目次第1 証拠説明書とは1 証拠説明書の意義と根拠条文2 書証と証拠説明書の関係第2 証拠説明書の記載事項1 号証欄2 標目欄3 作成者欄4 作成年月日欄5 原本・写しの別欄6 立証趣旨欄7 記載が望ましいその他の事項第3 立証趣旨の書き方1 立証趣旨に求められること2 具体的な記載例3 避けるべき書き方第4 裁判官から見た証拠説明書1 いつ読まれるか2 控訴審での役割第5 原本・(写し)・写しの区別1 三つの記載の意味2 書証の申出の原則3 写しによる提出が許される場合4 実務上の使い分け第6 証拠の種類別の実務1 電子メール・LINE・SNS2 写真・携行品損害3 動画を記録した媒体(DVD等)4 陳述書5 ウェブページ6 別件の準備書面・上申書・判決書7 USB等の電磁的記録―書証と検証を区別する第7 書証の見せ方の一般的な注意1 書証の該当箇所を特定する2 争点・主要事実・証拠を対応させる3 提出後に証拠の状態を確認する第8 参考書式・関連資料第9 出典1 法令2 裁判例3 文献4 ウェブ資料
民事訴訟で書証(文書などの証拠)を提出するときは,証拠説明書を一緒に提出します。この記事では,証拠説明書の意義と根拠条文,号証・標目・作成者・立証趣旨の各欄の書き方,裁判官が証拠説明書をどう使っているか,「原本」「(写し)」「写し」の使い分け,電子メール・動画・陳述書・ウェブページなど証拠の種類ごとの注意点を,条文と実務資料に基づいて整理します。令和8年5月21日に全面施行された民事訴訟手続のデジタル化によって加わった論点,すなわち,証拠を書証として出すか電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べ(民事訴訟法231条の2)として出すかという経路の区別と,電子証拠説明書については,別稿「mints後の証拠説明書」で扱います。証拠を提出した後の申出,採否,取調べ及び記録確認までを含め,2026年9月16日時点の法令・実務に基づく内容です。
第1 証拠説明書とは
1 証拠説明書の意義と根拠条文
証拠説明書とは,提出する書証について,文書の標目(タイトル),作成者,立証趣旨などを一覧にして裁判所と相手方に示す書面です。根拠は民事訴訟規則137条1項です。同項は,文書を提出して書証の申出をするときは,その写しとともに,「文書の記載から明らかな場合を除き,文書の標目,作成者及び立証趣旨を明らかにした証拠説明書」を提出しなければならない,と定めています。
提出時期は書証の申出をするときまでが原則ですが,やむを得ない事由があるときは裁判長の定める期間内に提出すれば足ります(同項ただし書)。相手方への送付は,裁判所を経由せず直接送る「直送」によります。令和6年最高裁判所規則第14号による改正後の同条2項は,写し及び証拠説明書について直送をしなければならないと定めており,「直送をすることができる」とされていた改正前と異なり,直送によるかどうかを当事者が選択する余地はありません。また,委任を受けた訴訟代理人は,写しについても,民事裁判書類電子提出システム(mints)を使用して画像情報を提出することになります(同条3項・4項,民事訴訟法132条の11第1項1号)。戸籍謄本や登記事項証明書のように,標題から証明すべき事実が明らかな文書は証拠説明書を要しないこともありますが,標題から通常推認される事実と異なる事実を立証する目的であれば,立証趣旨を記載しておくべきです。
2 書証と証拠説明書の関係
書証とは,証拠となるべき文書をいいます。民事訴訟規則55条2項は,訴状には,立証を要する事由につき「証拠となるべき文書の写し(以下『書証の写し』という。)」で重要なものを添付しなければならないと定めており,ここから書証が「証拠となるべき文書」を指すことが読み取れます。もっとも同項は,書証そのものを定義した規定ではなく,訴状の添付書類を定めた規定である点に注意が必要です。訴状に添付する重要書証の写しの提出は,規則137条1項の写しの事前提出を兼ねますが,訴状の記載と併せても文書の趣旨が判然としない場合は,原則どおり証拠説明書の提出が求められます。
第2 証拠説明書の記載事項
1 号証欄
