副検事制度が創設された経緯

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「新検察制度十年の回顧」には,「六 副検事制度の創設」という表題で,以下の記載があります(法曹時報10巻3号84頁ないし86頁)。

   検事の補佐機関として特別任用の検事補又は副検事制度を設けるという構想は戦前からあつたのであるが、裁判所は検事補又は副検事に相当する特別任用の検察官を設けることを強く反対しており、検察部内においても賛否両論があった。反対理由の根拠は検察の運用が全般的に低下するというのであったが、これを克服することができても当時検事局は裁判所に附置され、裁判所とともに司法大臣の管理の下にあったので、検事局だけにこの特別任用の制度を設けることは裁判所との関係から実現困難な状態にあった。
   しかし、戦後司法制度が改正されるに当り、司法法制審議会では検事補制度を設けることを認めており、また憲法の改正により行政執行法、違警罪即決例などが廃止され、逮捕、勾留がすべて裁判官の令状によらなければならぬことになれば、これまで警察署長の権限で処理されていたものをすべて検事が取り扱わねばならぬことになり、また裁判所がこの実情に沿うため簡易裁判所を設けることになれば、簡易裁判所の裁判官に匹敵する数の検事を増員せねばならぬ必要が起り、かかる多数の検事を早急に充足することは到底不可能であったので、ここに特別任用により検事に代える機関を設ける必要が生じ、また別に部内において久しく要望されていた一般事務職員の昇進の途を拓くことについて、副検事制度は職員の将来に大きな希望を与えることができるとも考えられたので副検事制度を実現することにしたのである。
   特別任用の副検事を置くことについては、日本弁護士連合会は、その任用資格が検事の任用資格より低く検察組織の実力を低下し人権尊重の基本的原則に違背する危険があるというので反対し、また総司令部も検察官は公訴の提起及びその維持にあたるには高度の法律的素養が必要であるといって、特別任用資格を認める副検事制度には容易に承認を与えてくれなかつたのであるが、これを必要とする実情を強調してついに実現することになつたのである。
   ところが、愈々副検事制度を実現してみると、副検事は、年々飛躍的に増加する区検察庁の管轄事件(とくに道路交通違反関係事件)の処理、あるいは公判運営に対処して検察の機能を果たし、これを設けた目的を一応達しているばかりでなく、これまで専ら検事の捜査の立会、書類の作成整理、証拠品の処理などの機械的な検察事務に従事し将来に希望を託すことのできなかった一般検察職員に昇進の途を拓き、優秀な検察事務官に跳躍の機を与えた効果は目ざましいものがあった。しかし、その発足当初は、急速に一定の要員を充足しなければならぬ必要があり、副検事の選考は各庁に一任されていたため、採用の一応の基準はあっても、各地によって実情がちがい、検察事務になれた実情にあかるい部内職員だけでなく、部外者の有資格者などを多数採用したため、検察官に必要な識見の足らないものや、年令的に適当でないものなども少くなく、それに訓練不足というような事情もあって、実務の処理に過誤があったり、処理が適正でなかったりすることもあって、副検事制度に対し、内外から一時相当な非難があった。
   その弊害は、その後ことごとく是正されたとはいえないが、運用について検討が加えられた結果、副検事に適当でない者は漸次淘汰され、また素質の改善向上をはかるため、中央、地方において厳格な実務訓練を施し、あらたに採用する者に対しては、学識は勿論、人物考査に意を須い、厳格な選考を行っているので、将来性のある優秀者が増加する傾向にあり、さらに、副検事の実務経験三年以上経た者のうちから、考試を経て検事に昇進するものも毎年二、三名は輩出するという実情であって、副検事制度を設けた目的を達成しつつあるのである。

*1 検察庁HPの「検察官の種類と職務内容」には「副検事は,区検察庁に配置され,捜査・公判及び裁判の執行の指揮監督などの仕事を行っています。」と書いてあります。
*2 首相官邸HPに「副検事の選考方法」及び「特任検事の選考方法」が載っています。
*3 平成元年版犯罪白書「犯罪者の処遇」には以下の記載があります。
 違警罪即決例に規定されていた違警罪即決処分は,警察署長及び分署長又はその代理たる官吏が,その管轄地内において犯された違警罪(拘留又は科料に当たる罪)を即決する処分である。この即決処分は,被告人の陳述を聞き,証拠を取り調べ,直ちに刑を言い渡すか,被告人を呼び出すことなく若しくは呼び出しても出頭しないときに,直ちに言渡書を本人又はその住所に送達する方法で行われた。即決処分に対しては,言渡しがあったときは3日以内に,言渡書の送達があったときは5日以内に,正式の裁判を請求することができ,その請求があったときは,区裁判所で正式裁判が行われた。
*4 「弁護士の果たした役割」と題する記事(大竹武七郎)には以下の記載があります(昭和49年1月1日発行のジュリスト551号102頁。なお,改行を追加しています。)。
 検事局と警察とは、その機構、人員等の関係から、捜査の実力は警察側にあったといっても過言ではない。ところが、警察官は、捜査に強制力を用いることは、法律上、非常に制限されていた。
 そこで、警察官は、違警罪即決例により、被疑者が一定の住居又は生業なくして諸方を徘徊したこと等を理由として拘留処分に付し、又は行政執行法により、泥酔者もしくは自殺を企つる者その他救護を要すと認むる者として検束し、しかも検束は翌日の日没後に至ることを得ないにもかかわらず、これをむしかえして、長期間にわたって身柄を拘束し、その期間を利用して被疑者を取り調べるということが行われた。
 そこで、この弊害をなくすために、現行憲法時代になってから、違警罪即決例、行政執行法を廃止した。
*5 Wikipediaの「警察犯処罰令」軽犯罪法(昭和23年5月1日法律第39号)に相当する法令です。)には以下の記載があります。
 比較的軽微な警察犯について略式の処罰方法を定め、これを内務大臣の命令で規定することが許されたが、その結果、警察犯処罰令が制定された。その手続きは違警罪即決例によっている。
 警察犯処罰令上の警察犯は拘留または科料の罪であるから違警罪即決例が適用され、ふつうの刑事事件とはことなって、法律に定められた裁判官でない行政官である警察署長が、略式の手続きで即決できる。
 ただし不服ならば正式裁判の申立をすることができる規定である。
*6 以下の資料を掲載しています。
・ 副検事の選考受験案内(令和2年度)
・ 令和2年度副検事の選考筆記試験実施要領
・ 令和2年度副検事の選考第2次試験(口述試験)実施要領
・ 令和2年度検察官特別考試筆記試験実施要領
・ 令和2年度検察官特別考試口述試験実施要領

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