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取適法の返品・やり直しと保証期間―6か月・1年・顧客保証の違い(AI作成)

第1 6か月と1年は何の期間か

製造委託の契約書に6か月又は1年の保証期間が書かれていても,その期間だけで返品,無償修補,代金減額及び損害賠償の可否を一括して判断することはできない。
取適法上の返品・やり直しの制限,民法・商法の通知等の期間,契約で合意した責任期間及び消滅時効は,対象と起算点が異なる。

本記事は令和8年9月10日現在の法令及び公正取引委員会の公表資料に基づき,取適法の適用を受ける製造委託を中心に説明する。
以下でいう受領は,単に発注者が検収合格を通知した日を指すものではない。
取適法の適用範囲は,取適法に関するメモ書きを参照されたい。

第2 請求する対応を先に特定する

求める対応主に確認する取適法の規定期間以外の重要事項
納入された物を受け取らない5条1項1号の受領拒否受注者に責任のある理由があるか
受領済みの物を引き取らせる5条1項4号の返品検査の実施・委任,不適合,返す時期
修補・再製作等をさせる5条2項3号のやり直し仕様との相違,責任原因,追加費用の負担
代金から差し引く5条1項3号の減額等受注者の責任,控除額,算定根拠
損害賠償・補償を請求する契約・民法等と取適法の関係義務違反,帰責事由,損害,因果関係,責任制限

上表の根拠は,取適法5条及び運用基準第4である。
同じ品質クレームでも,どの対応を求めているかによって検討が変わる。
名称を損害賠償に変えるだけで,実質的な代金減額や不当な費用転嫁が適法になるわけではない。

第3 返品は検査方法と不適合の発見可能性で分ける

1 受注者に責任がない返品はできない

取適法5条1項4号は,受注者に責任のない受領後の返品を禁止する。
販売不振,発注者の顧客の都合又は在庫過多だけを理由として,合意した仕様どおりの製品を返すことはできない。
仕様が明示されていない,検査基準が不明確である,検査基準を後から恣意的に厳しくしたという場合も,受注者の不適合を当然の前提にできない。

2 通常の検査で分かる不適合と抜取検査

明示された委託内容と異なる等の理由による返品は,原則として受領後速やかに行う必要がある。
継続的な取引でロット単位の抜取検査を行う場合には,あらかじめ引取り条件を合意・明示し,個別発注と関連付けた上で,受領後の最初の代金支払時までに引き取らせる取扱いがある。
抜取検査というだけで,全ての納品物について長期間の返品が認められるわけではない(運用基準第4の4⑵)。

3 直ちに発見できない不適合と6か月の制限

直ちに発見できない不適合でも,受領後6か月を経過した返品は認められない。
ただし,受注者の給付を使用した発注者の製品について,一般消費者に6か月を超える保証期間を定めている場合は,その保証期間に応じて最長1年となる。
これは返品に関する取扱いであり,1年を超える消費者保証を付ければ返品可能期間も無制限に延びるという制度ではない。

検査を受注者に文書で明確に委任した場合でも,当該検査に明らかな過失がある給付について受領後6か月を経過すると,その理由による返品は認められない。
また,検査を省略した場合や,自ら検査せず受注者にも文書で委任していない場合には,不適合を理由とする返品は認められない(運用基準第4の4⑶)。

4 通知した時期と実際に返品する時期を区別する

運用基準は,給付を引き取らせることが認められる範囲を定めている。
したがって,6か月以内にクレームを通知したことだけを理由に,いつまでも後日に返品できると扱わない。
不適合の発見日,通知日,対象数量及び実際の引取り時期をそれぞれ記録し,期限内にどの対応を完了させる必要があるかを確認する。

第4 無償のやり直しと1年を超える保証

1 不適合の原因と追加費用を確認する

受注者に責任がないのに,受領後に追加作業をさせ,その利益を不当に害することは,取適法5条2項3号により禁止される。
発注者が了承した仕様を後から変更する場合や,説明不足・曖昧な指示によって再製作が必要となった場合には,追加作業の範囲と費用を確認しなければならない。
受注者に責任がある場合でも,明示された委託内容との相違,検査基準及び期間を検討する(運用基準第4の8)。

