その他裁判所関係

全国の下級裁判所における所持品検査の実施状況

目次
1 東京高裁及び東京地裁の庁舎
2 札幌高裁及び札幌地裁の庁舎
3 東京家裁及び東京簡裁の庁舎
4 福岡高裁及び福岡地裁の庁舎
5 大阪高裁及び大阪地裁の庁舎
6 仙台高裁及び仙台地裁の庁舎
7 千葉地家裁の庁舎
8 さいたま地家裁の庁舎
9 横浜地裁の庁舎
10 名古屋高裁及び名古屋地裁の庁舎
11 神戸地裁の庁舎
12 広島高裁及び広島地裁の庁舎
13 京都地裁の庁舎
14 大阪家裁の庁舎
15 高松高裁及び高松地裁の庁舎
16 東京地家裁立川支部の庁舎
17 横浜家裁の庁舎
18 広島高裁岡山支部及び岡山地家裁の庁舎
19 関連記事その他

1 東京高裁及び東京地裁の庁舎
(1) 利用者の安全を確保し,安心して利用できる裁判所を実現する必要があるため,諸般の事情を総合考慮し,警備上の要請から平成7年5月16日に開始しました(令和元年7月18日付の東京高裁の司法行政文書の開示についての通知書参照)。
(2) オウム真理教事件の頃からゲート式金属探知機・X線手荷物検査装置を設置して入場者の持ち物検査を実施しています。
(3) cocoic HP「東京地方裁判所の裁判傍聴に行ってみた感想をレポート。初心者のための流れやアクセス等も」に,東京地裁の手荷物検査のことが書いてあります。
 
2 札幌高裁及び札幌地裁の庁舎
(1) 平成25年3月1日に開始しました。
(2) 札幌弁護士会HPに「-所持品検査から1年を迎えて-裁判所入庁者に対する所持品検査の中止を求める会長声明(平成26年3月27日付)「-所持品検査から2年を迎えて-裁判所入庁者に対する所持品検査の中止を求める会長声明」(平成27年3月10日付)が載っています。
(3) 空港の手荷物検査と同様,金属探知機を使用するに先立って手荷物の開披を求める運用がなされているみたいです(北海道合同法律事務所HPの「裁判所入庁者に対する所持品検査に関する抗議書兼要求」参照)。
(4) 札幌高等裁判所と北海道セキュリティ事業協同組合が締結した,札幌高等裁判所等庁舎警備業務に関する契約書(平成29年4月3日付)を掲載しています。
 
3 東京家裁及び東京簡裁の庁舎
(1) 平成25年10月1日に開始しました(東京家裁HPの「平成25年10月1日から,入庁時に金属探知機等を使用した所持品検査を実施しています。」参照)。
(2) 町田総合法律事務所HPに「東京家庭裁判所,東京簡易裁判所でも金属探知機・手荷物検査を実施」が載っています。
 
4 福岡高裁及び福岡地裁の庁舎
(1) 平成27年1月5日に開始しました(福岡高裁HPの「入庁時の所持品検査について」参照)。
(2) 飛行機搭乗時の身体検査・手荷物検査と全く同じ検査がなされているみたいです(本人訴訟を検証するブログ「福岡高裁の入所者検査が異常!」参照)。
(3) 福岡高等裁判所と首都圏ビルサービス協同組合が締結した,福岡高等裁判所等庁舎警備等業務に関する契約書(平成29年4月3日付)を掲載しています。

5 大阪高裁及び大阪地裁の庁舎
(1) 平成30年1月9日に開始しました(大阪地裁HPの「入庁者に対する所持品検査について」及び「大阪高等・地方・簡易裁判所の西門及び合同庁舎の一部の玄関の閉鎖等について」参照)。
(2) 本館の正面玄関,別館の正面玄関及び新館の正面玄関の3箇所で所持品検査を実施しています。
(3) 大阪高等・地方・簡易裁判所合同庁舎入庁検査業務請負契約に関する決裁文書(平成29年10月12日決裁)を掲載しています。
(4) 大阪高等裁判所と株式会社セノンが締結した,大阪高等・地方・簡易裁判所合同庁舎入庁検査業務に関する大阪高裁と株式会社セノンとの契約書(平成29年11月24日付)を掲載しています。
 平成30年1月9日から同年3月31日までの間(82日間)の契約金額は2222万6400円ですから,1日当たり27万1054円となります。
(5) 大阪高等裁判所と首都圏ビルサービス協同組合が締結した,大阪高等・地方・簡易裁判所合同庁舎の警備業務に関する請負契約書(平成30年4月2日付)及び変更契約書(平成30年6月19日付を掲載しています。
 変更契約書によれば,平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間の契約金額は1億2199万1038円ですから,1日当たり33万4222円となります。
(6) 大阪高等・地方・簡易裁判所庁舎における入庁検査の実施について(平成29年12月12日付の大阪高裁事務局長の文書)(黒塗りあり)につき,全く黒塗りのない文書が大阪弁護士会HPに「大阪高等・地方・簡易裁判所庁舎における入庁検査の実施について(平成29年12月12日付の大阪高裁事務局長の文書)」として載っています。
 


6 仙台高裁及び仙台地裁の庁舎
(1) 平成30年1月15日に開始しました(仙台地裁HPの「仙台地方裁判所からのお知らせ」参照)。
(2) 仙台弁護士会HPに「仙台高等裁判所・仙台地方裁判所に対し、裁判所庁舎入口付近における所持品検査に関する意見書」が載っています。
 

7 千葉地家裁の庁舎
(1) 平成30年2月13日に開始しました(千葉地裁HPの「入庁時所持品検査の実施について」参照)。
(2) 弁護士高橋裕樹のニュースな法律問題ブログ「【千葉地裁でも入館時に所持品検査が】」には,「千葉地裁は10年ほど前に建て替えをしているのですが建替時に金属探知機などを設置するスペースを設けていないので一階ロビーが本当に狭くなりました」などと書いてあります。
(3) 「入庁時所持品検査方法の変更について」には,「平成31年1月28日(月)から,目視(手荷物の開披)による所持品検査に代えてX線検査装置による所持品検査を実施することになりました。」と書いてあります。

8 さいたま地家裁の庁舎
(1) 平成30年3月1日開始(さいたま地裁HPの「所持品検査の実施について」参照)
(2) 裁判所HPには,「持参されている手荷物の中をすべて拝見します。」と書いてあります。

9 横浜地裁の庁舎
(1) 平成30年3月1日に開始しました(横浜地裁HPの「入庁時の所持品検査の実施等について(お知らせ)」参照)。
(2) 神奈川県弁護士会HPに「横浜地方裁判所本庁舎への入庁時の所持品検査の実施について」(平成30年1月15日付)が載っています。
(3) 裁判所HPによれば,平成30年9月3日から,「みなと大通り」側については,出口専用として開放することにしたみたいです。

10 名古屋高裁及び名古屋地裁の庁舎
(1) 平成30年7月4日開始(名古屋高裁HPの「入庁時の所持品検査の実施等について(お知らせ)」参照)

11 神戸地裁の庁舎
(1) 平成30年9月3日に開始しました(神戸地裁HPの「神戸地方・簡易裁判所庁舎本館における入庁者に対する所持品検査について」及び大弁HPの「神戸地裁・簡裁庁舎本館における入庁者への所持品検査の開始について」参照)。
(2) YouTube動画として「神戸地裁 9月から本館で所持品検査実施」があります。

12 広島高裁及び広島地裁の庁舎
(1) 平成30年10月1日に開始しました(広島地裁HPの「入庁時の所持品検査の実施について」参照)。

13 京都地裁の庁舎
(1) 平成31年4月1日に開始しました(京都新聞社HP「手荷物検査は「過剰」? 裁判所の警備強化に弁護士会反発」参照)。
(2) 京都地裁HPの「入庁時の所持品検査の実施等について」には,「京都地方・簡易裁判所庁舎において,平成31年4月1日(月)から,入庁者に対し,入庁時に地図記載の正面玄関において,ゲート式金属探知機,X線手荷物検査装置等を使用した所持品検査を実施する予定です。」と書いてあります。
(3) 京都弁護士会HPに「京都地方・簡易裁判所合同庁舎への入庁方法等の変更に関する意見書」(平成31年1月24日付)が載っています。
 北側玄関以外の東側,西側及び南側の各玄関を閉鎖するとのことです。

14 大阪家裁の庁舎
(1) 平成31年4月1日に開始しました(大阪家裁HPの「大阪家庭裁判所本庁における入庁者に対する所持品検査の実施等について」参照)。
(2) 家裁単独庁舎での所持品検査の実施は,大阪家裁及び横浜家裁が全国初です。
(3) 以下の文書を掲載しています。
① 大阪弁護士会会長宛の大阪家裁所長の書簡(平成31年2月4日付の文書)
② 入庁検査運用の概要(平成31年3月14日付の大阪家裁の文書)
③ 大阪家裁と株式会社KSP・WESTとの平成31年度入庁検査業務に関する契約書(平成31年4月1日付)
(4) 
令和元年5月28日付の大阪家裁の不開示通知書によれば,大阪家裁の所持品検査に反対する趣旨で,大阪家裁に提出された外部団体の意見書は存在しません。
(5) 司法の窓第50号(最高裁判所50周年記念号)最高裁判所長官インタビュー「最高裁判所50周年を迎えて」(当時の最高裁判所長官は7期の三好達裁判官です。)には以下の記載があります。
 家庭裁判所や簡易裁判所は,市民に一番身近な裁判所なのです。ですから,できるだけ利用しやすく親しみを感じてもらえるように工夫しています。例えば,受付には,来庁者が話をしやすいように,低めのカウンターを設置しています。これは,札幌,名古屋,大阪,長崎などの裁判所でも採用されています。また,調停室にも殺風景にならないように絵とか写真とかを飾りまして,親しみやすいムードを出しています。

15 高松高裁及び高松地裁の庁舎
(1) 平成31年4月1日に開始しました(高松高裁HPの「入庁時の所持品検査の実施等について」参照)。
(2) NHK高松放送局HPに「裁判所で手荷物開け所持品検査へ」が載っています。
(3) 以下の文書を掲載しています。
① 所持品検査の実施に関する高松高裁事務局長の書簡(平成31年2月12日付)
② 所持品検査実施等についての香川県弁護士会の意見書(平成31年2月22日付)
③ 高松高等・地方裁判所及び高松家庭・簡易裁判所庁舎における常駐警備並びに高松高等裁判所外庁舎における臨時警備業務に関する契約書(平成31年4月1日付)

16 東京地家裁立川支部の庁舎
(1) 平成31年4月1日に開始しました(東京地家裁HPの「入庁時の所持品検査の実施等について(お知らせ)」参照)。

17 横浜家裁の庁舎
(1) 平成31年4月1日に開始しました(横浜家裁HPの「入庁時の所持品検査の実施等について(お知らせ)」参照)。

18 広島高裁岡山支部及び岡山地家裁の庁舎
(1) 令和元年10月1日に開始しました(岡山地家裁HPの「入庁時の所持品検査について」参照)。

19 関連記事その他
(1)ア 42期の村田斉志最高裁判所総務局長は,平成31年4月9日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(最高裁のほか,千葉地裁及び千葉家裁を別にカウントしています。)。
 本日現在で常時検査を実施しております裁判所は、庁舎の数で申し上げますと全部で十九ございまして、具体的に申し上げますと、最高裁、東京高地裁、大阪高地裁、名古屋高地裁、広島高地裁、福岡高地家裁、仙台高地裁、札幌高地裁、高松高地裁、東京地家裁立川支部、東京家裁、横浜地裁、横浜家裁、さいたま地家裁、千葉地裁、千葉家裁、大阪家裁、京都地裁、神戸地裁、これら全部で十九庁舎でございます。
イ 千葉地裁及び千葉家裁は同じ敷地にありますから,別の庁舎としてカウントするのは変であると思います。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 
裁判所の所持品検査
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等

最高裁判所庁舎

目次
1 総論
2 最高裁判所庁舎を構成する各建物の配置等
3 最高裁判所庁舎を構成する各建物に入居している部署等
4 最高裁判所庁舎の沿革
5 司法行政文書開示請求以外の方法で最高裁判所庁舎内の様子を知る方法
6 終戦直後の最高裁判所庁舎
7 関連記事その他

1 総論
(1) 裁判所HPの「裁判所施設の耐震診断結果等の公表について」掲載の「裁判所施設の耐震性に係るリスト」を見れば,最高裁判所庁舎を構成する建物の名称は,大法廷棟,小法廷棟,図書館棟,裁判官棟,裁判部棟,事務北棟及び事務西棟であることが分かります。
(2) 裁判所HPの「最高裁判所の所在地」を見れば,最高裁判所には,正門・東門,及び南門・西門があることが分かります。
(3) 裁判所HPの「司法の窓第50号(最高裁判所50周年記念号)」「写真で見る最高裁判所の50年」が載っています。

2 最高裁判所庁舎を構成する各建物の配置等
(1) 最高裁判所の庁舎平面図と,最高裁判所庁舎の敷地において,小型無人機等の飛行禁止区域が分かる図面を照合すれば,大法廷棟,小法廷棟,図書館棟,裁判官棟,裁判部棟,事務北棟及び事務西棟の大ざっぱな位置関係は以下のとおりであると思います。ただし,裁判官棟(皇居に面しています。)及び事務西棟は南北に長い建物です。
          (国 立 劇 場)
  (西玄関)                   (東門)
      事務北棟 (北玄関) 裁判部棟  裁判       
      事務    図書館棟       官棟     (皇居)
(西門)  西棟   大 法 廷 棟 (正面玄関) (正門)
           小 法 廷 棟        (三宅坂小公園)
     (南門)                   (三宅坂交差点)
          (国 立 国 会 図 書 館)
(2)ア 鹿島建設株式会社HPの「第30回 ふたつの最高裁判所庁舎」には以下の記載があります。
① この建物は地下2階地上5階、延べ53,923m²。7つの棟(*14)で構成され、スペースウォールと呼ばれる二重壁によって結合するこれまでに例を見ない構造である。
② * 14 大法廷棟、小法廷棟、図書館棟、裁判官棟、裁判棟、司法行政北棟、司法行政西棟。これら7棟の建物の間にそれぞれ性格の違った庭が配されている。  
イ 司法行政北棟及び事務北棟,並びに司法行政西棟及び事務西棟は同じ意味です。
(3) 
「司法の窓」第75号(平成22年5月発行)裁判所めぐり「最高裁判所見学」には,最高裁判所庁舎について,「約3万7000平方メートルの敷地に建てられた地上5階,地下2階建の庁舎」と書いてあります。
(4) 最高裁判所正面玄関の写真,及び最高裁判所中庭の写真を掲載しています。
(5) 裁判所HPの「小型無人機等の飛行禁止区域について」には,「最高裁判所庁舎周辺地域図」等が載っています。

最高裁判所庁舎の敷地において,小型無人機等の飛行禁止区域が分かる図面

3 最高裁判所庁舎を構成する各建物に入居している部署等
(1)ア 大法廷棟2階に大法廷及び大ホールがあり,3階ないし5階は大法廷上部吹抜及び大ホール上部吹抜があります。
イ 大ホールの裁判官席は15席であり,裁判所書記官席は2席であり,裁判所事務官席は2席であり,2つの当事者席は各10席であり,傍聴席は166席であり,傍聴席の両側にある記者席は42席です。
ウ 大ホールには,①「正義」と題するブロンズ像(ギリシャ神話の法の女神テーミスがモデル),及び②「椿咲く丘」と題するブロンズ像(愛と平和をイメージしたもの)があります。
(2) 小法廷棟2階に公衆待合室,弁護士待合室及び検察官待合室があり,4階に三つの小法廷があり,5階には三つの小法廷上部吹抜があります。
(3) 
図書館棟4階には大閲覧室等があり,5階には大閲覧室上部吹抜があります。
(4)ア
 裁判部棟1階には大法廷書記官室,第一訟廷事務室及び第二訟廷事務室が入居しています。
イ 裁判部棟2階には第一小法廷書記官室,第二小法廷書記官室及び第三小法廷書記官室が入居しています。
ウ 裁判部棟3階には刑事第一調査官室,刑事第二調査官室及び刑事第三調査官室が入居しています。
エ 裁判部棟4階には行政調査官室,民事第一調査官室,民事第二調査官室及び民事第三調査官室が入居しています。
オ 最高裁判所の裁判部とは,大法廷首席書記官等に関する規則(昭和29年最高裁判所規則第9号)に定める大法廷首席書記官が指導監督する職員が属する組織をいいます(司法行政文書の管理について(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長の通達)第1.2(3)参照)。
(5) 事務北棟2階には最高裁判所刑事局が入居していると思います。
(6) 事務西棟3階には最高裁判所総務局が入居していると思います。また,事務西棟地下2階に最高裁判所内郵便局があります。


4 最高裁判所庁舎の沿革
(1)ア 国土交通省HPの「最高裁判所庁舎」には,「沿革」として以下の記載があります。
 最高裁判所は、昭和22年に創設され、当初は、旧大審院庁舎を使用していましたが、狭隘・老朽化に伴い庁舎の新営が計画される事となりました。
 敷地は、戦後返還を受けた駐留軍のパレスハイツ跡地の一部で、庁舎は大小法廷のほか裁判官棟及び司法行政棟の3棟から構成されています。
 昭和44年に設計競技(コンペティション)により選ばれた「岡田新一ほか16名」により設計され、昭和46年に設計が完了し、昭和49年に庁舎が完成しました。
 外壁から建物内部へと続く石張りは、三権の一翼を担う司法の頂点である最高裁判所の品位と重厚さがよく表現されています。
イ 文中の「大小法廷」は大法廷棟及び小法廷棟のことであり,「裁判官棟」は裁判官棟及び裁判部棟のことであり,「司法行政棟」は図書館棟,事務北棟及び事務西棟のことであるのかもしれません。
(2) 「チャンスはピンチだ。」ブログ「美の巨人たち 岡田新一「最高裁判所」」(2018年9月15日付)に,最高裁判所庁舎の写真が大量に載っています。
(3) 最高裁判所庁舎の竣工は昭和49年3月であり,落成式は同年5月23日であり,執務開始は同月27日です。
 また,最高裁判所庁舎の総工費は約126億円です。
(4) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)には以下の記載があります。
(76頁の記載)
 昭和四九年に完成した新庁舎は、建築家の岡田新一氏が外国の教会、大学からイメージを得て設計したという斬新なデザインだった。法廷・裁判官棟と事務棟を分離し、裁判官室は半蔵門と桜田門の間のお濠にそった道路に面してギリギリ最前列に配置された。広壮なホールが中心に置かれた。法廷も大法廷、小法廷とも正面にタピストリーを配し、裁判官が出入りする扉も電動式になるなど、面目を一新した。「過去の様式にとらわれず、現代の建築様式により、最高裁としての品位と重厚さを兼ね備えるべきだ」という趣旨の下、公開競技で選ばれたものである。
(77頁の記載)
 裁判所庁舎は、それ自体「正義」を具現するものとして中に入る者がおのずと襟を正し、同時に信頼感と親近感を覚えるものでなければならない。
(5) 「裁判官も人である 良心と組織の間で」151頁には以下の記載があります。
 当時、最高裁経理局の営繕課長として、大蔵省との予算折衝にあたっていた元東京高裁裁判長の石川義夫は、『思い出すまま』のなかで述べている。
 「川島(正次郎)副総裁以下自民党の親分連中」のところへ、「総長を始め、総務局長、人事局長、経理局長皆さんが足を棒にしてこの数ヶ月陳情して回った」おかげで、裁判所予算は「自民党で丸政(自民党が最重要と認めた事項につけるマーク)がついた」。それによって、大蔵省主計局が財政硬直化にともなう経費削減方針を公式表明していたにもかかわらず、最高裁の営繕費等はほぼ満額に近いかたちで認められることになった。
 当然ながら政府への借り意識が生まれ、最高裁の経理局長が「あれだけ治安対策の連中を使ってこの予算を通したら、後が大変だろうなあ。本当に人事局はやれるんだろうね」とつぶやくと、矢崎憲正人事局長は笑いながら返した。「そりゃ、やるとも」。


5 司法行政文書開示請求以外の方法で最高裁判所庁舎内の様子を知る方法
(1) 令和元年5月現在,日本の古本屋HPの「古書を探す」において,「最高裁判所庁舎 鹿島出版会」といったキーワードで検索すれば,「空間と象徴 最高裁判所庁舎における建築構想の展開」(昭和49年の書籍)を入手できます。
 当該書籍118頁では,最高裁判所の構内図が載っていますし,当該書籍119頁では,最高裁判所の庁舎平面図(ただし,地下1階から地上5階までの分)が載っています。
 そのため,例えば,最高裁判所長官室及びその秘書官室・応接室,最高裁判所判事室及びその秘書官室,並びに評議室及び裁判官会議室が裁判官棟のどこにあるかが分かります。

(2)ア 令和元年5月現在,横浜地裁の向かい側にある横浜情報文化センター8階の放送ライブラリー視聴ホールにおいて,「NHK特集 最高裁判所」(昭和62年5月3日放送)(番組IDは004003)を視聴できます。
イ 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)には以下の記載があります。
 昭和六二年初頭からNHKに協力して「最高裁判所」をビデオに納めることになった。日ごろ国民の目に触れにくい長官室、裁判官室、大法廷、小法廷の各審議室、大会議室、調査官室、判決原本保存室、裁判官公邸などを紹介した。小法廷前控室で法服を着る裁判官もブラウン管に登場して最高裁の重要性を訴えた。放映は同年五月のことであったが、開かれた裁判所の一つの試みである。



