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大腿骨骨折後の痛みの後遺障害|12級13号・14級9号を分ける画像所見,治療経過及び抜釘後疼痛(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 12級と14級は画像の有無だけで分かれない

大腿骨骨折後に残る股関節痛,大腿部痛又は膝痛について,自賠責保険の第12級13号と第14級9号を分けるのは,単純な「画像所見があれば12級,なければ14級」という二分法ではない。
第12級13号では,骨折又は治療後の形態・機能に関する所見が,疼痛の部位,性状,誘発動作及び治療経過と対応し,その疼痛を医学的に説明できることが中心となる。

画像に異常が写っていても,その異常が疼痛の原因を説明しなければ,第12級13号の裏付けにはならない。
反対に,単純X線で骨癒合が得られていても,CTで確認される固定材突出,診察時の限局した圧痛,手術所見又は一貫した診療録等を組み合わせて,疼痛原因を具体的に示せる場合がある。

2 疼痛を四つの層に分けて確認する

本記事では,等級認定に必要な検討を,①疼痛を生じさせ得る骨折後又は手術後の状態,②その状態を示す画像・手術記録・診察所見,③受傷から症状固定までの症状の一貫性,④疼痛の頻度・強さ及び労務への影響という四つの層に分ける。
この四層を同じ時系列上に置くと,画像だけが強く症状記録が弱い事案,画像は明瞭でないが症状と診察所見が一貫する事案,抜釘の前後で疼痛原因が変わった事案を区別できる。

この記事は,自動車事故による大腿骨骨折後の疼痛について,法令,行政基準,裁判例及び医学文献を照合してAIが作成した一般的な説明である。
個別事案の等級は,骨折部位,術式,既往症,画像及び診療録によって変わるため,本記事だけから確定できない。

3 本記事が扱わない障害

本記事は,疼痛を第12級13号又は第14級9号として評価する場合に対象を絞る。
股関節又は膝関節の可動域制限,大腿骨の偽関節・変形・短縮,人工骨頭・人工関節,骨髄炎及び複合性局所疼痛症候群については,それぞれ固有の認定基準があるため,疼痛等級へ一括して処理しない。

器質的障害又は機能障害から通常派生する疼痛は,原則としてその器質的・機能的障害に含めて評価される。
同じ疼痛を神経症状として別に加えて二重に評価するものではないため,まず他の障害経路が成立するかを確認する必要がある。

第2 12級13号と14級9号の認定基準

1 自賠責の等級表と労災認定基準の関係

自動車損害賠償保障法施行令別表第二は,第12級13号を「局部に頑固な神経症状を残すもの」,第14級9号を「局部に神経症状を残すもの」と定める。
自賠責保険金等支払基準第3は,等級認定を原則として労災保険の障害等級認定基準に準じて行うとしているため,二つの短い等級表文言だけでなく,厚生労働省の疼痛に関する認定基準を確認する必要がある。

労災の号数は自賠責と一部異なり,受傷部位に残る疼痛について,第12級12号と第14級9号の細目が置かれている。
号数の違いを混同せず,自賠責では第12級13号,第14級9号という表記を用いる。

2 12級では疼痛原因を他覚的に説明できることが中心となる

厚生労働省の疼痛に関する認定基準は,受傷部位の疼痛について,通常の労務には服せるものの,時に強い疼痛のためある程度の支障があるものを第12級の対象とする。
また,障害等級認定基準の一部改正は,第12級の神経症状を他覚的に証明できるものとして整理している。

大腿骨骨折後の疼痛では,「他覚的に証明できる」とは,画像に何らかの異常があることだけを意味しない。
骨折後の非癒合又は変形,固定材の位置,関節面の不整,骨頭壊死,感染等の所見が,疼痛の解剖学的位置と機序を説明し,診察所見及び時間的経過とも整合することが必要である。

3 14級も自覚症状の申告だけで決まるものではない

厚生労働省の疼痛に関する認定基準は,受傷部位にほとんど常時疼痛を残すものを第14級9号の対象としている。
したがって,第12級に足りる客観的な原因説明が得られない場合でも,事故後から症状固定まで疼痛部位と訴えが一貫し,治療内容,通院経過及び診察記録と矛盾しないことが第14級の検討に重要となる。

