その他裁判所関係

裁判官に関する人事事務の資料の作成等

平成16年6月1日施行の,「裁判官に関する人事事務の資料の作成等について」(平成16年5月31日付けの最高裁判所事務総局人事局長の通達)の本文は以下のとおりです。

第1 裁判官第一カード
1 作成及び提出
裁判官人事の基礎資料とするため,新規に裁判官に任命された者(以下「新任裁判官」という。) について,新任裁判官の本務庁(簡易裁判所である場合には,その所在地を管轄する地方裁判所。以下同じ。)の長は,新任裁判官の任命発令後速やかに,別紙様式第1の書面(以下「裁判官第一カード」という。)を1部作成し,当該新任裁判官の押印を得た上,人事局長に提出する。ただし,裁判官であった者が検事等に転官した後,裁判官に復帰した場合は,裁判官第一カードの作成を要しない。

2 裁判官第一カードの用紙
裁判官第一カードの用紙は人事局長が送付するものを使用する。

3 写真の更新
以下の場合は,新任時に貼付された写真の更新のため,撮影から3ヶ月以内の上半身名刺型の写真を速やかに提出する。
(1) 判事補が判事に任命された場合
(2) 判事又は簡易裁判所判事が再任された場合
(3) 裁判官であった者が検事等に転換した後,裁判官に復帰した場合

第2 裁判官第二カード 
1 作成及び提出
裁判官人事の参考資料とするため,毎年8月1日現在で在職する裁判官(高等裁判所長官を除く。)は,別紙様式第2-1から3のいずれかの書面(以下「裁判官第二カード」という。)を1部作成し,以下のとおり提出する。
(1) 高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所に補職されている裁判官(地方裁判所長,家庭裁判所長及び最高裁判所に勤務する者を除く。)は,所属庁の長に提出する。
なお,簡易裁判所判事と兼任している判事又は判事補については,判事又は判事補として補職されている所属庁の長に提出する。
(2) 複数の裁判所に捕職されている裁判官は,本務庁の長に提出する。ただし,当該裁判官が主として兼務庁において職務を行っている場合には,本務庁の長と兼務庁の長の協議により,兼務庁の長を提出先とすることができる。兼務庁の長を提出先に定めた場合には,兼務庁の長は,その旨を当該裁判官に適宜の方法で通知する。
(3) 補職されている裁判所(以下「補職庁」という。)と異なる裁判所の職務を行う裁判官は,補職庁の長(複数の裁判所に捕職されている裁判官については,(2)で定められた庁の長)に提出する。ただし,当該裁判官が主として補職庁と異なる裁判所の裁判官の職務を行っている場合は,補職庁の庁及び職務代行を命じられている裁判官(以下「職務代行庁」という。)の庁の協議により,職務代行庁の長を提出先とすることができる。(職務代行庁の長を提出先に定めた場合には,職務代行庁の長は,その旨を当該裁判官に適宜の方法で通知する。)。
(4) 地方裁判所長及び家庭裁判所長は,その所属する裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の長官(以下「管轄高等裁判所の長官」という。)に提出する。
(5) 最高裁判所事務総局の各局課に勤務する裁判官(局課長を除く。)は,その勤務する局課の局課長に,最高裁判所の裁判所調査官(首席調査官を除く。)は,最高裁判所首席調査官に,最高裁判所の研修所に勤務する裁判官(研修所長を除く。)は,その勤務する研修所の所長に,それぞれ提出する。

2 任地及び担当事務の希望に対する意見の記入等
(1) 地方裁判所長及び家庭裁判所長は,1の(1)から(3)までにより提出された裁判官第二カードに,当該裁判官の任地及び担当事務の希望に対する意見を記入し,管轄高等裁判所の長官に対し,その定める期日までに提出する。
(2) 高等裁判所の長官は,1の(1)から(4)まで及び2の(1)により提出された裁判官第二カードに,当該裁判官の任地及び担当事務の希望に対する意見を記入した上,人事局長に対し,その定める期日までに提出するとともに,地方裁判所長又は家庭裁判所長に2の(1)により提出sれた裁判官第二カードの写しを送付する。
(3) 最高裁判所事務総局の局課長,最高裁判所首席調査官及び最高裁判所の研修所の所長は,1の(5)により提出された裁判官第二カードに,当該裁判官の任地及び担当事務の希望に対する意見を記入し,人事局長に対し,その定める期日までに提出する。

3 裁判官第二カードの写しの保管,移管及び廃棄
別に定める。

裁判官第一カード,裁判官第二カード及び裁判官第三カード

目次
1 根拠通達
2 裁判官第一カード
3 裁判官第二カード
4 裁判官第三カード
5 関連記事その他

1 根拠通達
(1)   裁判官第一カード及び裁判官第二カードの根拠通達は,平成16年6月1日施行の,「裁判官に関する人事事務の資料の作成等について」(平成16年5月31日付けの最高裁判所事務総局人事局長の通達)です。
(2) 裁判官第三カードの根拠通達は,「裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)」です。

2 裁判官第一カード
(1) 裁判官第一カード等の記載要領について(平成29年2月16日付けの最高裁判所事務総局人事局任用課長の事務連絡)に記載要領が載っています。
(2) 裁判官第一カードは履歴書の簡略版です。

3 裁判官第二カード
(1)   裁判官第二カードには,裁判官本人が毎年8月1日時点の,氏名,現住所,所属庁,健康状態,病状・病歴,家族の状況等,次期異動における任地及び担当事務についての希望並びにその理由を記載します。
   そして,「任地及び担当事務の希望に対する所長及び高裁長官の意見」欄を裁判所長及び高等裁判所長官が記載します。
(2) 毎年,全裁判官が裁判官第二カードを作成しています(裁判所HPの「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」の「4.異動の実情」参照)。
(3) 判事用(別紙様式第2-1),判事補用(別紙様式第2-2)及び簡易裁判所判事用(別紙様式2-3)の3種類があります。
(4) 裁判所職員制度の概要-参考資料-(令和2年度新任判事補研修の資料)2頁及び3頁(リンク先の5頁及び6頁)に,裁判官第二カード入力フォームが載っています。




4 裁判官第三カード
(1) 裁判官第三カードは,裁判官の人事評価に関する規則3条3項に基づき,裁判官が,自己の担当した職務の状況に関して記載した書面のことです(「裁判官の人事評価に関する規則の運用について(平成16年3月26日付の最高裁判所事務総長通達)」第1の5,及び「裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)」3(1)参照)。
(2) 裁判所職員制度の概要-参考資料-(令和2年度新任判事補研修の資料)33頁(リンク先の36頁)に,裁判官第三カード入力フォームが載っています。


5 関連記事その他
(1) 現代ビジネスHPの「転勤を断ると出世できない…裁判官の世界はまるでサラリーマンのよう」(2017年5月28日付)には以下の記載があります。
   これらカード(注:裁判官第二カード及び裁判官第三カードのこと。)への記入にあたり、多くの裁判官が、多少なりとも逡巡するのが、「第二カード」に設けられた「次期異動における任地」への希望欄だ。
   大きく3つの選択肢が設けられていて、ひとつ目が、任地は「最高裁判所に一任する」。次が、「任地の希望地はあるが固執しない」。そして、「希望任地以外は不可」の項目だ。
   前のふたつの項目のいずれかにチェックを入れたうえで、異動の「時期に関しても一任する」をチェックすれば、いかなる任地への異動を命じても、本人の意に沿わない異動とはならない。
(2)ア 平成27年度(最情)答申第8号(平成28年2月23日答申)には以下の記載があります。
    本件開示申出文書は,平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡易裁判所判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書であるところ,最高裁判所事務総長の説明によれば,全国の裁判官は,他に転任する場合の任地希望等をカードに記載して,最高裁判所事務総局人事局長に提出するとのことである。
    そうすると,人事局においては,各裁判官がカードに記載した任地希望を把握していることになるが,同説明によれば,人事局が人事異動計画の原案の立案等をする際には,各カードを個別に確認すれば足り,その記載内容を集計する必要はなく,現にその集計は行っていないというのである。人事異動事務が,任地希望を一つの考慮要素としつつも他の要素を含めて総合的に勘案して個別に検討すべき性質の事務であることに照らせば,上記説明に不合理な点は見当たらない。
イ 本件開示申出文書は,「平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡裁判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書」です。
(3) 弁護士森脇淳一HP(35期の元裁判官)の「裁判官の身分保障について(1)」(平成30年12月1日付)には,「私は、本来希望しない任地への異動を承諾したり、そのような任地に赴けばその次に希望の任地に赴任できると考えて(最高裁を信用して)単身赴任などしている周囲の裁判官のことが理解できなかった。」と書いてあります。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の最高裁判所人事局長
 幹部裁判官の定年予定日
 裁判官の退官情報
・ 50歳以上の裁判官の依願退官の情報

裁判官の転出に関する約束

目次
1 最高裁判所の公式説明
2 最高裁判所に存在しない文書
3 関連記事その他

1 最高裁判所の公式説明
・ 平成14年7月16日付の裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書における「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には,以下の記載があります。
   裁判官の異動については,転所に関する保障(裁判所法48条)があるので,すべて本人の同意の下に行われている。異動に関する基本資料として,毎年,全裁判官が裁判官第二カード(なお,裁判官第一カードは,履歴書の簡略版である。)により,勤務地と担当事務について希望を提出している。勤務地の希望は,圧倒的に首都圏が多く(7割前後は首都圏希望ではないかと思われる。),そのほかは京阪神地域の希望も相当数ある。このように,勤務地の希望が偏っていることから,希望者の多い大規模庁に転入する判事10年目くらいまでの者については,機会均等を図るため,「何年後には最高裁の指定する庁に転出する」という約束(あくまで紳士協定的なもの)を書面でする扱いとなっている。

2 最高裁判所に存在しない文書
(1)   以下の文書は,最高裁判所には存在しません(平成28年度(最情)答申第12号(平成28年6月3日答申))。
① 希望者の多い大規模庁に転入する判事10年目くらいまでの者については,機会均等を図るため,「何年後には最高裁の指定する庁に転出する」という約束(あくまで紳士協定的なもの)を書面でする扱いの詳細を定めた文書
② 「何年度には最高裁の指定する庁に転出する」という約束をした判事及び判事補の人数が分かる文書(合計数のほか,最高裁及び全国の下級裁判所ごとの人数)
(2) 平成28年度(最情)答申第12号(平成28年6月3日答申)には以下の記載があります(改行を追加しました。)。
   最高裁判所事務総長の説明によれば,裁判官については,異動条件を記載した異動に関する承諾書が作成されることがあるとのことであり,承諾書が作成されるのは,裁判官が,裁判所法上,その意思に反して免官,転官,転所等をされることはないとされている(同法48条)ことによると解される。
   しかし,同説明によれば,異動条件については,全国を異動する必要がある裁判官について,適材適所の原則による異動を確保しつつ,機会均等を図るため,紳士協定的な約束として,従前からの慣行となっているとのことであり,法令等に基づくものではないと解される。
   また,裁判官の異動について,何らかのルールがあることもうかがわれない。
   そうであるとすれば,異動条件の内容は,異動対象となる裁判官ごとに,その固有の諸事情に応じて定められた個別的な性格のものであって一般性がないものと認めるのが相当である。

3 関連記事その他
(1) 財務省の広報誌である「ファイナンス」令和7年4月号「東京・名古屋新幹線通勤日記 」には以下の記載があります。
    東京・名古屋新幹線通勤での金銭面の負担についてはよく聞かれるところであり、付言しておきたい。現在、東京・名古屋間の新幹線運賃は片道 9,800円(EX早特 21ワイドの場合)であり、定期券を買うとすれば月 27万円超となる。私自身は、都度払いのEX早特を使うことが多く、ホテル代を含めても、月 20万円から 24万円程の出費であるが、単身赴任ではないので単身赴任手当は出ず、通勤手当のみ頂いている状況である。
    この通勤手当であるが、国家公務員の通勤手当は、この 3月まで上限が月 75,000円(新幹線通勤手当を含む)で、上限額を超える額は自己負担となるため、正直、なかなか家計に厳しい状況であった。しかし、令和 7年 4月から上限が月15万円となり、かなりほっとしているところである。
(2)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判所職員の赴任期間について(平成4年4月28日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 移転料ハンドブック(Ver.1.2)(令和4年3月の最高裁判所人事局総務課及び経理局監査課の文書)
・ 移転料の支給に関するQA(Ver3.2)(令和4年3月の最高裁判所人事局総務課及び経理局監査課の文書)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の希望勤務地を取りまとめた文書は存在しないこと
 裁判官の転勤の内示時期
・ 毎年4月1日付の人事異動等に関する最高裁判所裁判官会議
・ 歴代の最高裁判所人事局長

裁判官の転勤の内示時期

目次
第1 裁判官の人事異動に関する最高裁判所の説明
第2 転勤を伴う人事の実情
1 裁判官の場合
2 検事の場合
第3 関連記事その他

第1 裁判官の人事異動に関する最高裁判所の説明
・ 平成14年7月16日付の裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書における「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には,以下の記載があります。
    異動の大部分は,所長等の人事を除き,毎年4月期に定期異動として実施される。異動計画の原案は,高等裁判所管内の異動については主として各高等裁判所が,全国単位の異動については最高裁判所事務総局人事局が立案し,いずれについても最高裁判所と各高等裁判所との協議を経て異動計画案が作成される。異動の内示は,事件処理と住居移転の関係を考慮して,原則として異動の2か月以上前に,離島などについては3か月以上前に行われ,承諾があれば,最高裁判所裁判官会議の決定を経て発令され,承諾がない場合には,異動先の変更が行われたり,留任の取扱いがなされる。
    異動案は,各裁判所でどのような経験等を持つ裁判官が何人必要かという補充の必要性,任地・担当事務についての各裁判官 の希望,本人・家族の健康状態,家庭事情等を考慮し,適材適所・公平を旨として立案される。適材適所・公平といった面で,人事評価が影響することになる が,少なくとも所長等への任命以外の一般の異動に関する限り,実際には,上記の人事評価以外の事情が影響する度合いが高い。特に近年は,配偶者が東京等で 職業を持つ割合が格段に高くなったこと,子弟の教育を子供の幼いうちから東京等で受けさせるために比較的若いうちから地方へ単身赴任する者が増えたこと, 親等の介護の必要から任地に制限を受ける者が増えたことなどから,家庭事情に基づく任地希望が強まっている。現に,首都圏や京阪神地域の裁判所において, こうした事情を抱える裁判官は相当数に上る。また,判事補や若手の判事については,幅広い経験ができるように,評価とかかわりなしに大規模庁に異動するこ ともある。したがって,若手のうちは,異動において人事評価が影響する程度は,限定されたものである。


第2 転勤を伴う人事の実情
1 裁判官の場合
(1)ア 平成27年度(最情)答申第5号(平成28年2月22日答申)には以下の記載があります。
    裁判官は,憲法上その職務の独立性が保障されるとともに,身分が保障されており(憲法76条3項,78条),また,身分保障の現れとして,その意思に反して,転官や転所をされることはないとされている(裁判所法48条)。したがって,裁判官の異動時期の目安を含めた人事管理に係る情報については,裁判官の独立を確保するため,非常に高い機密性が求められる機微な情報であるということができ,本件対象文書に記録されている上記のような情報を公にすると,それを知った裁判官の異動を望み,あるいは望まない関係者などから不当な働き掛け等がされるなどして,今後の裁判官の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められることから,本件対象文書に記録された情報は,その文書の標題部分や発出者名等も含め,全体として法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する情報に当たると認められる。
イ 本件対象文書は,「転勤を伴う人事について,裁判官本人に対する内示時期の目安が分かる文書」に該当する文書のことです。
(2) 平成28年2月24日付の「裁判官異動と最高裁による同意(書)取付け方法」と題するブログ記事によれば,毎年1月中旬ぐらいに,人事異動対象者に対する新規異動先の案内がなされているようです。
(3) 「司法官僚 裁判所の権力者たち」157頁には以下の記載があります。
     異動の内示は一般に定期異動時(四月)の二カ月以上前に、最高裁人事局からの伝達をうけた所長・長官によってなされる。多くの裁判官がほぼ共通して語るのは、三年ないし五年の転所「ルール」をうけいれるにしても、内示された転所先がなぜそこであるのか、あるいは転所先でどのような役割を期待されているのかが説明されないことである。なかには、内示された転所先があまりに家族のかかえている状況を無視しているとして、留任や転所先の変更を、高裁をつうじて事務総局に働きかけてくれた所長もいたと語る裁判官もいる。だが、このばあいにも、所長自身が転所先の決定理由を知りえていないのか、明確な説明をうけなかったという。
2 検事の場合
   検事の人事異動については,平成28年1月16日配信の「検事の転勤って,どんなもの?」と題するヤフーニュースの記事に詳しく書いてあります。


