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警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針-令和5年の依命通達,リソース再配分の実際及び令和8年4月の廃止(AI作成)

第1 この記事が扱う文書

1 中心となる2つの依命通達

この記事は,警察庁が令和5年7月3日付けで発出した「警戒の空白を生じさせないための組織運営について(依命通達)」(警察庁乙官発第4号ほか)と,これを廃止した令和8年4月2日付け「将来を見据えた警察組織の構造改革及び優秀な警察官の確保に向けた取組について(依命通達)」(警察庁乙官発第6号ほか)を扱う。
前者に添付された「警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針」が,警察庁が「リソースの再配分」という言葉で警察組織の見直しを進める枠組みの出発点である。
この記事は,人工知能を用いて作成したものであり,調査の基準日は令和8年9月9日である。

2 令和5年の依命通達は警察庁ウェブサイトから削除されている

令和5年の依命通達のPDFは,かつて警察庁ウェブサイトのlaws/notification/0703sisin.pdfというパスに置かれていたが,令和8年9月9日現在,同URLは404を返す。
警察庁ウェブサイトの「警察庁の施策を示す通達」の一覧のうち,長官官房,生活安全局,刑事局,交通局,警備局,組織犯罪対策部及びサイバー警察局の7つを検索したが,「警戒の空白」を含む通達は1件も掲げられていない。
令和5年の依命通達は,長官官房のほか生活安全局,刑事局,交通局,警備局及びサイバー警察局にも発番されているから,いずれかの一覧に残っていてもおかしくないが,そうなっていない。
この記事は,インターネット・アーカイブ(Wayback Machine)に令和6年5月30日付けで保存された同PDF(4頁)により全文を確認した。

これに対し,令和8年の依命通達及び後記の着眼点通達は,警察庁ウェブサイトの通達一覧と政策のページの双方に掲載されている。
なお,通達は,著作権法(昭和45年法律第48号)13条2号により,同章の規定による権利の目的となることができない著作物である。

3 この記事の射程

この記事は,①令和5年の依命通達と指針の全文,②公表されていない「重点」の内容を警察白書の図表から確認できる限度,③3年間の集中取組期間に実際に動いた法令・規則の改正,④令和8年4月2日の廃止と後継の枠組み,⑤警察官定員等の実数,を扱う。
個別の治安施策の当否は扱わない。
知能犯罪の告訴・告発に関する令和6年1月5日通達がこの枠組みの中に位置付けられている点については,別の記事である知能犯罪に関する告訴・告発の令和6年1月5日通達で扱っている。

第2 令和5年7月3日の依命通達の全文

以下は,Wayback Machineに保存された警察庁のPDFによる全文である。
原文の読点は「、」であるから,そのまま用いる。
縦書きの宛先欄及び構成員表は,PDFの文字情報では文字の順序が崩れるため,該当箇所を画像で確認して整えた。

原議保存期間20年(令和26年3月31日まで)
有効期間一種(令和11年3月31日まで)

警察庁乙官発第4号、乙生発第4号
乙刑発第3号、乙交発第3号
乙備発第3号、乙サ発第3号
令和5年7月3日

庁内各局部課長
各附属機関の長
各地方機関の長
各都道府県警察の長 殿

警察庁次長

警戒の空白を生じさせないための組織運営について(依命通達)

この度、警察庁は、別添のとおり「警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針」を策定した。
各位にあっては、本指針に基づき、実効ある諸対策を推進されたい。

命により通達する。

別添

警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針

1 基本認識

サイバー空間や先端技術の利用の拡大、人口構造の変化等、近年、我が国の社会情勢が大きく変化しているほか、我が国を取り巻く国際的な情勢も目まぐるしく変化している。
警察は、これらの変化が国内の治安情勢に与える影響を的確に捉え、対処していく必要がある。
対策が対症療法的なものにとどまったり、安易な前例踏襲や所属・部門間の縦割り等が対策の遅れや警戒すべき事象の見落としにつながったりすることにより、警戒の空白が生じるということは、あってはならない。