第14級9号は「画像に異常がない人へ自動的に認められる等級」ではない。
受傷直後に疼痛の記録がなく,長期間後に初めて別の部位の痛みが記載された場合,左右が一定しない場合又は診療録と後遺障害診断書が大きく食い違う場合には,症状の残存自体又は事故との因果関係が争われ得る。

4 仕事への支障は等級資料と損害資料で役割が異なる

疼痛のため時に労務へ支障が生じることは,第12級の行政基準が想定する症状の強さを具体化する資料となる。
立位,歩行,階段,車両乗降,しゃがみ込み又は重量物運搬のどの動作で,どの部位に,どの程度の痛みが出るかを診療録やリハビリテーション記録と対応させる必要がある。

もっとも,後遺障害等級と,損害賠償における労働能力喪失率又は喪失期間は別の問題である。
勤務配慮,配置転換,休業,減収及び具体的な職務動作は損害額の立証にも用いられるが,職業上の支障が大きいという事実だけで,疼痛原因の他覚的裏付けに代えることはできない。

評価項目第12級13号を検討する方向第14級9号を検討する方向
疼痛原因画像・手術記録・診察所見等から具体的に説明できる第12級に足りる原因の他覚的証明までは得られない
症状経過原因所見と部位・性状・誘発動作が一貫する受傷部位の疼痛が事故後から症状固定まで一貫する
頻度・支障時に強い疼痛が労務へ一定の支障を生じさせる受傷部位にほとんど常時疼痛を残す
注意点画像所見だけで自動的に成立しない自覚症状の申告だけで自動的に成立しない

第3 疼痛原因と画像・診察所見の対応

1 偽関節・変形癒合・骨欠損

骨折部の偽関節又は遷延癒合,角状・回旋変形,短縮又は骨欠損は,荷重時痛,筋疲労又は隣接関節への負担を説明し得る。
単純X線は骨折線,骨性架橋,アライメント及び固定材破損の経過を比較する基本資料となり,CTは骨性架橋,回旋又は関節面を立体的に確認する必要がある場合に用いられる。

ただし,偽関節又は変形が法定の器質的障害等級に該当する場合には,そこから通常派生する疼痛を別個の神経症状として重ねて評価しない。
画像所見を見つけた段階で疼痛等級だけを検討せず,偽関節・変形障害の要件と,疼痛が同じ原因から派生するかを先に整理する必要がある。

2 髄内釘・スクリュー・プレートによる刺激

髄内釘の近位端,横止めスクリュー,ラグスクリュー又はプレートが骨表面から突出し,腸脛靱帯,滑液包,筋又は皮下組織を刺激する場合には,局所痛の原因となり得る。
医学研究では,転子部骨折後のラグスクリューの外側突出と外側大腿部痛・患側を下にした臥位の困難との関連が報告されているが,研究で用いられた突出量は法的な等級境界値ではない。

固定材由来の疼痛を検討するときは,①画像上の突出位置,②その直上の限局した圧痛,③患側臥位又は特定動作による誘発,④骨癒合後も続く局所症状,⑤必要に応じて医師が行う局所注射への反応を対応させる。
診断的注射は医学的適応に基づく補助所見であり,自賠責の認定に必須の検査でも,固定材由来疼痛を確定する単独の検査でもない。

3 関節面,骨頭,軟部組織及び感染

大腿骨頸部骨折では骨頭壊死又は骨頭圧潰,転子部骨折では外転筋・腸脛靱帯周辺の軟部組織刺激,遠位部骨折では膝関節面の不整又は外傷後関節症が疼痛原因となり得る。
単純X線又はCTで骨形態と関節面を確認し,骨頭壊死,軟骨,筋腱又は神経の評価が必要な場合には,医学的適応に応じてMRIその他の検査が選択される。

発熱,創部排液,腫脹,発赤,炎症反応又は画像上の骨破壊がある場合には,感染又は骨髄炎を疼痛等級だけの問題にしない。
また,著しい皮膚色調・温度変化,浮腫,発汗異常又は関節拘縮等がある場合には,単純な受傷部位疼痛とは異なる病態を検討する必要がある。

