第1 反訴と訴えの変更の提出先
新法事件の反訴は,新規申立てフォームの「その他」から提出し,訴えの変更は,係属事件の記録一覧の「主張」から提出する。
同じ係属事件に関する手続でも,mints内の提出場所が異なり,旧法事件では紙による手続との区別も必要になる。
| 手続 | 提出先・提出場所 | 費用の確認事項 |
|---|---|---|
| 新法事件の反訴 | 本訴係属裁判所への新規申立て。「その他」を選択 | 反訴の訴額と目的同一による控除。手数料は手入力 |
| 新法事件の訴えの変更 | 変更する事件の記録一覧。「主張」を選択 | 変更前後の算定額の差額 |
| 旧法事件の反訴 | 本訴係属裁判所への書面による申立て | 収入印紙と郵便費用の予納 |
| 旧法事件の訴えの変更 | mintsでは提出できない | 書面の提出方法と追加費用を担当部に確認 |
提出場所は,最高裁判所事務総局民事局の「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」41頁・44頁による。
この表は提出経路を示すものであり,反訴又は訴えの変更の法的要件を満たすかどうかは別に確認する。
本記事は,令和8年8月30日現在の法令と裁判所資料に基づき,通常の民事訴訟の第一審を中心に説明する。
操作説明には,前記手引の令和8年6月19日版とmints操作マニュアル2.3版(令和8年7月15日改訂)を用い,以下のマニュアルの頁数は冊子の頁数で示す(PDFビューアでは3頁を加えた位置となる)。
個別事件の訴額・反訴要件の判断や,判例・学説の網羅的な検討は扱わず,mints全般の説明は弁護士向けmintsのQ&Aに譲る。
第2 新法・旧法の区別と電子提出義務
1 旧法の本訴に対する反訴は紙で提出する
改正法の全面施行日は令和8年5月21日であるが,反訴を提起する日が施行日後であるというだけで,新法の電子提出手続になるわけではない。
前記手引44頁は,旧法適用事件を本訴とする反訴について,反訴の要件を満たす限り,提起時から旧法適用事件になると考えられる旨を説明している。
そして,この場合には,書面による申立て,収入印紙による手数料納付及び郵便費用の予納が必要であるとしている。
2 旧法事件の訴え変更と,先行手続・併合の確認
旧法事件で準備書面をmintsに提出できる場合でも,訴えの変更まで同じ方法で提出できるとは限らない。
前記手引44頁は,旧法事件では準備書面や証拠の写し等にmintsを利用できる一方,訴えの変更の申立て等はmintsで行えないと説明している。
東京地方裁判所商事部のQ&Aにも,訴えの変更申立書等をmintsで提出できないとの記載があるが,当該記載の適用時点は明確でない。
この記載を新法事件にまで一般化せず,手引41頁の提出場所の案内と,同44頁の旧法事件の制限を分けて読む必要がある。
新旧法の区分は,民事訴訟法に収録された令和4年法律第48号附則2条・5条・11条及び手引43頁~44頁で確認する。
施行日前の支払督促等から施行日後に訴訟へ移行しても旧法となる場合がある。
手引44頁は,新法事件と旧法事件の弁論を併合した場合について,併合時から全体が旧法適用事件になると考えられる旨も説明している。
先行手続や併合がある事件の全体像は,mintsの対象事件に関する記事を参照されたい。
3 本人訴訟の当事者と訴訟代理人を区別する
新法事件では,民事訴訟法132条の11第1項1号により,委任を受けた訴訟代理人は原則として電子提出義務の対象となるが,同法54条1項ただし書の許可を得た訴訟代理人は除かれる。
口頭でできる申立て等を口頭でする場合や,裁判所の電子計算機の故障その他の帰責事由のない事情によって電子提出できない場合についても,同条に例外が定められている。
本人訴訟の被告であるというだけで,すべての申立てが当然に電子提出義務の対象となるものではない。
第3 新法事件で反訴を提起する方法
1 反訴の要件と特別委任を確認する