6 終戦直後の最高裁判所庁舎
 最高裁判所十年の回顧には,「最高裁判所庁舎」という表題で以下の記載があります(法曹時報9巻9号52頁)。
 最高裁判所の庁舎の問題については、司法省は、かねてから、旧枢密院の庁舎を予定していたので、最高裁判所は発足と同時にこの庁舎に入った。ところが、この庁舎は、狭い上に、その出入にいちいち門鑑を必要とし、一方、事務局は、法曹会館の一部を使用しているため、その連絡に不便であり、さらに、直接国民と接する裁判所の庁舎としては不適当であるということから、別の庁舎を求める必要にせまられた。当時、将来の最高裁判所庁舎として、旧大審院庁舎を修築中であったが、その完成は一年後と予測されていた。そこで早々の庁舎をどうするかという問題について裁判官会議を開いた結果、当時司法省が使用していた、現在の東京高等裁判所、同地方裁判所合同庁舎の三、四階を明渡してもらう以外に途はないということになり、その旨三淵長官から鈴木司法大臣に申入を行った。その結果、司法省は省議を開き、当時司法省の使用していた建物を、最高裁判所、東京高等裁判所の庁舎として明渡し、司法省は、旧枢密院、法曹会、刑務協会等に分散して執務することに決定した。この決定は、省議によったというものの、鈴木司法大臣が、「司法権を尊重するということは、言葉の上だけではだめである。行政部の方はそつせんして行動の上に示さなければならないと考えたので、一番よい建物を最高裁判所に提供することが内閣の責務である』と力説されたところによるところが大きかった。かくして、九月八日最高裁判所は、旧枢密院庁舎から、現在の東京高等裁判所の庁舎に移転して執務を行うことになった。その後、旧大審院庁舎について修復成った現最高裁判所庁舎に二十四年十一月十一日に移転し、現在にいたっている。
 最高裁判所庁舎は、約三億円の経費によつて修復を行つたもので、戦後荒廃した諸官庁庁舎のととのわなかった当時としては注目されたものであつたが、現在では、各国の裁判所にくらべて、非常にみおとりするものとされている。とくに米国の連邦最高裁判所庁舎やフランス、イタリーの最高裁判所庁舎の重厚、豪華なのにくらべると、あまり貧弱だともいわれている。欧米にかぎらず、現在建築中のインドの最高裁判所庁舎の規模などから比較しても、わが国の最高裁判所庁舎も適当な時機に正義の殿堂にふさわしい庁舎が考えられなければなるまい。

7 関連する記事及び資料
(1) 司法の窓第89号(2024年)「最高裁判所庁舎竣工50年の歩み」が載っています。
(2)ア 「裁判官とは何者か?-その実像と虚像との間から見えるもの-」(講演者は24期の千葉勝美 元最高裁判所判事)には以下の記載があります(リンク先のPDF20頁)。
 裁判官執務室は、御影石の壁と絨毯の床からなり、明るいが、ここには、記録を積み上げるバー、調査官等と議論する低い机、いす、外部の来客用の応接セット、作り付けの書棚等があり、実用的な用途から広く作られている。2階から4階にある各執務室の東側は、大きな全面ガラスがはめ込まれ、皇居を望む臨むものとなっているが、冬になって、めったには見られないが、お堀の雪化粧の風情は最高! なお、ガラスは、はめ殺し構造となっているが、これは、裁判官が飛び降りたりしないためではなく、外部からの不法侵入ができないようにするためという説明になっているが、本当の意図は、分からない。
イ 「福田博オーラル・ヒストリー 「一票の格差」違憲判断の真意」189頁及び190頁には以下の記載があります。
福田 最高裁だって、非常に高い単価で建てられた裁判官棟に対して、事務総局は普通の官庁と同じで安普請です。外壁もすべて御影石のように見えますが、御影石というのは切る時に粉がいっぱい出る。それをすり潰して、糊でつけているだけのところもあります(笑)。
-それは間違いないですか。
福田 間違いない。最高裁の西側の門のところに見に行って見てごらんなさい。明らかに分かります。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 最高裁判所庁舎新営審議会答申(昭和41年8月31日付)
・ 最高裁判所庁舎の敷地において,小型無人機等の飛行禁止区域が分かる図面
・ 庁舎の沿革及び現況説明書(最高裁判所)
・ 最高裁判所庁舎の中長期保全計画(平成31年4月26日作成)
・ 最高裁判所庁舎の修繕履歴(平成29年4月から平成31年3月まで)
・ 平成に入り大法廷が使用された訴訟(平成29年12月6日現在)
イ 以下の記事も参照してください。
 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 最高裁判所の庁舎平面図の開示範囲
・ 最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアル
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用


最高裁判所の庁舎平面図の開示範囲

目次
第1部 最高裁判所の庁舎平面図の開示範囲
第2部 関連記事その他

第1部 最高裁判所の庁舎平面図の開示範囲
・   
最高裁判所の庁舎平面図の一部開示について判断した,平成28年度(最情)答申第48号(平成29年3月17日答申)は以下のとおりです。

答 申 書

第1 委員会の結論
   「最高裁判所の庁舎内部の見取り図(約240ある部屋が具体的にどこにあるかが分かる図面)(職員配置図は除く。)」(以下「本件開示申出文書」という。)の開示の申出に対し,最高裁判所事務総長が平面図7枚(以下,まとめて「本件対象文書」という。)を対象文書とし,その一部を不開示とした判断(以下「原判断」という。)は,妥当である。
第2 事案の概要
   本件は,苦情申出人からの本件開示申出文書についての裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱(以下「取扱要綱」という。)記第2に定める開示の申出に対し,最高裁判所事務総長が平成28年11月30日付けで原判断を行ったところ,取扱要綱記第11の1に定める苦情が申し出られ,取扱要綱記第11の4に定める諮問がされたものである。
第3 苦情申出人の主張の要旨
1 次の事情によっても何らかの弊害が発生しているわけではないから,本件対象文書のうち,不開示部分の全部が行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)5条6号に規定する不開示情報に相当するわけではない。
(1) 平成25年10月1日現在の最高裁判所職員配置図が開示されている。
(2) 日本女性法律家協会による鬼丸かおる最高裁判所判事に対する取材結果から,以下の事実がインターネットで公表されている。
ア 多くの最高裁判所裁判官は北玄関に秘書官が迎えに来ること。
イ 1フロアーに1つの小法廷の5人の裁判官室が並んでいること。
ウ 最高裁判所裁判官はだいたい5時に北玄関に車が来て帰っていること。
エ 最高裁判所裁判官の登庁時の車は北玄関に着くこと。
(3) 平成24年4月5日に発行された「最高裁回想録」によって以下の事実が明らかにされている。
ア 最高裁判所の正面玄関の真上に大応接室があること。
イ 裁判官棟の1階,裁判官室の真下に特別会議室があること。
ウ 毎週午前10時半からの裁判官会議は,皇居のお堀に面した裁判官棟4階の第一小法廷裁判官室の並びにある会議室で行われること。
エ 裁判官棟2階に予備室があること。
オ 小法廷の評議室は裁判官棟各階の裁判官室の並びにあること。
カ 裁判官室の前室として秘書官室があること。
キ 皇居のお堀沿いに裁判官室の窓がずらりと並んでいること。
ク 初めて公務員のクールビズが喧伝された年には,大会議室で開催される長官・所長会同の会場にマスコミのカメラが入ってきたこと。
(4) グーグルマップの航空写真と照合すれば,各建物の位置関係が分かる。
(5) 最高裁判所長官公邸については,平成21年6月付けの最高裁判所長官公邸の整備に関する有識者委員会報告においてその間取りが公表されている。
(6) 苦情申出人が情報公開の手続のために最高裁判所庁舎を訪問した際,記録閲覧室に行く途中の廊下に最高裁判所庁舎の案内図が掲示されていた。
(7) 国会議員の場合,内閣総理大臣も含めて議員会館における事務室の部屋割りが衆議院及び参議院のホームページで公表されている。
(8) 内閣府等の省庁の場合,国務大臣室を含む部屋割りがインターネットで公表されている。
2 昭和50年以降,「空間と象徴-最高裁判所庁舎における建築構想の展開」という書籍が販売されているから,少なくとも当該書籍に記載されていることは不開示情報に該当しない。
3 法令上の守秘義務を負わない法科大学院生であっても最高裁判所判事室や審議室を見学できるし,最高裁判所裁判官の秘書官から最高裁判所の建物自体や各法廷の構造等についての説明を受けることができることからしても,最高裁判所判事室及び審議室の図面は不開示情報に該当しない。
4 最高裁判所判事経験者等を通じて公表され,何人でも知り得る状態にある情報は,不開示情報に該当しない。
5 アメリカ合衆国のホワイトハウスの場合,大統領執務室の所在も含めて公開されていることとの比較からしても,本件対象文書のうち,不開示部分の全部が法5条6号に相当するわけではない。
第4 最高裁判所事務総長の説明の要旨
   最高裁判所事務総長の説明は,理由説明書及び補充理由説明書によれば,以下のとおりである。
1 原判断において不開示とした部分は,本件対象文書中の傍聴人や裁判所見学者が立ち入る場所を除く場所に係る部分であり,当該部分については,法5条6号に相当するとしている。このように判断した理由は,次のとおりである。
   すなわち,最高裁判所の庁舎は,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止していることから明らかなとおり,庁舎全体についての高度なセキュリティを確保する必要のある建物であることから,原則として最高裁判所の間取りや位置関係等が分かる部分は,これらを公にすることにより全体として警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,不開示とすべきものである。
   一方で,最高裁判所庁舎のうち,法廷等来庁者の出入りが予想され,一般に公開されていると評価できる部分については,例外的に当該部分の位置関係等が分かる情報を開示したとしても特段の警備事務等の支障はない。原判断においては,このような考え方に従って,開示すべき部分と不開示とすべき部分とを決したものである。
   なお,下級裁判所では,書記官室において,当事者に対する手続教示や書面の授受等が行われており,当事者等の出入りが予定されていることから,書記官室の位置関係を開示しても警備事務に支障を及ぼすものではない。しかし,最高裁判所においては,手続教示や書面の授受といった下級裁判所の書記官室で行われている対外的業務を全て第二訟廷事務室で行っており,書記官室への当事者等の出入りは予定されていない。そうすると,最高裁判所の書記官室は一般に公開されている部分とはいえないことから,書記官室の位置関係が分かる部分については,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,不開示とすることが相当である。
2 この点について,苦情申出人は,苦情申出書の各添付文書,書籍,庁舎案内図等に,庁舎内にどのような部屋があり,どのような位置関係にあるかが分かる記載があり,これらの記載によって何らかの弊害が発生しているわけではないことから,このように位置関係が判明している部屋については不開示事由がない旨主張する。しかし,これらの書類等の記載によっても,最高裁判所庁舎内の部屋の具体的な位置関係や間取りが判明するものとはいえない。
   また,苦情申出人は,職員配置図が開示されている旨主張するが,これは,各部屋の職員の配席を示したものにすぎず,各執務室等の具体的な場所を明らかにしているものではない。
   さらに,苦情申出人は,グーグルマップの航空写真と照合すると最高裁判所庁舎の各棟の位置関係が分かる旨主張するが,同写真からは具体的な棟名は判明しないのであるから,苦情申出人が知っている情報を組み合わせることによって位置関係が推測されるとしても,正確な位置関係が明らかになるものではない。
   したがって,苦情申出人の主張は,いずれも失当というべきである。
第5 調査審議の経過
当委員会は,本件諮問について,以下のとおり調査審議を行った。
① 平成29年1月10日 諮問の受理
② 同日 最高裁判所事務総長から理由説明書を収受
③ 同月16日 苦情申出人から意見書及び資料を収受
④ 同月23日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年2月2日 苦情申出人から意見書及び資料を収受
⑥ 同月13日 最高裁判所事務総長から補充理由説明書を収受
⑦ 同月20日 本件対象文書の見分及び審議
⑧ 同年3月13日 審議
第6 委員会の判断の理由
1 本件開示申出は,最高裁判所の庁舎内部の見取り図の開示を求めるものであるところ,原判断は,地下2階から5階までの平面図(本件対象文書)を対象文書とした上で,その一部を不開示としたものである。主な開示部分は,次のとおりである。
地下2階 郵便局,郵便局出入口
地下1階 中庭
1階及びМ2階 北玄関,第二訟廷事務室,記録閲覧室,事件受付ロビー,
正面玄関ホール,講堂ホワイエ,講堂
2階 大法廷,大ホール,公衆待合室,検察官待合室,
弁護士待合室
3階 大法廷上部吹抜,大ホール上部吹抜,公衆控上部吹抜
4階 閲覧室,第一小法廷,第二小法廷,第三小法廷
小法廷ロビー
5階 書庫,大法廷上部吹抜,大ホール上部吹抜,
小法廷上部吹抜,屋上
2 原判断について,最高裁判所事務総長は,最高裁判所は,広く国民の庁舎内の入構が予定されている下級裁判所と異なり,許可のない者の入構を禁止しており,来庁者が自由に出入りすることができず,また,庁舎全体について極めて高度なセキュリティの確保が要請されていることから,原則として最高裁判所の間取りや位置関係等が分かる部分については,これらを公にすることにより全体として警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,不開示とすべきであるが,法廷等の来庁者の出入りが予想され,一般に公開されていると評価できる部分については,特段の警備事務等の支障はないことから,そのような部分についてのみ開示したと説明する。
   最高裁判所の庁舎は,その多くの部分が一般の来庁者の出入りが想定されていない建物であり,入構するには原則として許可が必要であることや,内部に最高裁判所判事室や事務総局の中枢部分などがあることからすると,全体として高度なセキュリティの確保が要請されており,庁舎の部屋の配置等を公にすることにより,全体として警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする上記説明は合理的である。また,事件当事者や傍聴人,見学者等の来庁者の出入りが予想され,一般に公開されていると評価できる部分については警備事務等の支障がないとする説明も合理的である。
3 そこで,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書のうち,不開示とされた部分は,一般の来庁者の出入りが想定されていない部分であると認められる。したがって,当該部分については,公にすることにより,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条6号に規定する不開示情報に相当すると認められる。
   なお,本件対象文書においては,書記官室に係る部分が不開示とされており,一般に下級裁判所の庁舎平面図においては,書記官室に係る部分は開示されていると考えられることとの関係が問題となる。しかしながら,最高裁判所事務総長の説明によれば,下級裁判所においては,書記官室で当事者に対する手続教示等を行っているから,書記官室等への当事者等の出入りが想定されている反面,最高裁判所においては,手続教示等の対外的業務を全て第二訟廷事務室で行っており,書記官室への当事者等の出入りは想定されていないとのことである。そうすると,最高裁判所の書記官室は,一般の来庁者の出入りが想定されていない部分であるから,本件対象文書のうち,書記官室の位置に係る部分を公にすると,庁舎等の部屋の配置の一部が具体的に明らかになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるというべきであって,当該部分を不開示としたことは合理的である。
   これに対し,苦情申出人は,他の文書等に,最高裁判所の庁舎内部の部屋や位置関係が分かる記載があるから,本件対象文書のうち不開示とした部分の全部が不開示情報に該当するものではないと主張する。しかし,苦情申出人が挙げるような記載が別の文書にあったとしても,それだけで,あるいはそれらを総合することで,最高裁判所庁舎にある部屋の具体的な位置関係等が判明するものではない。したがって,苦情申出人の上記主張は,原判断の合理性を左右するものではない。
4 以上のとおりであるから,本件対象文書の一部を不開示とした原判断については,その不開示とした部分が,法5条6号に規定する不開示情報に相当すると認められるので,妥当であると判断した。
情報公開・個人情報保護審査委員会
委 員 長  髙 橋   滋
委 員    久 保   潔
委 員    門 口 正 人


第2部 関連記事その他
1 令和元年5月現在,日本の古本屋HPの「古書を探す」において,「最高裁判所庁舎 鹿島出版会」といったキーワードで検索すれば,「空間と象徴 最高裁判所庁舎における建築構想の展開」(昭和49年の書籍)を入手できます。
    当該書籍118頁では,最高裁判所の構内図が載っていますし,当該書籍119頁では,最高裁判所の庁舎平面図(ただし,地下1階から地上5階までの分)が載っています。
    そのため,例えば,最高裁判所長官室及びその秘書官室・応接室,最高裁判所判事室及びその秘書官室,並びに評議室及び裁判官会議室が裁判官棟のどこにあるかが分かります。
2 令和元年5月現在,横浜地裁の向かい側にある横浜情報文化センター8階の放送ライブラリー視聴ホールにおいて,「NHK特集 最高裁判所」(昭和62年5月3日放送)(番組IDは004003)を視聴できます。
   当該番組では,最高裁判所長官室,最高裁判所判事室,最高裁判所事務総長室,最高裁判所調査官室,最高裁判所の中庭等の映像が流れています。
3 宮内庁HPの「宮殿の各棟,各室等の名称」では宮殿における各部屋の位置関係が説明されていますし,宮内庁HPの「宮殿の写真」には,石橋(しゃっきょう)の間,春秋の間,豊明殿,松の間,竹の間,松の間等の写真が掲載されています。
4 東弁リブラ2008年12月号「前 最高裁判所判事 才口千晴 会員」には,以下の記載があります。
    判事室の広さは,21 坪(42 畳),皇居が一望できる閑静な居住まいで,秘書官と事務官の2 人が様々なバックアップをしてくれますので,居心地はよろしいのですが,毎日ここで大量の記録と格闘するのですから大変です。
5 以下の記事も参照して下さい。
・ 最高裁判所庁舎
・ 最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアル
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用

元号の改定に伴う訟廷事務及び執行官事務の取扱い

目次
第1 元号の改定に伴う訟廷事務の取扱い
第2 元号の改定に伴う執行官事務の取扱い
第3 関連記事

第1 元号の改定に伴う訟廷事務の取扱い
・ 元号の改定に伴う訟廷事務の取扱いについて(平成31年2月5日付の最高裁判所総務局第三課長の事務連絡)の本文は以下のとおりです。
1 新元号は,元号を改める政令が施行される日から使用する。
2 事件関係の帳簿及び諸票(以下「帳簿諸票」という。)等の備付けについては,元号の改定に伴って別冊とする必要はない。
3 帳簿諸票等の記載については,次のとおりとする。
(1) 新元号の初年度の表示は,「元年」とする。
(2) 事件番号等の年度の初めから登載順に通し番号を記載するとされている番号は,司法年度の終期(12月31日)まで従前の番号に連続する番号を記載する。例えば,地方裁判所に備え付けられた民事・行政第一審事件簿において元号の改定前最後に登載された通常訴訟事件の事件番号が100号である場合,元号の改定後最初に登載される通常訴訟事件は,次のように表示されることとなる。
(新元号)元年(ワ)第101号
4 3の(1)にかかわらず,業務系システムの仕様により新元号の初年度の表示が「1年」となるものについては,これを「元年」と訂正等する必要はない。

第2 元号の改定に伴う執行官事務の取扱い
元号の改定に伴う執行官事務の取扱いについて(平成31年2月5日付の最高裁判所民事局第三課長の事務連絡)の本文は以下のとおりです。
1 新元号は,元号を改める政令が施行される日から使用する。
2 事件関係の帳簿及び物品保管票(以下「帳簿等」という。)の備付けについては,元号の改定に伴って別冊とする必要はない。
3 帳簿等の記載については,次のとおりとする。
(1) 新元号の初年度の表示は,「元年」とする。
(2) 事件番号等の年度の初めから登載順に通し番号を記載するとされている番号は,司法年度の終期(12月31日)まで従前の番号に連続する番号を記載する。例えば,執行官室に備え付けられた強制執行等事件簿において元号の改定・前最後に登載された金銭債権についての動産に対する強制執行事件の事件番号が100号である場合,元号の改定後最初に登載される金銭債権についての動産に対する強制執行事件は,次のように表示されることとなる。
(新元号)元年(執イ)第101号
4 3の(1)にかかわらず,業務系システムの仕様により新元号の初年度の表示が「1年」となるものについては,これを「元年」と訂正等する必要はない。

第3 関連記事
・ 令和への改元に関する閣議書等

最高裁判所裁判官国民審査制度の合憲性に関する最高裁判所の判決

目次
第1 最高裁大法廷昭和27年2月20日判決(全員一致)
第2 最高裁昭和35年4月14日判決(全員一致)
第3 最高裁昭和40年9月10日判決(全員一致。ただし,補足意見あり)
第4 最高裁昭和47年7月20日判決(全員一致)
第5 最高裁昭和47年7月25日判決(全員一致)
第6 最高裁平成31年3月12日判決(全員一致)
* ナンバリング及び改行を行った上で,以下のとおり掲載しています。

第1 最高裁大法廷昭和27年2月20日判決(全員一致)
1(1) 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂解職の制度と見ることが出来る。
   それ故本来ならば罷免を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に罷免されるものとしてもよかったのである。

(2) それを憲法は投票数の過半数とした処が他の解職の制度と異るけれどもそのため解職の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。只罷免を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も解職の制度である。このことは憲法79条3項の規定にあらわれている。
 同条2項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、これを3項の字句と照し会せて見ると、国民が罷免すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に任命そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。この趣旨は一回審査投票をした後更に10年を経て再び審査をすることに見ても明であろう。

2(1)  一回の投票によって完成された任命を再び完成させるなどということは考えられない。
 論旨では期限満了後の再任であるというけれども、期限がきれた後の再任ならば再び天皇又は内閣の任命行為がなければならない。
 国民の投票だけで任命することは出来ない。最高裁判所裁判官は天皇又は内閣が任命すること憲法6条及び79条の明定する処だからである。
 なお論旨では憲法78条の規定を云為するけれども、79条の罷免は裁判官弾劾法の規定する事由がなくても、国民が裁判官の人格識見能力等各種の方面について審査し、罷免しなければならないと思うときは罷免の投票をするのであって、78条とは異るものである。
しかのみならず一つ事項を別の人により、又別の方法によって二重に審査することも少しも差支ないことであるから、79条の存するが故に78条は解職の制度でないということは出来ない。
最高裁判所裁判官国民審査法(以下単に法と書く)は右の趣旨に従って出来たものであって、憲法の趣旨に合し、少しも違憲の処はない。

