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治安維持法はいつ・どのように廃止されたのか――人権指令・政治犯釈放と横浜事件(AI作成)

第1 この記事が答える問い

治安維持法は,いつ,どの法形式で廃止され,既に有罪判決を受けていた者はどう扱われたのか。
本記事は,廃止の日付だけでなく,法形式と事後処理までを扱う。

廃止を命じた人権指令そのものの内容は「人権指令とは何か」で扱う。

第2 廃止された法律の中身

1 1925年の制定――全7条の法律であった

治安維持法(大正14年法律第46号)は,国体の変革又は私有財産制度の否認を目的とする結社の組織等を処罰する法律として制定された。
制定時は全7条であり,法定刑の上限は10年の懲役であった。

2 1928年の緊急勅令――死刑の導入と目的遂行罪

昭和3年勅令第129号は,帝国議会での審議未了を受けて緊急勅令の形で改正を行い,最高刑を死刑・無期懲役に引き上げ,いわゆる目的遂行罪を新設した。

3 1941年の全面改正――全65条と予防拘禁

昭和16年法律第54号による全面改正で,条文は全65条となり,予防拘禁制度と,二審制・弁護人の司法大臣指定という特別の刑事手続が導入された。
処罰の対象も大幅に拡張された。

第3 廃止の法形式

1 法律ではなく勅令によって廃止された

治安維持法を廃止したのは,法律の改正ではなく,昭和20年勅令第575号である。
同勅令は1945年10月15日に公布・施行され,治安維持法及び思想犯保護観察法を廃止した。

2 人権指令から廃止までの11日

経過は次のとおりである。

①1945年10月4日 人権指令の交付
②同月5日 東久邇宮内閣の総辞職
③同月9日 幣原内閣の成立
④同月10日 政治犯の釈放
⑤同月15日 勅令第575号による廃止

指令から廃止までは11日である。
釈放が廃止より先に行われている点にも注意を要する。

3 なぜ勅令だったのか

昭和20年勅令第575号は,いわゆるポツダム緊急勅令(昭和20年勅令第542号)を根拠とする命令である。
占領軍の指令を国内で実施するために,法律によらず命令で法律を廃止するという仕組みが用いられた。

この仕組み自体は「日本国憲法外で法的効力を有していたポツダム命令」で扱っている。

第4 有罪判決を受けた者はどうなったか

1 大赦令による恩赦

1945年10月17日の勅令第579号(大赦令)は26万4,403人を,1946年11月3日の勅令第511号(大赦令)は4万4,623人を対象とした。
これにより多数の者が恩赦を受けた。

2 包括的な名誉回復立法はない

治安維持法違反により処罰された者を対象とする包括的な名誉回復立法及び国家賠償の立法は,成立していない。
個別事件における救済にとどまるというのが,現在に至るまでの状況である。

第5 横浜事件

1 事件の概要

横浜事件は,1942年から1945年にかけて,雑誌編集者ら約60人が検挙され,拷問を受け,5人が獄死したとされる事件である。

2 再審の結論は無罪ではなく免訴であった

第三次再審請求により再審が開始されたが,2006年の判断は無罪ではなく免訴であった。
2010年には刑事補償の決定がされている。

免訴という帰結自体が,治安維持法が廃止されたという法的経緯によって戦後の名誉回復手段が制約された例である。
すなわち,法律が廃止されたために犯罪後の法令により刑が廃止された場合として扱われ,有罪・無罪の実体判断に立ち入らない結論となった。

3 国家賠償請求訴訟と第10項

横浜事件の国家賠償請求訴訟について,東京高等裁判所平成30年10月24日判決(平成28年(ネ)第3783号,国家賠償請求控訴事件。原審は東京地方裁判所平成24年(ワ)第36185号)は,判決理由の中でポツダム宣言第10項を条文番号を付して逐語で引用した。

同判決は,ポツダム宣言受諾後も第10項がどのように具体化されるかは予想できなかったとして,1945年9月の時点における治安維持法の適用の違法性を否定した。
また,同判決は治安維持法の全廃日を昭和20年10月15日と明示しており,本記事第3の日付と一致する。

同判決の実在・書誌・判示内容は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索で確認した。

第6 運用の実態を示す数値の扱い

検挙者数・獄死者数は資料により大きく異なる。

①検挙68,274人・起訴6,550人とするもの(荻野富士夫の研究)
②検事局送致75,681人とするもの(国会での発言)
③獄死者数は93人から1,503人まで諸説がある

これらは「検挙」「送致」「起訴」「獄死」という定義が異なる数値であり,単純に比較できない。
本記事で数値を挙げる場合は,出典ごとの定義を必ず併記する。
一次資料(国立公文書館所蔵の検挙者調)の現物数値は未確認である。

第7 出典・参考資料

1 法令

①治安維持法(大正14年法律第46号)
②昭和3年勅令第129号,昭和16年法律第54号
③昭和20年勅令第575号(1945年10月15日),昭和20年勅令第542号
④昭和20年勅令第579号,昭和21年勅令第511号(各大赦令)

2 裁判例

①東京高等裁判所平成30年10月24日判決(平成28年(ネ)第3783号,国家賠償請求控訴事件。横浜事件)。裁判所ウェブサイトの裁判例検索で確認した。
https://www.courts.go.jp/hanrei/88421/detail4/index.html

3 公文書・文献

①官報
②荻野富士夫の研究による検挙者数等の集計