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派遣先が確認する労働者派遣契約書のチェックポイント-基本契約,個別契約,期間満了,中途解約及び直接雇用

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

本記事は,労働者派遣を受け入れる企業が,派遣元から提示された基本契約及び個別契約を確認する際の実務上のチェックポイントを説明するものである。
令和8年9月10日現在の労働者派遣法,同法施行規則,厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の令和8年7月31日適用版及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」を基礎とする。
厚生労働省は令和8年10月1日適用版の業務取扱要領も公表しているため,同日以後に契約を締結又は更新する場合は,適用版を改めて確認する必要がある。

2 結論

派遣先が確認すべき「労働者派遣契約書」は一通ではない。
継続取引の共通条件を定める基本契約と,具体的な業務,責任の程度,就業場所,組織単位,派遣期間及び就業時間等を定める個別契約を分け,両者の優先関係及び変更方法まで確認する必要がある。

契約開始時だけでなく,期間満了前,中途解約を検討するとき及び派遣労働者の直接雇用を検討するときにも,読み直すべき条項が異なる。
特に,①基本契約の有効期間,②個別契約の派遣期間,③派遣労働者と派遣元との雇用期間,④実際の派遣就業期間並びに⑤派遣先との直接雇用の開始日は,別の日付として管理すべきである。

派遣労働者が派遣元を退職し,又は派遣先での就業を終えたことだけで,派遣元と派遣先との個別契約が当然に終了するとは限らない。
また,派遣元との雇用関係終了後の雇用禁止と,適法な職業紹介に基づく紹介手数料又は派遣先都合の中途解約に伴う費用負担は,別の問題として検討する必要がある。

第2 契約審査を始める前にそろえる書類

1 締結済みの基本契約

最初に,派遣元と派遣先との間で現在有効な基本契約を特定する。
雛形,修正履歴付きの交渉稿,社内承認前のクリーン版及び署名欄が空白の最終案は,契約内容の候補又は交渉経過を示すにとどまり,その文面で契約が成立したことを単独では証明しない。

書面契約であれば契約日,署名又は記名押印,別紙及び覚書を確認し,電子契約であれば締結完了証明書,署名者,締結日時及び原本データを確認する。
商号変更,合併,会社分割又は事業譲渡があった場合は,旧商号と現商号の法人の同一性,契約上の地位の承継,通知先及び振込先も確認する。

2 対象期間の個別契約及び変更契約

次に,受入れを検討する派遣就業に対応する個別契約を特定する。
同じ派遣元との取引でも,業務,就業場所,組織単位,派遣期間又は人数が異なれば,確認すべき個別契約も異なる。

「直近」「最新版」等のファイル名だけで現行契約と決めず,契約期間,更新契約,注文書,覚書及び変更合意を時系列に並べる。
派遣期間の延長,業務又は就業場所の変更,指揮命令者の変更及び人数の変更が,元の個別契約の訂正で処理されたのか,新たな個別契約又は変更契約で処理されたのかを確認する。

3 法定通知,管理台帳及び実績資料

個別契約は予定された就業条件を示す書類であり,実際に誰が,いつ,どの業務に従事したかは,派遣元から派遣先への通知,派遣先管理台帳,勤怠記録及び請求書と照合する必要がある。
個別契約に人数だけが記載され,派遣労働者の氏名が記載されていないこともあるため,労働者派遣法35条の通知によって対象者を確認する。

派遣先管理台帳では,就業日,始業・終業時刻,休憩時間,実際の業務,責任の程度,就業場所,苦情処理等を確認する。
契約書と台帳又は勤怠記録が異なる場合は,直ちに契約書又は台帳の一方を正しいと決めず,変更合意,残業,休日就業,応援勤務,記載漏れその他の原因を調査する。

