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司法行政文書に関する文書管理(AIリライト)

司法行政文書とは,裁判所の組織,人事,会計,通達,広報その他の司法行政事務に関して,裁判所の職員が職務上作成し,又は取得した文書であり,裁判記録そのものとは異なる。

司法行政文書の管理に関する基本通達は,令和8年3月4日に改正され,同年4月1日から改正後の内容が実施されている。

本記事では,現行の通達,公文書管理法及び裁判所が公表した管理状況に基づき,司法行政文書の定義,行政文書・裁判文書との違い,作成,保存,ファイル管理簿,移管,廃棄並びに毎年度の点検・監査を整理する。

第1 司法行政文書の範囲と法的な位置付け

1 司法行政文書の定義

最高裁判所事務総長通達「司法行政文書の管理について」第1の2(1)によれば,司法行政文書に該当するためには,次の要件を満たす必要がある。

① 裁判所の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画又は電磁的記録であること。

② 司法行政事務に関するものであること。

③ 裁判所の職員が組織的に用いるものであること。

④ 裁判所が保有していること。

「組織的に用いるもの」とは,作成又は取得に関与した職員個人の段階を超え,組織において業務上必要なものとして利用又は保存されている状態をいう。

したがって,決裁済みの文書だけが司法行政文書になるわけではなく,起案,配布,共用保存等の実態を踏まえて判断される。

反対に,職員が専ら自己の便宜のために作成し,組織での利用を予定していない備忘録等は,通常は組織共用性を欠く。

この点については,右崎正博ほか編『新基本法コンメンタール 情報公開法・個人情報保護法・公文書管理法』(日本評論社,2013年)25頁~26頁及び宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説〔第8版〕』(有斐閣,2018年)45頁~48頁参照。

2 行政文書及び裁判文書との違い

行政機関情報公開法2条2項の行政文書と司法行政文書は,「職務上作成し,又は取得した」,「組織的に用いる」,「保有している」という中核部分を共通にする。

もっとも,両者は法的に同一ではない。

行政機関情報公開法は裁判所を対象としておらず,裁判所の情報公開は,「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」に基づく開示申出の制度として運用されている。

また,公文書管理法の行政文書管理に関する規定も裁判所に直接適用されるものではなく,裁判所は同法の趣旨を踏まえて管理通達等を定めている。

ただし,公文書管理法14条は,行政機関以外の国の機関が保有する歴史公文書等の保存及び移管について定めており,最高裁判所から内閣総理大臣を経由して国立公文書館へ移管する制度の根拠となる。

なお,民事,刑事,家事及び少年事件の事件記録等は裁判事務に関する文書であり,司法行政文書とは異なる。

事件記録等の閲覧,保存及び特別保存には,訴訟法,裁判所規則その他の別の規律が適用される。

裁判事務に関する文書の範囲は,「裁判事務に関する文書の意義―司法行政文書・裁判文書との違いと国立公文書館への移管」で詳しく整理している。

裁判文書と司法行政文書の区別については,石塚伸一編著『刑事司法記録の保存と閲覧』(日本評論社,2023年)42頁~49頁参照。

第2 司法行政文書の管理体制

1 管理の根拠となる通達等

司法行政文書の管理は,法律及び命令並びに最高裁判所規則,最高裁判所規程及び通達に特別の定めがある場合を除き,管理通達による。

具体的な事務処理については,「最高裁判所における司法行政文書の管理の実施等について」及び「下級裁判所における司法行政文書の管理の実施等について」という実施通達があり,下級裁判所では各庁の実情に応じた実施細目も定められる。

管理通達は,平成24年12月6日の制定後,複数回改正されており,現行版は令和8年3月4日改正,同年4月1日実施のものである。

過去の配布資料又は旧版通達を参照するときは,役職名,電子決裁システム及び短期保有文書に関する記載が現行制度と一致するかを確認する必要がある。

2 総括文書管理者等

管理通達は,総括文書管理者,副総括文書管理者,文書管理者,文書管理担当者及び監査責任者を置く。

最高裁判所の総括文書管理者は最高裁判所事務総局秘書課長であり,高等裁判所,地方裁判所及び家庭裁判所の総括文書管理者は事務局長である。

副総括文書管理者は総括文書管理者を補佐する。

下級裁判所では,原則として事務局総務課長が副総括文書管理者となるが,裁判所の長は,文書企画官を充て,又は庁の実情に応じて他の課長を追加することができる。

各課及び裁判部の文書管理者は,その所管事務に関する司法行政文書の保存,保存期間の設定,点検,職員への指導等について責任を負う。

また,各裁判所には監査責任者が置かれ,文書管理の状況を監査する。

第3 文書の作成,閲覧及び保存

1 文書の作成義務

職員は,処理する事案が軽微である場合を除き,意思決定に至る過程及び裁判所の事務の実績を合理的に跡付け,又は検証できるように文書を作成しなければならない。

政策立案又は事務の実施方針等に影響する裁判所内部の打合せ及び外部との折衝についても,記録を作成する。

文書は,紙媒体での作成又は保存が義務付けられている場合等を除き,電子媒体による作成又は取得を基本とする。

内容の正確性を確保するため,原則として複数の職員による確認を経た上で文書管理者が確認し,外部との打合せの記録については,可能な限り相手方の発言部分も相手方による確認等を行う。

