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略式手続における過失運転致死罪の量刑分布(AIリライト)

第1 略式手続における過失運転致死罪の量刑分布

1 平成23年から令和4年までの終局区分

簡易裁判所の略式手続において過失運転致死罪で終局した人員を,言い渡された罰金の金額区分別に示すと次のとおりである。

年次終局人員罰金総数100万円50万円以上30万円以上20万円以上10万円以上5万円以上3万円以上略式不能又は不相当その他
平成23年1,3611,35797738326167294
平成24年1,1951,19276632302151313
平成25年1,2051,20492668255154351
平成26年1,0801,07874599232135382
平成27年1,0551,050525962291442815
平成28年92392071511183120353
平成29年93493258550185109302
平成30年84784459476171110283
令和元年709709454191498016
令和2年6756734237913690262
令和3年56956749320114661712
令和4年488488302741045723

2 表の見方

各欄は金額の下限を示しており,「50万円以上」は50万円以上100万円未満を意味する。「100万円」の欄が上限として独立しているのは,過失運転致死罪の罰金刑の上限が100万円であり(自動車運転死傷処罰法5条),略式命令で科することができる罰金も100万円以下とされているためである(刑事訴訟法461条)。

「略式不能又は不相当その他」は,略式命令をすることができない場合又は相当でない場合として通常の手続に移行したものなどである。終局人員と罰金総数との差はこれによる。

第2 出典及び集計方法

1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である

本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。

注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。

法曹時報の号(対象年)図表番号
平成27年分(69巻2号)図表145550頁
平成28年分(70巻2号)図表145568頁
平成30年分(72巻2号)図表140406頁
令和4年分(76巻2号)図表138690頁

概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。

なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。略式手続における過失運転致死罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。

2 表中の記号と人員の数え方

略式手続の表には執行猶予率の欄がない。略式命令によっても刑の執行猶予をすることはできるが(刑事訴訟法461条後段),概況の略式手続の表は罰金の金額区分と略式不能等の別だけを掲げている。表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。

また,略式手続の表の人員は延べ人員であり,通常第一審の表が実人員であるのと数え方が異なる。同一人が複数の事件で略式命令を受けた場合,略式手続の表では複数回計上される。通常第一審の人員と合算して割合を求めるときは,概算にとどまる。

3 統計上の「過失運転致死」の範囲

概況の注記によれば,「過失運転致死」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項の罪(自動車運転過失致死)が含まれる。自動車運転死傷処罰法は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行されたから,平成25年以前の数値は改正前の刑法上の罪に係るものである。

第3 分布から読み取れること

第一に,金額の中心は50万円以上100万円未満である。この区分の占める割合は,平成23年が54.4%,平成30年が56.4%,令和4年が56.1%であり,12年間ほぼ一定である。上限である100万円の言渡しも毎年30人から97人あり,令和4年でも罰金総数488人のうち30人(6.1%)を占める。

第二に,人員が3分の1近くまで減少している。終局人員は平成23年の1,361人から令和4年の488人となった。同じ期間の通常第一審の終局人員が1,752人から1,020人へと4割強の減少にとどまっているのと比べると,略式手続の減少幅の方がはるかに大きい。その結果,過失運転致死罪のうち略式手続で処理される割合は,平成30年の約38%から令和4年の約32%へ下がっている。

第三に,公判請求と略式命令請求とを分けるものは,示談の成否である。川上拓一編著『裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断』(学陽書房,2022年)49頁及び50頁は,「致死事件においては、示談成立・遺族の宥恕が公判請求・略式処理の分水嶺となる、かなり重要な考慮事情となっていると思われ、その意味で積極的に宥恕等を得るとの起訴前弁護活動が重要であることが指摘できよう。」と指摘している。略式手続で終局するか公判に付されるかは,量刑そのものと同じかそれ以上に,被疑者側にとって重い分岐である。

第4 量刑分布を読む前提となる法改正

1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された

刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号。公布は令和4年6月17日)は,令和7年6月1日から施行され,懲役及び禁錮を拘禁刑に一本化した。自動車運転死傷処罰法の各条も,現行法では法定刑がすべて拘禁刑で規定されている。

本記事の表が「懲役」「禁錮」の区分で数値を掲げているのは,いずれも施行日より前の年次の統計だからである。施行日以後に犯した罪については拘禁刑が言い渡されるため,将来の概況では刑種の区分自体が変わることになる。

2 略式手続には罰金又は科料しか乗らない

略式命令で科することができるのは100万円以下の罰金又は科料に限られる(刑事訴訟法461条)。したがって,本記事の分布は,検察官が起訴の段階で罰金相当と判断し,被疑者がこれに異議のない旨を書面で明らかにした事案だけを集めたものである。拘禁刑(改正前の懲役又は禁錮)を科すべきと判断された事案は,はじめから略式手続に乗らない。

拘禁刑への一本化は罰金刑に影響しないため,略式手続の統計は,刑種の面では令和7年6月1日の前後で連続している。略式手続の量刑分布を通常第一審の分布と並べて読むときは,両者が同じ母集団から切り出された二つの断面ではなく,起訴の段階で罰金相当か否かの振分けを経た後の別々の集団であることに留意する必要がある。

第5 関連記事

本記事と対になる量刑分布の記事は次のとおりである。罪名と手続の組合せごとに分布の形が大きく異なるので,比較して読むと,同じ交通事故でも処理のされ方が全く違うことが分かる。

実際の量刑がどのような事実関係の下で言い渡されたのかを確かめるには,判決書その他の刑事記録を入手する必要がある。手続別の入手方法は,刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧にまとめている。

出典

1 法令

2 統計

  • 最高裁判所事務総局刑事局「平成27年における刑事事件の概況(上)」法曹時報69巻2号 図表145(550頁)
  • 最高裁判所事務総局刑事局「平成28年における刑事事件の概況(上)」法曹時報70巻2号 図表145(568頁)
  • 最高裁判所事務総局刑事局「平成30年における刑事事件の概況(上)」法曹時報72巻2号 図表140(406頁)
  • 最高裁判所事務総局刑事局「令和4年における刑事事件の概況(上)」法曹時報76巻2号 図表137(688頁~689頁)・図表138(690頁)

3 文献

  • 川上拓一編著『裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断』(学陽書房,2022年)49頁~50頁