メインコンテンツへスキップ
       

処分証書及び報告文書とは-意義・具体例・証拠力と最高裁判例(AIリライト)

民事訴訟で提出される文書(書証)は,その記載内容の性質から,処分証書と報告文書に分けられます。両者は証拠としての働きが異なり,とりわけ処分証書は,真正に成立したと認められると,特段の事情がない限り記載どおりの事実が認定されやすいという特徴があります。この記事では,処分証書と報告文書の意義,具体例,証拠力の違いを,最高裁判例と民事事実認定の実務文献に基づいて整理します。現行法令は2026年7月時点のe-Gov法令検索により確認しています。

第1 処分証書と報告文書の区別

書証は,記載内容の性質によって処分証書と報告文書に分けられます。処分証書は意思表示その他の法律行為そのものを記載した文書であり,報告文書は作成者が認識した事実等を記載した文書です。両者は,真正な成立が認められた場合に記載内容がどこまで信用されるかという点で扱いが異なります。

1 処分証書の意義

(1) 「よってした」説と「記載した」説

処分証書の意義については,大きく2つの捉え方があります。

1つは,意思表示その他の法律行為が文書によってされた場合の,その文書をいうとする立場です(「よってした」説)。契約書を作成すること自体が意思表示であるといった理解に立ち,処分証書の範囲を比較的狭く捉えます。

もう1つは,立証命題である意思表示その他の法律行為が記載されている文書をいうとする立場です(「記載した」説)。この立場は処分証書の範囲を広く捉え,例えば契約成立後に作成された確認書も処分証書に含まれ得ます。これに対し「よってした」説では,契約成立後に作成された確認書は処分証書には含まれないことになります。

(2) 処分証書の具体例

処分証書の例としては,判決書のような公文書のほか,契約書,約束手形,解除(解約)通知書,遺言書などがあります。

民事訴訟法の教科書では,処分証書について,文書を作成する意思と,記載された行為(意思表示)の意思とが直接に結び付いているため,文書の真正な成立(作成者の真意に基づくこと)が証明されれば,記載された行為そのものの存在が認定される,と説明されます。文書の真正な成立は,私文書については本人又は代理人の署名又は押印があれば真正に成立したものと推定されること(民事訴訟法228条4項)などを通じて判断されます。

2 報告文書の意義と具体例

報告文書とは,処分証書以外の文書で,事実に関する作成者の認識,判断,感想等が記載されたものをいいます。

例としては,領収証,商業帳簿,議事録,日記,手紙,陳述書などがあります。処分証書と異なり,記載されているのは作成者が認識した事実であるため,その事実が真実であるかどうかは,文書の性質や作成の状況を踏まえて別途評価されます。

第2 処分証書の証拠力

1 真正に成立すれば原則として記載どおり認定される

処分証書が真正に成立している場合,特段の事情がない限り,原則としてその記載どおりの事実が認定されます。

最高裁昭和32年10月31日判決(民集11巻10号1779頁)は,書証の記載及び体裁から,特段の事情のない限り記載どおりの事実を認めるべき場合に,首肯するに足りる理由を示さずにその書証を排斥することは,理由不備の違法を免れない,としました。

最高裁昭和45年11月26日判決(集民101号565頁)は,売買予約の成立を否定した原審の判断に経験則違反の違法があるとした事例で,契約書等の書証を排斥するには経験則上首肯できる理由が必要であることを示しています。

2 本人尋問の結果との関係

処分証書が真正に成立している場合,これと矛盾する本人尋問の結果よりも,処分証書の記載が尊重されるのが原則です。

最高裁平成14年6月13日判決(判例時報1816号25頁。裁判所ウェブサイト未掲載)は,連帯保証の範囲が争われた事案です。保証書及び保証委託契約書には一定の元金を前提とする連帯保証が記載されていましたが,主債務者が本人尋問でこれより少額であると供述しました。最高裁は,書証が真正に成立している以上,その記載を超えて本人尋問の結果を信頼すべき特段の事情がない限り,書証の記載を尊重すべきであるとし(前掲最高裁昭和32年10月31日判決を参照),特段の事情を示さずに記載を排斥した原審の判断には経験則ないし採証法則違反があるとして,原判決を破棄し差し戻しました。

この判決の解説として,『判例から学ぶ民事事実認定』222頁〜226頁に,林道晴・司法研修所事務局長(当時)による解説が収められています。

3 記載どおりに認定されない契約書の類型

もっとも,契約書が存在しても,常に記載どおりに契約が認定されるわけではありません。滝沢昌彦「処分証書による法律行為の証明」(一橋法学13巻3号107頁)は,契約書が必ずしも処分証書として記載どおりに扱われない例として,次のような場合を挙げています。

  • 代金総額の記載がないなど,記載に不備がある契約書
  • 税金対策のため,本当の契約書とは別に,金額等を偽って作成した契約書
  • 登記手続のための登記原因証明情報として,細かい条項を省略して作成した契約書

