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刑事事件の上告棄却決定に対する異議の申立て(AIリライト)

第1 異議の申立ての対象

1 対象となる上告棄却決定

最高裁判所は,上告趣意書を差出最終日までに提出しなかった場合,上告趣意書が法令上の方式に違反した場合又は上告趣意書に刑訴法所定の上告理由が記載されていない場合,刑事訴訟法414条が準用する同法386条1項により,決定で上告を棄却する。最高裁昭和30年2月23日大法廷決定(昭和30年(す)第47号,刑集9巻2号372頁)は,同法414条及び386条1項3号による上告棄却決定に対し,異議を申し立てることができるとした。

この異議は,最高裁判所に同じ決定の見直しを求める手続であり,上級裁判所に対する不服申立てではない。近年にも,同法386条1項1号により上告趣意書の不提出を理由としてされた上告棄却決定に対する異議が審理されているため,異議の対象を同項3号による棄却決定だけに限定することはできない。他方,刑事訴訟法405条所定の上告理由がないとして判決で上告が棄却された場合は,ここでいう上告棄却「決定」に対する異議の対象ではない。

2 判決訂正申立て及び特別抗告との違い

判決訂正申立ては,最高裁判所の上告審判決に誤りがある場合の制度であり,判決の宣告日から10日以内に申し立てる手続である(刑事訴訟法415条2項)。最高裁昭和30年2月23日大法廷決定は,上告棄却決定に対して判決訂正を申し立てることはできないとした上で,異議の申立てを認めた。

また,最高裁昭和30年10月31日第二小法廷決定(昭和30年(す)第350号,刑集9巻11号2349頁)は,最高裁判所の決定に対して特別抗告をすることはできないとした。このため,「特別抗告」と題する書面を提出しても,その内容から上告棄却決定に対する異議として扱うことができるかが検討されるにとどまる。

第2 3日間の申立期間

1 送達を受けた場合の数え方

上告棄却決定に対する異議の申立期間は,最高裁判例が刑事訴訟法414条,386条2項,385条2項及び即時抗告期間を定める同法422条を準用することにより,3日間である。裁判は,公判廷で宣告される場合を除き,裁判書の謄本を送達して告知される(刑事訴訟規則34条)。期間は告知を受けた日から進行するが,日を単位とする期間は初日を算入しないため,通常は送達日の翌日が第1日となる(刑事訴訟法55条,358条)。例えば,月曜日に上告棄却決定謄本の送達を受けた場合,火曜日が第1日,水曜日が第2日,木曜日が第3日となる。

期間の末日が日曜日,土曜日,国民の祝日に関する法律所定の休日又は1月2日,1月3日若しくは12月29日から12月31日までの日に当たるときは,これを期間に算入しない(刑事訴訟法55条3項)。3日間は72時間という意味ではないので,送達日,末日及び提出時刻を記録で確認する必要がある。

2 被告人と弁護人の送達日が異なる場合

被告人と弁護人に異なる日に上告棄却決定謄本が送達された場合,異議申立期間は被告人本人が送達を受けた日を基準として計算する。最高裁昭和32年5月29日第二小法廷決定(昭和32年(す)第390号,刑集11巻5号1576頁)は,被告人が4月9日に,弁護人が4月11日にそれぞれ謄本の送達を受けた事案で,被告人の送達日を基準とした。したがって,弁護人が後に送達を受けたことを理由として申立期間が延びるとは限らない。被告人が刑事施設にいる場合は,被告人への送達がいつ完了したかを,送達報告書等によって直ちに確認する必要がある。

3 法廷で決定が宣告された場合

上告棄却決定が法廷で宣告された場合は,宣告によって告知がされ,その日から期間が進行する。東京高裁昭和34年2月12日決定(昭和34年(て)第2号,高刑集12巻1号23頁)は,最高裁判所が法廷で上告棄却決定を宣告した事案につき,後日被告人に宣告結果が通知されたとしても,宣告後3日の経過によって決定が確定するとした。送達を受けた日だけで一律に期間を計算するのではなく,決定が書面によって告知されたのか,法廷で宣告されたのかを区別しなければならない。

第3 申立書と申立理由

1 書面を最高裁判所へ提出すること

異議は,上告棄却決定をした最高裁判所に対し,書面で申し立てる。最高裁昭和30年5月24日決定(昭和30年(す)第134号,集刑105号1007頁)は,刑事訴訟法422条及び423条1項を準用し,電報による申立てを同項所定の書面とは認めなかった。申立書には,少なくとも,対象事件,対象となる上告棄却決定,申立ての趣旨及び具体的な申立理由を記載し,提出日を明らかにすべきである。提出方法を選ぶ際は,3日間という極めて短い期間内に最高裁判所への提出が完了するかを確認する必要がある。