(2)  かくの如く解職の制度であるから、積極的に罷免を可とするものと、そうでないものとの2つに分かれるのであって、前者が後者より多数であるか否かを知らんとするものである。
 論旨にいう様な罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とするもの」に属しないこと勿論だから、そういう者の投票は前記後者の方に入るのが当然である。
 それ故法が連記投票にして、特に罷免すべきものと思う裁判官にだけ×印をつけ、それ以外の裁判官については何も記さずに投票させ、×印のないものを「罷免を可としない投票」(この用語は正確でない、前記の様に「積極的に罷免する意思を有する者でない」という消極的のものであって、「罷免しないことを可とする」という積極的の意味を持つものではない、以下仮りに白票と名づける)の数に算えたのは前記の趣旨に従ったものであり、憲法の規定する国民審査制度の趣旨に合するものである。
 罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とする」という意思を持たないこと勿論だから、かかる者の投票に対し「罷免を可とするものではない」との効果を発生せしめることは、何等意思に反する効果を発生せしめるものではない。解職制度の精神からいえば寧ろ意思に合する効果を生ぜしめるものといって差支ないのである。
 それ故論旨のいう様に思想の自由や良心の自由を制限するものでないこと勿論である。

3 最高裁判所の長たる裁判官は内閣の指名により天皇が、他の裁判官は内閣が任命するのであって、その任命行為によって任命は完了するのである。このことは憲法6条及び79条の明に規定する処であり、此等の規定は単純明瞭で何等の制限も条件もない。所論の様に、国民の投票ある迄は任命は完了せず、投票によって初めて完了するのだという様な趣旨はこれを窺うべき何等の字句も存在しない。
 それ故裁判官は内閣が全責任を以て適当の人物を選任して、指名又は任命すべきものであるが、若し内閣が不適当な人物を選任した場合には、国民がその審査権によって罷免をするのである。この場合においても、飽く迄罷免であって選任行為自体に関係するものではない。国民が裁判官の任命を審査するということは右の如き意味でいうのである。
 それ故何等かの理由で罷免をしようと思う者が罷免の投票をするので、特に右の様な理由を持たない者は総て(罷免した方がいいか悪いかわからない者でも)内閣が全責任を以てする選定に信頼して前記白票を投ずればいいのであり、又そうすべきものなのである(若しそうでなく、わからない者が総て棄権する様なことになると、極く少数の者の偏見或は個人的憎悪等による罷免投票によって適当な裁判官が罷免されるに至る虞があり、国家最高機関の一である最高裁判所が極めて少数者の意思によって容易に破壊される危険が多分に存するのである)。これが国民審査制度の本質である。
 それ故所論の様に法が連記の制度を採ったため、2、3名の裁判官だけに×印の投票をしようと思う者が、他の裁判官については当然白票を投ずるの止むなきに至ったとしても、それは寧ろ前に書いた様な国民審査の制度の精神に合し、憲法の趣旨に適するものである。決して憲法の保障する自由を不当に侵害するなどというべきものではない。

4  総ての投票制度において、棄権はなるべく避けなければならないものであるが、殊に裁判官国民審査の制度は前記の様な次第で棄権を出来るだけ少なくする必要があるのである。
 そして普通の選挙制度においては、投票者が何人を選出すべきかを決するのであるから、誰を選んでいいかわからない者は良心的に棄権せざるを得なくなるということも考えられるのであるが、裁判官国民審査の場合は、投票者が直接裁判官を選ぶのではなく、内閣がこれを選定するのであり、国民は只或る裁判官が罷免されなければならないと思う場合にその裁判官に罷免の投票をするだけで、その他については内閣の選定にまかす建前であるから、通常の選挙の場合における所謂良心的棄権という様なことも考慮しないでいいわけである。
 又投票紙に「棄権」という文字を書いてもそれは余事記入にならず、有効の投票と解すべきものであるとの論があるけれども現行法の下では無理と思う。
原判決は措辞において多少異る処があるけれども、結局本判決と同趣旨に出たもので正当であり論旨は理由なきに帰する。

5 裁判官の取扱つた事件に関する裁判上の意見を具体的に表示せず、ただ事件名のみを記載しても、毫も国民審査法施行令第二六条の条件に反するものではない。
原判決は結局右と同旨に出でたものであるから、何等所論の違法はなく、論旨は理由がない。

第2 最高裁昭和35年4月14日判決(全員一致)
 所論原判決の判断、すなわち要するに、憲法七九条二項所定の最高裁判所裁判官国民審査は、一種の解職投票制度であつて、裁判官任命の適否を審査決定する制度でない旨、並びに、国民審査における問題は、罷免を可とするとの投票が多数をしめるかどうかであつて、同審査において審査人に対して求められる投票は罷免を可とする投票か可とする投票でない投票かのいずれかであつて、国民審査法二九条、三二条、三三条などに「罷免を可としない投票」とは後者を意味し、後者の投票をしようとする審査人は、なんらの記入をしないで投票することにしたのは、国民審査の憲法上の性質に合致する旨の各判断は、いずれも正当であつて、これと同一趣旨である所論引用の当裁判所大法廷判例(民事判例集六巻二号一二二頁以下)を変更すべきものとは認められない。

第3 最高裁昭和40年9月10日判決(全員一致。ただし,補足意見あり)
1 全員一致の多数意見
最高裁判所裁判官についても、その罷免の事由は憲法七八条所定のものに限定され、従つて同法七九条二項はその解職についての定めではなくして、右裁

判官の任命行為の審査を規定したものでなければならないとし、同条三項にいう罷免を、任命を否とする審査の結果を解除条件の成就とする任命行為の失効とみる所論は首肯しがたく、前示大法廷判決を変更する要は認められない。

2 裁判官奥野健一の補足意見
① 憲法七九条二項は「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議院総選挙の際国民の審査に付し……」と規定しているのであるから、国民の審査の対象は、任命自体であると解するのが最も素直な解釈であると思う。
 また、その後十年を経過した後行われる国民審査の対象も、当該裁判官の任命後の裁判において示した意見、職務遂行の実績その他の事項を考慮して、更にその任命の適否を審査するものと考える。
 かくの如くにして憲法は、司法の最高の地位にある最高裁判所の裁判官の任命について、広く国民の審査に付して、民意を反映せしめ、もつて、司法裁判が国民の信託に由来するものであるとの民主主義の原理に即応せしめんとするものであると解する。
② そして、裁判官の任命を審査するとは、当然その裁判官が果して最高裁判所の裁判官として適任であるか否かを審査することであつて、審査人である国民が審査の結果、その裁判官を不適任と判断したときは、当該裁判官について罷免を可とする投票を行い、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免されるのである。(同法同条三項。)
 すなわち、憲法は罷免を可とする投票が有効投票の多数(過半数)を占めるに至つたときに限り、当該裁判官は罷面されるものとしているのであるから、積極的に罷免を可とする旨の投票以外の投票は、これを罷免投票の数に算入しない趣旨であること明らかであり、従つて、必ずしも罷免投票と積極的な信任投票を要求しているものと解さなければならないものではない。最高裁判所裁判官国民審査法は、右憲法の趣旨に反するものではないから、違憲ではない。

第4 最高裁昭和47年7月20日判決(全員一致)
1 最高裁判所の裁判官は、天皇または内閣によつて任命されるものであつて、その任命行為によつて任命が完了すること、憲法七九条による国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度と見ることのできるものであること(昭和二四年(オ)第三三二号同二七年二月二〇日大法廷判決・民集六巻二号一二二頁)、そして、国民審査において投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、解除条件の成就により当該裁判官の任命が失効すると解すべきでないこと(昭和三九年(行ツ)第一〇七号同四〇年九月一〇日第二小法廷判決・裁判集民事八〇号二七五頁)は、すでに当裁判所の判例とするところである。
 論旨は、任命自体の審査と任命後の解職とを峻別したうえ、憲法七九条による国民審査は、任命自体について行なわれなければならない旨を強調するけれども、「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付」されるのであつて(憲法七九条二項)、この任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもつものということもでき、右の審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら、所論のように、最高裁判所の裁判官の任命に国民の意思を反映せしめるという趣旨が失われることにはならない。

2 原判決は、本件において、衆議院議員選挙の投票所と国民審査の投票所との入口および出口が同一で、しかも一カ所ずつしか設けられていなかつたとはいえ、選挙の投票をした者が、(一)審査の投票をしないで場外に出ることを妨げられるような強制措置が講ぜられた事実、(二)審査の投票用紙の受領を強制された事実、(三)審査の投票用紙を投票函に投入することを強制された事実は、なんら認められないとするのである。
 しかる以上、本件審査において、身体の自由、表現の自由の侵犯はないとした原判決は相当である。

3 原判決は、投票用紙に連記された裁判官の一部につき審査人が棄権しようとするときは、投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に棄権の意思を表示し、あるいはその氏名を抹消する等して投票することにより、棄権することが認められる旨を判示するが、かかる解釈をとることは、最高裁判所裁判官国民審査法二二条一項の規定に照らして困難であり、原判決の判断は、この点において違法たるを免れない。
 しかしながら、投票用紙に連記された裁判官数名のうち、その一部についてのみ×印の投票をしようとする者が、その他の裁判官については当然白票(積極的に罷免を可とするものでない投票)を投ずるの止むなきに至つたとしても、なんら憲法の保障する自由を侵害するものでないことは、当裁判所の判例とするところ(前記大法廷判決参照)であつて、原判決は、その結論において相当である。

4 罷免を可とする積極的な意思を有する×印の投票以外のものを、すべて「罷免を可としない投票」として取り扱うことが、なんら所論憲法一九条、二一条に反するものでないことは、当裁判所の判例とするところである(前記大法廷判決参照)。
 また、本件審査が身体の自由を侵害した旨の論旨の理由のないことは、第二点につき説示したとおりである。

第5 最高裁昭和47年7月25日判決(全員一致)
1 最高裁判所の裁判官は、天皇または内閣によつて任命されるものであつて、その任命行為によつて任命が完了すること、憲法七九条による国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であること、そして、国民審査において投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、解除条件の成就により当該裁判官の任命が失効する旨の所論の採用し難いことは、すでに当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(オ)第三三二号同二七年二月二〇日大法廷判決・民集六巻二号一二二頁昭和三九年(行ツ)第一〇七号同四〇年九月一〇日第二小法廷判決・裁判集民事八〇号二七五頁)。
 論旨は、任命自体の審査と任命後の解職とを峻別したうえ、憲法七九条による国民審査は、任命自体について行なわれなければならない旨を強調するけれども、「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付」されるのであつて(憲法七九条二項)、この任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもつものということもでき、右の審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら、所論のように、最高裁判所の裁判官の任命に国民の意思を反映させるという趣旨が失われることにはならない。

2 所論のような投票所の施設は、むしろ投票人の便宜のためのものにすぎない。そして、具体的に本件において、衆議院議員選挙の投票をした者が、(一)国民審査の投票をしないで場外に出ることを妨げるような強制措置が講ぜられたとか、(二)審査の投票用紙の受領を強制されたとか、(三)審査の投票用紙を投票箱に投入することを強制されたとかの事実は、なんら上告人らの原審において主張せず、したがつてまた原審の確定しないところであり、選挙の投票をした者が審査の投票所を通過することになつていたからといつて、出頭を強制されたことにならないことは、いうまでもないところである。

3 審査の投票用紙に連記された裁判官数名のうち、その一部についてのみ×印の投票をしようとする者が、その他の裁判官については当然白票(積極的に罷免を可とするものでない投票)を投ずるの止むなきに至つたとしても、なんら憲法の保障する自由を侵害するものでないことは、当裁判所の判例とするところであつて(前記大法廷判決参照)、原判決理由二の(三)の判示は相当である。

4 罷免を可とする積極的な意思を有する×印の投票以外のものを、すべて「罷免を可としない投票」として取り扱うことが、なんら所論憲法一九条、二一条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであり(前記大法廷判決参照)、本件審査が同法一三条に違反する旨の論旨がその前提を欠くことは、第二点につき説示したところからしても明らかである。

第6 最高裁平成31年3月12日判決(全員一致)
1 国民審査法36条の審査無効訴訟は,行政事件訴訟法5条に定める民衆訴訟として,法律に定める場合において法律に定める者に限り提起することができるものであるところ(同法42条),国民審査法37条1項は上記の審査無効訴訟において主張し得る審査無効の原因を「この法律又はこれに基いて発する命令に違反することがあるとき」と規定している。
これは,主として審査に関する事務の任にある機関が審査の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき又は直接そのような明文の規定は存在しないが憲法において定められた最高裁判所裁判官の解職の制度である国民審査制度の基本理念が著しく阻害されるときを指すものと解されるところ,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている本件規定が違憲である旨の主張が,上記のような無効原因に当たることをいうものとはいえない。
2 以上によれば,国民審査法36条の審査無効訴訟において,審査人が,同法37条1項所定の審査無効の原因として,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている本件規定の違憲を主張し得るものとはいえない。
論旨は採用することができず,所論はその前提を欠くものといわざるを得ない。

最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会,及び最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等

目次
第1 最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会
1 設立時の経緯
2 裁判官任命諮問委員会の廃止
第2 昭和22年6月5日の片山内閣談話
第3 最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等
1 昭和30年代の動き
2 昭和50年代の動き
3 日弁連作成の法律案
4 最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案に関する参考人の発言
5 宮川光治弁護士(平成20年9月3日から平成24年2月27日までの最高裁判所判事)の,自由と正義2013年6月号23頁における記載
第4 関連記事その他

第1 最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会
1 設立時の経緯
(1) 裁判官任命諮問委員会(制定時の裁判所法39条4項及び5項のほか,裁判官任命諮問委員会規程(昭和22年6月17日政令第83号))は,昭和22年7月28日,最高裁判所の裁判官候補者として30名を答申し,昭和22年8月4日,その中の15人が最高裁判所裁判官に任命されました。
(2) 裁判官任命諮問委員会の構成は,衆議院議長1人,参議院議長1人,全国の裁判官から互選された者4人,全国の検察官等から互選された検察官1人,全国の弁護士から互選された弁護士4人,法律学教授2人,学識経験者2人の合計15人でした(裁判官任命諮問委員会規程3条)。
(3)ア 裁判官からの立候補者は6人であったところ,全国の裁判官から互選された者4人は昭和22年7月10日の投票及び同月18日の開票に基づくものです。
イ 投票直前の同月7日,坂野千里 東京高裁長官代行(元東京控訴院長)が諮問委員を辞退するというニセ電報が東京高裁管内の全地裁及び7高裁に打たれたため,坂野千里が落選するという,ニセ電報事件が発生しました。
 その結果,細野長良 最高裁判所長官代行(最後の大審院長)を支持する細野派は裁判官任命諮問委員会に入ることができなくなり,細野長良は,最高裁判所が発足した昭和22年8月4日に辞職しました。
(4)ア 昭和22年5月3日から同年8月4日に最高裁判所裁判官が任命されるまでの間,大審院長及び大審院判事が最高裁判所裁判官の職務を代行していました(憲法103条,裁判所法施行法7条・裁判所法施行令12条1項)。
イ 裁判所法施行前から大審院に係属していた事件は東京高裁に係属することとなりました(裁判所法施行令1条1項)。
(5) 「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)188頁ないし205頁に詳しい経緯が書いてありますところ,鈴木義男司法大臣の回想文を引用した204頁及び205頁には以下の記載があります。
 (山中注:15人の最高裁判所裁判官の出身者の色分け)は別にそういう方針で選定したものではなく、人物本位に選んだ結果偶然こういう比率になったに過ぎない。私共の意思としては、将来一人二人の欠員ができた場合、時の内閣は、常に、国家的に見て最適任者を選択任命するように有りたいと念願するものである。
2 裁判官任命諮問委員会の廃止
(1) 裁判官任命諮問委員会は,昭和23年1月1日,裁判所法の一部を改正する法律(昭和23年1月1日法律第1号)により廃止されました。
(2) 昭和46年2月9日の衆議院予算委員会において準備された法務省の想定問答には以下の記載があったみたいです(内閣法施局の執務参考資料集8・942頁及び943頁)。
  内閣としては、民主国家における裁判官の地位を十分に尊重し、最高裁判所の裁判官の氏名又は任命については、つねに公正な人選を行うよう努力してきたが、今後ともいっそうの努力を傾けたい所存である。
  お尋ねの最高裁判所の裁判官についての裁判官任命諮問委員会の制度は、最高裁判所発足当時一度設けられたが、間もなく廃止された。その理由は、裁判官任命諮問委員会の運用の実績に徴すると、この制度の運用は、形式的に流れ、しかも最高裁判所裁判官の氏名又は任命についての責任の所在を不明確にするおそれがあるという点にあり、その後は、これらの指名及び任命をいっさい内閣の責任において行なうとの建前が明確にされた。したがって、かような制度を再び設ける必要はないと考える。

第2 昭和22年6月5日の片山内閣談話
・ 「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)198頁及び199頁によれば,裁判官任命諮問委員会設置に当たっての,昭和22年6月5日の片山内閣談話(鈴木義男司法大臣が起案したもの)は以下のようなものでした(文中にある「休戚」(きゅうせき)は,「喜びと悲しみ」という意味です。)。
  新憲法は最高裁判所に法令審査権をも含む広範にして最高の裁判権を与え、これを憲法の番人たる地位に置き、全下級裁判所をひきいて、国民の権利・自由を確保する神聖なる使命を全うさせようとしている。よき最高裁判所の構成こそは真に国家百年の大計である。従ってその構成は、各界の最高権威者を網羅することを期待している故、この最高裁判所の裁判官の選定は単に一内閣の仕事でなくて、国家的大事業であり、国民の休戚に関すること国会における総理大臣の選定に優るとも劣らない。政府はこの神聖なる事業が公正にして明朗に行われることを期待(する)。(中略)
    国民はこの選定がいかに行われるかについて深い関心をもって見まもり、適切な批判を怠ってはならない。

第3 最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等
1 昭和30年代の動き
(1) 昭和32年に国会に提出された裁判所法等の一部を改正する法律案(第26回国会閣法第89号)では,最高裁判所長官の指名及び最高裁判所判事の任命については,裁判官任命諮問審議会(内閣の諮問機関:裁判官,検察官,弁護士及び学識経験者から構成)への諮問を経て行うとされていました。
  同法案は第28回国会まで継続審査されたものの,昭和33年4月25日の衆議院の解散(通称は話し合い解散)により廃案となりました。
イ 改正理由は,内閣が最高裁判所長官の指名又は最高裁判所判事の任命を行うに際し,その人選について一層慎重を期するようにする必要があるとのことでした。
(2) 昭和32年の改正法案の内容は,衆議院HPの「「裁判所法の一部を改正する法律案」(第26回国会 内閣提出第89号)(昭和32年)の主な内容」が非常に参考になります。
2 昭和50年代の動き
(1) 昭和50年代に4回,最高裁判官裁判官任命諮問委員会設置法案が国会に提出されたものの,成立に至りませんでした(首相官邸HPの「過去に提出された最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案の概略」参照)。
(2)   これらの法案では,候補者の氏名も含めて,委員会の答申内容は公表することが予定されていました。
3 日弁連作成の法律案
  日弁連は,平成15年6月20日,最高裁判所裁判官任命諮問委員会の設置を求める意見書を公表し,最高裁判所裁判官任命諮問委員会の設置に関する法律案3条4項では,「委員会は,答申に際し,答申の趣旨及び理由を公表しなければならない。」と規定されていたものの,同法律案の提出に至りませんでした。
4 最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案に関する参考人の発言
  最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案に関する参考人として招致された,天野憲治弁護士は,昭和50年6月12日の参議院法務委員会において以下の意見を述べています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① ただいま御指名を受けました弁護士の天野でございます。佐々木、安永両議員の発議にかかる最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案につきまして、日本弁護士連合会を代表いたしまして、参考人として意見を述べさせていただきます。
  まず、結論を申し上げますと、この法案には全面的に賛成いたします。かかる法案が議員立法案として今国会に提出されましたことにつきまして、日弁連といたしまして提案者に対し深く感謝いたしますとともに、本法案が速やかに審議、可決されますことを心から念願している次第であります。
(中略)

②   最高裁判所の裁判官の指名と任命に当たり諮問委員会を設置すべきだという要望は、いま日弁連等において叫ばれている司法の独立の危機問題が発生する以前から、これは制度上の問題として論議されてきたものでありますことは、先ほど申し上げましたとおりでございます。
  諸外国の立法例を見ましても、最高裁の裁判官の指名ないし任命が内閣の専権にゆだねられているというような国は、私は浅学でありますが、ほとんど見受けられないのであります。少なくとも民主主義国家と言われる諸外国におきましては、最高裁判所の裁判官を任命する場合には、任命権者の独断と恣意を抑え、任命権者と被任命権者、任命される者との政治的、思想的結合を排除するために、また、任命された者の任命した者に対する個人的心理的傾斜を防止するために、任命権の行使に対する民主的なチェックが行われるようにきわめて慎重な手続的保障が制度化されております。
  ところが、わが国の場合にはそのような手続上の保障が全くないのでありまして、これは法の不備であり欠陥であると考えられます。
(中略)

③   悪いことに、現行制度のもとにおきましては、国民は最高裁判所の裁判官の指名あるいは任命されたその経過、事情について、全く知るすべを持たないのであります。
  したがって、国民がその裁判官の任命の適否について何か色目で見た、疑惑を抱いたといっても、その国民をいたずらに非難することは当たらないのであります。
  国民がその指名あるいは任命の適否について疑惑を抱いたことの当否は、ともかくとします。その疑惑は間違った疑惑かもしれません。
 その当否はともかくといたしまして、いやしくも国民があるいはその一部がその指名または任命に対して疑惑を持っている以上、その裁判官の裁判についてこれを色目で見るのもやむを得ないところでありますし、裁判の権威が失墜されるという結果が招来されるおそれが多分にあります。
(中略)
④ それから、その次に問題になりまするのは答申の点でございまするが、これは国民審査が現在十分機能を発揮しないのは、任命の事情が国民に全然わからないというためだと思います。
 もちろんその制度自体の不備もございまするけれども、根本的な理由は、任命事情が国民に全然わからない。
  片山内閣のときは答申をした場合に氏名だけを公表するということになっておりますが、それでは任命事情がよくわからぬので、このたびの諮問委員会におきましては、答申をしたその理由を国民が納得できるように公表するということにすれば国民審査が自主的に機能を発揮するのではないかということで、答申の理由を公表するということにしたわけでございます。
 こういうことにすることによって、任命制度とそのうらはらになる国民審査とが有機的に一体な制度として機能を発揮できるということでこういう制度を考えたわけでございまするが、そのとおり本法案にも入っておりまするので、この点は、松本先生はどうも御反対のようでございまするけれども、一つの重要な意義がある規定だと思っております。
5 宮川光治弁護士(平成20年9月3日から平成24年2月27日までの最高裁判所判事)の,自由と正義2013年6月号23頁における記載
  最高裁誕生時における任命諮問委員会の委員の人選に関しては「醜い政治的動き」があり,判事人選の結果も問題がないではなかったことはすでに歴史家が明らかにしている。委員会構想に限らず,任命過程が政治的色彩を帯びる危険を回避できる制度改革案はなかなか見い出しにくい。