第3 関連記事その他
1 平成24年度初任行政研修「事務次官講話」「明日の行政を担う皆さんへ」と題する講演(平成24年5月15日実施)において,西川克行法務事務次官は以下の発言をしています(リンク先のPDF13頁)。
    三惚れと書きました。これは、余り耳なれない言葉かもしれませんが、転勤の多い職場での結婚式でよく耳にする言葉です。その意味は、仕事に惚れろ、任地に惚れろ、奥さんに惚れろということで、結婚式ですから三番目に奥さんが出てくる、こういうことです。
(中略)
    次に、任地に惚れろということですが、これは、特に多くの土地での勤務が控えている方については覚えておかれたらいいと思います。任地が決まってここに行けと言われたときに、あるいは不満かもしれません。それは、自分の中で不満なのはいいのですけれども、任地に行った後にはそんなことはきれいさっぱり忘れて、その土地に惚れ込むようにしないと、うまくいかない場合があると思います。その土地で働ける幸せを感じること、それから、その土地の人たちとの話しの中で、自分はこんないいところで働けて本当に幸せに思っていると口に出して言うこと、そう言わなければならないと思っています。
2(1) 従前の口頭弁論の結果を陳述した旨の記載が,調書の完成後,立会書記官以外の者によってなされた場合,適法に弁論の更新が行われたとはいえません(最高裁昭和33年11月4日判決)。
(2) 第一審における口頭弁論の結果の陳述がないままされた第二審判決には民事訴訟法312条2項1号の絶対的上告理由があることとなります(最高裁昭和42年3月3日判決)。
3(1) 厚労省HPの「「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を公表します~事業主が従業員の転勤の在り方を見直す際に役立ててほしい資料を作成~」「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」が載っています。
(2) アセスメントラボHP「なぜ人事異動情報(内示)は秘密にしなければならないのか?運用ルールのポイントは?」が載っています。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判所職員の赴任期間について(平成4年4月28日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 移転料ハンドブック(Ver.1.2)(令和4年3月の最高裁判所人事局総務課及び経理局監査課の文書)
・ 移転料の支給に関するQA(Ver3.2)(令和4年3月の最高裁判所人事局総務課及び経理局監査課の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 毎年4月1日付の人事異動等に関する最高裁判所裁判官会議
・ 高等裁判所支部
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部
・ 転勤した際,裁判所共済組合に提出する書類等
・ 裁判官人事の辞令書

毎年4月1日付の人事異動等に関する最高裁判所裁判官会議

目次
1 総論
2 毎年度の裁判官の人事異動
3 最高裁判所の公式の説明
4 その他の説明
5 裁判官の希望勤務地を取りまとめた文書は存在しないこと
6 毎年4月15日付の裁判所時報
7 合議体の裁判官が異動した場合における判決書への署名押印
8 関連記事その他

1 総論
(1)ア 毎年4月1日付の人事異動等については,毎年3月の第1水曜日に開催される最高裁判所裁判官会議で決定されています。
   その時期の裁判官会議では,①裁判官の退官等,②裁判官の新規任命等,③裁判官の再任等(要審議者名簿登載の者に関する審議を含む。),④判事の転補等,⑤判事補の転補等,⑥簡易裁判所判事の転補等,⑦裁判官の民間企業長期研修及び日本銀行研修,並びに⑧裁判官の特別研究が決定されています。
イ 転補等は人事異動のことであり,転勤を伴うかどうかを問いません。
ウ ①ないし⑥の裁判官人事は,官報に掲載されます。
(2) 裁判官の人事異動が最高裁判所裁判官会議で決定された毎年3月の第1水曜日以降であれば,裁判官は自分の人事異動を対外的に公表できることとなります。
   そのため,3月の第1水曜日から3月末日までの間に裁判期日がある場合,人事異動により転勤する予定の担当裁判官から,4月以降は別の裁判官が担当する予定であると告げられることが多いです。
(3) 転勤してきた裁判官が新たな担当裁判官となった場合,前任者から引き継いだ事件記録を一通り読み込む必要がありますから,4月中は裁判期日が入りにくいです。


2 毎年度の裁判官の人事異動
・ 平成30年度までの議事録別紙につき,「裁判官会議付議人事関係事項」の1頁目及び2頁目以外は省略しています(平成31年度以降については,「最高裁判所裁判官会議の議事録」を参照してください。)。
◯令和5年度の裁判官の人事異動
・ 令和5年3月1日の最高裁判所裁判官会議で原案通り決定されており,下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申報告とあわせて,午前10時30分に開始し,午前10時50分に終了しました。
◯令和4年度の裁判官の人事異動
・ 令和4年3月2日の最高裁判所裁判官会議で原案通り決定されており,下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申報告とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時12分に終了しました。
◯令和3年度の裁判官の人事異動
・ 令和3年3月3日の最高裁判所裁判官会議で原案通り決定されており,名古屋高等裁判所長官の補職等の議題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時22分に終了しました。
◯令和2年度の裁判官の人事異動
・ 令和2年3月4日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,他に議題がないこともあって,午前10時30分に開始し,午前11時13分に終了しました。
◯平成31年度の裁判官の人事異動
・ 平成31年3月6日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,他に議題がないこともあって,午前10時30分に開始し,午前10時53分に終了しました。
◯平成30年度の裁判官の人事異動
・ 平成30年3月7日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,他に議題がないこともあって,午後2時00分に開始し,午後2時21分に終了しました(平成30年3月7日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
◯平成29年度の裁判官の人事異動
・   平成29年3月1日の最高裁判所裁判官会議で原案通り決定されており,①司法研修所規程の一部を改正する規程の制定,②最高裁判所事務総局分課規程の一部を改正する規程,③新裁判官の配置(戸倉三郎最高裁判所判事),④下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申等の課題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時16分に終了しました(平成29年3月1日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
◯平成28年度の裁判官の人事異動
・ 平成28年3月2日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,①最高裁判所行政不服審査委員会規則の制定等,②最高裁判所事務総局分課規程の改正,③裁判所の人事行政事務の実情,④裁判所職員総合研修所入所試験規程の運用,⑤東京高裁長官の補職等の議題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時50分に終了しました(平成28年3月2日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
◯平成27年度の裁判官の人事異動
・ 平成27年3月4日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,①情報公開等の苦情申出制度の整備等,②最高裁判所事務総局分課規程の一部を改正する規程,③相続に関する規律の見直しについての法制審議会への諮問,④水戸地方裁判所長の補職等の議題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時53分に終了しました(平成27年3月4日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
平成26年度の裁判官の人事異動
・ 平成26年3月5日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,他に議題がないこともあって,午前10時30分に開始し,午前11時3分に終了しました(平成26年3月5日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
◯平成25年度の裁判官の人事異動
・ 平成25年3月6日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,①自動車運転による死傷事犯の罰則の整備に関する法制審議会刑事法部会の議決報告,及び②札幌高等裁判所長官の補職等の議題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時22分に終了しました(平成25年3月6日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。


3 最高裁判所の公式の説明
(1) 司法制度改革審議会の質問に対する最高裁判所の回答として,以下の記載があります(判例時報2144号41頁)。
    裁判官については、誰かが一定の評価を決定する(例えば、この裁判官の評価をAと決定するといった)権限を有しているわけではない。裁判官の人事については、その裁判官の能力、適正等を含めて、高裁長官や所長が意見を述べる機会が多いが、高裁長官や所長が上記のような意味での評価権限を有するということではなく、言ってみればひとつの人事情報にすぎない。昇給、総括指名、所長任命を含め、人事案の策定に際しては、高裁長官、所長の意見を始めとする種々の人事情報が総合的に考慮され、最終的に最高裁判所裁判官会議において人事が決定される。仕事ぶり、力量、人物、健康状態等は、考慮される事項の代表例として挙げたものである。
(2) 裁判所HPに載ってある裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書(平成14年7月16日付)「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には以下の記載があります。
    異動の大部分は,所長等の人事を除き,毎年4月期に定期異動として実施される。異動計画の原案は,高等裁判所管内の異動については主として各高等裁判所が,全国単位の異動については最高裁判所事務総局人事局が立案し,いずれについても最高裁判所と各高等裁判所との協議を経て異動計画案が作成される。異動の内示は,事件処理と住居移転の関係を考慮して,原則として異動の2か月以上前に,離島などについては3か月以上前に行われ,承諾があれば,最高裁判所裁判官会議の決定を経て発令され,承諾がない場合には,異動先の変更が行われたり,留任の取扱いがなされる。
    異動案は,各裁判所でどのような経験等を持つ裁判官が何人必要かという補充の必要性,任地・担当事務についての各裁判官 の希望,本人・家族の健康状態,家庭事情等を考慮し,適材適所・公平を旨として立案される。適材適所・公平といった面で,人事評価が影響することになる が,少なくとも所長等への任命以外の一般の異動に関する限り,実際には,上記の人事評価以外の事情が影響する度合いが高い。特に近年は,配偶者が東京等で 職業を持つ割合が格段に高くなったこと,子弟の教育を子供の幼いうちから東京等で受けさせるために比較的若いうちから地方へ単身赴任する者が増えたこと,親等の介護の必要から任地に制限を受ける者が増えたことなどから,家庭事情に基づく任地希望が強まっている。現に,首都圏や京阪神地域の裁判所において,こうした事情を抱える裁判官は相当数に上る。また,判事補や若手の判事については,幅広い経験ができるように,評価とかかわりなしに大規模庁に異動するこ ともある。したがって,若手のうちは,異動において人事評価が影響する程度は,限定されたものである。


4 その他の説明
(1) 「司法行政について(中)」(筆者は22期の西理 元裁判官)には以下の記載があります(平成24年5月11日発行の判例時報2143号59頁。ただし,改行を追加しています。)。
    裁判官人事の歴史を見ても、裁判官の人事、特に転任を「人事行政」として考えるようになったのは比較的新しいことである。もともと裁判官の任地は二回試験と呼ばれる修習終了時の試験の成績等で最初から固定的なものと考えられていた。
    もちろん、転任はあったけれど、それは現在のように定期的かつ大量的に行われるものではなかった。それが昭和三〇年ころ、鈴木忠一人事局長時代に、判事補の一〇年の間に、大・中・小の各裁判所での勤務を平等に体験させる目的から、いわゆるA・B・C方式が採られるようになり、判事補についてはほぼ三年の周期で定期的に大量異動の人事が行われるようになった。
    ところで、このA・B・C方式なるものは、判事の供給源が殆ど判事補に固定化した状況下でできるだけ均質な判事を養成する必要から考案されたものであり、その実施に当たっては当該判事補の同意を得るための慎重な手続がとられたようであるが、次第に転任を当然と考える風潮が生まれていく。
    そして、その傾向は次第に判事の転任にも影響を及ぼし、「ほぼ三年のローテーションで均等に配置して裁判官処遇の平等を期し、それにともなって甲裁判所の次は乙地域に転任になるという人事の流れの慣行」が定着していくこととなる。
(2) 「裁判官も人である 良心と組織の間で」108頁には以下の記載があります。
     裁判官の全国規模の異動は、このような形骸化した「評価書」が作成されたのち、次に各ブロックの高裁長官が集まる事務打ち合わせ会議などで調整されている。その際、問題のある裁判官の処遇についても話し合われ、彼は、ウチで何年も預かってきたんだから、今度はそちらで引き取ってくれ。そうでないと本人も腐り、全体に悪影響を及ぼす。そう言われ、戦力外の裁判官を渋々引き受けることがあるのだという。そんな話し合いの後に作成された高裁長官案を、最高裁事務総局人事局の任用課長が再調整し、最高裁事務総長が承認する。それが最高裁長官案となり、裁判官の全国異動が始まるわけである。


5 裁判官の希望勤務地を取りまとめた文書は存在しないこと
(1) 平成27年度(最情)答申第8号(平成28年2月23日答申)には以下の記載があります。
    本件開示申出文書は,平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡易裁判所判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書であるところ,最高裁判所事務総長の説明によれば,全国の裁判官は,他に転任する場合の任地希望等をカードに記載して,最高裁判所事務総局人事局長に提出するとのことである。
    そうすると,人事局においては,各裁判官がカードに記載した任地希望を把握していることになるが,同説明によれば,人事局が人事異動計画の原案の立案等をする際には,各カードを個別に確認すれば足り,その記載内容を集計する必要はなく,現にその集計は行っていないというのである。人事異動事務が,任地希望を一つの考慮要素としつつも他の要素を含めて総合的に勘案して個別に検討すべき性質の事務であることに照らせば,上記説明に不合理な点は見当たらない。
(2) 本件開示申出文書は,「平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡裁判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書」です。


6 毎年4月15日付の裁判所時報
・ 毎年4月15日付の裁判所時報に4月1日付の人事が載りますところ,以下の特徴があります。
(1) 個々人の記載事項
ア 1行目に異動先のポスト(4月1日付の発令事項)が書いてあり,2行目に1文字の字下げの後,異動前のポスト(現任庁・現官職)及び氏名が書いてあります。
イ 行政機関等の職員(行政機関職員のほか,衆議院法制局参事,国立国会図書館参事及び預金保険機構参与をいいます。)の出向先から戻ってきた裁判官,弁護士職務経験から戻ってきた裁判官及び弁護士任官した裁判官の場合,異動先のポストだけが書いてあります。
(2) 人事異動の記載の順番
ア 異動前のポストを基準として以下の順番で書いてあります。
① 最高裁勤務の裁判官の異動
・ (a)異動の前又は後のポストが最高裁調査官→(b)異動の前又は後のポストが事務総局勤務の裁判官→(c)異動の前又は後のポストが司法研修所教官→(d)異動の前又は後のポストが司法研修所所付→(e)異動の前又は後のポストが裁判所職員総合研修所教官の順番です。
② 高裁及び地家裁の判事の異動
・ 高裁単位で,東京→大阪→名古屋→広島→福岡→仙台→札幌→高松の順番で管内の異動が記載されます。
③ 地家裁の判事補の異動
・ 高裁単位で,東京→大阪→名古屋→広島→福岡→仙台→札幌→高松の順番で管内の異動が記載されます。
④ 簡裁判事の異動
・ 高裁単位で,東京→大阪→名古屋→広島→福岡→仙台→札幌→高松の順番で管内の異動が記載されます。
⑤ 一般職の異動
イ 異動先のポストだけが書いてある裁判官の場合,異動先のポストを基準として書いてあります。
    例えば,東京高裁判事に弁護士任官した場合,異動前のポストが東京高裁判事の人の最後に書いてあります。
ウ 職務上使用している旧姓と戸籍名が異なる場合,以前は戸籍名が書いてあったものの,裁判所職員の旧姓使用について(平成29年7月3日付の最高裁判所事務総長の通達)が施行された後は,職務上使用している旧姓が記載されるようになったみたいです。
    この点については,ウエストロー・ジャパンの法曹界人事と同じです。
(3) 独自に記載されている人事
ア 任官3年目の地裁判事補から地家裁判事補となる人事,及び司法研修所所付の人事が書いてあります。
イ これらの人事は,ウエストロー・ジャパンの法曹界人事には書いていません。
(4) 記載されていない人事
ア 弁護士職務経験判事補となる裁判官(身分上は裁判所事務官となります。),及び民間企業長期研修を開始する裁判官は書いてありません。
イ 行政機関等に出向する裁判官は書いてありません。
→ 3月1日付その他3月上旬に最高裁の局付判事となったり,3月31日付で東京地裁判事補等となったりしている場合,4月1日付で行政機関等に出向している可能性が高いです。
ウ 異動前後のポストが部総括判事であるかどうかは書いてありません。
エ 同一庁での部総括発令は書いてありません。
(5) その他
ア 3月25日付で高裁所在地の地裁判事補となっている場合,裁判所時報に記載されないものの,4月1日付で弁護士職務経験判事補となるか,又は民間企業長期研修を開始している可能性が高いです。
    ただし,東京地家裁判事補等から直接,弁護士職務経験判事補となったり,民間企業長期研修を開始したりする人もいます。
イ 人事異動の原稿の入手先は,裁判官については,人事局任用課任用第一実施係となっており,一般職については,人事局任用課任用第二実施係となっています。