2 閲覧及び借出し

下級裁判所の実施通達第6は,職員が司法行政文書を閲覧し,又は閲覧のために借り出すことができるとし,具体的手続を各庁の実施細目に委ねている。

電子文書については,共有フォルダ等へのアクセス制御及びセキュリティ強化により,改ざん,漏えい等を防止しつつ適正に保存するものとされている。

現行の公表通達は,「事務局長は全ての課及び係,課長は自課,係長は自係に限ってアクセスできる」といった全国一律の権限序列を定めていない。

したがって,個別庁の内部設定を確認しないまま,役職だけを根拠として閲覧可能範囲を断定することはできない。

3 保存期間

文書管理者は,所管する司法行政文書について標準文書保存期間基準を定め,公表しなければならない。

保存期間は文書の類型及び事務の性質に応じて設定され,管理通達の別表には1年,3年,5年,10年,20年又は30年のもの,業務に常時利用するため「常用」とされるもの,特定の事務終了後から起算するもの等がある。

さらに,正本又は原本が別に管理されている文書の写し,定型的又は日常的な業務連絡,日程表その他の軽微かつ簡易な文書については,1年未満の保存期間を設定できる。

ただし,最高裁判所が保有する歴史公文書等及び意思決定過程又は事務実績の検証に必要な文書については,原則として1年以上の保存期間を設定する。

したがって,司法行政文書の保存期間を一律に「1年から30年まで」と説明するのは正確でない。

第4 ファイル管理簿,移管及び廃棄

1 ファイル管理簿

保存期間が1年以上の司法行政文書は,原則として相互に密接な関連を有する文書ごとにファイルへまとめて管理する。

ファイル管理簿には,分類,名称,保存期間,保存期間満了日,保存場所,作成年度,作成時及び現在の文書管理者,起算日並びに保存媒体の種別を記載する。

ファイル管理簿はインターネットで公表するとともに,最高裁判所では秘書課,高等裁判所等では総務課に備え置いて一般の閲覧に供される。

最高裁判所のファイル管理簿及び標準文書保存期間基準は,裁判所ウェブサイトで確認できる。

2 保存期間の延長

監査又は検査の対象となっている文書,係属中の訴訟又は不服申立てに必要な文書及び開示の申出があった文書については,管理通達所定の時点まで保存期間を延長しなければならない。

このほか,職務の遂行上必要がある場合には,必要な限度で保存期間を延長できる。

3 移管及び廃棄

公文書管理法14条1項は,最高裁判所が内閣総理大臣と協議して定めるところにより,歴史公文書等の適切な保存のために必要な措置を講ずるものとしている。

同条2項及び4項によれば,内閣総理大臣は,最高裁判所との合意により歴史公文書等の移管を受け,これを国立公文書館へ移管する。

したがって,最高裁判所から国立公文書館へ直接移管する制度ではない。

「内閣総理大臣への司法行政文書の移管に関する事務の取扱いについて」は,最高裁判所が保有するファイルのうち,重要な意思決定,その検討過程,司法行政事務の実績,長期保存文書及び広報資料等から移管対象を選別する手続を定める。

最高裁判所のファイルは,保存期間満了時に,延長又は移管をする場合を除いて廃棄される。

下級裁判所のファイルについて,現行の管理通達は移管ではなく延長又は廃棄を定めており,廃棄には総括文書管理者の承認が必要である。

司法行政文書に関する年度別の公文書等移管計画及び移管対象の類型は,「司法行政文書の国立公文書館への移管」で整理している。

公文書管理法14条及び裁判所からの移管の仕組みについては,右崎正博ほか編・前掲書485頁~487頁及び石塚伸一編著・前掲書42頁~49頁参照。

第5 管理状況の点検,監査及び公表

1 毎年度の点検及び公表

文書管理者は少なくとも毎年度1回点検を行い,監査責任者も少なくとも毎年度1回監査を行う。

高等裁判所,地方裁判所及び家庭裁判所の長は毎年度の管理状況を最高裁判所事務総局秘書課長に報告し,秘書課長は最高裁判所分を含む概要を公表する。

裁判所の「司法行政文書の管理の状況」のページには,令和元年度から令和6年度までの報告書が掲載されており,令和2年度の報告書も確認できる。

2 令和6年度の管理状況

「令和6年度における司法行政文書の管理の状況」によれば,文書管理者1330人の全員が点検を実施し,全85庁で監査が実施された。

もっとも,66庁では,文書数がゼロのファイルが作成されていたこと,共用キャビネットに組織共用性のない個人的な資料が置かれていたこと等の指摘事項があり,改善措置等が講じられた。

また,令和6年度には36件の紛失等事案が判明し,内訳は紛失23件,誤廃棄13件であった。

このうち21件では復元措置が行われている。

紛失等とは別の不適切な文書管理事案1件では懲戒処分及び公表が行われた。

第6 出典

1 法令

① e-Gov法令検索「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」2条2項。

② e-Gov法令検索「公文書等の管理に関する法律」1条,14条。

2 裁判所及び内閣府の資料

① 最高裁判所事務総長通達「司法行政文書の管理について」(平成24年12月6日制定,令和8年3月4日最終改正)。

② 最高裁判所「司法組織・通達等」

③ 裁判所「司法行政文書開示手続」

④ 最高裁判所事務総局秘書課長通達「内閣総理大臣への司法行政文書の移管に関する事務の取扱いについて」(令和6年3月22日最終改正)。

⑤ 裁判所「司法行政文書の管理の状況」

⑥ 裁判所「令和6年度における司法行政文書の管理の状況」

⑦ 内閣府「関係法令・通知等 公文書管理制度」

3 書籍

① 宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説〔第8版〕』(有斐閣,2018年)42頁~48頁。

② 石塚伸一編著『刑事司法記録の保存と閲覧』(日本評論社,2023年)42頁~49頁。

③ 右崎正博・多賀谷一照・田島泰彦・三宅弘編『新基本法コンメンタール 情報公開法・個人情報保護法・公文書管理法』(日本評論社,2013年)25頁~26頁,485頁~487頁。