2 決定の内容の誤りを具体的に示すこと

最高裁昭和36年7月5日第二小法廷決定(昭和36年(す)第191号,刑集15巻7号1051頁)は,上告棄却決定に対する異議は,決定の内容に誤りがあることを発見した場合に限るとした。したがって,原判決の事実認定や量刑に対する不服を繰り返すだけでは足りず,上告趣意書の提出状況,送達又は告知,弁護人選任・辞任の状況,被告人の生死,未決勾留日数の算入その他,上告棄却決定自体の前提又は内容にどのような誤りがあるかを特定する必要がある。

また,最高裁昭和42年9月25日第一小法廷決定(昭和42年(す)第278号,刑集21巻7号1010頁)は,申立期間内に具体的な異議理由が示されなかったとして申立てを棄却した。まず異議申立ての意思だけを記載し,期間経過後に理由を追完する方法には重大な危険があるため,3日間のうちに具体的な誤りを示す必要がある。

3 短期間で確認すべき事項

申立期間が短いため,次の順に事実と記録を確認するのが実務的である。

  • ① 上告棄却が判決ではなく決定であるか,刑事訴訟法386条1項のどの号による棄却かを確認する。
  • ② 被告人本人への送達日又は法廷での宣告日を確認し,初日不算入と休日の扱いを踏まえて末日を確定する。
  • ③ 上告趣意書の提出日,受付の有無,差出最終日及び補正の状況を確認する。
  • ④ 弁護人の選任・辞任,送達,収容状況その他,棄却決定の前提となった事実に誤りがないかを確認する。
  • ⑤ 申立期間内に提出できる資料だけで,決定のどの部分がなぜ誤っているかを具体的に記載する。

これらを確認しても上告棄却決定自体の誤りを特定できず,上告理由又は原判決への不服を繰り返すにとどまる場合,異議による是正を期待することは困難である。

第4 期間の伸長,申立権の回復及び執行停止

1 期間の伸長

異議申立期間について,判決訂正申立てに関する刑事訴訟法415条3項の期間伸長規定は準用されない。最高裁平成9年5月27日第三小法廷決定(平成9年(す)第113号,刑集51巻5号433頁)は,異議申立期間の経過後にされた期間伸長の申立てを認めなかった。他方,法定期間については,刑事訴訟法56条及び刑事訴訟規則66条による交通通信上の距離に応じた期間伸長が問題となり得るが,期間経過後に遡って伸長を受けられる制度ではないため,伸長の有無を見込んで提出を遅らせるべきではない。

2 申立権の回復

自己又は代理人の責めに帰することができない事由によって期間内に異議を申し立てられなかった場合は,上訴権回復に関する刑事訴訟法362条及び363条が準用される。最高裁昭和57年4月7日第一小法廷決定(昭和57年(す)第19号,刑集36巻4号556頁)は,上告棄却決定に対する異議について,上訴権回復に関する規定の準用があるとした。

回復請求は,障害となる事由がなくなった日から異議申立期間と同じ期間内に行い,異議の申立てを同時にする必要がある。回復が認められるかは,期間を守れなかった原因と,その原因が本人又は代理人の責めに帰することができないかによって判断されるため,原因を裏付ける資料を直ちに確保する必要がある。

3 決定の確定と執行停止

異議を申し立てないまま3日間が経過したときは,上告棄却決定が確定する。期間内に異議が申し立てられた場合,最高裁昭和50年7月10日第一小法廷決定(昭和50年(す)第82号,集刑197号63頁)の補足意見は,即時抗告に関する刑事訴訟法425条を準用し,申立期間内及び異議申立て中は裁判の執行が停止されるとの実務を説明している。

最高裁昭和32年9月20日第二小法廷決定(昭和32年(し)第40号,集刑120号501頁)は,在監者について,異議申立てを棄却する決定の謄本を刑事施設の長が受領したことによって同決定が確定したとした。したがって,確定時点は決定日だけから推測せず,謄本の送達・受領記録によって確認する必要がある。

第5 異議が認められた例と近年の棄却例

1 異議が認められた例

公刊された裁判例には,次のような認容例がある。

  • ① 最高裁昭和33年2月4日決定(昭和33年(す)第34号,集刑123号163頁)は,勾留中の被告人に対する上告趣意書差出最終日の通知が適法でなかったため,上告棄却決定を取り消し,新たに差出最終日を指定した。
  • ② 最高裁昭和42年5月17日決定(昭和42年(す)第94号,刑集21巻4号491頁)は,被告人が上告棄却決定前に死亡していたため,被告人に関する決定部分を取り消し,公訴を棄却した。
  • ③ 最高裁昭和42年12月25日決定(昭和42年(す)第434号,集刑165号561頁)は,上告棄却決定に含まれていた刑法21条の適用と未決勾留日数170日の算入部分を削除した。

