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阿多博文最高裁判事が関与した三つの民事法改正|株券電子化・財産情報取得・民事訴訟IT化(AI作成)

第1 三つの法改正とこの記事の射程

1 阿多博文最高裁判事の三つの部会歴

阿多博文最高裁判事は,法制審議会の①会社法(株券の不発行等関係)部会,②民事執行法部会,③民事訴訟法(IT化関係)部会の委員を務めた。
最高裁判所の令和8年2月2日付け就任記者会見では,自らの関与を,株券の電子化,第三者からの情報取得手続等による債務者財産の調査,民事訴訟手続のデジタル化という三つの流れに整理している。

本記事は,令和8年8月28日現在の公開資料を基準に,各部会の審議,確認できた阿多委員の発言,成立法及び現行制度を対応させるものである。
法制審議会は多数の委員・幹事によって審議する機関であるため,個別発言と最終的な立法内容との間に直接の因果関係があるとは限らない。

2 三部会と成立法の対応関係

部会主な審議期間中心となった課題主な成立法・施行時期
会社法(株券の不発行等関係)部会平成14年9月~平成15年7月株券不発行制度,株式振替制度,電子公告平成16年法律第88号。株券不発行等は平成16年10月1日,上場株券の電子化は平成21年1月5日
民事執行法部会平成28年11月~平成30年8月財産開示の実効化,第三者からの情報取得,子の引渡し等令和元年法律第2号。主要部分は令和2年4月1日
民事訴訟法(IT化関係)部会令和2年6月~令和4年1月電子申立て,システム送達,電子記録,ウェブ会議令和4年法律第48号。全面施行は令和8年5月21日

三つの改正は対象法律も時期も異なる。
その一方で,紙の券面に表章された権利,債務者以外の者が保有する財産情報,裁判所と当事者が交換・保管する訴訟情報を,どのような手続と保護の下で利用するかという共通の問題を含んでいる。

第2 会社法(株券の不発行等関係)部会と株券電子化

1 部会が取りまとめた二つの要綱案

会社法(株券の不発行等関係)部会は,平成14年9月11日から平成15年7月30日まで12回開催された。
第12回会議では,株券不発行制度の導入に関する要綱案と電子公告制度の導入に関する要綱案が決定され,法制審議会総会は同年9月10日に両要綱を決定した。

株券不発行制度の導入に関する要綱は,会社が定款で株券を発行しない旨を定める制度と,公開会社の株式等を振替口座簿の記録によって移転する制度を組み合わせていた。
この要綱を基礎とする平成16年法律第88号は,株券の保管・受渡しに伴う費用と紛失等の危険を減らし,証券決済を合理化する制度を整備した。

2 株券不発行制度と上場株券の電子化の違い

「株券を発行しない会社を認めること」と「上場会社の株券を一斉に電子化すること」は,同じではない。
前者は平成16年10月1日に施行され,会社が定款によって株券を発行しない制度を選べるようにしたものである。

後者は,振替機関及び証券会社等の口座に記録された残高によって上場株式の権利関係を管理する制度であり,平成21年1月5日に実施された。
金融庁の株券電子化案内も,この日から上場会社の株券電子化が実施されたと説明している。

現在の会社法の下でも株券発行会社は存在するため,非上場会社の株式譲渡や名義書換えでは,その会社が株券発行会社であるかを別途確認する必要がある。
この実務上の区別については,名義株の解消方法で扱っている。

3 阿多博文委員への帰属を確認できる範囲

最高裁判所の公式略歴は,阿多博文が平成14年に同部会委員となったことを確認している。
また,就任記者会見で本人は,平成16年6月の商法改正による株券の電子化を,最初に関与した法改正として挙げている。

他方,本記事で確認した公開資料からは,部会の特定の提案が阿多委員の発言によって採用されたとまでは確認できない。
したがって,この改正について確認できる関与は,委員として審議に参加したこと,部会が要綱案を取りまとめたこと及び本人が後年に株券電子化への関与と説明したことまでである。

第3 民事執行法部会と第三者からの情報取得

1 財産を探す手続としての制度新設

民事執行法部会は,平成28年11月18日から平成30年8月31日まで23回開催され,財産開示手続の見直し,第三者からの情報取得手続,子の引渡しの強制執行等を審議した。
本記事では,阿多委員の三改正という主題に直接関係する第三者からの情報取得手続に対象を絞る。

