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令和8年5月21日以後に提起する民事訴訟では,従来の訴額に応じた手数料に,郵便費用相当額が組み込まれた。
そのため,訴状送達用の郵便切手を別に予納しない代わりに,申立手数料そのものが増える。
計算は,①訴額に応じた部分を累進的に算出し,②郵便費用相当額を加え,③被告が2人以上であれば被告数加算を足す,という三段階で行う。
反訴,請求の変更及び上訴では,このうち②を重ねて加えないなど,別の計算規律がある。
本記事では,第一審の訴え提起,反訴,請求の変更並びに控訴及び上告について,申立手数料の計算方法をまとめて説明する。
Pay-easyによる納付の画面操作は,mintsの手数料をPay-easyで納付する方法を参照されたい。
第1 訴額に応じた部分は累進的に計算する
1 加算単位
民事訴訟費用等に関する法律3条2項及び別表第二の1項イにより,第一審訴訟の手数料のうち訴額に応じた部分は,次の区分で累進的に計算する。
各区分の端数は,所定の単位まで切り上げる。
| 訴額の範囲 | その範囲で加算する手数料 |
|---|---|
| 100万円まで | 10万円までごとに1,000円 |
| 100万円を超え500万円まで | 20万円までごとに1,000円 |
| 500万円を超え1,000万円まで | 50万円までごとに2,000円 |
| 1,000万円を超え10億円まで | 100万円までごとに3,000円 |
| 10億円を超え50億円まで | 500万円までごとに1万円 |
| 50億円を超える部分 | 1,000万円までごとに1万円 |
2 訴額の算定が困難な場合
非財産権上の請求及び財産権上の請求で訴額の算定が極めて困難なものは,同法4条2項により,原則として訴額を160万円とみなす。
複数請求,付帯請求又は一部請求がある事件では別の検討を要するため,単純な早見表だけで確定しない場合がある。
3 mintsの訴額入力欄の単位
mintsの新規申立てフォームでは,訴額の単位は「万円」であり,1万円未満は切り上げる。
例えば,43万2100円なら「44」,100万5000円なら「101」と入力する。
正確な手数料額は,提出後に裁判所から通知される納付情報で確認する。
第2 郵便費用相当額と被告数加算
1 郵便費用相当額は法律上の手数料に組み込まれた固定額である
令和8年5月21日以後の第一審訴訟では,訴額に応じた部分に郵便費用相当額を加算する。
訴えの提起の場合,電子申立てでは1,400円,書面申立てでは2,500円である。
インターネットによる場合の方が低額とされているのは,一般に,インターネットにより訴えの提起等をする場合には,書面による場合よりも必要となる郵便費用が低廉なものとなることが想定されるためである。
この郵便費用相当額は,従前の郵便切手の予納を単にPay-easyへ置き換えたものではなく,法律上の申立手数料へ組み込まれた固定額である。
そのため,対象となる第一審訴訟では訴状送達用の郵便切手を別に予納しないが,別の申立て又は特別な送達等について将来生じ得る費用まで全て含むという意味ではない。
2 被告が2人以上のときの加算
被告が2人以上のときは,2人目以後1人につき2,000円を加える。
第3 第一審の代表的な金額
被告1人の場合について,裁判所の手数料額早見表に掲載された代表的な金額は次のとおりである。
被告が2人以上なら,表の金額へ2人目以後1人につき2,000円を加える。
| 訴額 | 訴額部分 | 電子申立ての合計 | 書面申立ての合計 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 1万円 | 1万1,400円 | 1万2,500円 |
| 160万円 | 1万3,000円 | 1万4,400円 | 1万5,500円 |
| 500万円 | 3万円 | 3万1,400円 | 3万2,500円 |
| 1,000万円 | 5万円 | 5万1,400円 | 5万2,500円 |
| 5,000万円 | 17万円 | 17万1,400円 | 17万2,500円 |
例えば,訴額300万円,被告2人の電子申立てでは,訴額部分2万円,郵便費用相当額1,400円及び被告追加額2,000円の合計は2万3,400円となる。
これは法律の区分に基づく計算例であり,実際に納付する額は裁判所がmintsへ登録した納付情報で確認する。
訴額が1億円を超える高額な訴えは早見表の対象外であり,各裁判所の窓口に個別に照会する必要がある。
第4 反訴及び請求の変更
1 反訴では本訴の額を控除できる場合がある
新法事件の第一審の反訴では,民事訴訟費用等に関する法律別表第二6項により,反訴の訴額について同表1項イで算出した額を用いる。
ただし,本訴と目的を同じくする反訴では,同項ただし書により,本訴の訴額について1項イで算出した額を控除する。
反訴として許されるための本訴との関連性と,手数料控除の条件である目的同一性は別である。
同じ当事者間の請求であることや,本訴と関係することだけで,当然に本訴の額を控除できると判断してはならない。
2 請求の変更は前後の差額を納める
新法事件の第一審で請求を変更する場合,同表5項により,変更後の請求について1項イで算出した額から,変更前の請求について1項イで算出した額を控除する。
請求拡張の追加額は,拡張した金額だけを独立した訴額として計算するものではない。
3 郵便費用相当額を重ねて加えない
通常の訴え提起は別表第二1項イとロの合算額となるが,請求変更の5項と反訴の6項が参照するのは1項イであり,1項ロではない。
