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婚前の株式・投資信託・NISAと財産分与――値上がり,配当,再投資,混在及び立証(AI作成)

婚前から保有していた株式・投資信託を結婚後も持ち続けた場合や,NISA口座で買い増し・配当再投資をした場合,離婚時の財産分与では何が対象になるのでしょうか。

結論からいえば,NISA口座に入っているかどうかだけでは決まりません。銘柄又は取引単位ごとに,①いつ取得したか,②原資は何か,③婚姻中に夫婦の協力による取得・維持・増加があったか,④婚前部分を客観資料で追跡できるかを確認する必要があります。

本記事は,上場株式,公募投資信託及びNISAを中心に,値上がり,配当・分配金,再投資,口座移管及び婚前・婚姻後資金の混在を整理したものです。非上場の自社株式については「経営者の離婚と自社株式の財産分与」を参照してください。

第1 結論――NISAではなく取得時期・原資・寄与・立証で考える

1 判断の順序

株式等の財産分与では,口座の名義又は税制上の区分から結論を出すのではなく,次の順序で確認するのが安全です。

  1. 基準日に何が存在したか――銘柄,口数,現金残高及び未受渡取引を確定します。
  2. いつ,何を原資に取得したか――婚前資金,婚姻中の収入,相続・贈与又は売却代金のどれかを確認します。
  3. 婚姻中の増減を分解する――買増し,売却,配当・分配金,再投資,分割・併合及び口座移管を取引履歴で追います。
  4. 夫婦の協力による維持又は増加があるか――単なる相場変動と,当事者の運用・事業活動等による増加を区別します。
  5. 客観資料で追跡できるか――婚前残高から基準日残高までの連続性を立証できるかを確認します。

2 典型例の整理

場面出発点となる整理主な争点
婚前に自己資金で取得し,婚姻中に同じ銘柄を保有婚前取得部分は特有財産と主張し得る同一性,婚姻中の寄与,評価時点
婚姻中の給与で買い増し買増し部分は夫婦の共有財産となる可能性が高い取引単位ごとの数量・原資
婚姻中に相続・贈与資金で取得特有財産と主張し得る相続・贈与から買付けまでの資金追跡
婚前保有分から配当・分配金を受領元本と収益を分けて検討する受領時期,管理・使用状況,再投資の有無
配当・分配金を自動再投資再投資分を婚前元本と一括しない分配履歴,再投資口数,原資の性質
課税口座からNISA口座へ移した,又は新NISAで買い直した口座区分の変更だけで財産の性質は決まらない売却・再取得の有無,資金の連続性
婚前資金と婚姻中収入を同じ口座で運用特有財産部分を個別に識別できるかが重要混在後の入出金・売買の追跡可能性

この表は一般的な検討の出発点です。個別事件の結論は,夫婦の財産形成の実態,証拠及び裁判所の評価により異なります。

第2 財産分与の法的枠組み

1 婚前財産と婚姻中に自己名義で得た財産

民法762条1項は,夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中に自己の名で得た財産をその者の特有財産としています。他方,同条2項は,夫婦のいずれに属するか明らかでない財産を共有と推定しています。

もっとも,名義が一方だけであることと,離婚時の清算対象にならないことは同じではありません。財産分与では,婚姻中に夫婦の協力によって取得し,又は維持した財産であるかを実質的に検討します。

2 令和8年4月1日施行後の民法768条

令和8年4月1日施行の改正後民法768条は,婚姻中に取得し,又は維持した財産,婚姻中の協力・扶助の状況その他一切の事情を考慮する枠組みを明確にしています。また,夫婦の一方が他方と異なる割合の寄与をしたことが明らかでないときは,寄与の程度を相等しいものとする扱いが明文化され,財産分与の申立期間は原則として離婚から5年になりました。改正概要は法務省資料を参照してください。

ただし,寄与割合を原則2分の1とすることと,婚前の元本まで当然に共有財産とすることは別問題です。先に対象財産と特有財産部分を確定し,その後に寄与割合を検討する必要があります。

3 裁判所の一般的な説明

裁判所の家事事件Q&Aも,婚姻中に夫婦の協力によって得た財産を分ける制度として財産分与を説明しています。婚姻前からの財産,相続又は贈与による財産は,一般には分与対象から除外して検討されます。

また,福井家庭裁判所の「財産一覧表作成上の注意事項」は,実務上の資料作成例として,原則的な財産存在の基準時,評価時点,株式の評価資料,特有財産を主張する側の資料提出及び混在財産の特定方法を具体的に示しています。これは全国一律の裁判規範そのものではなく,裁判所が当事者に求める整理と証拠の粒度を知るための公的な実務資料です。

第3 婚前株式・投資信託の値上がり

1 婚前元本と評価差額を分けて考える

婚前に自己資金で取得した株式等は,まず特有財産として整理します。その後の値上がりについては,単なる市場価格の変動なのか,婚姻中の夫婦の協力又は一方の具体的な活動によって維持・増加したのかを分けて検討します。

市場全体の上昇等による受動的な値上がりは,婚前財産の価値変動として扱う方向の主張が考えられます。他方,一方配偶者の継続的な運用行為,事業経営又は他方配偶者による生活・家事面での具体的な支えが資産の維持・増加に寄与したと認められる事案では,増加部分の全部又は一部を財産分与で考慮すべきとの争いが生じます。

「婚前に買ったから値上がり分も常に全額対象外」又は「婚姻中に値上がりしたから差額は常に2分の1」という一律の処理は避けるべきです。

2 数量の同一性と評価時点

婚前の100株が,株式分割によって婚姻中に200株になっただけであれば,数量が変わっても取得の由来を追跡できます。しかし,同一銘柄を何度も売買し,婚姻中の資金で買い増し,さらに一部売却している場合には,「残っている株のどこまでが婚前部分か」を取引履歴に基づいて説明する必要があります。

財産の存在を確定する基準時と,金額を算定する評価時点は区別されます。株式等は相場が動くため,基準日の数量と評価時点の単価を明示し,計算日を固定することが重要です。

第4 配当・分配金・再投資とNISA

1 元本,収益及び使途を分ける

婚前保有株式から婚姻中に生じた配当,投資信託の普通分配金,売却益及び含み益は,経済的にも証拠上も別のものです。配当等が証券口座の現金残高として残っているのか,家計に費消されたのか,再投資されたのかを確認します。

特に,配当等の性質については,元本が特有財産であることだけから機械的に結論を出さず,受領時期,管理方法,夫婦の合意・生活実態及びその後の使途を含めて個別に主張立証するのが安全です。

2 再投資は新たな取得として取引単位を追う

自動再投資型の投資信託や配当再投資を利用している場合,婚前保有口数と婚姻中に再投資で取得した口数を分けます。取引報告書により,分配日,分配額,税引額,買付日,買付単価及び取得口数を一覧化すると,元本と再投資部分の議論がしやすくなります。

3 NISAは税制上の口座であって財産分与の分類ではない

金融庁のNISA説明のとおり,NISAは投資による利益を非課税とするための制度です。NISA口座にあるという事実だけで,その金融商品が特有財産になるわけでも,共有財産になるわけでもありません。

婚前資金で取得した旧NISAの商品,婚姻中の給与で新NISAに買い付けた商品,相続資金で取得した商品などを分け,取得日と原資を確認します。旧制度から新制度への移行,課税口座での売却後のNISA買付け等がある場合は,制度名ではなく資金の流れを追います。

第5 混在,移管及び口座変更

1 同じ口座に入っていても全部が同じ性質になるとは限らない

婚前資金と婚姻中の収入が一つの証券口座に入っていても,直ちに全額が共有財産又は特有財産になるわけではありません。問題は,入金と各買付けとの対応関係を客観資料で特定できるかです。

入出金を繰り返して対応関係が分からなくなった場合,特有財産部分の立証が難しくなります。総額から婚前残高を単純に差し引くだけでは,途中の損益,費消及び銘柄入替えを説明できないことがあります。

2 証券会社の変更や口座移管

証券会社を変更して株式等を移管した場合,移管だけで取得時期又は原資が変わるわけではありません。ただし,旧口座の残高証明,移管依頼書及び新口座の受入記録がなければ,同一性の立証が困難になります。

いったん売却して現金化し,別口座で買い直した場合は,売却代金の入金から再取得代金の出金までを預金履歴も含めてつなぐ必要があります。

第6 裁判例からみる特有財産の立証

1 東京高裁令和5年9月20日判決

東京高裁令和5年9月20日判決(令和2年(ネ)第1173号・第2414号,判例秘書L07820385)は,預金等の特有財産性が争われた事案で,婚前のモデル収入や親族からの贈与を原資とするとの主張について,客観的な裏付けや資金移動の合理的な説明が乏しいことなどを理由に採用しませんでした。

この判決は婚前の上場株式又はNISAの値上がりを直接判断したものではありません。しかし,特有財産を主張するなら,金額の大きさに見合う客観資料と,婚前から基準日までの合理的な資金経路が必要であるという立証上の教訓があります。

2 東京高裁令和4年3月25日決定

東京高裁令和4年3月25日決定(令和3年(ラ)第2856号,判例タイムズ1510号200頁,判例秘書L07720315)は,相続財産を原資とする預金や株式等が問題となった財産分与事件です。同決定は,基準日に存在する財産のうち特有財産部分を特定できないときでも,多額の相続財産を得た事実が民法768条の「一切の事情」として考慮され得るとしました。他方,主張された株式等については,相続した事実やその後の資金追跡を示す十分な証拠がない点も問題になりました。

この決定も婚前NISAを直接扱ったものではありません。直接の射程は相続財産ですが,証拠が不十分な場合に「特有財産として全額控除すること」と「財産分与額を決める事情として考慮すること」が別の問題になり得る点で参考になります。

3 判例の射程を広げすぎない

「婚前株式の市場値上がり分を常にどう扱うか」又は「NISA口座の配当再投資分を一律にどう分類するか」を直接示した最高裁判例は,本記事の確認範囲では確認できていません。上記裁判例は,特有財産の立証,資金追跡及び考慮事情に関する範囲で参照すべきです。

婚姻中の協力によって特有財産が維持・増加した部分を財産分与で考慮し得るという裁判例・裁決例については,「離婚時の財産分与と税金」も参照してください。

第7 依頼者から集める資料

少なくとも,次の資料を時系列で集めます。保存期間の経過により証券会社から取得できなくなることがあるため,早期の確保が重要です。

  • 婚姻日,別居日及び離婚日又は口頭弁論終結日に近い各時点の残高証明書
  • 婚前から現在までの取引履歴,取引報告書及び年間取引報告書
  • 銘柄別の取得日,取得単価,取得口数及び取得価額が分かる資料
  • 証券口座へ入出金した銀行口座の取引履歴
  • 配当・分配金,源泉徴収及び再投資の履歴
  • 株式分割,併合,合併,株式交換及び銘柄変更の通知
  • 証券会社間の移管依頼書,移管明細及び受入記録
  • 相続であれば遺産分割協議書,遺言書,遺産目録及び被相続人口座からの移動履歴
  • 贈与であれば贈与契約書,贈与税申告書及び送金記録
  • 婚姻中の買増し原資,運用方針及び夫婦の役割分担が分かる資料

第8 主張立証と計算表の作り方

1 銘柄別・取引単位別に追跡する

財産一覧表には証券口座の合計額だけを書くのではなく,別紙で銘柄別・取引単位別の計算表を作ります。最低限,次の列を設けます。

  • 取引日
  • 銘柄・口座区分
  • 取引種別(買付け,売却,配当,再投資,移管等)
  • 数量・単価・金額
  • 原資口座
  • 婚前・婚姻中・相続・贈与の別
  • 対応する証拠番号と頁
  • 基準日数量と評価日単価

2 事実,法的評価及び推計を分ける

「婚姻日に100株を保有していた」は残高報告書で確認する事実,「その100株は特有財産である」は法的評価,「古い履歴がないため現在株数の60%が婚前部分と推計される」は推計です。三つを同じ表現で断定せず,証拠がない箇所と推計方法を明示します。

3 相手方の反論も先に点検する

相手方からは,婚姻中の買増し,生活費からの入金,配当再投資,頻繁な売買による同一性の喪失,他方配偶者の寄与,婚前資料の欠落等が指摘されます。自分に有利な期首残高だけでなく,途中の減少・費消を含む全取引を確認する必要があります。

第9 婚姻費用との違い

財産分与で株式の元本が特有財産と判断されることと,婚姻費用を決める際に多額の金融資産,継続的な配当又は実現益を考慮するかは別問題です。民法760条は,夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮するものとしています。

もっとも,保有資産総額を機械的に架空の年収へ換算することも,確定申告上の所得が低いという理由だけで資産・投資収入を無視することも適切ではありません。詳細は「婚姻費用算定表の結果がおかしいとき」を参照してください。

第10 関連記事

第11 出典と確認範囲

上記二つの裁判例は判例秘書の判決全文で確認しました。ただし,いずれも婚前のNISA口座における市場値上がり又は配当再投資を直接判断したものではありません。本記事では,裁判例が直接示す立証上の判断と,株式・投資信託への実務上の当てはめを区別して記載しています。

※本記事の作成には生成AIを利用し,法令,裁判所・法務省・金融庁の公表資料及び判例秘書収録の判決全文に照らして内容を点検しています。