修習給付金に関する所得税更正処分取消請求事件の訴状(令和3年5月11日付)

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    令和3年5月11日に大阪地裁に提出した,修習給付金に関する所得税更正処分取消請求事件の訴状につき,請求の趣旨及び請求の原因を以下のとおり貼り付けています(別紙1及び別紙2は省略しています。)。

請求の趣旨

1 X税務署長が令和2年2月28日付で原告に対してした,平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分を取り消す
2 訴訟費用は,被告の負担とする
との判決を求める。

請求の原因

第1 事案の要旨
1 本件確定申告
    原告は,◯◯◯弁護士会所属の弁護士である(甲3の1)ところ,大阪地裁配属の第71期司法修習生であることに基づき平成30年中に支給された合計155万7000円の基本給付金(甲22参照)(以下「本件給付金」という。)について,司法研修所の公式見解(甲3の2)に従い,その全額が雑所得の総収入金額に該当することを前提に,平成31年2月21日,平成30年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告(以下「本件確定申告」という。)をした。
2 X税務署長に対する更正の請求
    原告は,①主位的主張として,本件給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないこと,及び②予備的主張として,仮に本件給付金が学資金に該当せずに非課税所得でなかったとしても,7万4060円の通勤交通費(以下「本件交通費」という。)のほか,書籍代,名刺代,学習費及び衣服購入費等(以下「本件交通費」とあわせて,「本件費用」という。)は本件給付金に係る雑所得の総収入金額から必要経費として控除すべきところ,本件確定申告に際して雑所得の金額の計算上,本件交通費しか必要経費として控除していなかった点で雑所得の金額が過大になっていることを主張して,X税務署長に対し,平成31年3月20日に更正の請求をした(甲3の3)。
3 X税務署長が行った本件各処分
    X税務署長は,原告に対し,①令和元年12月20日,本件給付金は必要経費のない雑所得であることを主たる理由とする,更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を行い(甲1),さらに,②令和2年2月28日,雑所得の金額の計算上,本件交通費は必要経費に算入できず,また,原告が貸与を受けた修習専念資金(以下「本件資金」という。)に係る利息相当額1万1286円(以下「本件利息相当額」という。)は,経済的利益として雑所得の総収入金額に算入すべきであることを主たる理由とする更正処分(以下「本件更正処分」といい,本件通知処分とあわせて「本件各処分」という。)を行った(甲2)。
4 国税不服審判所長の棄却裁決及び本件訴訟の提起
    原告は,本件各処分の取消しを求めて国税不服審判所長に対して審査請求をしたものの,国税不服審判所長は,令和3年3月24日にこれを棄却する旨の裁決をし(甲39)(以下「本件裁決」という。),原告及び原告訴訟代理人は同年4月9日に本件裁決を知った(甲40参照)。
    そのため,原告は,被告を相手に,本件更正処分の取消しを求めて訴訟を提起した。

第2 本件訴訟の争点等
1 本件訴訟の争点
(1) 本件訴訟の争点は以下の3点である。
① 本件給付金は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。
② 本件給付金が非課税所得に該当しない場合,本件費用は,雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるか否か。
③ 本件利息相当額は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。
(2) ①は主位的主張に関する争点であり,②は予備的主張に関する争点である。
2 ①及び③の争点に関する原告の主張が認められた場合,本件更正処分の全部が取り消されること
    第6で主張するとおり本件給付金を除いて課税関係が問題となる収入は存在しないし,この点については処分行政庁も争っていない(甲39・4頁ないし11頁参照)。
    そのため,①及び③の争点に関する原告の主張が認められた場合,租税法規によって客観的に定まっている税額は0円となる結果,本件更正処分の全部が取り消されることとなる(最高裁平成4年2月18日判決(裁判所HP)参照)。