民事訴訟法146条1項によれば,被告は,本訴の請求又は防御の方法と関連する請求について,口頭弁論の終結までに,本訴の係属する裁判所へ反訴を提起することができる。
ただし,本訴の訴訟手続を著しく遅滞させる場合や,反訴の請求が他の裁判所の専属管轄に属する場合には制限があり,合意による専属管轄の除外や,同条2項の特許権等に関する特則にも留意する。
訴訟代理人が反訴を提起するには,同法55条2項1号の特別委任が必要である。
本訴の委任状を提出済みであっても,反訴の提起について特別委任を受けているかを確認する。
2 新規申立ての「その他」に入力する
反訴の入力経路は,手引41頁と操作マニュアル30頁~43頁を併せて確認する。
通常の訴状提出と共通する操作はあるが,反訴では申立種別と手数料入力が異なる。
①「新規申立一覧」から「新規作成」へ進む。
②「入力者肩書」と申立種別を選択し,申立種別は「その他」とする。
③本訴の係属裁判所を確認し,「反訴又は上訴対象の事件番号」に本訴の事件番号を入力する。
④反訴の訴額と手数料を確認して入力する。
申立種別「その他」では,訴額を入力しても手数料は自動表示されず,手入力する。
この仕様は操作マニュアル43頁に明示されており,通常の訴え提起の自動計算を反訴にも当てはめない。
反訴にも訴えに関する規定が適用されるため,当事者・法定代理人,請求の趣旨及び原因など,民事訴訟法134条2項・146条4項に沿って必要事項を明確にする。
本訴に対する反論だけでなく,反訴によって求める裁判が分かる内容とする。
新規申立てフォームの添付書類は,操作マニュアル43頁に従い,A3又はA4サイズのPDFで提出する。
入力・添付を確認して実際の提出操作まで行い,一時保存や提出前の申立書の出力だけで終わらせない。
通常の訴状の作成・提出の説明は,mintsで訴えを提起する方法を参照されたい。
第4 新法事件で訴えを変更する方法
1 変更の要件と書面・送達
民事訴訟法143条1項によれば,原告は,請求の基礎に変更がない限り,口頭弁論の終結まで,請求又は請求の原因を変更することができる。
ただし,訴訟手続を著しく遅滞させることとなる場合は許されない。
同条2項・3項は,請求の変更をする場合の書面と,その書面の相手方への送達を定めている。
請求の変更,請求原因だけの変更,単なる誤記訂正を一括して同じ手続と扱わず,何を変更するのかを確定する。
新法事件で同法132条の10第1項の方法により電子提出した申立て等は,同条2項により書面等をもってされたものとみなされる。
実務上は,変更前後の請求の趣旨,変更する請求原因,変更後の訴額及び追加手数料の計算を,書面から読み取れるようにすることが考えられる。
これは変更内容を確認しやすくするための提案であり,全国一律の指定様式や,すべてが独立した法定記載事項であるという趣旨ではない。
請求を減縮する場合は,訴えの一部取下げに当たるかを確認する。
民事訴訟法261条2項は,相手方が本案について準備書面を提出するなどした後の取下げについて,原則として相手方の同意を必要としているため,mintsへ提出できることだけで同意の問題まで解決するものではない。
同意や手数料還付については,訴えの取下げに関する記事で説明している。
2 記録一覧の「主張」から正式に提出する
手引41頁が指定する訴えの変更の提出場所は,記録一覧のアップロード画面であり,ファイル種別は「主張」である。
反訴のように,新規申立てフォームの「その他」を使うものではない。
操作マニュアル65頁~68頁による提出操作は,次のとおりである。
①変更する事件の記録一覧から,提出ファイル選択へ進む。
②ファイル種別を「主張」とし,変更申立書のファイルを追加する。
③追加されたファイルの一覧を確認して「提出」を押し,確認画面で「OK」を押す。
④ウイルススキャン等の処理後,正常に提出されたことを新着情報等で確認する。
「記録外」へのアップロードは正式な提出ではないため,変更申立書の提出に代えることはできない。
