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裁判所の定員が減ると,現場の人も減るのか―定員・現在員・欠員・振替・再任用の読み方(AI作成)

第1 定員の減少と現場の人数は分けて確認する

1 令和9年度概算要求で分かること

裁判所の「定員が減る」という情報だけでは,翌年度に窓口,法廷又は調査業務を担当する職員が何人減るかは分からない。
定員は制度上又は予算上の人数の枠であり,実際に在職する現在員や,勤務時間・休業・応援体制を考慮した業務を担える人数とは区別する必要がある。
他方,現時点で欠員があるからといって,定員の削減が採用や将来の配置に影響しないとも断定できない。

令和9年度一般会計歳出概算要求書等の資料上73頁(PDF77頁)の予算定員表では,裁判所全体が121人減,下級裁判所が192人減,最高裁判所が71人増となっている。
この71人は,下級裁判所から最高裁判所への予算定員の振替である。資料に示された理由は,営繕組織の見直し,共済組合の組織統合・給与等事務の集約及び執務機構整備であり,裁判の現場から71人が実際に転勤することまで示した数字ではない。

2 資料の時点と確認範囲

本記事は,令和8年9月14日時点で確認した法令,最高裁判所の概算要求書及び国会会議録に基づき,数字の読み方を説明するものである。
令和9年度の数字は概算要求段階のものであり,成立予算,改正後の法定員,実施後の配置又は実際の現在員を示すものではない。

予算要求の内容は,最高裁判所作成の原資料で確認する。国会答弁は,答弁された人数や最高裁判所の説明を確認する一次資料であるが,答弁だけで個々の裁判所の勤務実態まで確認できるわけではない。
本記事の数値及び因果関係の説明に判例秘書掲載判例は用いていない。判例秘書の検索・収録本文照合も行っておらず,関係判例が存在しないとの判断を示すものではない。

第2 六つの数字を区別する

1 法定員,予算定員及び配置定員

裁判所職員定員法1条は,下級裁判所の裁判官の員数を,高等裁判所長官,判事,判事補及び簡易裁判所判事に分けて定めている。
同法2条は裁判官以外の裁判所職員の員数を定めるが,執行官,非常勤職員,2か月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を対象から除いている。法定員を,雇用形態等を問わない全職員の総人数と読むことはできない。

数字主に確認できることその数字だけでは分からないこと
法定員法律が定める員数と対象範囲各庁の実際の配置,欠員及び勤務状況
予算定員予算資料に計上された年度別・組織別の人数の枠実際の在職者数,個人の異動及び稼働時間
配置定員通達等による各庁への人数の配分基準日現在の在職者,担当部・係及び応援の実績

法定員は全国の区分に関する数字であり,各庁の人数を確認するには配置定員資料が必要となる。予算定員表についても,対象年度,年度末か年度当初か,裁判官を含むか,再任用職員を含むかを表題と注記で確認する。
裁判官の配置定員と基礎定員・付加定員の具体例は,下級裁判所の裁判官の配置定員(令和7年4月)―平成28年との比較と現在員との違い(AIリライト)で扱っている。

2 級別定数,現在員及び勤務に充てられる人員

数字主に確認できること読み違えやすい点
級別定数組織,俸給表,職名及び職務の級ごとの枠実際の在職者数や昇格率とは異なる。職名が複数の官職をまとめる場合もある
現在員ある基準日に在職する人数休業・休暇,短時間勤務,兼務等の取扱いは資料ごとに確認が必要である
勤務に充てられる人員・時間現在員に勤務時間,休業,応援及び担当業務を対応させた業務遂行能力頭数だけでは計算できず,集計方法を明示する必要がある

級別定数の推移は,裁判官以外の裁判所職員の級別定数に関する最高裁判所事務総局の本音の説明(AI作成)で扱っている。
例えば,ある級の定数が減っていても,その級に在職する職員が同じ人数だけ退職したとはいえない。昇格の難しさを論じる場合も,定数だけでなく候補者数,発令数及び選考条件が必要である。

第3 20人,101人及び71人の関係

1 下級裁判所192人減と裁判所全体121人減は両立する

令和9年度概算要求書の資料上73頁の予算定員表を,令和8年度末と令和9年度末の要求で比較すると,次のようになる。
「判事補20人減」は「下級裁判所全体で20人減」という意味ではない。

組織令和8年度末の予算定員令和9年度末の要求定員増減
最高裁判所1183人1254人+71人
下級裁判所2万4183人2万3991人-192人
裁判所全体2万5366人2万5245人-121人

