第1 弁護士となる資格と弁護士登録の違い
弁護士法は,弁護士となる資格を取得する要件と,実際に弁護士となるための登録手続を分けて定めている。資格取得の経路は同法4条から6条まで,欠格事由は同法7条,弁護士名簿への登録は同法8条以下の問題である。
したがって,司法試験に合格したこと,弁護士となる資格を有すること及び弁護士として登録されていることは同じ意味ではない。本記事では,通常の資格取得ルート,司法修習を経ない資格取得ルート,欠格事由及び登録の順に説明する。
第2 司法修習を終える通常の資格取得ルート
1 司法試験合格から司法修習修了まで
弁護士法4条は,司法修習生の修習を終えた者が弁護士となる資格を有すると定めている。通常は,司法試験に合格して司法修習生となる資格を得た後,最高裁判所に司法修習生として採用され,司法修習を終えることにより弁護士となる資格を取得する。
最高裁判所の「司法修習の概要」によれば,司法修習の期間は1年間であり,修習の最後に司法修習生考試が行われる。司法試験に合格しただけでは弁護士となる資格を取得せず,司法修習生考試に合格して司法修習を終える必要がある。
2 司法修習生考試
司法修習生考試は,一般に「二回試験」と呼ばれている。試験の科目及び不合格者数等については,「二回試験(司法修習生考試)」で整理している。
第3 司法修習を終えない資格取得ルート
1 最高裁判所の裁判官として在職した者
弁護士法6条により,最高裁判所の裁判官として在職した者は弁護士となる資格を有する。これは司法修習の修了又は法務大臣の認定を要件としない独立の資格取得ルートである。
2 法務大臣による弁護士資格認定制度
弁護士法5条は,同条各号の職歴要件を満たし,日弁連が実施する法務大臣指定研修の課程を修了した者について,その申請に基づく法務大臣の認定により弁護士となる資格を認めている。職歴年数だけで資格を取得する制度ではない。
現行の職歴要件は,次の4類型である。いずれも条文上の職又は職務に該当することが必要であり,名称の似た職歴を形式的に当てはめることはできない。
① 司法修習生となる資格を得た後,簡易裁判所判事,検察官,裁判所調査官,裁判所事務官,法務事務官,所定の研修機関の教官,国会議員,両議院の法制局参事,内閣法制局参事官又は所定の大学の法律学の教授若しくは准教授として在職した期間が通算5年以上となる場合(弁護士法5条1号)。
② 司法修習生となる資格を得た後,企業その他の団体又は国若しくは地方公共団体において,法令所定の法律事務に従事した期間が通算7年以上となる場合(弁護士法5条2号)。
③ 検察庁法18条3項の考試を経た後,副検事を除く検察官として在職した期間が通算5年以上となる場合(弁護士法5条3号)。
④ 1号の職歴と3号の職歴を合算して5年以上となる場合,又は2号の職歴と1号若しくは3号の職歴を合算して7年以上となる場合(弁護士法5条4号)。
3 企業法務又は公務の職務経験
弁護士法5条2号の企業等における対象業務は,契約書案その他の権利義務に関する法的検討に基づく書面の作成,裁判手続等のための事実関係の確認若しくは証拠収集,提出書面案の作成,期日における主張若しくは意見の陳述又は尋問,民事紛争解決のための和解交渉等である。国又は地方公共団体では,法令の立案,条約その他の国際約束の締結,条例案の審査若しくは審議,訴訟等の法律事務又は裁判に類する審判等に関する事務が対象となる。
したがって,企業の法務部その他の部署に7年間在籍したという事実だけでは足りず,具体的な担当職務が法令所定の法律事務に当たる必要がある。法務省の「弁護士資格認定制度」は無料の予備審査を案内しているため,職歴の該当性に疑義がある場合は申請前に確認できる。
4 大学教授等に関する経過措置
平成16年法律第9号による改正前の弁護士法には,一定の大学で法律学の教授又は助教授として5年以上在職した者について,司法試験合格及び司法修習を経ない資格取得ルートがあった。平成16年3月31日までに旧法の要件を満たした者には,既得資格を維持する経過措置がある。
