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裁判所の令和8年度予算-概算要求,暫定予算,当初予算及び補正予算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象,調査の基準日及び資料の範囲

本記事は,令和8年度の一般会計のうち裁判所所管について,概算要求,暫定予算,当初予算及び補正予算の四つを同じ土俵で並べ,どこに差が生じているかを確認するものである。
調査の基準日は令和8年9月7日であり,同日に財務省の予算書・決算書データベース及び裁判所ウェブサイトで確認できた資料に基づく。
金額は,特に断らない限り千円単位である。

決算は対象外である。
財政法39条は歳入歳出決算を翌年度の11月30日までに会計検査院へ送付すべきものとし,同40条1項は会計検査院の検査を経た決算を翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする。
したがって令和8年度の決算が国会に提出されるのは令和10年の常会以降であり,基準日の時点では執行額を確認できない。

なお本記事は,生成AIを用いて公表資料を突合し,その結果を整理したものである。

2 結論

令和8年度の裁判所所管について,公表資料から次の四点が確認できる。
①概算要求は要求359,169,102千円であり,「重要政策の推進」のための要望5,839,315千円を加えた要求・要望額は365,008,417千円である。
②当初予算は349,473,805千円であり,要求に対して97.3%,要求・要望額に対して95.7%,令和7年度当初予算に対して104.3%である。
③令和8年度には暫定予算があり,その期間は令和8年4月1日から4月11日までの11日間である。
裁判所所管は21,727,136千円である。
④令和8年度補正予算(第1号)に,裁判所所管は計上されていない。

もっとも,②の差を「概算要求が削られた」と評価することはできない。
令和7年度補正予算(第1号)が,令和8年度の概算要求に含まれていた事項を先に措置しているからである。
(目)裁判庁費についていえば,令和7年度補正の追加12,508,863千円と令和8年度当初予算26,200,292千円を合わせると38,709,155千円になり,令和8年度の要求39,402,151千円の98.2%に達する。

この一致は,令和7年度補正と令和8年度当初を一体で措置したとも読めるし,当初予算の額を抑えるために補正へ回したとも読める。
査定の理由を示す文書は公表されていないため,本記事ではどちらか一方に決めない。

第2 四つの数字

1 令和8年度に作られた予算書

令和8年度の一般会計については,当初予算,暫定予算及び補正予算(第1号)の三冊が,財務省の予算書・決算書データベースに掲載されている。
いずれも第221回国会(特別会)に提出されたものである。
これに,令和7年8月に最高裁判所が公表した歳出概算要求書を加えると,四つの数字が並ぶ。

財務省のデータベースにおける資料の符号は,種別と会計区分と号数を組み合わせたものである。
令和8年度の一般会計であれば,当初がDL202611001,補正第1号がDL202621001,暫定がDL202631001となる。
符号の体系と,読み違えやすい点については,予算・決算の数値をどこから取るかで扱っている。

2 四つの数字

(単位・千円)

区分裁判所所管の額当初予算との比
①概算要求(要求)359,169,102102.8%
②概算要求(要求・要望額)365,008,417104.4%
③当初予算349,473,805100%
④暫定予算(4月1日から11日まで)21,727,1366.2%
⑤補正予算(第1号)計上なし

令和7年度当初予算は335,192,439千円である。
最高裁判所が公表した「令和8年度概算要求の概要」は,前年度予算額335,192百万円に対し要求・要望額365,008百万円,比較増減29,816百万円,増減率8.9%と記載している。
「令和8年度予算の概要」は,同じ前年度当初予算額に対し予算額349,474百万円,比較増減14,281百万円,増減率4.3%と記載している。
概要は百万円単位であり,本記事の千円単位の数値と端数において一致しないことがある。

3 「要求額」という欄は三か所にあり,意味が違う

裁判所の予算を資料から追うときに最も間違えやすいのは,「要求額」という見出しが三か所に現れ,三つとも指しているものが違うという点である。
①裁判所ウェブサイトが毎年8月に公表する歳出概算要求書の「概算要求額」欄は,本来の概算要求額である。
②同じく裁判所ウェブサイトの歳出予算各目明細書の「要求額」欄は,政府案の額である。
③財務省の一般会計予算書の「要求額」欄は,成立予算額である。