第4 関連記事その他
1 裁判官任命諮問委員会に関する経緯は,首相官邸HPの「第36回司法制度改革審議会文書3「裁判官任命諮問委員会について(審議会事務局)」」が非常に参考になります。
 昭和22年7月28日付で最高裁判所の裁判官候補者とされた30名の氏名も載っています。
2 以下の資料を掲載しています。
・ 最高裁判所の裁判官の任命のための裁判官任命諮問委員会等に関する資料
3 以下の記事も参照してください。
 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 日弁連推薦以外の弁護士が最高裁判所判事に就任した事例

最高裁判所裁判官国民審査に関する内閣の答弁書

1 平成21年2月17日付の,衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官に対する国民審査に関する質問に対する答弁書は以下のとおりです。
一について
   総務省においては、従来より、衆議院議員総選挙に際し、最高裁判所裁判官国民審査(以下「国民審査」という。)の投票方法のほか、その意義、目的等についても、啓発用パンフレット、ホームページなどの広報媒体を活用した啓発を行い、制度の周知徹底に努めているところである。
二について
   お尋ねについては、国民審査のための国民の判断材料の一つとして、最高裁判所裁判官国民審査法(昭和二十二年法律第百三十六号)第五十三条の規定に基づき、審査に付される裁判官の氏名、生年月日及び経歴並びに最高裁判所において関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項を掲載した審査公報が、都道府県の選挙管理委員会から国民審査ごとに発行されているところである。
三について
   お尋ねについては、二についてで述べた審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされることにより、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切に判断されているものと考えている。
四について
   審査公報には二についてで述べた事項が掲載されることとなっているが、これに加えて御指摘のような「それぞれの「最高裁裁判官」の経歴や過去の業績」等を御指摘のような方法により重ねて都道府県の選挙管理委員会等が示すことについては、これによりどの程度の費用対効果が期待されるのか、また、衆議院議員総選挙の選挙運動と同時期に実施されることにより国民に混乱を生じさせないか等の観点から、慎重に検討する必要があると考えている。

2 平成21年2月27月付の, 衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官に対する国民審査に関する再質問に対する答弁書は以下のとおりです。
一について
最高裁判所裁判官国民審査(以下「国民審査」という。)については、従来より、衆議院議員総選挙と併せ、その啓発を行ってきたところであり、国民にも広く認識されているものと考えている。
二について
お尋ねについては、例えば、第二十回国民審査における審査公報では、国民審査に付される裁判官の信条、心構え、趣味などが掲載されている。
三について
国民審査は、内閣の意思に基づき、既に天皇又は内閣によって任命された最高裁判所裁判官を罷免すべきか否かを国民が決定する制度であるから、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて国民が判断するに当たっては、都道府県の選挙管理委員会が発行する審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされるものと考えている。
なお、このようなことから、審査公報をもって「果たしてどれだけの国民が、右答弁にある様に「最高裁裁判官」がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切な判断を下せているか」について把握することは困難である。
四について
第二十回国民審査における審査公報発行費の決算額は、四億四千八百十七万六千五百二十三円である。
五について
審査公報は、これまで国民審査ごとに発行されているところであり、国民審査のための国民の判断材料の一つとして定着し、活用されているものと考えている。
六について
国民審査については、都道府県の選挙管理委員会が発行する審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされることにより、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切に判断されているものと考えていることから、総務省として御指摘について具体的な検討を行ったことはない。
七について
先の答弁書(平成二十一年二月十七日内閣衆質一七一第一〇六号)四についてでお答えしたとおりである。

3 平成21年3月13日付の,衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官に対する国民審査に関する第三回質問に対する答弁書は以下のとおりです。

一及び三について
最高裁判所裁判官国民審査(以下「国民審査」という。)については、都道府県の選挙管理委員会が発行する審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされることにより、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切に判断されているものと考えている。
このようなことから、現時点において、総務省として、御指摘の「経歴放送等の方法により、より国民に「最高裁裁判官」についての情報を提供すること」について具体的な検討を行うことは考えていない。
二について
国民審査については、従来より、その意義、目的等についても啓発を行ってきたところであり、その趣旨は国民にも広く認識されているものと考えており、「現行の「国民審査」は形骸化したものでしかないのではないか」との御指摘は当たらないものと考えている。

最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等

目次
第1 最高裁判所長官室等の写真は不開示情報に当たること
第2 最高裁判所事務総局の局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと
第3 国家機関としての最高裁判所自体が侵入・襲撃の対象となるおそれが高いこと
第4 インターネットその他を通じて,誰でも入手できる情報
第5 最高裁判所庁舎内で発生した襲撃事件は確認できないこと等
第6 暗殺された日本の首相又は元首相の一覧(現職3人・元首相4人)(令和4年7月9日追加)
1 伊藤博文(初代首相)
2 原敬(第19代首相)
3 濱口雄幸(第27代首相)
4 犬養毅(第29代首相)
5 高橋是清(第20代首相)
6 斎藤実(第30代首相)
7 安倍晋三(第90代,及び第96代ないし第98代首相)
第7 安倍元首相暗殺事件に関するメモ書き(令和4年7月10日追加)
1 銃撃直後の救命措置の状況
2 心肺停止及びAED
3 救急救命士
4 死の三徴候及び法的脳死判定
5 銃創及び血胸
6 安倍元首相の死因等
第8 日本は安全な国であるという,安倍晋三内閣総理大臣の答弁(令和4年7月10日追加)
第9 日本国憲法下で暗殺された現職国会議員,及び長崎市長射殺事件(令和4年7月10日追加)
第10 暗殺されたアメリカの現職大統領4人(令和4年7月10日追加)
1 エイブラハム・リンカーン大統領
2 ジェームズ・ガーフィールド大統領
3 ウィリアム・マッキンリー大統領
4 ジョン・F・ケネディ大統領
第11 法廷秩序の維持と,市民会館の使用許可基準
第12 関連記事その他

第1 最高裁判所長官室等の写真は不開示情報に当たること
1 「最高裁判所長官室の写真」,「最高裁判所判事室の写真」及び「最高裁判所首席調査官室の写真」は不開示情報に当たるとした,平成29年度(最情)答申第27号(平成29年8月7日答申)には以下の記載があります(改行及びナンバリングを追加しました。)。
① 本件各対象文書を見分した結果によれば,本件各対象文書は,最高裁判所庁舎の耐震改修工事について施工業者が作成した報告書の抜粋であり,本件不開示部分のうち個人の氏名及び押印部分は,施工業者の現場代理人の氏名及び押印であること,その余の部分は,最高裁判所長官室,最高裁判所判事室及び最高裁判所首席調査官室の写真並びにその撮影場所であることが認められる。
② まず,本件不開示部分のうち個人の氏名及び押印部分につき検討すると,その記載内容からすれば,上記部分は法5条1号に規定する個人識別情報と認められ,同号イからハまでに相当する事情は認められない。
③ また,本件不開示部分のうちその余の部分については,その記載等の内容からすれば,上記部分を公にすると,最高裁判所長官室,最高裁判所判事室及び最高裁判所首席調査官室の位置及び構造が明らかになるものと認められる。
   そうすると,最高裁判所長官及び最高裁判所判事は,裁判所の業務に係る意思決定において極めて重要な役割を担っており,最高裁判所首席調査官は,最高裁判所の裁判所調査官の事務を総括していることから,いずれも襲撃の対象となるおそれが高く,上記各室は極めて高度なセキュリティが要請されるという最高裁判所事務総長の上記説明が不合理とはいえず,上記部分を公にすることにより,庁舎管理事務及び警備事務に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
   この点について,苦情申出人は,日本女性法律家協会のホームページに掲載された写真を挙げて,最高裁判所判事室の写真が公表されたと主張するが,当該ホームページに掲載されている写真は,最高裁判所判事を被写体とし,背景として最高裁判所判事室のごく一部が写っているにすぎないものであるから,本件の結論には影響しない。
④ したがって,本件不開示部分は,法5条1号及び6号に規定する不開示情報に相当する。
2 平成28年度(最情)答申第48号(平成29年3月17日答申)には以下の記載があります。
   最高裁判所の庁舎は,その多くの部分が一般の来庁者の出入りが想定されていない建物であり,入構するには原則として許可が必要であることや,内部に最高裁判所判事室や事務総局の中枢部分などがあることからすると,全体として高度なセキュリティの確保が要請されており,庁舎の部屋の配置等を公にすることにより,全体として警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする上記説明は合理的である。また,事件当事者や傍聴人,見学者等の来庁者の出入りが予想され,一般に公開されていると評価できる部分については警備事務等の支障がないとする説明も合理的である。


第2 最高裁判所事務総局の局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと
・ 令和元年6月13日付の理由説明書には以下の記載があります。
   最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。そのため,最高裁判所では,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止している。
   この点,本件対象文書中,原判断において不開示とした部分は,各門における入構方法に関する具体的な運用が記載されており, この情報を公にすると警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるから, 当該部分は,行政機関情報公開法第5条第6号に定める不開示情報に相当する。
   よって,原判断は相当である。


第3 国家機関としての最高裁判所自体が侵入・襲撃の対象となるおそれが高いこと
・ 大阪地裁令和2年6月4日判決(裁判長は48期の松永栄治裁判官。判例秘書に掲載)は,以下の判示をしています。
   最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として,裁判事務及び司法行政事務を行う重要な国家機関であり,最高裁判所の裁判官や事務総局の各局課長が,裁判所の重大な職務を担う要人として襲撃の対象となるおそれが高いといえるだけでなく,国家機関としての最高裁判所自体が侵入・襲撃の対象となるおそれも高いということができる。そうすると,庁舎全体に極めて高度なセキュリティが確保される必要があることは明らかである。
   そして,上記のとおりの本件不開示情報(山中注:昭和40年代後半に作成された,最高裁判所庁舎の建設工事発注図面の不開示情報のこと。)の内容からすると,本件不開示情報が公にされた場合には,裁判事務や司法行政事務の妨害・混乱等を企てる者や,国家の存立を脅かそうとする者等が,外部から庁舎への出入口や各室の配置,各室への進入路,建物全体の構造等についての正確な情報を知ることとなり,これらの情報に基づき,庁舎内に侵入したり,庁舎内の要人等を襲撃したりするための最適な場所・方法等を検討・計画することが可能又は容易になるということができる。
   そうすると,本件不開示情報を公にした場合,不法な侵入・破壊を招くなど,犯罪を誘発し,又は犯罪の実行を容易にし,公共の安全を害するおそれがあると認めた国土交通大臣の判断が合理性を持つものとして許容される限度を超えたものということはできず,その判断には相当の理由があるから,本件不開示情報は,情報公開法5条4号所定の不開示情報(公共の安全等に関する情報)に該当するものというべきである。


第4 インターネットその他を通じて,誰でも入手できる情報
1 東弁リブラ2016年12月号「前最高裁判事に訊く-山浦善樹会員」には,以下の記載があります(改行及びナンバリングを追加しました。)。現職の最高裁判所判事が夜に自分の法律事務所に行って黙々と後片付けの作業をしていたそうです。
①   平成24年1月の閣議で就任が決まり,法律事務所は「閉鎖」と決まりました。それからが大変でした。弁護士登録取消・事務所閉鎖ですから,事務員の解雇,事務所の契約解約,備品の廃棄,内装など原状回復工事,敷金返還交渉も全部ひとりでやりました。
   書籍の一部は判事室に持ち込みましたが,ほかは蔵書印があったので古書にも出せず(最高裁判事の古書と特定できるので),一部はロースクールの学生に,残りは破棄です。3月に就任して,昼は最高裁判事として仕事をし,夜は事務所に行き黙々と作業をし(笑),5月連休前にやっと片付きました。
② なかでも大変だったのは,依頼者に対するお詫びと事件の引継ぎでした。突然,私の都合で辞めるので,これは債務不履行で,ひたすらお詫びしました。
   ほとんどの依頼者は祝福してくれましたが,新聞報道から40日以内に廃業・事務所閉鎖という急な話で,迷惑をかけたことも事実です。そこで,何人かの知り合いの弁護士を紹介して引き継ぎました。
 訴訟事件は約30 件あったので,弁護士を紹介するため1日に2,3人の割合であちこちの法律事務所に連れて行きました。保管中の遺言も多数あり,これも遺言者に返しました。
   ……いまから思うと,40日の間に,弁護士としての自分と山浦法律事務所の葬儀(笑)を,一人でやったような按配でした。

2 東弁リブラ2008年12月号「前 最高裁判所判事 才口千晴 会員」には,以下の記載があります。
   判事室の広さは,21 坪(42 畳),皇居が一望できる閑静な居住まいで,秘書官と事務官の2 人が様々なバックアップをしてくれますので,居心地はよろしいのですが,毎日ここで大量の記録と格闘するのですから大変です。
3 昭和62年5月3日放送のNHK特集「最高裁判所」では,最高裁判所の建物内部が放送されました放送ライブラリーHP「NHK特集 最高裁判所」参照)ところ,令和元年5月現在,横浜地裁の向かい側にある横浜情報文化センター8階の放送ライブラリー視聴ホールにおいてこの番組を視聴できます。
4 平成30年9月15日放送の「美の巨人たち」は,『『最高裁判所』石の鎧を纏った司法の頂点!隠された魅力と美しさ』というものでした。



第5 最高裁判所庁舎内で発生した襲撃事件は確認できないこと等
1 Wikipediaには以下の襲撃事件に関する記事が載っています。
・ 高崎区裁判所襲撃事件(大正12年発生)
・ 東京高裁長官室乱入事件(昭和49年10月29日発生)
・ 東京高裁判事襲撃事件(昭和51年9月17日発生)
・ 大阪地裁所長襲撃事件(平成16年2月16日発生)
→ 被害者は,20期の鳥越健治大阪地裁所長でした。
2 裁判官に対する襲撃事件ではありませんが,昭和27年5月13日の勾留理由開示公判において,広島地裁被疑者奪回事件が発生しました。
3 平成30年10月10日,58期の井出正弘東京地裁11民判事は,裁判所内の男子トイレで手を洗っていた際,背後から杖で後頭部を殴られました(ニコニコニュースの「男装して杖で裁判官を襲撃 アラフォーオバサンの犯行動機」(2018年10月29日付)参照)。
4 以上のとおり下級裁判所の裁判官に対する襲撃事件はありますが,最高裁判所庁舎内で発生した襲撃事件は確認できません。
5(1) 「司法権独立の歴史的考察」18頁及び19頁には,戦前に裁判官をしていた人の回想として以下の記載が引用されています。
    私が裁判官を勤めていた昭和六年頃から終戦の頃迄、我国の司法部はかなり矛盾を含んでいたように思う。例えば時の司法部内には所謂司法省閥なるものがはびこっていた。本省畑の司法行政官が重ぜられ、現業の裁判官は軽ぜられた。(中略)当時の司法部においては、本省の司法行政官が、常に必らず現業判事の上位に天降るのを例とした。司法部の人事は全く司法行政官主流派の掌中に在り、而も裁判官の精神とか識見とか手腕と云うものは重視されず、寧ろ行政官として優れている人、或いは上司に受けのよい人が判事としても出世すると云うような傾向にあった。
(2) 裁判所法逐条解説上巻168頁には以下の記載があります。
    官僚機構は、行政上の監督権者を非常に重視し、その地位を高くすることに特色をもっている。しかし、このことは、裁判所のようなところでは、もっとも望ましくないことである。わが国のように、旧憲法下ながく裁判官が官僚機構のなかに組み入れられていたところでは、とかく官僚一般に共通な右の思想が知らず知らずの間に裁判官の間にも流れ込んでくる危険があり、旧制度の下では、その弊害が特に著しかったといえよう。それは、行政を行う者の地位を裁判事務のみを行う者のそれよりも高いと考え、ひいては行政重視裁判軽視の傾向を生みかねない。その意味で、司法行政権を所長等の特定の裁判官に一任せず、裁判官会議にこれを与えたことは、裁判所における官僚制を打破する上において画期的な変革であったといえる。裁判所における官僚制の打破がきわめて望ましい要請である以上、司法行政専任の裁判官を認めることは、あくまで避けなければならない。


第6 暗殺された日本の首相又は元首相の一覧(現職3人・元首相4人)
1 伊藤博文(初代首相)
・ 伊藤博文枢密院議長(元首相)は,1909年10月26日午前9時半頃,中国黒竜江省のハルビン駅において,群衆を装って近づいた安重根(あんじゅうこん)によりピストルで暗殺されました。
・ 伊藤博文は3発の銃弾を受け,次第に衰弱して昏睡状態に陥り,約30分後に死亡しました。
・ ハルビン駅は清国においてロシア帝国が管理していた駅であり,加害者は大韓帝国の独立運動家であり,被害者は日本人でした。
・ 安重根に対しては,旅順にあった関東都督府地方法院において1910年2月7日に第1回公判があり,同月14日に死刑判決が出て,1911年2月19日に控訴の取下げにより死刑判決が確定し,伊藤博文の月命日である同年3月26日に死刑判決が執行されました。
・ 関東都督府地方法院明治43年2月14日判決には以下の記載があるのであって,伊藤博文に対する殺人罪及び3人に対する殺人未遂罪により死刑判決となりました。
案スルニ被吿安重根ノ伊藤公󠄃爵󠄄ヲ殺害󠄆シタル所󠄃爲ハ帝國刑法第百九十九條ニ人ヲ殺シタル者ハ死刑又󠄂ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ處ストアルニ該當シ其川上總領事森祕書官田中理事ヲ殺害󠄆セントシテ目的ヲ遂󠄅ケサリシ各所󠄃爲ハ同法第四十三條第四十四條第百九十九條第二百三條第六十八條ニ該當シ即四個ノ殺人罪ノ併合シタルモノトス然ルニ其中被吿カ伊藤公󠄃爵󠄄ヲ殺害󠄆シタル行爲タルヤ其決意󠄃私憤ニ由ルモノニアラスト雖モ深謀熟慮ニ出テ且ツ嚴肅ナル警護ヲ犯シ全󠄃都知名ノ人士ノ集合セル塲所󠄃ニ於テ敢行シタルモノナレハ之ニ殺人罪ノ極刑ヲ科スルヲ以テ至當ナリト認󠄃メ此所󠄃爲ニ依リ被吿安重根ヲ死刑ニ處スヘキモノトス
2 原敬(第19代首相)
・ 原敬 首相は,1921年11月4日午後7時25分頃,東京駅において,群衆の中から突進してきた中岡艮一(なかおかこんいち)鉄道員により短刀で暗殺されました。
・ 原敬は,突き刺された傷が右肺から心臓に達していたため,ほぼ即死状態でした。
・ 中岡艮一に対しては,1922年1月20日に第1回公判があり,同年6月12日に東京地裁で無期懲役判決が出て,同年10月26日に東京控訴院で控訴棄却判決が出て(ヤフー知恵袋のベストアンサー参照),3回の恩赦により1934年に出獄しました(「戦前の勅令恩赦及び特別基準恩赦」参照)。
3 濱口雄幸(第27代首相)
・ 濱口雄幸 首相は,1930年11月14日午前8時58分頃,東京駅において,特急「燕」に乗るためにホームを移動中に,佐郷屋留雄(さごうやとめお)により約7尺(2.1m)の距離からピストルで狙撃されました。
・ 濱口雄幸は,下腹部に1発の銃弾を受けた後に東京帝国大学医学部附属病院に搬送され,同病院において腸の30%を摘出する手術を受けて一命をとりとめ,1931年1月21日に退院したものの,同年8月26日にアクチノミコーゼ(放線菌症)のために死亡しました。
・ 佐郷屋留雄に対しては,1932年4月22日に東京地裁で殺人罪により死刑判決が出て,1933年2月28日に東京控訴院第3刑事部で殺人未遂罪により死刑判決が出て,同年11月6日に大審院第1刑事部で上告棄却判決が出て,1934年2月11日の恩赦(皇太子殿下(明仁親王)ご誕生によるもの)により無期懲役に減刑されて(「戦前の勅令恩赦及び特別基準恩赦」参照),1940年に仮出所しました。
4 犬養毅(第29代首相)
・ 犬養毅 首相は,1932年5月15日午後5時半頃に首相官邸を襲撃した青年将校7人によりピストルで暗殺されました。
・ 犬養毅は,3発の銃弾を受けた直後は息があったものの,次第に衰弱して午後9時過ぎに様態が急変し,午後11時26分に死亡しました。
・ 海軍の軍法会議では,主犯格の古賀中尉ら3人に死刑が求刑されたものの、判決では禁錮15~13年になるなど、刑が大幅に軽減されたみたいです(テンミニッツTVの「五・一五事件…青年将校を死刑にしなかったのは最大の失敗」参照)。
5 高橋是清(第20代首相)
・ 高橋是清大蔵大臣(元首相)は,1936年2月26日午前5時5分頃に自宅を襲撃してきた陸軍青年将校によりピストルで胸を6発打たれた後,軍刀でとどめを刺されて死亡しました。
・ 2・26事件では,反乱罪(首魁)については死刑となり,反乱罪(群衆指揮等)については死刑又は無期禁錮となりました。
6 斎藤実(第30代首相)
・ 斎藤実内大臣・海軍大将(元首相)は,1936年2月26日午前5時5分頃に自宅を襲撃してきた陸軍青年将校により,47箇所の弾痕,数十の刀傷を受けて死亡しました。
・ 2・26事件では,反乱罪(首魁)については死刑となり,反乱罪(群衆指揮等)については死刑又は無期禁錮となりました。
7 安倍晋三(第90代,及び第96代ないし第98代首相)
・ 安倍晋三 元首相は,2022年7月8日午前11時31分頃,奈良市内の近畿日本鉄道大和西大寺駅付近において,山上徹也により手製の銃(長さ約40cm,高さ約20cm)で首と左胸部を打たれて心肺停止状態となり,同日午後0時20分,ドクターヘリによって奈良県立医科大学附属病院に搬送され,午後5時3分に出血による死亡が確認されました。
・ 警察庁HPに「令和4年7月8日に奈良市内において実施された安倍晋三元内閣総理大臣に係る警護についての検証及び警護の見直しに関する報告書」(令和4年8月25日発表)が載っています。


