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弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表,事前公表及び懲戒処分歴の開示(AIリライト)

第1 公告,通知,公表,事前公表及び処分歴開示の違い

1 五つの制度の区別

弁護士又は弁護士法人に関する懲戒情報には,①処分後の公告,②関係者・関係機関への通知,③処分後の一般向け公表,④処分前の事前公表及び⑤依頼者等に対する懲戒処分歴の開示がある。これらは,情報を伝える相手,時期,目的及び根拠が異なる制度である。

制度主な相手方又は媒体制度の要点
公告官報及び日弁連機関雑誌『自由と正義』戒告を含む懲戒処分を所定の媒体に掲載する。
通知対象弁護士等,懲戒請求者,日弁連,関係弁護士会及び関係官公署等処分内容・理由又は手続の進行・終了を個別に知らせる。
公表報道機関,ウェブサイトその他を通じた一般公衆処分後に氏名,処分内容,事案の概要等を一般向けに知らせる。
事前公表一般公衆被害拡大防止等の必要がある場合に,処分前の懲戒手続に付された事実等を知らせる。
懲戒処分歴の開示現に法律事務を依頼・委嘱し,又は依頼・委嘱しようとする者所定の請求に応じ,限定された期間の処分歴を個別に知らせる。

2 懲戒処分と公表情報の関係

弁護士の懲戒処分は,戒告,2年以内の業務停止,退会命令及び除名の4種類である(弁護士法57条1項)。懲戒請求又は懲戒手続の開始は懲戒処分そのものではなく,事前公表がされた場合にも,その時点で処分の有無や種類が決まっているとは限らない。

また,官報公告の対象と,一般向け公表の対象は一致しない。戒告を含む全ての懲戒処分が官報公告の対象となる一方,処分後の一般向け公表では,処分の種類や公表の必要性に応じた基準が設けられている。

第2 懲戒処分の公告

1 官報による公告

弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒したときは,日弁連が遅滞なく懲戒処分の内容を官報で公告しなければならない(弁護士法64条の6第3項)。戒告も官報公告の対象であり,業務停止以上の処分に限られない。

官報公告は,一般向けの報道発表とは異なる法定の周知手続である。懲戒処分の存否を確認するときは,氏名だけでなく,登録番号,所属弁護士会,事務所及び処分の効力発生日を照合する必要がある。

2 『自由と正義』による公告

日弁連会則68条及び懲戒処分の公告及び公表等に関する規程3条に基づき,日弁連機関雑誌『自由と正義』にも公告が掲載される。官報が処分の基本事項を確認する資料であるのに対し,『自由と正義』の公告には処分理由の要旨も掲載される。

同規程は,当初の懲戒処分だけでなく,日弁連による原処分の取消し・変更,処分の効力停止,取消訴訟の確定判決等に応じた公告事項も定めている。このため,過去の処分を確認するときは,当初の公告だけでなく,後続する取消し・変更等の公告の有無も確認する必要がある。

第3 懲戒手続に関する通知

1 懲戒処分をした場合の通知先

弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒するときは,対象弁護士等に処分の内容及び理由を書面で通知しなければならない(弁護士法64条の6第1項)。弁護士会が懲戒したときは,懲戒請求者,懲戒を受けた弁護士法人の他の所属弁護士会及び日弁連にも,速やかに書面で通知する(同条2項)。

したがって,個人弁護士を懲戒した場合に,全国の他の弁護士会へ通知することを同項が定めているわけではない。「他の所属弁護士会」とは,複数の弁護士会に所属する弁護士法人が懲戒された場合における他の所属弁護士会を意味する。

日弁連が懲戒したときは,懲戒請求者及び対象弁護士等の所属弁護士会に処分の内容及び理由を通知する。懲戒請求者への通知には,不服申立ての方法に関する教示も伴う(日弁連会則68条の4)。

2 処分に至らない場合を含む手続通知

弁護士法64条の7は,綱紀委員会への調査請求,懲戒委員会への審査請求,懲戒しない旨の決定,刑事訴訟係属による手続の中止・再開及び対象弁護士の死亡等による手続終了についても,対象弁護士等,懲戒請求者,日弁連又は関係弁護士会への書面通知を定めている。弁護士会の懲戒の手続に関する通知規程は,これらの組織間通知の事項及び添付書類を具体化している。

この通知制度は,一般公衆への公表とは異なる。懲戒しない旨の決定や手続終了が関係者へ通知されても,その内容が当然にウェブサイト等で公表されるわけではない。

3 関係官公署等への通知

戒告を除く懲戒処分がされた場合には,日弁連会則68条の3及び会規第60号4条・5条に基づき,最高裁判所,検事総長その他の関係官公署等へ通知される。処分後に取消し,変更又は効力停止等があった場合についても,これに応じた通知が定められている。