4 画像所見と疼痛部位を対応させる表

疼痛原因の候補主に確認する資料対応を確かめる診察・経過
偽関節・遷延癒合経時的単純X線,必要に応じたCT,固定材の破損・ゆるみ骨折部の荷重時痛,圧痛,異常可動性,骨癒合経過
変形癒合・短縮正面・側面像,両側CT,全長撮影歩行・回旋動作での誘発,股・膝の回旋,左右差
固定材突出・軟部組織刺激単純X線,CT,インプラント情報,手術記録突出部直上の圧痛,患側臥位,歩行又は階段での局所痛
関節面不整・外傷後関節症荷重位単純X線,CT,必要に応じたMRI関節裂隙部の疼痛,腫脹,荷重・屈伸での誘発
骨頭壊死・圧潰経時的単純X線,MRI鼠径部痛,荷重時痛,可動時痛,発症時期
感染・骨髄炎創部所見,炎症反応,培養,単純X線・CT・MRI発赤,熱感,排液,腫脹,全身症状,抗菌薬・再手術経過

この表は,検査を網羅的に追加するための一覧ではない。
既に存在する画像と診療録から具体的な原因仮説を立て,その仮説を確認できる医学的適応がある場合に限って,追加検査を検討するための整理である。

第4 治療経過から疼痛の一貫性を確認する方法

1 受傷時から手術直後まで

最初に,救急記録,受傷時画像,手術記録,退院時要約及びインプラント情報から,骨折部位,関節内への波及,粉砕の程度,整復位,術式及び固定材料を確定する。
「大腿骨骨折」という傷病名だけでは,股関節痛,大腿部痛又は膝痛のどれが医学的に予想されるかを特定できないためである。

手術記録は,単純X線から判別しにくい進入部,筋・腱の処理,スクリュー長,骨移植,術中骨折又は神経・血管に関する所見を確認する資料となる。
術直後から新たな局所痛がある場合には,事故による骨折痛と,手術侵襲又は固定材による痛みを時間軸上で分ける。

2 荷重開始から外来・リハビリテーションまで

荷重開始後は,疼痛部位,安静時痛と動作時痛の別,歩行距離,立位時間,階段,患側臥位及び鎮痛薬の使用を,画像上の骨癒合及び固定材位置と並べる。
疼痛が「ある」とだけ記録されていても,大腿外側,鼠径部,骨折部又は膝関節周囲のどこに生じるかが分からなければ,原因所見との対応を判断しにくい。

リハビリテーション記録には,歩容,筋力,関節可動域,圧痛,腫脹,補助具及び練習中の誘発症状が反復して記載されることがある。
後遺障害診断書だけでなく,日常診療とリハビリテーションの同時期記録を用いることにより,症状固定時に初めて作られた説明か,治療中から継続していた症状かを確認できる。

3 症状固定時に残すべき記載

症状固定は,骨癒合という画像上の一時点だけで決まるものではない。
厚生労働省の症状固定に関する説明は,症状が安定し,一般に認められた医療を行っても改善が期待できなくなった状態を治ゆとして扱っており,完全に無症状となることを要件としていない。

症状固定時には,①疼痛部位,②安静時・荷重時・動作時の別,③頻度,④誘発動作,⑤圧痛等の診察所見,⑥画像上の原因候補,⑦今後の治療予定を相互に矛盾しない形で記録する。
「疼痛あり」という一語と画像一式を提出するだけでは,どの所見がどの疼痛を説明するのかが明らかにならない。

第5 抜釘前後の疼痛を評価する方法

1 抜釘予定があっても症状固定を一律に否定できない

将来の抜釘が予定されている事案について,「抜釘前は症状固定にできない」という一律の公的基準は確認できない。
問題は,抜釘によって残存症状が相当程度改善すると医学的に見込まれ,現時点の症状がなお変化する過程にあるか,それとも抜釘の実施時期・適応・改善可能性が不確実で,症状が既に安定しているかである。

固定材が骨で覆われていること,高齢又は骨粗鬆症,抜去後の骨欠損・再骨折の危険,感染,麻酔リスク等から抜釘を行わない方針となる場合がある。
反対に,骨癒合後の明瞭な固定材突出と局所痛があり,近く抜釘又はスクリュー交換を行う予定で,改善可能性を具体的に評価できる場合には,手術後の状態を確認してから症状固定を判断する合理性がある。

2 抜釘前に固定材由来の疼痛を確かめる資料

抜釘前には,①骨癒合の完成,②固定材の位置・突出・ゆるみ・破損,③固定材直上の限局した圧痛,④患側臥位,歩行又は筋収縮による誘発,⑤他の疼痛原因の有無,⑥抜釘の目的と期待される効果を確認する。
主治医が「疼痛の原因は固定材と考える」と記載した場合も,その根拠となる部位・画像・診察所見が分かることが望ましい。