第7 安倍元首相暗殺事件に関するメモ書き
1 銃撃直後の救命措置の状況
(1) 「【映像】演説中に安倍元総理が銃撃される 2発の発砲音と銃撃男の取り押さえ(2022年7月8日)」と題するYouTube動画では,10秒時点で1発目の銃撃があり,13秒時点で2発目の銃撃があり,56秒時点,遅くとも1分28秒時点で心臓マッサージ(胸骨圧迫)をしているように見えます。
(2) 応急手当で必要なのは,①119番通報とAEDの要請,②心臓マッサージ(胸骨圧迫)及び③AEDによる電気ショックです。そして,AEDについては右胸の上部(鎖骨の下)及び左胸の下部(脇の下5~8cm)に,皮膚に密着するように電極パッドを貼ります(日本心臓財団HPの「AEDを使った救命の仕方」参照)。
(3)ア 心停止というのは心臓が停止することであり,肺停止というのは呼吸が停止することでありますところ,いずれかが発生した場合,すぐに残りも発生して心肺停止となります。
イ 心肺停止(CPA)というのは,心臓及び呼吸が停止していることであり,胸骨圧迫及び人工呼吸による心肺蘇生法(CPR)は脳への酸素供給を維持するために行いますところ,日本循環器学会HPの「心肺蘇生法の手順について」には以下の記載があります。
① 心臓マッサージには外科的に開胸して、止まっている心臓を直接手で圧縮する方法もありますが、一般に蘇生時に行うのは胸の上からの間接的な圧迫法ですのでこのような呼び方が最近では頻用されています。胸骨とは胸の真ん中にある骨で、この部分を強く押すことで、止まってしまった心臓の代わりに血液を全身にまわすことができます。
② 突然の心停止の多くに対して、胸骨圧迫のみの蘇生法に、人工呼吸を行う場合と同様の効果があることが分かってきたからです。
③ しっかりとした胸骨圧迫を継続するために、疲れる前に胸骨圧迫を交代する事を推奨しています。
④ (山中注:胸骨圧迫で)折れることはありますが、それを恐れて胸骨圧迫をしなかったり、力を加減したりすると、結局その人を助けることはできません。しっかりと胸骨圧迫を行い、救命を最優先にして下さい。
(4)ア 八王子整形外科HPの「心肺停止からの救命率は?」には「心肺停止になると、脳への血流が止まり、10~15秒で意識を失います。」とか,「心肺停止から1分以内に救命処置が行われれば95%が救命されます。3分以内では75%が救命され、脳障害も避けられる可能性があります。」と書いてあります。
イ MSDマニュアル家庭版の「心停止」には「心停止が5分を超えて続くと脳に障害が残る可能性が高くなり、8分を超えると死亡する可能性が高まります。」と書いてあります。
(5) 平成14年11月21日,47歳の高円宮憲仁親王が心室細動による心不全を起こして死亡したこともあって,平成15年から救急救命士が医師の指示なしで使用できるようになり,平成16年7月から非医療従事者である民間人も使用できるようになりました。
    なお,心房細動ナビの「解説② 心房細動と他の不整脈との違い」には「心室細動は、心臓が原因で起こる突然死の原因のうち約8割を占めているといわれています。」と書いてあります。
(6) MSDマニュアル・プロフェッショナル版の「成人における心肺蘇生(CPR)」には「ほとんどの外傷性心停止の患者には,失血による重度の循環血液量減少(この場合胸骨圧迫は効果的でない可能性がある)または生存不可能な脳損傷がある。」と書いてあります。
(7) 医学用語としてのショックというのは,血液の循環が悪くなり、全身の組織や臓器に血液が十分運ばれない状態をいいますところ,その原因としては,①出血や脱水による血液量の減少(例えば,出血性ショック),及び②心臓のポンプ機能(血液拍出機能)の低下があります。
    そして,全身の血液量は体重の約8%であり,全血液量の約20%(体重の約1.6%)以上の血液がなくなるとショック症状が現れるようになりますところ,その症状は,①皮膚が青白くなる,②冷や汗が出る,③脈が弱く早くなる,④虚脱及び⑤呼吸不全があり,早期に治療が行われないと多臓器不全を起こして死に至ることがあります。
    出血性ショックの場合,出血量を推定して輸液及び輸血が行われると同時に,出血部位に対する治療が必要となります日本血液製剤協会HP「アルブミンの低下 出血性ショック」参照)。
(8) 岐阜県HPの「応急処置」には,「一般に体内の血液の20%が急速に失われると出血性ショックという重い状態になり、30%を失えば生命に危険を及ぼすといわれています。」と書いてあります。
(9) NHKの「未解決事件 File.07 警察庁長官狙撃事件 【前編】」には,平成7年3月30日発生の警察庁長官狙撃事件に関して,「自宅から出て来た國松孝次警察庁長官は、20メートル離れた地点で待ち伏せしていた犯人に、背後を狙われた。犯人は、崩れ落ちる國松長官に正確に狙いを定め、2発、3発と続けざまに、銃弾を撃ち込んだ。背中には直径1センチを超える銃痕。心臓が6回も停止、出血性ショックで瀕死の状態に陥ったが、奇跡的に一命を取り留めた。」と書いてあります。


2 心肺停止及びAED
(1) IZAの「AED使用も救命かなわず 安倍氏銃撃」には以下の記載があります。
「顔面蒼白(そうはく)で、まぶたの裏も真っ白。貧血状態だったのはすぐに分かった」。背中側の路面に血だまりができていたことを後に知った。
心臓に血液を供給するため関係者が安倍氏の足を持ち上げ、中岡院長と看護師らが心臓マッサージを行った。だが、呼吸は止まり、脈動も確認できない。「一刻も早く救急車を」。そう願いながらAEDを手に取った。
しかし、故障もしておらず、正しい手順を踏んでいるはずのAEDが動かない。AEDは、けいれん状態の心臓を正常に動かすための装置で、完全に心停止した場合は作動しない。今回もそのケースだった。
(2) 広島県医師会HPの「救急小冊子」には「救急蘇生法には、心肺蘇生法と止血法が含まれます。心肺蘇生法には、(1)観察、(2)気遣の確保、(3)人工呼吸、(4)心臓マッサージが、止血法に は、(1)直接圧迫法、(2)止血帯法、(3)間接圧迫法があります。」と書いてあります。
(3) 心肺停止には,①心室細動(VF),②無脈性心室頻拍(VT),③無脈性電気活動(PEA)及び④心静止(Asystole)があります(看護ルーの「心肺停止(CPA)の心電図波形」参照)ところ,くにちか内科クリニックHPの「AED」には,「AEDは心室細動以外にも、心室頻拍で脈を触れなう場合(無脈性心室頻拍)の場合は電気ショックが必要だと判断し、充電をします。それ以外の正常な心電図や完全に心臓の動きが止まっている心静止の場合には充電をしない仕組みになっています。」と書いてあります。
    また,心静止に対する治療の3本柱は,①CPR(心肺蘇生法),②アドレナリン(血管収縮薬)の投与及び③原因検索(例えば,重症外傷)と治療です(福岡博多トレーニングセンターHPの「ACLSとは」参照)から,AEDが使えない場合でもCPRを継続して救急車の到着を待つべきこととなります(MSDマニュアル・プロフェッショナル版の「成人における心肺蘇生(CPR)」においても,心静止又は無脈性電気活動の場合もCPRを継続することになっています。)。
(4)ア ヤフーニュースの「安倍晋三元首相の失血死…約4時間半に渡る救命措置「輸血100単位以上」の凄惨」には,「短時間で血液の約20%を失うと出血性ショックに、30%以上の出血は生命の危機に繋がり、50%を失うと心肺停止に陥るといわれています」と書いてあります。
イ 看護ルーの「出血性ショック」によれば,30%以上の出血があった時点で意識が混迷し,40%以上の出血があった時点で昏睡状態(完全に無反応となった状態)になるみたいです。
(5) 日本AED財団HPの「胸骨圧迫とAEDの効果」には「胸骨圧迫をするのとしないので救命率は約2倍違います。AEDを用いて電気ショックが行われれば、約6倍の人の命が救えます。」と書いてあります。
(6)ア 1960年は,それまでに開発されたが忘れ去られていた人工呼吸法(口対口呼吸),循環確保法(胸骨圧迫心臓マッサージ法)及び電気的除細動と3つが揃って統合された年であるそうです(心肺蘇生法HP「4.心肺蘇生法の再発見と確立」参照)。
イ 1922年7月7日発生の小野訓導水難事故では,溺死した小野さつき訓導に対し,人工呼吸が実施されたそうです(ただし,蘇生はしませんでした。)。


3 救急救命士
(1) NHKの「安倍元首相銃撃事件 ドクターヘリでの治療 医師が初めて語る」には以下の記載があります。
(山中注:安倍元首相を載せたドクターヘリに乗って搬送と治療にあたった)植山医師は「第一印象は救急隊からの情報どおり完全な心肺停止の状態で、まったく意識がなく、脈もなかった。点滴を行うために、静脈に針を刺そうとしたが、血圧が低すぎて針をうまく刺せなかったため、骨髄内に輸液する方法をとった」と振り返りました。
(2)ア 認定救急救命士は,救急車内において,医師の具体的指示があれば,特定行為としての①乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液,②気管内チューブによる気道確保及び③アドレナリン(別名は「エピネフリン」です。)の投与ができます(救急救命処置の範囲等について(平成4年3月13日付の厚生省健康政策局指導課長の通知)参照)。
    なお,認定救急救命士は,処置拡大認定,気管挿管認定及び薬剤認定をすべて保持している救急救命士です(マテンドジャパンHP「救急救命士とは」参照)。
イ 東京医科大学八王子医療センターHPの「アドレナリン投与のタイミング」には「心電図波形がasystole(心静止)とPEA(無脈性電気活動)であれば早期にエピネフリンを投与するべき。しかし心電図波形がVT(心室頻拍)とVF(心室細動)の場合は、エビデンスが不十分なためエピネフリンをいつ投与するべきか、決まっていない」と書いてあります。
(3)ア 認定救急救命士による静脈路確保は,医療機関到着後即座に緊急治療用薬剤を投与できるようにするために行いますところ,例えば,株式会社大塚製薬工場HPの「輸液の基礎知識」には「大量に出血してショックを起こしている人や、血管が細い場合などでは、いざ薬剤を投与しようとしても注射針が血管に入らないことがあるため、あらかじめ輸液で血管を確保しておきます。」と書いてあります。
イ 注射には,皮内注射,皮下注射,静脈内注射及び筋肉内注射がありますところ,救急医療では静脈内注射が使用されます(中外製薬HPの「くすりのタイプ(形)」参照)。
(4) 厚生労働省HPに載ってある「Ⅳ 心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施」には,「実際に病院前診療を担うドクターヘリ,ドクターカーの医師はほとんどの症例において,静脈路の確保と輸液を実施しているのが実情である。それは循環血液量不足の補充という理由のみならず,あらゆる急変の場面に備えるならば,静脈路確保は何よりも基本の処置と心得ているためである。」と書いてあります。
(5) 人間の体の約60%は水が占めていて,そのうちの3分の2(全体の40%)が細胞内にあり(組織内液),3分の1(全体の20%)が細胞外にあり(組織外液),全体の5%が細胞外としての血管の中にあります(血漿)。
    そして,ショック(酸素供給と酸素需要のバランスが崩れている状態であり,血圧低下の状態がメインです。)が発生したときは,生理食塩水又は乳酸リンゲル液が輸液されます(気楽な看護HPの「ショックに対する輸液療養」参照)ところ,生命の維持を目的として絶対的に輸液が必要な状態では,禁忌は存在しません(日本緩和医療学会HP「輸液とは」参照)。
(6)ア 看護のお仕事ハテナースHP「骨髄路からの輸液について知りたい」には,「骨髄路の確保は、患者さんが急変した場合や心停止時の蘇生中など、急速に薬剤投与経路を確保する必要があるときに行われ、基本的には静脈路が確保でき次第すぐに抜針を行う必要があります。」とか「骨髄路は骨内に細菌が侵入した場合は重症化しやすいこともあり、成人では蘇生行為中でしか行われていないことがほとんどです。」と書いてあります。
イ 骨髄内輸液路(略称は「骨髄路」です。)の確保を行えるのは医師のみであり,認定救急救命士及び看護師が行うことはできません。
(7) 日本救急医学会HPの「院外心肺停止」には「米国では一次性心停止に関して,目撃があり蘇生開始まで4分以内で初期心電図波形が心室細動のものは神経学的予後が良好で生存率も高いが,それに比較して初期心電図が無脈性電気活動(PEA)や心静止のものは生存率が低く,さらに,救急隊により心拍再開できなかった場合は,予後は非常に不良である,とされている。」と書いてあります。
(8) 一般財団法人救急振興財団HP「救急隊員が行う救急処置」には,救急救命士及び救急科修了者が行える措置が書いてあります。
(9) 厚生労働省HPに,これまでの経緯(救急救命士に関する平成23年度までの経緯を記載した文書)が載っていて,救急救命士法,救急救命士法施行規則及び「救急救命処置の範囲等について」の抜粋が載っています。


4 死の三徴候及び法的脳死判定
(1) 死の三徴候は,心臓停止,自発呼吸停止及び瞳孔散大(対光反射の消失)でありますところ,All Aboutの「心肺停止とは…心肺停止状態と死亡の違い」には,「心肺停止の状態で病院に運ばれるときには、心臓マッサージ、人工呼吸をしていますので、蘇生している間は死ではありません。これらの蘇生法を行った上で、蘇生できない時に死を医師が確認してはじめて「死」となります。」と書いてあります。
(2) MAG2NEWSの「「瞳孔が開く」とはどういうこと? どうして開くの?」には,「呼吸と心臓が止まっていることは、胸の動きや聴診器で胸の音を聞いたりすることで分かります。脳は、呼吸や心臓を動かすなど、生きていくことに欠かせない指令を全身に出しています。脳の機能が止まっていることは、目に光を当てても瞳孔が開きっぱなしであることから、判断しています。」と書いてあります。
(3) 法的脳死判定の項目は,①深い昏睡(顔面への疼痛刺激),②瞳孔の散大と固定(瞳孔に光を当てて観察),③脳幹反射の消失(対光反射,角膜反射,毛様体脊髄反射,眼球頭反射,前庭反射,咽頭反射及び咳反射という7つの反射の消失),④平坦な脳派(脳波の検出),⑤自発呼吸の停止(無呼吸テスト)及び⑥6時間以上経過した後の同じ一連の検査です(日本臓器移植ネットワークHPの「法的脳死判定の検査方法」参照)。
(4)ア ①脳死(全脳死)の場合,脳幹を含めた脳全体が働かなくなった状態であって,二度と戻らないの対し,②植物状態の場合,大脳は働かなくなっているものの,脳幹は働いているため,自分で呼吸できることが多く,回復することもあります(岡山県臓器バンクネットHPの「脳死と植物状態について」参照)。
イ 「病院の言葉」を分かりやすくする提案HPの「43.脳死(のうし)」には「(山中注:脳死というのは,)心臓は動いていても,脳幹と呼ばれる脳の中枢が働かなくなった状態で,10日ほどで心臓も止まって死亡に至ります。」と書いてあります。
(5) ギリギリ脳蘇生の限界を超えなければ植物状態となり,ギリギリ脳蘇生の限界を超えた場合,脳死を経て心臓死に至ります(日本臓器移植ネットワークHPの「脳の障害と蘇生限界」参照)。
(6)ア 厚生労働省HPの「第1章 救命治療、法的脳死判定等の状況の検証結果」には法的脳死判定の事例が書いてありますところ,そこには経過として以下の記載があります。
50代の男性。平成18年5月22日5:00頃、自宅アパートのトイレでドスンと音がしていびきが聞こえてきたため、隣人が見に行くと倒れているのを発見された。5:27の救急車到着時、意識レベルはJCS300で自発呼吸はなく、脈拍は触知されなかった。モニター装着後直後は無脈性電気活動(PEA)であったが、搬送中心静止となった。5:56に当該病院に到着、救急部当直医にて気管内挿管、心肺蘇生術が施行され、心拍が再開したが、救急外来での所見はJCS 300、GCS 3、両側瞳孔散大(径5.0mm)で、自発運動はまったく見られなかった。
イ 認定救急救命士が,医師の具体的指示のもとで気管挿管を実施できるようになったのは平成16年7月1日です(救急救命士の気管内チューブによる気道確保の実施について(平成16年3月23日付の厚生労働省医政局長通知)参照)。


5 銃創及び血胸
(1)ア 改訂第5版 外傷初期診療ガイドライン251頁には「4.銃創」として以下の記載があります(改行を追加しています。)。
    わが国ではまれであるが,銃創の場合は,刺創よりさらに重症化しやすい。損傷臓器や重症度に関しては,銃器の種類,弾丸の種類.発射距離. 角度.射入部位などさまざまな要素により規定される。
    弾道に沿って紡錘形をした立体的な損傷ができるため.弾丸の通過部のみならず,体内では損傷の広がりが大きくなるとされる。
    さらに体内では弾丸の軌跡を変えたり.破裂して数片に分かれたりするために.その周辺をも巻き込んだ損傷が起こるとされている。
    したがって,単純に射入口と射出口を直線で結んだ軌跡に損傷が限定されていると推定してはならない。射出口をもたない場合や,思わぬところに射出口が存在することがあり.注意を要する。
イ ライフハッカーHPの「万が一銃で撃たれた場合に、生き延びるためにできること」には以下の記載があります。
① 銃弾が腕の上腕動脈や、脚の付け根の鼠径動脈(山中注:大腿動脈のことです。)や、鎖骨下動脈に当たったら、大量出血します。筋肉は出血を止めようとする自己防衛機能が備わっていますが、銃弾が貫通して内部失血を起こしていたら、普通はそれでは血は止まりません。筋肉が危険に対する警告を発する間もなく、銃弾は動脈や静脈を断裂します。
② 心臓や脳に直接銃弾を受けなければ(受けた場合の生存率は9%)、生存率は約80〜95%だと言います。(心臓が動いているうちに病院に運ばれれば95%)立派なものです。
③ 銃弾がどこを通るかによって命運は決まりますが、身体の約80%は撃たれても致命的な場所ではないことがわかっているので、生き残る可能性はかなりあるということです。
ウ 看護ルーの「血管のしくみとはたらき」に,全身の主な動脈と静脈が載っています。
(2) メディカルノートの「血胸(けっきょう)」には「血胸とは、肺が収納されている胸腔と呼ばれる空間内に、血液が蓄積している状態です。血胸は、主に交通外傷による胸への強打や、刃物で刺されるなどの怪我を原因として発症します。出血する原因は肺損傷などに伴うものであり、気胸を併発することもあります。」と書いてあります。
(3) PRタイムスの「医療現場における安全な胸腔ドレナージの実現を目指して」(2022年4月18日付)には,「体内に貯留した血液・膿・浸出液・気体などを体外に排出することを「ドレナージ」と言い、医療現場において一般的に行われている処置です。腹水に対する腹腔ドレナージや、気胸に対する胸腔ドレナージが代表的なものとして挙げられ、胸腔ドレナージでは、肺と胸壁の間の胸腔に‟胸腔ドレーン“と呼ばれるチューブを挿入し、溜まった液体や空気を取り除きます。」と書いてあります。