第4 懲戒処分後の公表

1 弁護士会による公表

弁護士会は,日弁連会則68条の2第1項及び会規第60号6条に基づき,自会の会則又は会規に定めるところにより,所属弁護士等に対する懲戒処分を一般向けに公表できる。具体的な公表基準及び方法は各弁護士会の規程によるため,官報公告と同じ全国一律の制度ではない。

2 日弁連による公表

懲戒処分の公表等に関する規則によれば,日弁連は,業務停止,退会命令及び除名を原則として公表する。戒告は,弁護士,弁護士法人,弁護士会又は日弁連に対する国民の信頼を確保するため特に必要と認められる場合に限り,公表できる。

さらに,懲戒しない旨の決定についても,対象弁護士等の同意があり,かつ,国民の信頼を確保するため特に必要と認められる場合には公表できる。原処分に対する異議申出・審査請求,原処分の取消し・変更及び取消訴訟の結果についても,後続する判断の内容に応じた公表基準が設けられている。

第5 懲戒処分前の事前公表

1 事前公表の要件と目的

弁護士会は,所属弁護士等について綱紀委員会に事案の調査を求め,又は懲戒委員会に事案の審査を求めたとき,信頼確保のため特に必要である場合に,自会の会則又は会規に基づいて,氏名,事務所,事案の概要等を処分前に公表できる(会規第60号8条)。各弁護士会の規程では,被害拡大のおそれ,非行の重大性,緊急性,対象弁護士等の意見陳述その他の事情が具体的な判断要素となり得る。

日弁連については,日弁連又は弁護士等に対する国民の信頼を確保するため「緊急かつ特に必要」と認められることが要件である(同規程9条)。単位弁護士会について定める8条には「緊急」が独立した要件として置かれておらず,両者の規定文言は同一ではない。

2 事前公表は懲戒処分又は業務停止ではないこと

事前公表は,処分前の被害拡大防止又は信頼確保を目的とする情報提供であり,処分の有無や種類を先に決める制度ではない。綱紀委員会及び懲戒委員会は調査・審査をする機関であり,最終的な懲戒処分は弁護士会又は日弁連が行う。

また,懲戒手続に付された事実が事前公表されても,それだけで弁護士業務が停止するわけではない。事前公表を読む際には,公表時点の手続段階,処分が未定である旨の記載及び後続する処分・不処分の情報を区別する必要がある。

3 近時の事前公表例

東京弁護士会の令和8年7月22日付け事前公表は,成年後見人業務に関する預り金問題等について,苦情申出が令和7年4月から公表日前日までに65件,直近3か月に33件あったことを示し,被害拡大防止の必要性を公表理由としている。同会は,公表時点では処分内容が未定であり,綱紀委員会及び懲戒委員会が判断することも明記している。

愛知県弁護士会の令和6年3月13日付け事前公表は,国際ロマンス詐欺・投資詐欺の被害回復事件に関する多数の類似苦情と被害拡大のおそれを理由としている。大阪弁護士会の令和5年12月20日付け公表は綱紀委員会への調査請求の段階,令和7年6月18日付け公表は綱紀委員会の審査相当議決を受けて懲戒委員会へ審査請求をした段階の例であり,同じ事前公表でも手続段階が異なる。

第6 懲戒処分歴の開示

1 開示を請求できる者

懲戒処分歴の開示に関する規程及び同規則は,弁護士等に現に法律事務を依頼・委嘱し,又は依頼・委嘱しようとする者が,日弁連に懲戒処分歴の開示を請求できる制度を定めている。誰でも過去の全処分を自由に検索できる制度ではない。

請求書には,対象弁護士等の氏名・事務所,依頼又は委嘱に係る事案の概要及び開示を必要とする理由等を記載し,本人確認資料等を添付する。請求者は,開示を受けた懲戒処分歴を他に漏らさない旨を誓約しなければならない。

2 開示される処分歴の範囲

開示の対象期間は処分の種類によって異なる。除名は効力停止中で処分の効力発生日から3年以内のもの,退会命令は効力停止中又は再登録後で処分の効力発生日から3年以内のもの,業務停止は停止期間中及び期間満了後3年以内のものが対象となる。

戒告は,効力発生日から3年以内で,日弁連又は弁護士会が公表したものに限られる。したがって,全ての戒告歴が開示されるわけではない。回答には,処分内容・効力発生日・理由の要旨のほか,審査請求又は取消訴訟の係属,効力停止の有無等も記載され,開示後に処分が取り消され又は変更されたときは追加通知が行われる。

