裁判官の転勤の内示時期


目次
第1 裁判官の人事異動に関する最高裁判所の説明
第2 転勤を伴う人事の実情

1 裁判官の場合
2 検事の場合
第3 関連記事その他

第1 裁判官の人事異動に関する最高裁判所の説明
・ 平成14年7月16日付の裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書における「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には,以下の記載があります。
    異動の大部分は,所長等の人事を除き,毎年4月期に定期異動として実施される。異動計画の原案は,高等裁判所管内の異動については主として各高等裁判所が,全国単位の異動については最高裁判所事務総局人事局が立案し,いずれについても最高裁判所と各高等裁判所との協議を経て異動計画案が作成される。異動の内示は,事件処理と住居移転の関係を考慮して,原則として異動の2か月以上前に,離島などについては3か月以上前に行われ,承諾があれば,最高裁判所裁判官会議の決定を経て発令され,承諾がない場合には,異動先の変更が行われたり,留任の取扱いがなされる。
    異動案は,各裁判所でどのような経験等を持つ裁判官が何人必要かという補充の必要性,任地・担当事務についての各裁判官 の希望,本人・家族の健康状態,家庭事情等を考慮し,適材適所・公平を旨として立案される。適材適所・公平といった面で,人事評価が影響することになる が,少なくとも所長等への任命以外の一般の異動に関する限り,実際には,上記の人事評価以外の事情が影響する度合いが高い。特に近年は,配偶者が東京等で 職業を持つ割合が格段に高くなったこと,子弟の教育を子供の幼いうちから東京等で受けさせるために比較的若いうちから地方へ単身赴任する者が増えたこと, 親等の介護の必要から任地に制限を受ける者が増えたことなどから,家庭事情に基づく任地希望が強まっている。現に,首都圏や京阪神地域の裁判所において, こうした事情を抱える裁判官は相当数に上る。また,判事補や若手の判事については,幅広い経験ができるように,評価とかかわりなしに大規模庁に異動するこ ともある。したがって,若手のうちは,異動において人事評価が影響する程度は,限定されたものである。

第2 転勤を伴う人事の実情
1 裁判官の場合

(1)ア 平成27年度(最情)答申第5号(平成28年2月22日答申)には以下の記載があります。
    裁判官は,憲法上その職務の独立性が保障されるとともに,身分が保障されており(憲法76条3項,78条),また,身分保障の現れとして,その意思に反して,転官や転所をされることはないとされている(裁判所法48条)。したがって,裁判官の異動時期の目安を含めた人事管理に係る情報については,裁判官の独立を確保するため,非常に高い機密性が求められる機微な情報であるということができ,本件対象文書に記録されている上記のような情報を公にすると,それを知った裁判官の異動を望み,あるいは望まない関係者などから不当な働き掛け等がされるなどして,今後の裁判官の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められることから,本件対象文書に記録された情報は,その文書の標題部分や発出者名等も含め,全体として法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する情報に当たると認められる。
イ 本件対象文書は,「転勤を伴う人事について,裁判官本人に対する内示時期の目安が分かる文書」に該当する文書のことです。
(2) 平成28年2月24日付の「裁判官異動と最高裁による同意(書)取付け方法」と題するブログ記事によれば,毎年1月中旬ぐらいに,人事異動対象者に対する新規異動先の案内がなされているようです。
(3) 「司法官僚 裁判所の権力者たち」157頁には以下の記載があります。
     異動の内示は一般に定期異動時(四月)の二カ月以上前に、最高裁人事局からの伝達をうけた所長・長官によってなされる。多くの裁判官がほぼ共通して語るのは、三年ないし五年の転所「ルール」をうけいれるにしても、内示された転所先がなぜそこであるのか、あるいは転所先でどのような役割を期待されているのかが説明されないことである。なかには、内示された転所先があまりに家族のかかえている状況を無視しているとして、留任や転所先の変更を、高裁をつうじて事務総局に働きかけてくれた所長もいたと語る裁判官もいる。だが、このばあいにも、所長自身が転所先の決定理由を知りえていないのか、明確な説明をうけなかったという。
2 検事の場合
   検事の人事異動については,平成28年1月16日配信の「検事の転勤って,どんなもの?」と題するヤフーニュースの記事に詳しく書いてあります。

第3 関連記事その他

1 平成24年度初任行政研修「事務次官講話」「明日の行政を担う皆さんへ」と題する講演(平成24年5月15日実施)において,西川克行法務事務次官は以下の発言をしています(リンク先のPDF13頁)。
    三惚れと書きました。これは、余り耳なれない言葉かもしれませんが、転勤の多い職場での結婚式でよく耳にする言葉です。その意味は、仕事に惚れろ、任地に惚れろ、奥さんに惚れろということで、結婚式ですから三番目に奥さんが出てくる、こういうことです。
(中略)
    次に、任地に惚れろということですが、これは、特に多くの土地での勤務が控えている方については覚えておかれたらいいと思います。任地が決まってここに行けと言われたときに、あるいは不満かもしれません。それは、自分の中で不満なのはいいのですけれども、任地に行った後にはそんなことはきれいさっぱり忘れて、その土地に惚れ込むようにしないと、うまくいかない場合があると思います。その土地で働ける幸せを感じること、それから、その土地の人たちとの話しの中で、自分はこんないいところで働けて本当に幸せに思っていると口に出して言うこと、そう言わなければならないと思っています。
2(1) 従前の口頭弁論の結果を陳述した旨の記載が,調書の完成後,立会書記官以外の者によってなされた場合,適法に弁論の更新が行われたとはいえません(最高裁昭和33年11月4日判決)。
(2) 第一審における口頭弁論の結果の陳述がないままされた第二審判決には民事訴訟法312条2項1号の絶対的上告理由があることとなります(最高裁昭和42年3月3日判決)。
3(1) 厚労省HPの「「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を公表します~事業主が従業員の転勤の在り方を見直す際に役立ててほしい資料を作成~」「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」が載っています。
(2) アセスメントラボHP「なぜ人事異動情報(内示)は秘密にしなければならないのか?運用ルールのポイントは?」が載っています。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判所職員の赴任期間について(平成4年4月28日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 移転料ハンドブック(Ver.1.2)(令和4年3月の最高裁判所人事局総務課及び経理局監査課の文書)
・ 移転料の支給に関するQA(Ver3.2)(令和4年3月の最高裁判所人事局総務課及び経理局監査課の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 毎年4月1日付の人事異動等に関する最高裁判所裁判官会議
・ 高等裁判所支部
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部
・ 転勤した際,裁判所共済組合に提出する書類等
・ 裁判官人事の辞令書


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