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裁判員等の日当はいくらか-旅費・宿泊料,税金と勤務先の取扱い(AIリライト)

第1 裁判員等に支払われる日当

1 対象者と1日当たりの上限

裁判員や補充裁判員として職務を行う場合だけでなく,呼出しに応じて選任手続の期日に出頭した裁判員候補者や選任予定裁判員にも,日当・旅費・宿泊料が支給される。
候補者名簿に名前が載っただけで日当が発生する制度ではない(裁判員法11条,29条2項及び97条5項)。

令和8年10月18日を基準とする日当の上限は,次のとおりである。
これは受け取れる額の上限であり,出頭すれば常に満額が支払われるという意味ではない。

対象者1日当たりの日当の上限
裁判員・補充裁判員1万900円
裁判員候補者・選任予定裁判員8750円

根拠は,裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条2項である。
この上限は令和8年7月1日施行の改正によるもので,施行前に支給原因となる事実が生じた日当には従前の扱いが適用されるため,振込日だけで新旧を判断しない。

2 出席時間と支払時期

(1) 出席時間に応じた額

日当の具体的な額は,選任手続,審理及び評議等にかかった時間に応じて決められる。
裁判所の裁判員制度Q&A「日当・交通費等」(https://www.courts.go.jp/saibanin/introduction/qa/index.html#3531)は,候補者の選任手続が午前中だけで終わり,裁判員に選任されなかった場合には,一般的に最高額の半額程度が支払われると説明している。

日当は,出頭や職務に伴う諸雑費,収入の減少等の損失の一部を補うものである。
勤務先で失った給与や自営業の売上が,そのまま全額補償される制度ではない。

(2) 振込先と入金の目安

旅費・日当等は,原則として本人名義の預貯金口座へ振り込まれる。
本人名義の振込可能な口座がない場合には同居家族名義の口座を指定できるが,一部の金融機関には振り込めないため,呼出状に同封された届出書で確認する。

裁判所のQ&Aが示す入金の目安は,選任手続の日から約1週間~10日である。
裁判員に選任された場合は裁判の最終日からの目安であり,各回の出頭日に現金で支払われるわけではない。

第2 日当とは別に支給される旅費・宿泊料

1 交通費の計算

旅費は日当とは別に計算され,鉄道賃,船賃,路程賃及び航空賃に分かれる。
鉄道・船・飛行機以外の区間について,裁判所のQ&Aは,バス,自家用車及び徒歩等を例に,1キロメートル当たり37円の路程賃で計算すると説明している。

原則として最も経済的な通常の経路・方法を基準とするため,実際に支払った運賃等と支給額が一致しないことがある。
遠方からの移動や航空機の利用等を予定する場合は,予約前に,出発地・交通手段・日程を担当裁判所へ伝え,支給の扱いを確認するとよい。

2 宿泊が必要な場合

宿泊料は,裁判所が自宅から遠く,前泊しなければ集合時刻に間に合わない場合や,終了後に当日中の帰宅が困難な場合等に支払われる。
裁判所のQ&Aによれば,裁判所の地域に応じて1泊9000円~2万1000円の定額であり,ホテル代の実費精算ではない。

支給予定の有無は呼出状で示されるが,宿泊が必要な日程でも,自宅に泊まる等,宿泊料がかからないことが明らかな場合は支払われない。
宿泊料の支給に当たり,領収書や宿泊証明書の提出は不要とされている一方,税務上の必要経費を確認する資料とは目的が異なるため,実際の支出の記録は分けて残すとよい。

第3 税金と確定申告

1 受領額と必要経費の分け方

(1) 日当・旅費・宿泊料の合計から計算する

国税庁の平成20年11月6日付け文書回答は,照会された事実関係を前提に,日当・旅費・宿泊料の合計額を雑所得の総収入金額に入れる取扱いを認めている。
その計算では,実際に負担した旅費・宿泊料や,出頭に直接要した費用を必要経費に入れる。

したがって,旅費という名称だけで受領額全体を非課税とするのでも,振込額全体をそのまま所得金額とするのでもない。
所得税法35条2項2号に従い,総収入金額から必要経費を差し引いた金額と,申告が必要かどうかを分けて確認する。

(2) 給与との併給と源泉徴収

裁判所のQ&Aは,日当は裁判員の職務に対する報酬ではなく,有給休暇中の給与と一緒に受け取っても問題はないと説明している。
また,裁判所は日当に係る所得について源泉徴収を行わないとしている。

源泉徴収がないことは,所得税の課税対象にならないことや,すべての人が申告不要となることを意味しない。
国税庁の文書回答も,一般的な回答であり,個別の事実関係によって異なる課税関係が生じ得ることを明示している。

2 申告不要制度の条件

(1) 給与を1か所から受ける人

国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」によれば,居住者について,給与収入が2000万円以下で,給与を1か所から受け,その全部が源泉徴収の対象となる場合,給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下であれば,原則として所得税の確定申告を要しない。
裁判員の日当等に係る雑所得だけでなく,他の副収入による所得も合計するものであり,20万円は日当の受領額そのものの非課税枠ではない。

