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米国株の配当金にかかる二重課税を解消し,税金の還付を受ける方法(AI作成)

米国株式の配当は,米国と日本の双方で源泉徴収を受けるため,そのままでは同一の所得に二重に課税される。
この重複を解消する中心的な手段は,確定申告により外国税額控除を適用し,米国で課された税を日本の所得税,復興特別所得税及び住民税から控除することである。
本記事は,個人が国内の証券会社を通じて米国の上場株式(現物)を保有する場合を対象として,二重課税の生じ方,外国税額控除の要件と限度額,申告方式の選択,投資信託との取扱いの相違及び確定申告の実務上の留意点を,現行法令及び行政資料に即して整理する。

目次

第1 米国株配当の二重課税が生じる仕組み

米国株配当の二重課税は,米国側の源泉徴収と日本側の課税とが同一の配当に重ねて及ぶことにより生じる。
まず,それぞれの課税の根拠と税率を確認する。

1 米国側の源泉徴収と日米租税条約による限度税率

米国は,米国法人が非居住者に支払う配当に対して源泉徴収を行う。
米国の国内法上の原則的な源泉徴収税率は30%であるが,日米租税条約により軽減される。

日米租税条約第10条2は,配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合の源泉地国課税の限度税率を定めている。
同2(b)は「その他のすべての場合には,当該配当の額の10パーセント」とし,同2(a)は配当を支払う法人の議決権のある株式の10パーセント以上を直接又は間接に所有する法人について5パーセントとする。
さらに同3は,議決権のある株式の50パーセント以上を6箇月の期間所有する法人が受ける配当について,源泉地国での免税を定めている。
個人が上場株式を保有する通常の投資は,これらの親会社要件に当たらないため,同2(b)の10パーセントが限度税率となる。

この軽減を受けるには,受益者が米国の様式(W-8BEN)により居住地国等を申告する必要があり,国内の証券会社を通じて保有する場合には証券会社が所定の手続を行うことで10パーセントが適用される。
2019年(令和元年)の改正議定書は,源泉所得税については令和元年11月1日以後に支払を受けるべきものから適用され,50パーセント以上を保有する親子会社間配当の免税等を拡大したが,一般の投資家に適用される10パーセントの限度税率は変更していない。

2 日本側の課税と特定口座における課税ベース

日本では,上場株式等の配当は,所得税及び復興特別所得税15.315パーセントと住民税5パーセントとを合わせた20.315パーセントの税率で源泉徴収される。
復興特別所得税は,基準所得税額に2.1パーセントの税率を乗じて計算した金額であり(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法。以下「復興財源確保法」という。同法13条),15パーセントの所得税に対応する0.315パーセントがこれに当たる。

国外で発行された株式の配当を国内の支払の取扱者を通じて受ける場合の国内源泉徴収の課税標準について,租税特別措置法9条の2第3項は,配当の支払の際に外国所得税が徴収されているときは,源泉徴収の基礎となる「交付をする金額」を「当該国外株式の配当等の額から当該外国所得税の額に相当する金額を控除した後の金額」とする旨を定めている。
したがって,特定口座においては,米国で源泉徴収された後の金額を基礎として日本の20.315パーセントが課される。
支払の取扱者(源泉徴収義務者)は,配当の受領の媒介,取次ぎ又は代理をする者であり,通常は国内の証券会社がこれに当たる(租税特別措置法施行令4条の5第1項)。

数値例(配当を100とした場合)

米国での源泉徴収 100×10%=10
日本での源泉徴収 (100−10)×20.315%≒18.28
手取り 100−10−18.28≒71.72
合計負担率 約28.28%

外国税額控除を用いない限り,この重複した負担がそのまま残る。
なお,上記は課税標準の計算過程を示したものであり,実際の税額は円換算後の金額により計算される。

第2 外国税額控除による二重課税の解消

二重課税を解消する中心的な制度が外国税額控除である。
その根拠,控除限度額の計算,控除の順序及び控除しきれない場合の取扱いを確認する。

1 所得税からの控除と控除限度額

所得税法95条1項は,居住者が外国所得税を納付することとなる場合に,控除限度額を限度として,控除対象外国所得税の額をその年分の所得税の額から控除すると定めている。
これが外国税額控除である(同条16項)。

所得税の控除限度額は,その年分の所得税の額に,その年分の所得総額のうちに調整国外所得金額の占める割合を乗じて計算した金額とされている(所得税法施行令222条)。
すなわち,控除限度額は「所得税額×(調整国外所得金額÷所得総額)」により計算される。
国外所得の割合が小さい場合には控除限度額も小さくなり,米国で課された税を全額控除できないことがある点に留意を要する。

還付は,次の仕組みで生じる。
確定申告において外国税額控除を適用すると,算出された所得税額から外国所得税額(控除限度額の範囲内)が差し引かれ,特定口座等で既に源泉徴収されている所得税額との差額が還付される。
米国株配当について税の還付を受ける方法とは,実質的にはこの外国税額控除を確定申告で適用することにほかならない。

