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公安委員会への苦情申出-対象・書き方・効果(AIリライト)

警察職員の職務執行に不服がある場合,警察法79条に基づき,都道府県公安委員会へ文書で苦情を申し出ることができる。
本記事では,制度の対象,申出書の書き方,提出方法,処理結果の通知,制度の効果及び最新の運用件数を整理する。

第1 制度の対象と位置付け

1 警察法79条に基づく制度

警察職員の職務執行について苦情がある人は,警察法79条1項に基づき,都道府県公安委員会に対し,文書で苦情を申し出ることができる。
都道府県公安委員会は,苦情を誠実に処理し,原則として処理結果を文書で通知しなければならない(同条3項)。

この制度は,平成12年法律第139号による警察法改正により設けられ,平成13年6月1日に施行された。
本記事は,令和8年9月6日現在の法令及び運用資料に基づき,令和7年中までの統計を整理したものである。

2 対象となる苦情

苦情とは,①警察職員が職務執行において違法又は不当な行為をし,又はすべきことをしなかったために申出者が具体的な不利益を受けたとして,個別具体的な是正を求める不服,及び②警察職員の不適切な執務の態様に対する不平不満をいう。

対象となり得る職務執行には,犯罪捜査,交通指導取締り,告訴又は告発の取扱い,各種相談に対する処理,警察職員の応接態度などが含まれる。
例えば,実況見分,取調べ,捜索,交通取締り又は警察署での相談対応について,違法若しくは不当な行為があった,又は必要な対応がされなかったと考える場合が問題となる。

3 対象外の申出及び警察相談との区別

警察の任務と関係がない一般的な不平不満,警察職員の具体的な職務執行と関係しない制度上の提言,内容が判然としない感情的な非難などは,警察法79条の苦情には当たらない。
もっとも,提出された文書が「要望書」又は「申入書」と題されていても,標題だけでなく内容に基づいて苦情に当たるかどうかが判断される。

警察への相談や情報提供のすべてが公安委員会への苦情になるわけではない。
事件又は事故など緊急の場合は110番を利用し,緊急でない警察相談は警察相談専用電話「#9110」又は最寄りの警察署を利用することになる。

4 国家公安委員会に申し出る例外

通常の都道府県警察職員の職務執行に関する苦情は,都道府県公安委員会に申し出る。
これに対し,警察庁又は関東管区警察局が直接行う重大サイバー事案の捜査に従事する警察庁の警察官等に関する苦情は,警察法79条2項に基づき,国家公安委員会に申し出る。

第2 苦情申出書の書き方と提出方法

1 記載事項

苦情申出書には,次の事項を記載する必要がある(苦情の申出の手続に関する規則2条)。
① 申出者の氏名,住所及び電話番号
② 処理結果の通知を受けるために別の連絡先を希望する場合は,その名称,住所及び電話番号
③ 苦情の原因となった職務執行の日時,場所,警察職員の執務の態様その他の事案の概要
④ 職務執行によって受けた具体的な不利益の内容,又は職務執行に対する不満の内容

日時又は担当者名の一部が分からない場合でも,直ちに作成を断念する必要はない。
分かる範囲で,警察署名,場所,やり取りの順序,関係書類その他の特定に役立つ事情を具体的に記載することが重要である。

2 様式及び作成上の留意点

法令上,苦情申出書について全国一律の様式は定められていない。
各公安委員会が記載例又は参考様式を掲載していることがあるため,提出先の案内を確認するとよい。

申出書では,①いつ,どこで,誰が,何をしたか,又は何をしなかったか,②それによってどのような不利益又は不満が生じたか,③どの点の確認又は是正を求めるかを,事実と意見を区別して時系列で記載するのが分かりやすい。
感情的な評価を重ねるよりも,日時,発言,行為,書類名などの確認可能な事実を示す方が,調査対象を特定しやすい。

3 提出先及び提出手段

警察庁の通達では,都道府県公安委員会の事務担当室のほか,警察本部及び警察署においても苦情申出書を受け付ける運用とされている。
郵送先,窓口の所在地及び受付時間は,都道府県公安委員会又は都道府県警察の公式サイトで確認する必要がある。

通常の電子メール及びファクシミリは,警察法79条の「文書」には含まれないものとして扱われている。
一方,神奈川県公安委員会のように,電子政府の総合窓口であるe-Gov電子申請による提出を受け付ける公安委員会もあるため,電子提出の可否は提出先ごとに確認する必要がある。

大阪府公安委員会への提出方法及び参考様式は,大阪府公安委員会「苦情申出制度のご案内」で確認できる。

4 代書,補正及び共同申出

申出者が文書を作成できない特別の事情がある場合,職員が申出内容を聞き取って文書を作成し,申出者に読み聞かせ,又は閲覧させて内容を確認する取扱いが定められている。
通訳を介した場合は,その通訳人の氏名等も文書に記載される。

必要な記載事項が欠けている場合,公安委員会は,相当な期間を定めて補正を求めることができる。
複数人が共同で申し出る場合は,処理結果の通知を受ける代表者を選定することができる。

第3 苦情の処理及び結果通知

1 公安委員会と警察の役割

都道府県公安委員会は,苦情申出書を受け付けた後,都道府県警察に対して必要な事実調査及び措置を指示し,その結果の報告を受ける。
その上で,公安委員会が苦情を処理し,申出者に通知する内容を決定する。

