弁護士山中理司

須田健嗣裁判官(62期)の経歴

生年月日 S57.12.30
出身大学 早稲田大院
定年退官発令予定日 R29.12.30
R5.4.1 ~ 名古屋地裁3刑判事
R4.8.2 ~ R5.3.31 名古屋高裁判事
R2.4.1 ~ R4.8.1 最高裁広報課付
H30.8.16 ~ R2.3.31 名古屋地裁判事補
H28.6.1 ~ H30.8.15 在アメリカ合衆国日本国大使館二等書記官
H28.4.1 ~ H28.5.31 最高裁秘書課付
H27.12.9 ~ H28.3.31 最高裁総務局付
H24.4.1 ~ H27.12.8 東京地家裁判事補
H22.1.16 ~ H24.3.31 東京地裁判事補

長尾洋子裁判官(59期)の経歴

生年月日 S49.5.30
出身大学 お茶の水女子大
定年退官発令予定日 R21.5.30
R8.4.1 ~ 千葉地家裁佐倉支部判事
R5.4.1 ~ R8.3.31 東京地裁10刑判事
R3.4.1 ~ R5.3.31 金融庁審判官
H30.4.1 ~ R3.3.31 福岡地家裁行橋支部判事
H28.10.16 ~ H30.3.31 千葉地裁5刑判事
H27.4.1 ~ H28.10.15 千葉地家裁判事補
H24.4.1 ~ H27.3.31 名古屋地家裁一宮支部判事補
H22.4.1 ~ H24.3.31 神戸地家裁姫路支部判事補
H18.10.16 ~ H22.3.31 岡山地裁判事補

*1 59期の長尾崇裁判官及び59期の長尾洋子裁判官の勤務場所は似ています。
*2 和光大学 表現学部 総合文化学科の長尾洋子教授(和光大学HPの「長尾洋子」参照)とは別の人です。
*3 以下の記事も参照してください。
・ 判事補の外部経験の概要
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

長尾崇裁判官(59期)の経歴

生年月日 S50.6.29
出身大学 中央大
定年退官発令予定日 R22.6.29
R6.4.1 ~ 千葉地家裁八日市場支部判事
R3.4.1 ~ R6.3.31 東京地裁7民判事
H30.4.1 ~ R3.3.31 福岡家地裁田川支部判事
H28.10.16 ~ H30.3.31 千葉地裁4民判事
H27.4.1 ~ H28.10.15 千葉地家裁判事補
H25.4.1 ~ H27.3.31 岐阜家地裁判事補
H24.4.1 ~ H25.3.31 岐阜地家裁判事補
H22.4.1 ~ H24.3.31 大阪地家裁堺支部判事補
H18.10.16 ~ H22.3.31 高松地裁判事補

*1 59期の長尾崇裁判官及び59期の長尾洋子裁判官の勤務場所は似ています。
*2 以下の記事も参照してください。
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

佐藤しほり裁判官(60期)の経歴

生年月日 S54.8.7
出身大学 不明
定年退官発令予定日 R26.8.7
R4.7.25 ~ 司研民裁教官
H31.4.1 ~ R4.7.24 東京地裁49民判事
H30.1.16 ~ H31.3.31 金沢家地裁判事
H28.4.1 ~ H30.1.15 金沢家地裁判事補
H25.4.1 ~ H28.3.31 大阪地家裁判事補
H23.4.1 ~ H25.3.31 金融庁審判官
H22.4.1 ~ H23.3.31 横浜地家裁判事補
H20.1.16 ~ H22.3.31 横浜地裁判事補

* 以下の記事も参照してください。
・ 司法研修所民事裁判教官の名簿
・ 司法研修所教官会議の議題及び議事録
・ 司法修習生指導担当者協議会
・ 判事補の外部経験の概要
・ 行政機関等への出向裁判官

馬場崇裁判官(59期)の経歴

生年月日 S50.12.23
出身大学 早稲田大
定年退官発令予定日 R22.12.23
R4.7.25 ~ 司研刑裁教官
R2.4.1 ~ R4.7.24 さいたま地裁5刑判事
H29.4.1 ~ R2.3.31 山形地家裁判事
H28.10.16 ~ H29.3.31 東京地裁8刑判事(租税部)
H28.4.1 ~ H28.10.15 東京地裁判事補
H26.4.1 ~ H28.3.31 最高裁刑事局付
H23.1.28 ~ H26.3.31 福島地家裁郡山支部判事補
H18.10.16 ~ H23.1.27 大阪地裁判事補

* 以下の記事も参照してください。
・ 司法研修所教官会議の議題及び議事録
・ 司法修習生指導担当者協議会
・ 司法研修所刑事裁判教官の名簿
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

離婚事件に関するメモ書き

目次
1 総論
2 婚姻費用に関するメモ書き
3 養育費に関するメモ書き
3の2 離婚慰謝料に関するメモ書き
4 面会交流に関するメモ書き
4の2 子の連れ去りに関するメモ書き
5 性同一性障害に関するメモ書き
6 生殖補助医療に関するメモ書き
7 令和4年12月の民法(親子法制)等の改正項目
8 関連記事その他

1 総論
(1)ア 法務省HPに「離婚を考えている方へ~離婚をするときに考えておくべきこと~」が載っています。
イ 東京家裁HPの「養育費・婚姻費用算定表」に,令和元年12月23日に公表された改定標準算定表(令和元年版)が載っています。
(2) 二弁フロンティア2021年12月号「家庭裁判所から見た離婚や面会交流等の調停実務」が載っています。
(3)  離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥ります(最高裁令和4年1月28日判決)。


2 婚姻費用に関するメモ書き
(1)ア 裁判所HPの「婚姻費用の分担請求調停」には以下の記載があります。
    別居中の夫婦の間で,夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用(婚姻費用)の分担について,当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合には,家庭裁判所にこれを定める調停又は審判の申立てをすることができます。調停手続を利用する場合には,婚姻費用の分担調停事件として申立てをします。
イ 裁判所HPに「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」が載っています。
(2) 婚姻費用を分担すべき義務者の収入は,現に得ている実収入によるのが原則であるところ,失職した義務者の収入について,潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないと解されています(東京高裁令和3年4月21日決定(判例秘書に掲載))。
(3) 二弁フロンティア2022年12月号「家事事件の基礎と実践」には以下の記載があります。
    夫婦関係調整調停を申し立てる際に、併せて婚姻費用についても調停申立てをするのか、また面会交流についても併せて申立てをするのかについても確認、検討した方がいいと思います。
    婚姻費用が支払われていない場合には、同時に申し立てた方がいい、あるいは夫婦関係調整調停より先だってまずは婚姻費用調停を申し立てた方がいいという場合もあります。
(4) 最高裁令和5年5月17日決定は,婚姻費用分担審判において、夫と民法772条の推定を受けない嫡出子との間の父子関係の存否を審理判断することなく、上記父子関係に基づく夫の扶養義務を認めた原審の判断に違法があるとされた事例です。
(5) 福岡高裁平成29年7月12日決定は,「夫である抗告人が,妻である相手方に婚姻費用の減額を求めた事案において,抗告審で,抗告人による婚姻費用の支払を定めた前回審判後,相手方が給与収入を得るようになったことは婚姻費用を減額すべき事情の変更であるとして減額を認めた原審を相当とした上,原審の申立て時期に遡って婚姻費用を減額するため,同時期以降,抗告人が前件審判に従って支払った婚姻費用の過払部分につき,相手方に対し,同人の生活に配慮して分割支払による精算を命じた事例」です。


3 養育費に関するメモ書き
(1) 法務省HPに「養育費の取決めをしていない方へ 調停の簡単な申立書、つくりました」,及び「「こどもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」について」が載っています。
(2) 交通事故により死亡した幼児の財産上の損害賠償額の算定については,幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなつた場合においても,将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきではありません(最高裁昭和53年10月20日判決。なお,先例として,最高裁昭和39年6月24日判決参照)。
(3) 東京地裁平成30年5月30日判決(担当裁判官は51期の栄岳夫。判例秘書に掲載)は,破産手続開始申立ての前々日に入金された生命保険金の解約返戻金のうち50万円を原資として,その翌日,つまり申立ての前日に滞納養育費を一括弁済した事案について,偏頗行為否認の成立を認めました。
(4)ア 令和2年4月1日,特別養子縁組における養子となる者の年齢の上限を原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げられました(法務省HPの「民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)について」参照)。
イ 厚生労働省HPに「特別養子縁組について」が載っています。
(5)ア 令和4年12月の民法改正により創設された民法821条は,「親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。 」と定めています。
イ 令和4年12月の民法改正により「親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」と定めていた民法822条は削除されました。
(6) 養育費・婚姻費用算定表(Q&Aを含む)(令和元年12月の東京家裁の文書)12頁には以下の記載があります。
算定表では,公立中学校・公立高等学校に関する学校教育費を指数として考慮していますが,私立学校に通う場合の学校教育費等は考盧していませんので,義務者が当該私立学校への進学を了解していた場合や, その収入及び資産の状況等からみて義務者に負担させることが相当と認められる場合には,算定表によって求められた額に権利者と義務者の収入に応じて不足分を加算することを検討することになります。そして,私立学校の入学金,授業料,交通費や塾代等のうち,義務者がどのような費用を負担すべきかについては,裁判官の判断に委ねられることになります。
(7) 宇都宮家裁令和4年5月13日審判(判例タイムズ2024年3月号(2024年3月号))は,養育費減額の審判において,相手方が,相手方の夫の直近の収入資料の提出を拒否した場合に,相手方の夫が精神科の開業医であることに鑑み,少なくとも算定表の上限の金額の営業所得を得ていると推認して,養育費を算定した事例です。
(8) 法務省HPに養育費の支払義務者が自営業者等である場合における養育費額の算定の在り方に関する調査研究報告書(令和4年3月の商事法務研究会の文書)が載っています。


3の2 離婚慰謝料に関するメモ書き
(1) 夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,当該第三者が,単に不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできません(最高裁平成31年2月19日判決)。
(2) 最高裁令和4年1月28日判決には「被上告人の慰謝料請求は,上告人との婚姻関係の破綻を生ずる原因となった上告人の個別の違法行為を理由とするものではない。そして,離婚に伴う慰謝料とは別に婚姻関係の破綻自体による慰謝料が問題となる余地はないというべきであり,被上告人の慰謝料請求は,離婚に伴う慰謝料を請求するものと解すべきである。」と書いてあります。


4 面会交流に関するメモ書き
(1) 母の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は, 別居中の共同親権者である父が行ったとしても,監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず,行為態様が粗暴で強引なものであるといった事情の下では,違法性が阻却されるものではありません(最高裁平成17年12月6日決定)。
(2) 子の親権者を元妻と定めて離婚した後に元妻が死亡した場合,民法838条1号に基づき後見が開始され,未成年後見人選任の申立て又は親権者変更の申立てがなされることになります(デイライト法律事務所HPの「親権者が死亡した場合どうなる?親権者変更のタイミングが重要!」参照)。
(3) 父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできません(最高裁令和3年3月29日決定)。
(4)ア 最高裁令和4年6月21日決定は,ハーグ条約実施法134条に基づく間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立てが不適法であるとされた事例です。
イ 最高裁令和4年11月30日決定は, 子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制の方法による子の引渡しの強制執行の申立てが権利の濫用に当たるとした原審の判断に違法があるとされた事例です。
(5)ア  離婚調停において調停委員会の面前でその勧めによってされた合意により,夫婦の一方が他方に対してその共同親権に服する幼児を期間を限って預けたが,他方の配偶者が,右合意に反して約束の期日後も幼児を拘束し,右幼児の住民票を無断で自己の住所に移転したなどといった事実関係の下においては,右拘束には,人身保護法2条1項,人身保護規則4条に規定する顕著な違法性があります(最高裁平成6年7月8日判決)。
イ  離婚等の調停の期日において調停委員の関与の下に形成された夫婦間の合意によってその共同親権に服する幼児との面接が実現した機会をとらえて,夫婦の一方が実力を行使して右幼児を面接場所から自宅へ連れ去って拘束したなどといった事情の下においては,右幼児が現に良好な養育環境の下にあるとしても,右拘束には,人身保護法2条1項,人身保護規則4条に規定する顕著な違法性があるといえます(最高裁平成11年4月26日判決)。


4の2 子の連れ去りに関するメモ書き
(1) 日本人である妻と別居中のオランダ国籍の者が,妻において監護養育していた2歳4か月の子をオランダに連れ去る目的で入院中の病院から有形力を用いて連れ出した判示の行為は,国外移送略取罪に該当し,その者が親権者の1人として子を自分の母国に連れ帰ろうとしたものであることを考慮しても,その違法性は阻却されません(最高裁平成15年3月18日決定)。
(2) 母の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は, 別居中の共同親権者である父が行ったとしても,監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず,行為態様が粗暴で強引なものであるなどといった下では,違法性が阻却されるものではありません(最高裁平成17年12月6日決定)。


5 性同一性障害に関するメモ書き
(1) 3条1項2号は合憲であること
・ 性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に婚姻していないこと」を求める 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項2号は,憲法13条,14条1項及び24条に違反しません(最高裁令和2年3月11日決定)。
(2) 3条1項3号は合憲であること
・ 性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に未成年の子がいないこと」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号の規定が憲法13条,14条1項に違反するものでない(最高裁令和3年11月30日決定)ことについては,裁判官宇賀克也の反対意見が付いています。
(3) 3条1項4号は違憲であること
ア 性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は,憲法13条,14条1項に違反するものでない(最高裁平成31年1月23日決定)ことについては,裁判官鬼丸かおる及び裁判官三浦守の補足意見が付いています。
イ 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号に関する特別抗告事件について,最高裁第一小法廷は,令和4年12月7日,審理を大法廷に回付することを求め,最高裁大法廷令和5年10月25日決定は,最高裁平成31年1月23日決定を変更した上で,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は憲法13条に違反すると判示しました。
(4) その他
・ 嫡出でない子は,生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し,その者の法令の規定の適用の前提となる性別にかかわらず,認知を求めることができます(最高裁令和6年6月21日判決)。

6 生殖補助医療に関するメモ書き
(1) 生殖補助医療とは,人工授精又は体外受精若しくは体外受精胚移植を用いた医療をいいますところ,令和3年12月11日同日以後に生殖補助医療により出生した子については,生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律が適用されるため,以下の取扱いとなります。
① 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し,出産したときは,その出産をした女性がその子の母となります(9条)。
② 妻が,夫の同意を得て,夫以外の男性の精子(その精子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により懐胎した子については,夫は,その子が嫡出であることを否認することができません(10条)。
(2) 令和4年12月の法改正により,令和6年夏以降については,10条の主体に子及び妻が追加されます。


7 令和4年12月の民法(親子法制)等の改正項目
(1) 民法(親子法制)等の改正に関する要綱案(令和4年2月1日付)に基づき実施された,令和4年12月の民法(親子法制)等の改正項目は以下のとおりです。
① 懲戒権に関する規定の見直し
② 嫡出の推定の見直し及び女性に係る再婚禁止期間の廃止
③ 嫡出否認制度に関する規律の見直し
④ 第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係に関する民法の特例に関する規律の見直し
⑤ 認知制度の見直し
(2) 令和4年12月の民法等の改正は令和6年夏までに実施される予定です。



8 関連記事その他

(1) 弁護士法人法律事務所DUON HP「離婚で重要な「証拠集め」の方法をパターン別に弁護士が解説」が載っています。
(2) 法制審議会 家族法制部会は令和3年3月30日に第1回会議を開催していますところ,「家族法制の見直しに関する中間試案」(令和4年11月15日)の取りまとめを作成しています。
(3)ア 夫婦間の協力扶助に関する処分の審判は憲法32条及び82条に違反しません(最高裁大法廷昭和40年6月30日決定)。
イ  離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことは許されません(最高裁令和4年12月26日判決)。
ウ 直系血族間,二親等の傍系血族間の内縁関係は,我が国の現在の婚姻法秩序又は社会通念を前提とする限り,反倫理性,反公益性が極めて大きいと考えられるのであって,いかにその当事者が社会通念上夫婦としての共同生活を営んでいたとしても,厚生年金保険法3条2項によって保護される配偶者には当たりません(最高裁平成19年3月8日判決)。
エ 児童に姿態をとらせ,これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について,当該行為が同条4項
の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても,なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立し,同罪で公訴が提起された場合,裁判所は,同項を適用することができます(最高裁令和6年5月21日判決)。
(4) 平成16年4月1日に人事訴訟法が施行された結果,離婚訴訟を含む人事訴訟は地方裁判所ではなく,家庭裁判所で審理されるようになりました(大阪家裁HPの「人事訴訟の概況説明」参照)。
(5) 大阪家裁HPの「人事訴訟事件について」には例えば,以下の資料が載っています。
・ 離婚訴訟に関する協力依頼について
・ 訴訟上の救助を申し立てる場合について
・ 住所等の秘匿について
・ 調査嘱託について
・ 親権者の指定について
(6)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 人事訴訟事件における事実の調査に関する控訴審書記官事務処理要領(平成16年3月の大阪高裁民事部書記官事務検討委員会の文書)
・ 人事訴訟事件に関する控訴審書記官事務の留意事項(平成16年3月の大阪高裁民事部書記官事務検討委員会の文書)
・ 民事訴訟法等の一部を改正する法律及び民事訴訟規則等の一部を改正する規則の施行に伴う人事訴訟手続及び家事事件手続に関する事務処理上の留意点について(令和4年12月1日付の最高裁家庭局第二課長等の事務連絡)
・ 戸籍記載の嘱託手続について(平成24年11月22日付の最高裁家庭局長及び総務局長通達)
→ 令和4年12月22日最終改正のものです。

イ 以下の記事も参照してください。
・ 家事事件に関する審判書・判決書記載例集(最高裁判所が作成したもの)
・ 離婚時の財産分与と税金に関するメモ書き

相続事件に関するメモ書き

目次
第1 遺産分割に関するメモ書き
1 特別受益
2 寄与分
3 詐害行為取消権及び無償否認
4 代償分割
5 要素の錯誤
6 非嫡出子の相続分
7 遺産分割の調停及び審判の管轄
8 未支給年金
9 その他
第2 限定承認に関するメモ書き
1 総論
2 限定承認と訴訟承継
3 限定承認と判決
4 限定承認と譲渡所得税
5 その他
第3 相続放棄に関するメモ書き
1 総論
2 相続放棄の期間制限の起算点
3 法定単純承認に当たる例
4 法定単純承認に当たらない例
5 その他
第4 遺言に関するメモ書き
1 遺言の解釈
2 相続させる遺言
3 自筆証書遺言の押印
4 自筆証書遺言の破棄
5 その他自筆証書遺言関係
6 秘密証書遺言
7 その他
第5 相続欠格事由に関するメモ書き
1 自筆証書遺言の訂正
2 遺言書の破棄又は隠匿
第6 相続回復請求に関するメモ書き
第7 預貯金債権の仮払い
1 総論
2 民法909条の2に基づく預貯金債権の仮払い
3 家事事件手続法200条3項に基づく預貯金債権の仮分割の仮処分
第8 共有関係に関するメモ書き
第9 遺産確認の訴えに関するメモ書き
第10 相続税に関するメモ書き
1 敷金の取扱い
2 債務控除
3 相続税のかかる家庭用財産等
4 個人事業主が従業員に支払う退職金に関するメモ書き
5 相続税における配偶者の税額の軽減
6 未分割遺産に関する更正の請求の特則
7 相続税評価額
8 その他
第11 在日韓国人の相続に関するメモ書き
1 総論
2 家族関係証明書の取得
3 電算化除籍謄本
4 相続の準拠法
5 相続放棄
6 その他
第12 デジタルの相続手続きに関するメモ書き
第13 関連記事その他

