メインコンテンツへスキップ
       

決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式

第1 結論

国の歳出の決算は,9つの欄でできている。

①歳出予算額,②前年度繰越額,③予備費使用額,④流用等増△減額,⑤予算決定後移替増△減額,⑥歳出予算現額,⑦支出済歳出額,⑧翌年度繰越額及び⑨不用額である。

この9欄は,2本の恒等式で結ばれている。

恒等式①(入口側) ①+②+③+④+⑤=⑥

恒等式②(出口側) ⑥=⑦+⑧+⑨

⑥歳出予算現額は,この2本の式の結節点である。

上から積み上げた結果であると同時に,下へ配分される元になっている。

本記事では,令和2年度から令和6年度までの一般会計歳出決算報告書(科目別内訳)の全行を計算し,この2本の式が1円の狂いもなく成立することを確かめた。

破れた行は,5年度分合計約3万5000行のうち0行である。

もっとも,この9欄のうち,財政法が明文で列挙しているのは7つだけである。

⑤予算決定後移替増△減額と⑥歳出予算現額は,財政法38条2項の列挙に無い。

「移替」という語は,財政法にも予算決算及び会計令にも一度も出てこない。

その根拠は,毎年度の予算総則にある。

そして,9つの欄がどの科目についても揃って立つのは,実は決算参照のCSV版及びExcel版だけである。

印刷された決算書は,冊によって,また頁によって,欄の数が違う。

第2 前提

1 調査基準日は,令和8年9月7日である。

2 対象法域は日本,対象は国の一般会計の歳出決算である。

3 主な資料は,財務省の予算書・決算書データベース(bb.mof.go.jp)で公開されている令和2年度から令和6年度までの「一般会計歳入歳出決算」(PDF),「一般会計決算参照」(PDF)及び「歳入決算明細書及び歳出決算報告書(科目別内訳)」(CSV)である。

数値の集計は,5年度分のCSV(合計34,843行)を全行計算した。

4 条文は,e-Gov法令検索で調査基準日現在の本文を確認した。

5 地方公共団体の決算(地方自治法)及び特別会計の決算は対象外である。

6 裁判所の予算がどのように決まるかという手続の側面は,別稿「裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったこと」で扱った。

本記事は,その後段,すなわち成立した予算が決算としてどう表示されるかを扱う。

第3 9つの欄

1 欄の一覧

歳出決算報告書(科目別内訳)のCSVは,所管・組織・項名・目名などの区分欄に続けて,次の9つの金額欄を持つ。

①歳出予算額

②前年度繰越額

③予備費使用額

④流用等増△減額

⑤予算決定後移替増△減額

⑥歳出予算現額

⑦支出済歳出額

⑧翌年度繰越額

⑨不用額

令和2年度から令和6年度までの5年度分について,この列名は1文字も変わっていない。

2 条文が定めているのは7つだけである

財政法38条2項は,歳入歳出の決算に明らかにすべき事項として,歳出について次の七号を掲げる。

一 歳出予算額

二 前年度繰越額

三 予備費使用額

四 流用等増減額

五 支出済歳出額

六 翌年度繰越額

七 不用額

条文が挙げているのは7つである。

実際の決算報告書は9欄である。

差の2つ,すなわち⑤予算決定後移替増△減額と⑥歳出予算現額は,財政法38条2項の列挙に無い。

同じことは予算決算及び会計令にも当てはまる。

同令129条(歳入歳出の主計簿)及び130条(歳入簿,歳出簿及び支払計画差引簿)は,歳出主計簿及び歳出簿に登記すべき事項として,歳出予算額,前年度繰越額,予備費使用額,流用等増減額,支出済歳出額,翌年度へ繰越額及び歳出予算残額の7つを挙げる。

ここでも移替は現れない。

なお,七つ目が「不用額」ではなく「歳出予算残額」である点は,決算の欄と帳簿の欄とで用語が違うということであり,本記事ではこれ以上立ち入らない。

条文の文言そのものを数えると,次のとおりである。

財政法の本則及び附則を通じて,「移替」も「移し替」も0回,「歳出予算現額」も「予算現額」も0回である。

予算決算及び会計令では,「移替」「移し替」はやはり0回,「予算現額」は10回現れるが,そのいずれも繰越計算書(24条)及び繰越の通知(25条の2)に関するものであって,決算の欄を定めたものではない。

3 残る2つはどこから来るか

(1) ⑥歳出予算現額

⑥は,独立した実体ではなく,導出量である。

①から⑤までを足した結果に名前を付けたものであり,同時に⑦⑧⑨へ分かれていく元になる。

条文に定義規定は無いが,決算の本体が実際にこれを使っている。

令和6年度一般会計歳入歳出決算の「令和6年度一般会計歳入歳出決算説明 第2 歳出 (1) 総説」は,支出済歳出額を123,023,998,629,580円とした上で,これを歳出予算現額137,578,249,935,601円と比べると14,554,251,306,021円の差額を生ずる,とする。

そして,歳出予算現額の内訳を,歳出予算額126,514,973,726,000円(当初予算額112,571,688,422,000円,予算補正追加額15,573,555,727,000円,予算補正修正減少額1,630,270,423,000円)及び前年度繰越額11,063,276,209,601円と示す。

さらに,右の差額のうち翌年度へ繰り越した額が10,243,266,020,197円,不用となった額が4,310,985,285,824円であるとする。

ここから,①歳出予算額の内訳が読める。

①歳出予算額=当初予算額+予算補正追加額-予算補正修正減少額

すなわち,①は当初予算と補正予算を合算した後の数字であって,当初予算額ではない。

決算の①を当初予算額と読むと,補正の分だけ誤る。

他方,「概算要求額」は9欄のどこにも現れない。

要求は,財政法17条及び予算決算及び会計令8条の見積書類にすぎず,決算の欄にはならないからである。

なお,この見積書類の経路は二本ある。

衆議院議長,参議院議長,最高裁判所長官及び会計検査院長は内閣に送付し(財政法17条1項,予算決算及び会計令8条1項),内閣総理大臣及び各省大臣は財務大臣に送付する(同法17条2項,同令8条3項)。