第5 反訴・請求拡張の追加手数料
1 反訴の手数料と「目的を同じくする」場合の控除
新法事件の第一審の反訴では,民事訴訟費用等に関する法律(費用法)別表第二6項により,反訴の訴額について同表1項イで算出した額を用いる。
ただし,本訴と目的を同じくする反訴では,同項ただし書により,本訴の訴額について1項イで算出した額を控除する。
反訴として許されるための本訴との関連性と,手数料控除の条件である目的同一性は別である。
同じ当事者間の請求であることや,本訴と関係することだけで,当然に本訴の額を控除できると判断してはならない。
2 請求変更前後の差額を計算し,1400円を重ねない
新法事件の第一審で請求を変更する場合,同表5項により,変更後の請求について1項イで算出した額から,変更前の請求について1項イで算出した額を控除する。
請求拡張の追加額は,拡張した金額だけを独立した訴額として計算するものではない。
算定の基礎となる訴額は,費用法4条等に従って確認する。
請求書面に記載する金額を常にそのまま訴額と扱えるわけではないため,以下の計算例も訴額が確定していることを前提とする。
通常の訴え提起は別表第二1項イとロの合算額となるが,請求変更の5項と反訴の6項が参照するのは1項イであり,1項ロではない。
したがって,通常の電子的な訴え提起で加算する1400円等の1項ロの額を,反訴又は請求変更の手数料に改めて加えるものではない。
3 具体的な計算例
次の表は,別表第二1項イ・5項・6項に基づいて本記事で作成した計算例である。
すべて新法事件の第一審とし,表示額が訴額として確定しているものとする。
| 例 | 条件 | 計算 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| ①請求拡張 | 訴額100万円から200万円へ拡張 | 1万5000円-1万円 | 5000円 |
| ②反訴・控除なし | 訴額200万円の反訴で,目的同一による控除なし | 200万円の1項イの額 | 1万5000円 |
| ③反訴・目的同一 | 本訴の訴額100万円と目的を同じくする訴額200万円の反訴 | 1万5000円-1万円 | 5000円 |
| ④請求拡張・差額なし | 訴額101万円から110万円へ拡張 | 1万1000円-1万1000円 | 0円 |
1項イでは,訴額100万円までの部分は10万円までごとに1000円,100万円を超え500万円までの部分は20万円までごとに1000円を加算する。
訴額200万円であれば,100万円までの1万円に,超過する100万円分の5000円を加え,1万5000円となる。
訴額101万円と110万円では,いずれも100万円を超える部分が20万円までの1単位に収まるため,算定額は同じ1万1000円である。
このように,請求額を増やしても追加手数料が生じないことはあるが,請求変更の手続まで不要になるわけではない。
4 納付情報と納付日を確認する
新法事件の特定申立ての手数料は,費用法8条1項により,原則として所定の方法で現金納付する。
書面による申立てが認められ,かつ,やむを得ない事由がある場合の収入印紙による納付など,例外の条件は同項ただし書で確認する。
mintsでは,裁判所が登録した納付情報の納付番号,収納機関番号及び確認番号等を用い,Pay-easy対応の金融機関から納付する。
納付期限を過ぎると当該情報による納付ができなくなるため,期限を確認し,納付後は「納付日」に日付が表示されていることを確かめる(操作マニュアル56頁~58頁)。
納付情報が見当たらない場合や額に疑問がある場合は担当部に確認し,一般的な画面操作はPay-easyによる手数料納付の記事を参照されたい。
特定申立てに係る郵便物の料金等に充てる費用は,費用法11条1項ただし書により予納対象から除かれる。
これは鑑定その他の訴訟費用まで不要とするものではない。