4 直接雇用を検討するときの追加資料

派遣先が派遣労働者の直接雇用を検討するときは,基本契約及び個別契約だけでは足りない。
①派遣元と派遣労働者との労働契約の種類及び終了日,②就業条件明示書,③職業紹介契約及び手数料表,④直接雇用に関する覚書,⑤派遣元の有料職業紹介事業の許可又は届出の状況並びに⑥採用提案及び本人の応募の経緯を確認する。

派遣元との雇用関係が終了する日,個別契約が終了する日及び派遣先での就業開始日は同一とは限らない。
口頭の了解だけで進めず,各日付と必要な通知・合意を書面又は電子メールで確認する。

第3 基本契約のチェックポイント

1 契約当事者,許可及び適用範囲

基本契約の当事者名,本店所在地,代表者及び通知先が現在の法人情報と一致するかを確認する。
派遣元については労働者派遣事業の許可番号を確認し,直接雇用に伴う職業紹介を予定する場合は有料職業紹介事業の許可又は届出を別に確認する。

基本契約が,どの事業所,部門,関連会社及び個別契約に適用されるかも確認する。
グループ会社を一括して「派遣先」と扱う条項がある場合は,各法人が契約当事者となるのか,単に利用可能な事業所を示すのかを明確にする。

2 基本契約と個別契約の優先関係

基本契約の一般条項と個別契約の就業条件が矛盾した場合に,どちらを優先するかを確認する。
個別契約を優先する条項があっても,労働者派遣法26条及び同法施行規則22条の必要事項を欠くことが許されるわけではない。

注文書,電子メール又は業務システム上の操作で契約を変更できる範囲も確認する。
契約変更は書面による当事者双方の合意に限ると定めている場合,現場担当者間の口頭了解だけでは変更の効力が争われるおそれがある。

3 契約期間,更新及び解約

基本契約の始期・終期,自動更新の有無,更新拒絶の通知期限及び基本契約全体を終了させる解約条項を確認する。
基本契約の有効期間と個別契約の派遣期間は別であり,基本契約が終了しても既存の個別契約にどこまで条項が残るか,又は個別契約が終了しても基本契約が継続するかを確認する。

「一か月前までに通知する」等の条項については,基本契約の更新拒絶,基本契約の中途解約,個別契約の期間短縮又は個別契約の中途解除のいずれを対象とするかを特定する。
異なる終了手続を一つの通知期限で処理しない。

4 派遣料金,請求及び不就労時間

派遣料金の単価,時間外・休日・深夜の割増,端数処理,交通費,請求締日及び支払日を確認する。
遅刻,早退,欠勤,休業,派遣先の操業停止,感染症対応及び自然災害等による不就労時間をどのように計算するかも確認する。

派遣料金は派遣元と派遣先との契約上の対価であり,派遣労働者の賃金そのものではない。
派遣料金を支払わない場面と,派遣元が労働者に賃金又は休業手当を支払う義務がある場面を混同しない。

5 安全衛生,苦情及び損害賠償

安全衛生について,派遣元と派遣先の役割,危険有害業務,保護具,教育,健康診断,事故報告及び再発防止の連絡体制を確認する。
苦情については,双方の申出先,処理方法,記録,派遣元への通知及び派遣労働者に対する不利益取扱いの防止を確認する。

損害賠償条項では,派遣労働者の故意・過失による損害をすべて派遣元に負担させる文言になっていないか,派遣先の指揮命令又は安全配慮上の問題を考慮する仕組みがあるかを確認する。
損害の範囲,間接損害,逸失利益,賠償上限,第三者請求,保険及び協議条項を具体化する。

6 秘密保持,個人情報及び成果物

秘密情報の定義,除外情報,利用目的,複製,持出し,返還・廃棄及び契約終了後の存続期間を確認する。
派遣先が派遣労働者へ直接秘密保持義務を課す場合は,派遣元との契約及び派遣労働者への就業条件明示との整合性を確認する。

個人情報の授受については,派遣労働者を特定する目的の情報要求になっていないかを確認する。
業務上作成される文書,プログラム,設計図その他の成果物について知的財産権の帰属を定める場合は,派遣元が派遣労働者から必要な権利処理を受けられる仕組みも確認する。