裁判所の要求だけが内閣を経由する。

もっとも,⑥が出てくる場所には偏りがある。

そもそも決算書は1冊ではない。

財政法37条1項により各省各庁の長が作製する「歳出の決算報告書」と,同法38条1項により財務大臣がこれに基づいて作成する「歳入歳出の決算」とは,作成者が違う別の書類である。

そして,ここでいう「各省各庁の長」には,最高裁判所長官が含まれる(財政法20条2項括弧書き)。

したがって,決算参照に綴られている裁判所所管の歳出決算報告書は,最高裁判所長官が作製したものである。

同じ不用額について,裁判所自身が書いた説明と,財務大臣が編集した説明との二つが存在することになる。

もっとも,後記のとおり,裁判所所管について両者の文言を照合した限りでは,冒頭の一句を除いて完全に一致していた。

財務省の予算書・決算書データベースでは,前者が「一般会計決算参照」(令和6年度で915頁,令和2年度で862頁),後者が「一般会計歳入歳出決算」(同117頁,同106頁)として公開されている。

そして,欄の立て方が両者で違う。

決算本体である「歳入歳出決算及び各事項の計算」の表は,所管・組織・項ごとに,歳出予算額,前年度繰越額,予備費使用額,流用等増△減額,予算決定後移替増△減額,支出済歳出額,翌年度繰越額及び不用額の8欄で組まれており,そこに⑥歳出予算現額の欄は無い。

この冊で「歳出予算現額」の語が現れるのは,令和2年度版・令和6年度版とも9回にとどまり,いずれも決算説明の文章と所管別・主要経費別の比較表である。

他方,決算参照の科目別内訳の表は⑥を持つが,⑤の扱いが頁によって違う。

科目別内訳の表が載る頁には,⑤予算決定後移替増△減額の欄がある頁と,欄ごと落ちている頁の両方がある。

裁判所所管の頁(令和6年度版81頁,令和2年度版79頁)は後者であり,⑤の欄が無い8欄である。

そもそも決算参照は,所管・組織ごとに三種類の表を並べている。

①冒頭の総括表(①歳出予算額を当初・補正・移替・合計の四欄に割ったもの)

②事項別内訳(項・事項ごと。末尾の欄は「不用額」ではなく「差引額」である)

③科目別内訳(項・目ごと。備考欄に理由が入る)

同じ冊の中で,表の種類によっても欄の立て方が違う。

なお,⑤の欄が立つ単位は,頁ではなく所管である。

令和6年度版は全915頁で,「科目別内訳」という見出しが現れる頁は97,表の欄見出し(「歳出予算額(円)」)を持つ頁は716ある。

このうち,歳出予算額・前年度繰越額・支出済歳出額・不用額の四つの欄見出しをそろって持つ頁は601である。

この601頁は,科目別内訳の頁だけではなく,合計表及び事項別内訳の頁も含む数である。

その601頁を所管ごとに分類すると,⑤の欄がある所管は,内閣,内閣府,総務省,文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省及び環境省の9所管であり,合計478頁である。

⑤の欄がない所管は,皇室費,国会,裁判所,会計検査院,デジタル庁,法務省,外務省,財務省及び防衛省の9所管であり,合計123頁である。

なお,決算参照の中扉は,皇室費だけが「皇室費歳出決算報告書」であって,「所管」の語が付かない。

他の17は「国会所管歳出決算報告書」のように「所管」が付くので,「所管」を手掛かりに機械的に拾うと皇室費だけが落ちる。

一つの所管の中で両方の型が混在する例は一件もなかった。

そして,この区分は,決算参照のCSVの⑤欄と例外なく一致する。

⑤の欄が立つ9所管は,いずれもCSVに⑤が0でない行を持ち,⑤の欄が立たない9所管はCSVの全行が0である。

もっとも,同じ所管の中では,その頁に移替がなくても欄は立つ。

内閣は,CSVの105行のうち⑤が0でないのは2行だけであるが,上記の10頁のすべてに⑤の欄がある。

したがって,⑤の欄の有無は,その頁に移替があったかどうかではなく,その所管に移替があったかどうかを示している。

したがって,正確には次のようになる。

ア 財政法38条2項が列挙するのは7つである。

イ 歳入歳出決算(決算本体)の科目別の表は,これに⑤を加えた8欄である。

ウ 決算参照(歳出決算報告書)の印刷版は,⑥を加えた8欄又は9欄であり,⑤の欄は移替のあった所管にしか立たない。

エ 9欄がどの科目についても揃って立つのは,決算参照のCSV版及びExcel版だけである。

本記事が「9つの欄」というのは,このCSV版の欄立てを指している。

(2) ⑤予算決定後移替増△減額

⑤の根拠は,法律でも政令でもなく,毎年度の予算総則にある。

予算は,予算総則,歳入歳出予算,継続費,繰越明許費及び国庫債務負担行為から成る(財政法16条)。

予算総則には,予算の執行に関し必要な事項に関する規定を設けるものとされている(同法22条六号)。

令和6年度一般会計予算の予算総則は,第14条に「予算の移替え等」の見出しを置き,行政組織に関する法令の改廃等による職務権限の変更等に伴い,主管,所管若しくは組織の設置,廃止若しくは名称の変更を行い,又は主管,所管若しくは組織の間において予算の移替えをすることができると定める。