証拠には,提出する当事者に応じて頭文字を付け,提出順に番号を付します。民事訴訟では,原告が提出する書証は「甲」,被告が提出する書証は「乙」を頭に付けるのが通例です(独立当事者参加人などが提出するものには「丙」を用います)。準備書面等の文章中では「甲第1号証」などと表記することがあります。
これに対し,改正民事訴訟法適用事件の証拠説明書の号証欄,mintsの証拠番号欄,証拠データ右上及びファイル名では,裁判所の記載要領に従い,英数字を半角とした3桁の「甲001」を用います。文章中の呼称と入力値を区別し,同じ提出データ群の中で「甲1」「甲001」等を混在させないことが重要です。
番号は1つの文書に1つ付すのが原則ですが,関連する文書には枝番号を用います。準備書面等の文章中では「甲第2号証の1」などと表記する一方,証拠説明書,mints,証拠データ右上及びファイル名では「甲002-1」などと記載します。電子メールや会話記録のように一連のやり取りが多数ある場合も,枝番号で区切ると引用や照合がしやすくなります。号証・枝番・ファイル名の具体的な付け方は「mintsで証拠を提出する方法-甲001・枝番・ファイル名・提出前チェック」で説明しています。
2 標目欄
文書の題名を記載します。「実施許諾契約書」という題名の文書であれば「実施許諾契約書」と記載します。同じ題名の文書が複数あるときは,「令和○年○月○日付け実施許諾契約書」のように作成年月日等で特定します。定まった題名がない文書は,「『○○』と題する文書」「『△△』から始まる文書」など,一応の題名や書き出しによって特定します。
3 作成者欄
作成者は,文書に記載された内容どおりの思想を有する主体を指します。実際に文字を書いた人(清書した事務員など)ではなく,その文書の内容が誰の意思・認識を表しているかで判断します。会社の業務として作成された文書であれば会社名義とすることが多いものの,個々の従業員の思想が問題となる場合はその者を作成者とすべき場面もあります。
作成者が複数になる文書には注意が必要です。引用の多い電子メールやLINEなど,発言者が入り混じる文書では,該当部分ごとに作成者を明らかにする必要があります。作成者が分からない中傷ビラのような文書について,作成者欄に「不明」と記載する例が見られますが,そもそもそのような文書を書証として提出できるか,書証ではなく検証物として取り調べを求めるべきかなど,提出の可否・方法をあらかじめ検討しておくべきです。
偽造文書を提出する場合の作成者欄は,立証の目的によって書き方が変わります。当該文書が偽造されたものであるとして偽造の事実そのものを立証するために提出する場合は,偽造された文書の存在を立証すれば足りるため,作成者欄に偽造者名まで記載する必要はありません。これに対し,偽造者自身の意思・思考内容を立証するために提出する場合(例えば民法117条に基づき無権代理人の責任を追及する場合)は,その文書は偽造者の意思に基づいて真正に作成された文書という位置づけになるため,作成者欄に当該偽造者を具体的に特定して記載する必要があります。
4 作成年月日欄
作成年月日は,突き詰めると曖昧になりやすい欄です。会議録のように,会議の数日後に作成されると,会議の年月日と作成の年月日がずれることがあります。書証の作成日が記載されていない場合や,記載があってもそれが真実の作成日でない疑いがある場合には,証拠説明書でその点を明らかにしておくのが望ましいといえます。第三者が作成したウェブページを参考資料として提出する場合で作成日が分からないときは,印刷日を記載しておけば足ります。
5 原本・写しの別欄
提出するのが原本か写しかを記載します。「原本」「(写し)」「写し」の三つの記載は法的な意味が異なり,実務上とくに重要ですので,第5でまとめて説明します。もっとも,裁判所が公表している証拠説明書の書式は,号証・標目・作成年月日・作成者・立証趣旨・備考という欄の構成であり,原本・写しの別の欄はありません。mintsの下では,標目欄に「原本」「写し」を加えるかどうかによって,その号証を書証として取り調べるのか電磁的記録として取り調べるのかを示す扱いになっています(別稿「mints後の証拠説明書」参照)。
6 立証趣旨欄
(続きを読む...)証拠説明書の書き方―民事訴訟の書証と立証趣旨の実務(AIリライト)