医学文献では,局所圧痛や医師が必要と判断した局所注射が,外側大腿部痛の原因を絞る補助となり得るとされる。
もっとも,原因診断は臨床全体から行うものであり,注射を等級立証のためだけに当然に実施するものではない。

3 抜釘後に軽快・不変・増悪した場合の分岐

抜釘後に同じ部位の疼痛が軽快した場合は,固定材が疼痛へ寄与していたという原因仮説を支持する。
ただし,症状固定の時点が抜釘の前か後かを区別し,抜釘後に残った症状を改めて記録しなければ,過去の強い痛みだけから現在の等級を決めることはできない。

抜釘後も疼痛が変わらない場合は,固定材だけを原因とする仮説が弱まるが,骨折部の変形,関節面,筋腱,神経又は別部位の障害が残っていないかを確認する。
疼痛が軽快しなかったという結果は,抜釘前に痛みが存在しなかったことを意味せず,原因仮説を見直す資料である。

抜釘後に疼痛が増悪し,又は新しい部位へ生じた場合は,抜釘前からの疼痛と,新たな骨折,骨欠損,感染,神経障害又は軟部組織損傷を分ける。
抜釘前後の画像,手術記録,術後早期の診療録及び医師意見がなければ,単なる自覚的増悪か,新しい医学的障害かを判断しにくい。

4 抜釘は疼痛改善を保証する処置ではない

大腿骨髄内釘の抜去後に主観的機能が改善した研究,症候性の固定材を抜去した患者の多くで疼痛が改善した研究及び突出したラグスクリューを短いものへ交換して改善した小規模研究がある。
一方,疼痛を理由に抜釘した患者の一部で症状が軽快しなかった研究もあり,固定材除去後の骨欠損,応力集中及び近位大腿骨骨折等の危険が指摘されている。

これらの研究は,抜釘がすべての患者に有効であることも,抜釘前疼痛が固定材由来であることも証明しない。
抜釘の適応は,年齢,骨質,骨癒合,固定材位置,症状,代替治療及び手術リスクを踏まえて医師が判断するものであり,等級申請を目的として当然に実施する処置ではない。

第6 裁判例が示す12級と14級の分かれ目

1 固定材突出と疼痛の対応から12級を認めた裁判例

名古屋地方裁判所令和2年2月12日判決(平成28年(ワ)第5372号,交通事故民事裁判例集53巻1号174頁)は,左大腿骨転子部の高度粉砕骨折後に,左股関節の持続する鈍痛と,長時間の立位又は歩行による鋭い痛みが残った事案を扱った。
画像では髄内釘二本の先端が上方又は外側へ突出し,医師はその所見と疼痛との関係を説明していた。

自賠責は骨癒合が良好で関節面の不整もないこと等から第14級9号としたが,裁判所は,骨折の程度,固定材突出,疼痛の部位・性状,医師の意見及び抜釘の困難性を総合し,第12級13号に当たると判断した。
判決中の突出量は当該画像に関する事件固有の数値であり,「何ミリメートル以上なら第12級」という一般的な境界を定めたものではない。

2 可動域制限を疼痛原因の所見としなかった裁判例

横浜地方裁判所令和6年7月4日判決(令和5年(ワ)第18号,交通事故民事裁判例集57巻4号73頁)は,左大腿骨外側顆骨折及び左腓骨頭骨折後の左膝痛を扱った。
被害者側は膝関節の可動域制限が疼痛を裏付ける客観的所見であると主張したが,裁判所は,可動域制限は疼痛の原因ではなく,疼痛の結果又は症状であるとして,疼痛原因を示す他の客観的所見もないことから,第12級13号を否定し,第14級9号を認めた。

この判決は,何らかの検査値又は異常所見が存在するだけでは足りず,その所見が疼痛の原因をどのように示すかが必要であることを明確にする。
可動域制限が独立した機能障害等級に達するかという問題と,可動域制限が疼痛原因の裏付けになるかという問題を分ける必要がある。

