裁判員等の日当


目次
1 裁判員等の日当
2 裁判員等の日当の税務上の取扱い
3 裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合の取扱い
4 関連記事その他

1 裁判員等の日当
・ 日当の具体的な額は,選任手続や審理・評議などの時間に応じて,裁判員候補者・選任予定裁判員については1日当たり8050円以内,裁判員・補充裁判員については1日当たり1万50円以内で,決められます(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条)ところ,裁判員等の日当の支給基準について(平成21年3月30日付の最高裁判所刑事局長及び経理局長の通達)によれば,具体的な支給基準は以下のとおりです。
(1) 裁判員及び補充裁判員の日当
ア 執務時間等があった場合
・ 2時間以内の場合,4400円以上4740円以内
・ 2時間を超え4時間以内の場合,4740円を超え5780円以内
・ 4時間を超え7時間以内の場合,5780円を超え8700円以内
・ 7時間を超える場合,8700円を超え1万50円以内
イ 専ら旅行に要した日及びそのほかの日
・ 3950円
ウ 執務時間等には,執務等が午前から午後までにわたって行われた場合におけるいわゆる昼休み時間が含まれます。
   また,基準額には,裁判員又は補充裁判員に選任された日における選任予定裁判員又は裁判員候補者としての日当の額が含まれます。
(2) 選任予定裁判員及び裁判員候補者の日当
ア 手続時間があった場合
・ 2時間以内の場合,4400円以上4740円以内
・ 2時間を超え4時間以内の場合,4740円を超え5780円以内
・ 4時間を超えの場合,5780円を超え8050円以内
イ 専ら旅行に要した日
・ 3950円


2 裁判員等の日当の税務上の取扱い
・ 裁判員等に支給される旅費、日当及び宿泊料に対する所得税法上の取扱いについて(平成20年11月6日付の国税庁課税部審理室長の回答)によれば,税務上の取扱いは以下のとおりです。
① 裁判員等に対して支給される旅費等については、その合計額を雑所得に係る総収入金額に算入する。
② 実際に負担した旅費及び宿泊料、その他裁判員等が出頭するのに直接要した費用の額の合計額については、旅費等に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入する。

3 裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合の取扱い
・ 佐賀労働局HPの「従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のご質問について取りまとめました」に以下の問答が載っています。

問2 就業規則において、裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合に
   (1) 裁判員として受領した日当は使用者に納付する
   (2) 日当を受領した時はその金額について給与から減額する
  などと定めることは問題ないでしょうか。  

答 例えば、(1)のように、裁判員として受領した日当は使用者に納付するという規定を置いた場合、その規定により実質的に労働者が不利益を被るような場合は、裁判員法第100条が禁止している不利益取扱いに該当する可能性があります(例えば、受領した日当が1万円であり、特別の有給休暇に支払われる給与額が6000円である場合には、日当を納付することで4000円の不利益を被ることになります。)。
 また、(2)のように、特別の有給休暇としているにもかかわらず、給与額から裁判員の日当を差し引くことは一般的に認められません。
 なお、例えば、「裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合には、1日分に相当する給与額(例えば1万5000円)と日当相当額(例えば1万円)との差額(例えば5000円)を支給する。」というように、給与額と日当相当額との差額を支給するような特別の有給休暇制度にすることは問題がないと考えられます。


4 関連記事その他
(1) 平成28年12月発生の対馬放火殺人事件に関する長崎地裁平成30年3月27日判決(無期懲役判決)の裁判員をした人が開設している悩める裁判員経験者・似蛭田妖のブログ「広島地検・高検のホームページを通して検察にお願いをしました。」には以下の記載があります。
    裁判員の任務終了後、僕は苦しくなり、心を病んで、裁判所指定のメンタルヘルス業者のケアを受けたり、専門の精神科医に受診して、今日に至っています。
    評議の内容を誰にも話せないということが、苦悩をより大きくしているのです。
(2)ア オギ法律事務所HPに「裁判員を辞退したい方へ」が載っています。
イ 東弁リブラ2021年4月号に「裁判員等選任手続きのいろは」が載っています。
ウ 国税庁HPに「証人、裁判員に対する旅費等の支給について」が載っています。
(3) 裁判員制度は憲法31条,32条,37条1項,76条1項,2項及び3項並びに80条1項に違反しませんし,裁判員の職務等は憲法18条後段が禁止する「苦役」に当たりません(最高裁大法廷平成23年11月16日判決)。
(4)ア 令和4年4月1日,満18歳以上の人が成年とされるようになりました(民法4条のほか,法務省HPの「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」参照)。
イ 裁判員制度HPの「裁判員に選ばれる年齢が,20歳以上から18歳以上になると聞きましたが,本当ですか。」には「※法改正により,令和4年4月1日から,裁判員になることができる年齢が18歳以上となりましたが,令和4年に使用される裁判員候補者名簿は令和4年より前(具体的には令和3年秋頃)に作成されるため,18歳以上の方が実際に名簿に記載されるのは,その翌年である令和5年分からとなります。」と書いてあります。
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判員等選任手続に関する執務資料
・ 裁判員等選任手続に関する執務資料(横浜版の抄本)(平成31年3月の横浜地方裁判所刑事部の文書)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 裁判員選任等関係文書の取扱いについて(平成20年7月15日付の最高裁判所刑事局長通達)
・ 刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧
・ 証人尋問及び当事者尋問
・ 訴訟費用



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