第3 争点1(本件給付金は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。)に関する原告の主張
1 基本給付金は学資金としての性質を有すること
(1) 基本給付金の内容
ア 修習給付金は,基本給付金,住居給付金及び移転給付金からなるものである(裁判所法67条の2第2項)。
    そして,基本給付金とは,司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用をいい(裁判所法67条の2第3項),修習給付金に関する政府の制度設計等を踏まえて(甲36),月額13万5000円とされている(司法修習生の修習給付金の給付に関する規則(甲16・15頁ないし17頁)2条1項)。
イ ところで,法務省大臣官房司法法制部の説明によれば,基本給付金の月額は,日弁連が第68期司法修習生を対象に実施した修習実態アンケートにおいて,修習期間中につき,生活実費が月額約9.4万円であり,学資金が月額約4.0万円であり,合計の支出が月額約13.5万円であったという司法修習生の生活実態等の事情を総合考慮するなどして決定されたとのことである(甲5末尾1頁及び2頁,並びに甲6)。
    また,基本給付金は,司法修習生の通常の支出のうち,社会保険料,所得税・住民税等,勉強会参加費を除く交際費,奨学金返済費用,教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。),理美容・嗜好品等,自動車等関係費,仕送り金,家具家電・衣服購入費等まで満たすものとは考えられていない(甲5末尾2頁及び3頁参照)。
そのため,基本給付金は,修習期間中の最低限の生活費及び教育費に充てるという趣旨で国から司法修習生に支給される金員であるといえる。
(2) 「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費は学資金に含まれること
ア 学資に充てるために給付される金品(所得税法9条1項15号前段)(以下「学資金」という。)とは,一般に,学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので,かつ,その目的に使用されるものをいうと国税庁は解釈している(甲4)。
    つまり,学術又は技芸を習得するために直接必要な費用だけが学資金であると国税庁が解釈しているわけではない。
イ 平成18年6月2日法律第50号による改正前の民法34条における学術又は技芸を目的とする法人として私立学校が想定されていた(甲33・1頁)ことからすれば,学校教育は当然に「学術又は技芸の習得」に含まれるといえる。
    そして,甲南大学法科大学院の奨学給付金(甲7),及び日本学生支援機構の給付型奨学金(大学等における修学の支援に関する法律4条及び5条,並びに日本学生支援機構法17条の2)(甲8)は,学術又は技芸の習得に専念する目的で使用される生活費を支給するものであり,かつ,学資金として非課税所得であるとされている(日本学生支援機構の給付型奨学金につき甲31の4)。
ウ 日本学生支援機構の給付型奨学金の場合,学術又は技芸を習得するための資金に充てるために支給する旨の規定は存在しないどころか,その支給目的は「我が国における急速な少子化の進展への対処に寄与すること」であることが明記されている(大学等における修学の支援に関する法律1条),
それにもかかわらず,国税庁回答では,最大でも月額10万円を超えない給付型奨学金は所得税法上の「学資金」に該当し,個別法に非課税措置の規定を置かなくても所得税法上非課税となるという文部科学省の見解が承認されている(甲31の4)。
そのため,とある給付金について学術又は技芸を習得するための資金に充てるために支給する旨の規定が存在しないことと,当該給付金が非課税所得であるかどうかとは関係がないといえる。
エ そのため,このような非課税所得に関する事例とのバランスからすれば,「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費は学資金に含まれるといえる。
(3) 司法修習は「学術又は技芸の習得」に当たること
ア 職業訓練は学校教育との重複を避ける必要がある(職業能力開発促進法3条の2第2項)のに対し,司法修習は法科大学院教育との有機的連携の下に行われるものであって(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律2条3号),法科大学院教育との重複を避ける必要があるとはされていない。
イ 法科大学院の授業科目のうちの法律実務基礎科目は,法曹としての技能及び責任その他の法律実務に関する基礎的な分野の科目である(専門職大学院設置基準20条の3第1項2号)から,法科大学院教育は職業訓練としての要素を有しているといえる。
ウ 司法修習生に品位を辱める行状,修習の態度の著しい不良その他これらに準ずる事由がある場合,罷免又は修習の停止を受けることとなる(裁判所法68条2項,及び司法修習生に関する規則17条2項)。
    そして,法務省大臣官房司法法制部は,司法修習生の「罷免」は「退学」に対応し,「修習の停止」(司法修習生の身分は保有するが,一定期間修習をさせない処分)は「停学」に対応すると説明している(甲5末尾10頁及び11頁)ことからしても,司法修習生の身分は学生に類似するところがあるといえる。
エ そのため,司法修習は,学生に類似するところがある司法修習生に対し,職業訓練としての要素を有しつつも「学術又は技芸の習得」に当然に該当する法科大学院教育との有機的連携の下に行われるものであることからすれば,「学術又は技芸の習得」に当たるといえる。
(4) 仮に司法修習が「学術又は技芸の習得」に当たらなかったとしても,それだけでは,基本給付金が「学資金」に当たらないとはいえないこと
ア 貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令(平成24年3月28日政令第71号)(甲34の1参照)による改正後の,貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成19年11月7日政令第329号)附則20条2項2号イは「その業として行う貸付けが、学生、生徒、児童又は幼児に対する学資としての資金の貸付けであること。」と定めている。
    そして,金融庁としては,同号イの解釈として,「学生」には,航空大学校や海技大学校のような特別の法律に基づいて設立された法人において,人材養成のための教育訓練を受けている者も含まれるし,「学資としての資金」の範疇には,幼稚園や保育園の児童又は幼児の保育料等も含まれると考えている(甲34の2・質問番号12番及び14番)。
イ 東京都認証保育所の保育料助成金は,その名称からすれば,「学術又は技芸」を習得するための資金でないにもかかわらず,所得税法9条1項15号前段に基づき非課税所得としての取扱いを受けている(甲32の1)。
    また,当該取扱いについて,東京国税局と東京都との間で授受した文書は存在しない(甲32の2)ことからすれば,協議するまでもなく非課税所得であると判断されたのかも知れない。
ウ そのため,支給対象が学校教育法上の学校の「学生」ではなくても学資金に含まれるし,想定使途が児童又は幼児の保育という「学術又は技芸の習得」とは明らかに異なるものであっても学資金に含まれるという取扱いがされているといえる。
    したがって,仮に司法修習が「学術又は技芸の習得」に当たらなかったとしても,それだけでは,基本給付金が「学資金」に当たらないとはいえない。
(5) 小括
    以上より,学費の負担を前提としていない司法修習生に対して最低限の生活費及び教育費として支給される基本給付金は,学資金としての性質を有するといえる。