2 直ちに発見できない不適合の原則と例外

直ちに発見できない不適合について,受領後1年を経過した場合には,発注者が費用の全額を負担せずにやり直しを求めることは原則として認められない。
例外は,発注者の保証期間が1年を超え,発注者と受注者との間でもそれに応じた保証期間を定めている場合である。
この例外は,返品の例外のように一般消費者への保証だけを対象として書かれているものではない。

公取委Q&Aは,次の二つを区別している。
① 顧客への保証が1年なのに,受注者とだけ3年の保証を合意しても,受領後1年を超えて費用全額を負担せずにやり直しをさせることは違反となる。
② 最終顧客への保証が5年で,受注者とも事前に受領から5年の保証を定めていれば,その期間内に直ちに発見できない不適合が判明した場合の無償のやり直しは,不当なやり直しに当たらないとされる(Q126、127)。

この取扱いは,取適法が全ての製品について1年間の保証を義務付けるという意味ではない。
契約上の保証範囲,期間及び責任制限も別に確認する必要がある。

第5 民法・商法・契約の期間と並べて読む

制度主な期間・起算点確認する点
民法566条の売買種類・品質の不適合を知った時から1年以内の通知引渡時の売主の悪意・重過失の例外。数量不適合と区別
民法637条の請負種類・品質の不適合を知った時から1年以内の通知引渡し又は仕事終了時の請負人の悪意・重過失の例外
商法526条の商人間売買受領後遅滞ない検査,発見後直ちの通知。直ちに発見できない種類・品質不適合は6か月以内の発見売主の悪意の例外と,契約上の特約の有無
契約上の保証条項契約が定める受領,検収,使用開始等からの期間通知期限か,保証対象期間か,請求期限か
民法166条の消滅時効原則として,権利行使できることを知った時から5年,権利行使できる時から10年個別の特則,時効の完成猶予・更新等

法令本文は,民法及び商法による。
この表は各制度の基本構造の比較であり,全ての取引に全ての期間が同じ形で適用されるわけではない。
売買か請負か,商人間売買か,特約があるかを先に確かめる必要がある。

例えば,商法上の6か月は,直ちに発見できない種類・品質の不適合を発見した場合の規律であり,取適法上の返品制限と同じ条文ではない。
また,民法上の1年以内の通知をしたことから,取適法に反する無償やり直しを求めてよいとの結論は出ない。
通知,請求,時効対策及び実際の返品・修補を別々に管理することが重要である。

第6 契約審査とクレーム対応で使う確認表

確認事項具体的に残す内容
対象取引注文番号,発注日,仕様・図面の版,対象製品・数量
起算点実際の受領日,検査日,検収通知日
不適合何がどの仕様と違うか,いつ発見したか,写真・検査数値
原因設計,製造,材料,組合せ,保管・使用等のどこに原因があるか
検査自社検査,抜取検査,受注者への文書による委任,省略の有無
顧客保証対象製品,期間,起算点,受注者との事前合意
求める対応返品,修補,代替品,減額,賠償のどれか
金額と期限費目,算定根拠,通知・実施予定日,重複請求の有無

受注者からの初期回答は,直ちに全面的な責任を認める内容にせず,対象・仕様・不適合と必要な対応を確認する内容にするとよい。
例えば「対象ロット,検査結果,不適合の発見日及びご希望の対応をお知らせください。原因と契約条件を確認し,対応方法と費用負担を協議します」と記載する方法がある。
これは本記事の実務提案であり,安全上必要な応急対応や証拠保全を先送りするための文案ではない。

第7 返品できないことと全ての責任が消えることは異なる

取適法上の返品又は無償やり直しが制限されることから,契約上の全ての責任が当然に消えるとはいえない。
他方,契約に補償条項があることを理由として,禁止される負担を別名目で受注者に負わせることも避ける必要がある。
損害賠償等の請求については,契約の解釈,民法上の要件,期間及び取適法上の実質的な評価を併せて検討する。

保証条項と一般賠償・PL・相殺条項の接続は,製造委託の取引基本契約書を受注者側から審査するポイントで説明している。

第8 出典

取適法(e-Gov)5条。
公正取引委員会・取適法運用基準第4の1,3,4,8。
公正取引委員会・取適法Q&AQ126,127。
民法(e-Gov)166条,415条,562条~566条,636条,637条。
商法(e-Gov)526条。