続く第15条は,表の左欄及び中欄に掲げる所管及び組織のそれぞれの右欄の項に係る予算を使用する場合に,その実施にあたる各省各庁所管の当該組織に必要な予算の移替えをすることができると定め,内閣府内閣本府の沖縄振興交付金事業推進費等を表に掲げる。

決算の側も,これを正面から書いている。

前掲の総説は,翌年度繰越額と不用額を述べた後,「なお、予算総則の定めるところにより、所管又は組織の間において予算の移替えをしたものは、総額3,820,549,715,810円であって、その内訳を示せば、下表のとおりである。」と続ける。

⑤の根拠が予算総則であることは,決算そのものが明示している。

もっとも,⑤欄を見るだけでは移替の全体は分からない。

その理由は第7で述べる。

第4 2本の恒等式

1 恒等式①(入口側)

①歳出予算額+②前年度繰越額+③予備費使用額+④流用等増△減額+⑤予算決定後移替増△減額=⑥歳出予算現額

これは,その年度に使える金額がどう積み上がったかを示す。

当初予算と補正予算で議決された額に,前年度から持ち越した分を加え,執行の過程で動いた分(予備費・流用・移替)を加減する。

2 恒等式②(出口側)

⑥歳出予算現額=⑦支出済歳出額+⑧翌年度繰越額+⑨不用額

使える金額は,使ったか,翌年度へ回したか,使わずに終わったかの3つにしか分かれない。

第四の行き先は無い。

3 全行で成立することの実測

令和2年度から令和6年度までの歳出決算報告書(科目別内訳)の全行について,2本の式の左右差を計算した。

結果は次のとおりである。

令和2年度 全6,891行中,恒等式①が破れる行0,恒等式②が破れる行0

令和3年度 全6,986行中,0及び0

令和4年度 全7,005行中,0及び0

令和5年度 全6,999行中,0及び0

令和6年度 全6,962行中,0及び0

裁判所所管に限っても,5年度いずれも差は0円である。

端数処理による1円のずれすら生じない。

決算の数字を検算するときは,この2本を当てるのが最も速い。

第5 3本目の等式――年度をまたぐ連鎖

9欄の中には,年度をまたいで閉じる関係がもう1本ある。

前年度の⑧翌年度繰越額=当年度の②前年度繰越額

実測すると,裁判所所管では次のとおりである。

令和2年度の⑧ 10,944,695,125円 = 令和3年度の② 同額

令和3年度の⑧ 8,117,773,222円 = 令和4年度の② 同額

令和4年度の⑧ 6,190,027,235円 = 令和5年度の② 同額

令和5年度の⑧ 13,238,876,033円 = 令和6年度の② 同額

一般会計全体でも,同じ4本の連鎖が1円まで一致する。

したがって,ある年度の決算だけを見ていると②と⑧は単なる二つの欄に見えるが,実際には隣の年度の決算とつながっている。

②が大きい年度は,前年度に使い残して繰り越した年度である。

ここで,②と⑧の金額がいつ決まるのかに注意が要る。

繰越明許費は,あらかじめ国会の議決を経て翌年度に繰り越して使用することができる経費である(財政法14条の3第1項)。

その要求書の様式を定めているのが,予算決算及び会計令11条3項である。

同項は,繰越明許費要求書について「事項ごとにその必要の理由を明らかにするとともに、繰越を必要とする経費の項の名称を示さなければならない」とするだけで,金額を示せとは書いていない。

同条の他の項と比べると,この落とし方は明らかである。

2項の継続費要求書は「その経費の総額、年割額、当該事項に対する項の金額等を示さなければならない」とし,4項の国庫債務負担行為要求書は「債務負担の限度額を明らかにし」とする。

金額を求めていないのは3項だけである。

予算に綴られる繰越明許費の表が,所管・組織・事項の三列だけで金額欄を持たないのは,この様式規定の帰結である。

もっとも,金額がどこにも無いわけではない。

繰越明許費の金額は,三つの層に分かれている。

第一に,予算そのものには事項だけが載り,金額は無い。

第二に,各目明細書には「うち繰越明許費」として予定額が金額で載る。

各目明細書は,予算決算及び会計令12条により,各省各庁の長が「予算が国会に提出された後、直ちに」作製して財務大臣に送付するものであって,予算そのものではない。

裁判所の各目明細書にも,この「うち繰越明許費」の記載が現に置かれている。

第三に,実際に繰り越した額は執行段階で決まる。

財政法43条1項は,各省各庁の長が繰越計算書を作製し,事項ごとにその事由及び金額を明らかにして財務大臣の承認を経なければならないとし,同条2項は,その承認があった金額の範囲内で翌年度に繰り越して使用することができるとする。

そして,この第三の額が決算の⑧翌年度繰越額になる。

したがって,②及び⑧の金額を確定させるのは財務大臣の承認であって,予算の議決ではない。

三つの層は別の資料にあり,しかも一致するとは限らない。

現に,令和6年度決算の裁判所所管では,⑧が立っている目の中に,当初の繰越明許費の指定に無い「庁費」が含まれている。

補正予算での追加指定と,財政法42条ただし書の事故繰越とが混じるためである。

予算書の繰越明許費の表からも,各目明細書の予定額からも,翌年度繰越額を予測することはできない。

第6 動く3つの欄は,それぞれ違う階層でゼロになる

③予備費使用額,④流用等増△減額及び⑤予算決定後移替増△減額は,いずれも「予算成立後に金額が動いた」ことを示す欄である。

この3つは,いずれも足すとゼロになる。

ただし,ゼロになる階層が違う。

1 ④流用等増△減額――所管の中でゼロ

財政法33条1項は,部局等の間又は各項の間の移用を原則として禁じ,予算をもって国会の議決を経た場合に限り財務大臣の承認を経て移用することができるとする。

同条2項は,各目の経費の金額について,財務大臣の承認を経なければ目の間で流用することができないとする。

つまり,④が動くのは目の間(流用)か項の間(移用)であって,いずれも一つの所管の中で完結する。

実測しても,令和2年度から令和6年度までのすべての年度で,④を所管ごとに合計すると,非ゼロの所管は0である。

項ごとに合計したときに非ゼロとなるのは,移用が行われた場合である。

例えば令和2年度は法務省の矯正管理業務費と矯正収容費との間で±14,047,000円,令和5年度は防衛省の防衛本省共通費と自衛官給与費との間で±8,843,228,000円が動いている。