③がそうなるのは,予算書に綴じられている裁判所所管の書類が,財政法20条2項の「予定経費要求書」だからである。
同項は,各省各庁の長が「第十八条の閣議決定のあつた概算の範囲内で」これを作ると定めている。
閣議決定の後に作る書類であるから,そこに印刷された「要求額」は概算要求額ではない。
③の欄を概算要求額と読むと,充足率が常に100%に見えることになる。

本記事の①は,すべて歳出概算要求書の額である。
概算要求書の様式そのものについては,最高裁判所の概算要求書(説明資料)で扱っている。
単価の積算がどのように書かれているかは,司法研修所の概算要求書単価表に例がある。

第3 概算要求と当初予算の突合

1 項別の突合

歳出概算要求額総表と,一般会計予算のCSVから集計した項別の額を並べると,次のとおりである。

(単位・千円)

令和7年度予算額令和8年度要求額要望額要求・要望額令和8年度当初予算予算÷要求予算÷要求・要望
所管計335,192,439359,169,1025,839,315365,008,417349,473,80597.3%95.7%
(項)最高裁判所83,384,35688,521,1752,088,17490,609,34986,269,74197.5%95.2%
(項)下級裁判所211,141,820210,928,169348,132211,276,301217,940,320103.3%103.2%
(項)検察審査費296,585395,351395,351315,61779.8%79.8%
(項)裁判費26,360,90146,719,40946,719,40932,929,55470.5%70.5%
(項)裁判所施設費14,000,77712,596,9983,403,00916,000,00712,010,57395.3%75.1%
(項)裁判所予備経費8,0008,0008,0008,000100.0%100.0%

歳出概算要求額総表は,要求額を「一般行政経費」と「その他の経費」に分けて示している。
所管計でみると,前年度予算額は一般行政経費272,331,721千円とその他の経費62,860,718千円の計335,192,439千円であり,令和8年度概算要求額は275,176,175千円と83,992,927千円の計359,169,102千円である。
対前年度の比較増減は23,976,663千円と記載されている。

2 差が集中している項

(1) 差の約9割は(項)裁判費にある

所管計の差は,要求・要望額と当初予算額との間で15,534,612千円である。
このうち(項)裁判費の差が13,789,855千円を占めており,割合にすると88.8%である。
差の大部分は一つの項に集中している。

(2) (項)下級裁判所は要求を上回っている

(項)下級裁判所は要求210,928,169千円に対し当初予算217,940,320千円であり,予算が要求を上回っている。
比率は103.3%である。
したがって,裁判所の概算要求が一律に絞られたという形の説明は,資料から成り立たない。

(3) (項)裁判所施設費は要望を含めるかで20ポイント動く

(項)裁判所施設費は,要求額に対しては95.3%であるが,要望を含めると75.1%になる。
要望3,403,009千円の大部分が予算に現れていないためである。
要望枠を分母に入れるかどうかで,同じ項の見え方が20ポイント以上動く。

(4) (項)裁判所予備経費は裁判所法83条2項による

(項)裁判所予備経費は,前年度予算額,要求額及び当初予算額のいずれも8,000千円で動かない。
裁判所法83条2項が「前項の経費中には、予備金を設けることを要する」と定めているためである。

3 要望枠の扱い

「重要政策の推進」のための要望は,通常の要求とは別枠で提出されるものであり,令和8年度は5,839,315千円である。
本記事の項別表では,要望一覧に項の記載があるものを項へ割り付けている。
要望の割付けが確認できない年度については,要求本体の列だけで比較する方がよい。

充足率という語を用いる場合は,分母が要求本体なのか要求・要望額なのかを示す必要がある。
所管計でいえば,前者では97.3%,後者では95.7%となり,1.6ポイント違う。
また,充足率は査定の結果を示す指標ではなく,二つの公表数値の比にすぎない。

第4 暫定予算

1 期間は11日間である

令和8年度一般会計暫定予算の予算総則第2条は,「この暫定予算は、令和8年4月1日から4月11日までの期間に係るものである。」と定めている。
歳出の総額は8,564,101,351千円であり,このうち裁判所所管は21,727,136千円である。
裁判所ウェブサイトにも「令和8年度一般会計歳出暫定予算各目明細書」が掲載されている。

2 目別の配分は日割りではない

裁判所所管の暫定予算は,当初予算の6.22%にあたる。
11日を365日で割ると3.01%であるから,日割りの倍以上である。
目別に見ると,配分は次のようにはっきり分かれる。