令和元年改正によって設けられた第三者からの情報取得手続は,登記所から不動産情報を,市町村や日本年金機構等から勤務先情報を,金融機関や振替機関等から預貯金・振替社債等の情報を取得する制度である(民事執行法204条以下)。
この手続は財産情報を調査する手続であり,回収のためには,判明した財産に対する差押え等を別に申し立てる必要がある。

2 財産開示の前置と債務者への事前通知

審議では,第三者から情報を得る前に財産開示手続を経るべきか,情報提供命令を債務者へ事前に知らせるべきかが問題となった。
阿多委員は第10回会議で,預貯金は通知後に移動されると情報を得られなくなるため,財産開示の前置や債務者への事前送達を要求しない案にも意味があると述べ,その案を中間試案の注記等で紹介するよう求めた。

これに対しては,本来開示すべきでなかった情報が一度提供されると元に戻せないこと,債務者に事前の反論機会がないことなど,手続保障からの反対意見があった。
議事録は,制度の実効性と債務者の情報保護が正面から対立していたことを示している。

成立した制度では,不動産情報と勤務先情報の取得には原則として先行する財産開示手続が必要である一方,預貯金情報と振替社債等の情報の取得にはこの前置を要しない。
また,第三者から裁判所へ情報が提供された後,一定期間を経て債務者へ通知する運用となっており,預貯金情報の取得前に債務者へ知らせる仕組みではない。

3 取得情報の利用制限をめぐる発言

第18回会議では,取得した不動産情報又は給与債権情報を強制執行以外の目的で利用することの制限が議論された。
阿多委員は,不動産情報には公示された情報という性質もあるため,給与情報と一律に目的外利用制限や罰則の対象とすることが均衡を欠かないかを別途検討すべきであると指摘した。

この発言は,情報保護そのものを否定したものではなく,情報の性質に応じて規律を分ける必要がないかを問うものである。
成立した民事執行法210条1項は,申立人が第三者から得た債務者の財産情報を,当該債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的以外に利用し,又は提供してはならないと定めている。

4 成立法から確認できる到達点

裁判所の第三者からの情報取得手続案内は,令和8年8月現在,不動産,勤務先,預貯金及び振替社債等の各情報について,申立要件と手続の流れを区別している。
勤務先情報を取得できる債権者は,養育費等の扶養義務に係る請求権又は生命・身体侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義を有する者等に限定される。

したがって,令和元年改正は,債権者に一般的な財産調査権を与えたものではない。
対象情報,申立人,財産開示前置の要否,債務者への通知及び取得情報の利用目的を分けて規律することにより,権利実現と情報保護を調整している。

第4 民事訴訟法(IT化関係)部会と手続のデジタル化

1 電子申立てから電子記録までの一体的な改正

民事訴訟法(IT化関係)部会は,令和2年6月19日から令和4年1月28日まで23回開催された。
電子申立て,手数料の電子納付,システム送達,ウェブ会議による期日,電子化された訴訟記録の閲覧等を一体として審議し,同日の最終会議で要綱案を決定した。

令和4年法律第48号は,インターネットによる訴えの提起や書面提出,オンラインによる送達,訴訟記録の原則電子化等を定めた。
段階施行を経て,民事訴訟手続の全面的なデジタル化に関する規定は令和8年5月21日に施行された。

2 日弁連意見書と阿多委員の個人見解の区別

第2回会議では,「民事裁判手続等IT化研究会報告書」に対する日本弁護士連合会の意見書が,「阿多委員提供資料」として配布された。
この資料の内容は,提出者の個人見解ではなく,作成主体である日本弁護士連合会の見解として読む必要がある。

法制審議会の議事録には,委員個人の発言,所属又は推薦母体の意見の紹介,事務当局への質問が混在する。
阿多委員の関与を検討するときは,誰の意見として述べられたのかを発言ごとに確認しなければならない。

3 システム送達の通知と閲覧時点

第9回会議では,事件管理システムの利用登録時に届け出る通知アドレスと,システム送達のための通知との対応が議論された。
阿多委員は,送達の項目で初めて通知アドレスという用語が現れるため両者の関係が分かりにくいこと,電磁的記録の閲覧とダウンロードによる複製は別の行為であり,その時点がずれ得ることを確認した。

これは画面表示の用語の問題だけではない。
電子送達の効力をいつ発生させるかという法的効果を,通知,閲覧及び複製というシステム上の操作に対応させる問題であった。

4 本人確認・なりすましと第三者の影響

第11回会議では,阿多委員が,事件管理システムへの提出・受領とウェブ会議への参加とを分け,本人確認,なりすまし及び本人のそばにいる第三者の影響をどこまで排除できるかを質問した。
発言は,厳格な本人確認を求めれば利便性が下がること,書類の送受信とオンライン期日では必要な確認方法が異なり得ることを具体的な検討課題として示した。