2 基本給付金について金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないこと
(1) 基本給付金には課税所得となるべき担税力がないこと
ア 所得税法は,23条ないし35条において,所得をその源泉ないし性質によって10種類に分類し,それぞれについて所得金額の計算方法を定めているところ,これらの計算方法は,個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨に出たものと解される(最高裁平成24年1月13日判決(甲55の2・4頁))から,担税力のないものが課税所得となることはないといえる。
イ 司法研修所がある埼玉県の,平成29年10月1日改定の最低賃金である時給871円(甲9)で1週間当たり40時間(法定労働時間であることにつき労働基準法32条1項)働いた場合,871円×40時間×30日/7日=14万9314円となるから,月額13万5000円の基本給付金は埼玉県の最低賃金を下回る金額である。
    また,基本給付金の13万5000円という金額は,住居費の支出を伴わない第68期司法修習生の平均的な生活費(甲5末尾4頁)等を参考に設定された金額である。
    そして,司法修習生は原則として兼業を禁止されている(司法修習生に関する規則2条)関係で,住居費を除く生活費に使える収入は基本給付金だけであるから,基本給付金には課税所得となるべき担税力がないといえる。
(2) 月額17万円という修習給付金の金額規模は特に大きいわけではないこと
    修習資金の貸与を受けなかった新65期ないし第70期司法修習生が家賃を払って一人暮らしをしていた場合,両親等の扶養義務者から生活費及び教育費という趣旨で月額17万円以上の仕送りを受けていた事案がごく普通にあったと思われる。
    そして,それらの仕送りについて,相続税法21条の3第1項2号の「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」を超えるとして贈与税が課税された事例があるとは思えないことからしても,3万5000円の住居給付金をあわせた月額17万円という修習給付金の金額規模は,「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」(所得税法9条1項15号後段所定の非課税所得)と比べて特に大きいわけではない。
(3) 4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税所得であると思われること
    平成28年度税制改正において所得税法9条1項15号前段が改正され,通常の給与に加算して受ける学資金が非課税とされた結果,医学生等に対する修学等資金の債務免除益は,通常の給与に加算して受ける学資金に該当するものとしてすべて非課税となった(甲10参照)。
    ところで,兵庫県養成医師制度を利用して兵庫医科大学に進学した場合,6年間で合計4480万円(うち,生活費相当額は130万円の6年分となる780万円)の貸付けを受けられる(甲11「貸与金額:授業料等相当額+α」及び甲56参照)し,大学を卒業後,医師として9年間,兵庫県が指定する兵庫県内の医師不足地域等の医療機関で勤務した場合,貸与を受けた修学資金の返還を免除される(甲11及び甲56)。
    そのため,780万円の生活費を含む4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税所得であると思われる。
(4) 小括
    したがって,基本給付金は,金額規模等(甲5末尾6頁参照)を理由に学資金から除外される理由はないといえる。

