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証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い(AIリライト)

第1 証人が正当な理由なく出頭しない場合の取扱い

 証人には出頭義務があり,証人が正当な理由なく出頭しない場合,つまり出頭を拒否した場合には,民事訴訟法上,過料,刑罰及び勾引という性質を異にする三種類の制裁又は措置が用意されている。以下では区別して整理する。

1 訴訟費用の負担及び過料(民事訴訟法192条)

(1) 制裁の内容

 証人が正当な理由なく出頭しないときは,裁判所は,決定で,不出頭によって生じた訴訟費用の負担を命じ,かつ,10万円以下の過料に処する(民事訴訟法192条1項)。この決定に対しては,即時抗告をすることができる(同条2項)。過料に処する決定が確定したときは,検察官の執行命令に基づいて取り立てる(同法189条)。

(2) 過料の性質

 ここでの過料は,証人の出頭を確保するために裁判所が決定手続で科す秩序罰(民事罰)であって,後記2の罰金・拘留のような刑罰ではない。

2 罰金又は拘留(民事訴訟法193条)

(1) 制裁の内容

 証人が正当な理由なく出頭しないときは,10万円以下の罰金又は拘留に処せられる(民事訴訟法193条1項)。情状により,罰金及び拘留が併科されることもある(同条2項)。

(2) 刑罰であることの帰結

 この罰金・拘留は刑罰であるから,前記1の過料と異なり,受訴裁判所が決定で科すものではない。実務上は,捜査機関への告発(刑事訴訟法239条)を経て,通常の刑事訴訟手続によって科されることになる。193条は,192条の過料だけでは出頭義務の履行を確保するのに不十分と考えられる,より悪質な場合に用いられる制裁である。

 なお,同一の不出頭について192条の過料と193条の罰金を重ねて科し得るかについては,憲法39条の二重処罰の禁止の精神から消極に解する見解と,両者の性質が異なることから積極に解する見解が対立しているが,運用上は併科が相当といえない場合が多いとされている。

3 勾引(民事訴訟法194条)

(1) 措置の内容

 裁判所は,正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命ずることができる(民事訴訟法194条1項)。勾引とは,証人を受訴裁判所その他の証人尋問を行う場所へ実力で引致する措置である。

(2) 要件及び手続

 勾引を命ずるには,少なくとも1回は事前に正式な呼出手続を経ていることが必要である。どのような場合に勾引を命ずるかは,立証事項の必要性,証人との関連性,呼出しの回数,当事者の要望など諸般の事情を考慮した裁判所の裁量に委ねられる。勾引の裁判に対しては,証人はもとより当事者も不服の申立てをすることができない。勾引の執行には,刑事訴訟法中の勾引に関する規定が準用され(同条2項),受訴裁判所が勾引状を発し,検察事務官又は司法警察職員がこれを執行する。

4 鑑定人及び当事者本人尋問との関係

 以上の192条及び193条は,鑑定人(民事訴訟法216条)にも準用される。また,193条は人事訴訟における当事者尋問(人事訴訟法21条2項)にも準用される。さらに,証人が正当な理由なく証言を拒む場合にも,192条及び193条が準用される(民事訴訟法200条)。

 これに対し,通常の民事訴訟における当事者本人の尋問では,当事者本人が正当な理由なく出頭せず,又は宣誓若しくは陳述を拒んだときであっても,裁判所が尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる(民事訴訟法208条)にとどまり,証人の場合のような過料,罰金又は勾引の制裁は科されない。

第2 関連記事その他

(1) 平成29年6月14日付の開示文書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法193条に基づき10万円以下の罰金又は拘留に処した件数は0件である。

(2) 平成29年6月14日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法192条に基づき訴訟費用の負担を命じた件数が分かる文書,及び民事訴訟法194条に基づき証人の勾引を命じた件数が分かる文書は存在しない。

(3) 以下の記事も参照されたい。