また、少子高齢化や地方の過疎化と都市部への人口集中、人々の働き方の変化は、有限であるリソースの一層の効果的な活用への取組を不可欠なものとしている。

警戒の空白が生じることを防ぎ、直面する諸課題に的確に対応するためには、情勢の変化と組織の現状を俯瞰的に分析し、警察組織全体の最適化を図るためのリソースの再配分を含めた総合的な対策を、これまで以上に強力に推進する必要がある。

2 重点的に取り組むべき事項

警察庁及び都道府県警察の全ての所属・部門において、日々生起する治安事象への対応に当たって警戒の空白が生じていないか、組織運営の合理性・効率性の向上や業務の高度化に取り組むべき点はないか等の観点から、幅広く業務の点検を行った上で、以下の事項に取り組むこと。

(1) 部門を超えたリソースの重点化等

治安事象への対応に警戒の空白が生じており、早急に手立てを講ずるべきと判断される分野等については、その本質的課題を見極めた上で、警察組織全体から捻出したリソースを重点的に投入するほか、従来の枠組みにとらわれない連携を構築するなど、真に効果的な対応方策を検討し、対策を抜本的に強化すること。

(2) 能率的でメリハリのある組織運営

情勢の変化に応じ、前例踏襲を排した体制や業務の見直しを適切に行うほか、先端技術・情報通信技術の活用等により、業務の合理化・効率化を徹底的に行い、能率的でメリハリのある組織運営を推進すること。

また、これにより生じたリソースについては、早急に手立てを講ずるべき警戒の空白への対応その他の重点事項に対する機動的対応のために、有効に活用すること。

(3) 先端技術の活用等による警察活動の更なる高度化

警察活動の更なる高度化を図るため、AIやドローンをはじめとする先端技術の活用を一層推進するほか、情報システムの共通化及び集約化等を図るとともに、従来の枠組みにとらわれない都道府県警察間の連携強化、関係機関・団体との連携強化等を推進すること。

(4) 働きやすい職場環境の形成等

職員個々の置かれている環境や働き方等が多様化する中、超過勤務の縮減や休暇取得の促進、仕事と子育て・介護の両立等に向けた取組をより一層推進し、職員一人一人が士気高く、その力を十全に発揮できる職場環境の形成等を図ること。

3 推進体制

(1) 警察庁における推進体制

警察庁に、別紙のとおり「警戒の空白を生じさせないための警察力最適化推進本部」(以下「推進本部」という。)を設置し、2に記載する取組のうち警察庁で取り組むべき事項や全国的な観点から都道府県警察で取り組むべき事項の具体化、当該取組の実施状況の把握及び当該取組の更なる推進を図るものとする。
また、推進本部が定めるところにより、下部組織を置くことができるものとする。

(2) 各都道府県警察における推進体制

各都道府県警察においても、警察庁のものを参考に推進体制を構築すること。
推進体制においては、組織内の職員の意見を幅広く把握しつつ、縦割りを排して俯瞰的立場から検討を行うこと。

別紙

警戒の空白を生じさせないための警察力最適化推進本部構成員表

本部長 警察庁長官
本部長代理 次長
本部員 官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、警備局長、サイバー警察局長、組織犯罪対策部長、外事情報部長、警備運用部長、総括審議官、技術総括審議官、政策立案総括審議官、その他本部長が指名する者

備考 推進本部の庶務は、長官官房企画課において行う。

第3 指針が何を求めたか

1 「警戒の空白」の意味

指針は「警戒の空白」を定義していない。
基本認識は,対策が対症療法にとどまること,安易な前例踏襲,所属・部門間の縦割りの3つを挙げ,これらが「対策の遅れや警戒すべき事象の見落としにつながったりすることにより、警戒の空白が生じる」と述べている。
この記事では,警戒の空白とは,治安事象が現に生じているのに警察の側の体制がそこへ向いていない状態を指すものと整理する。