7 合議体の裁判官が異動した場合における判決書への署名押印
(1) 判決は,その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がしますし(民事訴訟法249条1項),言渡しによってその効力を生じます(民事訴訟法250条)ところ,原則として口頭弁論の終結の日から2ヶ月以内に行います(民事訴訟法251条1項)。
(2)ア 判決の言渡しは,調書判決(民事訴訟法254条)を除き,判決書(民事訴訟法253条)の原本に基づいてしますし(民事訴訟法252条),判決書の正本又は調書判決の謄本は当事者に送達されます(民事訴訟法255条)。
イ 調書判決の場合,裁判所書記官が作成者となります(民事訴訟法254条2項)。
(3)ア 判決書には,判決をした裁判官が署名押印をしなければならないものの(民事訴訟規則157条1項),合議体の裁判官が判決書に署名押印することに支障があるときは,他の裁判官が判決書にその事由を付記して署名押印すれば足ります(民事訴訟規則157条2項)。
イ 条解民事訴訟規則328頁には,「2 合議体の裁判官に支障があるときの取扱い(2項)」以下の記載があります(注番号は省略しています。)。
    判決書に署名押印するのは,判決をした裁判官,具体的には,判決の結論を出したときの評決に関与した裁判官であるが,合議体の裁判官の中に署名押印することに支障がある者がいるときは,その合議体に属する他の裁判官がその事由を付記して署名押印することになる(本条2項)。この「支障があるとき」とは,死亡や転任といった恒常的なものだけでなく,病気欠勤や出張中といった期間の限られたものも含まれる。「事由の付記」とは,支障の理由を記載することを意味するが,旧法下の実務で行われていたように,単に,「差支えにつき」といった記載でも構わない。「他の裁判官」とは,その裁判所に所属する他の裁判官の意味ではなく,判決の基本となった口頭弁論に関与した裁判官の意味である。
(4)ア 3月31日までに口頭弁論が終結した合議事件について4月1日以降に判決が言い渡される場合において,例えば,合議体を構成する裁判官Xの異動があったときは,判決書の末尾に「裁判官Xは差支えにつき署名押印することができない。」と付記されますし,判決言渡し期日には,裁判官Xと同じ民事部に配属された別の裁判官が立ち会います。
イ 千葉地裁平成29年3月24日判決(裁判長は37期の八木貴美子裁判官)を取り消した上で,事件を千葉地裁に差戻した東京高裁平成29年9月5日判決(裁判長は33期の大段亨裁判官)記載の事実経過が参考になります。
ウ 基本となる口頭弁論に関与しない裁判官でも判決の言渡しに関与できますし,裁判官の交代があっても判決の言渡しについては弁論を更新する必要はありません(最高裁昭和26年6月29日判決)。
(5) 最高裁令和7年7月10日判決は,合議体の裁判官の1名が代わったが従前の口頭弁論の結果が陳述されないままされた原判決に民訴法312条2項1号に規定する事由が存在するとされた事例です。
(6) 第1審において、事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民訴法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合、その判決手続は同法249条1項に違反するものであり、同判決には民事訴訟の根幹に関わる重大な違法がある(最高裁令和5年3月24日判決)のであって,調書判決の場合,通常の判決言渡しとは取扱いが異なります。


8 関連記事その他
(1)ア  全国的規模の会社の神戸営業所勤務の大学卒営業担当従業員が母親,妻及び長女と共に堺市内の母親名義の家屋に居住しているなどといった事実関係のみから,同従業員に対する名古屋営業所への転勤命令が権利の濫用に当たるということはできません(東亜ペイント事件に関する最高裁昭和61年7月14日判決)。
イ 東亜ペイント株式会社は平成5年4月に株式会社トウペに社名変更しました。
(2) 労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には,使用者は,当該労働者に対し,その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しません(最高裁令和6年4月26日判決)。
(3) アセスメントラボHP「なぜ人事異動情報(内示)は秘密にしなければならないのか?運用ルールのポイントは?」が載っています。
(4) 東北大学法科大学院メールマガジン第50号(2009年11月30日付)には49期の高橋彩裁判官の発言として以下のものがあります。
① 今は育休期間が3年になりましたが、実際に3年間取得している人は少ないと思います。それは取得できないからではなく、その期間中に職場に戻りたくなってしまうからだと思います。やはりずっと家にいると、職場に戻りたくなってしまうので、育休の取得期間は長い人で2年、一般的なのは1年であると思われます。男性も育休を取得できますが、男性で取得する人は少ないです。
② ご夫婦で裁判官をやっている人は、基本的には、任官して最初のうちはほとんど一緒に異動していますし、同じ裁判所に勤めなくとも同居して通える範囲に赴任している人が多いです。検察官と裁判官のご夫婦の場合も、検察官の異動は2年毎、裁判官は3年毎なのでずれてしまいますが、できるだけ同居できるようにしてもらっている人が多いと思います。ただし、これは若いうちのみで、子供がある程度大きくなりそれなりの地位になると、やはり別居する場面はあると思います。

(5) ベリーベストグループ採用サイト「ベリーベスト法律事務所での地方勤務について」には「当事務所では、所属弁護士の配偶者が、裁判官、検察官といった転勤を伴う職種の方も多く在籍しております。そういった方については、パートナーの方の転勤に伴い、全国の当事務所のオフィスで継続して勤務を行うことが可能となっております。」と書いてあります。
(6)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 赴任旅費ハンドブック(令和7年4月の最高裁人事局総務課及び最高裁経理局監査課の文書)
・ 裁判所職員の赴任期間について(平成4年4月28日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 裁判所時報編集マニュアル(平成27年9月9日付)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の転勤の内示時期
・ 裁判官の転出に関する約束
・ 裁判官の希望勤務地を取りまとめた文書は存在しないこと
・ 令和4年1月1日以降の裁判所時報
・ 裁判官第一カード,裁判官第二カード及び裁判官第三カード
・ 最高裁判所裁判官会議
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 最高裁判所事務総局会議の議事録
・ 裁判官人事の辞令書
・ 高等裁判所長官事務打合せ
・ 高等裁判所事務局長事務打合せ
・ 裁判官の種類
→ 判事新任のタイミングについても記載しています。
・ 転勤した際,裁判所共済組合に提出する書類等

最高裁判所事務総局の各係の事務分掌(平成31年4月1日現在)

目次
1 最高裁判所事務総局の各係の事務分掌
2 関連記事

1 最高裁判所事務総局の各係の事務分掌
(1) 平成31年4月1日現在における,最高裁判所事務総局の各係の事務分掌を定めた文書を以下のとおり掲載しています。

① 最高裁判所事務総局秘書課の事務分掌

 最高裁判所事務総局広報課の事務分掌

③ 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌

④ 最高裁判所事務総局総務局の事務分掌

⑤ 最高裁判所事務総局人事局の事務分掌

⑥ 最高裁判所事務総局経理局の事務分掌

⑦ 最高裁判所事務総局民事局の事務分掌

⑧ 最高裁判所事務総局刑事局の事務分掌

⑨ 最高裁判所事務総局行政局の事務分掌

⑩ 最高裁判所事務総局家庭局の事務分掌

(2) 令和元年6月17日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「最高裁判所事務総局の局課に初めて勤務する職員のみを対象として,同局課全体の職務内容を説明するために,作成又は配布した文書」は存在しません。

2 関連記事
・ 最高裁判所事務総局の組織に関する法令・通達
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 最高裁判所事務総局会議の議事録

新しい日本のための優先課題推進枠説明資料(最高裁判所作成分)

1 最高裁判所が作成した,新しい日本のための優先課題推進枠説明資料を以下のとおり掲載しています。
① 平成30年度分1/22/2
② 平成31年度分1/22/2

2(1) 裁判所HPに,「新しい日本のための優先課題推進枠」要望一覧が以下のとおり載っています。
① 平成26年度分
② 平成27年度分
③ 平成28年度分
④ 平成29年度分
⑤ 平成30年度分
⑥ 平成31年度分
(2)ア 平成26年度から平成30年度までのテーマは,①安全・安心な社会の実現等,及び②防災・減災でした。
イ 平成31年度のテーマは,①暮らしの安全・安心,②防災・減災及び③裁判手続等のIT化の推進でした。

カルロス・ゴーンの刑事手続に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること

目次
1 被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定は個人識別情報として不開示情報であること
2 被疑者カルロス・ゴーンの勾留理由開示に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること
3 被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は個人識別情報として不開示情報であること
4 被疑者カルロス・ゴーンが平成31年4月4日に再逮捕されたことは個人識別情報として不開示情報であること
5 被疑者カルロス・ゴーンの刑事事件に関して,平成30年12月21日頃に東京地裁が公表した文書は個人識別情報に該当すること
6 関連記事その他

1 被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し,申出人は,被疑者カルロス・ゴーンに関する身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨の主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
    この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定に関与している裁判官の氏名が分かる文書」です。


2 被疑者カルロス・ゴーンの勾留理由開示に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被疑者カルロス・ゴーンに関する勾留理由開示公判は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の勾留理由開示公判に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
    この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の勾留理由開示公判は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の勾留理由開示公判に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「平成31年1月8日にあったカルロス・ゴーンの勾留理由開示公判に関して,東京地裁事務局が作成し,又は取得した文書(大使館職員等に対する傍聴席の優先割当に関する文書を含むものの,一般の傍聴者から回収した裁判所傍聴券は除く。)」です。

3 被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の保釈請求及び準抗告の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
   この点について,苦情申出人は,当該特定の個人の保釈請求及び準抗告は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の保釈請求及び準抗告に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相’当である。
(2) 本件文書は,「被告人カルロス・ゴーンの保釈請求及び準抗告に関与している裁判官の氏名が分かる文書(例えば,既済事件一覧表の抜粋)」です。

4 被疑者カルロス・ゴーンが平成31年4月4日に再逮捕されたことは個人識別情報として不開示情報であること
(1) 令和元年6月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は,平成31年4月4日に被疑者カルロス・ゴーンが東京地方検察庁に逮捕された事実については,東京地方検察庁が報道機関に説明文書を配布したようであるし,東京地方検察庁次席検事が公式の会見で説明している事実であるため,慣行として公にされている事実である旨主張して,本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件開示申出に係る文書の存否を明らかにすると,特定の個人の逮捕に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
   この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人が東京地方検察庁に逮捕されたことは,慣行として公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張するものと解される。しかし,当該特定の個人の逮捕に関する報道は,報道機関の責任においてなされたものであり,それをもって上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」であるとはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件開示申出に係る文書は,「平成31年4月4日に執行された,被疑者カルロス・ゴーンの逮捕状を出した裁判官の氏名が分かる文書(例えば,既済事件一覧表の抜粋)」です。

5 被疑者カルロス・ゴーンの刑事事件に関して,平成30年12月21日頃に東京地裁が公表した文書は個人識別情報に該当すること
(1) 令和元年6月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「少なくとも,平成30年12月21日に公表した,東京地検の準抗告を退けた理由の要旨が書いてある文書は,不開示情報に該当しないといえる。」と主張して,本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件開示申出に係る文書の存否を明らかにすると,特定の個人の刑事事件に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
    この点について,苦情申出人は,少なくとも, 当該特定の個人の刑事事件に関する東京地方検察庁の準抗告が退けられた理由の要旨は,平成30年12月21日に公表されているから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張するものと解される。しかし, 当該特定の個人の準抗告に関する報道は,報道機関の責任においてなされたものであり,それをもって上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」であるとはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件開示申出に係る文書は,「平成30年11月以降,東京地裁事務局が司法行政目的で取得したカルロス・ゴーンの刑事事件に関する文書(例えば,平成30年12月21日に公表した,東京地検の準抗告を退けた理由の要旨が書いてある文書)」です。


6 関連記事その他
(1) カルロス・ゴーンに関する刑事手続の存在は,東京地検が報道機関に公表している事実であると思います(「東京地検が,報道機関に対し,平成31年4月4日のカルロス・ゴーンの逮捕に関して提供した文書は,翌日までに廃棄されたこと等」参照)。
(2) カルロス・ゴーンが代表取締役であった当時の住所は誰でも分かることについては,アゴラHP「ゴーン容疑者の住所がダダ洩れ!晒し過ぎの登記簿制度」(平成30年11月23日付)を参照してください。
(3) 自由権規約14条1項は以下のとおりです。
    すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序若しくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 保釈保証金の没取
・ 保釈中の被告人が罪証隠滅に成功した事例等に関する文書は存否応答拒否の対象となること

主な政策形成訴訟(規制権限不行使事案等)の受理件数とその内訳(平成28年4月以降の分)

◯主な政策形成訴訟(規制権限不行使事案等)の受理件数とその内訳を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和2年分令和3年分令和4年分令和5年分
令和6年分
(平成時代)
平成28年4月分~12月分
平成29年1月分~9月分10月分~12月分
平成30年分

* 「国賠訴訟の新受件数高裁管内別・主な政策形成訴訟の分類別・令和6年1月~12月)」といったファイル名です。

証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い

目次
1 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い
2 関連記事その他

1 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い
・ 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合,つまり,証人が出頭を拒否した場合の取扱いは以下のとおりです。
① 裁判所が決定で,証人の不出頭によって生じた訴訟費用の負担を命じ,かつ,10万円以下の過料に処します(民事訴訟法192条1項)。
② 10万円以下の罰金又は拘留に処せられ(民事訴訟法193条1項),場合によっては併科されます(民事訴訟法193条2項)。
③ 勾引されることがあります(民事訴訟法194条1項)。

2 関連記事その他
(1) 平成29年6月14日付の開示文書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法193条に基づき10万円以下の罰金又は拘留に処した件数は0件です。
(2) 平成29年6月14日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法192条に基づき訴訟費用の負担を命じた件数が分かる文書,及び民事訴訟法194条に基づき証人の勾引を命じた件数が分かる文書は存在しません。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 証人尋問及び当事者尋問
・ 訴訟費用
 裁判員等の日当
 陳述書作成の注意点

訴訟費用

目次
第1 略称としての費用法及び費用規則
第2 訴訟費用の内容
1 主な訴訟費用の内容
2 訴訟追行に必要なすべての費用が訴訟費用というわけではないこと
第3 訴えの提起手数料及び上訴の提起手数料
1 訴額に基づいて算定されること
2 訴額通知
3 個別の訴額算定事例
4 上訴の提起手数料
5 参考になる文献
第3の2 過納手数料の還付等(令和4年5月31日追加)
1 手数料還付の申立て
2 手数料還付の請求
第4 予納郵券の組み合わせ,特別送達の郵便料金及び書記官送達