7 直接雇用,職業紹介及び紹介手数料

直接雇用条項は,①雇用を禁止する条項,②派遣元への事前通知を求める条項,③職業紹介を経由する条項,④紹介手数料を定める条項及び⑤個別契約の中途解除に伴う費用条項に分けて読む。
条項名が「直接雇用」「引抜き」「紹介料」「違約金」又は「解約金」のいずれであるかだけで法的性質を決めない。

対象となる採用時期,雇用形態,発生条件,算定基礎,料率,支払時期,返戻金,本人都合の場合の取扱い及び条項の存続期間を確認する。
紹介手数料を定める場合は,派遣元が職業紹介を行うことのできる許可等を有するか,適用される手数料表及び具体的な合意があるかを確認する。

第4 個別契約の法定事項を確認する

1 業務内容及び責任の程度

個別契約の業務内容は,必要な能力及び実際に行う作業が分かり,派遣元が適格な派遣労働者を決定できる程度に具体的である必要がある。
「事務」「製造補助」「軽作業」等の抽象的な名称だけでなく,主要な作業,使用する機械・システム,取扱物及び付随業務を確認する。

業務に伴う責任の程度について,役職の有無,権限の範囲,判断又は承認を行う範囲を確認する。
契約上は役職なしであるのに,実際には他の労働者の配置,評価又は業務配分を行わせるなど,契約と実態が異ならないようにする。

2 就業場所,組織単位及び指揮命令者

事業所の名称・所在地だけでなく,実際の就業場所及び組織単位を確認する。
組織単位は個人単位の期間制限に関係するため,部署名だけでなく,業務のまとまり及び組織の長の権限を踏まえて特定する。

指揮命令者は,部署,役職及び氏名を確認する。
契約上の指揮命令者以外の者が日常的に業務の順序,方法,配置又は勤務時間を指示している場合は,個別契約を変更すべきか,現場運用を是正すべきかを検討する。

3 派遣期間,就業日及び就業時間

派遣期間は開始日及び終了日を,就業日は曜日又は具体的な日を確認する。
始業・終業時刻,休憩時間,時間外又は休日の就業を命じ得る範囲も確認する。

個別契約上の時間外・休日就業の上限は,派遣元と派遣労働者との労働契約及び派遣元の時間外・休日労働協定の範囲内でなければならない。
派遣先の繁忙や現場慣行だけを理由に,個別契約にない勤務を常態化させない。

4 安全衛生及び苦情処理

危険有害業務,就業制限業務,必要な資格,保護具,安全衛生教育,健康診断,作業環境及び事故時の連絡方法を,実際の業務に応じて定める。
業務内容を変更するときは,新たな危険及び必要な教育を確認してから就業させる。

苦情の申出先について,派遣元・派遣先双方の担当者,部署,役職及び連絡方法を定める。
苦情を受けた場合の記録,双方の連携,派遣先管理台帳への記載及び派遣元への通知も運用できる形にする。

5 中途解除時の雇用安定措置

個別契約には,労働者派遣契約の解除に当たって講ずる雇用安定措置を具体的に定める必要がある。
派遣先都合で期間満了前に解除する場合の事前申入れ,就業機会の確保,休業手当等に要する費用の負担,解除理由の明示及び善後処理の協議を確認する。

単に「派遣先は一切責任を負わない」とする条項や,反対に残存期間の派遣料金全額を当然に支払うとする理解は避ける。
法令・指針上の措置,実際に生じる損害及び基本契約の損害賠償条項を分けて検討する。

6 直接雇用に関する紛争防止措置

労働者派遣法26条1項及び同法施行規則22条5号は,派遣終了後に派遣先が派遣労働者を雇用する場合について,雇用意思の事前通知,職業紹介を経由する場合の手数料その他の紛争防止措置を労働者派遣契約に定めることを求めている。
これは,すべての直接雇用について法律上当然に紹介手数料債務が発生するという規定ではない。