また,平成20年3月31日までに所定の教授又は准教授の在職期間が通算5年以上となった者には,司法修習生となる資格の有無を問わず,指定研修の修了及び法務大臣の認定を要件とする経過措置がある。現在の一般的な大学教授等のルートは弁護士法5条1号によるものであり,司法修習生となる資格を得た後の在職期間が必要である。
5 申請及び指定研修
法務省の「弁護士資格認定制度」によれば,申請予定者は任意かつ無料の予備審査を受けることができる。正式な認定申請後,法務大臣が職歴等の要件を審査して受けるべき研修を通知し,申請者が集合研修及び法律事務所における実務研修を終えると,日弁連が履修状況を法務大臣に報告し,認定の可否が判断される。
必要書類,申込期限,研修日程及び費用は年度ごとに変わり得るため,申請時には法務省の最新案内を確認する必要がある。
第4 弁護士の欠格事由
1 現行法の4類型
弁護士法7条は,次の者が弁護士となる資格を有しないと定めている。
① 拘禁刑以上の刑に処せられた者。
② 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者。
③ 弁護士又は外国法事務弁護士として除名され,弁理士として業務禁止の処分を受け,公認会計士として登録抹消の処分を受け,税理士として業務禁止の処分を受け,公務員として懲戒免職の処分を受け,又は税理士でなくなった後に業務禁止相当の決定を受け,その処分等の日から3年を経過しない者。
④ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者。
2 拘禁刑への改正と刑の言渡しの効力
刑法等の改正により,懲役及び禁錮は拘禁刑に統一され,令和7年6月1日に施行された。このため,現行の弁護士法7条1号は「禁錮以上」ではなく「拘禁刑以上」と定めている。
同号には3年等の欠格期間が明記されていないが,拘禁刑以上の刑に処せられた者が当然に終身の欠格となるわけではない。刑法27条及び34条の2により刑の言渡しの効力が失われた場合は,弁護士法7条1号の欠格事由も消滅する。
3 成年被後見人及び被保佐人
成年被後見人又は被保佐人であることは,現在の弁護士法7条の欠格事由ではない。令和元年法律第37号により,成年被後見人等を資格から一律に排除していた条項が削除され,必要な能力の有無を個別かつ実質的に審査する制度へ改められた。
もっとも,弁護士法12条1項2号は,心身の故障により弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがある場合について,弁護士会が資格審査会の議決に基づき登録請求の進達を拒絶できると定めている。法的地位だけによる一律の欠格と,具体的事情に基づく登録審査は区別される。
第5 弁護士名簿への登録
1 資格取得後に登録が必要であること
弁護士法8条及び9条により,弁護士となるには日弁連に備えた弁護士名簿への登録が必要であり,登録請求は入会しようとする弁護士会を経由して行う。弁護士となる資格を有していても,登録を受ける前は弁護士ではない。
2 進達拒絶及び登録拒絶
弁護士会は,弁護士法12条所定の事由があると認めるときは,資格審査会の議決に基づき登録請求の進達を拒絶できる。日弁連も,同法15条に基づき,資格審査会の議決を経て登録を拒絶できるため,資格の有無と登録審査は別の段階である。登録手続の詳細は,「弁護士登録の請求」で整理している。
第6 関連記事
④ 弁護士法第5条の規定による弁護士業務についての研修に関する規則
第7 出典・参考資料
1 法令
2 公的資料
③ 参議院「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」
⑤ 日本弁護士連合会「弁護士の資格・登録」。ただし,同頁の欠格事由の刑名には改正前の表示が残っているため,本記事の現行法の記載はe-Gov法令検索によった。