2 復興特別所得税及び住民税からの控除・控除順序・繰越し

所得税の控除限度額を超える部分は,順次,他の税目から控除される。
復興財源確保法14条は,控除対象外国所得税の額が所得税法95条1項の控除限度額を超えるときは,その年において生じた国外所得金額に対応する金額を限度として,その超える金額をその年分の復興特別所得税の額から控除すると定めている。

これによってもなお控除しきれない部分は,住民税から控除される。
道府県民税について地方税法37条の3が,市町村民税について地方税法314条の8が,外国の所得税等の額のうち所得税法95条1項の控除限度額等を超える額があるときに,政令で定める額を限度として所得割の額から控除する旨を定めている。
国税庁の整理によれば,控除の順序は所得税,復興特別所得税,道府県民税,市町村民税の順であり,住民税の控除限度額は道府県民税及び市町村民税を合わせて所得税の控除限度額の30パーセントとされている。

控除対象外国所得税の額が控除限度額に満たない場合又はこれを超える場合について,所得税法95条2項及び3項は,前年以前3年内の各年の控除限度額又は控除対象外国所得税額を繰り越して調整する仕組みを定めている。
控除限度額の不足によりその年に控除しきれなかった外国所得税は,3年間の繰越しの対象となる。

3 配当控除が米国株には適用されないこと

日本株の配当については配当控除(税額控除)の適用があるが,米国株を含む外国法人からの配当には適用がない。
所得税法92条1項は配当控除を定める一方,その対象となる配当所得から「外国法人から受けるこれらの金額に係るもの」を明文で除外している。
したがって,米国株配当については,総合課税を選択しても配当控除を受けることはできず,二重課税の調整はもっぱら外国税額控除によることとなる。
この点は,配当控除と外国税額控除とを混同しないために,依頼者への説明でも区別しておく必要がある。

第3 申告方式の選択

上場株式等の配当をどの方式で申告するかにより,外国税額控除の可否及び税負担が異なる。
方式の分岐と,住民税に関する近年の改正を確認する。

1 申告不要・総合課税・申告分離課税の分岐

上場株式等の配当は,申告不要(特定口座の源泉徴収のみで完結させる方法),総合課税又は申告分離課税のいずれかによることができる。
外国税額控除は,確定申告書等に控除を受ける金額及びその計算に関する明細を記載した書類等の添付があることを要件としている(所得税法95条10項)ため,申告不要を選択した配当については外国税額控除を受けられない。
米国で課された税の回収を求めるには,総合課税又は申告分離課税により確定申告をすることが前提となる。

申告分離課税は,租税特別措置法8条の4が定める上場株式等に係る配当所得等の課税の特例であり,他の所得と区分して国税15パーセント(復興特別所得税を含め15.315パーセント)と住民税5パーセントとが課される。
同特例を選択した場合でも外国税額控除の適用は妨げられない(同条3項4号が所得税法95条の適用について読替えを定めている)。
また,申告分離課税によれば,上場株式等の譲渡損失との損益通算も可能である。

総合課税は,配当を他の所得と合算して累進税率により課税する方式である。
前記のとおり米国株配当には配当控除が適用されないため,総合課税の利点は限られるが,課税所得の水準によっては配当に適用される限界税率が20.315パーセントを下回り,総合課税が有利となる場合がある。
もっとも,総合課税を選択すると配当所得が合計所得金額に算入されるため,次のとおり保険料等への波及を併せて検討する必要がある。

2 住民税の課税方式の一本化

従前は,同一の配当について所得税と住民税とで異なる課税方式を選択することができ,所得税では申告分離課税により外国税額控除を受けつつ,住民税では申告不要とする取扱いが可能であった。
しかし,令和4年度税制改正により,令和6年度分(令和5年分の所得)以後の個人住民税については,上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等の課税方式を所得税と一致させることとされた。
このため,現在は,所得税で申告した配当は住民税でも同じ方式で扱われることとなり,所得税と住民税とで方式を使い分けることはできない。
申告により住民税の所得にも算入される結果,国民健康保険料等への影響が生じ得る点は,方式選択の判断に当たって確認を要する。

第4 投資信託・上場投資信託と個別株の取扱いの相違

外国株式を組み入れた投資信託や上場投資信託(ETF)の分配金については,個別株とは異なる調整の仕組みがある。
租税特別措置法9条の3の2第3項1号は,証券投資信託等の収益の分配について,その信託財産につき納付された所得税(外国所得税に対応する部分を含む所定の金額)を,国内で徴収すべき所得税の額から控除する仕組み(分配時の調整)を定めている。
この仕組みは令和2年1月1日以後に支払を受けるべき分配について適用され,投資信託等を通じて外国株式に投資した場合には,確定申告を経なくてもファンド段階で課された外国税の一部が分配時に調整される。