3 職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,基本給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反すること
(1) 職業訓練受講給付金及び基本給付金の共通点
    職業訓練受講給付金は,雇用保険を受給できない求職者がハローワークの支援指示により公的職業訓練を受講し,訓練期間中に訓練を受けやすくするための給付であり(甲14),租税その他の公課を課されない非課税所得である(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律10条)。
    また,司法修習は,司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり,高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須な臨床教育課程として,実際の法律実務活動の中で実施されるものである(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁))。
    そのため,職業訓練受講給付金及び基本給付金は,職業訓練期間中の生活を支援するという給付目的達成のために必要な最低限の給付である点で共通しているといえる(基本給付金だけでは司法修習生の通常の支出を賄えないことにつき甲5末尾2頁及び3頁参照)。
(2) 基本給付金は,職業訓練受講給付金以上に非課税所得とすべき必要性及び許容性があること
ア 非課税所得とすべき必要性があること
    職業訓練受講給付金(平成21年当時の民主党のマニフェストにおいて,「求職者支援制度」の手当として記載されていたもの)が非課税所得とされた理由は,受給者の最低生活を保障するものであり,公課等を課して給付を減額することは,国の国民に対する最低生活保障の原則に照らして矛盾すると考えられたためであって(甲13),職業訓練の推進という政策的背景が理由とされているわけではない。
    そして,司法修習生の場合,その修習期間中,その修習に専念しなければならないという修習専念義務を負っていて(裁判所法67条2項),原則として兼業を禁止されている(司法修習生に関する規則2条)し,破産手続開始決定を受けたことは罷免事由とされている(司法修習生に関する規則17条1項4号)のであるから,職業訓練期間中の生活を支援する必要性は職業訓練受講生の場合よりも大きいといえる。
    そのため,基本給付金は,職業訓練受講給付金以上に非課税所得とすべき必要性があるといえる。
イ 非課税所得とすべき許容性があること
    職業訓練受講給付金は,支給対象が学校教育との重複を避けるべきとされている職業訓練の受講生であり,想定使途が生活実費だけである(甲13)点で,基本給付金よりも学資金としての性格が明らかに弱いといえる。
    そのため,基本給付金は,職業訓練受講給付金以上に非課税所得とすべき許容性があるといえる。
(3) 小括
    したがって,職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,司法試験に合格しない限り採用されない司法修習生について,司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である基本給付金が非課税所得でないのは合理的理由のない差別であるから,憲法14条1項に違反するといえる。