2 4つの柱

指針が掲げる柱は,①部門を超えたリソースの重点化等,②能率的でメリハリのある組織運営,③先端技術の活用等による警察活動の更なる高度化,④働きやすい職場環境の形成等の4つである。
このうち②は,業務の合理化・効率化で生じたリソースを「早急に手立てを講ずるべき警戒の空白への対応その他の重点事項に対する機動的対応のために、有効に活用すること」としており,効率化と重点化が一続きの操作として組み立てられている。
すなわち,この指針は増員を前提とせず,既にある人員の配置換えによって課題に対応する枠組みである。

3 推進体制

警察庁には「警戒の空白を生じさせないための警察力最適化推進本部」が置かれ,本部長は警察庁長官,庶務は長官官房企画課である。
都道府県警察も警察庁のものを参考に推進体制を構築することとされた。

第4 「当面取り組むべき組織運営上の重点」

1 通達本文は公表されていない

指針に基づき,警察庁は「警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点について(通達)」(令和5年7月3日付け警察庁丙企画発第29号ほか)を発出した。
この通達の本文は,警察庁ウェブサイトの通達一覧に掲載されておらず,令和8年9月9日現在,この記事では確認できていない。

2 警察白書の図表で確認できる全項目

もっとも,その項目は,警察白書の図表7-24「「警戒の空白を生じさせないための組織運営」において当面取り組むべき重点事項」で確認することができる。
以下は,令和8年版警察白書の同図表による全項目である。

1 人的リソースの重点化等により体制を抜本的に強化して推進すべき事項

①サイバー空間における対処能力の強化
②匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な取締りの強化
③特殊詐欺に係る広域的な捜査連携の強化
④経済安全保障の確保その他の対日有害活動対策の強化
⑤要人に対する警護等の強化
⑥ローン・オフェンダー等に対する対策の強化
⑦自転車その他の小型モビリティ対策の強化

2 組織内の人的リソースを一層有効に活用するために業務の効率化・合理化のための見直しを行うべき事項

(1) 情勢に応じた警察の活動拠点や所属の在り方等の見直しを検討するべき事項
①警察署の業務見直し
②交番、駐在所等の在り方の見直し
③本部執行隊等の在り方の見直し

(2) 限られた人的リソースの有効活用の観点から業務の実施方法等の見直しを検討するべき事項
①メリハリのある地域警察活動の推進
②交通指導取締りや交通規制の在り方の見直し
③交通事故事件捜査の在り方の見直し
④引き当たり捜査への情報通信技術の活用
⑤業務上過失事件等の捜査の加速化
⑥保管場所標章関係業務の見直し
⑦許可等関係事務の業務集約
⑧庶務・会計業務の集約

3 その他

(1) 広域的に行われる犯罪等に効率的に対処するための所属を超えた連携の強化
(2) 先端技術の活用等による警察活動の更なる高度化
(3) 働きやすい職場環境の形成等

3 「業務上過失事件等の捜査の加速化」の位置

上記2(2)⑤の「業務上過失事件等の捜査の加速化」は,知能犯罪に関する告訴・告発の令和6年1月5日通達(警察庁丁捜二発第2号)が自らの位置付けとして引用している項目である。
同通達は,この項目の中で各都道府県警察が「警察庁における告訴告発事件の合理的な処理方策の検討結果を踏まえ、業務の実施方法を点検し、必要な見直しを行うこと」とされていると述べている。
告訴・告発の取扱いに3か月の目途が示された背景には,被害者保護ではなく人的リソースの有効活用があるということになる。

第5 3年間で実際に動いたもの

1 集中取組期間

令和8年の依命通達は,令和5年度から令和7年度までの3年間を集中取組期間としたと述べている。
令和8年版警察白書も同じ期間を掲げている。

2 法令・規則の改正として現れたもの

令和8年版警察白書の図表7-25「業務の効率化・合理化のための取組」は,この3年間の具体的な成果を挙げている。
以下の3件は,いずれも法令又は規則の改正として外部から確認できるものである。