第1 遺産分割に関するメモ書き
1 特別受益
(1) 10年の期間制限がないこと
・ 相続人間の「遺産分割協議における遺産分割の割合(具体的相続分)」の特別受益については,遺留分算定の場合の特別受益と異なり,相続法改正前と同様,特に10年という期間制限はありません。
    ただし,令和10年4月1日以降については,相続開始の時から10年以内に遺産分割の請求をしない限り特別受益及び寄与分を考慮してもらえなくなります(民法904条の3のほか,愛知県名古屋市の相続弁護士HP「相続開始から10年で特別受益、寄与分の主張ができなくなります」参照)。
(2) 死亡保険金は原則として特別受益にならないこと
ア 被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となります(最高裁平成16年10月29日判決)。
イ 広島高裁令和4年2月25日決定(判例体系に掲載)は,「本件死亡保険金の合計額は2100万円であり、被相続人の相続開始時の遺産の評価額(772万3699円)の約2.7倍、本件遺産分割の対象財産(遺産目録記載の財産)の評価額(459万0665円)の約4.6倍に達しており、その遺産総額に対する割合は非常に大きいといわざるを得ない。」としつつも,結論としては,最高裁平成16年10月29日判決が判示するところの特段の事情はないと判断しました。
(3) 遺留分については特別受益の持戻し免除はないこと
    特別受益に当たる贈与についてされた当該贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の被相続人の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合,当該贈与に係る財産の価額は,上記意思表示が遺留分を侵害する限度で,遺留分権利者である相続人の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されます(最高裁平成24年1月26日判決)。
    つまり,遺留分減殺請求により特別受益に当たる贈与が減殺された場合、持戻し免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度で失効するということです(あなたの弁護士HPの「遺留分には持ち戻し免除の制度がない|特別受益の持戻しと遺留分の関係」参照)。
(4) 無償による相続分の譲渡
・  共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たります(最高裁平成30年10月19日判決)。


2 寄与分
(1)  家事審判法9条1項乙類9号の2の寄与分を定める処分の審判は,憲法32条,82条に違反しません(最高裁昭和60年7月4日決定)。
(2) 令和10年4月1日以降については,相続開始の時から10年以内に遺産分割の請求をしない限り特別受益及び寄与分を考慮してもらえなくなります(民法904条の3のほか,愛知県名古屋市の相続弁護士HP「相続開始から10年で特別受益、寄与分の主張ができなくなります」参照)。
(3) 遺産相続弁護士ガイドHPの「寄与分と遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)の関係」には「遺留分を侵害する寄与分の主張を裁判所が認めてくれることは実際上ほとんどありません。 例外として認められる可能性があるとすれば、例えば、被相続人の財産のほとんどが寄与分を主張する相続人からの贈与による場合等のように、寄与の割合が特別大きい場合のみでしょう。」と書いてあります。
(4) 千葉の弁護士による相続の無料相談HP「Q. 遺産分割調停の中で寄与分を主張するにはどのようにすればよいですか。」には「調停手続きの場合には、特別の申立なく寄与分を主張することが可能です。遺産分割審判の中では、寄与分を定める処分の審判申立が必要です。」と書いてあります。
(5)  遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しません(最高裁令和5年10月26日決定)。


3 詐害行為取消権及び無償否認
(1) 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は詐害行為取消権の対象となります(最高裁平成11年6月11日判決)し,国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たることがあります(最高裁平成21年12月10日判決)。
(2) 東京高裁平成27年11月9日判決(判例秘書に掲載)は,「共同相続人が行う遺産分割協議において、相続人中のある者がその法定相続分又は具体的相続分を超える遺産を取得する合意をする行為を当然に贈与と同様の無償行為と評価することはできず、遺産分割協議は、原則として破産法160条3項の無償行為には当たらない」と判示しています。
4 代償分割
(1) 家庭裁判所は,遺産の分割の審判をする場合において,特別の事情があると認めるときは,遺産の分割の方法として,共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて,現物の分割に代えることができる(家事事件手続法195条(旧家事審判規則109条))ものの,右の特別の事由がある場合であるとして共同相続人の一人又は数人に金銭債務を負担させるためには,当該相続人にその支払能力があることを要します(最高裁平成12年9月7日決定(判例秘書に掲載))。
(2) みずほ中央法律事務所HPに「遺産分割における代償分割の履行確保措置」が載っています。


5 要素の錯誤
・ 特定の土地につきおおよその面積と位置を示して分割した上それぞれを相続人甲,乙,丙に相続させる趣旨の分割方法を定めた遺言が存在したのに,相続人丁が右土地全部を相続する旨の遺産分割協議がされた場合において,相続人の全員が右遺言の存在を知らなかったなどといった事実関係の下においては,甲のした遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえません(最高裁平成5年12月16日判決)。


6 非嫡出子の相続分
(1) 非嫡出子とは,法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。
(2)ア 非嫡出子の相続分は半分であるとする民法900条4号ただし書前段(平成25年当時の条文です。)は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反するとされて,最高裁大法廷平成7年7月5日決定(反対意見は5人)が変更されました(最高裁大法廷平成25年9月4日決定(反対意見なし。補足意見3人))。
イ 民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の判断は,上記当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき,同号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではありません(最高裁大法廷平成25年9月4日決定)。
ウ 最高裁平成12年1月27日判決(反対意見は1人),最高裁平成15年3月28日判決(反対意見は2人),最高裁平成15年3月31日判決(反対意見は2人),最高裁平成16年10月14日判決(反対意見は2人),最高裁平成21年9月30日決定(反対意見は1人)では,民法900条4号ただし書前段は憲法14条1項に違反しないとされていました。
(3) 平成25年12月11日施行の改正民法900条4号に基づき,平成25年9月5日以後に開始した相続については,非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分と同じになりました(法務省HPの「民法の一部が改正されました」参照)。


7 遺産分割の調停及び審判の管轄
(1)ア 遺産分割調停の管轄は,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所となる(家事事件手続法245条1項)のであって,相続開始地に管轄はありません。
イ 相手方として大阪市在住の甲及び東京都特別区在住の乙の2人がいる場合において大阪家裁に遺産分割調停の申立てをした場合,大阪家裁にだけ管轄が発生する結果(家事事件手続法5条),乙が東京家裁への移送を求めて職権の発動を促したとしても(この場合,移送の申立権がありません。),「家事事件の手続が遅滞することを避けるため必要があると認めるときその他相当と認めるとき」でない限り,東京家裁には移送されません(家事事件手続法9条2項1号)。
そして,相続開始地が大阪市であり,相続人のほとんどが大阪市に住んでいて,相続財産がすべて大阪市にある場合,乙又はその手続代理人が電話会議による出席をすること(家事事件手続法258条1項・54条1項)を前提として東京家裁には移送されないかもしれません。
ウ 離婚又は離縁の調停と異なり,遺産分割調停の場合,調停期日への現実の出席は必須ではありません(家事事件手続法268条3項参照)。
(2)ア 遺産分割審判の管轄は,相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所となります(家事事件手続法66条1項及び191条)。
イ 遺産分割調停の申立てをせずに直接,遺産分割審判の申立てをした場合,原則として,家庭裁判所はこれを遺産分割調停に付しますし(家事事件手続法274条1項の「付調停」です。),遺産分割調停の管轄家庭裁判所に移送します(家事事件手続法274条2項本文)。
(3)ア 相続会議HPの「遺産分割調停をするにはどこの裁判所に行けばいい? 裁判所の「管轄」に注意」には「遺産分割調停と審判で管轄が異なる事案で調停から審判へ移行した場合には、審判の管轄地の家庭裁判所へ移送されるケースもあります。一方、そのまま移送されず調停の裁判所で自庁処理されることもあるように、判断は裁判所に委ねられています。」と書いてあります。
イ 菅野綜合法律事務所HPの「自庁処理~管轄のない裁判所で遺産分割が行われる場合」には「自庁処理を認める例としては、被相続人の最後の住所地は相続財産の所在地や相続人の住所地などから離れているが、調停手続は相続財産の所在地や相続人の住所地で行われ、その家庭裁判所で審判手続を行うような場合があります。」と書いてあります。
(4) 離婚訴訟等の人事訴訟と異なり,遺産分割審判事件を含む別表第二審判事件については調停前置主義が採用されていない(家事事件手続法257条参照)ものの,裁判所は,当事者の意見を聴いて,いつでも,職権で,事件を家事調停に付することができます(家事事件手続法274条1項)。
(5) 荒井法律事務所HP「相続人が多い土地の遺産分割調停の進め方」には「相続人からの同意取得をスムーズに進めるためには、①事前にお手紙で事情を説明し、必要書類の提出を求めつつ②非協力な相続人がいる場合は遺産分割調停等の裁判手続を利用することが重要です。」と書いてあります。
8 未支給年金
・ 年金の支払は死亡した月の分までとなりますところ,日割り計算は行われず,1日に死亡しても1ヶ月分が支給されます。
    そして,被相続人が偶数月の後半に死亡した場合は1ヶ月分,奇数月に死亡した場合は2ヶ月分,偶数月の全般に死亡した場合は3ヶ月分が未支給年金となります(辻・本郷相続センターHPの「未支給年金は相続財産にあたらない?」参照)。
・ 未支給年金について定める国民年金法19条は,相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり,死亡した受給権者が有していた当該年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものではありません(最高裁平成7年11月7日判決)。
・ 国民年金法19条所定の者がいない場合,その他の相続人が同条所定の未支給年金を受ける権利を取得することはありませんし,未支給年金が同条を離れて相続の対象となり,相続財産を構成することはないと解されています(東京地裁平成23年3月2日判決参照)。
・ 未支給年金請求権については,当該死亡した受給権者に係る遺族が当該未支給年金を自己の固有の権利として請求するものであり,当該死亡した受給権者に係る相続税の課税対象とはならないものの,遺族が支給を受けた当該未支給年金は当該遺族の一時所得に該当します(国税庁HPの「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」参照)。
9 その他
・ 遺産分割審判は憲法32条及び82条に違反しませんし,家庭裁判所は,遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権,相続財産等の権利関係の存否を,審判中で審理判断することができます(最高裁大法廷昭和41年3月2日決定)。
・  扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の扶養分担額は,協議がととのわないかぎり,家庭裁判所が審判で定めるべきであつて,通常裁判所が判決手続で定めることはできません(最高裁昭和42年2月17日判決)。
・  保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は,特段の事情のない限り,右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ,各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になります(最高裁平成6年7月18日判決)。
・  相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けません(最高裁平成17年9月8日判決)。
・ 相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において,第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は,実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり,第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは,その持戻しをして具体的相続分を算定しなければなりません(最高裁平成17年10月11日決定)。
・ 共同相続された委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはありません(最高裁平成26年2月25日判決)。
・ 国立国会図書館HPの「調査資料(2024年刊行分)」「第8章 故人の遺したデジタルデータの相続等―インターネットを介したサービスの多様化と利用の広がりを受けて― 」が載っています。


第2 限定承認に関するメモ書き
1 総論

・ 限定承認とは,相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して,相続の承認をすることをいいます。
2 限定承認と訴訟承継
・  訴訟係属中に当事者が死亡し,数人の相続人がある場合に,右相続人らが限定承認をし,民法936条の規定による相続財産管理人が選任されたときは,右訴訟を承継する者は共同相続人であつて,相続財産管理人はその法定代理人として受継の申立をなすべきであつて,相続財産管理人が訴訟を承継するものではありません(最高裁昭和43年12月17日判決)。
3 限定承認と判決
・  被相続人に対する債権につき,債権者と相続人との間の前訴において,相続人の限定承認が認められ,相続財産の限度での支払を命ずる判決が確定しているときは,債権者は相続人に対し,後訴によつて,右判決の基礎となる事実審の口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実を主張して右債権につき無留保の判決を求めることはできません(最高裁昭和49年4月26日判決)。
4 限定承認と譲渡所得税
・ 東弁リブラ2021年9月号「他士業に学ぶ─弁護士が見落としがちな実務のポイント─」が載っていますところ,リンク先のPDF4頁には「限定承認があった場合の「みなし譲渡」については,相続開始日の時価で譲渡があったとして被相続人に譲渡所得税が課税されるが,被相続人は翌年1月1日現在には住所がないので,譲渡所得に対する住民税(不動産の長期譲渡所得であれば5%)は課税されない。」と書いてあります。
5 その他
・ 相続人は,民法936条1項の相続財産管理人が選任された場合であつても,相続財産に関する訴訟につき,当事者適格を有し,前記の相続財産管理人は,その法定代理人として訴訟に関与するものであつて,相続財産管理人の資格では当事者適格を有しません(最高裁昭和47年11月9日判決)。
・ 民法921条3号にいう「相続財産」には,消極財産(相続債務)も含まれ,限定承認をした相続人が消極財産を悪意で財産目録中に記載しなかったときにも,同2号により単純承認したものとみなされます(最高裁昭和61年3月20日判決)。
・  不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において,限定承認がされたときは,死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても,信義則に照らし,限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することはできません(最高裁平成10年2月13日判決)。


第3 相続放棄に関するメモ書き
1 総論
(1) 相続放棄をするためには,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません(民法915条1項及び938条)。
(2) 相続の放棄をした場合,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)ものの,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまでの間,自己の財産におけるのと同一の注意を持って,その財産の管理を継続しなければなりません(民法940条1項)。
(3) 相続放棄は身分行為ですから,詐害行為取消権の対象にはなりません(最高裁昭和49年9月20日判決)。
(4) 弁護士による大阪遺言・相続ネットに「「処分」と単純承認に関する裁判例」が載っています。


2 相続放棄の期間制限の起算点
(1) 相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,このように信ずるについて相当な理由がある場合には,民法915条1項所定の期間は,相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算されます(最高裁昭和59年4月27日判決)。
(2)  民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいいます(最高裁令和元年8月9日判決)。


3 法定単純承認に当たる例
・  相続人が相続開始後、相続放棄前に相続債権の取立をして、これを収受領得した場合には、民法921条1号にいわゆる相続財産の一部を処分した場合に該当し、相続の単純承認をしたものとみなされます(最高裁昭和37年6月21日判決)。


4 法定単純承認に当たらない例
(1) 死亡保険金の受領
ア 被保険者死亡の場合,保険金受取人の指定のないときは,保険金を被保険者の相続人に支払う旨の保険約款の条項は,被保険者が死亡した場合において被保険者の相続人に保険金を取得させることを定めたものと解すべきであり,右約款に基づき締結された保険契約は,保険金受取人を被保険者の相続人と指定した場合と同様,特段の事情のないかぎり,被保険者死亡の時におけるその相続人たるべき者のための契約となります(最高裁昭和48年6月29日判決)。
    そのため,相続人が固有財産としての死亡保険金を使って,被相続人の相続債務の一部を弁済したことは,相続財産の一部の処分ではないと解されています(福岡高裁宮崎支部平成10年12月22日決定(判例秘書に掲載))。
イ 死亡保険金請求権は,指定された保険金受取人が自己の固有の権利として取得するのであって,保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく,これらの者の相続財産を構成するものではないというべきであり(最高裁昭和40年2月2日参照),また,死亡保険金請求権は,被保険者の死亡時に初めて発生するものであり,保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係に立つものではなく,被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであって,死亡保険金請求権が実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることもできません(最高裁平成14年11月5日判決)。
    そのため,相続放棄をしたときでも死亡保険金を受領できます(結論につき,生命保険文化センターHP「A.保険金受取人の固有の財産となるので、相続を放棄しても死亡保険金は受け取ることができます」参照。なお,自由と正義2023年9月号19頁にも同趣旨の記載があります。)。
ウ  保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合,特段の事情のない限り,右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ,各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になります(最高裁平成6年7月18日判決)。
(2) 民法とは異なる支給順位を定める死亡退職金の受領
ア 死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に,死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であって,配偶者があるときは子は全く支給を受けないことなど,受給権者の範囲,順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは異なる定め方がされている場合,右死亡退職金の受給権は相続財産に属さず,受給権者である遺族固有の権利です(最高裁昭和55年11月27日判決)。
    そのため,相続放棄をしたときでも民法とは異なる支給順位を定める死亡退職金を受領できると思います。
イ 三井住友信託銀行HPに載ってある「企業年金事務説明資料 【よくあるご照会①】受給権者さまがお亡くなりになったとき」5頁は「遺族給付金、未支給給付金は相続財産ではなく、規約に定めるご遺族さま固有の権利とされています。そのため、相続放棄を行っていても、遺族給付金、未支給給付金をお受け取りいただくことができます。」と書いてあります。
(3) 相続財産の処分
ア  相続人が判示の事情のもとに被相続人の死亡を知らないで相続財産を処分しても,民法921条1号による単純承認の効果は生じません(最高裁昭和41年12月22日判決)。
イ 民法921条1号本文による単純承認の効果が生ずるためには、相続人が自己のために相続の開始した事実を知りまたは確実視しながら相続財産を処分したことを要します(最高裁昭和42年4月27日判決)。
5 その他
ア 「悪意で相続財産を相続財産の目録中に記載しなかった時」という法定単純承認事由は,相続放棄には適用されません(大審院昭和15年1月13日判決)。
イ 葬祭費(国民健康保険の場合)又は埋葬料(健康保険の場合),未支給年金(最高裁平成7年11月7日判決)及び遺族年金(大阪家裁昭和59年4月11日審判(判例秘書に掲載))は相続放棄をしても受領することができます。


第4 遺言に関するメモ書き
1 遺言の解釈
(1) 遺言の解釈にあたっては,遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく,遺言者の真意を探究すべきものであり,遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても,当該条項と遺言書の全記載との関連,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきとされています(最高裁昭和58年3月18日判決)。
(2) 遺言の解釈に当たっては,遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが,可能な限りこれを有効となるように解釈することが右意思に沿うゆえんであり,そのためには,遺言書の文言を前提にしながらも,遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許されます(最高裁平成5年1月19日判決)。
(3)  丁の遺言書中の特定の遺産を一部の親族に遺贈等をする旨の条項に続く「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」との条項について,丁は,その妻戊との間に子がなかったため,丁の兄夫婦の子甲を実子として養育する意図で丁戊夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,丁と甲とは,遺言書が作成されたころを含めて,丁が死亡するまで,実の親子と同様の生活をしていたとみられること,遺言書が作成された当時,甲は,戸籍上,丁の唯一の相続人であったことなどといった事情を考慮することなく,遺言書の記載のみに依拠して,上記の遺贈等の対象とされた特定の遺産を除く丁の遺産を甲に対して遺贈する趣旨ではなく,これを単に法定相続人に相続させる趣旨であるとした原審の判断には,違法があります(最高裁平成17年7月22日判決)。
(4) 複数の包括遺贈のうちの一つがその効力を生ぜず,又は放棄によってその効力を失った場合,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除き,包括受遺者が受けるべきであったものは,他の包括受遺者には帰属せず,相続人に帰属します(最高裁令和5年5月19日決定)。
2 相続させる遺言
(1) 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には,当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして,当該遺産は,被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されます(最高裁平成3年4月19日判決)。
(2)ア  特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得した場合には、甲が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負いません(最高裁平成7年1月24日判決)。
イ 遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は,遺言執行者があるときであっても,遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り,遺言執行者ではなく,右の相続人です(最高裁平成10年2月27日判決)。
(3) 特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において,他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは,遺言執行者は,右所有権移転登記の抹消登記手続のほか,甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができます(最高裁平成11年12月16日判決)。
(4) 遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはありません(最高裁平成23年2月22日判決)。
(5) 平成30年の相続法改正によって,相続させる遺言は「特定財産承継遺言」として明文化されました(民法1014条2項)。