操作マニュアル56頁は,旧法適用事件ではmintsを利用した手数料納付をしないよう注意している。
旧法本訴への反訴は,書面・収入印紙・郵便費用予納の取扱いに従い,必要額や切手の内訳を担当部に確認する。
第6 提出後の確認と手続上の制限
1 到達時点と時効・期間遵守
民事訴訟法132条の10第3項は,電子申立て等に係る事項がファイルに記録された時に,裁判所に到達したものとみなす旨を定めている。
アップロードの開始や手元への保存だけで,到達を確認したことにはならない。
反訴の新規申立てでは,ステータスが「提出済」となり,提出済みの申立書に受付番号と受理日時が記載されたことを確認する(操作マニュアル52頁~54頁)。
これらの表示は提出操作の結果を確認するものであり,反訴の適法要件すべてが満たされているという判断に代わるものではない。
民事訴訟法147条は,訴えの提起又は請求変更書面の裁判所への提出の時に,時効の完成猶予又は法律上の期間遵守に必要な裁判上の請求があったものとする旨を定めている。
実務上は,反訴や請求変更によって確保すべき効果に応じて請求と期限を特定し,入力の一時保存を提出完了と取り違えず,到達を示す申立書等を保存することが考えられる。
2 アップロード通知と送達は別である
反訴の訴状には民事訴訟法138条1項・146条4項,請求変更の書面には同法143条3項による送達が必要である。
相手方がファイルを閲覧できる状態になったことや,新着通知が出たことだけで,送達が完了したと判断しない。
知的財産高等裁判所「提出書面等のお願い」1(3)も,訴えの変更申立書などの送達を要する書面を,アップロードとは別に裁判所から送達する旨を説明している。
これは同裁判所の案内であり,全国の事件の送達方法を一律に定める記載として扱うものではない。
通常の準備書面の直送・受領書については,準備書面の提出に関する記事で説明している。
3 少額訴訟と控訴審の反訴
少額訴訟では,民事訴訟法369条により反訴を提起できない。
控訴審では,同法300条により相手方の同意が必要であり,異議を述べずに反訴の本案について弁論した場合には,同意したものとみなされる。
費用法別表第二5項・6項には控訴審の計算の特則があるため,第5の第一審の計算例をそのまま使用しない。
上訴一般については,控訴・上告・上告受理申立ての記事を参照されたい。
4 提出場所や申立種別を間違えた場合
手引41頁は,mints内の提出場所や申立種別の誤りだけで申立てが不適法になるわけではないとしつつ,裁判所の確認が遅れるおそれがあると説明している。
この説明は,管轄,法定の期限,反訴又は変更の要件まで解消するという意味ではないため,誤った提出に気付いた場合は,事件・提出日時・ファイル名・表示状態を確認し,担当部に対応を確認することが考えられる。
第7 出典
1 法令
①e-Gov法令検索「民事訴訟法」(令和8年8月30日現在。55条,132条の10・11,134条,138条,143条,146条,147条,261条,300条,369条及び令和4年法律第48号附則等)。
②e-Gov法令検索「民事訴訟費用等に関する法律」(同日現在。4条,8条,11条,別表第二1項・5項・6項等)。
2 裁判所の運用案内・操作説明
①最高裁判所事務総局民事局「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」(令和8年6月19日版。41頁,43頁~44頁)。
②裁判所mints操作マニュアル2.3版(令和8年7月15日改訂。30頁~47頁,50頁~54頁,56頁~58頁,65頁~68頁。PDF頁は冊子頁に3を加えた位置)。
③裁判所「民事裁判手続のデジタル化」(全面施行日の案内)。
④東京地方裁判所「よくある質問(Q&A)」民事第8部(mintsの提出制限に関する回答。該当記載の適用時点は明確でない)。
⑤知的財産高等裁判所「提出書面等のお願い」(1(3)。同裁判所における送達を要する書面の取扱い)。