基本契約だけに紛争防止措置を定めている場合は,その条項が対象の個別契約に適用されるかを確認する。
個別契約に「紹介予定派遣に該当しない」と記載されていても,通常派遣終了後の直接雇用に関する別の通知・手数料条項が存在しないとは限らない。

7 派遣元・派遣先責任者その他の事項

派遣元責任者及び派遣先責任者の役職,氏名及び連絡方法を確認する。
製造業務の場合は,製造業務専門派遣元責任者及び製造業務専門派遣先責任者に関する記載も確認する。

紹介予定派遣である場合は,紹介予定派遣である旨,直接雇用後に予定する業務・労働条件,職業紹介の時期,派遣可能期間及び不採用時の理由明示等を確認する。
通常派遣と紹介予定派遣を同じ様式で扱う場合も,該当欄の選択だけでなく,必要事項が具体的に記載されているかを確認する。

第5 期間満了及び更新のチェックポイント

1 四つの終了日を分ける

期間満了を検討するときは,①基本契約の終了日,②個別契約の終了日,③派遣労働者と派遣元との雇用契約の終了日及び④実際の派遣就業の終了日を分ける。
「契約終了日」「退職日」「最終日」等の省略表現を用いる場合は,どの法律関係の日付かを明記する。

基本契約が自動更新されても,個別契約が当然に更新されるとは限らない。
個別契約の派遣期間が満了しても,派遣元と派遣労働者との雇用関係が終了するとは限らない。

2 更新の意思決定及び書面化

更新前に,業務量,必要人数,業務内容,就業場所,組織単位,指揮命令者,勤務時間及び派遣料金を見直す。
従前と同じ条件で形式的に更新するのではなく,契約と実態のずれを修正する機会として利用する。

更新する場合は,新しい個別契約の締結日,派遣期間及び変更点を明確にする。
更新しない場合は,契約上の通知期限,派遣先管理台帳の最終記載,貸与物の返却,アカウント停止及び秘密情報の返還・廃棄を確認する。

3 期間制限及び抵触日の確認

派遣先事業所等ごとの派遣可能期間は原則として3年であり,同一の派遣労働者を同一の組織単位に派遣できる期間も原則として3年である。
無期雇用派遣労働者,60歳以上の者,有期プロジェクト業務その他の法定例外の有無を確認する。

事業所単位の期間制限と個人単位の期間制限を混同せず,抵触日通知,過半数労働組合等からの意見聴取及び組織単位の実態を確認する。
個別契約の更新日だけを見て期間制限を判断しない。

4 期間満了後の処理

最終就業日を派遣先管理台帳及び勤怠記録へ反映し,派遣元へ必要な通知を行う。
入館証,鍵,端末,制服,図面その他の貸与物を回収し,システム権限,メール転送,クラウド共有及び施設アクセスを停止する。

期間満了後に直接雇用を予定する場合は,派遣元への事前通知,職業紹介の利用,手数料及び直接雇用の開始日を,満了処理と並行して確認する。
派遣元との雇用関係が継続しているかも確認し,派遣終了日だけで労働者派遣法33条の適用場面を決めない。

第6 中途解約及び欠員補充のチェックポイント

1 誰の事情で何を終了するかを特定する

中途終了の原因が,派遣先の事業縮小,業務変更,派遣元の履行不能,派遣労働者本人の退職,長期欠勤,能力・適性上の問題又は法令違反の是正のいずれであるかを特定する。
その上で,派遣労働者の就業だけを終了するのか,後任者へ交代するのか,個別契約を期間短縮するのか,又は基本契約まで解約するのかを分ける。

派遣労働者に関する苦情又は問題がある場合も,派遣先が本人を直接解雇することはできない。
派遣元への連絡,事実確認,改善の機会,交代要請及び契約上の解除事由を検討する。