(1) 保管場所標章の廃止

自動車の保管場所の確保等に関する法律(昭和37年法律第145号)が令和6年5月に改正され,令和7年4月に保管場所標章が廃止された。
令和8年9月9日現在のe-Gov法令検索の同法本文には,「保管場所標章」の語は1か所も存在しない。
白書は,これにより自動車の保有者の負担が軽減されるとともに,都道府県警察における保管場所関係業務に係る窓口業務の負担が軽減されたとする。

(2) 地域警察運営規則の改正

令和6年9月,地域警察運営規則が改正された。
白書によれば,交番は交替制,駐在所は駐在制の地域警察官により運用するものとし,必要があると認める場合はいずれも日勤制の地域警察官により運用できることとされた。
同じ改正で,巡回連絡を効率的に行わせるために必要と認めるときは,地域警察部門以外の警察部門の警察職員を巡回連絡に協力させる旨も規定された。

(3) 高速道路交通警察隊の編制の柔軟化

令和6年7月,訓令が改正され,おおむね50キロメートルごとに置くこととされていた分駐隊について,道路状況等を勘案して柔軟に設置できることとされた。

このほか白書は,警察署の一部業務の本部への集約,本部検視隊の設置,近隣警察署との当直勤務のブロック運用,令和7年9月から3か月間の地域警察ウェアラブルカメラモデル事業,令和7年3月の警察官の服制に関する規則等の改正によるポロシャツ型の夏服上衣の導入等を挙げている。

3 都道府県警察における実装-福島県警察の例

都道府県警察がこの枠組みをどう受けたかは,情報公開されている例規から確認できる。
福島県警察は,令和5年7月31日付け達第300号「警戒の空白を生じさせないための組織運営について(通達)」を発出し,指針とほぼ同じ4本の柱を県の文言に置き換えて定めている。
同通達は,前身である「変容する社会に対応するための警察運営に向けた取組について」(令和4年7月15日付け達第356号)を廃止しており,県レベルでは令和4年から同種の取組が始まっていたことが分かる。

推進体制としては,福島県警察総合対策検討委員会の下に警察力最適化推進分科会(分科会長は警務部長)が置かれ,さらにその下に同日付け達第302号により警察力最適化推進ワーキンググループ(グループ長は警務課長)が置かれている。
このワーキンググループの例規は令和8年3月17日付け達第158号により改正され,同月23日から施行されているから,警察庁の枠組みが令和8年4月に切り替わった後も,県の推進体制自体は継続していることになる。

第6 令和8年4月2日の依命通達による廃止

1 廃止の事実と時期

令和8年4月2日付け警察庁乙官発第6号ほか「将来を見据えた警察組織の構造改革及び優秀な警察官の確保に向けた取組について(依命通達)」は,末尾で「なお、上記通達は廃止する。」と定め,令和5年の依命通達を廃止した。
令和5年の依命通達の有効期間は一種(令和11年3月31日まで)であったから,本来の期間より約3年早く廃止されたことになる。
令和8年の依命通達の有効期間は一種(令和14年3月31日まで),原議保存期間は20年(令和29年3月31日まで)である。

2 令和5年の枠組みへの評価

令和8年の依命通達は,令和5年の枠組みについて,7項目をはじめとする課題への対応を人的リソースの重点化等により推進し,業務の効率化・合理化のための見直しを行った結果,「現下の治安課題に的確に対処するための体制が構築されるとともに、警察力最適化サイクルが定着しつつあると評価できる」と述べている。
警察力最適化サイクルは,同通達において「体制を不断に点検して警察の執行力が最も効果的に発揮されるよう改善を図る継続的な取組」と定義されている。