6 安倍元首相の死因等
(1) ヤフーニュースの「安倍元首相の死因は失血死、左右鎖骨下動脈の損傷で…奈良県警」(2022年7月9日付)には,「奈良県警は9日朝、安倍元首相の死因について左上腕部射創による左右鎖骨下動脈損傷の失血死と発表した。」と書いてあります。
(2) 安倍元首相の場合,左右鎖骨下動脈損傷により大量の内出血が発生して重度の循環血液量減少が発生した結果,AEDを使おうとした時点で心静止にまで至ったのかもしれません。
イ 外出血がそれほどでもないのに顔面蒼白になっていたというのであれば,内出血がひどくて胸腔内に大量の血液が溜まっていたのかもしれません。
    また,心臓に損傷がないにもかかわらず心静止にまで至っているということは,心静止までに50%以上の出血があったということかもしれません。
ウ 瞳孔が開きかけていたということは,その時点で脳幹が死にかかっていたのかもしれません。
(3) ヤフーニュースの「安倍晋三元首相の失血死…約4時間半に渡る救命措置「輸血100単位以上」の凄惨」には,「輸血の1単位とは、200 mlの献血から作られる量を指します。大量出血の際に主に用いられる“赤血球の輸血(赤血球製剤)”は、1単位=140ml。単純に考えると、安倍元首相の救命措置では、約14リットルもの輸血が行われたということになります」と書いてありますから,本来の血液量である70kg✕8%=5.6kgの2.5倍に相当する血液を輸血するぐらい,左右鎖骨下動脈損傷による出血が凄まじかったのかもしれません。
(4)ア ヘモグロビン(Hb)の基準値は,男性が14~18g/dl,女性12~16g/dlです(仙台産業医科診療所HPの「血液一般のデータ」参照)。
イ 厚生労働省HPに,「血液製剤の使用指針」(改訂版)(平成17年9月の厚生労働省医薬食品局血液対策課の文書)要約として,①赤血球濃厚液の適正使用,②血小板濃厚液の適正使用,③新鮮凍結血漿の適正使用及び④アルブミン製剤の適正使用が載っています。
    そして,①赤血球濃厚液の適正使用として,急性出血の場合,「Hb値が10g/dLを超える場合は輸血を必要とすることはないが,6g/dL以下では輸血はほぼ必須とされている。」と書いてありますし,周術期の輸血の場合,「通常はHb値が7~8g/dL程度あれば十分な酸素の供給が可能であるが,冠動脈疾患などの心疾患あるいは肺機能障害や脳循環障害のある患者では,Hb値を10g/dL程度に維持することが推奨される」と書いてあります。
    また,④アルブミン製剤の適正使用として「●  循環血液量の30%以上の出血をみる場合は,細胞外液補充液(山中注:等張性電解質輸液のことであり,例えば,生理食塩水及び乳酸リンゲル液があります。)の投与が第一選択となり,人工膠質液の併用も推奨されるが、原則としてアルブミン製剤の投与は必要としない。●  循環血液量の50%以上の多量の出血が疑われる場合や血清アルブミン濃度が3.0g/dL未満の場合には,等張アルブミン製剤の併用を考慮する。」と書いてあります。
(5)ア 東京高裁平成27年4月6日決定(判例秘書に掲載)は,死体の解剖結果報告書及び実況見分調書(死体(裸体)の外形を撮影した写真及び解剖した状態を撮影した写真を含むもの)について,民訴法92条1項1号に基づく閲覧等制限決定を出しました。
イ Wikipediaに「ケネディ大統領の検死」が載っています。
(6) 自由と正義2022年7月号に「宗教団体の法務」が載っています。
(7) 安倍晋三元首相の戒名は「紫雲院殿政誉清浄晋寿大居士」です(トレンドのいずみ365HPの「【衝撃】安倍晋三の戒名の値段は1000万超?意味も徳川家康レベルの最高位だった!」参照)。


第8 日本は安全な国であるという,安倍晋三内閣総理大臣の答弁
・ 平成27年1月20日,72時間以内に身代金の支払がないと2人の人質を殺害すると覆面を被ったISIL(イスラミック・ステート)のメンバーが述べている動画が公開されました(ISILによる日本人人質殺害事件)ところ,安倍晋三内閣総理大臣は,平成27年2月20日の衆議院予算委員会において,「今、テロの危機が高まっているわけですから、しっかり公邸に陣取って、この年末の反省のもとに行動していただきたいと思いますが、いかがですか、総理。」という辻元清美衆議院議員(民主党)の質問に対し,以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
 一生懸命おとしめようとしている、その努力は認めますよ。
 しかし、はっきり申し上げて、日本というのは、こういうおどかしに遭ったとしても、安全な国なんですよ。我々の政権ができて、五百万人、観光客がふえた。日本はすばらしい国だ、安全な国だから、みんな来てくれているんですよ。
 まるで日本が危険な国のようなことをあなたはおっしゃった。私は、とんでもないと思いますよ。
 日本は安全な国だ。そういう安全な国であるということを確保するということが私の責任なんですよ。そういう大きな方針と、しっかりと予算を確保する、そういう仕事をちゃんとやっていくことが大切なんですよ、私に求められているのは。
 公邸に泊まるとか泊まらないとかいうことではないんですよ。公邸にずっと泊まっていたら立派な総理大臣なんですか。私は、違うと思いますけれども。
 そこで、申し上げますと、まさに日本というのは安全な国だ、本当にそう思います。海外に出てみて、首脳に対する警備についてはそれぞれ国によって全然違います。アメリカは、御承知のように大変な警備をしている。あの警備から比べれば、日本は相当軽い警備であります。
 私が公邸にいるときにも、そこには相当の量の警備の方々がおられる。私は感謝していますよ。ゴルフをやっているときにも警備をしていただく。申しわけないなと思うわけでありますが、先ほど申し上げましたように、私に求められているのは、心身ともに健康を保って、大切なときに判断を間違わないことなんですよ。ですから、そこで温泉に行かなければいいとかそういうことではないんですよ。そこを間違えてはいけないと私は思います。


第9 日本国憲法下で暗殺された現職国会議員,及び長崎市長射殺事件
1 日本国憲法下において他殺された現職国会議員は以下のとおりです。
① 浅沼稲次郎:昭和35年10月12日に東京都千代田区の日比谷公会堂で演説中に刃渡り約33cmの脇差し用の刃物で刺されて殺害されました。
② 丹羽兵助:平成2年10月21日にナイフで刺され,同年11月2日に死亡しました。
③ 山村新治郎:平成4年4月12日に自宅で精神疾患を患っていた次女に出刃包丁で刺されて殺害されました。
④ 石井紘基:平成14年10月25日に柳刃包丁で刺されて殺害されました。
⑤ 安倍晋三:令和4年7月9日に手製の銃で射殺されました。
2(1) 平成19年4月17日発生の長崎市長射殺事件では,伊藤一長 長崎市長は,平成19年4月17日午後7時51分に背後から2発の銃弾を受け,病院に搬送された時点で心肺停止状態になっていて,翌日午前2時28分に胸部大動脈損傷による大量出血のために死亡しました。
(2) 長崎地裁平成20年5月26日判決(39期の松尾嘉倫49期の安永武央及び56期の内藤寿彦)(判例秘書に掲載)は死刑を言い渡したものの,福岡高裁平成21年9月29日判決(26期の松尾昭一49期の今泉裕登及び51期の杉原崇夫)は原判決を破棄して無期懲役を言い渡し,最高裁平成24年1月16日決定で支持されました。

第10 暗殺されたアメリカの現職大統領4人
1 エイブラハム・リンカーン大統領
・ 1865年4月14日午後10時13分頃,ワシントンDCの劇場で観劇中に背後から後頭部をピストルで撃たれて,翌日午前7時22分に死亡しました。
・ WikipediaのAssassination of Abraham Lincolnには,「弾丸はリンカーンの左耳の後ろの頭蓋骨に入り、脳を通過し、両方の眼窩板を骨折した後、頭蓋骨の前面近くに止まった」という趣旨の記載があります。
・ 歴史上の人物.comの「リンカーン大統領 その死因となった暗殺事件について」には,「現代の医療技術を用いることができていれば、リンカーン大統領は命を落とさずに済んだかもしれない、という見解もあります。」と書いてあります。
2 ジェームズ・ガーフィールド大統領
・ 1881年7月2日午前9時半頃,ワシントンDCの駅で背後の至近距離からピストルで2発,撃たれて,同年9月19日午後10時35分に死亡しました。
・ Wikipediaのガーフィールド大統領暗殺事件には「大半の歴史家や医学の専門家は、ガーフィールドを治療した医師たちがもっと有能であったら、ガーフィールドは生き残れたと信じている」と書いてあります。
3 ウィリアム・マッキンリー大統領
・ 1901年9月6日午後4時7分,博覧会の会場で,布のボロキレの下に隠されたピストルで腹部を2回,撃たれて,同月11日までは回復傾向にあったものの,翌日遅くから様態が悪化するようになり,同月14日午前2時15分に死亡しました。
・ WikipediaのAssassination of William McKinleyには,「マッキンリーが死んだ日の朝、マンが14人の医師団を率いて検死を行った。弾丸は胃から横行結腸を通り、左の腎臓の隅を貫いて腹膜から消えたことがわかった。副腎と膵臓にも損傷があった。」という趣旨の記載があります。
4 ジョン・F・ケネディ大統領
・ 1963年11月22日午後0時30分頃,テキサス州ダラス市内をオープンカーでパレードしていて,教科書倉庫ビルの前を通過したとき,リー・ハーベイ・オズワルドにより同ビル6階右端の窓からライフル銃で右側頭部を撃ち抜かれ,同日午後1時33分,同日午後1時に大統領が死亡したという公式発表がありました(死亡宣告及び終油の秘跡(1972年以降は「病者の塗油」です。)が終わった時刻が午後1時でした。)。
・ Wikipediaのケネディ大統領暗殺事件には,「(山中注:搬送先のパークランド記念病院における午後0時43分の診察開始時点で)大統領はすでに昏睡状態で呼吸は非常に微弱、心臓の鼓動は聴診器で当てなければ聞こえない。後頭部は砕かれて、血がどくどくと流れ、手押し車の上を流れて床を濡らしていた。」とか,「ペリー医師が心臓マッサージを行ったが、心電図の画面は空しく波がなく横にただ移動するだけであった。クラーク部長は「もう手遅れだ。手の施しようがない」とペリー医師に語り、大統領の死亡を告げた。この時12時50分であった」とか,「(山中注:ワシントンDCのベセスダ海軍病院の)解剖検視台に遺体を載せて4時間にわたった検視で、大統領の傷は2つで、致命傷は頭蓋後頭部から入り頭部右側の一部15cm位を吹き飛ばしていること、もう一つは頸部の付け根に入口があったが出口が分からなかった。この2つの傷はいずれも頭蓋内側の傷口が小さく、抜け出た側に現れるそれより大きいスリ鉢状の傷が頭蓋外部につくものでなかったので、この2ヵ所で被弾したと結論を出している。」と書いてあります。

* この映画の描写では,ケネディ大統領はパークランド記念病院の手術室に救急搬送された後に心臓マッサージが開始しています。

第11 法廷秩序の維持と,市民会館の使用許可基準
1 法曹時報5巻1号(昭和28年1月発行)に掲載されている「法廷秩序維持問題」(筆者は田中耕太郎最高裁判所長官)6頁には以下の記載があります。
    我が国における法廷の状態は、とくに特定の思想的傾向を帯びた事件又はかかる思想的傾向の者に関する事件の審理について、特別の立法的措置(山中注:法廷等の秩序維持に関する法律の制定)を必要とするにいたった。かような事件についての公開の法廷の情況は誠に遺憾なものがあった。傍聴人や被告人被疑者等の拍手喝采、喧騒、怒号、罵り等は往々裁判長の訴訟指揮を不可能ならしめる程度に達したこと新聞の報道や、もっと具体的には情況の録音によって明瞭である。さらに裁判官の命令や係員の制止を無視して暴力を振い、係員を傷害し建物や施設を破壊するがごとき事態も再三ならず発生するにいたった。しかも法廷のかような状態は、多くの場合に「法廷闘争」として指導され、計画的組織的に準備し遂行されているところから来ているものと推定しても誤りないのである。

2 公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例(昭和38年泉佐野市条例第27号)7条1号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは,右会館における集会の自由を保障することの重要性よりも,右会館で集会が開かれることによって,人の生命,身体又は財産が侵害され,公共の安全が損なわれる危険を回避し,防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり,その危険性の程度としては,単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず,明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であり,そう解する限り,このような規制は、憲法21条及び地方自治法244条に違反しません(最高裁平成7年3月7日判決)。
3 おたくま経済新聞HPの「東京駅に残るテロの歴史 2つの「首相遭難現場」を訪ねる」には,「現在は警備が厳重になっているため、総理大臣をはじめとした要人が駅で襲撃されることはありません」と書いてあります。


第12 関連記事その他
1 裁判所法逐条解説上巻168頁には以下の記載があります。
    官僚機構は、行政上の監督権者を非常に重視し、その地位を高くすることに特色をもっている。しかし、このことは、裁判所のようなところでは、もっとも望ましくないことである。わが国のように、旧憲法下ながく裁判官が官僚機構のなかに組み入れられていたところでは、とかく官僚一般に共通な右の思想が知らず知らずの間に裁判官の間にも流れ込んでくる危険があり、旧制度の下では、その弊害が特に著しかったといえよう。それは、行政を行う者の地位を裁判事務のみを行う者のそれよりも高いと考え、ひいては行政重視裁判軽視の傾向を生みかねない。その意味で、司法行政権を所長等の特定の裁判官に一任せず、裁判官会議にこれを与えたことは、裁判所における官僚制を打破する上において画期的な変革であったといえる。裁判所における官僚制の打破がきわめて望ましい要請である以上、司法行政専任の裁判官を認めることは、あくまで避けなければならない。
2 銃砲とは,拳銃,小銃,機関銃,砲,猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃をいい(銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)2条1項),都道府県公安委員会の許可等を受けない限り銃砲を所持することはできません(銃刀法3条1項)し,経済産業大臣の許可を受けたときでない限り,試験的に製造をすることもできません(武器等製造法4条ただし書)。
3(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 安倍晋三元首相銃撃事件(令和4年7月8日発生)に関する災害出動報告書,隊活動記録書,救急出場報告書
→ 発生現場に関するものと,ドクターヘリのランデブーポイント(平城宮跡)に関するものがあります。
・ 安倍晋三元首相の医療記録(令和4年7月8日の奈良県立医科大学附属病院の文書)
→ 中身は真っ黒ですが,患者診療記録製剤払出レポート輸血検査結果報告書検査結果報告書OPERATION REPORT及び画像検査が含まれています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 国葬儀
・ 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長
・ 最高裁判所庁舎
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 最高裁判所の庁舎平面図の開示範囲
・ 最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアル
・ 
下級裁判所の裁判官会議から権限を委任された機関
・ 平成5年4月27日発生の,東京地裁構内の殺人事件に関する国会答弁
 平成31年3月20日発生の,東京家裁前の殺人事件に関する国会答弁

弁護士となる資格

目次
1 原則
2 例外
3 欠格事由
4 関連記事その他

1 原則
(1)   弁護士となる資格を得るには,原則として,司法試験に合格し,司法研修所において司法修習を受け,修習終了時に行われる二回試験に合格して修習を終えなければなりません(弁護士法4条)。
(2) 二回試験については,「二回試験(司法修習生考試)」を参照してください。

2 例外
(1)   例外として以下の場合にも弁護士となる資格が認められます。
① 最高裁判所の裁判官の職にあった者(弁護士法6条)
② 司法試験合格後,5年以上裁判所調査官,裁判所事務官,国会議員等特定の法律に関係する職にあり,かつ,日弁連が実施する研修の課程を修了したと法務大臣が認定した者(弁護士法5条1号)
③ 司法試験合格後,5年以上法律学の教授又は准教授の職にあり,かつ,上記法務大臣の認定があった者(弁護士法5条1号)
④ 司法試験合格後,7年以上民間において又は公務員として法律に関係する職務に従事し,かつ,上記法務大臣の認定があった者(弁護士法5条2号)
⑤ 5年以上特任検事の職にあった者で,かつ,上記法務大臣の認定があった者(弁護士法5条3号)
(2) ②ないし⑤に関する弁護士資格認定制度(弁護士法5条の2ないし5条の6)については,「平成16年4月1日創設の,弁護士資格認定制度」を参照してください。

3 欠格事由
(1)   弁護士となる資格を有している場合であっても,以下のいずれかに該当する場合,弁護士となる資格が認められません(弁護士法7条)。
① 禁固以上の刑に処せられた者
② 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
③ 懲戒処分により、弁護士・外国法事務弁護士であって除名され、弁理士・税理士であって業務を禁止され、公認会計士であって登録を抹消され、又は公務員であって免職され、その処分を受けた日から3年を経過しない者
④ 成年被後見人又は被保佐人
⑤ 破産者であって復権を得ない者

4 関連記事その他
(1) 日弁連HPの「弁護士の資格・登録」に詳しい説明が載っています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士登録の請求
・ 弁護士となる資格付与のための指定研修
・ 弁護士資格認定制度に基づく認定者数の推移

最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿

目次
1 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿
2 関連記事その他

1 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿
・ 令和6年6月18日現在の名簿
・ 令和5年6月13日現在の名簿
・ 令和4年5月23日現在の名簿
・ 令和3年6月10日現在の名簿
・ 令和2年10月26日現在の名簿
・ 平成31年4月22日現在の名簿
・ 平成30年4月17日現在の名簿
・ 平成29年4月19日現在の名簿


2 関連記事その他
(1)  高裁長官・地家裁所長等名簿には,最高裁判所の事務総長,司法研修所長及び首席調査官,高等裁判所長官,地方裁判所所長及び家庭裁判所長の氏名,修習期,任命年月日及び定年年月日が書いてあります。
(2) 私が作成したものですが,歴代の幹部裁判官の名簿は以下のとおりです。
① 歴代の幹部裁判官の一覧表(平成14年度から平成28年度まで)
② 歴代の幹部裁判官の一覧表(平成4年度から平成13年度まで)
③ 歴代の幹部裁判官の一覧表(昭和56年度から平成3年度まで)
(3) 以下の記事も参照してください。
① 高裁長官人事のスケジュール
② 幹部裁判官の定年予定日
③ 最高裁判所裁判官会議の議事録
④ 親任式及び認証官任命式
⑤ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
⑥ 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿

寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領

目次
第1 寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領
第2 関連記事

第1 寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領
・ 平成26年3月20日付の最高裁判所事務総局広報課の文書によれば,寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領は以下のとおりでした(文中の図面は省略しています。)。

1 日時
   4月1日(火)午後8時00分

2 場所
   最高裁判所大応接室

3 取材方法
(1) カメラは1社につき1台です。

(2) 撮影は,スチルカメラ及びビデオカメラともに,長官の着席後1分間,談話発表の間及び記者会見の第1問の部分に限り行うことができます。
(3) 録音は,談話発表の間及び記者会見の第1問の部分に限り行うことができます。
(4) 撮影位置は,別紙図面に表示したとおりです。
    なお,長官の着席後1分間は,スチルカメラに限り記者席前部(別紙図面に網線で表示した部分)から撮影することができますが,1分間経過後はその場から退出し,以後は記者席の両側又は後部から撮影してください。
(5) 大応接室以外での撮影は,一切できません。
(6) 三脚を使用することはできますが,脚立は使用しないでください。
(7) 取材中及び取材後に退室する際は,静粛かつ円滑に行われるよう広報課員の指示に従ってください。
(8) 取材に当たっては広報課員の指示に従ってください。

4 集合時刻等
(1) 取材カメラマンは,午後7時30分までに記者会室(1階)にお集まりください。広報課員が記者会見場に案内します。

(2) ビデオカメラは,午後7時55分までにセットアップしてください。
(3) カメラマン及びその補助者等は,必ず自社腕章を着用してください。
(4) 当日は,新最高裁長官,新最高裁判事の順で記者会見が行われる予定ですので,長官の記者会見における撮影が終了した後は,カメラ,マイク等を会見場に残したままいったん記者会見場から退出し,広報課員の指示に従って待機してください。

5 その他
    車両は必ず社旗を付け,当庁東門から出入りし,駐車は北玄関広場を使用してください。


第2 関連記事
・ 所長等就任記者会見,及び記者会見実施上の一般的な留意事項(最高裁判所の広報ハンドブックからの抜粋)
・ 司法修習生による,司法研修所構内の写真撮影禁止に関する文書は存在しないこと
・ 最高裁判所における法廷内カメラ取材運用要領
・ 寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領

親任式及び認証官任命式

目次
第1 総論
第2 親任式
1 総論
2 内閣総理大臣の親任式
3 最高裁判所長官の親任式
第3 認証官任命式
1 総論
2 認証官の具体的ポスト
3 認証官任命式の具体的手順
第4 認証官任命式が遅れた事例,及び認証官任命式の実施が中断した事例
1 認証官任命式が遅れた事例
2 認証官任命式の実施が中断した事例
第5 任命と認証の違いに関する国会答弁
第6 天皇の公務の件数に関する国会答弁
第7 関連記事その他
 
1 総論
1 皇居での親任式及び認証官任命式は発令日に行われますところ,その詳細については,親任式及び認証官任命式次第(昭和22年5月3日付の宮内府長官通知)に書いてあります。
2 宮内庁HPの「宮中のご公務など」「親任式」及び「認証官任命式」が載っています。
3 皇室制度については,平成28年10月17日の第1回天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議の資料3「皇室制度関係資料」がわかりやすいです。
 
第2 親任式
1  総論
(1) 内閣総理大臣及び最高裁判所長官は,皇居での親任式によって任命されますところ,内閣総理大臣は国会の指名に基づいて任命され(憲法6条1項),最高裁判所長官は内閣の指名に基づいて任命されます(憲法6条2項)。
(2) 「きょうのへいか」と題するブログ「親任式」に,これまでの親任式に関する官報の記事が記載されています。
2 内閣総理大臣の親任式
(1) 衆議院HPに載ってある象徴天皇制に関する基礎的資料51頁には,内閣総理大臣の任命(憲法6条1項)に関して以下の記載があります。
   内閣総理大臣の任命は、国会における指名の議決を経て、内閣の助言と承認により行われる。国会は、内閣総理大臣の指名が確定すると、衆議院議長から内閣を経由して天皇に奏上する。内閣は、これに伴って新たに内閣総理大臣に任命される者について、天皇に対する助言と承認を書面によって行う。天皇は、この助言と承認に基づいて内閣総理大臣を任命する。
(2) 総辞職をした前の内閣は,親任式において次の内閣総理大臣が任命されるまでの間,その職務を行います(憲法71条)。
3 最高裁判所長官の親任式
(1) 最高裁判所長官の親任式の場合,天皇から任命する旨のお言葉があった後,内閣総理大臣から官記(任命書)が伝達されます(宮内庁HPの「親任式」参照)。
(2) 衆議院HPに載ってある象徴天皇制に関する基礎的資料52頁には,最高裁判所長官の任命(憲法6条2項)に関して以下の記載があります。
    最高裁判所長官の任命は、内閣の指名に基づき、内閣の助言と承認により行われる。内閣総理大臣の任命の場合と異なり、助言と承認を行う内閣自身が最高裁判所の長官を指名することになるので、指名の手続及び助言と承認は、同時に行われることになる。 