なお,裁判所所管について令和6年度の流用が項の中で閉じていることは,前掲の別稿で詳しく扱ったので,本記事では繰り返さない。

ここで一つ,条文と資料の対応で注意すべき点がある。

財政法33条4項は,移用又は流用した経費の金額について,「歳入歳出の決算報告書において、これを明らかにするとともに、その理由を記載しなければならない」と定める。

法律が理由の記載を明文で命じているのは,9欄のうち④に関するものだけである。

そして,名宛てとなる「決算報告書」は,各省各庁の長が作製する決算参照の側であって,財務大臣が作成する決算本体ではない。

実際,決算本体には「円流用」「円移用」という記載が令和2年度版・令和6年度版とも1件も無い。

これに対し決算参照には,令和6年度版で「円流用」が139箇所,「円移用」が10箇所,令和2年度版で114箇所及び12箇所ある。

裁判所所管の流用の理由も,決算参照に書かれている。

記載は,増額された側の目に付き,流用元の目と金額を伴う形をとる。

金額だけを見ていると単なる数字の移動に見えるが,理由まで読むと,司法修習生の増加や送達件数の増加といった事実が現れる。

なお,令和6年度の流用は5目・3件であり,その全件と金額は前掲の別稿で扱われている。

理由の逐語は,別稿「決算に書かれている「理由」の探し方」にある。

裏返せば,④の理由を知りたいときに決算本体を探しても徒労に終わる。

2 ⑤予算決定後移替増△減額――一般会計全体でゼロ

⑤は所管の間を動くので,所管ごとに合計しても消えない。

消えるのは一般会計全体で合計したときである。

令和2年度から令和6年度まで,いずれの年度も一般会計の⑤の合計は0円である。

移替は,項名と目名を変えずに所管だけを移すという形をとる。

令和6年度の最大の例は,項「物価高騰対応地方創生推進費」(目「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」)であり,内閣府内閣本府で△995,003,347,000円,総務省総務本省で+995,003,347,000円である。

項名も目名も同じで,所管と組織だけが違う。

3 ③予備費使用額――一般会計全体でゼロ

③も一般会計全体で0円になる。

予備費が,財務省財務本省の一つの項として計上されているからである。

令和2年度でいえば,財務省財務本省の項「新型コロナウイルス感染症対策予備費」は,①歳出予算額9,650,000,000,000円に対し,③が△9,142,049,687,000円であり,⑥歳出予算現額は507,950,313,000円となっている。

項「予備費」も,①500,000,000,000円,③△283,867,094,000円,⑥216,132,906,000円である。

出ていった分だけ財務省側がマイナスになり,受け取った所管の目にプラスで立つ。

したがって,③欄の合計が0であることは「予備費が使われなかった」ことを意味しない。

使われた額を見るには,財務省のマイナス側か,受け取った側のプラス側のいずれかを見る必要がある。

さらに,③欄だけを見ていると足りない理由が二つある。

第一に,予備費の使用額が⑤移替の側に現れることがある。

決算は,移替の内訳の直前にその旨を注記している。

例えば令和2年度一般会計歳入歳出決算は「移替額には、新型コロナウイルス感染症対策予備費の使用額1,628,854,246,000円及び流用増した額171,473,000円が含まれる」と書く。

この種の注記は,令和2年度から令和6年度までの5年度すべてにある。

注記された額と,CSVの⑤欄のプラス側合計とを並べると,次のようになる。

年度注記された額⑤欄のプラス側合計割合
令和2年度1,629,025,719,0001,629,025,719,000100.0%
令和3年度500,000,000,0003,384,212,793,69014.8%
令和4年度1,146,416,652,0003,013,122,415,00038.0%
令和5年度403,987,374,0002,212,695,729,66118.3%
令和6年度68,590,0001,064,372,332,8600.0%

令和2年度は,注記された二つの額の合計が⑤欄のプラス側合計と1円まで一致する。

同年度の⑤欄は,その全額が予備費由来と流用由来だったということである。

しかし,これは5年度のうちこの年度だけの現象である。

他の年度では,予備費由来は⑤欄の一部にすぎず,令和6年度に至っては1兆円を超える移替のうち約6900万円だけである。

したがって,「注記された額=移替の全部」と読むことはできない。

言えるのは,⑤欄の数字の中に予備費由来のものが混じっている年度があるということまでである。

第二に,決算参照には,③欄の意味そのものを変える注記が所管ごとに付いている。

しかもその注記は二種類あり,向きが逆である。

「予備費使用額は、……の使用額である」(③欄が特別の予備費そのものを指す)

「予備費使用額には、……は含まれていない」(③欄が特別の予備費を除いている)