給与を複数の支払者から受ける場合や給与収入が2000万円を超える場合等は,同じ条件では判断できない。
給与の受け方と他の所得の状況を,所得税法121条及び国税庁の説明に照らして確認する。

(2) 公的年金等を受ける人

居住者について,公的年金等の収入金額が400万円以下で,その全部が源泉徴収の対象となり,公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合にも,所得税の確定申告不要制度がある。
源泉徴収の対象とならない外国の公的年金等を受ける場合などには制度を利用できないため,国税庁の公的年金等の課税関係で適用条件を確認する。

(3) 還付申告と住民税

医療費控除等のために所得税の還付申告をする場合は,20万円以下で申告不要となる所得も含めて申告する必要がある。
また,所得税の確定申告を要しない場合でも住民税の申告が必要になることがあるため,所得税と住民税を同じ基準で扱わない。

第4 勤務先の休暇・給与との関係

1 必要な休みと不利益取扱いの禁止

(1) 職務のために必要な時間

労働基準法7条は,労働者が労働時間中に公の職務を行うため必要な時間を請求した場合,使用者がこれを拒むことを禁止している。
同条は,その職務を妨げない限り時刻を変更できるとするが,裁判所が指定した期日への参加を妨げる扱いはできない。

裁判所のQ&Aによれば,裁判員候補者として出頭したことや,裁判員等の職務に従事したことの証明書を裁判所で発行してもらえる。
勤務先への休暇の届出に必要な資料を事前に確認しておくとよい。

(2) 解雇等の不利益取扱い

裁判員法100条は,裁判員の職務のため休暇を取得したことや,裁判員・補充裁判員・選任予定裁判員又は裁判員候補者であること等を理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止している。
休暇を取れること,休暇中の賃金が支払われること,不利益な取扱いが禁止されることは,それぞれ分けて確認する必要がある。

2 特別有給休暇と日当の調整

(1) 有給にするかどうか

裁判員の職務等に必要な休みを,有給休暇とするか無給休暇とするかは,各企業の制度による。
労働基準法7条自体が特別有給休暇の新設や賃金支払を一律に義務付けているわけではない。

日当は本人に対する給付であり,裁判所から勤務先の会社へ直接支払うことはできない。
本人が給与と日当を受け取れることと,会社が日当を取り上げたり給与を調整したりできることは別の問題である。

(2) 既存の有給制度からの控除と差額支給制度

佐賀労働局のQ&A問2は,日当を会社へ納付させ,労働者に実質的な不利益を生じさせる場合には,裁判員法100条の不利益取扱いに該当する可能性があると説明している。
また,特別有給休暇としているのに給与から日当を差し引く取扱いは,一般的に認められないとしている。

一方,同問は,当初から1日分の給与額と日当相当額との差額を支給する特別休暇制度とすることは,問題がないと考えられると説明している。
これは既存の制度で保障した給与を当然に減額してよいという説明ではなく,就業規則上の制度設計と実際に生じる不利益を区別したものである。

第5 過去の支給基準表を読む際の注意

1 令和元年改正後の時間別基準

以下は,当ブログに掲載している日当の支給基準の通達PDFにある過去の金額であり,現在の金額ではない。
通達の制定日は平成21年3月30日であるが,掲載された版は令和元年7月9日改正・同年8月1日実施のものである。

(1) 裁判員・補充裁判員

執務時間等当時の1日当たりの基準
2時間以内4400円以上4740円以内
2時間超~4時間以内4740円超~5780円以内
4時間超~7時間以内5780円超~8700円以内
7時間超8700円超~1万50円以内
専ら旅行に要した日その他の日3950円

この通達は,午前から午後にわたって執務等が行われた場合の昼休みを執務時間等に含めるとしている。
選任された日の日当には,同日の選任前の候補者等としての日当も含まれる扱いであり,別々に加算する表ではない。

(2) 裁判員候補者・選任予定裁判員

手続時間等当時の1日当たりの基準
2時間以内4400円以上4740円以内
2時間超~4時間以内4740円超~5780円以内
4時間超5780円超~8050円以内
専ら旅行に要した日3950円

PDF実頁2が通達本文,実頁3・4が上記の別表である。
元資料の本文と表は,次の画像でも確認できる。

日当支給基準資料の掲載画像1
日当支給基準資料の掲載画像2
日当支給基準資料の掲載画像3

2 その後の通達・制度資料

(1) 令和7年改正の公表通達

裁判所が公表する「裁判員等の日当の支給基準について」には,令和7年6月11日改正・同年7月1日実施の版がある。
同版の上限は裁判員・補充裁判員が1万500円,候補者等が8450円であり,令和8年7月改正後の規則上限とは異なるため,この時間別表をそのまま現在の額として用いることはできない。