同じ会議では,当事者又は代理人側の情報セキュリティ対策の不足を,どの範囲で本人側の責任と評価するかも問題にされた。
法改正だけで完結せず,認証方式,端末・通信環境及び期日運営を含むシステム設計が必要であることが分かる。

5 令和8年5月21日以後の民事訴訟

裁判所の改正民訴法等の案内によれば,令和8年5月21日以後に提起された民事訴訟では,誰でもインターネットを利用して申立て等をすることができ,弁護士等の一定の代理人にはオンライン申立てが義務付けられている。
裁判所からの送達にはオンラインによる方法が加わり,訴訟記録は原則として電子データで保管される。

同日前に提起された事件は,原則として従前の手続によって進行する。
また,令和8年5月21日の全面施行は民事訴訟を対象とするものであり,民事執行,倒産,労働審判等の非訟手続,人事訴訟及び家事事件の全面的なデジタル化は別の改正・施行日程による。

具体的な電子申立て,証拠提出,送達及び障害時対応については,mintsの実務解説で扱っている。
本記事は操作方法ではなく,阿多委員の部会発言と制度形成の関係を対象とする。

第5 三改正を横断して確認できること

1 本人が「デジタルや情報」と整理した意味

阿多博文最高裁判事は就任記者会見で,三改正を振り返り,法律は異なるものの,デジタルや情報に関する改正に関与してきたと述べた。
この整理は本人による後年の評価であり,三部会が当初から一つの政策計画として設置されたことを意味しない。

本記事では,三改正の共通項を,①株式に関する権利を券面から口座記録へ移すこと,②債務者の財産情報を第三者から取得すること,③民事訴訟の提出・送達・記録を電子情報として扱うことに求める。
いずれも,情報を利用しやすくするだけでなく,権利の帰属,手続保障,目的外利用,認証及び障害時の扱いを法制度として定める必要があった。

2 制度の実効性と情報保護の調整

民事執行法部会の議事録では,預貯金の移動による執行逃れを防ぐ必要と,債務者が事前に反論する機会を確保する必要が対立した。
民事訴訟法(IT化関係)部会では,オンライン手続の利便性と,本人確認,なりすまし防止,セキュリティ及び送達効の明確性が同時に問われた。

株券電子化も,紙をなくすだけではなく,口座記録によって権利の保有・移転を認識できる制度を整備するものであった。
三改正に共通するのは,デジタル化又は情報取得を目的そのものとせず,情報の法的効果と利用条件を組み立てている点である。

3 委員の発言と成立法を同一視しないこと

就任記者会見によれば,阿多最高裁判事は,部会で自らの考えを説明するだけでなく,他の委員や推薦母体の考えと背景を理解し,調整して合意を形成することの重要性を学んだと述べている。
この説明は,法制審議会における立案が共同作業であることを示す。

議事録上の質問又は意見が最終案に似ていても,それだけで当該委員が制度を創設したとはいえない。
確認できるのは,誰がどの論点を提示したか,反対意見や留保が何であったか,最終的にどの規律が成立したかであり,その三段階を分けることが,阿多委員の関与を正確に評価する前提となる。

第6 出典・参考資料

1 法令

民事執行法(昭和54年法律第4号)204条~210条
民事訴訟法(平成8年法律第109号)109条の2,132条の10ほか

2 公文書・議事録

① 最高裁判所「阿多博文」略歴
② 最高裁判所「阿多博文最高裁判事就任記者会見の概要」(令和8年2月2日)
③ 法務省「法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会」会議一覧,「株券不発行制度の導入に関する要綱」(平成15年9月10日)
④ 法務省「法制審議会民事執行法部会」会議一覧
⑤ 法制審議会民事執行法部会第10回会議議事録(平成29年9月8日)15頁~16頁,PDF
⑥ 法制審議会民事執行法部会第18回会議議事録(平成30年6月1日)33頁,PDF
⑦ 法務省「法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会」会議一覧
⑧ 法務省「法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第2回会議」(令和2年7月10日)
⑨ 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第9回会議議事録(令和3年2月19日)20頁,PDF
⑩ 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第11回会議議事録(令和3年4月16日)29頁~30頁,PDF

3 制度・運用資料

① 金融庁「株券電子化について
② 法務省「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律について
③ 裁判所「第三者からの情報取得手続
④ 法務省「民事訴訟法等の一部を改正する法律について
⑤ 裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」及び「民事裁判手続のデジタル化