3 2つの課題

令和8年の依命通達は,新たに「2つの課題」を掲げる。
第1は,治安情勢の変化に応じた,広域的運用等による警察の対処能力の強化である。
サイバー事案,匿名・流動型犯罪グループによる犯罪,ローン・オフェンダーによる犯罪,対日有害活動等が都道府県境や国境を越えて多発し,「こうした治安課題への対処と国家安全保障との境界の相対化も進展している」とする。
第2は,社会情勢の変化に応じた,警察の組織構造の弾力化等である。

第7 4本柱の構造改革と3本柱の人材確保

1 4本柱の構造改革

令和8年の指針が掲げる構造改革は次の4本である。

①警察庁と都道府県警察及び都道府県警察等間の連携の在り方の見直し
②都道府県警察の内部における役割分担等の見直し
③科学技術の進展等を踏まえた業務の効率化・合理化と業務負担の軽減
④関係機関・団体等との連携強化等による業務のスリム化等

②では,警察本部と警察署の役割分担の見直し,地域の拠点となる警察署とその他の警察署による業務の分担,当直業務等の一体的運用,警察署から近距離にある駐在所の機能を警察署及び交番が果たすこと,相互に近接する複数の駐在所の交番への再編が例示されている。
④は,警察が「治安を守る最後の砦」であることを前提としつつ,関係機関・団体等が警察と連携しながら実施しても支障がない業務の存在を認めるものである。

2 3本柱の人材確保

人材確保の柱は,①組織の魅力向上,②若い世代への発信力強化,③採用の間口拡大の3本である。
令和8年4月9日付け警察庁丙人発第73号ほかにより「将来を見据えた優秀な警察官の確保に向けた緊急対策プラン」が策定され,公務員試験に特化した対策を要さない試験の導入,採用試験の実施時期の前倒し,試験回数の増加,社会人経験者をターゲットとした採用の推進等が具体化されている。

3 推進体制の組替え

令和5年の枠組みでは「警戒の空白を生じさせないための警察力最適化推進本部」が1つ置かれていたのに対し,令和8年の枠組みでは「将来を見据えた警察組織の構造改革推進本部」と「将来を見据えた優秀な警察官の確保のための対策推進本部」の2つが置かれている。
前者の庶務は長官官房企画課,後者の庶務は長官官房人事課である。
後者には人事課長,総務課長,会計課長,長官官房参事官(教養・厚生・国際担当)が加わっており,採用と処遇を扱う体制になっている。

第8 着眼点通達が置いた期限

1 期限付きで決まっているもの

令和8年4月2日付け警察庁丙企画発第18号ほか「将来を見据えた警察組織の構造改革に係る着眼点について(通達)」は,各取組に実施時期を角括弧で付している。
期限が具体的に示されているものには,次のようなものがある。

①警察署の在り方全体に関するガイドライン等の提示は令和8年度中
②交番及び駐在所の在り方に関する基本的な方向性・考え方の提示は令和8年度中
③都道府県警察におけるサイバー部門の組織の在り方に関する方針の提示は令和8年度中
④遺失物関係手続をオンラインで行う新システムの全国展開は令和8年度中
⑤警察用航空機のブロック運航への移行は令和11年度中を目指す
⑥特殊班派遣部隊の編成・運用の最適化は令和10年度までに結論
⑦ドローンの広域運用部隊の枠組み構築は令和10年度中
⑧運転免許関係業務とその体制の見直しは令和10年度中に結論
⑨ローン・オフェンダー対策で情報システムを活用した情報の集約は令和9年度中の開始を目指す

2 継続的に実施とされたもの

これに対し,匿名・流動型犯罪グループへのT3(匿流ターゲット取締りチーム)の活用,特殊詐欺連合捜査班(TAIT)の運用の検討,サイバー特別捜査部への情報集約,対日有害活動への対処等は「継続的に実施」とされ,期限が置かれていない。
着眼点は,T3の活用に関し,必要に応じて警察法61条の3の規定に基づく指示等により効果的な捜査態勢の構築を図るとしている。
同条1項は,長官が広域組織犯罪等に対処するため必要があると認めるときに,都道府県警察に対し,関係都道府県警察間の分担その他の警察の態勢に関する事項について必要な指示をすることができる旨を定めている。
T3及びTAITを含む匿名・流動型犯罪グループ対策の警察組織については,別の記事である匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)対策の警察組織で扱っている。