令和6年度版では前者が3件,後者が30件,令和2年度版では前者が22件,後者が18件ある。

したがって,他の所管の③欄を読むときは,その頁にどちらの注記が付いているかを先に確かめなければならない。

第7 ⑤欄がゼロでも移替が無かったとは言えない

ここには落とし穴がある。

令和6年度の決算説明が掲げる移替の総額は3,820,549,715,810円である。

ところが,歳出決算報告書(科目別内訳)の⑤欄のプラス側を合計しても,1,064,372,332,860円にしかならない。

令和2年度も同じで,決算説明の移替総額は6,159,344,981,386円,⑤欄のプラス側合計は1,629,025,719,000円である。

この差はどこから生じるのか。

実測すると,移替の中には,⑤欄に現れず,①歳出予算額そのものに織り込まれているものがある。

令和6年度の項「情報通信技術調達等適正・効率化推進費」は,決算説明の移替表では,デジタル庁から会計検査院ほか13府省へ509,690,849,950円が移し替えられたものとして掲げられている。

ところが,同じ項に属する92行のCSVを見ると,⑤欄はすべて0であり,①歳出予算額の側が既に各所管へ分かれている。

項「大学等修学支援費」(文部科学省から厚生労働省へ543,768,827,000円)も同様で,4行すべて⑤欄は0である。

これに対し,前記の物価高騰対応地方創生推進費は⑤欄に現れる。

つまり,同じ予算総則に基づく移替であっても,⑤欄に立つものと①欄に織り込まれるものとがある。

両者を分けているのは,移替が予算決定の時点で行われたか,その後に行われたかである。

⑤の欄名が「予算決定後移替増△減額」であることが,そのまま答えになっている。

そして,予算決定の時点で移し替えられた分は,隠れているわけではない。

決算参照は,所管・組織ごとの冒頭に,①歳出予算額の内訳を示す表を置いている。

その内訳は,当初予算額,予算補正追加額・予算補正修正減少額(△),予算移替増加額・予算移替減少額(△),合計の四欄である。

補正の欄は追加額と修正減少額を上下二段に分けて示し,移替の欄は増加を正・減少を△として一つの数で示す。

先ほどの情報通信技術調達等適正・効率化推進費を,この表で追うと次のようになる。

デジタル庁は,当初予算額496,407,038,000円,予算補正追加額211,905,612,000円,予算補正修正減少額△2,548,949,000円に対し,予算移替減少額△509,690,849,950円を計上し,合計は196,072,851,050円となる。

受け取った側の会計検査院は,当初予算額16,282,621,000円,予算補正追加額412,040,000円,予算補正修正減少額△343,552,000円に,予算移替増加額601,845,826円が加わり,合計は16,952,954,826円である。

いずれも1円まで閉じており,しかもこの金額は,決算説明の移替表に掲げられた額と一致する。

さらに,この合計はCSVの側とも合う。

デジタル庁の39行,会計検査院の42行について,①歳出予算額を合計すると,それぞれ右の合計と1円まで一致する。

そして,その全行で⑤欄は0である。

移替が①に入り切っていて⑤に一切現れないことは,両方の資料で確かめられる。

したがって,移替は決算のどこにも現れないのではなく,予算決定時のものは①歳出予算額の内訳に,予算決定後のものは⑤欄に,それぞれ別の場所に現れる。

なお,裁判所所管の当該表は,当初予算額330,979,009,000円,予算補正追加額23,924,928,000円,予算補正修正減少額△454,559,000円,移替の欄は0で,合計354,449,378,000円である。

第8のとおり裁判所所管には移替が無いので,両方とも0になる。

実務上の帰結は明確である。

移替があったかどうかを⑤欄だけで判定してはならない。

⑤欄が0でも予算決定時の移替まで無かったとは言えないのであって,①側の移替は決算参照の冒頭表で,全体像は決算説明の移替表で確認する必要がある。

第8 裁判所所管の9欄

1 数値

裁判所所管の9欄は,次のとおりである(単位・円)。

令和2年度令和3年度令和4年度令和5年度令和6年度
①歳出予算額326,294,809,000325,334,008,000324,021,001,000326,876,437,000354,449,378,000
②前年度繰越額5,665,563,00010,944,695,1258,117,773,2226,190,027,23513,238,876,033
③予備費使用額
④流用等増△減額
⑤予算決定後移替増△減額
⑥歳出予算現額331,960,372,000336,278,703,125332,138,774,222333,066,464,235367,688,254,033
⑦支出済歳出額312,451,170,774319,675,693,505317,158,054,053309,396,122,470332,296,053,276
⑧翌年度繰越額10,944,695,1258,117,773,2226,190,027,23513,238,876,03325,894,428,345
⑨不用額8,564,506,1018,485,236,3988,790,692,93410,431,465,7329,497,772,412

④が所管合計で0になるのは,前記のとおり構造上のことであって,流用が無かったことを意味しない。

目の単位で見れば,令和2年度は8目,令和3年度は5目,令和4年度は2目,令和5年度は6目,令和6年度は5目で④が動いている。

③が0であることは,裁判所所管に内閣の予備費(財政法24条)が使われた年度が,この5年度には無いということである。

ただし,前記のとおり③欄は注記によって意味が変わるので,欄が0であることだけでは足りない。

そこで,令和2年度から令和6年度までの5年度すべてについて,決算参照の裁判所所管の頁を走査し,二種類の注記のいずれも付いていないことを確かめた。

注記の件数は年度によって大きく動く(「……である」型/「……含まれていない」型の順に,令和2年度22件・18件,令和3年度14件・15件,令和4年度23件・10件,令和5年度1件・26件,令和6年度3件・30件)。

それでも裁判所の頁は,5年度とも0件である。

注記が無い以上,③欄は文字どおり予備費使用額を表しており,それが0であるという読み方ができる。

さらに,予備費の側からも確かめられる。

財政法36条3項により内閣が国会に提出する予備費使用総調書を見ると,令和6年度の一般会計予備費使用総調書(33頁)にも,原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費の総調書(6頁)にも,裁判所所管の使用は無い。