この仕組みにより,苦情は警察内部だけで完結するのではなく,都道府県警察を管理する公安委員会の関与の下で処理される。
他方,公安委員会は合議制の行政委員会であり,個別の犯罪捜査について直接指揮する機関ではない。

2 処理結果として通知される内容

処理結果の通知には,事実関係の有無,職務執行上の問題点の有無,講じた措置などが記載される。
ただし,苦情の内容,捜査上の支障,関係者のプライバシーその他の事情により,通知内容が簡潔になることがある。

苦情に理由があると判断された場合には,職員に対する指導,業務運用の改善その他の措置が講じられることがある。
したがって,この制度には,職務執行の検証を求め,公安委員会の監督の下で是正又は再発防止につなげるという実務上の意味がある。

3 処理結果を通知しない場合

公安委員会は,次のいずれかに当たる場合,処理結果を通知しないことができる(警察法79条3項ただし書)。
① 申出が警察事務の適正な遂行を妨げる目的でされたと認められる場合
② 申出者の所在が不明である場合
③ 共同申出について,他の申出者に処理結果を通知した場合

これらは処理結果を通知しないことができる場合であり,苦情を受け付けるかどうかの要件ではない。

4 処理期間

法令上,処理結果を通知すべき一律の期間は定められていない。
警察庁の通達は,公安委員会が個々の事案に応じた相当な期間内に処理するものとし,処理が長期に及ぶ場合には,求めに応じて処理状況を回答するよう努めるとしている。

第4 制度の効果及び他の手続との関係

1 処理結果通知の法的性質

苦情の処理結果の通知は,行政処分ではない。
そのため,通知自体が刑事処分若しくは交通違反の処分を取り消し,又は損害賠償を命じるものではない。

もっとも,そのことから苦情申出が無意味になるわけではない。
申出内容について事実調査を求め,公安委員会の管理の下で問題点の確認,職員への指導又は業務改善を促し,書面による回答を得るための制度として位置付けるべきである。

2 請願,審査請求等との併用

苦情申出は,請願又は行政不服審査法に基づく審査請求その他の法令上の権利行使を妨げない。
取消し,賠償,告訴若しくは告発その他の法的効果を求める場合は,苦情申出だけで代えることはできないため,対象となる処分,手続及び期限に応じて別の手段を検討する必要がある。

3 犯罪捜査及び交通違反との関係

公安委員会は,個別の犯罪捜査について,特定の被疑者を逮捕すること,特定の証拠を収集すること,又は告訴若しくは告発を受理することを直接指揮する機関ではない。
告訴又は告発の制度及び警察庁の運用通達については,警察庁の告訴・告発に関する通達・運用資料を参照されたい。

交通違反について,取締り後に違反の事実を否認する場合は,取締りをした警察署等に申し出る必要がある。
交通違反に関する手続の全体像については,交通違反に対する不服申立方法を参照されたい。

第5 苦情申出制度の運用件数

1 令和7年中の受理件数

令和7年中に全国の都道府県公安委員会が受理した警察法79条1項に基づく苦情は,1673件であり,令和6年中の1643件より30件増加した。
令和7年中の苦情の内容別割合は,捜査(逮捕,取調べ,捜索等)が22.8%,交通指導取締りが12.5%,各種相談が12.4%,110番通報が9.3%,被害届が7.9%,交通事故捜査が6.4%であった。

この件数は,警察法79条に基づく文書による苦情の受理件数であり,警察相談,電話による苦情その他の申出をすべて含む数字ではない。

2 平成14年から令和7年までの推移

件数件数
平成14年456平成26年930
平成15年467平成27年977
平成16年553平成28年965
平成17年634平成29年894
平成18年747平成30年901
平成19年717令和元年888
平成20年783令和2年992
平成21年1067令和3年1270
平成22年1082令和4年1252
平成23年1168令和5年1438
平成24年1397令和6年1643
平成25年1034令和7年1673

3 年別資料

令和時代の資料は,令和元年令和2年令和3年令和4年
令和5年令和6年令和7年を参照されたい。

平成時代の資料は,平成23年平成24年平成25年平成26年
平成27年平成28年平成29年平成30年を参照されたい。

第6 関連記事

警察に関する手続又は資料については,次の記事も参照されたい。
① 交通違反に対する不服申立方法
② 交通事故被害者が警察に対応する場合の留意点
③ 警察庁作成の訟務統計
④ 警察庁の告訴・告発に関する通達・運用資料

第7 出典・参考資料

1 法令

① e-Gov法令検索「警察法」79条
② e-Gov法令検索「苦情の申出の手続に関する規則」1条~4条

2 所管行政機関の通達・案内

① 警察庁「都道府県警察の職員の職務執行に対する苦情の適正な処理について(通達)」(令和6年3月29日,警察庁丙人発第63号)
② 警察庁「ご意見・ご要望」
③ 国家公安委員会「重大サイバー事案に係る苦情申出について」
④ 大阪府公安委員会「苦情申出制度のご案内」

3 統計・データ

① 警察庁長官官房首席監察官「苦情申出制度等の運用状況について」(令和8年2月18日付事務連絡,当サイト掲載PDF)1頁~2頁