第9 リソースの実数

1 警察官定員と警察署数

令和8年版警察白書の資料編によれば,令和8年4月1日現在の各都道府県の条例で定める警察官定員は全国で260,550人,警察署数は1,140署である。
同資料の人口は124,330,690人である。
この記事でこれを割ると(124,330,690÷260,550),警察官1人当たりの人口は約477人となる。
これは条例定員に対する単純な除算であり,実際に現場で勤務している警察官の数を示すものではない。
大阪府は定員21,604人・66署,東京都は43,619人・102署,神奈川県は15,841人・54署である。

2 採用試験の受験者数と競争倍率

令和8年4月の指針の概要によれば,警察官採用試験の受験者数と競争倍率は,15年間で136,845人・9.5倍から43,059人・3.5倍へ落ち込んでいる。
依命通達は,受験者数及び競争倍率について「10年間で約2分の1、15年間で約3分の1にまで落ち込んでおり、受験者数の減少率は若年層人口の減少率を大きく上回っている」と述べている。

3 年齢構成と人口推計

指針の概要は,令和7年4月1日時点の警察官の年齢構成について,40歳代前半の人数が各約8,000人であるとし,今後十数年にわたり退職者は増加傾向にあるとする。
人口推計については,依命通達と概要とで示し方が異なる。
依命通達は,国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」により,令和7年から令和17年までの10年間で総人口は約6.2%減少し,20歳から24歳までの人口は約12.6%減少するとしている。
これに対し概要は,同じ期間について総人口を−6%,若年層(15歳から34歳まで)を−10%としている。
母集団が異なるので,引用する際は年齢の範囲まで示す必要がある。

第10 弁護士の実務に現れる場面

この枠組みは内部規範であり,私人に権利を与えるものではない。
もっとも,そこで挙げられている見直しは,弁護士が日常的に接する窓口の側の変化として現れる。

第1に,警察署の統廃合ではなく業務の集約が先行している点である。
着眼点は,許認可等関係業務,死体取扱業務,留置管理業務等について,警察本部が一括して実施することや地域の拠点となる警察署において実施することを検討するとしており,白書も本部検視隊の設置を挙げている。
接見の相手方となる被留置者の留置場所や,検視の担当が従来の所轄と異なる場合があり得ることになる。

第2に,当直業務の一体的運用(ブロック運用)である。
白書の図表7-25は,近隣の2署の当直体制を1署に集約する図を示している。
夜間・休日の連絡先が管轄署と一致しない場面が生じ得る。

第3に,交番及び駐在所の再編である。
着眼点は,警察署から近距離にある駐在所の機能を警察署及び交番が果たすこと,相互に近接する複数の駐在所を交番に再編すること,日勤制への切替えを含めた運用方法の合理化を挙げ,警察庁が令和8年度中に基本的な方向性・考え方を提示するとしている。

第4に,交通事故事件捜査の合理化である。
白書は,防犯カメラ映像等を活用した交通指導取締りの推進と,3Dレーザースキャナ・空撮用ドローン等の活用による交通事故現場見取図作成に係る負担の軽減を挙げている。
実況見分調書の作成方法が変われば,交通事故の民事事件における証拠の形も変わることになる。

第5に,告訴・告発である。
前記第4の3のとおり,知能犯罪の告訴・告発に関する令和6年1月5日通達は,この枠組みの「業務上過失事件等の捜査の加速化」の項目に位置付けられている。