当初予算に対する比率該当する目の例
日割りに近い群約3.0%庁費,職員旅費,諸謝金,研修費,裁判資料整備費,各所修繕,証人等旅費,刑事補償金,検察審査員旅費など
約12分の1の群約8.3%職員基本給(最高裁8.3%,下級裁8.4%),休職者給与,短時間勤務職員給与,裁判庁費
より高い群13%から31%児童手当17.0%,基礎年金等国家公務員共済組合負担金16.9%,育児休業手当金等国家公務員共済組合負担金19.8%,修習資金貸与金13.8%,情報処理業務庁費(下級裁)31.3%
計上なし0%超過勤務手当,委員手当,民事裁判発送料,施設整備費

約8.3%という比率は12分の1に近く,職員基本給が11日分ではなく1か月分で計上されていると読める。
もっとも,暫定予算の目別の額をどのように算定するかを定めた資料は確認できていないから,右は数値の分布からの読み方にとどまる。

超過勤務手当,委員手当,民事裁判発送料及び施設整備費が0であることは,暫定予算の性格を示している。
実績に応じて後から支給される手当や,年間を通じて執行する事業費は,11日間の暫定予算には計上されていない。
裁判所の会計事務の全体像については,裁判所の会計執務資料の三部作の解説で扱っている。

第5 補正予算

1 裁判所所管は計上されていない

令和8年度一般会計補正予算(第1号)の科目別内訳を確認したところ,歳出の全55行に,裁判所所管の行は一行もない。
登場する所管は内閣府38行と財務省17行の二つだけであり,38行と17行で55行のすべてが埋まる。

裁判所ウェブサイトの令和8年度予算のページにも,補正予算に関するPDFは掲載されていない。
令和7年度のページには「令和7年度補正予算(第1号)の概要」及び「令和7年度一般会計歳出予算補正(第1号)各目明細書」が掲載されているから,掲載の有無は年度によって異なる。

2 補正の中身

補正第1号のうち金額が動いている行は,次の三つだけである。

(単位・千円)

所管追加額
内閣府物価高騰対応地方創生推進費100,000,000
財務省中東情勢等対応予備費2,500,000,000
財務省予備費513,504,625
3,113,504,625

修正減少額は0である。
この補正は,地方創生推進費と予備費を積み増すためのものであって,各省各庁に事業費を配るものではない。
したがって,裁判所所管が載っていないのは,裁判所だけが対象から外れたからではなく,どの省庁の事業費も計上されていないからである。

3 補正に載らない年は珍しくない

令和2年度から令和8年度までの補正予算10本のうち,裁判所所管が計上されていない冊は3本ある。
令和2年度第1号,令和4年度第1号及び令和8年度第1号である。

冊子の厚さでは判定できない。
令和2年度第1号は281頁あるが本文に「裁判所」の語が一度も現れず,令和4年度第2号は746頁で8頁に現れる。
目録に並んだ所管を確認するほかない。

なお,基準日現在,令和8年度の一般会計補正予算は第1号だけである。
今後の補正で裁判所所管が計上される可能性はある。

第6 「削られた」と書けない理由

1 前年度補正が要求の中身を先に措置している

令和7年度には補正予算(第1号)がある。
追加26,770,066千円,修正減少△570,294千円,差引+26,199,772千円であり,改予算額は361,392,211千円である。
その柱は「裁判手続等のデジタル化等」16,178百万円及び「裁判所の防災・減災対策」4,789百万円であって,令和8年度の概算要求で大きな差が生じた分野と重なっている。

(1) (目)裁判庁費でみた場合

(目)裁判庁費は,令和7年度当初21,300,104千円に補正で12,508,863千円が追加され,補正後は33,808,967千円となっている。
令和7年度補正の追加額と令和8年度当初予算26,200,292千円を合わせると38,709,155千円であり,令和8年度の要求39,402,151千円の98.2%にあたる。

(2) 政策区分でみた場合

政策区分でも同じことが起きている。
令和7年度補正のデジタル化等16,178百万円と令和8年度当初のデジタル化関連17,948百万円を合わせると34,126百万円であり,令和8年度の要求・要望33,685百万円の101.3%にあたる。

もっとも,右の合算は二年度分を足したものであって,単年度の充足率ではない。
二年度分を合算して評価してよいことを示す資料はないから,一つの見方として示すにとどまる。