これらは,記載内容と実体との食い違いや作成の目的から,どこまで処分証書としての証明力を認めるべきかが問題となります。契約書の実質的証拠力については,榎本光宏「契約書の実質的証拠力について―処分証書とは―」(判例タイムズ1410号26頁〜34頁)も参考になります。

第3 報告文書の証拠力

1 領収書等による金員授受の推定

報告文書の証拠力は,文書の種類や作成の状況によって異なります。

金銭の授受に関する領収書等について,最高裁平成7年5月30日判決(判例体系収録。裁判所ウェブサイト未掲載)は,一般に,金員の授受に関する領収書等が存在する場合には,実際にその授受があったものと事実上推定することができるが,その逆に,領収書等が存在しないからといって,直ちに金員の授受がなかったものということはできない,という趣旨を判示しています。

領収書は,金銭の授受がないのに作成されることは通常ないという経験則から高い証拠価値を持ちますが,領収書がないことが直ちに授受の不存在を意味するわけではない点に注意が必要です。

2 弁済を裏付ける複数の書証の評価

最高裁平成11年4月13日判決(判例体系収録。裁判所ウェブサイト未掲載)は,和解契約に基づく金員の支払を裏付ける文書として,和解契約書,合意書,信用状開設通知,小切手,領収書が提出された事案です。原審は,これらの書証の内容などが不自然・不合理であるなどとして弁済の事実を認めませんでしたが,最高裁は,弁済の事実を認めなかった原審の判断に経験則違反ないし採証法則違反があるとして,原判決を破棄し差し戻しました。複数の客観的な書証が整合的に存在する場合には,これらを軽々に排斥できないことを示す事例です。

3 信用性の高い報告文書と陳述書の違い

報告文書が真正に成立していても,その文書が示す事実の基礎となる法律行為の存在や内容が,文書から直接に認められるわけではありません。どの程度信用できるかは,文書の性質等によって左右されます。

一般に,紛争が表面化する前に,利害関係のない者によって,事実があった時期に近い時点で,業務として習慣的に作成された文書ほど,信用性が高いとされます。これに対し,紛争が生じた後に利害関係人が作成した陳述書などは,真正に成立していても,記載内容をそのまま信用できるとは限りません。どのような報告文書が信用されるかについては,通常は信用性を有する私文書と陳述書との違いで扱っています。

第4 契約書の記載をめぐる裁判例

1 契約書に記載されない特約の存否

契約書に記載されていない特約が主張される場合,その特約が本当に存在したのかが問題となります。

最高裁昭和47年3月2日判決(集民105号225頁)は,国と私人との間で私人を売主として成立した土地売買契約について,目的土地の利用方法に関する特約は当事者にとって極めて重要な事項であるから,予算決算及び会計令に基づいて契約書が作成された以上,その特約の趣旨は契約書に記載されるのが通常であり,記載がないときは,特段の事情がない限り,そのような特約は存在しなかったものと認めるのが経験則である,としました。契約書の記載が詳細で,相手方が官庁や大企業である場合には,記載外の特約は原則として認められにくいという考え方につながります。

なお,同判決が引用した「予算決算及び会計令68条」は当時の条番号です。現在,国の契約における契約書の作成義務は会計法29条の8に,契約書の記載事項は予算決算及び会計令100条に定められています。

2 合意解約の存在と書面の法的拘束力

書面の記載や法的拘束力の評価が,経験法則に照らして問題とされた最高裁判例もあります。

最高裁昭和38年7月30日判決(集民67号141頁)は,賃貸借契約の合意解約の存在を否定した原審の判断が経験法則に反するとされた事例です。

最高裁昭和42年12月21日判決(集民89号457頁)は,「契約書」等と題する書面に法的拘束力を認めないことが違法とされた事例です。

3 通常作成されるはずの書証が存在しない場合

ある行動をとる際に通常は作成されるはずの書証が存在しない場合の評価も,事実認定では重要です。

『ステップアップ民事事実認定〔第2版〕』109頁は,ある行動をする際に通常は作成されるはずの書証が存在しないとき,作成されなかった(又は作成された後に消滅した)理由についての合理的な説明がされない限り,その行動がされたと認めることはできない,としています。処分証書や領収書等が存在しないこと自体が,一定の事実認定の手がかりとなり得ることを示しています。

第5 関連記事

出典

法令

裁判例

文献

  • 司法研修所編『事例で考える民事事実認定』(法曹会,2014年)21頁
  • 『民事弁護の起案技術―7の鉄則と77のオキテによる紛争類型別主張書面―』(創耕舎)39頁
  • 土屋文昭=林道晴編『ステップアップ民事事実認定〔第2版〕』(有斐閣,2019年)109頁
  • 伊藤眞=加藤新太郎編『〈判例から学ぶ〉民事事実認定』(有斐閣,2018年)222頁〜226頁
  • 榎本光宏「契約書の実質的証拠力について―処分証書とは―」判例タイムズ1410号26頁(2015年)
  • 滝沢昌彦「処分証書による法律行為の証明」一橋法学13巻3号107頁(2014年)

ウェブ資料