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通常第一審における過失運転致死罪の量刑分布(地裁及び簡裁)(AIリライト)

第1 通常第一審における過失運転致死罪の量刑分布

1 懲役・禁錮の刑期区分別内訳

地方裁判所及び簡易裁判所の通常第一審において過失運転致死罪で有罪となり,懲役又は禁錮を言い渡された人員を,刑期区分別に示すと次のとおりである。

年次懲役・禁錮総数7年超7年以下5年以下3年2年以上1年以上6月以上6月未満
平成23年1,7153131524161,08843
平成24年1,6583331254011,06036
平成25年1,6111241434161,001242
平成26年1,496121114037594522
平成27年1,4397117362937151
平成28年1,46811012336994520
平成29年1,3391111934285215
平成30年1,352213125356840133
令和元年1,25224131344759111
令和2年1,07211210630563216
令和3年1,009181152616195
令和4年1,00212952716267

過失運転致死罪の法定刑は7年以下の拘禁刑(改正前は7年以下の懲役又は禁錮)又は100万円以下の罰金である(自動車運転死傷処罰法5条)。「7年超」の欄に平成25年及び平成26年の各1人が計上されているのは,併合罪加重により上限が引き上げられた場合である。

2 終局区分と全部執行猶予率

同じ人員を,終局区分別に整理すると次のとおりである。有罪総数は懲役・禁錮,罰金及び刑の免除の合計であり,終局人員は有罪総数に無罪及びその他を加えたものである。

年次終局人員有罪総数懲役・禁錮うち全部執行猶予全部執行猶予率(%)罰金無罪その他
平成23年1,7521,7261,7151,56892.311719
平成24年1,6881,6721,6581,49692.214313
平成25年1,6381,6221,6111,44791.211313
平成26年1,5341,5161,4961,39594.120513
平成27年1,4811,4651,4391,35194.326313
平成28年1,4941,4821,4681,39095.41457
平成29年1,3591,3501,3391,26195.01145
平成30年1,3711,3601,3521,27795.5847
令和元年1,2701,2611,2521,19495.8927
令和2年1,1031,0821,0721,00294.610417
令和3年1,0281,0231,00995095.01423
令和4年1,0201,0101,00296396.4837

「その他」は,公訴棄却,正式裁判請求の取下げ,移送等である。有罪総数と懲役・禁錮及び罰金の合計とが一致するのは,本記事の12年間では刑の免除がなかったためである。

3 表の見方

各欄は刑期の上限を示しており,「1年以上」は1年以上2年未満,「2年以上」は2年以上3年未満,「3年」はちょうど3年を意味する。実刑人員は表に直接掲げられていないが,本記事で懲役・禁錮の総数から全部執行猶予人員を差し引いて算出すると,令和4年は39人,令和3年は59人,令和2年は70人となる。

第2 出典及び集計方法

1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である

本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。

注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。

法曹時報の号(対象年)図表番号
平成27年分(69巻2号)図表144548頁~549頁
平成28年分(70巻2号)図表144566頁~567頁
平成30年分(72巻2号)図表139404頁~405頁
令和4年分(76巻2号)図表137688頁~689頁

概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。

なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。過失運転致死罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。

2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別

概況の注記によれば,全部執行猶予率は,全部執行猶予言渡人員を懲役,禁錮3年以下の有罪人員で除して100を乗じて算出されている。分母は有罪人員全体ではなく,猶予を付し得る範囲に限られている点に注意を要する。

刑の一部執行猶予制度の施行日は平成28年6月1日である(平成30年分・72巻2号404頁の注記)。これ以降の概況は「一部執行猶予率」と「全部執行猶予率」とを別欄に分けており,本記事が掲げるのはいずれも全部執行猶予率である。平成27年以前の号は単に「執行猶予率」と表示しているが,一部執行猶予制度が存在しない時期の数値であるから,実質は全部執行猶予率と同義である。

表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。全部執行猶予率の欄の「−」は,全部執行猶予の言渡しがなかったこと,又は分母となる人員が存在しないことのいずれかを意味する。

3 統計上の「過失運転致死」の範囲

概況の注記によれば,「過失運転致死」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項の罪(自動車運転過失致死)が含まれる。自動車運転死傷処罰法は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行された。したがって,本記事の平成25年以前の数値は改正前の刑法上の罪に係るものである。