これに対し,個別の外国株式を直接保有する場合には,この分配時調整の仕組みは及ばない。
個別株の配当について二重課税を解消するには,投資家自身が確定申告により外国税額控除を受ける必要がある。
依頼者の保有形態が投資信託・ETFであるか個別株であるかによって,とるべき手続が異なる点に注意を要する。

第5 確定申告の実務と依頼者対応

外国税額控除は確定申告を通じて実現するため,要否の判断,必要書類,非課税口座の取扱い及び依頼者からの聴取事項を整理しておく必要がある。

1 確定申告の要否と必要書類

特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合,確定申告自体は任意である。
外国税額控除又は損益通算を受けるために確定申告をするかどうかは,回収し得る税額と,申告に伴う影響とを比較して判断することになる。

外国税額控除を受けるための添付書類としては,外国税額控除に関する明細書(居住者用)のほか,外国所得税を課されたことを証する書類が必要となる(所得税法95条10項)。
実務上は,証券会社が交付する特定口座年間取引報告書に外国所得税額が記載されるため,これを基礎に控除額を計算する。
外国所得税額及び国外所得金額は円換算を要するため,報告書上の円換算後の金額を用いるのが通常である。

2 NISA口座では米国源泉税を回収できないこと

非課税口座(NISA)内の上場株式等の配当は,租税特別措置法9条の8により所得税を課さないものとされている。
国内で非課税とされる配当は確定申告の対象とならず,その結果として外国税額控除の適用も受けられない。
このため,NISA口座で受け取る米国株配当については,米国で源泉徴収された税を回収する方法がなく,この点は現行のNISAでも同様である。
高い配当利回りの米国株について,日本側の課税を非課税とする利益と,米国源泉税を回収できない不利益とのいずれが大きいかは,配当利回りや所得水準によって異なり得るため,口座の選択に当たって併せて検討することが望ましい。

3 依頼者からの聴取事項と結論を左右する不確実な要素

方式選択及び還付見込みの検討に当たっては,少なくとも次の事項を確認しておくことが有用である。

  • ① 配当を受け取る口座の区分(特定口座・一般口座・NISA口座の別)
  • ② 国外所得の有無及び規模(控除限度額の計算に影響する)
  • ③ 課税所得の水準(総合課税と申告分離課税の有利不利に影響する)
  • ④ 国民健康保険料,後期高齢者医療の保険料その他の所得を基準とする負担又は制限への波及の有無
  • ⑤ 上場株式等の譲渡損失の有無(申告分離課税による損益通算の可否)
  • ⑥ 米国以外の外国株式の有無(外国所得税及び控除限度額の計算に影響する)

結論を左右する不確実な要素としては,控除限度額の範囲内で外国税を全額回収できるか否か,及び申告により合計所得金額が増加することの副次的な影響(保険料等)が挙げられる。
これらは個々の所得構成によって結果が異なるため,一般的な結論を述べることはできず,実際の数値による試算を経て判断する必要があると考えられる。
控除しきれない外国所得税が生じる場合には,3年間の繰越しの活用も併せて検討することになる。

出典

1 法令

  • 所得税法 92条(配当控除。外国法人からの配当を配当控除の対象から除外),95条(外国税額控除・控除限度額・3年繰越し・明細書添付要件)
  • 所得税法施行令 222条(所得税の控除限度額=所得税額×調整国外所得金額÷所得総額)
  • 租税特別措置法 8条の4(上場株式等に係る配当所得等の課税の特例=申告分離課税,外国税額控除の読替え),9条の2第3項(国外株式配当の国内源泉徴収の課税ベースを外国所得税控除後の金額とすること),9条の3の2第3項(証券投資信託等の分配時における外国税相当額の調整),9条の8(非課税口座内配当の非課税)
  • 租税特別措置法施行令 4条の5第1項(国外株式配当の源泉徴収義務者=受領の媒介・取次ぎ・代理をする者)
  • 地方税法 37条の3(道府県民税の外国税額控除),314条の8(市町村民税の外国税額控除)
  • 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法 13条(復興特別所得税の税率2.1パーセント),14条(復興特別所得税額からの外国税額控除)

2 租税条約

  • 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(日米租税条約)第10条(配当。2(b)一般10パーセント,2(a)議決権10パーセント以上の法人5パーセント,3免税)。財務省ウェブサイト掲載の統合条文(和文統合条文)により本文を確認

3 行政資料

  • 国税庁タックスアンサー No.1240 居住者に係る外国税額控除(控除限度額の計算,所得税・復興特別所得税・住民税の控除順序,住民税の控除限度額が所得税の控除限度額の30パーセントであること,必要書類)
  • 財務省 日米租税条約のポイント(2013年署名・2019年発効の改正議定書の概要)
  • 令和4年度税制改正による地方税法の改正(令和6年度分の個人住民税以後,上場株式等の配当所得等の課税方式を所得税と一致させるもの。総務省及び各地方公共団体の公表資料による)