ここには一つ罠がある。

前者には「最高裁判所」という語が7回現れるが,いずれも「衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に必要な経費」等であって,所管は総務省・法務省・外務省である。

語が出ることと,その所管に予備費が使われたこととは別である。

なお,項「裁判所予備経費」は,裁判所法83条2項が「前項の経費中には、予備金を設けることを要する。」と定めることに対応するものであって,財政法24条の予備費とは別である。

⑤が0であることについては,第7のとおり⑤欄が移替の全部を写すものではないから,欄だけでは足りない。

そこで,令和2年度から令和6年度までの5年度すべてについて,決算説明の移替表そのものを走査した。

5年度とも,移替表に裁判所の記載は無い(同じ表に会計検査院は現れる)。

各年度の移替総額は,令和2年度6,159,344,981,386円,令和3年度7,118,597,244,593円,令和4年度4,813,359,733,838円,令和5年度5,099,815,160,241円,令和6年度3,820,549,715,810円である。

⑤欄が0であることと,移替表に載っていないことの二つが揃うので,この5年度に裁判所所管の移替は無かったと言ってよい。

2 執行率

⑦支出済歳出額を⑥歳出予算現額で除した割合は,次のとおりである。

年度裁判所一般会計
令和2年度94.12%80.98%
令和3年度95.06%83.43%
令和4年度95.49%81.90%
令和5年度92.89%87.66%
令和6年度90.37%89.42%

裁判所の執行率は,いずれの年度も一般会計全体を上回る。

もっとも,その差は令和4年度の13.59ポイントから令和6年度の0.95ポイントまで縮んでいる。

令和6年度に裁判所の執行率が下がった主因は,項「裁判費」の⑧翌年度繰越額が13,670,274,000円に達したことである。

同項の⑥は41,099,533,000円,⑦は24,166,905,248円であり,現額の約3分の1が翌年度に回っている。

3 ⑨不用額の理由が読める範囲

決算は,不用額の理由を全部について書いているわけではない。

しかも,理由が読める冊は二つあり,収録の範囲が違う。

決算本体(一般会計歳入歳出決算)は「1項5億円以上のもの」に限られるのに対し,決算参照(歳出決算報告書)の備考欄には閾値の記載がなく,はるかに広く理由が載っている。

二冊の違いと,どちらに何がどこまで載るかは,別稿「決算に書かれている「理由」の探し方」で扱っている。

本記事では,⑨欄の性質として,理由の書き分けが項によってどう違うかだけを見る。

理由の文言は定型だが,年度をまたいで不変ではない。

しかも,変わり方は項によって違う。

令和2年度から令和6年度までの決算参照で,裁判所所管の各項の理由が何種類あったかを数えると,次のようになる。

5年度に現れた文言の種類
最高裁判所5種(毎年度違う)
下級裁判所5種(毎年度違う)
検察審査費2種(令和6年度は記載なし)
裁判費2種
裁判所施設費2種

裁判所所管の5項に限れば,人件費と事件処理に関わる項ほど毎年度書き分けられ,契約価格を理由とする項は定型に近い。

例えば検察審査費は,令和2年度が「検察審査会議の開催回数が予定を下回ったこと等により」であるのに対し,令和3年度から令和5年度までは「検察審査会議に係る支給額が予定を下回ったこと等により」である。

下級裁判所も,令和2年度は調停事件の処理件数と家庭裁判所委員会の出席者数,令和3年度は超過勤務,令和4年度は調停事件及び労働審判事件の処理件数,令和5年度は契約価格と法廷等器具整備費,令和6年度は低位号俸の職員と職員の欠員と,毎年度違う。

閾値を超えた裁判所所管の項について,令和6年度の決算本体の理由は次のとおりである。

最高裁判所 3,083,742,037円 基礎年金給付及び長期給付に要する費用が予定を下回ったことにより、基礎年金等国家公務員共済組合負担金を要することが少なかったこと等のため

下級裁判所 2,124,636,318円 低位号俸の職員が予定を上回ったこと及び職員に欠員があったことにより、職員基本給を要することが少なかったこと等のため

裁判費(3,262,353,752円)及び裁判所施設費(1,015,442,121円)は,いずれも契約価格が予定を下回ったことと事業計画の変更を挙げる定型の文である。

下級裁判所の理由に「職員に欠員があったこと」と書かれている点は,国自身が欠員の存在を不用の理由として記載した例として,記憶にとどめてよい。

令和2年度の下級裁判所の理由は,これとは違っていた。

下級裁判所 3,142,083,322円 調停事件の処理件数及び家庭裁判所委員会の出席者数が予定を下回ったこと等により、委員手当を要することが少なかったこと等のため

事件数の減少が不用の理由として明記された例である。

もっとも,これは国が挙げた理由であって,その当否や背景事情までを決算が説明しているわけではない。

4 ⑧翌年度繰越額の内訳――明許繰越と事故繰越

⑧は,法的根拠の異なる繰越の合計である。

決算は,翌年度繰越額を,財政法14条の3第1項の規定による明許繰越,同法42条ただし書の規定による事故繰越及び同法43条の2第1項の規定による継続費の逓次繰越に分けて示す。

令和2年度の裁判所所管では,⑧の合計が10,944,695,125円であるところ,明許繰越は裁判費1,332,855,312円及び裁判所施設費8,145,063,813円の計9,477,919,125円である。

差の1,466,776,000円は,最高裁判所の事故繰越である。

財政法42条ただし書は,年度内に支出負担行為をし,避け難い事故のため年度内に支出を終わらなかったものを繰り越すことができるとするものであり,あらかじめ国会の議決を経て繰り越す明許繰越とは性質が違う。