第3 分布から読み取れること

第一に,過失運転致死罪の第一審は禁錮が中心である。令和4年分の概況691頁の図表139によれば,第一審における過失運転致死事件の刑種の割合は,令和4年が懲役2.1%,禁錮64.8%,罰金33.1%であり,平成30年は懲役2.4%,禁錮59.0%,罰金38.7%であった。拘禁刑への一本化により,この区分自体が将来は失われる。

第二に,刑期の中心は1年以上2年未満の区間であり,その割合は令和4年で62.5%,平成23年で63.4%と,12年間ほぼ一定である。全部執行猶予率も91.2%(平成25年)から96.4%(令和4年)の範囲で推移しており,大きな変動はない。

第三に,人員が着実に減少している。終局人員は平成23年の1,752人から令和4年の1,020人へと4割以上減った。自動車運転死傷処罰法の施行によって一部が危険運転致死として起訴されるようになったことに加え,交通事故そのものの減少が背景にあると考えられる。

第四に,通常第一審で処理されるのは全体の一部である。令和4年分の概況683頁によれば,過失運転致死傷被疑事件の起訴率(起訴人員を起訴人員と不起訴人員の和で除したもの)は,令和3年が13.5%,令和4年が13.3%である。さらに,起訴された事件のうちかなりの割合が略式手続で処理される。令和4年についてみると,通常第一審の終局人員1,020人に対し,略式手続における過失運転致死罪の終局人員は488人であり,合計1,508人のうち約32%が略式手続によっている。平成30年は,通常第一審1,371人,略式手続847人の合計2,218人のうち約38%であった。もっとも,通常第一審の人員が実人員であるのに対し略式手続の人員は延べ人員であるから,この割合は概算である。

第4 量刑分布を読む前提となる法改正

1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された

刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号。公布は令和4年6月17日)は,令和7年6月1日から施行され,懲役及び禁錮を拘禁刑に一本化した。自動車運転死傷処罰法の各条も,現行法では法定刑がすべて拘禁刑で規定されている。

本記事の表が「懲役」「禁錮」の区分で数値を掲げているのは,いずれも施行日より前の年次の統計だからである。施行日以後に犯した罪については拘禁刑が言い渡されるため,将来の概況では刑種の区分自体が変わることになる。

2 自動車運転死傷処罰法の施行と統計の連続性

自動車運転死傷処罰法(平成25年法律第86号)は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行された。同法によって過失運転致死傷罪(5条)が設けられ,同時に危険運転致死傷罪の成立範囲が広がり,アルコール等の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態での運転を処罰する3条が新設された。

そのため,従来は自動車運転過失致死罪として起訴されていた事案の一部が危険運転致死罪として起訴されるようになった。本記事の表は改正前後を通じた同一系列として掲げているが,平成26年を境に対象事件の範囲が変わっている点に留意する必要がある。

第5 関連記事

本記事と対になる量刑分布の記事は次のとおりである。罪名と手続の組合せごとに分布の形が大きく異なるので,比較して読むと,同じ交通事故でも処理のされ方が全く違うことが分かる。

実際の量刑がどのような事実関係の下で言い渡されたのかを確かめるには,判決書その他の刑事記録を入手する必要がある。手続別の入手方法は,刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧にまとめている。

死亡事故の弁護は,被害者遺族と向き合う点で他の事件と質的に異なる。その空気を伝える投稿として次のものがある。

出典

1 法令

2 統計

  • 最高裁判所事務総局刑事局「平成27年における刑事事件の概況(上)」法曹時報69巻2号 図表144(548頁~549頁)
  • 最高裁判所事務総局刑事局「平成28年における刑事事件の概況(上)」法曹時報70巻2号 図表144(566頁~567頁)
  • 最高裁判所事務総局刑事局「平成30年における刑事事件の概況(上)」法曹時報72巻2号 図表139(404頁~405頁)
  • 最高裁判所事務総局刑事局「令和4年における刑事事件の概況(上)」法曹時報76巻2号 図表137(688頁~689頁)・図表138(690頁)・図表139(691頁)及び683頁

3 文献

  • 川上拓一編著『裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断』(学陽書房,2022年)