第7 公告と執行停止に関する最高裁決定

最高裁平成15年3月11日第三小法廷決定(平成14年(行フ)第11号,裁判集民事209号155頁)は,対象弁護士に処分書が送達された時に懲戒処分の効力が生じ,処分手続が終了するとした。その後の公告は処分の事実を一般に周知する手続であり,処分の効力の行使又は処分手続の続行ではないと判断している。

同決定は,公告による社会的信用の低下が軽微であると判断したものではない。公告による名誉・信用の低下は,行政事件訴訟法25条2項にいう「処分により生ずる」損害に当たらず,処分の効力又は手続の続行の停止によって公告を阻止できないとしたものである。この射程を,懲戒処分一般の適法性又は公表一般の許否へ広げることはできない。

第8 事前公表及び処分歴開示制度の沿革

1 事前公表制度の整備

日弁連は,奈良弁護士会所属会員による詐欺・業務上横領事件とその被害拡大を踏まえ,平成14年6月5日付け日弁連企第30号「会員の非違行為への対応について(要請)―事前公表制度の整備等―」により,各弁護士会へ事前公表制度の整備を求めた。同資料のモデル会規案は,被害拡大のおそれや重大な非行と信頼毀損のおそれ,緊急性を公表要件とし,対象弁護士等に意見陳述の機会を与える手続も示している。

この沿革からみても,事前公表は懲戒制裁の先取りではなく,被害拡大防止と弁護士自治への信頼維持のための制度として構成されている。ただし,現在の公表の可否は,現行の日弁連規程及び各弁護士会の会則・会規に基づいて判断される。

2 懲戒処分歴開示制度の導入

平成20年12月5日の日弁連臨時総会では,依頼者又は依頼予定者が弁護士を選ぶ際の情報に資するため,懲戒処分歴開示制度の導入が審議された。同総会の説明によれば,『自由と正義』への公告,平成16年からの全処分の官報公告及び平成3年に導入された一般向け公表は,それぞれ別の制度として形成されたものである。

同総会では,当時の直近5年間に戒告が165件あり,そのうち一般向けに公表されたものは6件であるとの説明もされた。この数値は平成20年時点の制度導入説明であって,現在の処分件数又は公表割合を示す統計ではない。

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第10 出典・参考資料

1 法令・会則・会規・規則

弁護士法(昭和24年法律第205号)57条,64条の6及び64条の7(e-Gov法令検索)

日本弁護士連合会会則68条~68条の4(日本弁護士連合会,PDF実頁17頁~21頁)

懲戒処分の公告及び公表等に関する規程(会規第60号)(日本弁護士連合会,PDF実頁1頁~10頁)

弁護士会の懲戒の手続に関する通知規程(会規第61号)(日本弁護士連合会)

懲戒処分の公表等に関する規則(規則第92号)(日本弁護士連合会,PDF実頁1頁~3頁)

懲戒処分歴の開示に関する規程(会規第87号)(日本弁護士連合会,PDF実頁1頁~5頁)

懲戒処分歴の開示に関する規則(規則第132号)(日本弁護士連合会,PDF実頁1頁~9頁)

2 裁判例

最高裁判所第三小法廷平成15年3月11日決定(平成14年(行フ)第11号,裁判集民事209号155頁,裁判所ウェブサイト)

3 公的資料及び弁護士会公表資料

① 日本弁護士連合会・平成14年6月5日付け日弁連企第30号「会員の非違行為への対応について(要請)―事前公表制度の整備等―」(鹿児島大学司法政策教育研究センター公開資料,PDF実頁1頁~7頁)

日本弁護士連合会・平成20年12月5日臨時総会議案書(PDF実頁8頁~10頁・20頁~21頁)

東京弁護士会「当会会員に対する懲戒の手続に付されたことの事前公表について」(令和8年7月22日)

愛知県弁護士会「懲戒の手続に付したことの事前公表」(令和6年3月13日)

大阪弁護士会「当会会員を懲戒の手続に付したことの公表について」(令和5年12月20日)

大阪弁護士会「当会会員を懲戒の手続に付したことの公表について」(令和7年6月18日)

4 文献

① 長瀨佑志『若手弁護士のための相談・受任・解決トラブル回避術』(学陽書房,2024年)68頁~69頁

② 石本哲敏「弁護士業務広告と非弁提携に関する近時の問題点」法律のひろば77巻6号(2024年12月号)68頁~73頁

③ 長瀨佑志ほか『若手弁護士のための民事弁護初動対応の実務』(日本能率協会マネジメントセンター,2018年)162頁