3 自筆証書遺言の押印
(1) 自筆遺言証書における押印は,指印をもつて足ります(最高裁平成元年2月16日判決)。
(2) 遺言者が,自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため,遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが,遺言書であることを意識して,これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなどといった事実関係の下においては,右押印により,自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはありません(最高裁平成6年6月24日判決)。
(3)  遺言者が,入院中の日に自筆証書による遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後(全文等の自書日から27日後)に押印したなど判示の事実関係の下においては,同自筆証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに同自筆証書による遺言が無効となるものではありません(最高裁令和3年1月18日判決)。
4 自筆証書遺言の破棄
・  遺言者が自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は,その斜線を引いた後になお元の文字が判読できる場合であっても,その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているといった事実関係の下においては,その行為の一般的な意味に照らして,上記遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であり,民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し,遺言を撤回したものとみなされます(最高裁平成27年11月20日判決)。
5 その他自筆証書遺言関係
・ 自筆証書遺言の無効確認を求める訴訟においては,当該遺言証書の成立要件すなわちそれが民法968条の定める方式に則って作成されたものであることを,遺言が有効であると主張する側において主張・立証する責任があります(最高裁昭和62年10月8日判決)。
6 秘密証書遺言
・  秘密証書によって遺言をするに当たり,遺言者以外の者が,市販の遺言書の書き方の文例を参照し,ワープロを操作して,文例にある遺言者等の氏名を当該遺言の遺言者等の氏名に置き換え,そのほかは文例のまま遺言書の表題及び本文を入力して印字し,遺言者が氏名等を自筆で記載したなど判示の事実関係の下においては,ワープロを操作して遺言書の表題及び本文を入力し印字した者が民法970条1項3号にいう筆者です(最高裁平成14年9月24日判決)。
7 その他
(1)  仮処分命令の本案訴訟において原告敗訴の判決が確定したとしても,その一事をもって,直ちに右過失が存すると断ずることはできない(最高裁昭和43年12月24日判決参照)ところ,仮処分命令の本案において,仮処分申請における原告の主張が採用されず原告敗訴の判決が確定した場合においても,請求の当否が遺言の趣旨の解釈にかかるものであり,原告が右遺言の趣旨を遺産分割方法の指定と解したことが首肯し得るものであった等といった事実関係の下においては,直ちに仮処分申請人に過失があったものとすることはできません(最高裁平成2年1月22日判決)。
(2) 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において,遺言書の記載に照らし,遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは,当初の遺言の効力が復活します(最高裁平成9年11月13日判決)。
(3) 「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができた(最高裁平成14年6月10日判決)ものの,令和元年7月1日以降については,民法899条の2に基づき,登記が必要となりました。
(4) 遺言執行者は,共同相続人の相続分を指定する旨の遺言を根拠として,平成30年法律第72号の施行日前に開始した相続に係る相続財産である不動産についてされた所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格を有するものではありません(最高裁令和5年5月19日判決)。
(5) 行政書士阿久津事務所HPに「遺言書の各種文例」が載っています。


第5 相続欠格事由に関するメモ書き
1 自筆証書遺言の訂正
(1)ア 相続に関する被相続人の遺言書又はこれについてされている訂正が方式を欠き無効である場合に,相続人が右方式を具備させて有効な遺言書又はその訂正としての外形を作出する行為は,民法891条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるが,それが遺言者の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨でされたにすぎないものであるときは,右相続人は同号所定の相続欠格者に当たらない(最高裁昭和56年4月3日判決)ものの,自筆証書遺言自体は無効です。
イ 最高裁昭和56年4月3日判決の事案は,遺言者が前の公正証書遺言を取り消す旨の自筆証書遺言を作成したものの,これには押印がなかったため,この遺言書の形式を整える意味で,遺産の一部を与えられている相続人の一人が遺言書に押印したというものでした。
(2)  自筆証書遺言における証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については,民法968条2項所定の方式の違背があっても,その違背は,遺言の効力に影響を及ぼしません(最高裁昭和56年12月18日判決)。
2 遺言書の破棄又は隠匿
・ 相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において,相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは,右相続人は,民法891条5号所定の相続欠格者に当たりません(最高裁平成9年1月28日判決)。


第6 相続回復請求に関するメモ書き
1 相手方が表見相続人に該当する場合,5年の短期消滅時効の適用がありますところ,表見相続人の具体例は以下のとおりです(ベリーベスト法律事務所の遺産相続問題トータルサポートHP「相続回復請求権とは? 対象者や時効、遺留分侵害請求との違いを解説」参照)。
① 相続欠格事由に該当して相続権を失った人(民法891条)
② 相続廃除によって相続権を失った人(民法892条,893条)
③ 事実と異なる出生届や認知届が行われ、本当は被相続人の子でないにもかかわらず、子として相続をした人
④ 無効な婚姻に基づき、配偶者として相続をした人
⑤ 無効な養子縁組に基づき、養子として相続をした人
⑥ 自己の持分を超えて相続権を主張する共同相続人(最高裁大法廷昭和53年12月20日判決
→ 表見相続人に該当するのは,占有管理する相続財産について,自己に相続権があるものと信じるべき合理的な事由がある場合に限られます。
2(1)  相続財産である不動産について単独名義で相続の登記を経由した共同相続人の一人甲が,甲の本来の相続持分を超える部分が他の相続人に属することを知っていたか,又は右部分を含めて甲が単独相続をしたと信ずるにつき合理的な事由がないために,他の共同相続人に対して相続回復請求権の消滅時効を援用することができない場合には,甲から右不動産を譲り受けた第三者も右時効を援用することはできません(最高裁平成7年12月5日判決)。
(2) この場合の第三者に対しては,真正な登記名義の回復を原因とする持分権の移転登記手続を請求することになります(原審である高松高裁平成5年12月7日判決(判例秘書に掲載)参照)。


第7 預貯金債権の仮払い
1 総論
(1) 最高裁大法廷平成28年12月19日決定による判例変更の結果,共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となりました。
(2) 判例変更前は,葬儀費用等の緊急性の高いものについては,葬儀社から提示された葬儀見積書などを提出することにより,例外的に一部預貯金の払い戻しを認める金融機関もあったものの,判例変更によりそのような取扱いが困難となりました。
    そのため,平成30年の相続法改正により預貯金債権の仮払いが認められるようになりました。
(3) 弁護士法人三宅法律事務所の「【相続法改正】遺産分割前の預貯金債権の仮払いを認める改正」が参考になります。

2 民法909条の2に基づく預貯金債権の仮払い

(1) 被相続人の葬儀費用や入院費の支払いなど,死亡に伴う資金需要に迅速に対応するための仮払い制度であって,家庭裁判所の手続は不要です。
(2) この制度の場合,相続開始時の預貯金額✕3分の1✕法定相続分が払戻しを受けられる額の上限となりますし,一つの金融機関で払戻しを受けられる額の上限は150万円です。


 家事事件手続法200条3項に基づく預貯金債権の仮分割の仮処分
(1) 遺産分割の調停又は審判が係属している場合において,相続財産に関する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により必要がある場合,家庭裁判所の審査を経て,遺産に属する特定の預貯金の全部又は一部を仮に取得させてもらえます。
(2) この制度の場合,払い戻しを受けられる額に上限はありません。


第8 共有関係に関するメモ書き
1 共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は,遺産分割審判ではなく,共有物分割訴訟です(最高裁昭和50年11月7日判決)。
2 共有者の一人が死亡し,相続人の不存在が確定し,相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは,その持分は,民法958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり,右財産分与がされないときに,同法255条により他の共有者に帰属します(最高裁平成元年11月24日判決)。
3 民法258条により共有物の分割をする場合において、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(いわゆる全面的価格賠償の方法)によることも許されます(最高裁平成8年10月31日判決)。
4  不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができます(最高裁平成15年7月11日判決)。
5 共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができます(最高裁平成16年4月20日判決)。
5 荒井法律事務所HPに「【いつから?】2021年民法改正で共有制度はどう変わる?【2023年4月1日から】」が載っています。


第9 遺産確認の訴え
1(1) 遺産確認の訴えは、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであり、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象である財産であることを既判力をもつて確定し、これに続く遺産分割審判の手続及び右審判の確定後において、当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによつて共同相続人間の紛争の解決に資することができます(最高裁平成元年3月28日判決。なお,先例として,最高裁昭和61年3月13日判決参照)。
(2) 遺産確認の訴えは,共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟です(最高裁平成元年3月28日判決)。
(3)  共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しません(最高裁平成26年2月14日判決)。
2 遺産の範囲に争いがある場合,実務上,①遺産分割審判の申立てを一旦取り下げるなどし,遺産確認訴訟による解決を先行させる,②不起訴合意のうえ審判手続を進める,③一部の遺産分割をするなどの措憧がとられます(家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務57頁参照)。

第10 相続税に関するメモ書き
1 敷金の取扱い
(1) 無利息の預り保証金及び敷金に係る債務控除額は,その元本価額から,通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した額によるのが相当であるとされています(相続実務アカデミーHPの「額面のままではダメ! 預かり保証金・預かり敷金の相続税評価」のほか,国税不服審判所平成19年4月26日裁決)。
(2) 相続税の申告に際し,敷金(差入保証金)について原状回復費用の債務控除は認められないものの,敷金の償却(敷引き)の債務控除は認められています(柳沼隆税理士事務所HPの「第734話 敷金の相続税評価額」参照)。
2 債務控除
(1) 被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合,相続税の課税価格の計算上債務として控除できます(国税庁HPの「被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除」参照)。
(2) 原則として保証債務について債務控除は認められません(国税庁HPの「No.4126 相続財産から控除できる債務」参照)。
(3) 相続税の計算上,債務控除の対象にしたことによって債務の性質が変わるものではないのであって,相続人は,保証債務という債務を相続してその履行をするものですから,相続人について所得税法64条2項の規定を適用することができます(国税庁HPの「連帯保証債務に係る債務控除と保証債務の特例」参照)。
3 相続税のかかる家庭用財産等
(1)ア 相続税のかかる家庭用財産等としては以下のものがあります(相続税対策本部HP「相続税の対象になる財産やその評価方法」参照)。
・ 自動車
・ バイク
・ 貴金属
・ ブランド品
・ 投資目的の仏壇や仏具など
・ 美術品(絵画、書画、壺、刀など)
・ 趣味の道具(ゴルフクラブや楽器など)
・ 一般的な家財道具(家具や電化製品など)
イ 所得税法の場合,自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具,じゆう器,衣服(いわゆる生活用動産)の譲渡については,一個又は一組の価額が30万円を超えない限り,譲渡所得は発生しません(所得税法9条1項9号・所得税法施行令25条)。
(2) 相続税申告書において,家庭用財産としての「家財一式」の評価額は10万円程度としている税理士が多いみたいです(みなと相続コンシェルHP「【相続税】みんなは「家財一式」をいくらと書いてる?⇒1番多いのは〇〇万円」参照)。
4 個人事業主が従業員に支払う退職金に関するメモ書き
(1) 被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除
ア 国税庁HPの「被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除」には以下の記載があります。
    被相続人の死亡によって事業を廃止して被相続人が雇用していた従業員を解雇する場合において、その者に退職金を支払っているときは、その支給された退職金は、被相続人の生前事業を営む期間中の労務の対価であり、被相続人の債務として確実なものであると認められますから、相続税の課税価格の計算に当っては、その金額を控除して差し支えありません。
イ ゼイケンリンクスHPの「【Q&A】従業員である相続人に退職金を支払った場合の債務控除の可否[税理士のための税務事例解説]」には以下の記載があります。
    債務控除の対象になるとする考え方は、上記のとおり、被相続人が事業を営んでいる間の労務の対価であるかどうかがポイントですから、乙が実際に従業員として勤務した事実があれば、相続人(家族従業員)であるか否かは関係しませんし、相続税法第13条の規定をみても、相続人に対する債務を債務控除の対象から除外する規定もありません。
ウ 税理士法人チェスターHPの「被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除」には以下の記載があります。
(3) 事業の承継人がいないために廃業したことによる解雇
    事業を承継する人がいなければ、廃業するしかありません。つまり、相続開始することによって従業員の解雇は確定しており、退職金を支払うことはその時点で確実と認められます。そのため、この退職金については、債務控除の対象になります。
(2) 個人事業主の死亡により雇用契約は当然には終了しないこと
ア 国税不服審判所平成元年12月9日裁決の裁決要旨では,事例判断として以下の記載があります。
    被相続人の事業は被相続人の一身に専属する性質のものではなく、相続の対象となり、雇用契約は相続人に承継されるから、被相続人の死亡は雇用契約の終了原因にはならない。
    また、当該従業員らは被相続人死亡後も引き続き勤務し、勤務条件、勤務内容に重大な変更はなく、被相続人の事業は、相続人に承継されており廃止されていないから、雇用契約は終了していない。
イ 国税不服審判所平成11年12月9日裁決には以下の記載があります。
    使用者の死亡が雇用契約の終了原因になるかどうかについては、明文の規定はないが、相続人は、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するのであるから(民法第896条)、使用者個人を看護又は教育するための雇用など労務の内容自体が使用者の一身に専属するものである場合や、使用者の変更によって労務の内容に重大な差異が生ずるような場合等人的色彩の特別に濃厚な雇用を除いては、雇用契約上の使用者の地位は相続の対象となり、使用者の死亡によって当然に雇用契約が終了することにはならないと解するのが相当である。
(3) 退職金支払請求権が発生する場合
・ 国税不服審判所平成13年10月17日裁決には以下の記載があります。
    従業員に対する退職金の支払債務及びこれに対応する従業員の退職金支払請求権は、雇用契約の終了、すなわち退職の事実が生じたことにより当然に発生するというものではなく、あらかじめ労働協約、就業規則等でそれを支給すること及びその支給基準が定められているか、あるいは少なくとも明確な支給条件に従った支給慣行がある場合に発生すると解するのが相当である。
5 相続税における配偶者の税額の軽減
・ 国税庁HPの「タックスアンサーNo.4158 配偶者の税額の軽減」には以下の記載があります。
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(注) この制度の対象となる財産には、隠蔽または仮装されていた財産は含まれません。
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額
この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。
6 未分割遺産に関する更正の請求の特則
・ 国税不服審判所平成23年12月6日裁決は,未分割遺産に関する更正の請求の特則を定める相続税法32条1号及び55条に関して以下の判示をしています(イ及びロを①及び②に変えています。)。
① 相続税法第55条は、相続固有の問題として、相続税の法定申告期限内に遺産の全部又は一部の分割ができないことがあり得ることにかんがみ、現実に相続により取得する財産が確定していないことを理由に相続税の納付義務を免れるという不都合を防止し、国家の財源を迅速、確実に確保するために、法定申告期限内に申告書を提出する場合に相続人間で遺産が分割されていないときは、その未分割の遺産については、各共同相続人が法定相続分の割合に従って、当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算することとしている。
② そして、相続税法第32条第1号は、相続税の申告書提出時に分割されていない財産があるため同法第55条の規定により民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合に、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったことを理由として更正の請求を認めるものであるから、相続税法第32条第1号の事由は、未分割の遺産につき、いったん同法第55条の規定による計算で税額が確定した後、遺産の分割が行われ、その結果、既に確定した相続税額が過大になるという相続税に固有の後発的事由について規定したものであり、同法第32条第1号に規定する事由があるといえるためには、相続税の申告書提出時に未分割の相続財産があり、かつ、当該財産について相続税の申告書の提出後に分割が行われたことを要するというべきである。 
7 相続税評価額
・ 坂本導聰国税庁課税部長は,平成4年4月17日の衆議院土地問題等に関する特別委員会において以下の答弁をしています。
 御指摘の相続税における土地の評価に当たりましては、従来から地価公示価格との均衡を保つように努めてきたところでございますけれども、今回、地価公示価格を基準として評定するという考え方に立ちまして、従来地価公示価格の七割程度を相続税評価額としておりましたものを、平成四年分からは八割程度にまで引き上げるということをいたしました。
 それからもう一つは、評価時点でございますが、相続税の場合は前年の七月一日が評価時点でございましたが、公示価格の評価時点は当年の一月一日でございますので、相続税評価時点につきましてもこの公示価格の時点に合わせて当年の一月一日にするというようなことをしております。
 こういったことによりまして、土地基本法第十六条等の公的土地評価相互の均衡と適正化の要請に沿ってきたものと考えているところでございます。
8 その他

(1)ア 国税庁HPの「相続税の申告のためのチェックシート」によれば,検討項目としては,①相続財産の分割等,②不動産,③事業用財産,④有価証券,⑤現金・預貯金,⑥家庭用財産及び⑦生命保険金・退職手当金等があります。
イ 国税庁HPに資産課税関係の申請、届出等の様式の制定について(平成17年3月22日付の国税庁長官の法令解釈通達)が載っています。
(2) 相続税のチェスターHPの「回収不能な貸付金債権の相続税評価」には,財産評価基本通達204(貸付金債権の評価)及び財産評価基本通達205 (貸付金債権等の元本価額の範囲)の解説が載っています。
(3) 相続税に関して申告期限後3年以内の分割見込書を提出した場合において,3年以内に遺産が分割できない場合には,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」をその提出期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に相続税の申告書を提出した税務署長に対して提出する必要があります。
(4) 相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月後)までに延納(相続税法38条)を申請する場合,税務署長が確実と認める保証人の保証(国税通則法50条6号参照)をもって担保とすることができます(国税庁HPのタックスアンサー「No.4211 相続税の延納」参照)。
(5) 「居住用財産の3000万円特別控除」は相続発生前の本人が生存中に適用できる制度であるのに対し,「居住用財産(空き家)の譲渡所得の特別控除」は相続発生後の空き家に対して適用できる制度です(司法書士・行政書士事務所リーガルエステートHP「家族信託では相続後の空き家3000万円特別控除は使えない?空き家特例と国税庁回答の概要を解説」参照)。
(6) 以下の資料を掲載しています。
・ 大阪国税局の令和4年度資産課税事務実施要領→「第4章 申告審理・行政指導事務」を抜粋したもの


第11 在日韓国人の相続に関するメモ書き
1 総論
・ 韓国では,2008年1月1日に戸籍制度が廃止されて家族関係登録制度に移行しました(弁護士法人iの「韓国国籍の方には戸籍がない~家族関係登録制度について~」参照)。
2 家族関係証明書の取得
(1) 在日韓国人の場合,本人又はその家族の委任状なしに同人の家族関係証明書を取得することは事実上不可能みたいです(ジュリス・インターナショナル・オフィスHP「② 韓国籍の方が亡くなった場合」参照)。
(2) 康行政書士事務所HPの「兄弟の韓国家族関係登録証明書を取るのが難しくなりました。」に以下の記載があります。
    2021年4月1日からこのような例外的な運用(山中注:日本では在日韓国人の相続における必要性を考慮して、領事が特別の配慮をして例外的に兄弟の家族関係登録証明書の請求を認めていたという運用)が認められなくなり、兄弟の家族関係登録証明書の発行請求が認められないという原則を厳格に適用されることになりました。
3 電算化除籍謄本
(1) 2008年1月1日時点の戸籍の内容は,大使館領事部を含めて日本に10箇所ある総領事館が発行する電算化除籍謄本(日本でいうところの改製原戸籍みたいなものと思います。)に記載されています(韓国語戸籍翻訳.comの「韓国語翻訳 電算化除籍謄本/在日韓国人の相続手続・帰化申請用」参照)。
(2) 債権者が債務者の電算化除籍謄本から現在の住所を調べる場合,電算化除籍謄本で氏名,国籍,性別及び生年月日を確認した上で,東京入国在留管理局長に対する弁護士会照会により居住地の記載がある外国人登録原票の写しを取り寄せた上で,住民票の職務上請求をすることになると思います。
4 相続の準拠法
・ 在日韓国人の場合,相続については大韓民国の法律が適用される(法の適用に関する通則法36条)ものの,相続の準拠法として常居所地がある日本の法を遺言で指定していた場合,相続人の存否は日本の民法によって判断されると思います(大韓民国国際私法49条2項1号)。
5 相続放棄
(1) さむらい行政書士法人HPの「在日韓国人が相続放棄をするときのポイント」には「在日韓国人が亡くなった場合、相続に関する手続きには、韓国の民法が適用されることになります。ただし、日本に住んでいた場合は日本の家庭裁判所で手続きができますが、日本における相続放棄の効力が韓国内で認められるかについては争いがあります。」と書いてあります。
(2) たちばな総合法律事務所HPに「被相続人が在日韓国人である場合の相続放棄の手続、および韓国における相続抛棄の注意点」が載っています。
6 その他
(1) 相続登記.netに「在日韓国人の相続登記の必要書類」が載っています。
(2) 平成24年7月9日に外国人登録法が廃止されましたところ,出入国在留管理庁HPに「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しの交付請求について」が載っています。