これに対し,令和6年度の裁判所所管では,明許繰越の合計25,894,428,345円が⑧と一致する。

事故繰越は無い。

決算参照の裁判所所管合計の備考欄には「翌年度繰越額の内訳」としてこの別が書かれており,5年度分を並べると次のとおりである(単位・円)。

年度⑧翌年度繰越額明許繰越額事故繰越額
令和2年度10,944,695,1259,477,919,1251,466,776,000
令和3年度8,117,773,2228,117,773,222
令和4年度6,190,027,2356,106,654,23583,373,000
令和5年度13,238,876,03312,625,406,033613,470,000
令和6年度25,894,428,34525,894,428,345

事故繰越があるのは令和2年度・令和4年度・令和5年度で,令和3年度と令和6年度には無い。

したがって,⑧を年度間で並べるときは,明許と事故を分けて見る必要がある。

もっとも,⑧から読めるのはここまでである。

なぜ繰り越したのかという事由は,決算本体にも決算参照にも書かれていない。

財政法43条1項は繰越計算書に「事項ごとに、その事由及び金額」を明らかにせよと定めるが,その繰越計算書は決算に綴られていないからである。

もっとも,事由の記載がどこにも無いわけではない。

予算に添付される繰越明許費要求書には,事由の欄がある。

前記の予算決算及び会計令11条3項が「事項ごとにその必要の理由を明らかにする」よう求めているのは,この欄のことである。

令和6年度一般会計予算の要求書は,計画・設計・気象・用地・補償処理・資材入手の六つに〇を付け,これに当たらないものは「左記以外の事由」に文で書く形をとっており,裁判所所管では(項)最高裁判所の退職手当に「勤務意思の変更」と記されている。

したがって,決算から読めないのは,予算の段階で見込んだ事由ではなく,実際に繰り越したときの事由である(この点は別稿「決算に書かれている「理由」の探し方」でも扱っている)。

なお,⑧の金額が財政法43条の承認で決まることは第5に述べたとおりであり,この表の金額はいずれも承認を経た後の数字である。

第9 令和7年度の決算がまだ無いこと

調査基準日である令和8年9月7日現在,令和7年度の決算書は公表されていない。

財務省の予算書・決算書データベースの令和7年度アーカイブには,当初予算(第217回常会)及び補正予算第1号(第219回臨時会)の見出しはあるが,決算書関連情報の見出しが無い。

歳出決算報告書のCSVに相当するURLも,HTTPステータス404である。

これは,次の日程による。

財政法39条は,内閣が歳入歳出決算に所定の書類を添付して翌年度の11月30日までに会計検査院に送付しなければならないとする。

財政法40条1項は,内閣が会計検査院の検査を経た歳入歳出決算を,翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする,と定める。

令和7年度決算についていえば,会計検査院への送付期限は令和8年11月30日であるから,令和8年9月の時点で決算書が無いことは,日程どおりである。

もっとも,実際の提出先は「常会」ではない。

各年度の決算書の表紙には,提出された国会の回次が印刷されている。

令和2年度一般会計歳入歳出決算は「(第207回国会提出)」,令和6年度一般会計歳入歳出決算は「(第219回国会提出)」である。

財務省のアーカイブによれば,令和2年度から令和6年度までの決算書は,第207回,第210回,第212回,第216回及び第219回に提出されており,いずれも臨時会である。

財政法40条1項が常会での提出を「常例とする」と定めているのに対し,直近5年度はいずれも臨時会での提出であった。

この乖離の理由は,財務省自身が説明している。

「令和5年度決算の国会提出」の頁は,歳入歳出決算の国会提出について「翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする」こととなっているとした上で,次のように書く。

「『平成15年度決算』以降は、決算の提出時期を早め、会計年度翌年の11月20日前後に国会に提出するよう、政府に要請する。」との平成15年5月の参議院の要請を踏まえ、令和6年11月29日の閣議決定を経て、同日、国会へ提出しました、と。

つまり,臨時会での提出は,常会より遅れているのではなく,早められている。

参議院が決算審査を早めるために求めた運用である。

実際の日程も公表されている。

令和5年度決算でいえば,令和6年7月31日に歳入歳出主計簿を締め切り,各省各庁から提出された決算報告書等に基づいて歳入歳出決算を作成し,令和6年9月3日の閣議を経て会計検査院に送付した。