1 予納郵券の組み合わせ
2 特別送達の郵便料金
3 書記官送達
第5 期日への出頭旅費の計算方法
1 同一簡易裁判所管内から出頭した場合
2 簡易裁判所を超えて出頭した場合
第6 弁論準備手続期日に電話会議で出席した場合であっても,期日への出頭日当が認められること
第7 当事者尋問と訴訟費用の関係
1 原則として追加の訴訟費用は発生しないこと
2 例外的に追加の訴訟費用が発生する場合
第8 証人尋問の旅費日当
1 総論
2 証人尋問の旅費
3 証人尋問の日当
第9 証人に対する金銭の提供の取扱い

第10 訴訟費用の負担の裁判
1 訴訟費用の敗訴者負担の原則
2 一部敗訴の場合の負担
3 訴訟費用の負担の裁判
第11 平成16年に検討された,弁護士費用の敗訴者負担制度
第12 訴訟費用額の確定手続
1 訴訟費用額の決定権者及び決定時期
2 訴訟費用額の確定処分の申立て
3 訴訟費用額の確定処分
4 訴訟費用額の確定処分に対する不服申立て
第13 関連記事その他

第1 略称としての費用法及び費用規則
・ 本ブログ記事では,民事訴訟費用等に関する法律を「費用法」と略称し,民事訴訟費用等に関する規則を「費用規則」と略称しています。

第2 訴訟費用の内容
1 主な訴訟費用の内容
(1) 主な訴訟費用は以下のとおりでありますところ,自分が依頼した弁護士に支払う弁護士費用は訴訟費用に含まれません。
① 訴えの提起手数料及び上訴の提起手数料(費用法2条1号)
・ 例えば,訴状,反訴状又は控訴状に貼るなどして納付した収入印紙の代金があります。
・ 訴えの変更等により手数料額に変更がある場合,最終的な請求に対応する手数料額となります。
・ 手数料の額が100万円を超える場合,収入印紙に代えて現金で納付することもできます(費用法8条,費用規則4条の2第1項)。
② 書類の送付・送達費用(費用法2条2号)
・ 例えば,被告への訴状副本送達費用,反訴被告への反訴状副本送達費用及び被控訴人への控訴状副本送達費用,並びに当事者への判決正本送達費用があります。
・ 予納郵券のうち現実に使用された部分(費用法11条1項1号・2条2号)のことです。
・ 消費税が10%となった令和元年10月1日以降の特別送達の料金は1回当たり1089円以上であって,その内訳は,通常の郵便料金が84円以上,一般書留料金が435円,特別送達料金が570円でした。
・ 令和5年10月1日以降の特別送達の料金は1194円以上であって,その内訳は,通常の郵便料金が84円以上,一般書留料金が480円,特別送達料金が630円です(郵便局HPの「オプションサービスの加算料金一覧」参照)。
③ 当事者又は訴訟代理人の,期日への出頭旅費(費用法2条4号イ又は5号)
・ 直線距離に基づく額の償還(費用規則2条1項)又は往復の実費額の償還となります。
・ 当事者及び訴訟代理人の両方が期日に出頭した場合,原則として当事者の旅費だけが認められる費用法2条5号上段の「(当事者等が・・・期日に出頭した場合を除く。)」参照)ものの,当事者尋問期日において尋問を受ける当事者及び訴訟代理人の両方が期日に出頭した場合,例外的に当事者及び訴訟代理人の旅費の両方が認められます(費用法2条5号上段の「(当事者等が出頭命令又は呼出しを受けない期日に出頭した場合を除く。)」参照)。
・ 成年後見人のほか,成年後見人が成年被後見人のために選任した訴訟代理人の両方が期日に出頭した場合,成年後見人及び訴訟代理人の両方の旅費が認められます(費用法2条5号上段の「法定代理人及び特別代理人を除く。」参照)。
・ 訴訟代理人の旅費は,当事者等が出頭した場合における旅費として裁判所が相当と認める額を超えることができません費用法2条5号ただし書)。
④ 当事者又は代理人の,期日への出頭日当(費用法2条4号ロ又は5号)

・ 3950円です(費用規則2条2項)。
・ 当事者及び代理人の両方が期日に出頭した場合,原則として当事者の日当だけが認められます(費用法2条5号本文の「(当事者等が・・・期日に出頭した場合を除く。)」参照)。
⑤ 証人の旅費(費用法18条1項及び21条)
・ 往復の交通費の実費相当額が出ます。
・ 一定の距離を超えた場合,新幹線の指定席の代金が出るようになります。
・ 距離のいかんを問わず,新幹線のグリーン席の代金までは出ません。
⑥ 証人の日当(費用法22条)
・ 2時間以内に尋問が終わった場合の日当は2960円以上3950円以内です(費用規則7条,及び証人等の日当の支給基準について(平成14年6月25日付の最高裁判所事務総長通達))。
⑦ 書類の作成及び提出の費用(費用法2条6号及び費用規則別表第二・1項)
・ 基本となる額は審級別に1500円ですから,第一審で終わった場合は1500円であり,控訴審で終わった場合は3000円です(費用規則別表第二・1項本文)。
・ 6通以上の準備書面を提出した場合は1000円が加算され,21通以上の準備書面を提出した場合は2000円が加算され,36通以上の準備書面を提出した場合は3000円が加算されます(以後,15通区切りで1000円ずつ加算されます。)(費用規則別表第二・1項ただし書1号)。
    なお,証拠申出書及び証拠説明書は,当事者の主張を明らかにする書類ではありませんから,通数加算の対象となりません(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)30頁)。
・ 16通以上の証拠書類を提出した場合は1000円が加算され,66通以上の証拠書類を提出した場合は2000円が加算され,116通以上の証拠書類を提出した場合は3000円が加算されます(以後,50通区切りで1000円ずつ加算されます。)(費用規則別表第二・1項ただし書2号)。
    なお,書証について枝番号が付されている場合,枝番号ごとに1通として数えることとなります(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)31頁)。
・ 例えば,地裁段階で訴状及び原告準備書面(20)まで提出し,かつ,枝番なしで甲115まで提出した場合,書類の作成及び提出の費用は4500円(内訳は,1500円+1000円+2000円)となります。
・ 文書提出命令の申立てをした場合,800円が追加されます(費用規則別表第二・5項イ)。
⑧ 資格証明書取得費用(費用法2条7号の,官庁等からの書類交付費用)
・ 相手方が法人である場合,登記簿謄本1通当たり,600円(取得に要した手数料額実費)及び160円(申請書の提出費用及び証明書等の受領費用)の合計760円を請求できます(費用規則2条の3)。
・ 160円という金額は,消費税が5%であった時期の往復の郵便代であると思いますが,消費税増税後も金額の改定がありません。
(2) 庶民の弁護士伊藤良徳サイト「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」に訴訟費用額の計算例が載っています。ただし,資格証明書取得費用は764円ではなく,760円であると思います。
2 訴訟追行に必要なすべての費用が訴訟費用というわけではないこと
(1)ア 裁判所HPの「訴訟費用について」には「(1)訴訟費用の負担」として以下の記載があります。
    法律で定められている訴訟費用は,基本的には敗訴者が負担することになります。訴訟費用には,訴状やその他の申立書に収入印紙を貼付して支払われる手数料のほか,書類を送るための郵便料及び証人の旅費日当等があります。ここでいう訴訟費用は,訴訟を追行するのに必要なすべての費用を含むわけではなく,例えば,弁護士費用は訴訟費用に含まれません。
イ 最高裁令和2年4月7日判決は以下のとおり判示しています。
    費用法2条が法令の規定により民事執行手続を含む民事訴訟等の手続の当事者等が負担すべき当該手続の費用の費目及び額を法定しているのは,当該手続に一般的に必要と考えられるものを定型的,画一的に定めることにより,当該手続の当事者等に予測できない負担が生ずること等を防ぐとともに,当該費用の額を容易に確定することを可能とし,民事執行法等が費用額確定処分等により当該費用を簡易迅速に取り立て得るものとしていることとあいまって,適正な司法制度の維持と公平かつ円滑なその利用という公益目的を達成する趣旨に出たものと解される。
(2)  当事者が準備書面の直送をするためにした支出については,費用法2条2号は類推適用されませんから,訴訟費用になりません(最高裁平成26年11月27日決定)。
(3) 不法行為又は安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の場合,相手方に弁護士費用を請求できますところ,以下の記事が参考になります。
① 「#モデル契約書の沼 損害賠償条項等における契約書の文言を根拠とする「弁護士費用実額」の請求可能性についての一考察」(改訂版につき自由と正義2021年12月号48頁ないし55頁)
② みずほ中央法律事務所HPの「【損害賠償として弁護士費用を請求することの可否(責任の種類による分類)】」

第3 訴えの提起手数料及び上訴の提起手数料
1 訴額に基づいて算定されること
(1)ア 訴えの提起手数料(費用法3条1項)は,民事訴訟法8条1項及び9条により算定された訴訟の目的の価額(略称は「訴額」です。)に基づいて算出されます(費用法4条1項)ところ,裁判所HPの「手数料額早見表」を見れば,訴額に応じた訴え提起手数料が分かります。
イ 具体的な訴え提起手数料は,訴額100万円の場合は1万円,訴額500万円の場合は3万円,訴額1000万円の場合は5万円,訴額3000万円の場合は11万円,訴額5000万円の場合は17万9000円です。
(2) 財産権上の請求でない請求(いわゆる「非財産権上の請求」です。)にかかる訴えの場合,訴額は160万円とみなされます(費用法4条2項)。
(3) 財産権上の請求にかかる訴訟物の価額の算定が著しく困難な場合,裁判長又は裁判所は,その算定にとって重要な諸要因を確定し,これを基礎とし,裁量によって右価額を算定することができます(最高裁昭和49年2月5日判決)。
(4) 訴額の算定にあたり,必ずしも鑑定その他の証拠調べによりこれを認定しなければならないものではなく,その他の方法によりこれを認定することも許されますし,訴額の算定は訴え提起の時が基準となります(最高裁昭和47年12月26日判決(判例秘書に掲載))。
2 訴額通知
(1) 実務上,訴額は,訴訟物の価額の算定基準について(昭和31年12月12日付の最高裁判所民事局長通知)(略称は「訴額通知」です。)に基づいて算定されます。
(2) 訴額通知は裁判所を拘束するものではありません(最高裁昭和47年12月26日判決(判例秘書に掲載))が,訴額の具体的算定を容易とする特段の事情の存しない限り,訴額は,訴額通知の示す基準に従って算定するのが相当とされています(最高裁昭和44年6月24日判決参照)。
(3) 土地を目的とする訴訟物の価額の算定基準については,平成6年4月1日から当分の間,固定資産税評価額に2分の1を乗じた金額が標準となっています(土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について(平成6年3月28日付の最高裁判所民事局長の通知))。
3 個別の訴額算定例
(1)ア 地方自治法242条の2第1項4号所定の損害賠償請求訴訟(いわゆる住民訴訟)の訴額は160万円であります(最高裁昭和53年3月30日判決)ところ,判例タイムズ1439号(2017年10月1日号)に「住民訴訟の訴額-住民訴訟の請求の性質とその個数について-」が載っています。
イ 県知事に対し,違法又は不当な旅費の支出があったとして,3件の旅費支出行為に関し,それぞれ損害賠償を請求するよう求める住民訴訟の訴額は,160万✕3=480万円とされました(東京高裁平成22年4月2日決定(判例時報2121号4頁))。
ウ 三訂版 事例からみる訴額算定の手引29頁及び30頁には,「(山中注:住民訴訟に関して)被告が控訴の提起をする場合、被告の不服申立て部分の算定は可能であるが、上述のように、住民訴訟においては、請求額にかかわらず、原告の訴え提起時及び控訴提起時の訴額を一律に160万円と解すべきこととの均衡上、被告控訴の訴額も160万円と解するのが相当である(裁判所書記官研修所「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」 105頁)。」と書いてあります。
(2)  労働基準法114条の付加金の請求については,同条所定の未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは,民訴法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれるものとして,その価額は当該訴訟の目的の価額に算入されません(最高裁平成27年5月19日決定)。
4 上訴の提起手数料
(1) 控訴の提起手数料は,訴えの提起手数料の1.5倍です(費用法別表第一・2項)。
(2) 上告の提起又は上告受理の申立て手数料は,訴えの提起手数料の2倍です(費用法別表第一・3項)。
5 参考になる文献
・ 「〔三訂版〕事例からみる訴額算定の手引 」が参考になります。

第3の2 過納手数料の還付等
1 手数料還付の申立て
(1) 訴えの提起又は上訴提起の手数料を納めすぎた場合,手数料還付の申立てをすることで,納めすぎた手数料の還付を受けることができます(費用法9条1項1号)。
(2) 口頭弁論を経ない却下の裁判が確定したり,第1回口頭弁論期日前に訴訟を取り下げたりした場合,手数料還付の申立てをすることで,手数料の半分(ただし,手数料の半分が4000円に満たないときは,4000円)を控除した金額の手数料を還付してもらえます(費用法9条3項1号)。
(3)ア 手数料還付の申立ては,申立てをすることができる事由が生じた日(例えば,却下の裁判の確定日)から5年以内にしなければなりません(費用法9条7項)。
イ 裁判確定後に手数料還付の申立てをする場合であっても,手数料還付の申立書の提出先は当時の事件係属部となります。
(4) 地裁の還付却下決定に対しては即時抗告ができるのに対し(費用法9条9項・非訟事件手続法66条2項),高裁の還付却下決定に対しては即時抗告はできません。
2 手数料還付の請求
(1)ア 手数料の還付決定が出た場合,①手数料還付の請求書及び②還付の決定正本を裁判所事務局出納課に提出すれば,還付金請求書に記載した振込先への振込により手数料を還付してもらえます。
イ 大阪地裁本庁の還付決定の場合,大阪地裁事務局出納第一課出納第一係(新館1階)が書類の提出先となります。
(2) 最高裁判所事務総局の総務局第三課長及び経理局監査課長の事務連絡(平成15年12月18日付)の本文は以下のとおりですから,手数料の還付請求に際して確定証明書の添付は不要です。
 本日付け最高裁総三第89号総務局長,経理局長通達「「過納手数料等の還付金の支払及び旅費,鑑定費用等の概算払等の取扱いについて」の一部改正について」が発出されました。これまで還付金の請求に際しては,国庫債務の適正な支払を確保するために,還付決定又は還付処分の正本のほか,その確定証明書等の「確定を証する書面」の提出を求めていましたが,実務におけるこれまでの事務処理状況等に照らすと,当事者から一律に確定証明書等の「確定を証する書面」を求めなくとも,前記の目的を果たし得るものと考え,「その確定を証する書面」の提出を求めない取扱いに改めることとしました。
 ついては,前記の趣旨を裁判所書記官等の関係職員に周知していただくようよろしくお取り計らいください。
 なお,簡易裁判所に対しては,所管の地方裁判所から,この趣旨をお知らせください。

第4 予納郵券の組み合わせ,特別送達の郵便料金及び書記官送達
1 予納郵券の組み合わせ
(1) 訴訟提起時に必要となる予納郵券(費用法12条及び13条)の組み合わせは裁判所ごとに異なりますから,提訴先の裁判所HPを見るか,事件係に電話で聞く必要があります。
(2) 大阪地裁HPに「民事訴訟等手続に必要な郵便切手一覧表」が載っていて,大阪家裁HPの「大阪家庭裁判所の手続案内」に「申立時に必要な手数料・予納郵便切手について」等が載っています。
2 特別送達の郵便料金
(1) 通常の郵便料金の目安

    定形外郵便物の場合,A4換算と値段の対応関係は,角形2号封筒の重さ約15gをも考慮すれば,通常の郵便料金は以下のとおりです(普通のA4用紙の重さは約4gであるものの,余裕を見た目安です。)。
・ 7枚以下であれば,50gまでの120円
・ 8枚から17枚であれば,100gまでの140円
・ 18枚から30枚であれば,150gまでの210円
・ 31枚から53枚であれば,250gまでの250円
・ 54枚から111枚であれば,500gまでの390円
・ 113枚から232枚であれば,1kgまでの580円
(2) 特別送達の郵便料金の目安
    特別送達の場合,通常の郵便料金に1005円(内訳は,一般書留料金435円及び特別送達料金570円)が加算されますから,枚数別の金額の目安は以下のとおりとなります。
・ 7枚以下であれば,1125円
→ このサイズであれば定形郵便物が利用されますから,実際には1089円となります。
・ 8枚から17枚であれば,1145円
・ 18枚から30枚であれば,1215円
・ 31枚から53枚であれば,1255円
・ 54枚から112枚であれば,1395円
・ 113枚から232枚であれば,1585円


第5 期日への出頭旅費の計算方法
1 同一簡易裁判所管内から出頭した場合
(1) 住所地から直線距離で500m以内であれば0円であり,住所地から直線距離で500m以上であれば300円です(費用法2条4号イ(1)本文,費用規則2条1項2号)。
(2) グーグルマップの「地点間の距離を測定する」を使えれば,直線距離を計測できます.
2 簡易裁判所を超えて出頭した場合
(1) 以下のいずれかの計算式で算定されます。
① 直線距離に基づく額の償還(費用法2条4号イ(1)本文,費用規則2条1項1号)
・ 往復分の旅費に相当するものです(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)14頁の注3参照)。
・ 住所地簡易裁判所と出頭地簡易裁判所の直線距離を基準として,近距離,中距離及び長距離に区分して,各区分に相応した旅費単価が設定されています(最低額は300円です。)。
近距離(10km以上100km未満)の場合,1km当たり30円。
中距離(100km以上301km未満)の場合,1km当たり50円
長距離(301km以上)の場合,301km未満の部分は1km当たり50円,301km以上の部分は1km当たり40円
② 実費額の償還(費用法2条4号イ(1)ただし書)
・ 旅行が通常の経路・方法であること及び現に支払った交通費の額が,直線距離に基づく額を超えることを明らかにする領収書,乗車券,航空機の搭乗券の控え等の文書が提出された場合,現に支払った交通費の額の償還を受けることができます。
(2)ア 大阪簡裁と堺簡裁の直線距離は13kmですから,1回当たりの出頭旅費は390円となります。
イ 大阪簡裁と東京簡裁の直線距離は401kmですから,1回当たりの出頭旅費は1万9040円となります。
    なお,私の経験では,乗車区間(例えば,「東京~新大阪利用分」という記載)及び宛名を自分で補充した領収書を提出すれば,「旅行が通常の経路及び方法によるものであること並びに現に支払つた交通費の額が当該最高裁判所が定める額を超えることを明らかにする領収書・・・が提出された」ということで,指定席利用の東海道新幹線の往復料金(通常期の場合,2万9440円)が実費額の償還として認められました。
3 訴訟代理人の旅費
(1) 訴訟代理人の旅費は,当事者等が出頭した場合における旅費として裁判所が相当と認める額を超えることができません(費用法2条5号ただし書)。
(2) 民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)19頁には以下の記載があります。
    費用額確定処分が裁判所書記官の権限とされていること(民訴法71条1項)に鑑みると,法2条5号ただし書の「裁判所」とは,広義の司法機関のうち裁判所書記官を指すと考えられる。裁判所書記官としては,当事者間の公平を図るという観点から代理人の旅費等の上限額が設定された趣旨を踏まえた上で,相当と認める額を決めることになる。

第6 弁論準備手続期日に電話会議で出席した場合であっても,期日への出頭日当が認められること
1(1) 札幌高裁平成26年6月25日決定の理由の概要は以下のとおりであって,当事者又は訴訟代理人が弁論準備手続期日に電話会議で出席した場合であっても,3950円の「日当」(費用法2条4号ロ(当事者の場合)又は2条5号(代理人の場合))が訴訟費用として認められると判示しました。
    費用法2条4号,5号は,当事者等又は代理人が期日に出頭するための「日当」が,当事者等又はその他の者が負担すべき民事訴訟等の費用の範囲であり,その額は「出頭・・・に現実に要した日数」に応じて最高裁判所が定める額である旨定めているところ,電話会議の方法による弁論準備手続期日に出頭しないでその手続に関与した場合でも,「期日に出頭しないで同項(注:民訴法170条3項)の手続に関与した当事者は、その期日に出頭としたものとみなす」とされており(同条4項),費用法は,前記の場合を「日当」の対象から除外していない。そうすると,前記の場合においても「日当」を訴訟費用額として認めた本件処分は相当である。
    また,訴訟費用額確定処分は,基本事件について,その訴訟記録に基づき,訴訟費用の負担の額を費用法等で定められた算定方法により確定するものであり,基本事件ごとに算定されるものである。したがって,基本事件の代理人が基本事件の期日を利用して他の事件の期日に出頭している可能性がある場合であっても,基本事件の「旅費」を算定するに当たり,基本事件の訴訟記録及び当事者が提出した訴訟費用額の疎明に必要な書面において基本事件の期日を利用した他事件への出頭状況を示す証拠資料があるなど特段の事情がない限り,これを考慮する必要はないというべきである。そして,本件において前記特段の事情は認められない(また,訴訟費用額確定処分においては特別な証拠調べが予定されていない上,異議審ないし抗告審において調査嘱託等の証拠調べをすることが許されるとしても,本件において代理人が同一日に他の事件の期日に出頭したことの有無に関する調査嘱託等の証拠調べを行う必要は認められない。)。そうすると,Y代理人が出頭した期日の「旅費」の全額を訴訟費用額として認めた本件処分は相当である。
(2) 最高裁平成26年12月17日決定は,「所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。」と判示して許可抗告を棄却しました。
(3) 判例時報2291号(2016年6月11日号)16頁及び17頁が出典です。
2 ①双方ともウェブで参加したウェブ会議が書面による準備手続として行われた場合,期日が開催されたわけではないために出頭日当を請求できないのに対し,②双方ともウェブで参加したウェブ会議が弁論準備手続期日として行われた場合(令和5年3月1日以降の取扱いです。),期日が開催されたわけですから,最高裁平成26年12月17日決定に基づいて出頭日当を請求できることになります。

第7 当事者尋問と訴訟費用の関係
1 原則として追加の訴訟費用は発生しないこと
(1) 当事者尋問の場合,旅費日当の支給はなく,期日への出頭旅費及び出頭日当が訴訟費用として認められるに過ぎません。
(2) 当事者と訴訟代理人の両方が期日に出頭した場合,期日への出頭旅費及び出頭日当は当事者についてしか認められません(費用法2条5号本文の「(当事者等が・・・期日に出頭した場合を除く。)」参照)。
    そして,訴訟代理人に主尋問をしてもらった場合,当事者及び訴訟代理人の両方が期日に出頭しているわけですから,訴訟代理人の期日への出頭旅費及び出頭日当が訴訟費用として発生することはありません。
2 例外的に追加の訴訟費用が発生する場合 
(1) 当事者が呼出しを受けて期日に出頭した場合,期日への出頭旅費及び出頭日当は当事者及び訴訟代理人の双方について認められます(費用法2条5号本文の「(当事者等が出頭命令又は呼出しを受けない期日に出頭した場合を除く。)」の反対解釈)。
    そのため,呼出状(民事訴訟規則127条本文・108条)の送達を受けた当事者の当事者尋問の場合,訴訟代理人の期日への出頭旅費及び出頭日当が当事者のそれとは別に訴訟費用として発生します。
(2) 期日への出頭日当は1日当たり3950円です(費用法2条4号ロ・費用規則2条2項)。

第8 証人尋問の旅費日当
1 総論
(1)ア 証人尋問に出席した証人の場合,旅費日当(費用法18条1項)を請求できます。
    ただし,証人からの旅費日当の請求が予想される場合,証人尋問を申請した当事者(つまり,主尋問をする当事者)が旅費日当相当額を事前に裁判所に納付する必要があります費用法11条1項1号・2項及び12条1項)から,当事者及び裁判所に余計な事務手続が発生しないよう,証人が旅費日当を放棄することが多いです。
イ 民事実務講義案1(三訂版)180頁には「申出当事者側に属するか近しい証人にあっては,裁判所に対し旅費日当等の請求をしないことが多い。これは,申出当事者において旅費日当等について事実上処理することが多いためと思われる。そのため,申出当事者に事前に確認しておくことも必要である。」と書いてあります。
(2)ア 証人が旅費日当を請求した場合,証人尋問終了後に裁判所から旅費日当を支払ってもらえます。
    この場合,証人の旅費日当は訴訟費用額に含まれることとなります。
イ 証人尋問を申請した当事者が旅費日当相当額を予納せずに直接,証人に支払った場合,そのお金は訴訟費用とはなりませんから,勝訴したとしても相手方に請求することはできません。
2 証人尋問の旅費

(1) 鉄道,フェリー及び飛行機の実費を支給される他(費用法18条1項及び21条),徒歩による移動分については別途,1km当たり37円以下のお金を支給されます(費用規則6条1項のほか,佐藤法律事務所HPの「証人は徒歩でも旅費が出る?(証人の旅費について)」参照)。
(2) 最寄り駅から裁判所までのタクシー代については,費用法21条所定の「鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃」のいずれにも該当しないから出ないと思います。
3 証人尋問の日当 
・ 証人等の日当額は8000円以下であります(費用規則7条のほか,裁判所HPの「証人等日当及び宿泊(止宿)料」参照)ところ,証人等の日当の支給基準について(平成14年6月25日付の最高裁判所事務総長通達)によれば,尋問所要時間に応じて以下のとおりとなっています。
① 2時間以内の場合,2960円以上3950円以内
② 2時間を超え4時間以内の場合,3950円を超え5780円以内
③ 4時間を超える場合,5780円を超え8050円以内

第9 証人に対する金銭の提供の取扱い
1 解説弁護士職務基本規程第3版208頁には以下の記載があります。
    証人の出廷や打合せの負担を考慮し、一定額の金銭の提供を申し出ることは許されるか。証人は、請求すれば国から旅費・日当が支給されるが、事前の打合せに要する旅費等は支給されない。証人の現実の負担を考慮すれば、いかなる場合も一切許されないというのは疑問があるが、金額の多寡(実費を基本とすべきであろう)や提供の時期、方法等、公正さを疑われることのないよう、十分に留意すべきである。
2 民事訴訟において,証人又は当事者本人として,一方の当事者(甲)に不利な虚偽の陳述をした者(乙)が,その後翻意し,甲に対し,真実を陳述する旨申し出るとともに,その対価として金員を要求した場合,甲が自己の権利を守るため必要であると考えて,乙との間で,真実を陳述することに対する対価として金員を支払う旨の契約を締結したとしても,右契約は,公序良俗に反します(最高裁昭和45年4月21日判決)。

第10 訴訟費用の負担の裁判
1 訴訟費用の敗訴者負担の原則
・ 訴訟費用は敗訴の当事者の負担となります(民事訴訟法61条)。
2 一部敗訴の場合の負担
・ 一部敗訴の場合における各当事者の訴訟費用の負担は,裁判所がその裁量で定めます。
    ただし,事情により,当事者の一方に訴訟費用の全部を負担させることができます(民事訴訟法64条)。
3 訴訟費用の負担の裁判
(1) 裁判所は,事件を完結する裁判(通常は,終局判決です。)において,職権で,その審級における訴訟費用の全部について,その負担の裁判をしなければなりません(民事訴訟法67条1項)。
    例えば,全部認容判決の場合,判決主文において「訴訟費用は被告の負担とする。」などと記載され,一部認容判決の場合,判決主文において「訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。」などと記載されるのであって,判決主文では訴訟費用の負担割合だけが記載されています。
(2) 不必要な行為をしたり,訴訟を遅滞させたりした場合,全部勝訴したとしても訴訟費用の一部を負担させられることがあります(民事訴訟法62条及び63条)。
(3) 上級の裁判所が本案の裁判を変更する場合(例えば,高裁が地裁判決を取り消す場合),訴訟の総費用について,その負担の裁判をしなければなりません(民事訴訟法67条2項)。
    例えば,高裁が地裁判決を取り消して控訴人の請求をすべて認容した場合,判決主文において「訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。」などと記載されます。
4 法定代理人等の費用償還
・ 法定代理人,訴訟代理人,裁判所書記官又は執行官が故意又は重大な過失によって無益な訴訟費用を生じさせたときは,受訴裁判所は,申立てにより又は職権で,これらの者に対し,その費用額の償還を命ずることができます(民事訴訟法69条1項)。


第11 平成16年に検討された,弁護士費用の敗訴者負担制度
1 訴訟係属後,当事者双方による共同の申立てがあったときは,訴訟代理人の報酬に係る費用を訴訟費用として敗訴者の負担とすることを主な内容とする,民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(第159回国会閣法第65号)は,平成16年3月2日に第159回国会に提出されたものの,同年12月3日に第161回国会の閉会により審査未了で廃案となりました。
2(1) 訴訟費用として敗訴者の負担となる弁護士報酬は以下のとおりとすることが検討されていました。
訴額が  10万円の場合,1万円
訴額が  50万円の場合,5万円
訴額が 100万円の場合,10万円
訴額が 500万円の場合,20万円
訴額が1000万円の場合,30万円
訴額が5000万円の場合,42万円
訴額が   1億円の場合,57万円
訴額が  10億円の場合,327万円(以後,増額なし。)
(2) 法テラス基準の着手金ぐらいの水準でした。
3 費用法の一般原則に即して,訴額に応じて必要最小限の法定額を定めるものであって,当事者が複数の代理人を選出しても増額はしませんし,負担額の合意を認めるものでもありませんでしたし,実際に訴訟代理人に支払うべき額とは関係がないとされました。
4 民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士費用の敗訴者負担制度に関するもの。平成16年12月廃案)に関する法律案審議録(法務省の開示文書)15頁ないし18頁が分かりやすいです。
5 日弁連HPに「弱者の裁判を受ける権利を侵害する「弁護士報酬敗訴者負担」法案に反対する決議」(平成16年10月8日付)が載っています。

第12 訴訟費用額の確定手続
1 訴訟費用額の決定権者及び決定時期
(1) 訴訟費用の負担の額はその負担の裁判が執行力を生じた後に申立てにより,第一審裁判所の裁判所書記官が定めます(民事訴訟法71条1項)。
(2) 判決の場合,判決の確定後に訴訟費用額の確定処分の申立てがされて定められることとなります。
2 訴訟費用額の確定処分の申立て
(1) 訴訟費用額の確定処分の申立ては,書面でしなければなりません(民事訴訟規則24条1項)。
(2)ア この申立てにより訴訟費用の額を定める処分を求める場合,当事者は,費用計算書及び費用額の疎明に必要な書面を第一審裁判所の裁判所書記官に提出するとともに,申立書及び費用計算書を相手方に郵便又はFAXにより直送(民事訴訟規則47条1項)しなければなりません(民事訴訟規則24条2項)。
    ただし,旅費について実費額の償還を求める場合でない限り,裁判所の事件記録を見れば訴訟費用額の計算ができるため,「費用額の疎明に必要な書面」は通常,ありません。
イ 費用計算書には,支出した費目についてその種目とその額を具体的に記載しなければなりません。
(3) 訴訟費用額の確定処分の申立てをする場合,訴訟費用額の確定処分について自分及び相手方への送達のための郵券を納める必要がありますところ,この郵券代も訴訟費用となります。
    ただし,訴訟費用額の確定処分は必ずしも送達を要しません(民事訴訟法71条3項参照)から,訴訟に敗訴して訴訟費用を請求される立場となった場合,自分への送達については裁判所の窓口で受領することとし,相手方への送達については普通郵便で送付するように依頼すれば,郵券代を84円に抑えることができます。
(4) 松江地裁HPに「訴訟費用額確定処分申立書の提出について」が載っています。
 訴訟費用額の確定処分
(1) 裁判所書記官は,訴訟費用額の確定処分をする前に相手方に対し費用計算書及び費用額の疎明に必要な書面並びに申立人の費用計算書の記載内容についての陳述を記載した書面を、一定の期間内に提出すべき旨を催告しなければなりません(民事訴訟規則25条1項)。
    相手方がこの期間内に費用計算書又は費用額の疎明に必要な書面を提出しない場合,裁判所書記官は,申立人の費用のみについて,訴訟費用の負担の額を定める処分をすることができます(民事訴訟規則25条2項本文)。
(2) 当事者双方が訴訟費用を負担する場合で,相手方が期間内に費用計算書等を提出したときは,各当事者が負担すべき費用は,その対当額について相殺があったものとみなされます(民事訴訟法71条2項,民事訴訟規則27条)。
(3) 訴訟費用額の確定処分は,これを記載した書面を作成し,その書面に処分をした裁判所書記官が記名押印してしなければなりません(民事訴訟規則26条)。
    この処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生じます(民事訴訟法71条3項)。
(4) 訴訟費用額の確定処分は,判決と同様に,その正本に基づいて,相手方の財産に対して強制執行をすることができます。
(5)ア 破産債権に関する訴訟が破産手続開始決定前に係属した場合において,当該訴訟が破産管財人に受継されることなく終了した場合,当該訴訟にかかる訴訟費用請求権は破産債権になると思います(破産法44条3項反対解釈の他,更生債権に関する最高裁平成25年11月13日決定参照)。
イ 破産事件における書記官事務の研究-法人管財事件を中心として- 385頁には「訟当事者の一方に破産手続開始決定がされたときには,訴訟の場合と同様に,訴訟費用確定処分の申立てを認めるべきではなく,既に申立てがある場合には,破産手続開始決定によって中断すると考えることができる。」と書いてあります。
4 訴訟費用額の確定処分に対する不服申立て
(1) 訴訟費用額の確定処分に対する異議の申立ては,その告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければなりませんし(民事訴訟法71条4項),執行停止の効力を有します(民事訴訟法71条5項)。
(2) 裁判所は,訴訟費用額の確定処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において,訴訟費用の負担の額を定めるべきときは,自らその額を定めなければなりません(民事訴訟法71条6項)。
(3) 異議の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることで,抗告審の判断をもらうことができますし(民事訴訟法71条7項),抗告審の決定に対しては特別抗告(民事訴訟法336条)及び許可抗告(民事訴訟法337条)をすることができます。


第13 関連記事その他
1(1) 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律(平成15年7月25日法律第128号)により,平成16年1月1日以降については,①当事者及び代理人の旅費日当,並びに②書類の作成及び提出の費用の計算が簡素化されました(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)1頁ないし3頁参照)。
(2)ア 民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)67頁では催告書送付費用(民事訴訟規則25条)は500円となっていますところ,これは当時の一般書留を使った場合の実費であるのかもしれません。
イ 裁判所から普通郵便で催告書を送付する場合,催告書送付費用は実費ですから84円となります。
(3)ア  更生債権に関する訴訟が更生手続開始前に係属した場合において,当該訴訟が会社更生法156条又は158条の規定により受継されることなく終了したときは,当該訴訟に係る訴訟費用請求権は,更生債権に当たります(最高裁平成25年11月13日決定)。
イ  抗告提起の手数料の納付を命ずる裁判長の補正命令を受けた者が,当該命令において定められた期間内にこれを納付しなかった場合においても,その不納付を理由とする抗告状却下命令が確定する前にこれを納付すれば,その不納付の瑕疵は補正され,抗告状は当初に遡って有効となります(最高裁平成27年12月17日決定)。
2 家事事件の場合,別表第一事件の調停申立ての手数料は800円であり(費用法別表第一・15項),別表第二事件の申立て手数料は1200円であり(費用法別表第一・15項の2),高裁への抗告提起の手数料はそれらの1.5倍です(費用法別表第一・18項(1))
3(1) 裁判員裁判における旅費日当については,国税庁HPの「証人、裁判員に対する旅費等の支給について」が参考になります。
(2) エール少額短期保険HP「【保存版】裁判でかかる費用のすべて|負担を減らす工夫も紹介」が載っています。
4 刑事事件の訴訟費用の具体例としては,国選弁護人の報酬及び証人に支給された日当になります(検察庁HPの「裁判の執行等について」参照)。
5 弁護士費用を含む訴訟費用の全額をいずれか一方の当事者に負担させる裁判は,実際に生じた費用の範囲内でその負担を命ずるものである限り,民訴法118条3号所定の「公の秩序」に反するものではありません(外国判決の執行判決に関する最高裁平成10年4月28日判決)。
6(1) 民事訴訟において,訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し,かつ,その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合には,同決定は当然にその効力を失い,裁判所は,同決定を民訴法84条の規定に従って取り消すことなく,同決定を受けた者に対し,猶予した費用の支払を命ずることができる(最高裁平成19年12月4日決定)。
(2) 訴訟上の救助により納付を猶予された費用の取立て決定には執行力があります(費用法16条1項)。
7(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 「民事訴訟費用等に関する法律」,「刑事訴訟費用等に関する法律」等の運用について(平成9年12月22日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 訴訟上の救助により支払を猶予した裁判費用に関する債権管理について(平成22年3月16日付の最高裁判所経理局監査課課長補佐及び総務局第三課課長補佐の事務連絡)
・ 鑑定委員に対する日当等の支給について(平成4年7月8日付の最高裁判所民事局長,総務局長及び経理局長通達)
・ 片道100キロメートル未満の区間の鉄道旅行における特別急行料金等の支給について(平成22年11月9日付の最高裁判所経理局長の通知)
・ 片道100キロメートル未満の区間の鉄道旅行における特別急行料金等の支給について(平成28年7月29日付の最高裁判所経理局長の通知)
 予納郵便切手の取扱いに関する規程(昭和46年6月14日最高裁判所規程第4号)
 予納郵便切手の取扱いに関する規程の運用について(平成7年3月24日付の最高裁判所事務総長の通達)
・ 予納郵便切手の交換に関する事務の取扱いについて(平成28年3月28日付の最高裁判所総務局長及び経理局長の連絡文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 宣誓書及び宣誓拒絶
・ 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い
・ 裁判員等の日当
・ 陳述書作成の注意点
 新様式判決
 処分証書と報告文書の違い
・ 二段の推定
・ 文書鑑定
 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成
 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
 通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い
 陳述書の機能及び裁判官の心証形成

裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成

目次
0 はじめに
1 総論
2 主尋問
3 反対尋問
4 介入尋問
5 人証の特徴
6 関連記事その他

0 はじめに
・ 以下の1ないし4の記述は,①月刊大阪弁護士会2011年10月号27頁ないし30頁,及び②大阪地裁と大阪弁護士会の,2015年2月2日開催の第72回民事裁判改善に関する懇談会議事録に書いてある,裁判官の発言をほぼ抜粋したものです。
 
1 総論
○弁論準備の終結段階で形成された心証が,尋問によって覆るという割合はそれほど多くはない。尋問前に心証が固まっている場合には,目的を持って証人尋問で検証している。
   客観的な証拠が乏しく,どちらのストーリーも成り立ちうるような場合は,どちらがより整合性があるかなどを考えて心証を確立させる場合が多い。
○目的意識が明確で簡にして要を得たものや,不利な点や矛盾点など相手方が指摘しそうな部分も意識的にカバーするような尋問が良い尋問であり,逆に,悪い尋問としては,陳述書をなぞるだけの尋問や意見を押しつける尋問,感情的になったり,証人を刺激したりするような尋問が挙げられる。
○証人の証言態度や口癖は基本的には心証形成にさほど影響しない。
   誠実に答えない場合は信用性に影響を及ぼす場合があり,逆に不利益事実も認めた上で証言すると全体として信用性が高まるという意見があった。
 
2 主尋問
(1) 総論
○大阪地裁では,主尋問を陳述書に譲って5分とする運用はしていない。
○具体的な事実をきちんと聞くと印象が強い。
   逆に,印鑑の管理が問題になっているのに,誰が管理していましたということだけ聞いて具体的にどこでどのように管理していたかということを聞かないと印象が良くない。
○表面的に流れているだけの質問では駄目で,きちんと裁判官が絵を描けるような質問が良く,リアルさに欠ける質問は適切ではない。
   主尋問で機械的に答えていたのに反対尋問で急に自分の言葉に変わるという場合,心証は良くない。本人の言葉で答えていることが大事である。
○証人や本人が直接体験していることを語ることが大前提であるから,そのリアリティーが浮かび上がってくるかどうかがポイントになってくる。
○実質的に争いのない点や争点に関係のない点に時間をかける主尋問はよくない。
   争点とは関係ないものの話しておきたいことがあれば,一番最後に「裁判所にいっておきたいことはありますか」という形で要約して伝えてもらえればよいのではないか。

(2) 主尋問における誘導
○陳述書に書いてあっても肝心なところは誘導せずに本人に話してもらいたい。
   裁判官は本人がどのように言うのかを見ているので,誘導して良い部分との区別が重要である。
○争点にかかわる部分に対する答えが「はい」「いいえ」のみの誘導が過ぎる尋問は悪い主尋問である。
○裁判所は,主尋問において,弱いと思っているところを本人がどのように説明するのかを見ているので,そういうところを誘導されると心証がとれないので止めてもらいたい。
 
(3) 陳述書との関係
○争点について具体的に証人の口から語らせるというところを一番重視しなければならない。
   陳述書をなぞるだけのメリハリのない尋問は,聞いていて効果がない。
○陳述書はきれいにまとまっていることが多いので,証人の認識等について,具体的に証人自身の言葉で聞くと迫真性が違う。
○証人が陳述書でも出ていない重要な間接事実について突然証言し出したような場合,争点に関係しないと言い切れるかどうかは疑問で,裁判所が尋問を止めることは難しい。
   ただし,その話がなぜこの段階で出るかについては非常に疑問を持つから,その理由を反対尋問で聞いてもらうのが良いのではないか。

(4) 文書等を示しての尋問
○高裁での経験からいうと,尋問は簡潔に要点を抜き出して,必要な書証に触れながら自分の言葉で語っているものが絶対良い。
   だらだらした調書を読まされることは非常に不評であり,簡にして要を得たものが一番理想だと思う。
○民事訴訟規則102条の「相当期間前」は尋問期日前の1,2週間前との理解であり,その期間は概ね遵守されている。
○尋問で示す証拠が尋問直前又は当日に提出された場合,相手方の意見を聞いた上で,事案の内容や証拠の重要性に応じて考える。
   期日の続行もあり得るし,弾劾証拠としてのみ使用を許したり,尋問で示すことを制限したり,時機に後れた攻撃防御方法として却下することもあり得る。
   例は少ないが,尋問期日が変更されたこともあるようである。
  


3 反対尋問
(1) 総論
○良い反対尋問は,淡々と事実や認識を証言させ,その中で客観的事実や主尋問との矛盾点や不合理な変遷を浮かび上がらせる尋問,記憶の内容や根拠が曖昧であることが明らかになるような尋問である。
○悪い反対尋問は,威圧的な尋問,侮辱的な尋問,些細な記憶違いをとらえて糾弾する尋問,意見や主張を押しつける尋問,無理に誘導する尋問,主尋問の上塗りの尋問である。
○反対尋問において客観的証拠との矛盾を指摘することは意味があるものの,矛盾を認めさせたり,証言を変えさせたりする必要はない。
   踏み込みすぎると,かえって弁解されたり,合理的な理由が出てきたりして逆効果となる。
○客観的な事実との矛盾を浮かび上がらせる尋問が効果的である。「このとき会いましたよね。」「いや,会っていません」というように主尋問を固めていくものは余り意味がない。
   証言と矛盾する物を示しながら,矛盾を浮かび上がらせられると良いのではないか。反対尋問で,証言の弱いところがよく分かったり,記憶の曖昧さが鮮明になったこともある。
○客観的証拠との矛盾を反対尋問で指摘する意味について,最終準備書面での指摘でもかまわないが,敗訴する側に譲歩させた和解に持って行くときに,尋問で指摘してもらっていると,それを前提に和解ができるという意味では非常にありがたい。
   自分としてはやっていただいた方が良い。
○最終準備書面における指摘で足りるということもあるが,最終準備書面は参考程度に拝見するということもあるので,尋問時間との関係もあるものの,ある程度尋問で指摘してもらった方がよい。
  
(2) 弾劾証拠
○尋問時に弾劾証拠が提出される例は多くないが,証人等の供述と矛盾する客観的事実を裏付けるような証拠(例えば,後遺症の程度と矛盾する画像,不貞の事件でホテルに入っていく写真,主張や供述と矛盾する証人自らの言動を示す文書)は効果的である。
   ただし,弾劾証拠といっても本体の証拠でもあることが多く,争点整理段階で出してもらえれば,争点や人証を絞り込めたり,和解の可能性も高まったと思われることが多い。
○弾劾証拠として機能しない証拠が出されることもある。
   録音反訳が出されることもあるが,尋問の場で反訳の正確性を検証できないから,事前に出しておくべきという意見が複数ある。
○その場で証人が内容を確認して反論できてしかるべきもの,例えば,鮮明な写真,証人自身が作成した手紙やメモで内容が完結しており,その場で見てどういうものかが誰でも分かるものであれば,尋問の際に弾劾証拠で出されても問題はない。
   しかし,内容をその場で見て確認できないものや反論の機会を後日改めて与えなければならないようなもの,例えば,録音反訳書,長いメールで一部だけ取り出してきてもやりとりの全体が分からないもの,第三者が作成したものについては,時間をとって内容を確認してもらう必要があるので,場合によっては尋問期日を続行したり,争点整理をやり直したりということにもなりかねない。
   期日を重ねて反論させるようなものであれば,尋問前に出してもらった方が良かったのではないかと思うし,尋問前に出してもらっていれば和解できたのではないかという事案もある。
   事案にもより一概に言えないが,内容に応じた適時の提出を心がけていただきたい。
○弾劾証拠をどのタイミングで提出するのかについては,弁護士の戦略と思うが,事前に提出すると弁解されて効果がなくなってしまうようなものについては,本当に弾劾証拠として意味があるのか。
   弾劾証拠というのは,その場でぎゃふんといわせるというか,弁解ができないようなものが良いのではないか。前後の文脈を見なければ分からないものはふさわしくない。
○録音した会話の証拠の価値については,裁判所と弁護士との間で若干認識のずれがある。
   発言の意味については,文脈や会話の流れの中で評価する必要がある。今証言した内容とその会話に出てきた内容との間に矛盾があることによって直ちに弾劾になるかといわれるとそうではなく,発言の趣旨を吟味した上で,弾劾証拠としての意味があるかについて判断していくことにある。
 