2 二つの読み方

(1) 一体で措置したという読み方

令和7年度補正と令和8年度当初を一体で措置したという読み方がある。
いわゆる15か月予算の形で措置したと読むものである。

(2) 当初予算の額を抑えたという読み方

当初予算の額を抑えるために補正へ回したという読み方もある。
同種の指摘は国会でも述べられており,那谷屋正義議員は,第186回国会参議院予算委員会第3号(平成26年2月6日)において,「裁判支援機器の整備など平成二十六年度予算の概算要求で要望された事業が補正予算として前倒し計上されている事例が見受けられますが、これは当初予算の歳出を抑制するために補正予算を利用したとしか考えられません」と述べている。
ただしこれは平成25年度補正予算三案に対する反対討論の中で述べられたものであって,平成26年度予算に対するものではない。

(3) どちらとも決められない

二つの読み方は,いずれも同じ事実を説明することができる。
査定の理由を示す文書は公表されていないから,本記事ではどちらか一方に決めない。
最高裁判所事務総局が予算及び定員についてどのような説明をしているかは,全司法労働組合の全国統一要求書に対する最高裁判所事務総局の本音で扱っている。

3 財政法19条の「減額」

財政法19条は,内閣が裁判所の歳出見積を減額した場合には,その詳細を歳入歳出予算に附記しなければならないと定めている。
いわゆる二重予算である。

この「減額」について,財務省主計局次長は,第208回国会参議院法務委員会第6号(令和4年4月14日)において,同条は裁判所の意に反して行政府が減額する場合の規定であり,運用は合意の下に意見調整を図るものである旨を述べている。
そして,令和2年度から令和8年度までの一般会計予算書のうち裁判所所管が計上されている14本,計12,733頁を検索したところ,同条の附記は1件も存在しなかった。

したがって,概算要求額と当初予算額の差を「減額」と表現すると,法律上は別の事態を指すことになる。
本記事では「差がある」と記載している。
この手続の全体像は,裁判所の予算は誰が決めているのかで扱っている。

第7 確認できていないこと

①査定の理由は確認できていない。
どの事項がどのような理由で要求額と異なる額になったのかを示す文書は,公表されていない。

②暫定予算の目別の算定式は確認できていない。
約3.0%と約8.3%という二つの群があることは資料から測定できるが,その算定方法を定めた資料には到達していない。

③令和8年度の補正第2号以降の有無は,基準日現在では確定しない。
基準日において掲載されているのは第1号だけである。

④令和8年度及び令和7年度の決算は,まだ確認できない。
第6の「前倒し」の読み方は,令和7年度決算で目別の執行額を確認すれば,もう一段検証することができる。
令和7年度決算が国会に提出されるのは令和9年の常会以降である。

⑤定員面からの検討は本記事では扱っていない。
予算定員の推移については,裁判所職員の予算定員の推移を参照されたい。

出典

1 法令

裁判所法(昭和22年法律第59号)83条
財政法(昭和22年法律第34号)18条,19条,20条,39条,40条

2 予算書及び予算参考書類

令和8年度一般会計予算(当初) 財務省「予算書・決算書データベース」
令和8年度一般会計暫定予算 同上
令和8年度一般会計補正予算(第1号) 同上
令和7年度一般会計予算(当初) 同上
令和7年度一般会計補正予算(第1号) 同上
令和2年度から令和8年度までの一般会計予算(当初及び補正) 同上

3 最高裁判所が公表した資料

令和8年度概算要求の概要(令和7年8月)
令和8年度一般会計歳出概算要求書等(同)
「重要政策の推進」のための要望一覧(同)
令和8年度予算の概要
令和8年度一般会計歳出予算各目明細書
令和8年度一般会計歳出暫定予算各目明細書
令和7年度補正予算(第1号)の概要
令和7年度一般会計歳出予算補正(第1号)各目明細書

4 国会会議録

第208回国会 参議院法務委員会 第6号(令和4年4月14日)
第186回国会 参議院予算委員会 第3号(平成26年2月6日)

法令は,いずれもe-Gov法令検索で確認した条文本文による。
予算書の金額は,財務省の予算書・決算書データベースから取得したCSV及びPDFにより,千円単位で全行を集計した。
最高裁判所が公表した資料は,裁判所ウェブサイトの令和8年度予算及び令和7年度予算の各ページから取得した。
国会会議録は,国会会議録検索システムで発言番号まで特定して確認した。