下級裁判所の192人減は,定員合理化101人,判事補減員20人及び最高裁判所への振替71人の合計である。
裁判所全体では,振替による下級裁判所の71人減と最高裁判所の71人増が相殺されるため,101人と20人を合わせた121人減となる。
したがって,「121人減に加えて71人減」として裁判所全体の減少を192人とするのは,組織内の振替を重ねて数えることになる。

2 71人の具体的な内訳

同頁の増減事由には,71人の振替について次の内訳が記載されている。
人数の根拠は概算要求書であり,特定個人の人事異動情報ではない。

増減事由人数原資料に記載された職名・級の概要
営繕組織の見直しに伴う振替1人営繕関係の組織見直し
裁判所共済組合の組織統合及び給与等事務の集約に伴う振替68人専門職6級1人,専門職5級1人,係長4級6人,主任3級60人
裁判所共済組合の執務機構整備に伴う振替2人下級裁判所側は課長6級2人,最高裁判所側は専門職6級2人
合計71人1+68+2

ここから確認できるのは,どの組織の予算定員を減らし,どの組織に振り替える要求かということである。
特に,執務機構整備の2人は振替元と振替先で職名の表示が異なるため,71人全員を同一の職名のまま移すと読むこともできない。

実際に誰が転勤するか,執務場所が変わるか,地方の窓口や裁判事務がどの程度変わるかは,人事発令,組織・事務分掌資料及び実施後の運用による確認が必要である。
「最高裁判所の定員が増える」という事実だけで,裁判を担当する部門から職員を引き揚げた,最高裁判所の管理職だけが増える,又は地方の負担が必ず増えると断定することはできない。

3 101人の職種別内訳は別に確認する

同要求書の資料上42頁(PDF46頁)は,101人の定員合理化を,行政職俸給表(一)4級5人,同2級30人,同1級48人及び行政職俸給表(二)2級18人と記載する。
これは俸給表別・級別の内訳であり,裁判所書記官,家庭裁判所調査官又は裁判所事務官という官職別の内訳ではない。

そのため,例えば行政職俸給表(一)2級の30人を,そのまま「書記官30人減」と読み替えることはできない。
官職別・庁別の配分及び算定理由は別資料で確認すべき事項であり,要求書の記載だけから家裁の実働人員の減少数を算出することはできない。
家裁調査官の増員の有無,関連経費及び事件統計は,令和9年度概算要求-裁判所職員101人の定員合理化と家裁調査官の増員の有無(AI作成)で検討している。

第4 欠員があれば定員削減の影響はないのか

1 判事補の842人,660人及び182人

令和8年4月14日の衆議院法務委員会会議録では,最高裁判所が,令和7年12月1日時点の判事補について,定員842人,現在員660人及び欠員182人と説明している。
この182人は,その基準日の同じ対象について定員と現在員を比較した数字であり,令和9年度の欠員見込みではない。

仮に定員を20人減らし,現在員が660人のままであると置けば,差は822人-660人=162人となる。
しかし,これは現在員を固定した計算例にすぎず,令和9年度に実際の欠員が162人になるとの予測ではない。採用,退官,判事への任命その他の増減を同じ時点で確認する必要がある。

2 直ちに20人の退職を意味しないことと,影響がないことは異なる

既に欠員がある定員枠を減らす場合,定員の減少と同じ人数だけ在職者が直ちに減るとは限らない。
他方,定員枠が減ることは,将来欠員を埋める余地や配置の選択肢に関わり得るため,「欠員以内の削減だから司法サービスへの影響はない」と結論付けることもできない。

同日の国会答弁では,採用数が伸び悩む背景として,司法修習終了者の減少,大規模法律事務所等との競合,大都市志向及び異動・転勤への不安等が説明されている。
この説明を採用環境に関する最高裁判所の見解として押さえた上で,必要人数,採用可能人数及び将来の定員を分けて検討する必要がある。

第5 再任用短時間勤務職員の別表を落とさない

1 121人減とは別に示された73人増

令和9年度概算要求書の資料上75頁(PDF79頁)には,再任用短時間勤務職員の予算定員表が別に掲載されている。
ここでは,令和8年度末の204人に対して令和9年度末の要求は277人であり,73人増となっている。