現行規則による上限と,適用する時間区分・個別の決定額は分けて確認する必要がある。
実際の出頭予定についての支給額は,呼出しをした裁判所へ確認する。

(2) 制度の趣旨に関する過去資料

警察庁のサイトに掲載された「証人、裁判員に対する旅費等の支給について」は,資料冒頭に最高裁判所と表示された会議資料である。
過去の制度説明として参照できるが,掲載されている日当や宿泊料は現在の金額ではない。

最高裁大法廷平成23年11月16日判決は,辞退制度や旅費・日当等による補償なども踏まえ,裁判員の職務等が憲法18条後段の禁止する苦役に当たらないと判断した。
この判決を,現在の日当の額の十分性や,個々の裁判員に生じた損害についての賠償責任まで判断したものとして読むことはできない。

第6 関連する手続・資料

裁判員の日当と民事裁判の証人の日当は,根拠となる法令と支給手続が異なる。
証人として出廷する場合は,民事裁判の証人の旅費・日当(https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/12/shounin-ryohi-nittou/)を,民事訴訟の費用全体は訴訟費用の費目と負担(https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/05/01/soshou-hiyou/)を参照されたい。

尋問を受ける場合の準備は証人尋問及び当事者尋問(https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/05/01/jinmon/)に,刑事事件の記録の入手方法は刑事記録の入手方法(https://yamanaka-bengoshi.jp/2020/03/24/keijikiroku-kiji/)にまとめている。
日当の請求と,証言・記録の閲覧等の手続を区別して参照されたい。

選任手続の過去の執務資料として,裁判員等選任手続に関する執務資料(https://yamanaka-bengoshi.jp/%e8%a3%81%e5%88%a4%e5%93%a1%e7%ad%89%e9%81%b8%e4%bb%bb%e6%89%8b%e7%b6%9a%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e5%9f%b7%e5%8b%99%e8%b3%87%e6%96%99/)と横浜版の抄本(平成31年3月)(https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2024/04/裁判員等選任手続に関する執務資料(横浜版の抄本)(平成31年3月の横浜地方裁判所刑事部の文書).pdf)がある。
手続の解説には,鵜飼裕未「裁判員等選任手続きのいろは」(LIBRA2021年4月号,32頁~33頁)もあるが,当時の実務解説であり,現在の支給額を示す資料ではない。

第7 出典・参考資料

1 法令・最高裁判所規則

① 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000063)11条,29条2項,97条5項及び100条。
② 裁判員の参加する刑事裁判に関する規則(https://www.courts.go.jp/assets/saibaninkisoku20260701.pdf)6条~9条(PDF実頁3・4)及び令和8年最高裁判所規則第10号附則(実頁28)。
③ 所得税法(https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033)35条及び121条,労働基準法(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)7条。

2 裁判例

最高裁大法廷平成23年11月16日判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/81769/detail2/index.html)(平成22年(あ)第1196号,刑集65巻8号1285頁)。
判決本文PDF(https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-81769.pdf)の実頁9・10を,職務の負担と憲法18条の関係について参照した。

3 所管機関の文書回答・Q&A

① 国税庁課税部審理室長「裁判員等に支給される旅費、日当及び宿泊料に対する所得税法上の取扱いについて(https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/shotoku/081101/index.htm)」(平成20年11月6日回答)及び最高裁判所事務総局刑事局長の照会(https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/shotoku/081101/another.htm)(同月4日,記1・2,理由(3)・(4))。
② 裁判所「裁判員制度Q&A(https://www.courts.go.jp/saibanin/introduction/qa/index.html)」3-5「日当・交通費等」及び4-2「参加しやすい環境整備」(令和8年10月18日確認)。
③ 佐賀労働局「従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のご質問について取りまとめました(https://jsite.mhlw.go.jp/saga-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/kijun_keiyaku/_103742.html)」問2。
④ 国税庁タックスアンサーNo.1900(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm),同質疑応答(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm)及びNo.1600(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm)(令和8年4月1日現在法令等)。

4 通達・過去の公文書

① 最高裁判所刑事局長・経理局長「裁判員等の日当の支給基準について」(平成21年3月30日付け通達)。令和元年改正後の掲載版(https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2020/02/裁判員等の日当の支給基準について(平成21年3月30日付の最高裁判所刑事局長及び経理局長の通達).pdf)実頁2~4及び令和7年改正の公表版(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/tsuutatsu/05keijijiken/7-7saibanintounonittounosikyuukijyun.pdf)実頁1~4。
② 最高裁判所「証人、裁判員に対する旅費等の支給について(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/sakutei-suisin/kaigi2/pdf/s10.pdf)」(警察庁サイト掲載の会議資料10,PDF実頁1・7)。

5 会員による解説

鵜飼裕未「裁判員等選任手続きのいろは(https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2021_04/p32-33.pdf)」(LIBRA21巻4号,令和3年4月,32頁~33頁)。
当該PDFの実頁1・2に対応する個別執筆者の解説であり,東京弁護士会の正式な規程又は決議として参照するものではない。