第12 デジタルの相続手続きに関するメモ書き
1 手塚司法書士事務所HP「自分が死んでしまったら、GmailやEvernoteはどうなる?」には「すべてを紙に書いておくのは安心感のある方法ですが、手書きという時点でだいぶハードルが高いと感じる人も、現代では多い気がします。私もその一人です。そうであれば、Evernoteやグーグルドキュメントで一覧を作成してみてはいかがでしょうか。」と書いてあります。
2(1) ラボラジアンの「【Google】アカウント無効化管理ツールの設定」には「事故や死亡といった予期しない出来事で自分の Google アカウントを使用できなくなった場合に、その Google アカウントをどのように処理するかを設定します。」と書いてあります。
(2)ア Googleアカウントにログインした状態で死亡した場合,Googleお支払いセンターの「お支払い方法を追加」において遺族名義のカードを追加してGoogle Oneの保存容量の購入を続けておけば,Gmailその他のGoogleアカウントのデータを保存できる気がします。
イ 令和5年1月における私の個人的経験では,Googleお支払いセンターの「お支払い方法を追加」において遺族名義のカードを追加することができました。
ウ 無料アカウントの場合,Google Oneの保存容量は15GBです。
3 CLOUD USER~クラウドで事業を変える改革者へ~HP「息子を失ったある家族の出来事 亡くなった家族のApple IDやGoogleアカウントは引き継げるか」には以下の記載があります。
    Microsoftアカウントも相続は非対応になる。日本マイクロソフトによると、相続を含めたユーザー死亡時の問い合わせはほとんど届いていないという。日本だけでなくアジア全体でも同様とのことだ。
    このあたりはアカウントの活用拠点の違いがあるのかもしれない(スマホは端末のロックを生体認証やパスワード以外で突破するのは非常に難しいが、PCは複数の方法が残されていることが多い)。

第13 戸籍謄本等の職務上請求に関するメモ書き
1 みずほ中央法律事務所HPに「【戸籍・住民票の職務上請求書の不正な使用(弁護士の懲戒)】」が載っています。
2 参議院議員尾立源幸君提出戸籍謄抄本等の不正請求事件並びに本人通知制度に関する質問に対する答弁書には以下の記載があります。
 戸籍謄本等の不正請求の防止等のために講じた措置としては、市区町村を管轄する法務局若しくは地方法務局又はその支局(以下「管轄法務局等」という。)において、当該市区町村の戸籍事務担当者に対する研修等の際に、個人情報の保護が必要とされている情勢に鑑み、いわゆる「戸籍公開の原則」を見直し、戸籍の謄本等を請求することができる場合を制限した平成十九年の戸籍法改正の趣旨を踏まえて戸籍謄本等の交付請求を認めるか否かを厳格に審査するよう指導している。また、法務省において、日本行政書士会連合会等の関係団体(以下「関係団体」という。)に対して戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)第十一条の二第四号に定める統一請求書の適正な管理等について適宜要請し、指導内容を行政書士等に周知するよう依頼しているほか、行政書士等が紛失するなどした統一請求書に関する情報を集約した上、管轄法務局等を通じてこの情報を全国の市区町村に提供するなどしている。
 お尋ねの「住民票の写し請求等の厳正な取扱」に関する関係団体に対する働きかけ等については、総務省において、関係団体に対し、制度改正などの機会を捉えて、住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令(昭和六十年自治省令第二十八号)第十一条第二号に定める、関係団体が発行した住民票の写し等の交付を申し出る書類等の適正な管理等について、適宜要請している。
 お尋ねの戸籍謄本等の不正請求の「実態調査」やその「防止に向けた必要な措置」、「個人情報保護の原則を守るよう関係士業団体等に働きかける」こと及び「関係省庁と連携した偽造防止策や啓発の強化等について有効な手立てを講じるべき」ことについては、戸籍謄本等の不正請求の実態及びこれによる被害状況について、今後とも、市区町村等の関係機関と連携して情報の収集に努め、必要に応じて、この情報を全国の市区町村に提供するなどの措置を講ずるとともに、個人情報の保護の観点から、引き続き、関係団体に対し、統一請求書等の適正な管理等に更に努めるよう働きかけ、戸籍謄本等の不正請求の防止に取り組んでまいりたい。
 戸籍謄本等の不正請求に係る被害の相談については、市区町村や管轄法務局等において戸籍事務に関する相談として既に対応しているところ、引き続き、このような対応を適切に講じてまいりたい。

第14 関連記事その他

1 名古屋家裁HPの「申立添付書類等一覧表(家事受付センター) 」に,別表第一審判事件(ただし,後見,保佐及び補助は除く。)及び別表第二調停事件の管轄,申立添付書類及び収入印紙が載っています(郵便切手の組み合わせについては,消費税が8%になった平成26年4月時点のもののようです。)。
2(1)  個人の観賞ないしは記念のための品として作成され,対外的な関係で意味のある証明文書として利用されることが予定されていなかった本件家系図は,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たりません(最高裁平成22年12月20日判決)。
(2) 家系図の作成は,戸籍取得のための正当事由には該当しないとされています(家系図作成・先祖調査請負人HP「戸籍の収集」参照)。
(3) 保存された男性の精子を用いて当該男性の死亡後に行われた人工生殖により女性が懐胎し出産した子と当該男性との間に,法律上の親子関係の形成は認められません(最高裁平成18年9月4日判決)。
3 民法上の配偶者は,その婚姻関係が実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合,すなわち,事実上の離婚状態にある場合には,中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たりません(最高裁令和3年3月25日判決)。
4  相続財産についての情報が被相続人に関するものとしてその生前に個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,そのことから直ちに,当該情報が当該相続財産を取得した相続人又は受遺者に関するものとして上記「個人に関する情報」に当たるということはできません(最高裁平成31年3月18日判決)。
5(1) 法務省HPに「あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」が載っています。
(2) 令和3年の不動産登記法改正による相続登記の義務化(不動産登記法76条の2)は令和6年4月1日に開始するものの,3年以内に相続登記又は相続人申告登記(不動産登記法76条の3)をすれば足りるのであって,令和9年3月31日までに登記をすれば問題ありません(松谷司法書士事務所HPの「相続登記(不動産の名義変更)」参照)。
6 京都市HPの「固定資産(土地・家屋)課税台帳等閲覧」に, 土地名寄帳,家屋名寄帳,土地(補充)課税台帳,家屋(補充)課税台帳の閲覧手続の説明が載っています。
7(1) 預金者の共同相続人の一人は,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができます(最高裁平成21年1月22日判決)。
(2)  東京高裁平成23年8月3日判決(判例秘書に掲載)は,銀行が,預金契約解約後に死亡した元預金者の相続人に対し,預金契約の取引経過開示義務を負わないとした事例です。
8 一般社団法人生命保険協会が行っている生命保険契約照会制度は,生命保険契約の有無だけを回答してくれる制度です(生命保険協会HPの「生命保険契約照会制度のご案内」参照)。
9 旬刊商事法務2306号及び2307号に「令和3年民法改正が株式の準共有に与える影響」が載っています。
10 贈与を受けたと主張されている目的物を受贈者に引き渡すことは,特段の事情のない限り,贈与契約の履行として行われたものと解される(最高裁平成21年7月15日判決(判例時報2082号20頁及び21頁))結果,書面によらない贈与契約であっても解除することができなくなります(民法550条ただし書)。
11 事業における売掛金,他人に貸した現金,不動産の賃料による収益及び損害賠償請求権は原則として可分債権となります(相続税のチェスターHP「可分債権とは相続割合に応じて分割できる債権-可分不可分の具体例も紹介」参照)。
12(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 相続による納税義務の承継マニュアル(令和3年7月の大阪国税局徴収部徴収課の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 家事事件に関する審判書・判決書記載例集(最高裁判所が作成したもの)
・ 離婚時の財産分与と税金に関するメモ書き
・ 相続財産管理人,不在者財産管理人及び代位による相続登記
・ 公正証書遺言の口授
・ 大阪家裁後見センターだより
・ 訴訟能力,訴状等の受送達者,審判前の保全処分及び特別代理人
 裁判所関係国賠事件
 後見人等不正事例についての実情調査結果(平成23年分以降)
 平成17年以降の,成年後見関係事件の概況(家裁管内別件数)

貨物軽自動車運送事業(軽貨物運送業)

目次
第1 総論
第2 バイクを利用した軽貨物運送業(バイク便)
1 軽二輪及び小型二輪
2 原付一種及び原付二種
3 特定信書便におけるバイク便の利用
4 その他
第3 バイクの排気量ごとの取扱いの違い
1 高速道路,車検及び大型二輪免許
2 道路交通法及び道路運送車両法でいうところのバイク
3 標識交付証明書,軽自動車届出済証及び車検証
4 自賠責保険
5 バイクの免許
第4 軽トラックを利用した軽貨物運送業(軽トラック便)
第5 車検証に関するメモ書き
第6 ナンバープレートに関するメモ書き
1 登録自動車のナンバープレート
2 軽自動車のナンバープレート
3 トラック緑ナンバー
4 1ナンバー,3ナンバー,4ナンバー及び5ナンバー
第7 バイクの名義変更
第8 自動車の廃車が確認できる書類
第9 貨物自動車の逸失利益に関する最高裁判例
第10 バイク事故特有の過失割合が書いてある書籍

第11 関連記事その他

第1 総論
1 「貨物自動車運送事業」としては,①一般貨物自動車運送事業(許可制),②特定貨物自動車運送事業(許可制)及び③貨物軽自動車運送事業(届出制)をいう。
2 貨物軽自動車運送事業とは,他人の需要に応じ,有償で,自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいい(貨物自動車運送事業法2条4号),運輸支局への届出が必要になります(貨物自動車運送事業法36条)。
3 略称は軽貨物運送業でありますところ,開業タイプとしては,個人開業型及びフランチャイズ型があります(J-Net21の「軽貨物運送」参照)。

第2 バイクを利用した軽貨物運送業(バイク便)
1 軽二輪及び小型二輪の場合
・ 排気量125ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの軽二輪及び小型二輪)を利用する場合,必ず貨物軽自動車運送事業の届出をして緑ナンバーを取得する必要があるのであって,届出をしない限りバイク便をすることはできません。
    そのため,真っ白ナンバー・緑字(126ccないし250cc)又は緑枠の白ナンバー・緑字(251cc以上)でバイク便をすることはできません。
2 原付一種及び原付二種
・ 道路運送車両法2条2項の「自動車」ではない排気量125cc以下のバイク(道路運送車両法2条3項の「原動機付自転車」(原付一種及び原付二種)となります。)を利用する場合,届出は不要です(貨物自動車運送事業法2条5項参照)
    そのため,真っ白ナンバー・紺地(50cc以下),黄ナンバー・紺字(51ccないし90cc)又はピンクナンバー・紺字(91ccないし125cc)でバイク便をすることができます。
3 特定信書便におけるバイク便の利用
・ 民間事業者による信書の送達に関する法律(略称は「信書便法」です。)2条7項に基づく特定信書便サービス(1号が大型,2号が高速,3号が高価です。)としては,①公文書集配,②企業グループ内便,③地域内急送便,④電報類似サービス,⑤広域急送便及び⑥高セキュリティ便があります(総務省HPの「信書便事業の現状について」(平成28年10月27日付)参照)ところ,例えば,③地域内急送便についてはバイク便が利用されています。
4 その他
・ トラサポHPに「緑ナンバーバイク便の始め方と8色のプレートを行政書士が解説」が載っています。


第3 バイクの排気量ごとの取扱いの違い
1 高速道路,車検及び大型二輪免許
(1) 普通二輪免許が必要となる排気量125ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの軽二輪及び小型二輪)であれば,高速道路を走行できます(JAFの「[Q]エンジン形式や排気量による違い」参照)。
(2) 排気量250ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの小型二輪)の場合,2年ごとに車検を受ける必要があります。
(3) 排気量400ccを超えるバイク(道路交通法でいうところの大型二輪ですが,道路運送車両法でいうところの小型二輪です。)の場合,大型二輪免許が必要となります。
2 道路交通法及び道路運送車両法でいうところのバイク
(1) 道路交通法でいうところのバイクは,原付(50cc以下),普通二輪(51ccないし400cc)及び大型二輪(401cc以上)です。
(2) 道路運送車両法でいうところのバイクは,原付一種(50cc以下),原付二種(51ccないし125cc),軽二輪(二輪の軽自動車。126ccないし250cc)及び小型二輪(二輪の小型自動車。251cc以上)です(東京都自動車整備振興会HPの「お知らせ詳細」参照)。
3 標識交付証明書,軽自動車届出済証及び車検証
(1) 標識交付証明書
・ 排気量125cc以下のバイクの場合,道路運送車両法の「自動車」ではありませんから,税務上の書類としての,標識交付証明書が交付されますところ,そこには標識番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
    ただし,自治体によっては,「軽自動車税申告書兼標識交付申請書」に受付印を捺印した書類で代用していることがあります。
(2) 軽自動車届出済証
ア 排気量126ccないし250ccのバイク(軽二輪)の場合,軽自動車届出済証(道路運送車両法施行規則63条の2及び63条の4参照)が管轄の運輸支局から交付されますところ,そこには車両番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
イ 令和元年7月1日,軽自動車届出済の取扱主体が軽自動車検査協会から運輸支局に変更になるとともに,軽自動車届出済証のサイズがB5サイズからA4サイズになりました(バイク買取おすすめブログ「バイクの軽自動車届出済証とは?携帯義務ってあるの?」(2022年12月2日付)参照)。
(3) 車検証
・ 排気量251cc以上のバイク(小型二輪)の場合,自動車検査証(いわゆる「車検証」です。)が運輸監理部又は運輸支局から交付されますところ,そこには車両番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
(4) 自動車登録番号及び車両番号
・ 登録自動車のナンバープレートの番号は自動車登録番号であり,軽自動車及び二輪車のナンバープレートの番号は車両番号です。
4 自賠責保険
・ ヤフーニュースの「ご存知ですか?バイクの自賠責保険が期限切れの場合どうなる?罰則や、再加入費用まとめ」には,「車検が必要な小型二輪車(250cc超)の場合は、車検時に自賠責保険の加入・更新を行いますが、車検制度の適用がない原付(125cc以下)や軽二輪(125cc超250cc以下)の場合は、保有者自身が、バイク販売店や損害保険会社、もしくはコンビニ等で更新手続きをする必要があります。」と書いてあります。
5 バイクの免許
(1) バイクの免許は以下のとおり7種類あり,大きく4つに分類できます。
① 原動機付自転車免許(50cc以下)
・ 他の免許と異なり,一般道での法定速度は時速30kmです。
・ 他の免許と異なり,二人乗りができません。
② 小型二輪免許・AT小型限定二輪免許(125cc以下)
・ 高速道路での走行ができません。
③ 普通二輪免許・AT限定普通二輪免許(400cc以下)
・ 「中型免許」といわれることがあります。
④ 大型二輪免許・AT限定大型二輪免許(排気量の制限なし)
・ 他の免許と異なり18歳から取得できます。
(2) ヤマハHPの「あのバイクに乗るには、どの免許が必要?バイク免許の種類と取得方法について」が参考になります。


第4 軽トラックを利用した軽貨物運送業(軽トラック便)
1 軽トラック(排気量は660cc以下です。)を利用する場合,必ず貨物軽自動車運送事業の届出をして黒ナンバーを取得する必要があります。
2 軽貨物運送業は軽トラック1台で開始することができます。
3 赤帽は,軽貨物運送業を行う個人事業主の集まりである全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会のことです。
4 プロが教える!引越し段取り術HPの「第三章 引越しを自分でする」には,「これ(山中注:軽トラック便)は、近距離の場合にかなり有効です」と書いてあります。
5 黄ナンバーは白ナンバーの軽自動車バージョンであり,黒ナンバーは緑ナンバーの軽自動車バージョンです。


第5 車検証に関するメモ書き
1(1) 登録自動車の場合,自動車登録番号(白ナンバー又は緑ナンバーの番号)を自動車登録ファイルに登録する新規登録(道路運送車両法9条)が終わった後に車検証を交付されます(道路運送車両法60条2項)。
(2) 令和5年1月4日より自動車検査証を電子化し,必要最小限の記載事項を除き自動車検査証情報はICタグに記録しますところ,ICタグの情報は汎用のICカードリーダが接続されたPCや読み取り機能付きスマートフォンで参照可能です(国土交通省電子車検証特設サイト「電子車検証について」参照)。
2 検査対象軽自動車の場合,自動車登録制度(道路運送車両法4条)の適用がないため,車検証交付時に車両番号(黄ナンバー又は黒ナンバー)が指定されます(道路運送車両法60条1項)。



第6 ナンバープレートに関するメモ書き

1 登録自動車のナンバープレート
(1)ア 登録自動車のナンバープレート(自動車登録番号)について定める自動車登録規則13条1項は以下のとおりです。
自動車登録番号は、次に掲げる文字をその順序により組み合わせて定めるものとする。
一 自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部又は運輸支局(使用の本拠の位置が自動車検査登録事務所の管轄区域に属する場合にあつては、当該自動車検査登録事務所。次項において同じ。)を表示する文字(別表第一)
二 自動車の種別及び用途による分類番号を表示する二字以下のアラビア数字又は最初の字がアラビア数字であつて、その他の字がアラビア数字若しくはローマ字若しくはこれらの組合せである三字(別表第二)
三 自動車運送事業の用に供するかどうかの別等を表示する平仮名又はローマ字(別表第三)
四 四けた以下のアラビア数字
イ 1号が使用の本拠地であり,2号が分類番号であり,3号が事業用判別文字であり,4号は一連指定番号です。
(2) CARDAYSの「ナンバープレートの種類と色の違いとは?数字の意味も徹底解説!」が参考になります。

2 軽自動車のナンバープレート
(1) 軽自動車のナンバープレート(車両番号標)について定める道路運送車両法施行規則36条の17第1項及び第2項は以下のとおりです。
① 検査対象軽自動車の車両番号は、次に掲げる文字をその順序により組み合わせて定めるものとする。
一 検査対象軽自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部又は運輸支局(使用の本拠の位置が自動車検査登録事務所の管轄区域に属する場合にあつては、当該自動車検査登録事務所。以下この条、次条及び第六十三条の四において同じ。)を表示する文字
二 検査対象軽自動車の用途による分類番号を表示する二字のアラビア数字又は最初の字がアラビア数字であつて、その他の字がアラビア数字若しくはローマ字若しくはこれらの組合せである三字(別表第二の四)
三 自家用又は事業用の別等を表示する平仮名又はローマ字(別表第二の五)
四 四けた以下のアラビア数字
② 前項第一号の運輸監理部又は運輸支局を表示する文字については、自動車登録規則(昭和四十五年運輸省令第七号。以下「規則」という。)の別表第一に定めるところによる。
(2) 軽自動車検査協会HPに「軽自動車のナンバー」が載っていますところ,事業用の軽自動車の場合,事業用判別文字は「り」又は「れ」です。
(3) 山梨県軽自動車協会HPの「ナンバープレートの秘密?」には,ナンバープレートの大きさとか,皇室用又は外交団用等特殊ナンバーとかに関する説明が載っています。
3 トラック緑ナンバー
(1) 小型トラック(排気量は661ccないし2000cc)又はトラック(排気量は2001cc以上)を利用する貨物自動車運送事業の許可を受けるためには営業所ごとに車両を5台以上揃える必要があるのであって,ほとんどの地域において,一般廃棄物運送限定を除き,1台のトラックで緑ナンバーを付ける方法はありません(トラサポHPの「【本当の正解】緑ナンバーの取得には、5台のトラックがないと絶対に無理でしょうか?」参照)。
(2) トラサポHPに「トラック緑ナンバー名義貸しってダメなの?専門行政書士が解説します。」が載っています。
(3) 緑ナンバーの事業用判別文字は「あいうえかきくけこを」です(自動車登録規則13条3号及び別表第三)。
4 1ナンバー,3ナンバー,4ナンバー及び5ナンバー
(1) 1ナンバー
・ 大型トラックに代表される普通貨物自動車につき,ナンバープレートの地名の横の1桁目の数字は「1」ですから,1ナンバーといわれます(おとなの自動車保険HPの「1ナンバーとは?分類の条件や3ナンバーとの維持費(税金・車検・保険等)の違い」参照)。
(2) 3ナンバーと5ナンバー
・ 以下の基準をすべて満たした小型乗用自動車は5ナンバーとなり,以下の基準を1つでも超えた自動車は3ナンバーになります(チューリッヒHPの「3ナンバーと5ナンバー車の違いとは。税金・サイズ・車種(ミニバン・セダン・SUV)の違いは?」参照)。
排気量:2000cc以下,全長:4700mm以下
全幅:1700mm以下,全高:2000mm以下
(3) 4ナンバー
・ 小型貨物自動車(排気量660cc超)及び軽トラック(排気量660cc以下)につき,ナンバープレートの地名の横の1桁目の数字は「4」ですから,4ナンバーといわれます(チューリッヒHPの「車の4ナンバーとは。車検や税金(自動車税・重量税)・保険などの維持費。軽自動車はある?」参照)。