4 本件裁決の判断理由に対する反論
(1) 文化功労者年金の取扱いとの整合性を考慮すべきであること
    文化功労者に対して終身で支給する文化功労者年金(文化功労者年金法3条1項)の場合,文化功労者という地位に基づいて,個々の文化功労者の申請によることなく,また,その給付を受ける個々の文化功労者が実際に文化功労者年金を学問の修業のために必要としているか否かにかかわらず,一方的,かつ,一律に,定額(年額350万円)が給付されるものである。
    しかし,このような事情があるにもかかわらず,文化功労者年金は公益(文化の向上,学術の奨励政策)を目的として非課税所得とされている(所得税法9条1項13号,及び甲41左上482頁)ことからすれば,同様の事情があることを理由として,修習給付金が公益(学術奨励)を目的として非課税所得とされている学資金(甲41左上280頁及び482頁)に該当しないと解することはできないといえる。
    そのため,このような文化功労者年金の取扱いとの整合性を考慮すべきであるといえる。
(2) 修習給付金案内の記載は,基本給付金の税務上の取扱いを決定する理由とはならないこと
ア 71期司法修習生向けの修習給付金案内(甲3の1参照)は,司法研修所事務局総務課・経理課が,文書を作成するほどの複雑な内容の検討をすることもなく決定した(甲42参照),71期司法修習生に対して周知すべき内容を記載したものにすぎない(甲43)。
    そして,移転給付金に関するものではあるが,司法修習生に対する給付の税務上の取扱いについては,最終的には税務当局が判断すべき事項であると最高裁判所事務総長は考えている(甲44)。
    また,修習給付金が非課税所得又は雑所得に該当するかどうかに関する法務省と国税庁の協議文書が存在するわけでもない(甲45)。
    そのため,修習給付金案内の記載をもって,基本給付金の給付者である国の最終的な考えが示されたとはいえない。
イ 修習給付金の支出者は最高裁判所である(甲52・3頁参照)し,最高裁判所における会計法13条1項の支出負担行為担当官は最高裁判所事務総局経理局長である(裁判所会計事務規程別表第二・二(甲47・14頁及び15頁))ところ,修習給付金案内の作成者は司法研修所であって,最高裁判所事務総局経理局長ではない。
    そのため,修習給付金案内は,そもそも基本給付金の給付者である国が作成したものであるとはいえない。
ウ 修習給付金案内は,司法修習生としての採用内定通知の約1週間後に,他の資料と一緒に司法研修所から一方的に普通郵便で送付される資料であって(甲48),司法修習予定者としては,税務上の取扱いに関する司法研修所の認識を通告されただけである。
    そして,修習給付金案内には,「司法研修所及び実務庁会においては,問合せに答えることはできません。」とか,「詳細は,税務署に問い合わせるなどして確認して下さい。」と記載されている(甲3の2)ことからすれば,司法修習予定者又は司法修習生が自分で税務署に問い合わせた場合,税務上の取扱いに関して修習給付金案内の記載とは異なる理解に至る可能性もあったといえる。
エ したがって,修習給付金案内の記載は,基本給付金の税務上の取扱いを決定する理由とはならないといえる。
(3) 基本給付金が「学資として支給する資金」と明記されていないことは,学資金への該当性を否定する理由とはならないこと
    経済的理由により修学に困難があるものを対象とする日本学生支援機構の給付型奨学金は,「学術又は技芸の習得に専念する目的で使用される生活費」という意味での「学資」として支給される資金である(甲31の4)ことが日本学生支援機構法17条の2第1項に明記されているに過ぎない。
    そのため,基本給付金が「学資として支給する資金」と明記されていないことは,学資金への該当性を否定する理由とはならないといえる。
(4) 基本給付金が一律に支給されていることは,学資金への該当性を否定する理由とはならないこと
    所得税法9条1項15号前段が学資金を非課税所得としているのは,あくまでも学術奨励という公益目的のためであって,所得税法9条1項15号後段と異なり受給者の経済状態への配慮を目的としたものではない(甲41左上482頁参照)ことからすれば,受給者が経済的理由により修学に困難がある者に限定されているかどうかは,学資金への該当性を左右する事情ではないといえる。
    実際,兵庫県養成医師制度に基づき貸与される修学資金の場合,経済的理由により修学が困難であることは支給条件とされていない(甲11)にもかかわらず,その債務免除益は学資金に該当すると思われる。
    そのため,基本給付金が個々の司法修習生の経済的状況を考慮することなく一律に支給されていることは,学資金への該当性を否定する理由とはならないといえる。
(5) 基本給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかった理由が異なること
    法務省が考えるところの,修習給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかった理由が分かる文書は,衆議院法務委員会における国会答弁資料,及び「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱いについて」(甲5・6頁ないし9頁)だけである(甲46の1)。
    しかし,これらの資料には,修習給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかった理由は記載されていない(甲46の2参照)。
    そのため,職業訓練受講給付金とはその趣旨や目的,対象等を異にすることを理由として,基本給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかったというわけでは全くない。
(6) 小括
    したがって,本件裁決の判断理由(甲39・13頁ないし16頁)は失当であるといえる。