3 二つの裁判例から導ける範囲

二つの裁判例を比較すると,第12級では,客観的所見の存在だけでなく,所見から疼痛へ至る医学的な経路,疼痛部位との解剖学的対応及び治療経過との整合が重視されていると整理できる。
第14級は,第12級に必要な原因の他覚的証明が得られない場合でも,受傷後から残る疼痛の一貫性を評価する経路として現れている。

もっとも,下級審の二事例から,すべての裁判所又は自賠責実務に共通する固定的な証明公式を導くことはできない。
裁判では,自賠責認定と異なる等級を民事損害賠償の前提として判断することがあり,骨折部位,術式,提出資料及び争点も事件ごとに異なる。

第7 被害者側が資料を収集する順序と停止基準

1 最初に集める低負担の資料

被害者側が最初に収集する資料は,①救急記録・初診記録,②退院時要約,③手術記録・インプラント情報,④受傷時から症状固定時までの画像DICOMと読影報告書,⑤外来診療録,⑥リハビリテーション記録,⑦後遺障害診断書である。
これらは通常,治療の過程で作成される資料であり,まず既存資料だけで骨折部位,疼痛部位,原因候補及び時系列を一枚に整理する。

医療機関が保有する資料は,患者本人が診療記録等の開示を求める方法が基本となるが,保存状況及び提供形式は医療機関ごとに異なる。
相手方又は第三者が保有する資料を当然に入手できるものとせず,まず本人側で取得できる診療記録と画像から争点を確定する。

2 資料ごとに証明する事実を決める

画像は,非癒合,変形,固定材位置,関節面又は骨頭の形態を証明する資料である。
画像だけから疼痛の強さ又は頻度を直接測定できないため,圧痛,誘発動作,歩行,服薬及び症状の反復記録を診療録等から補う。

手術記録は,固定材の種類・位置,術中所見及び追加損傷を確認し,リハビリテーション記録は,治療場面で反復して現れた疼痛と機能上の支障を確認する。
後遺障害診断書には,これらの資料から導ける残存症状を記載するのであり,診断書の一文だけで,それ以前の診療録にない原因又は症状を補うことは難しい。

3 追加検査又は医学意見へ進む条件

追加CT,MRI,再読影,主治医照会又は専門医意見へ進むのは,既存資料に具体的な争点が残り,その手段によって結論を変え得る事実を確認できる場合である。
例えば,単純X線では固定材突出と疼痛部位の対応が分からない場合,画像報告と実画像が食い違う場合又は非該当理由が「疼痛の客観的裏付けがない」と特定されている場合が考えられる。

検査の医学的適応は医師が判断する。
等級申請だけを目的として,放射線被ばく,身体的負担又は手術リスクを伴う検査・処置を当然に勧めることはできず,私的鑑定又は高額な意見書も,既存資料で残った一つの争点を解決できる場合に限って検討する。

4 反対方向の資料と深追いしない場合

第12級の主張に反する資料として,骨癒合良好,固定材突出なし,疼痛部位と画像所見の不一致,受傷後長期間の無症状記録,左右又は部位の変遷,圧痛・腫脹等の診察所見なし,抜釘後も不変で他原因の所見もないこと等が考えられる。
これらを無視せず,記録漏れ,病態の変化又は別原因で合理的に説明できるかを先に検討する。

既存画像に疼痛原因を示す所見がなく,診察所見もなく,受傷から症状固定までの疼痛記録が途切れ,追加検査で結論が変わる具体的な見込みもない場合には,第12級のための高負担な調査を深追いしない。
第14級の要件に関係する症状の一貫性を検討し,それも確認できない場合には,疼痛等級を前提としない損害資料又は別の残存障害の有無へ調査対象を切り替える。

第8 関連する既存記事

大腿骨骨折の部位別の等級経路は,大腿骨骨折の後遺障害等級と認定方法――頸部・転子部・骨幹部・遠位部の違いで全体を確認できる。
骨幹部の非癒合,回旋変形及び短縮の測定は,大腿骨骨幹部骨折の後遺障害――偽関節・回旋変形・下肢短縮を画像と測定で立証する方法を参照されたい。

転子部の骨折型,滑動,内反及び固定材関連痛は,交通事故による大腿骨転子部骨折の後遺障害等級で扱っている。
遠位部骨折後の膝関節面,可動域及び不安定性は,交通事故による大腿骨顆部・顆上骨折の後遺障害等級認定を参照されたい。