第3 認証官任命式
1 総論
(1)   最高裁判所判事及び高等裁判所長官は,任免につき天皇の認証(憲法7条5号)を必要とする点で「認証官」といわれ,皇居での認証官任命式によって任命されます。
(2) 認証官任官者は,内閣総理大臣から辞令書を受け,その際,天皇からお言葉(「重任ご苦労に思います」という言葉)があるのが慣例です(宮内庁HPの「認証官任命式」参照)。
2 認証官の具体的ポスト
① 一般の行政機関
・ 国務大臣(憲法7条5号)
・ 副大臣(内閣府設置法13条4項,国家行政組織法16条5項,復興庁設置法9条6項,デジタル庁設置法9条5項)
・ 内閣官房副長官(内閣法14条1項)
・ 人事官(国家公務員法4条1項)
・ 検査官(会計検査院法2条)
・ 公正取引委員会委員長(独占禁止法29条3項)
・ 原子力規制委員会委員長(原子力規制委員会設置法7条2項)
② 宮内庁
・ 宮内庁長官(宮内庁法8条2項)
・ 侍従長(宮内庁法10条2項)
・ 上皇侍従長(宮内庁法附則2条4項)
③ 外務省
・   特命全権大使(外務公務員法8条1項)
・ 特命全権公使(外務公務員法8条1項)
④ 裁判所
・ 最高裁判所判事(裁判所法39条3項)
・ 高等裁判所長官(裁判所法40条2項)
⑤ 検察庁
・ 検事総長(検察庁法15条1項)
・ 次長検事(検察庁法15条1項)
・ 検事長(検察庁法15条1項)
3 認証官任命式の具体的手順
(1) 衆議院議員河野太郎HPの「国務大臣認証式」によれば,平成27年10月7日の認証官任命式(国務大臣)は以下のとおりでした。
認証官任命式。
官制順に並ぶ。
一人ずつ入室し、陛下と視線を合わせた上、一礼。
陛下の御前まで進み、陛下と視線を合わせた上、敬礼。
右斜め前にいる総理の前に進み、国務大臣に任命する旨の官記を受領し、両手で持ったまま陛下の御前に戻る。(この際、後方にいる式部官が河野国務大臣と名前を読み上げる)
陛下と視線を合わせた上、敬礼。
陛下からお言葉。(この際、何も申し上げないこと)
官記を両手で持ったまま陛下と視線を合わせた上、敬礼。
そのまま三歩後退して向きを変え、出口まで進み、再び陛下のほうに向きなおり、陛下と視線を合わせた上、一礼。
退出。
(2) 日本証券経済研究所(JSRI)HPに掲載されている「司法制度について 最高裁判所を中心に」(平成30年5月10日開催の講演録の要旨。講師は大橋正春 元最高裁判所判事)の末尾57頁及び58頁には以下の記載があります。ただし,資料は掲載されていません。
(任命・認証の手続き)
   最高裁長官は天皇陛下から任命され、最高裁判事は天皇陛下から認証を受けます。資料8ページの左側の写真は長官の任命式、右側の写真は判事の認証式のものです。
  任命式や認証式に臨むに当たっては、事前に宮内庁の担当者から説明と注意があります。慣れないことであり、また緊張する結果、思わぬ対応をする人も出てくるようです。これは、最高裁裁判官のことではありませんが、「天皇陛下からお言葉をかけられても返事をしないように」と事前に注意を受けていたにもかかわらず、天皇陛下から「ご苦労さまです。」と言われて、思わず「がんばります」と答えた人もいたようです。あるいは、天皇陛下から短いお言葉があった後、もっと続くのではないかと思い、しばらく天皇陛下とにらめっこしていた人もいたようです。


第4 認証官任命式が遅れた事例,及び認証館任命式の実施が中断した事例
1 認証官任命式が遅れた事例
(1) 平成28年1月実施予定の認証式
   平成28年2月22日就任の広島高裁長官及び仙台高裁長官の場合,同年1月26日から同月30日までのフィリピン訪問(宮内庁HPの「天皇・皇族の外国ご訪問一覧表(平成21年~平成31年)」参照)など多忙な天皇の予定の調整が付かなかったため,前任者の退任から約1ヶ月間,認証式が実施されませんでした(産経ニュースの「1ヶ月の空席…認証式経て,仙台・広島両高裁長官の人事発令」参照)。
(2) 平成29年1月実施予定の認証式
ア 山口厚最高裁判所判事及び小林昭彦福岡高裁長官の人事は当初,平成29年1月27日に発令される予定でした。
   しかし,同日に認証式が実施できなかったため,発令が2月6日となりました。
イ 平成29年1月13日付の,山口厚最高裁判所判事及び小林昭彦福岡高裁長官任命の閣議書を掲載しています。
   山口厚最高裁判事は東大法学部3年生で司法試験に合格したことが分かります
2 認証官任命式の実施が中断した事例
(1)ア 新型コロナウィルス感染症の流行拡大に伴い,令和2年4月7日に緊急事態宣言が発令された関係で,令和2年3月30日を最後に認証官任命式が実施されなくなりました(きょうのへいかブログ「認証官任命式」参照)。
イ 35期の永野厚郎名古屋高裁長官(令和2年5月8日就任)に関しては,認証官任命式は実施されませんでした。
(2)ア 再開後の最初の信任状捧呈式(新任の外国大使に対して行うものです。)は,令和2年6月24日に実施されました(日テレHPの「宮殿行事が再開 皇居で信任状捧呈式」参照)。
イ 再開後の最初の認証官任命式は,令和2年7月17日の検事総長林眞琴,検事長堺徹及び次長検事落合義和に関するものでした。
(3) 「国務大臣その他の官吏の任免を認証すること」及び「外国の大公使を接受すること」は国事行為であるのに対し,内閣総理大臣及び最高裁判所長官の親任式,認証官任命式,外国特命全権大使の信任状捧呈式及び勲章親授式は国事行為ではありません(宮内庁HPの「天皇皇后両陛下のご活動」参照)。


・ 動画の6分54秒から7分7秒にかけて,「官記を受け取ったら,本当は頭より上に掲げて降ろさないようにお辞儀をすることになっています。検事総長は恐らく初めての認証式ではないので上に掲げていたから中身が見えるんです。」というナレーションが流れます。

   
第5 任命と認証の違いに関する国会答弁
・   1期の味村治内閣法制局第一部長は,昭和55年3月27日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
①  先生の御指摘のように、第六条では、内閣総理大臣または最高裁判所の長たる裁判官は天皇が任命するということになっておりますし、その他の官吏につきましては認証する場合があるわけでございます。任命と申しますのは、もちろんその職につけることを任命というわけでございまして、認証というのは、これは任命の認証ということを例にとりますと、他の機関が任命いたしました者を、天皇がその任命の手続が正当であるということを確認されるということでございまして、事柄の重要性から申しまして、内閣総理大臣と最高裁判所長官は天皇の御任命と、それからその他の官吏で重要な職にございます者を、これは内閣なり何なりの任命した者を天皇が御認証になるという制度にしたわけでございまして、これはそれぞれの、何といいますか、職の重要性に着眼しての相違であろうかと存じます。
②  先生の御指摘になりました第七条第五号、第六号及び第八号、これらは、たとえば第五号で申し上げますれば、「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免」、こういった事柄は内閣なり内閣総理大臣の職権に属することでございますし、七条の六号の大赦等は、これも内閣の権限の範囲内でございますし、それから八号も、外交文書はこれは内閣の権限に属するわけでございますが、これらの事柄の重要性にかんがみまして、そういった事項を荘重にすると同時に権威づける、そういったような意味合いから、七条によりましてこれらの事柄を認証するということを天皇の国事行為とされたものと理解しております。


第6 天皇の公務の件数に関する国会答弁
・ 西村泰彦宮内庁次長は,平成29年2月22日の衆議院予算委員会第一分科会において以下の答弁をしています。
 天皇陛下の平成二十七年における御公務の件数は、国事行為が一千四十七件、公的行為が五百二十九件、その他の行為が六十八件であります。
 御公務の内容につきましては、まず第一に、国事行為として、内閣からの上奏書類への御署名、御押印、信任状奉呈式、勲章親授式、新年祝賀の儀などがございます。第二に、公的行為としまして、認証官任命式、拝謁、午さん、晩さん、都内や地方への行幸、外国御訪問などがございます。第三に、その他の行為として、展覧会御覧、演奏会御鑑賞、御進講などがございます。
 天皇陛下の御活動のなかった日につきましては、平成二十七年中、百四日ございました。
 なお、平日はほぼ毎日御活動があり、土曜、日曜等も主催者からの願い出が多数あること、また、皇室行事の伝統にも由来し、相当多数の御活動がございます。
 また、御活動のない日でありましても、各行事等の趣旨、意義、歴史等に関して資料をごらんになるなどしてお過ごしになっておられます。


第7 関連記事その他
1(1) 平成20年12月31日までに実施された認証官任命式は355件・1755人です(宮内庁HPの「認証官任命式」参照)。
(2) 外部ブログの「きょうのへいか」「認証官任命式」に,これまでの認証官任命式に関する官報の記事が載っています。
(3) BLOGOSに「認証官任命式と内奏」(令和元年7月27日付)が載っています。

2(1) NHK政治マガジンに「新内閣はどのように発足し 総理大臣はどう誕生するのか」(2021年10月4日付)が載っています。
(2) 令和3年10月4日の閣議の議事録には以下の記載があります。
 次に,準備のための人事案件について,申し上げます。まず,新内閣総理大臣を任命することについて,内閣の助言と承認の御決定をお願いいたします。なお,内閣総理大臣に任命される者の氏名は空欄とし,衆議院議長からの首班指名の奏上書の送付を待って,書き入れることといたします。
 次に,内閣総辞職に伴い,内閣官房副長官等17名を,お手元に配布しております資料のとおり,願いに依り免ずることにつきまして,御決定をお願いいたします。なお,本件は,新内閣総理大臣が任命された時点又は後任者が任命された時点において,発令を行うものであります。
3(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 認証官任命式について(法務省大臣官房人事課の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所判事任命の閣議書
・ 高等裁判所長官任命の閣議書
・ 高裁長官人事のスケジュール
・ 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
 検事総長,次長検事及び検事長が認証官となった経緯

最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明

目次
1 内閣答弁書の説明
2 内閣官房の説明
3 最高裁判所人事局長経験者の説明
4 最高裁判所人事局長の国会答弁
5 最高裁判所事務総局の説明(ナンバリングを追加しています。)
6 最高裁判所裁判官の選任等の在り方に関する司法制度改革審議会意見書の記載
7 法曹制度検討会における,最高裁判所裁判官人事に関する議論
8 最高裁判所判事経験者の説明
9 昭和22年6月5日の片山内閣談話
10 関連記事その他
  
1 内閣答弁書の説明
  内閣は,平成21年5月22日付の「衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官の指名等に関する質問に対する答弁書」において以下の答弁をしています(読みやすいようにナンバリングを変えています。)。
① 最高裁判所の裁判官の任命資格については、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第四十一条第一項において、「識見の高い、法律の素養のある年齢四十年以上の者」と規定されており、これを踏まえ、最高裁判所の裁判官にふさわしい人物を指名し又は任命している。
② 「司法試験」については、司法試験法(昭和二十四年法律第百四十号)第一条第一項において、「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする」と規定されている。
  「法曹資格」については、一般的には、裁判官、検察官及び弁護士となる資格という意味で用いられているものと承知している。
③ 過去十年間に最高裁判所の裁判官に任命された者で、司法試験に合格していないもの又は司法試験に合格していても司法修習を終了していないものは六人であり、これらの者の主な前職は、京都大学教授、特命全権大使(アイルランド国駐箚)、内閣法制局長官、東北大学教授、労働省女性局長及び外務事務次官である。
④ 「天下り」とは、一般的には、各府省で退職後の幹部職員を企業、団体等に再就職させることをいうものと考えている。
⑤ 最高裁判所の裁判官の指名又は任命に当たっては、裁判所法第四十一条第一項に規定する任命資格を満たし、最高裁判所の裁判官にふさわしい人物を選考しており、「「最高裁裁判官」の身分が行政官の天下り先となっているとも受け止められる」ことはないものと考える。
⑥ 過去十年間に高等裁判所又は地方裁判所の裁判官に任命された者で、司法試験に合格していないもの又は司法試験に合格していても司法修習を終了していないものはいない。

2 内閣官房の説明

  内閣官房は,我が国の国政上の重要事項や内閣の重要政策に関する企画,立案及び総合調整,情報の収集及び分析,危機管理等をつかさどる機関であります(最高裁平成30年1月19日判決)ところ,平成14年7月5日の司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)の資料4「最高裁裁判官の任命について」には以下の記載があります。

◎最高裁裁判官の任命について
○ 最高裁裁判官の任命は、最高裁長官の意見を聞いたうえで、内閣として閣議決定する。
○ 最高裁長官に意見を聞くのは、最高裁の運営の実情を踏まえたものとなるよう人事の万全を期すため慣例として行っている。
○ 最高裁長官の意見は、一般的には、出身分野、候補者複数名と最適任候補者に関するものである。
○ 候補者については、(ア)主として裁判官、弁護士、検察官の場合は、最高裁長官から複数候補者について提示を受け、(イ)行政、外交を含む学識経験者については、原則内閣官房で候補者を選考し、いずれの場合も内閣総理大臣の判断を仰いだうえで閣議決定する。
○ その際、最高裁裁判官は国民審査をうける重い地位であることに鑑み、極力客観的かつ公正な見地から人選している。

○ 現在の最高裁裁判官の出身分野は、最高裁の使命、扱っている事件の内容などを総合的に勘案した結果のもの。
※ 現在の最高裁裁判官の15 人の出身分野
裁判官6(民事5、刑事1)、弁護士4、学識者5(大学教授1、検察官2、行政官1、外交官1
※最高裁裁判官の法律上の任命資格〔裁判所法 41条〕
・ 識見の高い、法律の素養のある40 歳以上の者。15 人のうち少なくとも10人は、
① 高裁長官又は判事を10年以上
② 高裁長官、判事、簡裁判事、検察官、弁護士、法律学の教授等で、通算20年以上
※ 最高裁の使命→憲法判断、法令解釈の統一
※ 平成12年度;新規受理件数 約6,400件(うち民事事件 約4,500件。刑事事件 約1,900件。)、大法廷事件(憲法判断・判例変更)8件。
○ 以上について、内定後官房長官記者会見で、可能な範囲で選考過程、選考理由を明らかにする。
   なお、候補者を含め具体的な人選の過程は公表しない。

3 最高裁判所人事局長経験者の説明
(1)ア  最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所人事局長・元最高裁判所長官)97頁には以下の記載があります。
  判事、判事補、簡裁判事などの人事は、最高裁が提出する名簿に基づき内閣が任命するが、最高裁裁判官の人事は三権分立におけるチェック・アンド・バランスから、完全な内閣の専権に属している。
  ただ、最高裁長官は自己の後任人事を含む最高裁裁判官の人事について、首相に意見を述べるのが慣例である。その意見を聴くかどうかは内閣の自由だが、この習慣はぜひ続けてほしい。

イ 後藤田正晴と矢口洪一の統率力(著者は御厨貴)147頁及び148頁には,高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官の発言として以下の記載があります。
・ 「最高裁判事の場合、『長官の意向は分からないけれども、こっちで勝手に回ししておけ』なんて、そんなことは考えられません。それは、長官がどういうふうにお考えになっているかということを、以心伝心であるのか、長官が『これで行こう』とおっしゃるのか、それはいろいろな状況がありますが、長官が総理に会われて、長官の意向が実現できないような状況は、私には考えられません。根回しをするとか、しないとかの問題ではなく、長官の意向の実現に、あらゆる準備をするのが事務総長、人事局長、人事担当の部下の仕事でしょう。その意味で、根回しというような表現は、正確ではありません。」
・ 「裁判官の人事で、長官が総理に会って初めて、『後任は、この人で・・・』と言って、総理が『ああそうか、そうしましょう』と言うわけがないじゃないですか。総理官邸の意向と、長官の希望とが合致するのが最も望ましいと思います。その場合には、短い会談で決まることになります。人事担当者としては、最も嬉しい状況です。」
・ 「それ(山中注:最高裁に)行政官から誰が入るかというときに、『誰を考えているのか』と言えば、官邸も総理が一人で考えているわけではないでしょう。行政官から最高裁判事になるような人は、大体、官房長官、官房副長官ぐらいのところで考えているんです。そう言っては何だけれども、後藤田正晴さんという人は、大したものでした。それから保利茂さんも官房長官として、力を発揮されたようです。その点、二階堂進さんなんかは、どちらかと言うと、あまり関心がなかった。竹下登さんは、人事のことはよく考えられました」
(2) 「一歩前へ出る司法」(著者は泉徳治 元最高裁判所人事局長・元最高裁判所判事)157頁ないし159頁に以下の記載がありますから,引用します。
渡辺 最高裁判事を経験された先生方の回想録などを読みますと,最高裁判事への就任の打診はいろいろな形で行われるようですが,先生の場合はどのように打診されたのですか。
泉 最高裁判事は内閣が任命します。内閣は,最高裁判事の任命にあたっては,最高裁長官の意見を聴くという慣行があります。首相が最高裁長官に直に会って意見を聴きます。ただし,任命権はあくまでも内閣にありますから,最高裁長官としても複数の候補者を挙げて,優先順位を付けて意見を述べるということをしております。そして,歴代内閣は,最高裁長官の意見を尊重してきたと思います。内閣の任命権と司法の独立を調和させるという考えから,こういう慣行ができてきたのだと思います。新聞の「首相の動静」欄に,首相が最高裁長官に会ったということが書かれていれば,だいたいがこの意見具申です。そこで,首相からこの候補者を任命しようという意向が示されると,最高裁長官が候補者に内定を伝えるという運びになります。人事局長が長官に代わって内定を伝えることもあります。私の場合,山口繁長官が官邸から戻られてから私に電話で内定を伝えてこられました。それまでは,意向打診等の話は何もありませんでした。
山元 先生が電話をしてお願いできませんか,と候補者の方にいわれたこともあったのですね。
泉 人事局長のときに,長官の指示で電話をしたことが何度かありました。長官が官邸から帰ってきてから電話をしておりました。相手が内部の裁判官だと,長官が直々に電話をするということもあります。
山元 受けられた方のリアクションも千差万別だったのでしょうか。
泉 最高裁から内定を伝えるのは裁判官と弁護士です。大体は,ありがたくお受けしますということだったと思います。検察官の場合は,法務省が候補者を最高裁に推薦してきますし,本人への内定の通知も法務省がしております。行政官と学者の場合は,内閣が直接人選しますので,最高裁は関与しません。ただし,行政官と学者の場合も,最高裁長官が首相に会って,内閣の人選に最高裁として異存がないということを伝えます。また,学者については,内閣の意向で,人選の段階から最高裁が意見を述べたり,本人への内示も最高裁が行うということはあります。ケース・バイ・ケースです。
     弁護士の場合は,日弁連が最高裁長官に複数の候補者を推薦してきます。最高裁長官は,その中からある程度人数を絞って内閣に推薦しております。日弁連には最高裁判所裁判官推薦諮問委員会があります。以前は,委員会が自ら候補者を選んでいたようです。そのため,東京の三弁護士会と大阪弁護士会から選ばれる,例外的に神戸,名古屋の弁護士会から選ばれる,これらの弁護士会の幹部の意向が反映させることがあったようです。また,最高裁長官が日弁連の推薦にない弁護士を内閣に推薦するということもあったと,野村二郎「最高裁全裁判官」(三省堂,1986年)などに書かれております。ところが,中坊公平さんが1990年に日弁連会長になってから,広く全国から候補者を募集するというようになりました。現在では,弁護士会および会員が候補者を推薦できる,会員が推薦するときは50人以上の推薦人を要するとなっております。その中から委員会が面接などで日弁連として推薦する候補者とその順位を決めて日弁連会長に答申する。日弁連会長は,委員会の答申に基づいて候補者を最高裁長官に推薦するという手順になっております。

    本人への内定の連絡が終わってから,閣議決定があり,内閣から報道発表されます。内閣の任命ですから,最高裁が報道機関に話すということは一切ありません。


4 最高裁判所人事局長の国会答弁
・ 47期の徳岡治最高裁判所人事局長は,令和2年11月17日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 最高裁判所判事の選任につきましては、最高裁判所長官が長官としての立場から内閣総理大臣に対して意見を述べるというのが慣例となっております。これは、最高裁判所長官が裁判所の運営に最も詳しい立場にあるということ、また、最高裁判所判事の選任という事柄の性質上、司法部の意見を聞くことが望ましいということからこのような慣例になっているものと承知しております。
② 憲法は内閣が最高裁判所判事を任命することとしておりますけれども、そのことと司法の独立との関係につきましては、憲法の解釈にわたるものでございますので、最高裁判所としてお答えすることは差し控えたいと存じます。 

5 最高裁判所事務総局の説明(ナンバリングを追加しています。)
(1) 平成28年度(最情)答申第10号(平成28年4月27日答申)の記載
ア 最高裁判所裁判官のうち,最高裁判所長官は,内閣の指名に基づき天皇が任命し(憲法6条2項),その他の裁判官である最高裁判所判事は,内閣が任命する(憲法79条1項)とされているところ,法律上,内閣において最高裁判所や最高裁判所長官の意見を聴くこととはされておらず,また,最高裁判所において日本弁護士連合会,法務省等に推薦を依頼することともされていない。したがって,本件各開示申出文書の存在が法律上推認されるということはできない。
  しかし,最高裁判所の職員の説明によれば,内閣は,最高裁判所裁判官を任命等するに際し,慣例として最高裁判所長官の意見を聴くこととなっている。また,当委員会庶務に調査させたところ,このような慣行の存在については首相官邸のホームページにおいても公表されていることが確認された。
  したがって,最高裁判所裁判官の任命等について,最高裁判所長官は,意見を述べることになっており,その際に何らかの書面が作成される可能性は否定できない。 