(3) 反対尋問で質問しないことの意味
○陳述書に重要な事実が書いてあるのに主尋問で聞かなかった場合に反対尋問しないことの印象について,反対尋問できないのだと思ってしまうという意見が多い。
○主尋問で陳述書に記載されている重要な事実を聞かなかった場合に,相手方がその事実に対して反対尋問を行わないときに,裁判所としてどういう印象をうけるかについては,ケース・バイ・ケースだと思う。
   主尋問で聞かなかった重要な事実について反対尋問を行わない場合には,そもそもその事実を立証できていないということになることもあるとは思うが,自分の印象ではむしろ逆にとらえてしまうことが多いように思う。
   反対尋問で聞かないということは,その事実は当然の前提として認めていると受け取ったり,反対尋問をしても効果が見込めないからしないと受け取ることの方が多いように思う。弁論の全趣旨で認定しても良いのだなと考える場合もある。
   したがって,争うのであれば,反対尋問はした方が良いと思う。
○反対尋問で聞かなければいけないと思っている事実については,主尋問で出てこなくても,反対尋問すべきだと思う。
○陳述書だけで事実を認定しない一番大きな理由は,反対尋問の機会が与えられておらず,弾劾を経ていないからであるが,陳述書が出され,重要な事実についての記載があり,反対尋問の機会が与えられているときに,反対尋問がされていないということになると,やはりそこは真剣に争っていないのかなという心証を抱く場合もあり得る。
   もっとも,主尋問でも触れられていないということで,その分,証明力としては弱いということは否定できないところではある。
○主尋問で触れられなかった重要な事実について,何でもかんでも反対尋問しておいた方がいいことになるのかといえば,逆効果な場合もあり得る。
    主尋問で触れられないことで,立証できていないとなりそうであったにもかかわらず,反対尋問で聞いて固めてしまうこともあり得ないわけではない。
   
4 介入尋問
○介入尋問は,身振りや手振り,「あれ,それ,そこ」といった表現,その他調書に残らない場合の確認のために行う。
○介入尋問は,証言の趣旨が不明確,質問を理解できていない,質問と答えがかみ合っていない,議論になった場合にも行う。


5 人証の特徴
(1) 書証と人証の違い
・ 「ステップアップ民事事実認定 第2版」79頁には以下の記載があります。
    実務上,証人と当事者本人を合わせて「人証」と呼び,証人尋問と当事者尋問を合わせて「人証調べ」と呼びます。
    事実関係に争いのある事件では,書証は,ほぼすべての事件で提出されますし,人証調べも,大多数の事件で実施されており,鑑定や検証が行われる事件がそれほど多くないこととは対照的です。
    このように,書証と人証は,非常にポピュラーな証拠調べの方法ですが,その特徴は対照的です。書証の最大の特徴は,その内容が固定していることです。これに対し,人証の特徴は,内容が固定しておらず,尋問の仕方や,人証の性格,能力等によって相当変化する可能性があり,いわば流動的,不安定なものであることです。
    このようにいうと,まるで書証の方が質の高い証拠であって,人証は信頼に値しないかのように思う人がいるかもしれませんが,決してそうではありません。書証は,(争いのない事実等とともに)しばしば重要な「動かし難い事実」となりますが,「動かし難い事実」は,全体の構図の中では「点」です。「点」だけでは,全体の構造を把握することはできません。「点」をつなぐ「線」が必要です。そして,その「線」の役割を果たすのが人証です。人証の供述は,事件の全体像(ストーリー)を語ります。
(2) 利害関係の存在は大きな問題とはならないこと
・ 「ステップアップ民事事実認定 第2版」93頁には以下の記載があります。
    「利害関係のある人証の供述は信用できない」と考える人は,多いと思います。たしかに,利害関係のある人証は,虚偽の供述をする動機があるとは言えます。しかし,利害関係のある人証だからこそ,しっかり観察し,記憶するということもできるわけです。いずれにせよ,現実には,人証の大半は事件に利害関係を有しているのですから(現実の民事訴訟においては,利害関係のない証人が証言をすることは,極めて珍しいことです。人証が双方の本人だけという事件も,少なくありません。),そのことを理由として信用性を否定することにしたのでは,ほとんどの人証は信用できないことになってしまうでしょう。基本的には,利害関係の有無はあまり意識しないで判断するのが適切であると思われます。

6 関連記事その他
(1) 請求原因事実又は抗弁事実の存否に争いがある場合に,裁判所が右主張事実を証拠上肯認することができない事情として,右事実と両立せず,かつ,相手方に主張責任のない事実を認定し,もって右請求原因事実又は抗弁事実の立証なしとして排斥することは,認定された事実が当事者によって主張されていない場合でも,弁論主義に違反しません(最高裁昭和46年6月29日判決)。
(2) 企業法務リーガルメディアHP「職場内の無断録音・秘密録音は違法?」が載っています。
(3) 以下の記事も参照して下さい。
・ 証人尋問及び当事者尋問
・ 処分証書及び報告文書
・ 二段の推定
・ 文書鑑定
・ 陳述書の機能及び裁判官の心証形成
・ 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
・ 通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い

尋問を受ける際の留意点

目次
1 総論
2 尋問における留意事項
3 反対尋問をする側の一般的注意点
4 関連記事その他
   
1 総論
   証人尋問又は当事者尋問の際,陳述書の言葉を暗記してそのとおりに話さなければならないといったことは全くないのであって,自分の言葉で記憶のとおりに供述すればいいです。
   ただし,陳述書と異なる事実関係を供述した場合,反対尋問での攻撃材料となりますから,尋問の直前に陳述書を読み直すことで記憶喚起しておいた方がいいです。
    
2 尋問における留意事項
   以下の事項に留意して供述した方がいいです。
(1) 主尋問と反対尋問とで共通の留意事項
① 質問事項に対してはっきり答えること
→ 証人尋問では,一問一答式の質疑によって回答する必要があります(民事訴訟規則115条1項参照)から,質問事項に対してはっきりと答えて下さい。
    ただし,記憶が曖昧であるときは,そのとおり曖昧であることを率直に述べて下さい。
② 質問事項以外に回答する必要はないこと。
→ 不用意に長い回答をすると,予期しない反対尋問を誘発する危険があります。
   特に,理由や根拠に関する証言は,質問されない限り答える必要はないのであって,必要があれば,重ねて質問します。
③ 趣旨が不明の質問や聞き逃した質問には,改めて質問をしてもらうようにすること。
→ 尋問者の質問の趣旨がよく理解できなかった場合,理解が不十分なままに回答するのではなく,尋問者に対して質問の趣旨を尋ねたり,もう一度質問をしてもらったりするよう要求して下さい。
④ 裁判長の求めがある場合,図面を書かせられたり,図面に記入したりする場合があること(民事訴訟規則119条)。
→ 不動産事件では不動産の占有状況や現況を説明させたりする場合に図を用いたり,交通事故の事件で車両の動きを矢印で図示したりする場合があります。
(2) 反対尋問での留意事項
① 相手の弁護士の質問には全部について答える必要はないこと。
→ 尋ねられたことでも,覚えていないこと,知らないことはその旨を率直に回答すればよいのであって,質問された以上,必ず何かを回答しなければならないという気持ちは持たないで下さい。
    また,日時など細かいことを思い出せない場合,「細かいことは思い出せませんが,大体,〇〇だったと思います。」という風に答えればいいですし,資料を見なければ分からない場合,「資料を見なければ,分かりません。」という風に答えればいいです。
② 想像で答えないこと。
→ 何か答えなければ格好が付かないとか,依頼者に対して少しでも多くを語って協力したいとの心境で,想像を交えて答える人もいますが,止めて下さい。
③ 相手の弁護士の挑発に乗らないこと。
→ あえて証人を怒らせるのも法廷における反対尋問の作戦の一つですものの,相手の弁護士の挑発に乗ると,冷静を失い,事実が述べ足らなかったり,余計な発言をしたり,事実に相違することを述べたりする危険が高まります。
   また,同じ事柄を聞き方を変えて何回も質問された場合,何回でも同じ答えを繰り返せばいいです。
④ 文書を示して質問された場合,すぐに回答する必要はないこと。
→ 文書をじっくり読んで理解したうえで,質問に対する回答をしてください。
⑤ 証人と当事者との利害関係を尋ねられる場合があること。
→ 訴訟代理人と事前に打ち合わせたとか,本人とどんな経済的関係にあるかといった点が,相手の弁護士や裁判官から尋ねられることがありますものの,率直に答えてもらえれば結構です。
   このことは,民事訴訟規則85条が「当事者は,主張及び立証を尽くすため,あらかじめ,証人その他の証拠について事実関係を詳細に調査しなければならない。」と規定していることからも確認できます。
⑥ 主尋問と反対尋問とで態度に区別を設けないこと。
→ 真摯かつ誠実に対応できた方が裁判所の印象はよいものです。


3 反対尋問をする側の一般的注意点
   やっぱり世界は**しい!ブログ「反対尋問のテクニック」によれば,反対尋問をする側の一般的注意点として以下のことが記載されていますから,これらの点にも留意して反対尋問に対応してもらう方がいいです。
① テンポは速くする。
・ 証人を動揺させ、考える時間もなくすことで、矛盾する証言を引き出しやすくなる。
② 質問のスタイルは証人によって変える
・ 例えば、証人に対し友好的な態度を示し油断させるスタイルと、威圧的に質問するスタイルは、相手によって使い分けるべきである。
③ 答えが「イエス・ノー」でできる質問にする
④ 証言の根拠・理由は原則として聞かない
⑤ 出たとこ勝負にしない
⑥ 予定時間通り行う
⑦ 総花的に行わない
・ 証言すべてが虚偽ということは無いので、そもそも総花的反対尋問の意味はない。おかしいと思うところを集中的に攻撃することで、証言全体を弾劾できるので、反対尋問は一点豪華主義が効果的である。
⑧ 異議を出されないようにする。
・ 証人に休憩する暇を与えないため。
⑨ 深入りしない
⑩ 失敗した場合は早めに切り上げ、次の質問に移る
・ 証言の信用性を強めたり、不利な証言が出そうな場合には、方向転換をしなければならない。その場合、失敗を悟られないため、「今の質問は質問の趣旨がわかりにくかったと思うので、次の質問に移ります」とか、「表現が適切でなかったので撤回します」といった決まり文句をストックしておくとよい。


4 関係記事その他
(1) 訴訟の心得94頁には以下の記載があります。
    証人の態度が,おろおろしているとか,冷や汗をかいているとか,目を逸らしてばかりいるとか,慌てて言葉をかんでしまっているとか,そういうことは,殆ど関係ない。推理小説や法廷小説ではないのだ。証人というのは,一生に一度裁判所に行くことがあるかどうかという人ばかりであり,荘厳そうな法廷で,偉そうな裁判官がニコリともせずにひな壇から睨みつけていれば,緊張するに決まっている。態度が堂々としていたかどうかで証人の信用性など測れない。そんなことなら,ヤクザや詐欺師のほうが実に堂々としている。そもそもそのような事情で証人の信用性を判断しても,控訴審の裁判官には理解されない。
(2) 以下の記事も参照して下さい。
・ 証人尋問及び当事者尋問
・ 陳述書作成の注意点
・ 陳述書の機能及び裁判官の心証形成
・ 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
 陳述書の作成が違法となる場合に関する裁判例

宣誓書及び宣誓拒絶

目次
1 宣誓書
2 宣誓拒絶
3 証言拒絶及び宣誓拒絶に関する民事訴訟法の条文
4 関連記事

1 宣誓書
(1) 証人尋問又は当事者尋問の前に,宣誓書(「良心に従って本当のことを申し上げます。知っていることを隠したり,ないことを申し上げたりなど,決していたしません。以上のとおり誓います。」という文言が記載されています。)に署名押印し,法廷で起立して読み上げてもらうことで,宣誓を行います(証人尋問につき民事訴訟法207条1項後段及び民事訴訟規則112条,当事者尋問につき民事訴訟法201条,民事訴訟規則127条・112条)。
    その後,依頼した弁護士,相手方の代理人弁護士及び裁判所からの尋問に答えてもらうことになります(民事訴訟規則113条・127条)。
(2) 宣誓書には通常,はんこを付いてもらいます(認め印で結構です。)。
はんこを忘れた場合,指印(親指又は人差し指の先に朱肉を付けて押す印のこと。)を押してもらうことになります。

 
2 宣誓拒絶
 (1) ①証言拒絶権(民事訴訟法196条)を行使できる証人が尋問を受ける場合,裁判所から宣誓を求められないことがあります(民事訴訟法201条3項)し,②自己又は自己の配偶者等に著しい利害関係のある事項について尋問を受ける場合,宣誓を拒むことができる(民事訴訟法201条4項)のであって,宣誓をしないで証言をした場合,「法律により宣誓した証人」(刑法169条)に当たりませんから,偽証罪に問われることはありません。
    ただし,この場合,宣誓を拒む理由を疎明する必要があり(民事訴訟法201条5項前段・199条1項),宣誓拒絶を理由がないとする裁判(即時抗告権があることにつき民事訴訟法201条5項前段・199条2項)が確定した場合,宣誓をしなければなりません。
(2) 私自身の職務経験として,宣誓拒絶をした証人を見たことはないです。

3 証言拒絶及び宣誓拒絶に関する民事訴訟法の条文
196条(証言拒絶権)
・ 証言が証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は、証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも、同様とする。
一 配偶者、四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり、又はあったこと。
二 後見人と被後見人の関係にあること。
197条
① 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
一 第百九十一条第一項の場合
二 医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷とう若しくは祭祀しの職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
三 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
② 前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。
198条(証言拒絶の理由の疎明)
・ 証言拒絶の理由は、疎明しなければならない。
199条(証言拒絶についての裁判)
① 第百九十七条第一項第一号の場合を除き、証言拒絶の当否については、受訴裁判所が、当事者を審尋して、決定で、裁判をする。
② 前項の裁判に対しては、当事者及び証人は、即時抗告をすることができる。
200条(証言拒絶に対する制裁)
・ 第百九十二条及び第百九十三条の規定は、証言拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく証言を拒む場合について準用する。
201条(宣誓)
① 証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない。
② 十六歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。
③ 第百九十六条の規定に該当する証人で証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合には、宣誓をさせないことができる。
④ 証人は、自己又は自己と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができる。
⑤ 第百九十八条及び第百九十九条の規定は証人が宣誓を拒む場合について、第百九十二条及び第百九十三条の規定は宣誓拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく宣誓を拒む場合について準用する。

4 関連記事
・ 証人尋問及び当事者尋問
・ 尋問を受ける際の留意点
・ 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成
・ 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
 訴訟費用
 陳述書作成の注意点
 陳述書の作成が違法となる場合に関する裁判例

証人尋問及び当事者尋問

目次
1 尋問前の準備等
2 尋問当日の流れ
3 尋問の雰囲気
4 文書等を利用した尋問
4の2 誘導質問
5 付き添い及び遮へい
6 書類に基づく陳述はできないこと
7 公開の法廷で行われること
7の2 証人尋問の際のマスク着用
8 裁判所HPでの説明
9 岡口基一裁判官の説明
10 反対尋問の「べからず」集
11 関連記事その他


1 尋問前の準備等
(1) 訴訟手続を進めていく中で証人尋問又は依頼者本人の当事者尋問が必要になった場合,証人の方又は依頼者本人に必ず裁判所の法廷に来てもらう必要があります。
(2) 「当事者は,主張及び立証を尽くすため,あらかじめ,証人その他の証拠について事実関係を詳細に調査しなければならない。」(民事訴訟規則85条)とされています。
   そのため,依頼した弁護士が証人及び依頼者本人との間で尋問に関する打ち合わせをすることは,民事訴訟規則が当然に予定していることです。
(3) 尋問のための事情聴取の際は,有利不利を問わず,関係する事情を一通り話して下さい。
    依頼した弁護士が十分に当事者又は証人の言い分を把握していない場合,当事者又は証人の法廷での証言において,言い間違い,記憶違い等があった場合,依頼者に不利な事実が法廷で初めて明らかになる危険を排除できないことから,言い間違い等を訂正するための質問ができなくなることがあります。
(4) 証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の口頭による意見の陳述において使用する予定の文書は,証人等の陳述の信用性を争うための証拠(=弾劾証拠)として使用するものを除き,当該尋問又は意見の陳述を開始する時の相当期間前までに提出する必要があります(民事訴訟規則102条)。
(5)ア 証人尋問又は当事者尋問を申請する場合,尋問に要する見込みの時間等を記載した証拠申出書(民事訴訟規則106条・127条)と一緒に,できる限り個別的かつ具体的に記載した尋問事項書を裁判所に提出します(民事訴訟規則107条・127条)。
    相手方に自宅を知られたくない場合,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階 林弘法律事務所内」といった感じで,勤務先を住所として記載すればいいです。
イ 証人及び当事者本人の尋問の申し出は,できる限り一括してしなければなりません(民事訴訟規則100条)。
ウ 証拠申出書,証拠説明書等の書式が日弁連HPの「裁判文
書」に載っています。
(6)ア 証人尋問又は当事者尋問における主尋問及び反対尋問の時間(「尋問予定時間」といいます。)は,裁判所が,陳述書,尋問事項書等を踏まえた上で,当事者と協議しながら決定します。
イ 証人又は当事者を尋問する旨の決定があったときは,尋問の申出をした当事者は,証人又は当事者本人を期日に出頭させるように努める必要があります(民事訴訟規則109条・127条)。