2 退職と個別契約の終了を同一視しない

派遣労働者が派遣元を退職すれば,その者の派遣就業は終了することになるが,派遣元と派遣先との個別契約が当然に消滅するとは限らない。
個別契約が人数,技能及び期間を定める契約である場合,派遣元が後任者を派遣することによって履行を継続できることがある。

基本契約又は個別契約の代替要員条項,交代手続,派遣先が補充を不要とする場合の通知及び期間短縮・合意解除の方法を確認する。
補充を不要とする場合は,誰が,いつ,どの契約を終了させることに合意したかを記録する。

3 派遣先都合の中途解除

労働者派遣法29条の2は,派遣先都合の解除に当たり,新たな就業機会の確保,休業手当等の支払に要する費用の負担その他の雇用安定措置を派遣先に求めている。
派遣先指針は,専ら派遣先に起因する事由による解除について,派遣元の合意を得るとともに,あらかじめ相当の猶予期間をもって申入れを行うよう求めている。

ここでいう「相当の猶予期間」は,一律の法定30日前予告と同じではない。
派遣元が派遣労働者を解雇せざるを得ない場面に関する30日分等の記載と,派遣先から派遣元への解除申入れの期限を混同しない。

4 費用負担及び終了合意

新たな就業機会を確保できない場合は,派遣元が派遣労働者を休業させること等により生じる損害について,契約,法29条の2及び派遣先指針に基づく負担を検討する。
残存期間の派遣料金,休業手当相当額,解雇予告に関する額,既に手配した交通費・宿泊費及び返却不能な資材等を項目ごとに分け,二重計上を避ける。

終了合意には,対象となる基本契約・個別契約,終了日,最終就業日,後任者の要否,費用負担,請求の清算,貸与物及び秘密情報の処理を記載する。
派遣元から求められた場合に説明できるよう,解除理由及び意思決定の記録も保存する。

第7 直接雇用を検討するときのチェックポイント

1 派遣元との雇用関係終了後の雇用制限

労働者派遣法33条は,派遣元と派遣労働者との雇用関係が終了した後に派遣先が当該労働者を雇用することを,正当な理由なく禁止する契約を原則として認めていない。
条文上の基準は,単なる派遣就業の終了又は個別契約の期間満了ではなく,派遣元との雇用関係の終了である。

名称が紹介料,違約金又は解約金であっても,高額な金銭負担により直接雇用を事実上妨げる内容であれば,同条及び民法90条との関係が問題となる。
他方,金銭条項があるだけで直ちに無効と判断することもできない。

2 雇用関係継続中の採用

派遣元との雇用関係が続いている間,特に有期労働契約の期間内に派遣先への転職を禁止する合意は,労働者派遣法33条によって当然に無効となるものではない。
派遣先が在職中に採用を提案する場合は,派遣労働者に無断退職又は契約違反を勧めず,雇用契約の種類,終了手続及び実際の雇用終了日を確認する。

派遣元との雇用契約を終了させる問題と,派遣元・派遣先間の個別契約を終了又は変更する問題は別である。
派遣労働者本人の退職意思だけで企業間契約の終了処理まで完了したと扱わない。

3 事前通知,職業紹介及び手数料

派遣終了後の直接雇用について,基本契約又は個別契約が派遣元への事前通知,職業紹介及び紹介手数料を定めているかを確認する。
手数料条項がある場合は,職業紹介事業の許可等,求人・求職の申込み,紹介行為,具体的な手数料合意,算定基礎,料率及び返戻金を確認する。

派遣元が雇用安定措置として派遣先へ直接雇用を依頼した場面と,通常の有料職業紹介を行った場面も区別する。
職業紹介を利用しない採用経路を形式的に作ることで,実際の採用提案又は紹介経緯を消すことはできない。