   もっとも,このことについて,最高裁判所の職員は,内閣に対してどのような意見を述べるか,推薦依頼をするかなどについては,最高裁判所長官がその都度決めることであり,これらをどのような方法によって行うかを含め一切の事柄が,そのときどきの最高裁判所長官の判断に委ねられているから,最高裁判所事務総局としては,その立場上どのような文書を授受するかを定めた文書は作成していない旨を説明する。最高裁判所長官が内閣に対して述べる意見が,最高裁判所裁判官の任命等という高度な人事に関する事柄を対象としていることや,その意見が慣例として述べられているにすぎないことからすると,意見を述べるための準備行為等について,最高裁判所事務総局が組織として何らの定めも設けていないことは,不自然なこととはいえない。 
   また,日本弁護士連合会は,「日本弁護士連合会が推薦する最高裁判所裁判官候補者の選考に関する運用基準」を定め,同会が推薦する最高裁判所裁判官候補者の選考のために最高裁判所裁判官推薦諮問委員会を設置しているが,上記運用基準にも,誰に対して推薦をするのか,推薦に当たってどのような書面を作成するのかなどについての定めはなく,同基準の存在をもって,本件各開示申出文書の存在を推認することもできない。 
   そうすると,他に本件各開示申出文書の存在をうかがわせる事情が見当たらないことからしても,本件各開示申出文書は作成し,又は取得していないとする最高裁判所事務総長の説明は合理的であるといえ,最高裁判所において,本件各開示申出文書は保有していないと認められる。
イ 本件各開示申出対象文書は,①最高裁が日弁連に対し,新任の最高裁判事の推薦を依頼する際,どのような文書を授受することになっているかが分かる文書,及び②最高裁が法務省又は検察庁に対し,新任の最高裁判事の推薦を依頼する際,どのような文書を授受することになっているかが分かる文書です。
(2) 平成29年度(最情)答申第54号(平成29年12月22日答申)の記載
ア 口頭説明の結果によれば,最高裁判所長官は,最高裁判所判事の任命等につき,内閣から意見を求められる慣例があるが,内閣に対する最高裁判所判事の後任候補者の提示等については,どのような方法によって行うかを含む一切の事柄が,そのときどきの最高裁判所長官の判断に委ねられているとのことである。
  この説明を踏まえて検討すれば,最高裁判所判事の任命という高度な人事について,その具体的手続の一端が明らかになると,第三者が不当な働き掛けを試みるおそれが生じるなど,今後の人事に対して適切でない影響を与えて,適正な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められるから,本件開示申出文書が存在するか否かは,法5条6号に規定する不開示情報に相当する。
  したがって,本件開示申出文書について,その存否を答えるだけで法5条6号に規定する情報に相当する不開示情報を開示することになるとした原判断は,妥当である。

イ 本件開示申出文書は,特定の最高裁判所判事の後任について最高裁判所が内閣に対して提示した候補者の人数及び日本弁護士連合会からの推薦の有無が分かる文書です。
(3) 平成30年度(最情)答申第54号(平成30年12月21日答申)の記載
ア ①   別紙記載1の文書について,最高裁判所事務総長の上記説明によれば,事務総局における決裁は審査公報の原稿を送付することを対象とするものであり,原稿の内容等については判事に一任されているので,当該文書は作成し,又は取得していないとのことである。本件開示申出の内容に照らして検討すれば,このような説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において別紙記載1の文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
   したがって,最高裁判所において別紙記載1の文書を保有していないと認められる。
② 別紙記載2の文書について,苦情申出人は,対象文書の存否を答えるべきである旨を主張する。しかし,別紙記載2の文書の存否を答える場合には,特定の最高裁判所判事について本件開示申出に係る身上調査資料が存在するか否かが明らかになることからすれば,法5条6号に規定する不開示情報に相当する特定の最高裁判所判事の人事の具体的手続に関する情報を開示することになるので,文書の存否を答えることができないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。
   したがって,別紙記載2の文書について,存否を答えるだけで法5条6号に規定する情報に相当する不開示情報を開示することになるとした原判断は,妥当である。

イ 別紙記載1の文書は「別件の開示申出に対して開示された特定の文書の記載内容について,間違いないとの確認・検査の上での是認と思料される。何と照合されたか,原資料名とその原本。」であり,別紙記載2の文書は「特定の最高裁判所判事の身上調査資料」です。
  また,特定の最高裁判所判事というのは,学校法人加計学園の監事をしていた木澤克之最高裁判所判事のことと思います。

6 最高裁判所裁判官の選任等の在り方に関する司法制度改革審議会意見書の記載
  平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書「Ⅲ 司法制度を支える法曹の在り方」には,最高裁判所裁判官の選任等の在り方について,以下の記載があります。

  • 最高裁判所裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置を検討すべきである。
  • 最高裁判所裁判官の国民審査制度について、国民による実質的な判断が可能となるよう審査対象裁判官に係る情報開示の充実に努めるなど、制度の実効化を図るための措置を検討すべきである。

   現行制度においては、最高裁判所裁判官の選任に関して、同裁判所長官については内閣の指名に基づき天皇が任命し、同裁判所判事については内閣が任命することとされているが(憲法第6条第2項及び同第79条第1項並びに裁判所法第39条第1項、第2項)、内閣による指名及び任命に係る過程は必ずしも透明ではなく、同裁判所裁判官の出身分野別の人数比率の固定化などの問題点が指摘されている。こうした現状を見直し、同裁判所裁判官に対する国民の信頼感を高める観点から、その地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置を検討すべきである(昭和22年当時、裁判所法の規定に基づき設けられていた裁判官任命諮問委員会の制度も参考となる。)。
   また、最高裁判所裁判官の国民審査制度については、その形骸化が指摘されている。こうした現状を見直し、最高裁判所裁判官に対する国民の信頼感を高める観点から、最高裁判所裁判官の国民審査制度について、国民による実質的な判断が可能となるよう審査対象裁判官に係る情報開示の充実に努めるなど、制度の実効化を図るための措置を検討すべきである。

7 法曹制度検討会における,最高裁判所裁判官人事に関する議論
  第12回(平成14年11月12日)ないし第14回(平成14年12月10日)の法曹制度検討会における各委員の発言内容をまとめた,「最高裁裁判官の選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置」について(議事整理メモ)には,以下の記載があります。
○選任された最高裁裁判官についての説明の在り方などについての意見
・ 選任過程の透明化もさることながら、選任された裁判官が、国民の目から見て納得できる人かどうかが重要である。実際に選任された裁判官が、信頼に値すると判断できるような十分な説明をして欲しい。最高裁の裁判官はいわば公人であるから、プライバシーを多少犠牲にするくらいの覚悟があってしかるべきである。(第12回・中川委員)
・ 新たに行われるようになった内閣官房長官の記者会見による説明については、透明化という面で足りるのか、という感じを受ける。また、記者会見の内容がマスコミ報道の中で詳しく述べられているかというと必ずしもそうではない。だれが最高裁の裁判官に任命されることになったかということと、その人の経歴だけが報道されているのが実態であり、国民が、任命に関する透明化された情報を知ることができないという現状が続いているのではないか。(第13回・松尾委員)
・ 内閣として選任過程をどこまで説明できるかということになるが、個人のプライバシーのことも考慮する必要はあるが、最大限の努力をする必要がある。それとともに、国民審査においても、対象となる裁判官についての、これまでよりも一歩も二歩も踏み出した情報提供が可能であり、現状では、そのような側面からの改善が望ましい。(第13回・小貫委員)

8 最高裁判所判事経験者の説明
(1) 最高裁判所は変わったか-裁判官の自己検証-には以下の記載があります。
(5頁の記載)
   法曹資格を有する者からの任命については、最高裁判所長官の推薦を受け入れて任命する慣行ができていると言われてきた。しかし、その推薦の実情は、最高裁のなかにいても全くわからない。長官が推薦しているとしても、それはその資格において行っているものであって、私の在任中、裁判官会議で議論になることもなければ、話題になることもなかった。最高裁のなかにいても新聞報道によって初めてその内定者がわかるという実情である。
(6頁の記載)
   わが国のように、長期にわたり政権交代がない場合に、最高裁の裁判官の任命が時の内閣の意思で決まり、選任の過程が不透明で、客観性の担保も用意されていないということは、立法、行政へのチェック機能という司法の役割を考えれば決してあるべき姿ではない。司法の役割が益々重視されるべきだと言われている今日、このような現状をいつまでも放置すべきことではないと思うのであるが、現状についての目だった改革意見はどこからも出ていない。


(2) 坂田宏のペイジ「(インタビュー)最高裁人事という「慣習」」(2014年4月17日05時00分)(発言者は滝井繁男 元最高裁判所判事・元大阪弁護士会会長となっています。)には,以下の発言があります。
① 最高裁の竹崎博允(ひろのぶ)長官が辞任し、後任に寺田逸郎(いつろう)最高裁判事が就任しました。最高裁の意向に沿った、「順当な人事」ということでいいのでしょうか。
    「最高裁長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命すると、憲法に定められています。内閣には、この指名について説明責任があります。しかし、内閣は今回も、なぜこの人を起用したのか、どういうプロセスを経て選んだのかを、全く明らかにしていません。長官以外の最高裁判事は内閣が任命します。長官や判事の人事に、米国ほどではなくても、国会が何らかの形で関わることで透明化を図る必要があります
② 米国の連邦最高裁の判事はどうやって任命されるのですか。
    「大統領が上院の同意を得て任命します。上院の司法委員会では、銃規制や妊娠中絶など、政党間で激しく対立する問題についてどう考えるか、徹底的に質問されます。判事候補に対する聴聞は一大政治イベントになり、メディアでも大きく報道されます。上院の同意が得られなかったなどで、任命されなかった人は過去に27人もいます。大統領と上院が共に選任プロセスに関わる仕組みなのです。政争の場と化するという弊害もありますが、手続きの透明化という観点では優れています」
③ 最高裁の判事や長官の選任を透明化するには、どうすればいいでしょうか。
    「最も簡単なのは、長官や判事が選任された後、なぜその人を選んだのか、国会で首相らに質問して説明を求めることです。国会がつくった法律や政府の行為を無効にできる権限を持ち、国民生活に重要な影響力を持つ最高裁判事らの選任に、国会はもっと関心を持ち、内閣に説明責任を果たすよう迫るべきです。また、カナダで2006年以来行われているように、新任の最高裁判事を議会の委員会に呼んで聴聞するということも検討に値します。その聴聞会は紳士的で、内閣の任命を覆すものではなく、国民に新任判事をお披露目することが主眼のようです」
④ その場合、(山中注:最高裁判事の候補者を答申する)諮問委員会のメンバーの人選が重要ですね。
「諮問委員会が作った候補者リストの中から、内閣が最高裁判事を選ぶ。その人を国会が聴聞する。一連のプロセスを判断材料に、国民が国民審査に臨む。それが理想ですね。裁判官選びに国民の関心が高まれば、形骸化している国民審査を意味のあるものに近づけることもできるかもしれません」
「最高裁判事についての国民の関心の低さは深刻です。三権の長の一人である最高裁長官の名前さえ、一般国民ならまだしも、法科大学院の学生でもほとんど知らない最高裁の判事や長官の任命過程について厳しく追及しない国会やメディアの責任もあるかもしれませんが、国民審査の活性化に向けた議論を始めなければならないと思います

9 昭和22年6月5日の片山内閣談話
・ 「日本の最高裁判所 判決と人・制度の考察」314頁及び315頁によれば,裁判官任命諮問委員会設置に当たっての,昭和22年6月5日の片山内閣談話は以下のとおりです(文中にある「休戚」(きゅうせき)は,「喜びと悲しみ」という意味です。)。
  新憲法に規定された新しい裁判制度確立の為め、いよいよ最高裁判所の建設に着手する。(中略)新憲法は最高裁判所に法令審査権をも含む広汎にして最高の裁判権を与え、これを憲法の番人たる地位に置き、全下級裁判所を率いて国民の権利自由を確保する神聖なる使命を完うさせようとして居る。よき最高裁判所の構成こそは真に国家百年の大計である。従ってその構成は各界の最高権威者を網羅する絢燗多彩な良識の結集体たることを期待して居るのである。故にこの最高裁判所の裁判官の選定は単に一内閣の仕事でなくて国家的大事業であり、国民の休戚に関すること、国会における総理大臣の選定に優るとも劣らない。従って政府はこの神聖なる事業が公正にして明朗、いわゆるガラス張りの中で最も民主的に行われることを期待(する)。(中略)
  国民は、この選定がいかに行われるかについて深い関心をもって、これを見守り、適切な批判を怠ってはならない。(中略)最高の知識と人格とを網羅する最高裁判所の建設こそは、国民に課せられた偉大な責務である。

10 関連記事その他
(1) 令和元年6月13日付の理由説明書には以下の記載があります。
   最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。そのため,最高裁判所では,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止している。
   この点,本件対象文書中,原判断において不開示とした部分は,各門における入構方法に関する具体的な運用が記載されており, この情報を公にすると警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるから, 当該部分は,行政機関情報公開法第5条第6号に定める不開示情報に相当する。
   よって,原判断は相当である。

(2) 首相官邸HPの「諸外国等における最高裁判所裁判官任命手続等一覧表」には以下の国の憲法裁判所及び最高裁判所の裁判官任命手続等の比較が載っています。
ア 憲法裁判所設置国
ドイツ,フランス,イタリア,オーストリア,ベルギー,タイ,大韓民国,台湾
イ 憲法裁判所非設置国
アメリカ合衆国,カナダ,ブラジル,オランダ,スイス,スェーデン,デンマーク,ノルウェー,連合王国,オーストラリア,インド,インドネシア,シンガポール,中華人民共和国,フィリピン及びマレイシア
(3) 「司法の可能性と限界と-司法に役割を果たさせるために-」(講演者は31期の井戸謙一 元裁判官)には以下の記載があります(法と民主主義2019年12月号20頁及び21頁)。
   長年、日弁連推薦枠から最高裁判事になった方々は、有能で人格的にも立派な弁護士として、多くの人から尊敬されていた人たちだったと思いますが、最近はそういう人がいないという感じがします。これには最高裁判事の選任手続の問題があると思いますが、これはまたあとで申し上げます。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所判事任命の閣議書
・ 最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会,及び最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等
・ 外務省国際法局長経験のある最高裁判所判事
・ 弁護士出身の最高裁判所裁判官の氏名の推移(昭和時代及び平成時代)
・ 日弁連推薦以外の弁護士が最高裁判所判事に就任した事例

裁判官の記録紛失に基づく分限裁判

目次
1 裁判官の記録紛失に基づく分限裁判の実例
2 伊藤達也名古屋地裁判事補の記録紛失に基づく分限裁判は未だに実施されていないと思われること等
3 関連記事その他

1 裁判官の記録紛失に基づく分限裁判の実例
・ 高輪1期以降の裁判官の記録紛失に基づく分限裁判は以下のとおりです。
① 大阪高裁昭和55年7月17日決定(戒告)が取り扱った事例
   昭和55年5月23日午後5時ころ,担当の単独事件である民事第一審訴訟事件記録2冊を,自宅において判決起案のため黒色手提げ鞄に入れて退庁し,同じ民事部所属の裁判官2名とともに飲酒をしたのち,帰宅のため午後8時過ぎころ阪神電鉄梅田駅から乗車し,途中,同僚と分れて一人で甲子園駅で下車し,休憩の後,甲子園球場に立ち寄り,再び阪神電鉄で西宮駅に至り下車し,徒歩で翌5月24日午前2時ころ西宮市の宿舎に帰宅したが,その間,右事件記録2冊を黒色手提げ鞄とともに紛失したものであって,その後,関係各方面に照会する等鋭意調査したが,発見されなかった事例
② 大阪高裁昭和58年3月11日決定(戒告)が取り扱った事例
   昭和58年1月27日,大阪地裁の配属部係属中の事件である民事第一審訴訟事件記録3冊を自宅において調査,判決起案するため,ビニール製手提鞄及び同ショルダーバッグに入れて自家用普通乗用自動車に積み,これを運転して池田市の自宅への帰途,同日午後5時少し前ころ,ゴルフ練習のため豊中市所在のゴルフセンターに立ち寄ったが,助手席に右手提鞄とシヨルダーバッグを重ねて置き,その上に折りたたんだ上衣を置いたままの状態で右自動車を同ゴルフセンターの無人無料の青空駐車場に駐車させたまま,午後5時ころから午後6時半ころまで同ゴルフセンターの練習場でゴルフの練習をしていたため,その間に何人かに右手提鞄及びショルダーバッグ等を窃取されて,在中の前記記録3冊を紛失したものであって,その後大阪府豊中警察署の派出所に盗難被害を届け出て鋭意捜索に努めたが,右の記録が発見されなかった事例
③ 東京高裁昭和58年12月6日決定(戒告)が取り扱った事例
   昭和58年9月30日午後8時ごろ,東京地方裁判所民事第11部に係属中で自分が担当している地位保全等仮処分申請事件の事件記録2冊を,自宅において決定書起案のため通勤用の茶色手提げかばんに入れて退庁したが,帰宅途中国電有楽町駅付近の居酒屋に立ち寄って飲酒し,その後の行動についての記憶がつまびらかでないほどに深酔いした結果,同夜右事件記録2冊を手提げかばんとともに紛失し,その後関係各方面の協力を得て調査を尽くしたが,発見されなかった事例
④ 東京高裁平成5年3月5日決定(戒告)が取り扱った事例
   平成5年1月14日夜,東京地方裁判所に係属中で自分が担当している事件の記録合計4冊を自宅で判決書起案をするために所持して帰宅する途中,電車内で眠り込んだ結果,右記録4冊を紛失した事例
⑤ 東京高裁平成12年12月7日決定(戒告)が取り扱った事例
   平成12年8月22日午後9時ころ,前橋家庭裁判所に係属している少年保護事件の決定書を起案するために,同事件の記録1冊を革製手提げ鞄に入れて退庁し,午後9時27分前橋駅発上野駅行きの普通電車に乗り込んだが,車内で眠り込んだ結果,右鞄とともに右記録1冊を紛失し,関係各方面においても調査を尽くしたが,右記録一冊が発見されなかった事例


2 伊藤達也名古屋地裁判事補の記録紛失に基づく分限裁判は未だに実施されていないと思われること等
(1) 過去の実例では,裁判官の記録紛失に基づく分限裁判は,裁判官が記録を紛失してから5ヶ月以内に行われています。
(2)ア 66期の伊藤達也名古屋地裁判事補は,平成30年9月29日,名古屋市内で友人の裁判官らと飲酒した帰りにタクシーに乗り,記録の入ったキャリーバッグをトランクに置き忘れました(日経新聞HPの「裁判記録、タクシーに置き忘れ紛失 名古屋地裁の裁判官 」参照)。
イ 平成31年4月20日現在,伊藤達也名古屋地裁判事補の記録紛失に基づく分限裁判は未だに実施されていないと思われます。
(3) 平成31年3月8日付の名古屋地裁の司法行政文書不開示通知書によれば,「伊藤達也判事補が平成30年9月29日又は同月30日にタクシーに乗車した結果,民事事件の記録等を紛失したことに関して作成し,又は取得した文書」は,全体として不開示情報に該当するそうです。
(4) 寺西判事補事件に関する最高裁大法廷平成10年12月1日決定は,「裁判官の場合には、強い身分保障の下、懲戒は裁判によってのみ行われることとされているから、懲戒権者のし意的な解釈により表現の自由が事実上制約されるという事態は予想し難い」と判示しています。

3 関連記事その他
(1) 46期の岡口基一東京高裁判事は,平成30年5月17日頃,勤務時間外に,訴訟において犬の所有権が認められた当事者(もとの飼い主)の感情を傷つけるツイートをした結果,最高裁大法廷平成30年10月17日決定により,戒告されました(「岡口基一裁判官に対する分限裁判」参照)。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の記録紛失に関して作成し,又は取得した文書は全部が不開示情報であること
・ 分限裁判及び罷免判決の実例
・ 柳本つとむ裁判官に関する情報,及び過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容

20期の田中正人大阪高裁判事に対する懲戒処分(戒告)

20期の田中正人大阪高裁判事(当時)(前職は神戸地裁所長)に対する,最高裁大法廷平成13年10月10日決定の全文は以下のとおりです。
「分限裁判及び罷免判決の実例」も参照してください。

裁判官分限事件の裁判の公示

平成13年(分)第4号

決   定

大阪高等裁判所判事

被申立人 田中 正人

上記被申立人に対し大阪高等裁判所から裁判官分限法6条の規定による申立てがあったので,当裁判所は,被申立人に陳述の機会を与えた上,次のとおり決定する。

主 文

被申立人を戒告する。

理 由

被申立人は,平成12年7月31日から同13年9月6日まで,神戸地方裁判所長の職にあった者であるが,同年8月30日午後7時40分ころから同日午後7時53分ころまでの間にわたり,大阪市淀川区所在の阪急電鉄株式会社十三駅付近から兵庫県西宮市所在の同会社西宮北口駅付近までの間を進行中の阪急梅田駅発三宮駅行き通勤急行電車の車両内において,2人掛け座席の自席の右側に座っていた乗客の女性(当時24歳)に対し,右膝,右ふくらはぎを同人の左膝,左ふくらはぎに押し付け,右肘を同人の左肘に押し付けたものである。

上記の事実は,被申立人の履歴書,大阪高等裁判所の被申立人に対する事情聴取の報告書並びに平成13年9月18日付け,同月21日付け及び同月27日付けの大阪高等裁判所事務局長作成の各報告書により,これを認める。

被申立人の上記行為は,裁判所法49条所定の品位を辱める行状に該当する。

よって,裁判官分限法2条の規定により被申立人を戒告することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

平成 13 年 10 月 10 日

最高裁判所大法廷

裁判長裁判官 山口  繁

裁判官 千種 秀夫

裁判官 河合 伸一

裁判官 井嶋 一友

裁判官 福田  博

裁判官 藤井 正雄

裁判官 金谷 利廣

裁判官 北川 弘治

裁判官 亀山 継夫

裁判官 奥田 昌道

裁判官 梶谷  玄

裁判官 町田  顯

裁判官 深澤 武久

裁判官 濱田 邦夫