会計検査院は決算検査報告を作成して令和6年11月6日に内閣へ送付し,内閣は同月29日に国会へ提出している。

提出日は,令和4年度決算が令和5年11月20日,令和5年度決算が令和6年11月29日,令和6年度決算が令和7年11月18日である。

したがって,令和7年度決算も令和8年11月頃に提出されるとみるのが自然である。

調査基準日である令和8年9月7日に公表されていないのは,日程どおりである。

第10 実務上の使い方

1 国の予算・決算の数字を引用するときは,まず2本の恒等式で検算する。

合わないときは,欄を取り違えているか,当初予算額と①歳出予算額を混同している。

2 「予算がいくら付いたか」を書くときは,①歳出予算額が当初と補正の合算であることに注意する。

当初予算額を言いたいのであれば,決算説明の内訳から当初予算額を取る。

3 「使われなかった」を論じるときは,⑨不用額と⑧翌年度繰越額を分ける。

翌年度に回った金は,使われなかったのではなく,まだ使われていないだけである。

4 理由を探すときは,決算本体(一般会計歳入歳出決算)と決算参照(歳出決算報告書)の2冊があることを前提にする。

不用額の理由は,決算本体では1項5億円以上に限られるが,決算参照にはより広く載っている。

流用・移用の理由は,決算参照にしか無い。

理由が書かれていないことは,理由が無いことではない。

5 移替の有無は⑤欄で判定しない。

決算説明の移替表を見る。

また,③欄を読むときは,その所管の頁に予備費の注記が付いていないかを先に確かめる。

注記には向きが逆の二種類があり,どちらが付いているかで欄の意味が変わる。

6 繰越を年度間で比較するときは,明許繰越と事故繰越を分ける。

7 執行率を語るときは,分母を⑥歳出予算現額とするのか①歳出予算額とするのかを明示する。

本記事の数値は⑥を分母としている。

第11 未確認事項

1 移替額に予備費の使用額が含まれる旨の注記は,5年度とも原文を確認したが,注記された額が⑤欄のどの行に対応するのかを行単位で特定したわけではない。

また,第7のとおり予算決定時の移替と予算決定後の移替とは別の欄に現れるが,ある移替がどちらの時点のものとして処理されるかを決める規準そのものは確認していない。

2 9欄という欄立てを直接に基礎付ける定めを特定できていない。

財政法37条1項は決算報告書の作製を「財務大臣の定めるところにより」とし,予算決算及び会計令142条も同令に規定する書類の様式は財務大臣が定めるとするが,その定め自体には到達していない。

同じ壁は,別稿「決算に書かれている「理由」の探し方」が扱う決算参照の収録範囲の根拠でも生じている。

様式に関する財務大臣の定めが公表されていないために,二つの別々の問いが同じところで止まっている。

⑥歳出予算現額という欄名の由来(いつからこの様式になったか)も,同じ理由で確認していない。

3 決算参照における不用額の理由の収録範囲は,基準そのものが特定できていない。

決算本体の「1項5億円以上」に相当する明示の記載は同書中に見当たらず,令和6年度だけが件数の上で一致するものの,他の4年度は一致しない。

見たのは決算参照の本文と巻末の説明(コード番号及び決算書情報)であり,その範囲では,備考欄に何をどこまで書くかの定めは示されていない。

また,件数の対照は集合の対照ではないので,どの項に理由が付きどの項に付かないかを項単位で確定したわけではない。

なお,財政法38条2項が歳出について列挙する7項目は,すべて「額」であって理由が入っていない。

不用額の理由が決算に載るのは,法律がそれを命じているからではない。

法律が理由の記載を明文で命じているのは,9欄のうち④の移用・流用に関するものだけである(財政法33条4項)。

4 予算決算及び会計令129条・130条が「歳出予算残額」とし,決算が「不用額」とする用語の差の沿革は確認していない。

5 令和7年度決算の提出時期は,前記第9の運用からの推測であって,確定した予定を確認したものではない。

6 検索需要については,ラッコキーワードで「不用額」(サジェスト66件)及び「決算 見方」(同158件)を取得したにとどまる。

月間検索数は有料機能であり取得していない。

「歳出予算現額」等については,無料枠の制限により取得できなかったため,需要の有無を判断できない。

第12 出典

1 法令(e-Gov法令検索・令和8年9月7日確認)

財政法(昭和22年法律第34号)14条の3,16条,17条,20条,22条,24条,33条,36条,37条,38条,39条,40条,42条,43条,43条の2

予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)8条,11条,12条,24条,25条の2,129条,130条,142条

裁判所法(昭和22年法律第59号)83条

2 予算書・決算書(財務省 予算書・決算書データベース)

令和6年度一般会計歳入歳出決算(第219回国会提出) https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/dlpdf/DL202472001.pdf

令和2年度一般会計歳入歳出決算(第207回国会提出) https://www.bb.mof.go.jp/server/2020/dlpdf/DL202072001.pdf

令和6年度一般会計決算参照(915頁) https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/dlpdf/DL202477001.pdf

令和2年度一般会計決算参照(862頁) https://www.bb.mof.go.jp/server/2020/dlpdf/DL202077001.pdf

令和6年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(33頁) https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/dlpdf/DL2024e1012.pdf

令和6年度一般会計原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(6頁) https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/dlpdf/DL2024e1011.pdf

令和6年度一般会計当初予算(予算総則第14条・第15条) https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/dlpdf/DL202411001.pdf

令和8年度裁判所所管一般会計歳出予算各目明細書(15頁) https://www.courts.go.jp/assets/R8yosan_meisai_85kb.pdf

令和3年度から令和5年度までの一般会計歳入歳出決算及び一般会計決算参照

https://www.bb.mof.go.jp/server/2021/dlpdf/DL202172001.pdfhttps://www.bb.mof.go.jp/server/2021/dlpdf/DL202177001.pdf

https://www.bb.mof.go.jp/server/2022/dlpdf/DL202272001.pdfhttps://www.bb.mof.go.jp/server/2022/dlpdf/DL202277001.pdf

https://www.bb.mof.go.jp/server/2023/dlpdf/DL202372001.pdfhttps://www.bb.mof.go.jp/server/2023/dlpdf/DL202377001.pdf

財務省「令和5年度決算の国会提出」 https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/account/fy2023/ke0611.html

財務省「令和4年度決算の国会提出」 https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/account/fy2022/ke0511.html

財務省「令和6年度決算」 https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/account/fy2024/index.html

令和2年度から令和6年度までの一般会計 歳入決算明細書及び歳出決算報告書(科目別内訳)CSV版

https://www.bb.mof.go.jp/server/2020/csv/DL202077001.zip

https://www.bb.mof.go.jp/server/2021/csv/DL202177001.zip

https://www.bb.mof.go.jp/server/2022/csv/DL202277001.zip

https://www.bb.mof.go.jp/server/2023/csv/DL202377001.zip

https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/csv/DL202477001.zip

年度別アーカイブ https://www.bb.mof.go.jp/archive/reiwa6.html

3 関連記事

裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったこと