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Teamsチャットは行政文書か-情報公開請求後の保存・削除,eDiscovery及び監査ログ(AI作成)

行政機関の職員がMicrosoft Teamsで交わしたチャットは,画面上では電子メールよりも一時的な連絡に見えることがあります。しかし,記録の法的な性質は,使用したアプリの名称や画面の見え方ではなく,職務上作成又は取得されたか,組織的に利用されたか,行政機関が保有しているかによって決まります。

また,Teamsには,利用者が見るチャット,コンプライアンス目的のコピー,eDiscoveryによる検索,監査ログなど複数の仕組みがあります。そのため,「利用者の画面から消えた」,「管理者なら検索できる」,「無期限に保存される」という三つの命題を分けて検討する必要があります。

本記事は,令和8年9月時点の法令,内閣府及びMicrosoftの公表資料並びに総務省のチャットをめぐる報道に基づき,確認できた事項と確認できない事項を区別して整理するものです。

第1 結論

1 行政機関のTeamsチャットは,職員が職務上作成又は取得し,組織的に用いるものとして行政機関が保有している場合,公文書管理法及び行政機関情報公開法上の行政文書に該当し得ます。

2 Teamsの「チームのアーカイブ」は,チーム及びそのチャネルを読み取り中心の状態にする機能です。1対1又はグループのチャットについて,すべての内容を無期限に保存する一般的な「アーカイブ機能」と同一ではありません。

3 利用者がメッセージを削除し,Teamsの画面から表示されなくなっても,保持ポリシー又はホールドが適用されていれば,コンプライアンス目的のコピーがeDiscoveryで検索できることがあります。他方,保存期間の満了後に完全削除される設定もあり得るため,すべてのチャットが当然に無期限保存されるわけではありません。

4 行政機関情報公開法4条の開示請求があった行政文書ファイル等は,公文書管理法施行令9条1項4号により,開示又は不開示決定の日の翌日から起算して1年間が経過する日まで保存する必要があります。

5 あるチャットが行政文書であり,開示請求時に存在していたとしても,その後の削除が直ちに犯罪になるとは限りません。公文書管理法上の義務違反,服務・懲戒上の問題,情報公開手続の違法及び刑法258条の公用文書等毀棄罪は,それぞれ要件を分けて検討する必要があります。

第2 Teamsチャットが行政文書となる場合

1 行政文書の定義

公文書管理法2条4項及び行政機関情報公開法2条2項は,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録であって,職員が組織的に用いるものとして行政機関が保有しているものを行政文書としています。

したがって,紙の決裁文書だけが行政文書となるわけではありません。チャットの本文,発信者名,発信日時,添付ファイルその他の電磁的記録も,具体的な作成・利用・保存状況によって行政文書に該当し得ます。

2 内閣府公文書管理委員会が示した整理

内閣府公文書管理委員会の第102回会合では,Teamsを例とするチャットツールが取り上げられました。内閣府担当者は,チャット上のメッセージ等も,業務上作成・取得され,組織的に用いられ,保有されているという行政文書の定義に当てはめれば,行政文書に当たる可能性があると説明しています。

同会合の資料は,1年以上保存すべき情報をTeams外の文書・フォルダへ出力する方法と,Teams自体を業務システム又は常用の行政文書ファイルとして管理する方法を例示しています。もっとも,これはすべてのTeamsチャットが常用又は無期限保存になるという意味ではありません。個々の記録の内容,保存期間表及び実際の管理方法を確認する必要があります。

3 業務システム内のデータに関する令和7年通知

内閣府大臣官房公文書管理課長の令和7年2月14日通知「業務システムと公文書管理のルールについて」は,行政機関が業務システムを利用して作成又は取得したデータは,原則として行政文書に該当するとしています。同通知は,データの整理,保存,所在把握,保存期間の延長,移管又は廃棄をシステムの構築・運用段階から考慮するよう求めています。

クラウド又は外部事業者のシステムを利用していることだけで,行政機関の文書管理責任がなくなるわけではありません。他方,Microsoft 365の一般的な機能が存在するというだけで,個別の行政機関がその機能を契約し,有効に設定し,対象データを現に検索できると推認することもできません。

第3 Teams上の記録を四つの層に分ける

1 利用者が見るメッセージ

第1は,Teamsアプリの利用者画面に表示されるメッセージです。利用者による削除,チャットの非表示又は保持ポリシーによる削除によって,画面から見えなくなることがあります。

1対1又はグループチャットの「非表示」は,会話の履歴を直ちに削除するものではありません。Microsoftの利用者向け説明では,新たな投稿又は検索によって再び表示できる場合があるとされています。

2 コンプライアンス目的のコピー

Microsoftの説明によれば,Teamsチャットのデータには,利用者がアクセスするコピーとは別に,コンプライアンス目的で使用されるコピーがあります。保持ポリシーの対象となるチャットのデータは,Exchange Onlineのメールボックス内の非表示フォルダなどに保存され,コンプライアンス担当者がeDiscoveryで検索できる場合があります。

添付ファイルは,チャット本文と同じ保持ポリシーで管理されるとは限りません。ファイルの保存先となるOneDrive又はSharePointの保持設定も別に確認する必要があります。

3 eDiscoveryによる検索

eDiscoveryは,訴訟,調査又はコンプライアンス対応のために,Microsoft 365内のデータを検索・保全・出力する仕組みです。1対1及びグループチャットでは参加者のメールボックス,標準チャネルでは親チームに対応するメールボックスなど,チャットの種類によって検索対象が異なります。

したがって,通常画面の検索で見つからなかったことだけから,eDiscoveryでも検索不能であるとはいえません。反対に,Microsoftの一般仕様としてeDiscoveryが用意されていることだけから,対象組織に必要なライセンス,権限及び保存データが存在すると断定することもできません。

4 監査ログ

監査ログは,メッセージ本文そのものではなく,誰がいつどのような操作をしたかを検証するための記録です。監査対象となる操作,既定の保存期間及び長期保存の可否は,Microsoft 365の契約及び監査ログ保持ポリシーによって異なります。

Microsoftの公表資料では,Audit Standardの監査記録は原則として180日,E5等の一定のライセンスがある場合の一部の監査記録は既定で1年とされ,追加ライセンス及び保持ポリシーによってより長期間の保存が可能とされています。この期間はTeamsチャット本文の保持期間とは別のものです。

第4 アーカイブ,保持,削除及び監査を混同しない

1 チームのアーカイブ

Microsoftが説明する「チームのアーカイブ」は,利用を終えたチームの活動を停止し,標準チャネル,プライベートチャネル,ファイル等を引き続き閲覧できるようにする機能です。これは,すべての1対1又はグループチャットを無期限に保存する機能の説明ではありません。

2 保持ポリシー

Teamsチャットの保持ポリシーには,所定期間保持した後に削除するもの,保持だけを行うもの,所定期間経過後の削除だけを行うものがあります。保持期間中に利用者が削除したメッセージは,画面に表示されなくなっても,保持領域で検索できることがあります。

保持のみのポリシーを無期限に設定した場合は保存が継続しますが,終期を設定した場合は,その経過後に完全削除され得ます。「無期限保存」は設定可能な選択肢の一つであり,全組織に当然に適用される既定の事実ではありません。

3 削除又は消去の意味

調査では,次の状態を区別する必要があります。

  • 利用者画面から見えない状態
  • 利用者用コピーが削除された状態
  • コンプライアンス用コピーが保持されている状態
  • eDiscoveryの検索対象からも完全に削除された状態
  • 監査ログだけが残っている状態

Microsoftは,利用者用コピーとコンプライアンス用コピーが別に存在し,削除方法によって消えるコピーが異なると説明しています。そのため,「削除した」という説明だけでは,どの記録がどの層から消えたのかを確定できません。

第5 情報公開請求後の保存期間

1 公文書管理法施行令9条1項4号

行政機関情報公開法4条の開示請求があった行政文書ファイル等について,公文書管理法施行令9条1項4号は,開示又は不開示決定の日の翌日から起算して1年間が経過する日まで保存することを求めています。

これは,政府のすべてのチャットを作成時から最低1年間保存するという規定ではありません。開示請求の対象となった行政文書について,決定後の不服申立て又は訴訟等に備えるために保存期間を延長する規定です。

2 業務システムに自動削除機能がある場合

業務システム内のデータにも保存期間の延長規定が適用されます。令和7年通知は,一部のデータだけを保存する必要がある場合,対象データを複製して別の行政文書ファイルにまとめる方法などを示し,システム構築前から延長方法を検討する必要があるとしています。

したがって,システムの既定設定又は自動削除を理由として,保存義務のある対象データをそのまま消失させてよいことにはなりません。ただし,実際にどの機能が利用でき,誰が設定でき,どの時点で削除が実行されたかは,個別のログ及び契約内容によって確認する必要があります。

第6 総務省のTeamsチャットをめぐる報道

1 報道で確認できる内容

朝日新聞は,日本郵便の郵便物の放棄・隠匿事案をめぐる情報公開請求への対応について,総務省職員のチャットに,特例的な期限延長によって関心が薄れるのを待つ趣旨の投稿などがあったと報じています。

また,同紙は,別の開示請求後にもチャットの存在を確認したものの,当該チャット及び添付ファイルが開示されず,総務省が「適時に削除した」旨を説明したと報じています。

2 今回確認できなかった一次資料

本記事の作成時点では,次の資料を確認できていません。

  • 問題となったチャットの全記録及び添付ファイル
  • 開示請求書,対象文書の特定経過及び開示・不開示決定書の全体
  • 総務省に適用されていたTeams保持ポリシー及びその変更履歴
  • 総務省のMicrosoft 365の契約ライセンス及び監査ログ保持期間
  • eDiscoveryの検索結果,削除操作の監査ログ及び実行者の権限
  • 対象業務についての標準文書保存期間基準及び廃棄記録

したがって,総務省のチャットがどの技術的な層に残っているか,誰がどの操作をしたか,コンプライアンス用コピーまで削除されたかは,報道とMicrosoftの一般仕様だけでは確定できません。

第7 削除の違法性を段階別に検討する

1 公文書管理法上の問題

対象チャットが行政文書であり,保存期間中又は施行令9条による延長期間中に削除された場合,公文書管理法及び行政文書管理規則との関係が問題になります。保存期間満了後の通常の廃棄と,保存期間中の削除又は誤廃棄は区別する必要があります。

2 情報公開手続上の問題

開示請求時に存在した対象文書がその後失われた場合,対象文書の特定及び探索が適切であったか,保存期間の延長が行われたか,不存在を理由とする不開示決定の前提が正しいかが問題になります。

過去に文書が存在したことだけで,不開示決定時にも行政機関が保有していたと直ちに認定されるわけではありません。しかし,文書の内容・性質,作成又は取得の経緯,経過期間,保存体制,通常の廃棄手続,バックアップ又は保持領域の有無などを総合して保有の有無が判断されます。

3 服務・懲戒上の問題

故意又は重大な過失による不適切な文書管理は,行政機関の規則及び人事院の懲戒処分の指針との関係でも問題となり得ます。公文書管理上の不適切な取扱いがあったことと,刑事犯罪が成立することは同じではありません。

4 公用文書等毀棄罪

刑法258条は,公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者を処罰対象としています。

もっとも,特定のチャット削除について同罪が成立すると判断するためには,対象記録が「公務所の用に供する」電磁的記録であること,刑法上の毀棄に当たる行為があったこと,故意,実行者及び指示系統などを具体的証拠により確認する必要があります。公文書管理法上の行政文書に該当すること又は情報公開請求後に画面から消えたことだけで,直ちに同罪の成立を断定することはできません。

第8 情報公開請求及び事後検証で確認すべき資料

Teamsチャットに関する開示請求又は事後検証では,チャット本文だけでなく,次の資料を分けて特定することが有用です。

  1. 対象期間,参加者,チャット又はチャネル名を特定したメッセージ本文
  2. 編集前の本文,削除済みメッセージ及び添付ファイル
  3. OneDrive又はSharePoint上の添付ファイル及び版履歴
  4. Teamsチャット及びチャネルメッセージの保持ポリシー
  5. 保持ポリシーの設定・変更・適用対象を示す記録
  6. eDiscoveryの検索条件,対象メールボックス,検索結果及び出力記録
  7. メッセージ削除,保持設定変更その他の操作に関する監査ログ
  8. 操作を実行できる管理者権限及びその付与・変更履歴
  9. Microsoft 365及びPurviewの契約ライセンス
  10. 行政文書管理規則,標準文書保存期間基準及び廃棄記録
  11. 開示請求受付後に保存期間を延長し,又は対象データを複製保存した記録

「チャットが存在しない」と回答された場合も,通常のTeams画面だけを検索したのか,eDiscovery及び保持領域まで検索したのか,添付ファイルの保存先を確認したのかを分けて確認する必要があります。

第9 一次資料,報道,推論及び未確認事項の区別

一次資料で確認できる事項は,チャットも行政文書に該当し得ること,業務システム内のデータが原則として行政文書になること,開示請求後の保存期間延長,Teamsの保持・eDiscovery・監査ログの一般仕様です。

報道に基づく事項は,総務省のチャットの具体的内容,開示請求及び削除をめぐる時系列並びに総務省関係者の説明です。

合理的な推論としては,通常画面から見つからない場合でも保持領域,参加者側のコピー,添付ファイル又は監査ログが残る可能性があり,これらを調査しないまま完全削除と結論付けることはできないという点があります。

未確認事項は,総務省テナントの具体的な保持・監査設定,ライセンス,検索結果及び削除実行者です。本件に直接対応して違法性又は犯罪成立を認定した裁判例も確認できていません。

第10 関連記事

出典

法令及び政府資料

Microsoftの資料

総務省事案に関する報道

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別事案について違法性又は犯罪の成立を断定するものではありません。