第7 バイクの名義変更
1 バイクの窓口HPの「原付バイクの名義変更の手続きと必要書類」には「名義変更の一連の手続きは住民登録をしている市役所や町役場などで行います。自動車とは管轄が異なるため注意しましょう。」と書いてあります。
2 バイサポHPの「250ccまでの軽二輪バイクの名義変更を自分でするのに必要な書類と手続き」には「排気量125cc超~250ccバイクは新しい所有者の自宅住所を管轄している運輸支局(陸運局)または、自動車検査登録事務所で、名義変更できます。」とか,「以前は市役所で名義変更ができましたが、2019年7月1日から250ccバイクの名義変更は400ccバイクの名義変更と同様に運輸支局(陸運局)に変更なりました。」と書いてあります。

第8 自動車の廃車が確認できる書類
1 自動車の廃車が確認できる書類として,例えば,①登録自動車については登録事項等証明書及び自動車重量税還付申請書付表1があり,②小型二輪及び検査対象軽自動車については検査記録事項等証明書及び自動車検査証返納証明書があり,③軽二輪については軽自動車届出済証返納証明書及び軽自動車届出済証返納済確認書があり,④原付については軽自動車税(種別割)廃車申告受付書があります(損保ジャパンHPの「自動車の廃車が確認できる書類」参照)。
2(1) 軽自動車届出済証返納証明書交付請求書は,軽二輪を廃車にする際の書類であり,複写式6枚つづりになっています(バイク買取.comの「軽自動車届出済証返納証明書交付請求書の書き方」参照)。
(2) 軽自動車返納済証返納済確認書はオレンジ色の紙です(e-バイク廃車.comの「軽自動車届出済証返納届の書き方や詳細をチェック!」参照)。

第9 貨物自動車の逸失利益に関する最高裁判例
・ 貸物自動車が,電車運転手の過失に基く衝突によって破損し,それがため休車した場合において,右自動車の所有者が,休車によりその期間中,これを使用して得べかりし1日金2000円の割合による利益を喪失した旨の主張に対し,特段の事由を示すことなく,右損害は,すべて特別の事情によつて生じた損害であつて,通常生ずべき損害でないとした判断は,経験則違反,審理不尽,理由不備のそしりを免れません(最高裁昭和33年7月17日判決)。

第10 バイク事故特有の過失割合が書いてある書籍
1 自動二輪車交通事故訴訟の実務(2023年2月24日付)には「自動二輪車と四輪車との交通事故における過失割合の評価」として以下の記載があります。
① 四輪車同士の事故についてのみ類型が設けられている場合の検討
→ (a)判タ38号で基本過失割合に差が設けられていない場合,及び(b)判タ38号で基本過失割合に差が設けられている場合について説明されています。
② 判タ38号に類型の設けられていない典型事故の過失評価
→ (a)路外左折四輪車と後方直進自動車との事故,(b)右折四輪車と後続直進自動二輪車との事故及び(c)狭路における対向車間の事故について説明されています。
③ 自動二輪車事故について考慮すべき特有の事情
→ (a)自動二輪車の転倒(自動二輪車の転倒の評価,転倒しやすい路面状況の場合の評価,接触・転倒に至らない回避行動),(b)自動二輪車のすり抜け走行についての評価(一般道でのすり抜けの場合,高速道路でのすり抜け事故),(c)ヘルメットの不着用・あごひもの不着用によるヘルメットの脱落,(d)昼間時のヘッドライト消灯及び(e)二人乗り規制の違反について説明されています。
④ 原動機付自転車の二段階右折についての違反
2 自動二輪車交通事故訴訟の実務(2023年2月24日付)76頁には「自動二輪車のすり抜け走行は、道路交通法上、直ちに何らかの法条に違反するものではない。」と書いてあります。

第11 関連記事その他
1 12桁の運転免許証番号のうち,1~2桁目は最初に免許を取得した各都道府県公安委員会の番号であり(京都府は61,大阪府は62,兵庫県は63です。),3~4桁目は最初に免許を取得した「取得年」の西暦の下2桁であり,5~11桁目は各都道府県公安委員会が運転免許証を管理するための番号であり,12桁目は紛失・盗難・破損などによって運転免許証を再発行した回数(再発行したことがない場合は「0」です。)です(車査定マニアHP「運転免許証の見方や数字の意味の総まとめ」参照)。
2 自転車の交通違反に関しては,令和4年10月下旬以降につき,①信号無視,②一時不停止,③右側通行及び④徐行せずに歩道を通行という4項目のうち悪質な違反については,これまで「警告」にとどめていたケースでも交通切符を交付して検挙されることとなります(NHK HPの「自転車の交通違反 取り締まり強化へ「警告」から「赤切符」も」参照)。
3(1) アマゾン委託ドライバー「アマゾンフレックス(Amazon Flex)」とは,大手通販会社アマゾンの荷物を配達する業務の委託を請け負う働き方のことをいいます(ケイエスケイロジスティクスHP「アマゾンの委託ドライバーの契約内容や単価、口コミを紹介」参照)。
(2) 従来からピザ店や寿司店が独自に注文を受け付け,自店スタッフが直接配達する出前サービス(自社注文宅配型)は存在していたものの,近年の新しい宅配事業(デリバリーサービス)のシステムとしては,マーケットプライス型及びデリバリープラットフォーム型があります(ここからアプリHPの「飲食店・顧客・配達員をつなぐ宅配システム(フードデリバリー)」参照)。
(3) テンニミッツTV「宅配便ドライバーに聞く「嫌われる客」の特徴」が載っています。
4(1) 国土交通省は高速道路のETC専用化を推進している旨を発表しており,遅くとも令和12年までには一般レーンを廃止する予定となっています(お金ステーションHP「ETCカードおすすめランキング【最新比較】年会費無料で高速道路やガソリン代がお得になる」,及び国土交通省HPの「ETC専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化について ~都市部は5年、地方部は10年程度での概成に向けたロードマップの策定~」(令和2年12月17日付)参照)。
(2) 近畿運輸局HPに「運行管理者の仕事(タクシー編)」が載っています。
5 東京地裁令和4年11月30日判決(判例タイムズ1505号181頁以下)は,デイサービス施設の利用者が当該施設の停車中の送迎車から降車しようとして地面に転落して頭部を打ち付けた事故が,当該送迎車に係る自動車保険契約の自動車保険約款にいう「車の所有,使用または管理に起因して生じた」事故とされた事例です。
6(1) スマートドライブHP「行動監視だけではない!社用車をGPSで管理することの価値」が載っています。
(2) 困ったら読め!ブログ「宅配便の受け取りを拒否するやり方!!」が載っています。
7 貨物自動車運送事業法63条の2(荷主の責務)は「荷主は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない。」と定めています。
8 以下の記事も参照してください。
・ 私道に関するメモ書き
・ 労災保険の特別加入
・ 労災保険の給付内容
・ 労災保険に関する書類の開示請求方法

相続財産管理人,不在者財産管理人及び代位による相続登記

目次
第1 相続財産管理人

1 総論
2 相続財産管理人の権限
3 強制執行開始前に債務者である所有者が死亡し、相続人不存在となっている場合における例外的取扱い
4 相続財産管理人が選任されている場合における当事者目録の記載例
5 特別縁故者に対する相続財産の分与
6 その他
第2 不在者財産管理人
1 総論
2 不在者財産管理人の権限
3 相続人の生死不明又は行方不明の場合の取扱い
4 公示送達と適用場面が重なる場合があること
5 不在者財産管理人が選任されている場合における当事者目録の記載例
6 その他
第3 代位による相続登記
1 相続人がいる場合
2 相続人がいない場合
3 抵当権設定者である在日韓国人が死亡した場合の対処方法
第4 関連記事その他

第1 相続財産管理人
1 総論
(1) 令和5年4月1日以降については,①相続財産の保存に必要な場合は相続財産管理人(民法897条の2)が選任され,②相続人のあることが明らかでない場合は相続財産清算人(民法951条及び民法952条)が選任されています。
イ 令和5年3月31日以前は,相続財産管理人が選任される場合としては,①相続財産の保存に必要な処分として選任される場合(民法918条2項),及び②相続人のあることが明らかでない場合(民法951条)がありました。
(2) 遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合,民法952条にいう「相続人のあることが明かでないとき」に当たりません(最高裁平成9年9月12日判決)。
(3) ①民事訴訟の被告,②民事執行の債務者又は③家事事件の相手方となる自然人に相続人がいない場合,相続財産管理人又は特別代理人を利用することとなると思いますところ,東京地裁21民(執行部)の取扱いとしては,少なくとも民事執行の債務者については相続財産清算人が原則となります。
2 相続財産管理人の権限
(1) 家庭裁判所が家事審判規則106条1項(現在の家事事件手続法200条1項)に基づき選任した相続財産管理人の場合,民法28条類推適用に基づき民法103条所定の範囲内の行為をすることができ,相続財産に関して提起された訴えにつき,相続人の法定代理人の資格において,保存行為として,家庭裁判所の許可なくして応訴することができます(最高裁昭和47年7月6日判決)。
(2) 「相続財産管理人 不在者財産管理人に関する実務」196頁によれば,家庭裁判所より権限外行為許可審判書主文例(訴え提起)は「相続財産管理人である申立人が,◯◯◯に対する別紙訴状案記載の訴状をもって訴訟提起を行うことを許可する。」となっています。
(3) 国税庁HPの「民法上の相続人が不存在の場合の準確定申告の手続」には以下の記載があります。
① 相続財産法人は、国税通則法第5条第1項《相続による国税の納付義務の承継》の規定に基づき納税義務を承継することとされていますから、所得税法第125条の規定を類推解釈して相続財産法人に対して適用することが合理的であると考えられます。
② 相続財産法人が準確定申告書を提出する場合の申告期限は、管理人が確定した日(裁判所から管理人に通知された日)の翌日から4か月を経過した日の前日とすることが相当です。
3 強制執行開始前に債務者である所有者が死亡し、相続人不存在となっている場合における例外的取扱い
(1) 民事訴訟法35条1項は「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。」と定めていて,当該条文は,民事訴訟法37条1項に基づき法人の代表者について準用されています。
(2) 強制執行開始前に債務者が死亡し,債務者の相続財産清算人が選任された場合に相続財産清算人に対する承継執行文の付与を禁止する規定はありませんから,民事執行法上,相続財産法人に帰属する相続財産に対しても相続債権者が強制執行をしてその権利の実現を図ることができることが予定されています(東京高裁平成7年10月30日決定(判例秘書に掲載)参照)。
    ただし,強制執行開始前に債務者である所有者が死亡し、相続人不存在となっている場合につき,①相続財産清算人の選任を待っていたのでは,時効による消滅等により損害が生じる可能性がある場合,及び②物件がガソリンスタンドで速やかな処分が要求される場合,例外的に特別代理人の選任申立てができます(外部ブログの「所有者が死亡し、相続人が不存在となった場合の不動産競売(改訂)」参照)。
(3) 強制執行における債務者側の特別代理人の根拠は,民事執行法20条に基づく民事訴訟法37条及び35条の準用とされています(大審院昭和6年12月9日決定(判例秘書に掲載)のほか,関口法律事務所ブログの「訴える相手方が死亡し、相続人がいない場合の訴訟や強制執行手続について(相続財産管理人・特別代理人)」参照)ところ,理屈としては,相続財産法人について代表者である相続財産清算人がいない状態であるということだと思います。
4 相続財産清算人が選任されている場合における当事者目録の記載例
・ 債務者兼所有者について相続財産清算人が選任されている場合,担保不動産競売開始の申立ての当事者目録としては,以下のような記載になります。
〒◯◯◯-◯◯◯◯ 大阪市北区(以下省略)
          債務者兼所有者 亡◯◯◯◯相続財産
          相続財産清算人 山中理司
送達場所
〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号
          冠山ビル3階 林弘法律事務所
5 特別縁故者に対する相続財産の分与
(1) 相続人の捜索の公告後,6か月以内に相続人としての権利を主張する者がない場合において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者(いわゆる「特別縁故者」です。)の3か月以内の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができます(民法958条の2)。
(2) 相続人不存在の場合において,特別縁故者に分与されなかつた相続財産は,相続財産清算人がこれを国庫に引き継いだ時に国庫に帰属し,相続財産全部の引継が完了するまでは,相続財産法人は消滅せず,相続財産清算人の代理権も引継未了の相続財産につき存続します(最高裁昭和50年10月24日判決)。
(3)ア  共有者の一人が死亡し,相続人の不存在が確定し,相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは,その持分は,民法958条の3(令和5年4月1日以降の民法958条の2)に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり,右財産分与がされないときに,同法255条により他の共有者に帰属します(最高裁平成元年11月24日判決)。
イ 区分所有建物の敷地利用権の場合,民法255条は適用されません(建物の区分所有等に関する法律24条・22条1項)。
6 その他

(1) 大阪家裁HPの「家事事件の各種申請で使う書式について」には,「相続放棄・限定承認の申述の有無の照会書」等の書式が載っています。
(2) 裁判所HPに「相続財産管理人の選任の申立書」(民法952条の場合です。)が載っています。
(3) 地方公共団体の長は,所有者不明土地につき,その適切な管理のため特に必要があると認めるときは,家庭裁判所に対し,民法952条1項に基づく相続財産清算人の選任の請求ができます(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法38条)。
(4) 大阪地裁HPの「競売申立時の代位登記について」には「相続財産管理人(山中注:令和5年4月1日以降は「相続財産清算人」です。)が選任された場合,相続財産管理人が,所有者について「亡○○○○相続財産」と登記名義人表示変更登記をしますので,登記が完了した後に競売を申し立ててください。不動産登記簿にこの登記名義人が表示されていないと差押登記ができません。」と書いてあります。


第2 不在者財産管理人
1 総論

(1) 従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合,家庭裁判所は,利害関係人(例えば,債権者)の申立てにより,不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため,不在者財産管理人を選任できます(裁判所HPの「不在者財産管理人選任」参照)。
(2) 相続会議HPの「遺産分割協議に関わる不在者財産管理人とは 音信不通の相続人がいる場合の対処法」には,「不在者財産管理人を選任できるのは、本人が行方不明で「不在者」といえる場合のみです。「まったく連絡がとれず、どこにいるのかもわからず、当面は帰ってくる見込みが一切ない状態」が必要と考えましょう。」と書いてあります。
(3) 不在者財産管理人の選任申立ては,不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属します(家事事件手続法145条)。
(4) 後述することからすれば,①民事訴訟において被告となる死亡者の相続人が行方不明である場合,又は②民事執行において債務者となる死亡者の相続人が行方不明である場合,不在者財産管理人又は公示送達を利用することとなります。
2 不在者財産管理人の権限
(1) 家庭裁判所が選任した不在者財産管理人の場合,民法28条に基づき民法103条所定の範囲内の行為をすることができ,相続財産に関して提起された訴えにつき,相続人の法定代理人の資格において,保存行為として,家庭裁判所の許可なくして応訴することができると思います。
(2) 国税庁HPの「不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者の財産を譲渡した場合の申告」には「不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者の財産を譲渡した場合、当該譲渡についての納税申告は保存行為に該当すると解されますから、不在者財産管理人は、家庭裁判所の権限外行為許可を得ることなく、不在者の代理人として納税申告を行うことができます。」と書いてあります。
3 相続人の生死不明又は行方不明の場合の取扱い
(1) 民法951条にいわゆる「相続人のあることが明らかでないとき」とは相続人の存否不明をいうのであって,相続人の生死不明又は行方不明等は含まれないと解されています(東京高裁昭和50年1月30日決定(判例秘書に掲載))。
    そのため,戸籍上相続人が一人でも存在する場合,相続人の不存在に該当しませんから,債権者としては,不在者財産管理人の選任申立て(民法25条1項)を求めることとなります。
(2) 相続専門みかち司法書士事務所HP「不在者財産管理人と失踪宣告の違いを5つの項目で比較」が載っていますところ,債権者は失踪宣告(民法30条)の申立てをすることはできません。
4 公示送達と適用場面が重なる場合があること
(1) 不在者管理人選任の要件は「従来の住所又は居所を去った者がその財産の管理人を置かなかったとき」(民法25条1項)です。
    そのため,①民事訴訟として例えば,不動産の取得時効を原因とする所有権移転登記請求訴訟をするような場合,及び②民事執行として例えば,担保不動産競売開始の申立てをするような場合,「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない」こと(民事訴訟法110条1項1号・民事執行法20条)を要件とする公示送達と適用場面が重なると思います。
(2) 被告又は債務者の手続保障を重視した場合,公示送達ではなく,事前に家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任申立てをすべきこととなります。
(3) 東京地裁21民HPの「申立債権者の方へ」に,公示送達申立書・調査書の書式が載っています。
5 不在者財産管理人が選任されている場合における当事者目録の記載例
・ 債務者兼所有者について不在者財産管理人が選任されている場合,担保不動産競売開始の申立ての当事者目録としては,以下のような記載になります。
〒◯◯◯-◯◯◯◯ 大阪市北区(以下省略)
          債務者兼所有者  ◯◯◯◯
          不在者財産管理人 山中理司
送達場所
〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号
          冠山ビル3階 林弘法律事務所
6 その他
(1) 「裁判上の各種目録記載例集―当事者目録、物件目録、請求債権目録、差押・仮差押債権目録等」(2010年9月9日付)80頁及び81頁に,「不在者である債務者に対し競売の申立てや保全命令の申立てをしようとする際に,当事者目録を作成する場合」における当事者目録の記載例が載っています。
(2) 債務者が行方不明であるとしても,「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合」(民事訴訟法35条1項)に当たりませんから,特別代理人の選任申立てはできないと思います。
(3) 担保不動産競売開始の申立てをする場合における「担保権・被担保債権・請求債権目録」につき,例えば,死亡した債務者に2人の子がいる場合,「被担保債権及び請求債権」の末尾に以下の記載をすればいいです(不動産競売申立ての実務と記載例(2005年8月1日付)161頁参照)。
(1) 元 本  ◯◯◯万円
 ただし,平成◯◯年◯◯月◯◯日の金銭消費貸借契約に基づく貸付金◯◯◯◯万円の残元金
(2) 損害金
 ただし,上記元金に対する平成◯◯年◯月◯日から支払済みまでの,約定の年◯◯%の割合による遅延損害金
以上(1),(2)について,令和◯年◯月◯日に✕✕✕✕が死亡したことにより,債務者両名が,各2分の1の割合で債務を承継している。


第3 代位による相続登記
1 相続人がいる場合
(1) 所有者が死亡していて相続人がいるにもかかわらず相続登記がなされていない場合,担保不動産競売の申立てを行う債権者としては,債権者代位権を行使して相続登記を経る必要がありますところ,不動産競売申立ての実務と記載例(2005年8月1日付)182頁には,その手順として以下の記載があります。
① まず債権者は,執行裁判所に対し,被相続人(死者)名義のままの登記事項証明書を添付して,相続人を所有者とする担保不動産競売申立書(【記載例III-24】参照)を提出する(その際,相続を証する書面として戸籍謄本,戸籍の附票等が必要となる(民執規則173条1項, 23条1号参照)。そのほか,後述の相続放棄の申述のない旨の家庭裁判所の証明書を提出したほうがより望ましいであろう)。執行裁判所は, この申立てをそのまま受理する。
    申立ての際債権者は,競売申立書受理証明申請書(【記載例III-25】と,「速やかに代位による相続登記手続をし,その登記事項証明書を提出する」旨の上申書(【記載例III-26】)を併せて提出する。
② 申立債権者は,競売申立書受理証明申請書に裁判所書記官の証明をもらいこれを代位原因証書として相続登記をしたうえ,裁判所に相続人名義となった不動産登記事項証明書を提出する。
③ 裁判所は, この登記事項証明書を確認のうえ,開始決定を行い差押登記嘱託をする。
(2) 大阪地裁HPの「競売申立時の代位登記について」には,代位による相続登記を行う場合の必要書類が載っています。
(3) 相続人の住所が分かる場合,同人を債務者として競売手続を進めることができますが,相続人の住所が分からない場合,同人の手続保障にかんがみ,不在者財産管理人の選任が必要であると思います。
2 相続人がいない場合
(1) 相続人が不分明の不動産について,相続財産管理人を選任することなく,その不動産の登記名義人の債権者が,登記名義人の氏名等を相続財産法人に変更する代位の登記を申請することができます(佐藤正樹司法書士事務所HPの「相続人が不分明の不動産について、相続財産管理人を選任することなく、当該不動産の被相続人の債権者が、競売申立受理証明を代位原因を証する情報として、当該不動産の登記名義人の表示を相続財産法人に変更する代位の登記の申請の可否について」参照)。
(2) その後の競売手続を進めるためには,相続財産管理人(原則)又は特別代理人(例外)の選任が必要であると思います。