したがって,通常の電子的な訴え提起で加算する1,400円等の1項ロの額を,反訴又は請求変更の手数料に改めて加えるものではない。
4 計算例
次の表は,別表第二1項イ・5項・6項に基づく計算例である。
すべて新法事件の第一審とし,表示額が訴額として確定しているものとする。
| 例 | 条件 | 計算 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| ①請求拡張 | 訴額100万円から200万円へ拡張 | 1万5,000円-1万円 | 5,000円 |
| ②反訴・控除なし | 訴額200万円の反訴で,目的同一による控除なし | 200万円の1項イの額 | 1万5,000円 |
| ③反訴・目的同一 | 本訴の訴額100万円と目的を同じくする訴額200万円の反訴 | 1万5,000円-1万円 | 5,000円 |
| ④請求拡張・差額なし | 訴額101万円から110万円へ拡張 | 1万1,000円-1万1,000円 | 0円 |
1項イでは,訴額100万円までの部分は10万円までごとに1,000円,100万円を超え500万円までの部分は20万円までごとに1,000円を加算する。
訴額200万円であれば,100万円までの1万円に,超過する100万円分の5,000円を加え,1万5,000円となる。
訴額101万円と110万円では,いずれも100万円を超える部分が20万円までの1単位に収まるため,算定額は同じ1万1,000円である。
このように,請求額を増やしても追加手数料が生じないことはあるが,請求変更の手続まで不要になるわけではない。
第5 控訴及び上告
1 新法事件では郵便費用相当額を含む額となる
新法事件では,弁護士等がmintsで電子提出する場合の加算額は,控訴が800円,上告及び上告受理申立てが1,100円である。
新法事件を書面で提出することが許される場合の加算額は,控訴が1,900円,上告及び上告受理申立てが2,700円である。
旧法事件では,従来どおり,控訴は第一審手数料の1.5倍,上告及び上告受理申立ては2倍を収入印紙で納付し,郵便費用を別途予納する。
| 事件区分と提出方法 | 控訴 | 上告・上告受理申立て |
|---|---|---|
| 旧法事件 | 第一審手数料の1.5倍+別途郵便費用 | 第一審手数料の2倍+別途郵便費用 |
| 新法事件・電子提出 | 第一審の基礎額の1.5倍+800円 | 第一審の基礎額の2倍+1,100円 |
| 新法事件・適法な紙提出 | 第一審の基礎額の1.5倍+1,900円 | 第一審の基礎額の2倍+2,700円 |
2 上訴の代表的な金額
| 訴額 | 控訴・旧法 | 控訴・新法電子 | 上告等・旧法 | 上告等・新法電子 |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 1,500円 | 2,300円 | 2,000円 | 3,100円 |
| 100万円 | 1万5,000円 | 1万5,800円 | 2万円 | 2万1,100円 |
| 1,000万円 | 7万5,000円 | 7万5,800円 | 10万円 | 10万1,100円 |
3 上告と上告受理申立てを併用する場合
民事訴訟費用等に関する法律3条4項により,上告と上告受理申立てを併用する場合,一方について納めた手数料は,両申立てに共通する利益の範囲で,他方についても納めたものとみなされる。
同じ原判決の同じ部分について上告と上告受理申立てを併用する通常の場合は,二重に全額を納付する扱いではない。
もっとも,条文上は「共通する利益の限度」という限定がある。
不服申立ての範囲が両手続で異なる場合は,自己判断で一件分と決めず,原裁判所が示す納付額を確認する必要がある。
第6 納付方法と不納付の効果
1 原則は現金納付である
新法事件の特定申立ての手数料は,民事訴訟費用等に関する法律8条1項により,原則として現金で納付する。
書面による申立てが認められ,かつ,やむを得ない事由がある場合の収入印紙による納付など,例外の条件は同項ただし書で確認する。
手数料の額が100万円を超える場合は,ペイジーのほか,日本銀行への納付によることもできる。
2 不納付の場合の手続
手数料が納付されない場合,民事訴訟法137条の2により,まず裁判所書記官が相当の期間内に納付するよう命じる。
この処分への異議は告知を受けた日から1週間の不変期間内に行い,納付しなければ裁判長が訴状却下命令をすることになる。
システム障害時に紙で提出したからといって,当然に印紙納付へ切り替わるわけではなく,裁判所の指示を確認する必要がある。
第7 関連記事
①mintsの手数料をPay-easyで納付する方法-金額確認・郵便費用相当額・納付期限・還付
②訴訟手数料の還付―取下げ・過納の場合の金額,申立期限及び異議
③mintsで訴訟を提起する方法
④mintsで反訴・訴えの変更をする方法
⑤mintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法
⑥訴訟費用とは――費目,計算方法,敗訴者負担と回収手続
⑦収入印紙と弁護士業務――受取書,契約書及び訴訟費用における取扱い
訴額の算定が争われた最高裁判例は,訴額の算定に関する最高裁判例で紹介している。
出典・参考資料
①民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)3条・4条・8条・別表第二
②民事訴訟法(平成8年法律第109号)137条の2
③裁判所「手数料額早見表」
④裁判所「民事裁判手続のデジタル化に関する準備の手引」12頁・15頁・16頁
⑤mints「mints操作マニュアル」56頁~58頁