組織令和8年度末令和9年度末の要求増減
最高裁判所3人4人+1人
下級裁判所201人273人+72人
合計204人277人+73人

したがって,資料上73頁の表の「新規増員0人」又は「121人減」を,すべての任用形態を通じた採用者数又は職員総数の増減と説明するのは正確でない。
また,同73頁には要求定員2万5245人の内数として再任用フルタイム職員837人が記載されている。内数をもう一度足すと二重計上になる。

2 頭数の差と常勤換算を混同しない

121人減と短時間勤務の73人増を単純に差し引いても,業務遂行能力が常勤48人分減ると計算したことにはならない。
短時間勤務者の勤務時間,担当業務,配置先及び比較対象の範囲を確認して初めて,どのような補充又は機能の変化があるかを検討できる。

常勤換算を行う場合は,対象者の所定勤務時間の合計を,比較の基準とする常勤職員の所定勤務時間で割るなど,分母と算定方法を明示する必要がある。
その換算値も,休業・休暇,業務経験,応援及び担当事件の複雑さをそのまま表すものではない。今回の概算要求書だけから,家裁調査官や書記官の実働能力が何人分増減するかは確定できない。

第6 現場への影響を調べる資料の組合せ

1 同じ対象と時点をそろえる

人員不足を検証するには,「どの職種の,どの裁判所の,いつの,どの任用形態の数字か」をそろえることが出発点となる。
全国の判事補の過去の欠員,家裁調査官の全国定員及び特定支部の現在の勤務負担を,説明なしに同じ分母で比べてはならない。

検証したいこと対応させる資料
どの職種・庁の定員枠が減るか官職別内訳,配置定員通達及び組織別の増減表
在職者が実際に減ったか同一基準日の職種別・庁別現在員,採用・退職・異動の集計
勤務に充てられる時間が減ったか任用形態,所定勤務時間,休業・休暇及び応援・兼務の集計
裁判や調査に支障が生じたか新受・既済・未済,審理期間,調査待ち期間,担当業務量及び一件当たり所要時間
事務集約で地方の仕事が減ったか集約対象の事務分掌,処理件数,地方に残る作業,照会・引継ぎ時間及び実施前後の比較

2 同時に起きたことだけで原因を決めない

定員合理化,デジタル化予算の増加,未済事件の増加又は長期病気休暇の発生が同時期にあっても,そのことだけで一つが他の原因であると断定することはできない。
事件の複雑化,制度改正,採用状況,システム移行作業及び職務分担の変更等の別の説明も検討し,時期と対象をそろえた資料で確かめる必要がある。

当局の説明と組合側の評価を区別して読む方法は,全司法労働組合との令和6年度交渉記録から見える最高裁判所事務総局の本音,及びAIの戦略的アドバイス(AI作成)でも扱っている。
組合が問題を指摘した事実,当局が回答した事実及び回答内容が現場の実態に合っているかという問題は,それぞれ別に検証する必要がある。

第7 今後さらに確認すべき事項

1 101人の配分と71人の実施内容

現時点で特に必要なのは,101人の官職別・庁別内訳,71人の振替元・振替先の具体的組織,集約する事務の範囲及び実施後も地方に残る作業を示す資料である。
人員配置資料を入手する際は,作成主体,文書名,基準日,対象職種及び人数の定義を併せて確認し,公表された概算要求書と照合できる形で記録する。

2 要求,成立後の措置及び実施後の実態

令和9年度については,今後の成立予算,法定員の改正,配置定員通達,級別定数及び同一基準日の現在員を順に確認する必要がある。
家裁の体制を評価する際には,再任用短時間勤務職員の職種・配置・勤務時間に加え,家事事件と少年事件の担当配分及び調査に要する時間を調べる必要がある。

これらは,予算表の読み方を説明するための数字とは別の調査課題である。
資料が得られるまでは,定員削減の要求を実際の退職者数へ置き換えず,過去の欠員だけから影響の有無も決めないという扱いが適切である。

第8 出典・参考資料

1 一次資料

裁判所職員定員法(昭和26年法律第53号)1条・2条。令和8年9月14日時点の施行法令をe-Gov法令検索で確認した。
令和9年度一般会計歳出概算要求書等。資料上42頁(PDF46頁)は101人の俸給表・級別内訳,同73頁(PDF77頁)は予算定員及び71人の振替事由,同75頁(PDF79頁)は再任用短時間勤務職員の予算定員である。
第221回国会衆議院法務委員会議録第3号(令和8年4月14日)。判事補の定員・現在員・欠員及び採用・全国配置に関する最高裁判所の説明。

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