5 結論
    以上より,本件給付金は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるといえる。

第4 争点2(本件給付金が非課税所得に該当しない場合,本件費用は,雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるか否か。)に関する原告の主張
1 雑所得としての基本給付金について必要経費が認められること
(1) 司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は当然に存在すること
ア 司法修習生は修習専念義務を負っている(裁判所法67条2項)し,高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努める義務を負っている(司法修習生に関する規則4条)。
    そして,成績不良であったり,正当な理由なく欠席したりするなど,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由がある場合,司法修習生を罷免されたり,修習の停止を命じられたりすることとなる(裁判所法68条2項,司法修習生に関する規則17条及び18条,並びに甲5・10頁及び11頁)。
イ 司法修習生の罷免理由は公にされていないし,司法修習生のどのような行為が非違行為に該当するかについても公にされていない(甲17)ことからすれば,司法修習生という立場が安定しているとはいえない。
ウ 裁判所法上,法曹に必要な能力を身に付けるために修習を行うべき者と位置づけられている司法修習生の法的地位は,平成16年の裁判所法改正により給費制から貸与制に移行しても何ら変更されていない(甲50・2頁)。
    そして,給費制時代の司法修習生については給与所得控除という形で必要経費が認められていたこととのバランスからすれば,法曹人材確保の強化を図るために導入された修習給付金(甲6)時代の司法修習生についても当然に必要経費が認められるといえる。
エ 営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分される(最高裁平成29年12月15日判決(甲15))。
    そして,営利を目的とする継続的行為について必要経費が一切存在しないというのはそもそも想定できない。
オ したがって,司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は当然に存在するといえる。
(2) 基本給付金について必要経費の控除を一切認めないことは憲法14条1項に違反すること
ア 最高裁大法廷昭和60年3月27日判決の判示内容
    サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決(甲18)は,給与所得者において自ら負担する必要経費の額が一般に旧所得税法所定の給与所得控除の額を明らかに上回るものと認めることは困難であること等を理由として,給与所得者について必要経費の実額控除を認めず,給与所得控除による概算控除しか認めないことは,必要経費の実額控除が認められている事業所得者等との関係において憲法14条1項に違反しないと判示している。
イ 農業次世代人材投資資金には必要経費が存在すること
    農業次世代人材投資資金(かつての青年就農給付金)は,生活費を支給する国の他の事業と重複受給できない点で(甲19の1・2頁及び3頁)生活費に充てることが予定されている。
    ところで,農業次世代人材投資資金(準備型)の場合,道府県の農業大学校等の研修機関等における研修(甲19の1・2頁)の対価として支給されるわけではないし,交付要件を充足するためには研修機関等で概ね1年以上研修する必要がある(甲19の1・2頁)。
    そして,自らの意思で農業者となるべく就農前の研修を選択したことに伴う交通費や授業料など研修に要した費用は必要経費とされている(甲19の2)。
ウ 前述したとおり司法修習生において自ら負担する必要経費が存在する。
    それにもかかわらず,基本給付金について必要経費の控除を一切認めないことは,必要経費の概算控除が認められている給与所得者,及び必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者(特に,農業次世代人材投資資金(準備型)の受給者)との関係において合理的理由のない差別であるから,憲法14条1項に違反するといえる。
(3) 小括
    したがって,雑所得としての基本給付金について必要経費が認められるといえる。

2 本件裁決の判断理由に対する反論
(1) 一般対応の必要経費に該当するかどうかを判断する際の基準が異なること
ア 雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,①雑所得を得るため直接に要した費用の額,及び②雑所得を生ずべき業務について生じた費用(②につき,以下「一般対応の必要経費」という。)の額である(所得税法37条1項)。
    ところで,所得税法施行令96条1項は,家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて,経費の主たる部分が「事業所得を・・・生ずべき業務の遂行上必要」であることを要すると規定している上,ある支出が業務の遂行上必要なものであれば,その業務と関連するものでもあるといえる。
    そのため,ある支出が一般対応の必要経費に該当するというためには,雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であれば足りるといえる(事業所得に関する東京高裁平成24年9月19日判決(甲49の1)参照。なお,当該判決に対する国の上告受理申立ては,最高裁平成26年1月17日決定により不受理となったことにつき甲49の2・3頁)
イ そして,一般対応の必要経費に該当するかどうかを判断する際,雑所得が発生する制度の趣旨目的等を考慮する必要は全くないのであって,客観的に見て,当該費用が雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であるかどうかを判断すれば足りるといえる。
(2) 司法修習生が基本給付金を受けるために司法修習に従事するという関係にあるわけではないことは,必要経費の存在を否定する理由とはならないこと
ア 大阪国税局が作成した「司法修習生が受ける修習給付金に係る課税関係について」(甲16)によれば,司法修習生がその修習に伴い住所又は居所を移転するための費用は必要経費に該当することを前提として,移転費用の実費相当額の支給である移転給付金は収入と経費が一致するために課税対象とはならないとされている。
    また,司法修習生がその修習に伴い旅行するための費用は必要経費に該当することを前提として,交通費等の実費相当額の支給である旅費は収入と経費が一致するために課税対象とはならないとされている。
    つまり,司法修習生が移転給付金及び旅費を受けるために司法修習に従事するという関係にあるわけではないにもかかわらず,移転費用及び交通費等については当然に必要経費とされている。
イ 農業次世代人材投資資金(準備型)の場合,同資金を得るために道府県の農業大学校等の研修機関等における研修を受けるという関係にあるわけではないにもかかわらず,交通費や授業料など研修に要した費用については必要経費として認められている。
ウ そのため,司法修習生が基本給付金を受けるために司法修習に従事するという関係にあるわけではないことは,必要経費の存在を否定する理由とはならない。
(3) 小括
    したがって,本件裁決の判断理由(甲39・16頁ないし18頁)は失当であるといえる。