第4 関連記事その他
1 岡山地裁HPに「当事者目録記載例」が載っています。
2 令和5年4月1日以降の民法940条(相続の放棄をした者による管理)は以下のとおりです。
① 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
② 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。
3  抵当権の実行のための競売開始決定(現在の担保不動産競売開始決定)が所有者に対して送達されないかしがあっても,競落許可決定(現在の売却許可決定)が確定すれば,右かしを理由として同決定の無効を主張することは許されません(最高裁昭和46年2月25日判決)。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 相続財産管理人選任申立ての手引(申立てを検討している人向けの説明文書)
・ 相続財産管理人選任申立ての手引(民法918条2項用)
・ 相続財産管理人選任申立ての手引(成年後見人・保佐人・補助人用)
 自治体向け財産管理人選任事件申立てQ&A(令和元年11月改訂の,大阪家庭裁判所家事第4部財産管理係書記官室の文書)
・ 相続による納税義務の承継マニュアル(令和3年7月の大阪国税局徴収部徴収課の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 訴訟能力,訴状等の受送達者,審判前の保全処分及び特別代理人
・ 家事事件に関する審判書・判決書記載例集(最高裁判所が作成したもの)
 大阪家裁後見センターだより
 裁判所関係国賠事件
 後見人等不正事例についての実情調査結果(平成23年分以降)
 平成17年以降の,成年後見関係事件の概況(家裁管内別件数)

池田弥生裁判官(52期)の経歴

生年月日 S50.3.27
出身大学 不明
定年退官発令予定日 R22.3.27
R5.4.1 ~ 千葉地裁1民判事
R2.4.1 ~ R5.3.31 横浜地裁5民判事(医事部)
H29.4.1 ~ R2.3.31 東京地裁20民判事(破産再生部)
H26.4.1 ~ H29.3.31 大阪地家裁堺支部判事
H23.4.1 ~ H26.3.31 東京地裁判事
H22.4.10 ~ H23.3.31 徳島家地裁判事
H19.4.1 ~ H22.4.9 徳島家地裁判事補
H16.10.1 ~ H19.3.31 横浜地家裁川崎支部判事補
H15.6.20 依願退官
H14.4.1 ~ H15.6.19 那覇地家裁判事補
H12.4.10 ~ H14.3.31 大阪地裁判事補

*1 52期の池田知史裁判官及び52期の池田弥生裁判官(旧姓は「前原」です。)の勤務場所は似ています。
*2 以下の記事も参照してください。
・ 地方裁判所の専門部及び集中部
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

奥田達生裁判官(63期)の経歴

生年月日 S60.1.20
出身大学 一橋大院
定年退官発令予定日 R32.1.20
R7.10.20 ~ 最高裁総務局付
R4.4.1 ~ R7.10.19 大阪地裁11民判事
R2.4.1 ~ R4.3.31 最高裁行政局付
H30.7.1 ~ R2.3.31 東京地裁判事補
H28.7.1 ~ H30.6.30 財務省国際局開発政策課課長補佐
H28.4.1 ~ H28.6.30 最高裁民事局付
H27.7.10 ~ H28.3.31 東京地家裁判事補
H25.4.1 ~ H27.7.9 大津地家裁判事補
H23.1.16 ~ H25.3.31 大津地裁判事補

*1 大阪大学大学院高等司法研究科HPの「奥田達生 大阪地方裁判所判事」によれば,学歴は「東京大学経済学部卒業(学士(経済学))」及び「一橋大学大学院法学研究科法務専攻専門職学位課程修了(法務博士)」とのことです。
*2 以下の記事も参照してください。
・ 判事補の外部経験の概要
・ 行政機関等への出向裁判官


*3 63期の奥田達生裁判官に関する私の職務経験として,「遺言者Aが12月下旬に早期胃がんの手術を受け,うつ状態が続く中で手術から7日後に,震えた文字で全財産を唯一の孫Y2(長女Y1の唯一の息子)に相続させるという自筆証書遺言をコピー用紙で作成し(Aは生前,大事なことを書くときは便箋を使う人でした。),Aの死後,私が長男Xの代理人としてY1及びY2に対する遺言無効確認請求訴訟(予備的に遺留分侵害額請求訴訟)を提起した事案(相続税の納付なし。)(Xは海外勤務であったが,1年に1回は日本に帰国し,妻と一緒に施設入所中のAと面会をしていた(子のいない人でした。)。)」という事案(以下「本件事案」といいます。)において,
 ①12月下旬当時の入院中のカルテ,②翌年1月上旬の遺言者Aの発言を記録した当時のメール(長男Xの妻が遺言者Aの発言当日又はその翌日に作成したもの)等を提出したものの,令和4年7月19日のウェブ会議の期日で突然63期の奥田達生裁判官から口頭で簡単な心証を開示された上で,自筆証書遺言及びY2に対する合計1500万円の生前贈与(6年間で3700万円かかる私立大学医学部の学費に充てるためのもの)が有効であることを前提とする和解勧告をされました。
 和解を断った上で期日を続行したところ,その後の期日は雰囲気が悪いものになりましたし,Y1及びY2の尋問時間を削られた結果として(ただし,Y1の尋問時間が決まったのは和解勧告前です。),Y2に対する合計1500万円の生前贈与に関する事情をY1に対して質問することはほとんどできませんでした(尋問時間につき,Y1は50分,Y2は30分でした。)。


*4の1 本件事案に関する大阪地裁令和5年4月19日判決(担当裁判官は63期の奥田達生)は,①遺言能力に関する原告の主張の摘示は5行であり,②遺言者Aに対するY1の不当な働きかけに関する原告の主張の摘示は7行であり(うち,2行は強迫取消しの意思表示の摘示です。),③合計1500万円の生前贈与に関する原告の主張の摘示は4行であって,認定事実でそれなりの事情が記載されていて,遺留分侵害額請求に関しては普通の判断がされているとはいえ,自筆証書遺言及び生前贈与を有効とする判決を書くのに都合の悪い原告の主張の大部分がなかったことにされましたから,第三者が当該判決「だけ」を読んでも特に問題意識は出てこないと思います。
*4の2 本件事案の甲号証は甲159まであったものの,控訴審としての大阪高裁令和5年11月2日判決(担当裁判官は40期の阪本勝44期の遠藤俊郎及び52期の大野祐輔)は,①遺言能力に関する控訴人Xの主張の摘示は5行であり,②生前贈与に関する控訴人Xの主張の摘示は3行であり(いずれも主張の結論に相当する部分だけの摘示でした。),①に対する裁判所の判断は4行であり,②に対する裁判所の判断は4行であり,実質的に追加された理由は一切ないものの,法解釈は一切していないので最高裁で破棄してもらうことは非常に難しいものとなっていました(63期の奥田達生裁判官ですら和解勧告において高裁で自分の判決が覆る可能性も大いにあるといっていましたから,高裁判決の内容の薄さには驚きました。)
 そして,あくまでも大阪地裁令和5年4月19日判決及び大阪高裁令和5年11月2日判決を前提とすれば,手術直後にうつ状態で入院している70歳代の親に自筆証書遺言を作成させたとしても,「全財産を特定の人に相続させる」といった一義的かつ単純な内容であり,かつ,小学生までの前に世話をした唯一の孫(遺言書作成当時16歳)に相続させるといったものであれば,当該自筆証書遺言は有効であることになります(①看護師等の病院職員が全くいない場で作成された自筆証書遺言が「無理に」作成させられたものかどうかに関する記録が病院のカルテに残ることはないと思いますし,②遺言書作成直後の遺言者の様子に関する病院のカルテの記載は無視されますし,③遺言書作成から約1週間後の遺言者の発言内容を記録した発言当日の利害関係者作成のメールなど遺言者の真意の発言でなかった可能性もあるということで信用性を否定されることになります。)。


*5 裁判所HPの民事裁判教官室コーナーに載ってある「対話で進める争点整理」(令和5年7月の司法研修所の文書)10頁(PDF19頁)には以下の記載があります。
 ここでいう「判決書」とは、一言でいえば、当事者(特に敗訴する側)の納得性が高い内容の判決書ということになる。そして、当事者の納得性の高い判決書とは、真の争点に重点を置いて判断を示し、その理由について、裁判所(裁判官)の思い込みによるのではなく、証拠の裏付けや適切な経験則をもって説得的に説明したものということになるだろう。


*6 東北大学HPの「裁判官の学びと職務」(令和5年11月22日に東北大学法科大学院で行われた、法科大学院学生を対象とした47期の井上泰士の講演原稿に大幅に加筆したもの)には以下の記載があります。
裁判官は、自分で決断をしなければいけないので、その決断について誰も護ってくれませんし、かばってもくれません。先ほど述べたとおり賠償とか懲戒という問題にはなりませんが、少なくとも当事者を含む世間の批判を一身に受けなければなりません。そうなりたくなければ、証拠と法律に基づく決断の質を高めるほかありません。

国葬儀

目次
第1 総論
第2 安倍元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
2 安倍元首相の叙位叙勲
3 故安倍晋三国葬儀の費用
4 その他
* 詳細につき,「故安倍晋三国葬儀」を参照してください。
第3 吉田元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明
2 吉田元首相の叙位叙勲
3 故吉田茂国葬儀の費用
4 その他
第4 佐藤栄作元首相の国民葬,及びセキュリティポリスの設置
1 総論
2 故佐藤栄作国民葬儀当日における弔意表明
3 三木首相殴打事件
4 セキュリティポリスの設置
第5 戦前の国葬
1 国葬儀と国葬の違い
2 国葬令
3 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例
4 戦前の国葬に関する国会答弁等
5 昭和22年12月31日に国葬令が失効したこと
第6 大喪の礼
1 総論
2 大喪の礼と政教分離
3 大喪の礼における弔意表明
第7 皇太后の葬儀
1 貞明皇后の葬儀
2 香淳皇后の葬儀
第8 内閣・自由民主党合同葬
1 過去の実施例
2 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀
第9 戦後,内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用
第10 関連記事その他

第1 総論
1 国葬儀とは,国の儀式として全額国費負担で行われる葬儀をいい,その点では戦前の国葬と同じであるものの,一般の国民が喪に服する必要はない点で戦前の国葬と大きく異なります。
2(1) 昭和42年10月20日に病死した吉田茂元首相の場合,同月31日に日本武道館で国葬儀が実施されました。
(2) 令和4年7月8日に暗殺された安倍晋三元首相の場合,同年9月27日に日本武道館で国葬儀が実施される予定です。


第2 安倍元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
(1) 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、現在検討しているところであり、現時点でお尋ねについて明確にお答えすることは困難であるが、例えば、お尋ねの「半日休むようにというようなこと」及び「歌舞音曲を慎んだらどうですかということ」について求めることは現時点では考えていない。
② 故安倍晋三国葬儀は、北の丸公園内に所在する日本武道館において行うこととしているところ、故安倍晋三国葬儀の具体的内容は現在検討中であり、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。
(2) 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明について(令和4年8月31日付の故安倍晋三国葬儀葬儀委員長決定)は以下のとおりです。
故安倍晋三国葬儀の当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする。

2 安倍元首相の叙位叙勲
(1) 安倍元首相は,令和4年7月11日付の閣議決定により,従一位に叙され,かつ,大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章を授与されました(首相官邸HPの「元内閣総理大臣安倍晋三氏を従一位に叙すること並びに大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章の授与について」,及び「令和4年7月11日付の閣議書(令和4年7月8日付で,衆議院議員安倍晋三に対し,従一位に叙するとともに,大勲位菊花大綬章並びに頚飾を授ける。)」参照)。
(2) 日本国憲法施行後の首相経験者として従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を授けられたのは,吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三の4人です。


3 故安倍晋三国葬儀の費用
(1) 令和4年8月26日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬義に必要な経費について
 次に、本日の閣議において、故安倍晋三国葬儀に必要な経費について、令和4年度一般会計予備費の使用を決定をしました。国葬儀については、その実施内容を検討しているところであります。今般の国葬儀においては、安倍元総理を追悼したいという気持ちをお持ちの方々のために、日本武道館とは別の場所に献花台を設け、一般献花を実施すること、海外から元首・首脳級の方を含む多数の要人の参列が見込まれることから、参列に当たって必要となる同時通訳等に万全を期す必要があること、会場となる日本武道館には複数の出入口があり、それぞれに警備員や金属探知機を配置するなど、昨今の状況を踏まえて、万全の警備体制を敷く必要があること、さらに参列者として最大で6,000人程度の規模が見込まれることから、その人数に応じたバスの手配やしおりの準備等が必要となること、こうしたことから、予備費の使用額は、令和2年に行われた中曽根元総理の内閣・自由民主党合同葬から約5,700万円増の約2億4,900万円となります。
(2)  令和4年9月6日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀について
 本日、故安倍晋三国葬儀に関し、お手元に配付のとおり、国葬儀の流れを葬儀委員長決定しました。また、国葬儀に際し、自衛隊による儀礼の実施について、葬儀委員長から防衛大臣に対する協力を依頼することとしました。さらに、国葬儀後、迎賓館において、葬儀委員長である岸田総理ほかが、海外から来られた要人から個別に弔意を受け、挨拶する機会を設ける予定であります。そして、国葬儀に要する経費の見込みについて申し上げます。これまで予備費で賄うこととした式典関係の経費2.49億円以外に、警備費や海外要人の接遇に要する経費などが必要となる見込みであること、しかしながら、警護・接遇を要する要人の数等が不確定であるため、経費についても確たることを申し上げるのは困難であること、を申し上げてまいりました。また、これまでも国が関与した葬儀に関して、既定経費で支出する警備・接遇に要する経費を切り出してお示しをしたことはありません。一方で、先日、総理からもお話があったように、丁寧な説明を尽くすという観点に加え、これまでの各国からの連絡状況を踏まえ、海外から190以上の代表団が参列し、その中で特別の接遇を要する首脳級等の代表団の数が50程度と見込まれることから、これを仮定するとともに、そうした要人が多数集まる行事に対する警備体制を一定の規模で仮定すること等により、あえて現時点での経費の見込みをお示しをしたいと思います。以下申し上げる警備・接遇等の経費については、過去の合同葬と同様に、既に成立をしている今年度予算の中で対応するものであります。まず、警備に関するものでございますが、具体的には、まず警備に要する経費としては8億円程度と見込まれます。その内訳は、道府県警察からの派遣のための旅費などの部隊活動や超過勤務手当に関わる経費が5億円程度、車両等の装備資機材や待機所の借上げの装備費が3億円程度であります。次に、海外要人の接遇に要する経費については6億円程度と見込まれます。その内訳は、海外要人の本邦滞在中の車両の手配や空港での受入体制の構築等の庁費が5億円程度。接遇要員として一時帰国させる在外公館職員の出張のための旅費が1億円程度であります。このほか、自衛隊の儀じょう隊等の車両借上費等が0.1億円程度と見込まれております。これも既定予算で対応することとしております。私(官房長官)からは以上です。


4 その他
(1) 安倍元首相の家族葬は,令和4年7月12日午後,東京都港区芝公園にある増上寺で行われました(産経新聞HPの「安倍元首相の功績しのぶ 増上寺で葬儀、世界から弔意1700件」参照)。
(2) 外務省HPの「故安倍晋三国葬儀への各国・地域・国際機関等からの参列」(令和4年9月22日付)には「参列の内訳は、海外から代表が参列する国・地域・国際機関等が117、海外からは参列しないが駐日大使・駐日国際機関代表等が代表として参列する国・地域・国際機関等が101です。」と書いてあります。
(3) Wikipediaに「安倍晋三銃撃事件」及び「安倍晋三の国葬」が載っています。

第3 吉田元首相の国葬儀
1 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明
(1) 昭和42年10月28日(土)の官報には,「故吉田茂国葬儀当日における弔意表明について」として以下の記事が載っています。 
 故吉田茂国葬儀当日(10月31日)哀悼の意を表するため,次のとおり措置するものとする。
1. 各省庁においては,
(1) 弔旗を掲揚すること。
(2) 葬儀中の一定時刻に黙とうすること。
(3) 各省庁の長は当日午後は公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めることができること。
(4) 公の行事,儀式その他歌舞音曲を伴う行事はさしひかえること。
2.以上の各項については,各公署,学校,会社その他一般においても同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望すること。
(2) 故安倍晋三国葬儀の場合,「各省庁の長は、公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めること」等は考えられていません(衆議院議員中谷一馬君提出「故安倍晋三国葬儀」における職員が勤務しないこと等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)参照)。

2 故吉田茂国葬儀の費用
・ 相沢英之大蔵省主計局次長は,昭和43年5月9日の衆議院決算委員会において,故吉田茂国葬儀の費用として以下の答弁をしています。
 総額千八百九万六千円のうち、国葬儀準備等に必要な経費が四百五十九万八千円。その内訳を申しますと、これは送迎用のバス等の借り上げ費が百九十四万円、案内状等の印刷及び送料等通信費が百三十八万五千円、準備会議費、救護班謝礼その他が百二十七万三千円。次に武道館の借り上げに必要な経費が三百九十四万二千円。それから第三番目に、国葬儀場飾りつけ等に必要な経費として九百五十五万六千円でございますが、そのうちおもなものは、生花の飾り二百七十万円、献花百五十万円等でございます。


3 吉田元首相の叙位叙勲
(1) 吉田元首相は,駐イタリア大使をしていた昭和6年1月21日に勲二等瑞宝章を授けられ,同年10月31日に勲二等旭日重光章を授けられ,生存者叙勲の再開に伴い,昭和39年4月29日に大勲位菊花大綬章を授けられました。
(2) 吉田元首相は,昭和42年10月20日付で従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を追贈されました。


4 その他
(1) 吉田元首相の家族葬は,昭和42年10月23日に東京カテドラルでカトリック葬として行われました。
(2) 清水汪内閣官房内閣審議室長兼内閣総理大臣官房審議室長は,昭和54年4月13日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
 国葬でございますが、旧国葬令失効後はこれにかわる法律はございません。
 しかしながら、やはり国の立場におきましてそれに相当すべき場合に葬儀を営むという考え方はとれるのではないかという認識を持ったわけでございまして、具体的な例といたしましては、故吉田茂氏の葬儀の場合に、昭和四十二年十月二十三日の閣議決定によりまして国葬を行っております。
(3)ア ダイヤモンド・オンラインの「吉田茂氏の国葬は「大不評」だったのに…安倍氏国葬をゴリ押しする政府の過ち」には「テレビの大騒ぎも今と同じだ。国葬当日は「宰相吉田茂」(NHK)、「人間吉田茂」(フジテレビ)など朝から晩まで全チャンネルで追悼番組を放送。神奈川県大磯の自宅から武道館へと遺骨が運ばれるまでは、民放全局共同で中継をした。」と書いてあります。
イ データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)「故吉田茂国葬儀における佐藤内閣総理大臣の追悼の辞」(昭和42年10月31日付)が載っています。
(4) 令和4年7月現在,日比谷花壇のお別れナビ「会社概要」には,「日比谷花壇のお葬式」として以下の記載があります。
1967年日本で初めての生花祭壇と呼ばれる吉田茂首相の国葬を手掛けるところからはじまり、2004年には葬儀全般を執り行う「日比谷花壇のお葬式」がスタート。
相談実績は累計20,000件以上、年間約800件の葬儀を施行しています。
(5) 日経新聞HPに「吉田茂氏と賀川豊彦氏、ノーベル平和賞の最終候補だった ノーベル研究所の開示資料で明らかに」が載っています。
(6)ア 衆議院議員山岸一生君提出国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 昭和四十二年十二月一日の衆議院議院運営委員会における安宅常彦委員の質問において、故吉田茂国葬儀に関し、「この間吉田さんの葬式がございましたが、そのときに院のほうで全然知らない間に、佐藤総理から衆議院、参議院の副議長が吉田さんの葬式の実行副委員長というのに任命されておった。それではけしからぬではないかということで、これは表面に出ないままに私どもはそれは断わるべきだ、そういうことで断わったいきさつがあるわけです。」との発言があったことは承知していたが、お尋ねの「当初は衆参両院の副議長を葬儀副委員長に委嘱する案であったが、のちに断念したとされる。このように両院の参画を模索した経緯」については承知していない。
イ 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「お尋ねの「宮内庁法規定儀式(山中注:宮内庁法2条8号に規定する儀式のこと。)及び憲法規定儀式(憲法7条10号に規定する儀式のこと。)を除いた国の儀式」の例は、昭和四十二年十月三十一日に行われた故吉田茂国葬儀のみである。」と書いてあります。