疼痛ではなく股関節の他動可動域が問題となる場合は,股関節の可動域制限と後遺障害12級7号で測定方法と等級境界を説明している。
非癒合自体の等級は,交通事故による偽関節(骨癒合不全)の後遺障害等級を参照されたい。

感染又は骨髄炎が残る場合は,骨折後の骨髄炎と症状固定が対象となる。
後遺障害等級が確定した後の慰謝料及び逸失利益は,大腿骨骨折の後遺障害慰謝料・逸失利益で別に扱っている。

第9 出典・参考資料

1 法令・行政資料

e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法施行令」(昭和30年政令第286号)第2条・別表第二(令和8年8月24日確認)
国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」後遺障害別表第二,第12級及び第14級(令和8年8月24日確認)
金融庁・国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」第3(令和8年8月24日確認)
厚生労働省労働基準局長「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」平成15年8月8日基発第0808002号,別添1第3の2(4)「疼痛等感覚障害」(令和8年8月24日確認)
厚生労働省労働基準局長「障害等級認定基準の一部改正について」平成16年6月4日基発第0604002号,別紙5(令和8年8月24日確認)
厚生労働省「2-2 療養費はいつまでもらえるのですか。」症状固定に関する説明(令和8年8月24日確認)
労働保険審査会平成30年労第207号裁決3頁(資料上の頁。抜釘後疼痛に関する脛骨・腓骨骨折の類推資料,令和8年8月24日確認)

2 裁判例

①名古屋地方裁判所令和2年2月12日判決・平成28年(ワ)第5372号,交通事故民事裁判例集53巻1号174頁(裁判所HP未掲載。弁護士ドットコムLIBRARYで判決全文確認)
②横浜地方裁判所令和6年7月4日判決・令和5年(ワ)第18号,交通事故民事裁判例集57巻4号73頁(裁判所HP未掲載。弁護士ドットコムLIBRARYで判決全文確認)

3 医学文献

①Toms AD, Morgan-Jones RL, Spencer-Jones R. Intramedullary femoral nailing: removing the nail improves subjective outcome. Injury. 2002;33(3):247-249. PMID:12084641. DOI:10.1016/S0020-1383(01)00145-0(PubMed抄録確認,出版社本文未確認)
②Hui C, Jorgensen I, Buckley R, Fick G. Incidence of intramedullary nail removal after femoral shaft fracture healing. Can J Surg. 2007;50(1):13-18. PMID:17391610. PMCID:PMC2384239(全文確認)
③Dodenhoff RM, Dainton JN, Hutchins PM. Proximal thigh pain after femoral nailing. Causes and treatment. J Bone Joint Surg Br. 1997;79(5):738-741. PMID:9331026. DOI:10.1302/0301-620x.79b5.7345(PubMed抄録確認,出版社本文未確認)
④Güven Ş, Çabuk H, Kılıç K, Çelik M, Çabuk FK, Öztürk H. Laterally Protruded Cephalomedullary Nail Lag Screws are a Source of Consistent Thigh Pain After Pertrochanteric Fracture. J Orthop Trauma. 2024;38(6):320-326. PMID:38470134. DOI:10.1097/BOT.0000000000002803(PubMed抄録確認)
⑤Rosen M, Kasik C, Swords M. Management of Lateral Thigh Pain following Cephalomedullary Nail: A Technical Note. Spartan Med Res J. 2020;5(1):12931. PMID:33655183. PMCID:PMC7746117. DOI:10.51894/001c.12931(全文確認)
⑥Sanders DW, MacLeod M, Charyk-Stewart T, Lydestad J, Domonkos A, Tieszer C. Functional outcome and persistent disability after isolated fracture of the femur. Can J Surg. 2008;51(5):366-370. PMCID:PMC2556524(全文確認)
⑦Khan AZ, Martin JR, Sculco PK, Lygrisse KA, Leslie MP. Lag Screw Exchange for Impinging Lateral Hardware Following Intramedullary Nailing of Intertrochanteric Hip Fractures. Iowa Orthop J. 2024;44(1):157-160. PMID:38919366. PMCID:PMC11195895(全文確認)
⑧Lee JY, Kong GM. Considerations for removal of cephalomedullary screws and blades following intertrochanteric femoral fracture healing: a narrative review. EFORT Open Rev. 2026;11(6):591-597. PMID:42227240. PMCID:PMC13261623. DOI:10.1530/EOR-2026-0013(全文確認。総説)