3 本件確定申告で申告した雑所得の金額は過大であること
(1) 本件交通費は必要経費であること
ア 実務修習に出席するための通勤交通費について
(ア) 司法修習生は,埼玉県和光市の司法研修所で実施される導入修習が終了した後,実務修習地における分野別実務修習及び選択型実務修習,並びに司法研修所で実施される集合修習を履修することとされている。
    そして,分野別実務修習は,民事裁判修習,刑事裁判修習,検察修習及び弁護修習からなるものであり(ただし,司法修習生ごとに順番は異なる。),それぞれ,配属地における裁判所,検察庁及び弁護修習先の法律事務所に赴いた上で実施される臨床教育過程である。
    また,選択型実務修習は,分野別実務修習において弁護修習をした法律事務所を拠点(ホームグラウンド)とした上で,裁判所,検察庁及び弁護士会で提供される個別修習プログラム等を自ら選択して履修することとされている。
(イ) 司法修習は,最高裁判所がその基本的内容を定め,司法修習生が司法修習を終了しないと法曹資格が与えられないものであるから,司法修習生は,修習過程で用意されているカリキュラムに出席し,その教育内容を全て履修することが本来要請されている(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁及び9頁))のであって,当該カリキュラムへの出席は修習専念義務の中核をなすものである。
    そのため,裁判所,検察庁及び弁護修習先の法律事務所並びに選択型実務修習の実施場所に出席するために必要となる通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
イ 二回試験の試験会場に出席するための通勤交通費について
    二回試験(正式名称は「司法修習生考試」である。)は裁判所法67条1項に基づく試験であって,二回試験に合格しない限り司法修習を終了できないため,司法修習生が必ず受験する必要がある試験である。
    そのため,二回試験の試験会場である新梅田研修センター(甲21・1頁)に出席するための通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
(2) 書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は必要経費であること
    原告は,「高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない」司法修習生(司法修習生に関する規則4条)であった。
    そのため,法律書を購入し,これを熟読することで法律に関する理論と実務を身に付ける必要があった。
    また,実務法曹及び法科大学院同窓生との勉強会を含む交流,並びに社会人としての司法修習生にふさわしい服装を心がけることを通じて,弁護士にふさわしい品位と能力を備える必要があった。
    そのため,法律書購入に関する書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は,雑所得である基本給付金を生ずべき業務の遂行上必要な費用であるといえる。
(3) 原告の雑所得の金額
    前述した事情を考慮すれば,別紙1「原告の収支の一覧表」にあるとおり,本件費用は38万8394円であるといえる。
    そのため,仮に本件給付金が非課税所得でないとしても,必要経費として控除していないものがある点で,本件確定申告で申告した雑所得の金額148万2940円(甲3)は過大であって,原告の雑所得の金額は116万8606円であるといえる。

4 結論
    以上より,本件給付金が非課税所得に該当しない場合,本件費用は,雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるといえる。

第5 争点3(本件利息相当額は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。)に関する原告の主張
1 修習専念資金の内容
(1) 修習専念資金とは,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう(裁判所法67条の3第1項)。
(2) 原告の場合,司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則3条1項に基づき,毎月10万円を貸与されていた(甲23)。