第4 佐藤栄作元首相の国民葬,及びセキュリティポリスの設置
1 総論
(1) 昭和50年5月19日の夕方,築地の料亭「新喜楽」において脳出血で倒れて昏睡状態となり,5日後に病院に搬送され,同年6月3日に死亡した佐藤栄作元首相の場合,同月16日に日本武道館で国民葬が行われました。
(2) 国民葬の前例は大正11年1月17日に日比谷公園で実施された大隈重信(大正11年1月10日死亡)の国民葬だけでしたところ,Wikipediaの「大隈重信」には「前宮内大臣の波多野敬直を委員長とした葬儀委員会が、一定の儀式が定められており、一般人の参列ができない国葬ではなく、面識のないものでも参加できる「国民葬」の演出とその成功をねらった準備活動を進めた。」と書いてあります。
(3) よりそうお葬式HPに「国葬とは?国民葬との違いや流れについて」が載っています。

2 故佐藤栄作国民葬儀当日における弔意表明
(1) 昭和50年6月14日(土)の官報には,「故佐藤榮作国民葬儀当日における弔意表明について」として以下の記事が載っています。
 故佐藤榮作国民葬儀当日(6月16日)哀悼の意を表するため、次のとおり措置するものとする。
1.各省庁においては、
(1) 弔旗を掲揚すること。
(2) 葬儀中の一定時刻に黙とうすること。
2.各公署等においても前項と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望すること。
(2) 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明の場合と異なり,以下の事項はありませんでした。
・ 各省庁の長は当日午後は公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めることができること。
・ 公の行事,儀式その他歌舞音曲を伴う行事はさしひかえること。

3 三木首相殴打事件
・ 昭和50年6月16日の故佐藤榮作国民葬で発生した三木首相殴打事件について,浅沼清太郎警察庁長官は,昭和50年6月18日の衆議院地方行政委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 故佐藤榮作元内閣総理大臣の国民葬儀という厳粛な行事に際して、一国の総理が暴漢に襲われるという事件を防止できなかったということは、総理はもとより、一般国民に対してもまことに申しわけない、かように考えている次第でございます。
 どうしてそういうような事件が起きたかということにつきましては現在検討中ではございますけれども、まず事案の概要とその経過を説明いたしまして、いままで把握しているところを御説明申し上げたいと思います。
② まず、事案の概要でございますけれども、十六日の一時五十三分ごろに、三木総理が佐藤元総理の御遺骨到着を出迎えるために、日本武道館内から正面玄関の歩道近くに歩み寄ったところ、被疑者の筆保(山中注:筆保泰禎(ふでやすひろよし)のこと。)が報道陣の後方から「核防条約批准反対」(山中注;「核防条約」というのは「核拡散防止条約」のことです。)と叫びながら飛び込んできたわけであります。
 総理の背後から正面に回りまして、右手で総理の顔面を二回殴打しまして、総理はその場に倒れたという状況でございます。
 筆保は、三木総理は屈辱的不平等の核防条約批准を強行せんとする国家、民族の敵だ、即時自殺することを勧告するというような自殺勧告書と、それに刃渡り十四・五センチの登山ナイフをセロテープで取りつけたものを所持しておりまして、警戒陣は暴行直後、現場で公務執行妨害と銃砲刀剣類所持等取締法違反で現行犯逮捕した次第でございます。

③ 取り調べました結果、自供によりますと、筆保は当日六時ごろに文京区大塚の愛国党本部を出まして、荻窪――池袋の間を地下鉄で往復しながら時間待ちをしておった。
 そして、東京駅の大丸デパート便所に入りまして、黒ダブル上下、黒ネクタイに着がえ、喪服姿になりまして、タクシーで午後一時ごろ武道館に到着したわけであります。到着しまして正面玄関わきの報道陣の中に紛れ込んでおりまして、同玄関前に赴く総理をそのときに発見して、核防条約反対と叫んで飛び出してきた。
 そして勧告状を渡そうとした際に、とっさに暴行を加えたというような供述をしているわけであります。
④ 犯行の動機、目的につきましては、先ほど申し上げましたように、核防条約が批准されたならば日本の将来は絶望的だというように考えて、総理に批准反対を訴え、聞き届けられなければ自殺を勧告するつもりであったというように述べておるわけであります。
 また、同人は単独で計画を実行したと述べておりますけれども、警視庁といたしましては、党本部と筆保の居室二カ所につきまして捜索を実施するなど、引き続き事件の究明を進めているという状況であります。
⑤ 特に、どうしてそういうことになったかという、問題になります警護と右翼の視察体制でありますけれども、国民葬に伴う警護、警備のために、当日警視庁は武道館の直近に第一方面警備本部を設置しまして、約千四百名の警察官を配置して警戒に当たっていたわけであります。
 事件当時、総理の身辺及び正面玄関前の御遺骨到着場所周辺には、身辺、行き先地警護員五人を含めまして、制私服二十三人が配置について警護、警備に従事しておったという状況になっております。
⑥ また、右翼の視察につきましては、右翼が当面最も強い関心を持っております核防条約が今国会で批准される可能性が強まったために、大日本愛国党を含む右翼虞犯者の視察を警視庁としては強化していたわけであります。
 筆保は、朝の八時、愛国党事務所並びに同党が実施した核防条約批准反対の街宣活動視察の過程で所在不明であることがわかったわけでありまして、そこで直ちに警視庁の公安三課は、右翼担当課でございますけれども、担当者を増強いたすなど所要の措置をとったわけでありますけれども、先ほど説明いたしましたように、他の弔問者と同様のかっこうで報道陣の中に紛れ込んでおったということや、玄関前には相当数の一般弔問者もいたというようなことで、右翼視察員も、警護、警戒に当たっておった者も事前に、同人を発見することができなかったというのが、このまことに申しわけない事件になったわけでございます。
⑦ 以上のような状況でございます。
(2)ア Wikipediaの大日本愛国党には,「浅沼稲次郎暗殺事件を起こした山口二矢、嶋中事件で知られる小森一孝はいずれも大日本愛国党に所属していたが、それぞれ事件直前に脱党している。」とか,「三木には警視庁の警察官が護衛として配置されていたが、やや離れた場所にいた上に三木の進行方向ばかりに気を取られ、犯行への対応が遅れた。」と書いてあります。
イ 浅沼清太郎警察庁長官は,昭和53年3月26日発生の成田空港管制塔占拠事件の責任を取って,同年6月1日に辞職しました。

4 セキュリティポリスの設置
(1) 三木首相殴打事件をきっかけとして,昭和50年9月13日,警視庁警備部警護課に,要人警護任務に専従するセキュリティポリス(略称はSPです。)が設置されました。
(2) 渡辺善門 警察庁警備局公安第二課長は,昭和53年4月7日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 現在、要人警護につきましては先生のおっしゃいましたとおりで、内閣総理大臣、衆参両院の議長、最高裁判所長官、政党幹部等につきまして行っておるわけでございますけれども、この警護員の教養につきまして、警察庁といたしましては、年一回でございますけれども、中核たる警護専従員を中心に専科教養を実施しております。そのほかに都道府県警察単位に随時教養を実施する、とりわけ身辺警護の衝に当たる警護専従員につきましては、できるだけ回数を多く警護教養をやるように指導をしておるところでございます。



第5 戦前の国葬
1 国葬儀と国葬の違い
(1)ア 戦前の国葬の場合,国葬令に基づいて実施され,国民全体が喪に服することになっていました。
イ 戦後の国葬儀の場合,閣議決定に基づいて実施され,一般国民は哀悼の意を表するように協力を要望されるに過ぎません。

2 国葬令
・ 昭和22年12月31日限りで失効した国葬令(大正15年10月21日勅令第324号)は以下のとおりであって(国葬令2条ただし書の「殤」(しょう)は「若死に」という意味です。),国葬令に基づく国葬の場合,国葬令4条後段に基づき,国民全体が喪に服することになっていました。
第一條 大喪儀ハ國葬トス
第二條 皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃及攝政タル親王内親王王女王ノ喪儀ハ國葬トス但シ皇太子皇太孫七歳未満ノ殤ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三條 國家ニ偉功アル者薨去又ハ死亡シタルトキハ特旨ニ依リ國葬ヲ賜フコトアルヘシ
前項ノ特旨ハ勅書ヲ以テシ内閣總理大臣之ヲ公告ス
第四條 皇族ニ非サル者國葬ノ場合ニ於テハ喪儀ヲ行フ当日廢朝シ國民喪ヲ服ス
第五條 皇族ニ非サル者國葬ノ場合ニ於テハ喪儀ノ式ハ内閣總理大臣勅裁ヲ経テ之ヲ定ム

3 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例
(1) 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例は以下のとおりです。
① 大正15年12月25日崩御の大正天皇(昭和2年2月7日の大喪儀)
② 昭和 9年 5月30日死亡の東郷平八郎元帥海軍大将(昭和9年6月5日実施)
③ 昭和15年11月24日死亡の西園寺公望元首相(昭和15年12月5日実施)
④ 昭和18年 4月18日戦死の山本五十六元帥海軍大将(昭和18年6月5日実施)
⑤ 昭和20年 5月20日死亡の閑院宮載仁親王(かんいんのみやことひとしんのう)・元帥陸軍大将(昭和20年6月18日実施)
(2) 西園寺公望及び山本五十六の国葬については,以下のとおりユーチューブに鮮明な動画が載っています。

4 戦前の国葬に関する国会答弁等
(1) 田中龍夫総理府総務長官は,昭和43年5月9日の衆議院決算委員会において以下の答弁をしています。
 ただいま御指摘のように、今後これ(山中注:国葬)に対する何らかの根拠法的なものはつくらないかという御趣旨でありますが、これ(山中注:国葬儀)は行政措置といたしまして、従来ありましたような国民全体が喪に服するといったようなものはむしろつくるべきではないので、国民全体が納得するような姿において、ほんとうに国家に対して偉勲を立てた方々に対する国民全体の盛り上がるその気持ちをくみまして、そのときに行政措置として国葬儀を行なうということが私は適当ではないかと存じます。
(2) 床次徳二(とこなみとくじ)総理府総務長官は,昭和44年7月1日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
ただいま御引用になりました吉田元総理の葬儀につきましても、国葬儀として取り扱うということになって、儀という字が入っておる。国葬そのものではないところに、その当時いろいろ検討いたしました結果、ああいう取り扱いになったと承っておるのでありまして、御意見もありますが、しかしこの点は十分検討いたしたいと思います。
(3) 国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
1 国葬令に基づく葬儀(戦前)
(1) 一般に国葬とは、国が国家の儀式として、国費で行う葬儀のことをいうこととされている(小学館日本大百科全書(村上重良) ) 。
大正15年に制定された国葬令(大正15年勅令第324号)においては、天皇、太皇太后、皇太后、皇后の大喪の儀、皇太子、同妃、皇太孫、同妃、摂政たる親王、内親王、王、女王の葬儀のほか、国家に偉功ある者(皇族含む。)が莞去又は死去した場合における特旨による国葬が定められていた(特旨は勅害をもってし、内閣総理大臣が公告) 。
※ 岩倉具視、島津久光、伊藤博文、大山巌、山県有朋、松方正義、東郷平八郎、西園寺公望、山本五十六など、皇族8名・一般人12名について、特旨により国葬を実施。
(2) 国葬令第4条において、葬儀を行う当日は、「国民喪ヲ服ス」こととされており、これに基づき、官庁・学校は休みとなり、歌舞音曲は停止又は遠慮、全国民は喪に服し、国葬を厳粛に送ることとされていた。
(3) 国葬令は、法律を以て規定すべき事項を規定するものであったことから、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和22年法律第72号)第1条の規定によりご昭和22年末に失効した。
(4) 参議院議員田島麻衣子君提出故安倍晋三元総理の国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 過去、国葬として実施されたものについては、様々なものがあると承知しており、お尋ねの「国葬の定義」について一概にお答えすることは困難であるが、例えば、国葬令(大正十五年勅令第三百二十四号)の規定により国葬として行われた葬儀がある。同令で規定されていた大喪儀とは、皇室喪儀令(大正十五年皇室令第十一号)に規定され、国葬令の規定により国葬として行われた葬儀である。国葬儀とは、国の儀式として行う葬儀である。

5 昭和22年12月31日に国葬令が失効したこと
(1) 瓜生順良宮内庁次長は,昭和38年3月29日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
 皇室典範の大喪の礼、これはどういうふうなやり方でなされるかということはきまっていないわけです。
 国葬令の大喪の礼と同じかといいますと、国葬令は現在は有効ではないと思うのであります。

 従って、その国葬令にありますやり方も参照して、もしそういう必要ができた場合には、十分新しく考えて、適当な方法で行なわれるということかと思います。
(2) 高辻正巳内閣法制次長は,昭和38年3月29日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① ただいま御指摘の勅令三百二十四号、いわゆる国葬令でございますが、御承知の通りに、国葬令自身を廃止した法令というものはございません。
 ございませんが、実はもうすでに御承知だと思いますが、昭和二十二年法律第七十二号という法律がございまして、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定で、法律を以って規定すべき事項を規定するものは、昭和二十二年十二月三十一日まで、法律と同一の効力を有するものとする。」という立法がございます。
 その立法によりまして、法律事項を規定しておるものは現在効力はない。二十二年の十二月末日まではありましたけれども、その後はないということに相なっております。
② そこで、この国葬令が事実的に廃止されておりませんので、どうかという問題はございますが、この国葬令をながめて見ますと、「勅裁ヲ經テ之ヲ定ム」とか「特旨ニ依リ国葬ヲ賜フコトアルヘシ」とかいうような規定があります関係からいたしまして、ただいま瓜生次長が御指摘になりましたように、現在は効力がないというのが相当であろうと思います。

第6 大喪の礼
1 総論
(1)ア 「大喪の礼」は天皇又は上皇の国葬であり(皇室典範25条・天皇の退位等に関する皇室典範特例法3条3項),皇室の私的な儀式としての「大喪儀」とあわせて,「御大葬」といいます。
イ 明治憲法下では,皇室喪儀令1条ないし11条に基づく大喪儀(天皇,皇后,皇太后及び太皇太后が死亡した場合に行われる葬儀でした。)が国葬とされていました(国葬令1条)。
(2)ア 国の儀式として昭和天皇の大喪の礼を平成元年2月24日に新宿御苑で行うことについては,同年1月8日の官報特別号外で告示されました。
イ 昭和天皇の大喪の礼の場合,昭和天皇の大喪の礼の行われる日を休日とする法律(平成元年2月17日法律第4号)に基づき,大喪の礼が実施された平成元年2月24日は休日となりました。
2 大喪の礼と政教分離
(1) 小渕恵三内閣官房長官は,平成元年2月14日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 大喪の礼は、国の儀式として憲法の趣旨に沿い皇室の伝統等を尊重して行われ、葬場殿の儀は、皇室の行事として原則として皇室の伝統的方式に従い旧制を参酌して行われるので、両儀は法的に明確に区分されるわけでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、両儀が一連の流れの中で厳粛のうちにスムーズに執行されることが望ましいと考えておりますので、政府といたしましては、この両儀が一連のものとして流れる姿の中で行いたい、このように考えておるところでございます。
② 国民の間にいろんな御意見のあることも政府としては承知をしなければならない立場でございますので、種々検討いたしました結果、大喪の礼の御式は国の儀式として行われ、葬場殿の儀は皇室の行事として行われるもので、両儀は法的に明確に区別されるのみならず、実際上も大喪の礼御式においては開式を告げること、祭官は退席すること、鳥居は撤去すること、大真榊は撤去すること等とされており、両儀ははっきり区別をされた形で行われるということで大喪の礼委員会で決定いたした次第でございます。
(2) 1期の味村治内閣法制局長官は,平成元年2月14日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 国事行為として行われます大喪の礼は、ただいま官房長官が申されましたとおり、皇室行事であります葬場殿の儀とははっきり区別をされているわけでございます。
② 国事行為たる大喪の礼は、祭官は退席し、鳥居を撤去し、大真榊は撤去されておりまして宗教色はないわけでございまして、国事行為たる大喪の礼が宗教儀式に該当ししたがって憲法二十条第三項によって国またはその機関が行うことを禁止されている宗教的活動に該当するという疑いは全くございません。まずそのことを申し上げておきます。

③ その前に葬場殿の儀が行われるわけでございまして、これは皇室の行事として行われるわけでございます。これにつきましてはいろいろ宗教的な色彩があるということは否定ができないわけでございます。
 しかしながら、そこに総理が総理たる資格で御出席になりましても、それは先ほど飯田委員との論議の中で申し上げたのと似たようなことになるわけでございますが、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であられます亡き昭和天皇に対する哀悼の意を表し、また、御遺族と申し上げるのは失礼かと思うんですが、御遺族であられます現天皇に対してお悔やみの意をあらわす、こういう意味でそういういろんな儀礼を尽くすというような意味で出席されるわけでございまして、特定の宗教を助長するとか援助するとかそういうようなことで出席されるわけでないということは、これは明らかなわけでございますから、したがって、内閣総理大臣が総理大臣としての資格で皇室行事たる葬場殿の儀に御出席になってもそれは憲法二十条三項の禁止する宗教的活動には該当しない、このように理解をしているわけでございます。
(3) 法の番人として生きる 大森政輔 元内閣法制局長官回顧録157頁には以下の記載があります。
 片や葬場殿の儀(山中注:「そうじょうでんのぎ」)のほうには鳥居が立って、真榊(山中注:「まさかき」)が立っている。これは宗教施設そのものではないかということで、当時の法制局長官が大喪の礼の手続に入ってからは、葬場殿の前にある鳥居と真榊を撤去するよう主張しました。それでずいぶん官邸のほうと対立しまして、感情的なしこりが残ったようです。当時は味村長官ですが、味村さんもさすがに頑張って、「鳥居を立てて、真榊を立てると、その中は神域になる。だから宗教施設そのものだ。だからそれを含めた大喪の礼をやると宗教儀式そのものだ」と言ったのです。それは一理あるので、渋々官房副長官も撤去することに応じて、政教分離については問題がないような形で行われました。
3 大喪の礼における弔意表明
(1) 結城章夫文部科学省大臣官房長は,平成15年7月16日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
 昭和天皇の大喪の礼当日の弔意奉表につきましては、平成元年二月十五日付の文部事務次官通知が出されております。これは、それに先立ちます二月十四日の閣議決定におきまして、学校などに対して、国と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望することとされたことを踏まえまして、文部省管下の機関あるいは各都道府県の教育委員会等に通知を発出したものでございます。
(2) 大阪教育法研究会HPに「天皇陛下崩御に際しての弔意奉表について」(昭和64年1月7日付の文部事務次官通知)が載っています。