4 通常派遣から紹介予定派遣への変更

通常派遣が,派遣先と派遣労働者の採用希望だけで当然に紹介予定派遣へ変わることはない。
もっとも,派遣期間中に派遣労働者及び派遣先が派遣元による職業紹介を受けることに合意し,派遣を直ちに終了しない場合は,その時点から紹介予定派遣として扱い,必要な契約変更を速やかに行うことができる。

この変更は過去に遡るものではない。
派遣元の職業紹介事業の許可又は届出,派遣労働者の同意,職業紹介の時期等の明示,紹介予定派遣に関する契約事項及び同一労働者について6か月の上限を確認する。

5 直接雇用前の最終確認

採用条件を正式提示する前に,①締結済み基本契約,②最新の個別契約,③派遣元との雇用契約の終了日,④個別契約の終了又は変更,⑤派遣元への通知,⑥職業紹介の利用,⑦紹介手数料その他の費用並びに⑧直接雇用の開始日を確認する。
口頭の承諾だけでなく,必要な当事者の合意及び通知を相互に整合する文書に残す。

直接雇用契約では,雇用形態,雇用期間,業務,賃金,労働時間,就業場所及び開始日等を改めて合意する。
派遣就業期間を年次有給休暇,退職金,賞与その他の勤続期間へ通算するかも明確にする。

第8 派遣先用の最終チェックリスト

1 契約締結前

①派遣元の現商号,法人の同一性及び労働者派遣事業の許可番号を確認する。
②署名押印済み又は電子締結済みの基本契約と,雛形・交渉稿を分ける。
③基本契約,個別契約,覚書及び注文書の優先関係を確認する。
④業務,責任の程度,就業場所,組織単位,指揮命令者,期間及び時間を具体化する。
⑤安全衛生,苦情,中途解除及び直接雇用に関する条項を確認する。
⑥契約内容と現場の受入部署・指揮命令者の認識を一致させる。

2 更新・期間満了前

①基本契約と個別契約の終了日を別々に確認する。
②派遣元と派遣労働者との雇用終了日を推測しない。
③契約内容と派遣先管理台帳・勤怠記録の実績を照合する。
④事業所単位及び個人単位の期間制限並びに例外を確認する。
⑤更新条件又は更新しない旨を契約上の期限までに伝える。
⑥貸与物,アクセス権及び秘密情報の終了処理を準備する。

3 中途解約・交代時

①誰の事情で,誰の就業又はどの契約を終了するのかを特定する。
②代替要員の要否及び交代手続を確認する。
③派遣先都合の場合は,相当の猶予期間をもった申入れ,就業機会及び費用負担を検討する。
④解除理由,終了日,費用及び清算範囲を書面化する。
⑤派遣労働者の退職と個別契約の終了を同一視しない。
⑥管理台帳,勤怠,通知及び請求の最終期間を一致させる。

4 直接雇用時

①派遣元との雇用関係終了前か終了後かを確認する。
②雇用禁止条項,事前通知条項,紹介手数料条項及び中途解除条項を分けて読む。
③派遣元の職業紹介事業の許可等及び手数料表を確認する。
④本人の退職意思,採用提案及び応募経路を正確に記録する。
⑤個別契約の終了又は変更と,直接雇用の開始日を整合させる。
⑥費用の有無について争いがあれば,採用を隠すのではなく,根拠条項の提示,減免又は解決合意を検討する。

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第10 出典

1 法令

① e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」2条,26条~29条の2,33条,35条,39条,40条及び42条。
② e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則」22条等。
③ e-Gov法令検索「民法」90条。

2 厚生労働省資料

① 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」掲載ページ
② 同要領・第5「労働者派遣契約」123頁~129頁等。
③ 同要領・第6「派遣元事業主の講ずべき措置等」199頁~201頁等。
④ 同要領・第7「派遣先の講ずべき措置等」294頁~299頁及び306頁~307頁等。
⑤ 厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」

本記事では,上記の法令及び厚生労働省資料を制度説明の根拠とした。
個別企業の契約書,交渉経過又は管理台帳は,公開記事の事実又は法解釈の根拠として使用していない。