第11 この記事で確認できなかった事項

次の各点は,令和8年9月9日現在,この記事では確認できていない。

①「警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点について(通達)」(令和5年7月3日付け警察庁丙企画発第29号ほか)の本文。
項目名は警察白書の図表7-24で確認したが,各項目の下に何が書かれているかは確認していない。
②地域警察運営規則の令和6年9月改正の条文。
同規則は国家公安委員会規則であり,e-Gov法令検索では確認できなかった。
この記事の記載は警察白書の説明による。
③高速道路交通警察隊の編制に関する訓令の令和6年7月改正の本文。
④令和5年の依命通達が本来の有効期間より早く廃止された理由。
令和8年の依命通達は廃止の事実を述べるだけで,理由を説明していない。
⑤集中取組期間である令和5年度から令和7年度までの間に,7項目それぞれへ何人が配置されたかという数値。

出典

法令

①著作権法(昭和45年法律第48号)13条2号
②警察法(昭和29年法律第162号)61条の3
③自動車の保管場所の確保等に関する法律(昭和37年法律第145号)

警察庁の通達(行政組織の内部規範)

①警察庁次長「警戒の空白を生じさせないための組織運営について(依命通達)」(令和5年7月3日付け警察庁乙官発第4号ほか。令和8年4月2日付け依命通達により廃止)。
警察庁ウェブサイトの当該PDFは令和8年9月9日現在404であり,この記事はインターネット・アーカイブに令和6年5月30日付けで保存された版による。
https://web.archive.org/web/20240530150153/https://www.npa.go.jp/laws/notification/0703sisin.pdf
②警察庁次長「将来を見据えた警察組織の構造改革及び優秀な警察官の確保に向けた取組について(依命通達)」(令和8年4月2日付け警察庁乙官発第6号ほか)
https://www.npa.go.jp/laws/notification/kanbou/kikaku/20260402001_3.pdf
③警察庁長官官房長ほか「将来を見据えた警察組織の構造改革に係る着眼点について(通達)」(令和8年4月2日付け警察庁丙企画発第18号ほか)
https://www.npa.go.jp/laws/notification/kanbou/kikaku/20260402001_4.pdf
④警察庁「「将来を見据えた警察組織の構造改革及び優秀な警察官の確保に向けた指針」の概要」(令和8年4月)
https://www.npa.go.jp/policies/policy/structuralreform/20260402001_2.pdf
⑤警察庁長官官房長「将来を見据えた優秀な警察官の確保に向けた緊急対策プランの策定について(通達)」(令和8年4月9日付け警察庁丙人発第73号ほか)
https://www.npa.go.jp/policies/policy/20260409_5.pdf
⑥警察庁「警察庁の施策を示す通達(長官官房)」
https://www.npa.go.jp/laws/notification/kanbou.html

都道府県警察の例規

①福島県警察「警戒の空白を生じさせないための組織運営について(通達)」(令和5年7月31日付け達(務、生企、地企、刑総、交企、公)第300号)
https://www.police.pref.fukushima.jp/03.tetuduki/-jyouhoukoukai/reiki_int/reiki_honbun/u244RG00002510.html
②福島県警察「警察力最適化推進ワーキンググループの設置について(依命通達)」(令和5年7月31日付け達(務)第302号。令和8年3月17日付け達(務)第158号改正)
https://www.police.pref.fukushima.jp/03.tetuduki/-jyouhoukoukai/reiki_int/reiki_honbun/u244RG00002511.html

統計・白書

①警察庁「令和8年版警察白書」第7章第3節「警察の組織運営」(図表7-24,図表7-25,図表7-26を含む)
https://www.npa.go.jp/publications/whitepaper/r08/pdf/10_dai7sho.pdf
②同資料編「令和7年都道府県別統計資料」(警察官定員は令和8年4月1日現在の各都道府県の条例で定める定員,警察署数は同日現在の数)
https://www.npa.go.jp/publications/whitepaper/r08/pdf/11_shiryo.pdf
③警察庁「令和7年版警察白書」第7章第3節第1項「警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r07/honbun/html/bb7731000.html