これらは,送達又は通知の適法性,被告人の死亡,未決勾留日数の算入という,上告棄却決定の前提又は内容に具体的な誤りがあった事案である。

2 令和4年及び令和5年の棄却例

最高裁令和4年7月20日第三小法廷決定(令和4年(す)第428号,集刑331号1頁)は,上告趣意書の差出最終日に弁護人が辞任し,同日には被告人に弁護人がいなかったとしても,差出最終日までに上告趣意書が提出されなかったことを理由とする上告棄却決定は正当であるとした。最高裁令和5年3月7日第一小法廷決定(令和5年(す)第14号,集刑332号9頁)は,被告人が差出最終日前に自作の上告趣意書を弁護人へ送付していたものの,弁護人が上告棄却決定後に裁判所へ提出した事案で,上告棄却決定に判断遺脱はないとした。

これらの裁判例からは,被告人が書面を作成したことや弁護人に交付したことだけでは足りず,差出最終日までに裁判所へ上告趣意書が提出されたかが重視されることが分かる。

第6 未決勾留日数の本刑算入と上告審の審理期間

1 未決勾留日数の本刑算入

刑事訴訟法495条1項は,上訴の提起期間中の未決勾留日数について,上訴申立て後の日数を除き,全部を本刑に通算すると定めている。同条2項は,上訴申立て後の未決勾留日数について,検察官が上訴したとき,又は検察官以外の者の上訴により上訴審で原判決が破棄されたときに,全部を本刑に通算すると定めている。

したがって,被告人だけが上告し,原判決が破棄されずに上告が棄却された場合,上告申立て後の未決勾留日数が刑事訴訟法495条によって当然に全部通算されるわけではない。この場合には,刑法21条による裁量的な未決勾留日数の算入が問題となるため,刑事訴訟法495条による法定通算と根拠及び対象を区別する必要がある。上告棄却決定の算入日数に計算又は法適用の誤りがある場合は,前記の最高裁昭和42年12月25日決定のように,異議の対象となり得る。

2 令和7年司法統計による審理期間

令和7年司法統計年報刑事事件編第19表によれば,最高裁判所の上告審について,当審受理から終局までの平均審理期間は3.0か月であった。同第77表によれば,同年に最高裁判所で終局した上告事件の総人員は1656人であり,上告審受理から終局までの期間別人員は,1か月以内140人,1か月を超え2か月以内310人,2か月を超え3か月以内830人,3か月を超え6か月以内310人などであった。

同第78表によれば,上告審における勾留総人員892人のうち,上告審の勾留期間が1か月以内の区分は132人,1か月を超え2か月以内は239人,2か月を超え3か月以内は381人,3か月を超え6か月以内は114人であった。したがって,3か月以内の各区分の合計は752人で全体の約84.3%,6か月以内の各区分の合計は866人で約97.1%となる。

これらは終局事件全体又は勾留総人員に関する統計であり,上告棄却決定に対する異議が申し立てられた事件だけの審理期間を示すものではない。第二東京弁護士会の2020年の実務記事は,上告審ではおおむね4か月を超えた部分から刑法21条による算入がされることが多いとの弁護実務上の観察と,審理期間が6か月で80日を算入した事例を紹介している。もっとも,公開された法令,規則又は最高裁判所の文書から,一律4か月という基準は確認できないため,これは公表された制度上の基準ではなく,報告された実務経験として区別すべきである。

第7 関連する手続及び資料

1 再審及び保釈保証金没取決定に関する異議

最高裁昭和31年5月21日大法廷決定(昭和30年(き)第4号,刑集10巻5号717頁)は,確定した上告棄却決定に対する再審請求について,刑事訴訟法436条1項を準用できるとした。また,最高裁判所が上告棄却と同時にした保釈保証金没取決定に対する異議については,刑事訴訟法428条が準用されるとした裁判例がある。これらは,上告棄却決定自体の3日間の異議とは,対象,期間及び要件が異なる別の手続である。

2 関連記事等

第8 出典・参考資料

1 法令・規則

2 裁判例

3 統計・ウェブ資料

4 文献

  • ① 伊丹俊彦・合田悦三編代『逐条実務刑事訴訟法』立花書房,2018年,1167頁~1168頁
  • ② 中山善房・古田佑紀・原田國男・河村博・川上拓一・田野尻猛編『大コンメンタール刑事訴訟法〔第三版〕第9巻』青林書院,2023年,359頁,707頁~708頁