第7 皇太后の葬儀
1 貞明皇后の葬儀
(1) 昭和26年5月17日に崩御した貞明皇后(昭和天皇の母親であり,崩御当時は皇太后)の場合,GHQ占領下であったことから,国葬の有無を明確にしないまま,同年6月22日に大喪儀(国葬令1条参照)が行われました。
(2) 林修三法制局長官は,昭和37年2月26日の衆議院予算委員会第一分科会において以下の答弁をしています。
 現状のことで申しますれば、結局、国葬令というものは形式的には失効している。先ほどちょっとお答え申しました通りに、実は貞明皇后の御喪儀については、国葬令の考え方を踏襲して、同時にいわゆる行政府限りにおいて行ない得る範囲のこと、つまり予算措置等の裏づけがあればその範囲において、国葬令の内容と大体同じ考え方で貞明皇后の御喪儀については取り扱ったわけでございます。
2 香淳皇后の葬儀
・ 平成12年6月16日に崩御した香淳皇后(昭和天皇の皇后であり,崩御当時は皇太后)の場合,同年7月25日に斂葬の儀(れんそうのぎ)(大喪儀に相当するもの)が行われました。

第8 内閣・自由民主党合同葬
1 過去の実施例
(1) 内閣・自由民主党合同葬の実施例は以下のとおりです(対象者は元首相だけです。)。
・ 昭和55年 6月12日死亡の大平正芳(昭和55年7月9日実施)
・ 昭和62年 8月 7日死亡の岸信介(昭和62年9月17日実施)
・ 昭和63年11月14日死亡の三木武夫(昭和63年12月5日実施)
・ 平成 7年 7月 5日死亡の福田赳夫(平成7年9月6日実施)
・ 平成12年 5月14日死亡の小渕恵三(平成12年6月8日実施)
・ 平成16年 7月19日死亡の鈴木善幸(平成16年8月26日実施)
・ 平成18年 7月 1日死亡の橋本龍太郎(平成18年8月8日実施)
・ 平成19年 6月28日死亡の宮澤喜一(平成19年8月28日実施)
・ 令和 元年11月29日死亡の中曽根康弘(令和2年10月17日実施)
(2) 以下の元首相については内閣・自由民主党合同葬は実施されませんでした。
・ 平成 5年12月16日死亡の田中角栄
・ 平成10年 5月19日死亡の宇野宗佑
・ 平成12年 6月19日死亡の竹下登
・ 平成29年 8月28日死亡の羽田孜
・ 令和 4年 1月 9日死亡の海部俊樹
(3) 衆議院議員山岸一生君提出国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「御指摘の「『故岸信介』内閣・自由民主党合同葬儀記録」において、御指摘のような記載(山中注:「昭和六十三年三月三十日内閣総理大臣官房発行「『故岸信介』内閣・自由民主党合同葬儀記録」によると、政府は、これに先立つ佐藤元首相の国民葬について、長期政権、沖縄返還などの実績、ノーベル平和賞受賞の三点を挙げて、岸・佐藤両氏の葬儀形式の違いを説明している」という記載)があることは承知していたが、元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきた」と書いてあります。
2 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀
(1) 最高位の勲章である大勲位菊花章頸飾を受賞した首相経験者(いずれも没後叙勲です。)は吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三でありますところ,佐藤栄作については昭和50年6月16日に国民葬が実施され,中曽根康弘については令和2年10月17日に内閣・自由民主党合同葬が実施されました。
(2) 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀は当初,令和2年3月15日にグランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで実施される予定でした(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の執行について(令和2年1月10日付の内閣総理大臣通知)参照)が,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により同年10月17日に延期されました(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の執行の延期について(令和2年3月4日付の内閣総理大臣通知)参照)。
(3)ア グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで令和2年10月17日に実施された「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀への裁判所からの出席者は,最高裁判所長官,認証官(15人以内)及び事務総長,並びに元最高裁判所長官だけとなりました(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀参列者推薦範囲の変更について(令和2年9月10日付の内閣府大臣官房人事課長の文書)参照)。
イ 裁判所の認証官は最高裁判所判事14人及び高裁長官8人の合計22人です。
(4)ア 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日における弔意表明について (令和2年10月2日付の閣議了解)の本文は以下のとおりです。
 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日 (10月17日)には、哀悼の意を表するため、次のとおり措置するものとする。
1 各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻(午後2時10分)に黙とうすること。
2 各府省は、前項と同様の方法により、哀悼の意を表するよう、各公署に対し協力方を要望すること。
イ 弔意表明のレベルとしては,故佐藤榮作国民葬儀当日におけるものと同じでした。
(5) FNNプライムオンラインの「次世代へ受け継がれる中曽根家と皇室の縁…宮内庁記者が見た中曽根康弘元首相の合同葬」(2020年10月21日付)には「今回、合同葬に参列された皇族は、秋篠宮ご夫妻、秋篠宮家の長女・眞子さま、次女・佳子さま、常陸宮さま、寬仁親王妃信子さま、高円宮妃久子さま、高円宮家の長女・承子さまの8方です。慣例により、天皇皇后両陛下や上皇ご夫妻は出席せず、お使いを差し向けられています。」と書いてあります。
(6)ア 首相官邸HPに「「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀」が載っています。
イ 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀(令和2年10月17日実施)に関して最高裁判所が作成し,又は取得した文書を掲載しています。
(7) 国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
2 戦後における内閣総理大臣経験者の葬儀
(1) 戦後の内閣総理大臣経験者の葬儀に関する内閣(国)の関与については、当該者の功績、大方の国民の心情や御遺族のお気持ち等々を総合的に勘案して、個々のケース毎に相応しい方法がとられている。
(2) 具体的には、内閣(国)が関与した葬儀の形式としては、
①国の儀式として行う国葬儀
②内閣の行う儀式として行う内閣葬
がある。
(3)その執行者について、過去の実施実績を見ると、国葬儀は国が単独の執行者となっているのに対し、内閣葬については、内閣に加えて、自由民主党、衆議院等と合同で行われている。費用負担については、自由民主党と合同で行われる場合(内閣葬)には、自由民主党と概ね折半している。
※ なお、御遺族が公費での葬儀を固く辞退され、葬儀の実施に内閣(国)が関与しなかったこともある(海部元総理)。
(8) 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀は、内閣府設置法第四条第三項第三十三号に規定する内閣の行う儀式として行われた葬儀である。
② お尋ねの「前回合同葬儀において、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は公的行為を行った」の意味するところが必ずしも明らかではないが、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は、故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀に参列されたところであり、当該御参列は、故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀委員長である内閣総理大臣安倍晋三(当時)から参列の願い出を受け、公的な立場で行われたものであり、公的行為に該当するものと考えている。


第9 戦後,内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用
・ 参議院議員辻元清美君提出安倍晋三元総理の国葬儀等についての基準に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 戦後、内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用について、①予算額に占める国費の割合及び②執行額をお示しすると、それぞれ次のとおりである。
 吉田茂元内閣総理大臣 ①十割 ②約千八百四万円
 佐藤榮作元内閣総理大臣 ①約五割 ②約千九百九十六万円
 大平正芳元内閣総理大臣 ①約五割 ②約三千六百四十三万円
 岸信介元内閣総理大臣 ①約五割 ②約四千五百十万円
 三木武夫元内閣総理大臣 ①十割 ②約一億千八百七十一万円
 福田赳夫元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千三百三十四万円
 小渕恵三元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千五百五十五万円
 鈴木善幸元内閣総理大臣 ①約五割 ②約五千四百四十九万円
 橋本龍太郎元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千七百三万円
 宮澤喜一元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千五百八十五万円
 中曽根康弘元内閣総理大臣 ①約五割 ②約八千二百九十五万円

第10 関連記事その他
1 日本武道館(にっぽんぶどうかん)は,昭和39年の東京オリンピックの柔道競技会場として建設され,同年10月3日に開館しました。
2 Trend Laboに「【国葬された日本人一覧】費用(国費・税金)はいくら?休みになる?」が載っています。
3 首相官邸HPに「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式等」が載っています。
4 令和4年10月3日に国会に提出された国葬儀法案(第210回国会衆法第2号)2条(国葬儀の実施)は以下のとおりです。
① 多年にわたり国政において重要な地位を占め、国家としての存立に関わる国難を乗り越えて我が国の主権と独立を守り、その発展の基礎を築く等の特別の功労のあった者が死亡したときに限り、内閣は、その者について、国葬儀を行うことができる。
② 内閣は、国葬儀を行おうとするときは、あらかじめ、その国葬儀に係る者が前項に規定する特別の功労のあった者に該当すると判断した理由及びその国葬儀に要する費用の見込みその他その行おうとする国葬儀の概要を明らかにして、国会の承認を得なければならない。
5 以下の記事も参照してください。
・ 故安倍晋三国葬儀
・ 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する裁判例
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 叙位の対象となった裁判官(平成31年1月以降の分)
・ 裁判官の死亡退官
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)

杉原崇夫裁判官(51期)の経歴

生年月日 S45.12.24
出身大学 九州大
退官時の年齢 54歳
R7.3.31 依願退官
R5.7.1 ~ R7.3.30 福岡高裁2刑判事
R2.4.1 ~ R5.6.30 熊本地裁刑事部判事
H29.4.1 ~ R2.3.31 佐賀地家裁判事
H26.4.1 ~ H29.3.31 福岡地家裁小倉支部判事
H23.4.1 ~ H26.3.31 大阪地裁14刑判事
H21.4.11 ~ H23.3.31 福岡高裁2刑判事
H19.4.1 ~ H21.4.10 福岡地家裁判事補
H16.4.1 ~ H19.3.31 鹿児島地家裁判事補
H13.4.1 ~ H16.3.31 佐賀家地裁判事補
H11.4.11 ~ H13.3.31 福岡地裁判事補

*0 真和中学・高等学校HP「Career Guidance 真和が今の原点です」51期の杉原崇夫の顔写真が載っています。
*1 以下の記事も参照してください。
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部
*2の1 平成19年4月17日発生の長崎市長射殺事件に関する長崎地裁平成20年5月26日判決(39期の松尾嘉倫49期の安永武央及び56期の内藤寿彦)(判例秘書に掲載)は死刑を言い渡したものの,福岡高裁平成21年9月29日判決(26期の松尾昭一49期の今泉裕登及び51期の杉原崇夫)は原判決を破棄して無期懲役を言い渡し,最高裁平成24年1月16日決定で支持されました。
*2の2 最高裁平成24年1月16日決定は,以下のとおり判示して福岡高裁平成21年9月29日判決に対する検察官及び弁護人の上告を棄却しました(改行を追加しています。)。
    原判決は,これらの事情等に照らし,被告人の刑事責任は誠に重大であるとしつつも,本件においては殺害された者は1名であることを考慮する必要があるとした上で,本件犯行は,組織内で孤立していた被告人が,経済的に困窮し,自己の病気等により自暴自棄になる中,長崎市への不当要求等が思いどおりにならなかったことで思い詰めて,これがいわば暴発したという側面もあり,経済的利益等何らかの利益を得るために実行した事案とはいえず,本件犯行の動機,目的自体には利欲目的はなかったとし,さらに,何らかの政治的信条に基づき,その主義主張を実現する手段として,本件犯行に及んだものではなく,本件の主要な動機は被害者に対する恨みであり,選挙妨害そのものを目的としたものではないことなどを指摘する。
    そして,以上の事情は,本件犯行の量刑評価に当たって軽視できない犯情であり,これらの事情も総合考慮すると,被告人に対し,死刑を選択することについてはなおちゅうちょせざるを得ないと判示している。
    原判決のこのような判断は首肯し得ないではなく,第1審判決を破棄し,被告人を無期懲役に処した原判決が,刑の量定において甚だしく不当であるということはできない。
*3 令和2年11月15日に自宅の自室で双子を死産し,同月19日に死体遺棄容疑で逮捕されたベトナム人技能実習生は同年12月10日に死体遺棄罪で起訴されましたところ,その後の裁判経過は以下のとおりです。
① 熊本地裁令和3年7月20日判決(担当裁判官は51期の杉原崇夫)は,懲役8月・執行猶予3年の有罪判決となりました。
② 福岡高裁令和4年1月19日判決(担当裁判官は40期の辻川靖夫54期の武林仁美及び61期の倉知泰久)は,熊本地裁令和3年7月20日判決を破棄して,懲役3月・執行猶予2年の有罪判決となりました。
③ 最高裁令和5年3月24日判決福岡高裁令和4年1月19日判決を破棄して無罪判決となりました。


*4 熊本日日新聞HPの「熊本地裁の刑事裁判、特定の裁判官が〝即日判決〟連発 開廷30分で実刑も 「拙速では」と疑問の声」は,51期の杉原崇夫裁判官に関する記事です。


河野明日香裁判官(66期)の経歴

生年月日 S60.8.23
出身大学 不明
定年退官発令予定日 R32.8.23
R6.1.16 ~ 新潟地家裁判事
R4.4.1 ~ R6.1.15 新潟地家裁判事補
H31.4.1 ~ R4.3.31 札幌家地裁判事補
H29.4.1 ~ H31.3.31 大阪地家裁判事補
H28.4.1 ~ H29.3.31 静岡地家裁判事補
H26.1.16 ~ H28.3.31 静岡地裁判事補

*0 令和4年7月現在,名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教育学部で社会教育学の准教授をしている河野明日香(昭和53年生まれ)とは別の人です。
*1の1 64期の河野文彦裁判官及び66期の河野明日香裁判官の勤務場所は似ていますところ,66期の河野明日香裁判官が平成28年4月1日に静岡地家裁判事補になった時点の氏名は「小澤明日香」でした。
*1の2 札幌地裁令和4年3月25日判決51期の廣瀬孝64期の河野文彦及び71期の佐藤克郎)は,「原告らが、街頭演説に対して路上等から「安倍辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられたり、長時間にわたって付きまとわれたりしたと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求める事案」において,北海道に対し,合計88万円の支払を命じました。
    ただし,安倍首相(当時)の演説車両に向かって突然,走り出した人物に対して警察官が正面から抱き止めて制止した上,肩や腕をつかんで移動させた行為については,警察官職務執行法5条の犯罪予防制止行為として適法であると判断しました(弁護士ドットコムニュースの「安倍元首相の警備に「ヤジ排除」地裁判決は影響したか? 元警察官僚の弁護士の見方」(2022年7月13日付)参照)。


*2 以下の記事も参照してください。
・ 女性判事及び女性判事補の人数及び割合の推移

佐藤克郎裁判官(71期)の経歴

生年月日 H6.3.1
出身大学 不明
定年退官発令予定日 R41.3.1
R4.4.1 ~ 新潟地家裁判事補
R3.4.1 ~ R4.3.31 札幌地家裁判事補
H31.1.16 ~ R3.3.31 札幌地裁判事補

*0 令和4年8月現在,新潟医療福祉大学リハビリテーション学部言語聴覚学科教授をしている佐藤克郎とは別の人です。
*1の1 札幌地裁令和4年3月25日判決51期の廣瀬孝64期の河野文彦及び71期の佐藤克郎)は,「原告らが、街頭演説に対して路上等から「安倍辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられたり、長時間にわたって付きまとわれたりしたと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求める事案」において,北海道に対し,合計88万円の支払を命じました。
    ただし,安倍首相(当時)の演説車両に向かって突然,走り出した人物に対して警察官が正面から抱き止めて制止した上,肩や腕をつかんで移動させた行為については,警察官職務執行法5条の犯罪予防制止行為として適法であると判断しました(弁護士ドットコムニュースの「安倍元首相の警備に「ヤジ排除」地裁判決は影響したか? 元警察官僚の弁護士の見方」(2022年7月13日付)参照)。


*1の2 東京弁護士会HPに載ってある選挙演説の際の市民に対する警察権行使について是正を求める意見書(令和元年9月9日付)の「意見の趣旨」は以下のとおりです(1ないし3を①ないし③に変えています。)。
① 北海道警察が、2019年7月の参議院議員選挙期間中の札幌市内の街頭演説において、「増税反対」などと叫んだ市民や年金制度批判のプラカードを平穏に掲げようとした市民の行動等を警察官らが排除したり阻止したりしたことは、憲法第21条第1項、警察官職務執行法第5条、警察法第2条第2項等に違反するので、これらの警察活動に抗議し、今後このような警察活動が二度と繰り返されることのないよう求める。
② 北海道警察が、同年8月、札幌市内で上記排除行為ないし阻止行為に抗議する市民デモが行われた際にデモ参加者をビデオカメラで撮影したことは、憲法第13条、第35条に反するので、これに抗議し、撮影した情報の削除を求めるとともに、今後このような警察活動が二度と繰り返されることのないよう求める。
③ 警察庁が、今後選挙期間中に違法な警察活動が行われないよう、都道府県警に対して適切な指導をすることを求める。


*2の1 伊藤博文枢密院議長(元首相)は,1909年10月26日午前,中国黒竜江省のハルビン駅において,群衆を装って近づいた安重根(あんじゅうこん)によりピストルで3発の銃弾を受けて暗殺されました。
*2の2 第一次世界大戦の引き金となった1914年6月28日発生のサラエボ事件では,オーストリア皇太子夫妻の暗殺犯は至近距離からピストルを発砲しています(ハフポストHPの「サラエボ事件から100年 第一次世界大戦の引き金となった暗殺を写真で振り返る」参照)。
    そして,同年7月23日のオーストリア最後通牒に対し,セルビアが10項目のうちの2項目について留保したことから,同月28日,オーストリアがセルビアに対して宣戦布告して,第一次世界大戦が開始しました(Wikipediaの「第一次世界大戦の原因」が非常に参考になります。)。
*2の3 1921年11月4日発生の原敬首相襲撃事件,及び1930年11月14日発生の濱口雄幸首相襲撃事件はいずれも東京駅で発生しました(おたくま経済新聞HP「東京駅に残るテロの歴史 2つの「首相遭難現場」を訪ねる」参照)。


*2の4 暗殺されたアメリカの大統領は4人ですが,ケネディ大統領以外の3人は至近距離からピストルで発砲されていますし,そのうちの2人は背後から発砲されています。
*2の5 産経新聞HPの「警備態勢、身内も批判 接近も制止せず…かばう姿なし」(令和4年7月9日付)には,「対策として警察幹部は、①聴衆との十分な距離の確保②不審者の早期発見③警戒区域を分担することによる責任の明確化-を挙げる。」と書いてあります。


*3 令和元年6月13日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。そのため,最高裁判所では,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止している。
    この点,本件対象文書中,原判断において不開示とした部分は,各門における入構方法に関する具体的な運用が記載されており, この情報を公にすると警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるから, 当該部分は,行政機関情報公開法第5条第6号に定める不開示情報に相当する。
    よって,原判断は相当である。


*4の1 令和4年4月18日発効の日弁連の懲戒処分では,弁護士が自分のHPのコラムに,PTAに関する憲法学者Aの言動を批判する記事中に「A(氏名)のA(名前)はなんとお読みするのでしょう。PTAをクサすから,●●●でしょうか。頭がクサっているから、●●●に違いない。●●●なら、クソだ、まではすぐ。」と記載したことに対し,Aからの懲戒請求及び日弁連に対する異議の申出に基づき,戒告の懲戒処分が下りました(自由と正義2022年6月号90頁及び91頁,及び「◯◯◯◯教授に懲戒請求された◯◯◯◯弁護士のゴミ記事」参照)。
    なお,当該懲戒処分の理由の一つとして「研究者や著名人であっても侮辱により名誉感情を害されることについてはそれ以外の人と差異がない」という記載があります。
*4の2 いわき総合法律事務所HP「裁判官の「表現の自由」を考える」によれば,2018年9月16日付の沖縄タイムスには,首都大学東京の木村草太教授のコメントとして,「判事も一人の個人であり、人権がある。表現の自由を侵害する脅迫や懲戒申し立てことこそが、裁判官の「品位を辱める行状」ではないか。今回、懲戒処分を受けるべきは、岡口判事ではなく、林長官ではないだろうか。」が掲載されていたみたいです。


*5の1 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判所の敷地内において加害行為が発生した際の留意点について(平成28年8月23日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
・ 平成31年3月20日に東京家裁で発生した殺人事件に関して東京家裁が作成し,又は取得した文書


*5の2 以下の記事も参照してください。
 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
→ 「暗殺された日本の首相又は元首相の一覧」もあります。
・ 平成 5年4月27日発生の,東京地裁構内の殺人事件に関する国会答弁
 平成31年3月20日発生の,東京家裁前の殺人事件に関する国会答弁
・ マル特無期事件
・ 裁判所関係国賠事件