    また,証人又は当事者本人は,期日に出頭することができない事由が生じたときは,直ちに,その事由を明らかにして裁判所に届け出る必要があります(民事訴訟規則110条・127条)。
(7) 尋問当日の服装に特に決まりはありませんが,裁判所という公の場で供述する以上,カジュアルな服装は避けて,その場にふさわしい清潔感のある服装が無難です。
    例えば,会社員の場合はスーツ姿,学生の場合は制服が無難ですが,ネクタイまではしなくてもいい気がします。
(8) 最低限,尋問当日に持参すべきものとしては,①印鑑(認め印でいいですが,シャチハタは避けた方が無難です。),②依頼した弁護士からもらった尋問に関するメモ書き等(尋問直前,依頼した弁護士の事務所で最後の確認をするのが通常と思います。)となります。

2 尋問当日の流れ
(1)ア 尋問当日は,トイレをすませた上で,期日が開始する10分前ぐらいまでに法廷に入った方がいいです。
   そうすれば,期日開始前に,宣誓書に当事者又は証人として署名押印をしたり,証人等出頭カードに住所,氏名,職業及び年齢を記入したりすることができ,時間に余裕を持てます。
イ 印鑑を忘れた場合,押印の代わりに指印(指に朱肉を付けて指形(ゆびがた)を押すこと。)を押すことになります。

(2) 尋問を開始する際,裁判長が当事者又は証人に対し,人定質問として,証人等出頭カードを見ながら,「住所,氏名,職業及び年齢は証人等出頭カードに記載したとおりですね。」と確認しますから,「はい。間違いありません。」と答えます。
   個人情報保護のため,証人等出頭カードに記載した住所,氏名,職業及び年齢が朗読されることはまずありません。
(3) 人定質問の直後に,起立して宣誓書を朗読します。
   詳細については,後述しています。
(4) 宣誓書朗読が終わると,裁判官から虚偽の陳述をした場合の制裁について告知されます。
   証人尋問の場合は偽証罪を,当事者尋問の場合は過料の制裁を告知されます。
(5)ア 偽証罪等の告知が終わると,事前に決められている尋問予定時間を目安に,当事者又は証人が着席したまま証言します。
   通常は,依頼した弁護士(主尋問),相手の弁護士(反対尋問),裁判官(補充尋問)という順番で尋問が行われます(民事訴訟規則113条1項)。
イ 当事者又は証人の陳述書を書証として提出している場合,主尋問の冒頭において,弁護士が陳述書の署名押印部分を示した上で,「これはあなたが署名押印したものということで間違いありませんか?」などと確認することで,陳述書の成立の真正を立証することが多いです。
(6) 尋問が終わると,当事者であれば当事者席に座ることができますし,証人であればそのまま帰るか,傍聴席で裁判の続きを傍聴することができます。
     
3 尋問の雰囲気
   証人尋問及び当事者尋問の大体の雰囲気としては,テレビドラマのとおりです。
   ただし,尋問者の核心を突いた質問に対し,証人又は当事者本人が一方的に自白を始めるようなことは絶対にあり得ません。
   
4 文書等を利用した尋問
(1) 当事者は,裁判長の許可を得て,文書,図面,写真,模型,装置その他の適当な物件を利用して証人又は当事者に質問することができます(民事訴訟規則116条1項・127条)。
    この場合,依頼を受けた弁護士又は相手方の弁護士が,「甲第1号証の3頁目を示します。」とか,「原告準備書面(1)の上から3行目以下を示します。」などと述べることで,弁護士が証人又は当事者に対してどの書面を示しているかを明確にしつつ質問します。
(2) 刑事裁判の場合,書面等を示すことができるのは以下の三つの場合に限定されていますものの,民事裁判の場合,特に限定されていません。
① 書面又は物に関し,その成立,同一性その他これに準ずる事項について尋問する場合(刑事訴訟規則199条の10)
② 証人の記憶を喚起するために示す場合(刑事訴訟規則199条の11)
③ 供述を明確にするために図面,写真,模型,装置等を示す場合(刑事訴訟規則199条の12)


4の2 誘導質問
(1)  誘導質問(尋問者が期待する答えを示唆・暗示するような質問)は禁止されています(民事訴訟規則115条2項2号・127条本文)。
   そのため,例えば,依頼した弁護士に対し,主尋問において,「はい」とだけ答えれば済むような質問(「クローズドクエスチョン」といいます。)だけをしてもらうことはできません。
(2) 以下の事項については,例外的に主尋問でも誘導質問できます(刑事訴訟規則199条の3第3項1号ないし3号参照)。
① 証人又は当事者の身分,経歴,交友関係等で,実質的な尋問に入るに先だって明らかにする必要のある準備的な事項に関するとき。
② 訴訟関係人に争いのないことが明らかな事項に関するとき。
③ 証人又は当事者の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるとき。
(3) 訴訟の心得98頁には以下の記載があります。
    主たる争点となっているような事項や,目的・意図などの主観的な事項,客観的に1つに定まらない事項(◯◯会社の社員かどうかは客観的に1つに定める),感情などデジタル的ではなくアナログ的な事項(これは元々イエス・ノーで回答できるような代物ではない)などについては,イエス・ノーで回答を求めるのは適切でなく,誘導になりうるのである。


5 付き添い及び遮へい
(1) 証人又は当事者の年齢又は心身の状態その他の事情を考慮し,証人又は当事者が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがある場合,証人尋問又は当事者尋問の際,裁判長の許可があれば,適当な人を付き添わせることができます(民事訴訟法203条の2・210条,民事訴訟規則122条の2・127条)。
(2) 事案の性質,証人の年齢又は心身の状態,証人と当事者本人等との関係その他の事情により,証人又は当事者が当事者本人等の面前で陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある場合,証人尋問又は当事者尋問の際,裁判長の許可があれば,遮蔽の措置をとってもらえます(民事訴訟法203条の3・210条,民事訴訟規則122条の3・127条)。

6 書類に基づく陳述はできないこと
(1) 裁判所で尋問を受ける場合,裁判長の許可がない限り,書類に基づいて陳述することはできません(民事訴訟法203条・210条)。
(2) 書類に基づく陳述が原則として禁止されているのは,証人があらかじめ尋問事項に基づいて用意をし,メモを作成してくると,メモの作成状況が明らかでなく,他人の影響を受けやすく,自由な記憶に基づく真相を吐露しにくくなるし,一定の目的に沿う証言のみをして偽証がしやすくなるためとされています。
   また,書類に基づく陳述が例外的に許容されているのは,証人が,計算事項について証言する場合,又は相当長期間にわたる事件の経過を陳述する場合等,単に記憶に基づいて証言することが困難であり,しかも偽証するおそれもないと認められるときは,書類に基づく陳述を許容する方が真実発見に資すると考えられているからです。

7 公開の法廷で行われること
(1) 証人尋問及び当事者尋問は,公開の法廷における口頭弁論期日に行われます(憲法82条1項)。
   憲法82条1項は,裁判の対審及び判決が公開の法廷で行われるべきことを定めていますところ,その趣旨は,裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し,ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにあります(最高裁大法廷平成元年3月8日判決)。
(2) 口頭弁論期日を公開しなかった場合,最高裁判所に対する絶対的上告理由となります(民事訴訟法312条2項5号)。
   ただし,口頭弁論の公開の有無は口頭弁論調書の形式的記載事項であり(民事訴訟規則66条1項6号),口頭弁論調書によってのみ証明できる事柄です(民事訴訟法160条3項)。


7の2 証人尋問の際のマスク着用
・ 大阪弁護士会が作成した,「令和2年度司法事務協議会 協議結果要旨」30頁には,「証人尋問,被告人質問の際のマスク着用について」として以下の記載があります。
(大阪弁護士会の質問)
    証人尋問,被告人質問の際の飛沫感染防止対策として,マスク着用ではなく,フェイスシールドの着用や,証言台をアクリルパーテーションで囲うなどの措置をされたい。
    また,訴訟活動において弁護人からマスクを外すこととその代替措置の提案がなされた場合,その内容を十分検討した上適切に判断されたい。
(大阪弁護士会の質問の提出理由)
    新型コロナウイルスの飛沫感染防止のために,証人尋問や被告人質問の際,供述者にマスクを着用させたままこれを実施する事例が報告されている。しかしながら,マスクを着用した状態では,目から下がすべて覆われてしまい,供述者が供述する際の表情や感情が読み取れず,供述の信用性の判断に障害をきたす。これでは証拠の取調べにおいて極めて重要な直接主義の趣旨が没却されるものであり,相当でない。
    マスクでなくても,フェイスシールドやアクリルパーテーションなど,顔を覆い隠すことなく,飛沫感染を防止する方法があるため,これらの措置を積極的に取り入れられたい。
    また,弁護人の冒頭陳述や弁論,反対尋問の際など,表情も含めて裁判所に訴えかけることが必要な場合がある。この場合に,十分な距離をとったり,フェイスシールド等を着用するなどすれば,飛沫感染を予防することは可能である。そこで,裁判所におかれては,弁護人からマスクを外すこととその代替措置の提案がなされた場合は,その内容を十分検討した上で適切に判断されたい。
(大阪地裁の回答)
    証人尋問や被告人質問,あるいは弁護人の訴訟活動の際にいかなる感染防止措置を求めるかについては,ここの裁判体の訴訟運営上の問題であって,各裁判体においては,当事者と協議の上で適切に判断しているものと承知している。その際には,あくまでマスク着用による感染予防を基本としつつ,弁護人等の当事者から代替措置の御提案がある場合には,その理由なども踏まえて,代替措置の実効性や準備の用意さ,使用方法のほか,施設上の制約,あるいは法廷警察権ないし戒護権との関係,更には予定されている証言内容なども含めた審理内容などを考慮して,適切な判断に努めているものと承知している。

8 裁判所HPでの説明
    裁判所HPの「口頭弁論等」には以下の記載があります。
    証人は,原則として尋問を申し出た当事者が最初に尋問し,その後に相手方が尋問することになっています。裁判所は,通常は当事者が尋問を終えた後に尋問を行います。もっとも,裁判長は,必要があると考えたときは,いつでも質問することができます。証人等の尋問の順序,誘導尋問に対する制限その他の尋問のルールは民事訴訟法及び民事訴訟規則に定められていますが,一般的に言って,英米法に見られるような広範で厳格な証拠法則は,日本の制度には存在しません。


9 岡口基一裁判官の説明
   46期の岡口基一裁判官が著者となっている「裁判官!当職そこが知りたかったのです。-民事訴訟がはかどる本-」55頁及び56頁には以下の記載があります。
岡口   尋問で印象が変わることは少なくないですね。何で変わるかというと,じかに会って,お話を聞くから,人となりが見えてくるんですよね。
   それで,陳述書で抱いていたイメージと大分変わるんですよ。尋問でバレバレの嘘を言ったりすると,途端に今まで積み重ねてきたのも全部ダメになっちゃう。
   その人の人間性とか全部出ちゃうので,尋問って怖いですよ。むしろ裁判官は,そういうところを見ているんですね。なので,練習させておいたほうがいいかもしれません。
中村 そうですね。練習は絶対必要ですよね。私は修習中に裁判官から言われた「スーツをふだん着ていないような人がきっちり着てきたら,ちょっとうさんくさいと思いますね」というのが,すごく印象に残っているんですけど,そういうところはありますか?
岡口   自然体がいいですね,無理していない感じが。そこは信用性にかかわります。
中村 やっぱり尋問の時にも,つくり過ぎているなという印象はあまりよくないのかなと。
岡口 よくないですね。だから,練習し過ぎもよくないんですよ。
中村 すらすら出てき過ぎというのも。
岡口 そうなんですね。これは言わされているなと思っちゃうので。


10 反対尋問の「べからず」集
(1) 「民事反対尋問のスキル いつ,何を,どう聞くか?」37頁ないし87頁によれば,以下のとおりです。
① オープンな質問をしない。
② 「なぜ質問」をしない。
③ 「聞く順序を間違えるな」
④ ストレートに聞かない
⑤ 同意を求める質問をしない:「~ではないですか」質問
⑥ 同意を求める形の典型例:「普通ではないですか」
⑦ 深追いしない~引き際が肝心
⑧ 意見を聞かない,議論しない
⑨ 「仮定の質問」をしない
⑩ 不適当な言葉による質問
(2) 場合によっては,「べからず」集に載っている質問でも聞くべき場合があると思います。


11 関連記事その他
(1) 個人的には,陳述書と同趣旨のことを主尋問で話してもらうことを前提として,陳述書の文字数÷250字を1分に換算して,主尋問の予定時間を申請しています。
(2) 訴訟の心得100頁には以下の記載があります。
    「それからどうした」質問は,回答の選択肢の幅が広すぎるのである。
    しかし時系列順に聞いていくと,ついつい「それでどうなりました?」と聞くほかなくなるのである。その後に起きたイベント(上記では資金決済)を質問者から切り出さないからである。
    ここは逆に肝心な点を最初に聞いてしまい,そこから遡って聞いていくのがよい。
(3) 株式会社の代表取締役が尋問を受ける場合,当事者尋問に関する規定が準用されます(民事訴訟法211条本文,民事訴訟規則128条)。
(4) 刑事裁判の場合,証人又は被告人に示す書面等に証拠能力は必要でないという前提に立つと解されています(最高裁平成23年9月14日決定)し,被告人質問にも刑訴規則199条の10ないし199条の12が適用されると解されています(最高裁平成25年2月26日決定,及び当該決定に関する最高裁判所判例解説 刑事篇(平成25年度版)46頁参照)。
(5)  商取引に関する契約上の金員の支払を求める訴訟において,偽証等の不法行為があったため敗訴したとしても,それによって被る損害は,一般には財産上の損害だけであり,そのほかになお慰謝を要する精神上の損害もあわせて生じたといい得るためには,侵害された利益に対し,財産価値以外に考慮に値する主観的精神的価値をも認めていたような特別の事情が存在しなければなりません(最高裁昭和42年4月27日判決)。
(6)ア 判例タイムズ1340号(2011年4月1日号)に「効果的で無駄のない尋問とは何か」(東京地裁プラクティス委員会第二小委員会が寄稿したもの)が載っています。
イ 民事訴訟規則116条は「文書等の質問への利用」について定めていますところ,noteに「#コラム 民事訴訟における尋問時の文書等(書面)の提示・弾劾証拠・異議」が載っています。
(7) 以下の記事も参照して下さい。
・ 宣誓書及び宣誓拒絶
・ 尋問を受ける際の留意点
・ 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成
・ 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
・ 地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合
・ 簡易裁判所においては尋問調書の作成が原則として省略されること
・ 民事事件記録一般の閲覧・謄写手続
・ 録音反訳方式による逐語調書
・ 訴訟費用
・ 陳述書作成の注意点
・ 陳述書の機能及び裁判官の心証形成
・ 陳述書の作成が違法となる場合に関する裁判例