による改正後の司法書士法3条(現在の司法書士法4条)により,以下の人が司法書士になることとなりました。
① 司法書士試験に合格した者
② 裁判所事務官,裁判所書記官,法務局登記官,検察事務官等を10年以上経験し,法務大臣が司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの
(2) 法務省HPに載ってある「司法書士の資格認定に関する訓令」(平成14年3月28日法務大臣訓令)(平成14年4月1日施行)の本文は以下のとおりです。
第1条 次に掲げる者は,法務大臣に対し,資格認定を求めることができる。
(1 ) 裁判所事務官,裁判所書記官,法務事務官又は検察事務官として登記,供託若しくは訴訟の事務又はこれらの事務に準ずる法律的事務に従事した者であって,これらの事務に関し自己の責任において判断する地位に通算して10年以上あったもの
(2 ) 簡易裁判所判事又は副検事としてその職務に従事した期間が通算して5年以上の者
第2条 司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有するかどうかの判定は,口述及び必要に応じ筆記の方法によって行う。

7 司法制度改革を踏まえた平成14年の法改正により,所定の研修を修了し,法務大臣の認定を受けた司法書士は,簡易裁判所における訴訟及び簡易裁判所の事物管轄(140万円)を基準とする調停・即決和解事件の代理をすることができることとされました。

8 平成17年の法改正により,司法書士が自ら代理人として手続に関与している事件の上訴の提起について代理ができることとされました。

9 LEC HPの「司法書士の歴史」が非常に参考になります。


第2 法務大臣認定に基づく司法書士の新規登録者数
1 メンターエージェントHPの「司法書士の新規登録者数および取消者数の推移」によれば,法務大臣認定に基づく司法書士の新規登録者数は以下のとおりです。
平成 元年度:304人,平成 2年度:297人,平成 3年度:245人
平成 4年度:215人,平成 5年度:133人,平成 6年度:146人
平成 7年度:157人,平成 8年度:121人,平成 9年度:113人
平成10年度: 91人,平成11年度: 87人,平成12年度: 97人
平成13年度:120人,平成14年度:102人,平成15年度:112人
平成16年度:106人,平成17年度:131人,平成18年度:141人
平成19年度:169人,平成20年度:167人,平成21年度:124人
平成22年度:136人,平成23年度:116人,平成24年度:102人
2 メンターエージェントHPに「司法書士の新規登録者数(平成26年度)/地域別」が載っています。
3 日本司法書士会連合会HPの「司法書士白書」に,2009年度版以降の司法書士白書が載っています。
4(1) 平成29年7月11日付の「行政文書開示請求について(意思確認)」によれば,以下の文書は存在しません。
① 司法書士の資格認定に関する訓令の運用通達(最新版)
② 平成14年度から平成28年度までの間に,司法書士の資格認定に関する訓令に基づき,司法書士資格を認定された人数が,年度別及び資格別に分かる文書
(2) 法務省の法務年鑑にも,司法書士の資格認定に関する記載がありません。


第3 司法書士に関するメモ書き
1 新版 精解設例 不動産登記添付情報(上巻)の1頁及び2頁にある,1996年2月の日本司法書士会連合会会長の「推薦のことば」には以下の記載があります。
    司法書士は,不動産取引の場において,特に最終局面にあっては全関係者に対して,必要書類の提出を求めながら,全当事者が人違いでないことを確認し,かつ,その物権の変動意思・登記申請意思の確認などを行い,登記申請に必要な全書類が完備しているかをチェックし,関係当事者にそれぞれの手続の法的意味を説明し,登記が関係当事者の意図した形で完結できる旨を宣言したうえで代金決済を促し,各関係者へも完全に弁済がなされたことを確認し,取引の終了を宣言することとしている。
2  司法書士は,登記義務者の代理人と称する者の依頼により登記申請をするにあたり,依頼者の代理権の存在を疑うに足りる事情がある場合には,登記義務者本人について代理権授与の有無を確かめ,不正な登記がされることがないように注意を払う義務があります(最高裁昭和50年11月28日判決)。
3 司法書士宮城事務所HP「日司連公的個人認証有効性確認システムを使ってみました。」が載っています。


第4 関連記事その他
1 東弁リブラ2021年9月号「他士業に学ぶ─弁護士が見落としがちな実務のポイント─」が載っています。
2  弁護士を除く司法書士でない者が継続反覆の意思をもって司法書士法3条1項所定の書類を作成した場合,報酬を得る目的の有無にかかわりなく同条に規定する司法書士の業務を行ったこととなるため,司法書士法78条1項及び73条1項に基づき,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(最高裁昭和39年12月11日判決)。
3 以下の記事も参照してください。
・ 司法書士の業務に関する司法書士法の定めの変遷
・ 不動産登記に関するメモ書き
・ 弁護士以外の士業の懲戒制度
・ 令和元年の司法書士法及び土地家屋調査士法改正に関する法務省民事局の御説明資料


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