2 本件利息相当額は学資金として非課税所得であること
    修習専念資金は,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用を補填する趣旨を有する金員である(甲5末尾2頁及び3頁参照)から,修習給付金と同様,「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費であることに変わりはない。
    そのため,修習専念資金は,修習給付金と同様の性格を有するといえるから,修習専念資金が無利息であること(裁判所法67条の3第1項)に起因する,通常の利率により計算した利息の額に相当する利益(甲16・4頁)としての本件利息相当額は学資金として非課税所得であるといえる。

3 本件利息相当額だけが学資金に該当する場合があること
    本件給付金は合計155万7000円であるのに対し,本件利息相当額は合計1万1286円であって(甲2・4頁),両者の金額規模は全く異なる。
    また,司法修習生が成績不良等により罷免された場合,貸与を受けた修習専念資金の全部を直ちに返還しなければならない(司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則(甲51)8条2項1号・6条2号)ことから,修習専念資金に関しては,給付型奨学金の返還を定める日本学生支援機構法17条の3と類似の規定が存在するといえる。
    そのため,本件給付金が学資金に該当しないと判断された場合であっても,これとは別に,本件利息相当額だけが学資金に該当する場合があるといえる。

4 結論
    以上より,本件利息相当額は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるといえる。

第6 本件給付金を除いて課税関係が問題となる収入は存在しないこと
1 司法修習生の地位に基づく本件給付金以外の収入は,課税対象とはならない旅費及び移転給付金だけであること
(1) 司法修習生の地位に基づく平成30年分の入金は別紙2「原告の預金通帳(甲24)記載の入金の中身」のとおりであるところ,別紙2の番号に即して以下のとおり入金内容を補足説明する。
① 別紙2・6番の入金は,実費としての交通費だけである。
② 別紙2・3番,8番及び23番の入金は,移転距離に応じた定額で支給される移転給付金(甲16・16頁及び17頁)である点で実費精算されていないものの,移転費用の実費相当額である(甲16・2頁)。
③ 別紙2・10番及び27番の入金は,実費としての交通費の他,日当が含まれている点で実費精算されていないものの,旅行中の昼食代等を含む実費相当額である(甲16・2頁)。
    なお,導入修習及び集合修習への参加に際して,管内出張計画書(甲38)のような書類を作成することはない。
④ 別紙2・26番の入金は,交通費や日当に代えて長期間の研修等の目的のために支給される日額旅費である点で実費精算されていないものの,実費相当額である(甲16・2頁)。
(2) したがって,大阪国税不服審判所神戸支所は,原告に対し,令和2年8月25日付の回答書の提出について(質問事項)(甲52)において,原告の預金通帳(甲24)に入金されたお金の内容を質問してきたとはいえ,司法修習生の地位に基づく本件給付金以外の収入は,課税対象とはならない実費又は実費相当額としての旅費及び移転給付金(甲16・1頁及び2頁)だけである。

2 本件費用に直接対応した収入は存在しないこと
(1) 本件交通費について
    実務修習中において自宅と修習場所を往復するための通所費は,新65期以降の司法修習生に対しては支給されていない(甲37)。
    また,二回試験の試験会場である新梅田研修センターまでの交通費は,当初から司法修習生に対して支給されたことはない(甲37参照)。
    そのため,本件交通費は本件給付金又は本件資金から支払うべきものとされていたのであって,交通費等の名目で支払われたことはないから,本件交通費に直接対応した収入は存在しない。
(2) 本件交通費以外の本件費用について
    本件交通費以外の本件費用も本件給付金又は本件資金から支払うべきものとされていた(甲5末尾1頁ないし3頁,及び甲6)から,本件交通費以外の本件費用に直接対応した収入は存在しない。

3 結論
    以上より,本件給付金を除いて課税関係が問題となる収入は存在しないといえる。

第7 結語
1 本件給付金は非課税所得であるし,少なくとも本件費用は雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるし,本件利息相当額は非課税所得であるから,本件更正処分は違法である。
2 更正の請求の棄却処分(国税通則法23条4項)と増額更正(国税通則法24条)が相前後して行われた場合,更正の請求の棄却処分の取消請求は訴えの利益を欠いて却下される(甲54)。
    そのため,本件通知処分の取消しを求める訴訟は提起できない。
3 よって,請求の趣旨記載の判決を求める。


*1 更正の請求の棄却処分(国税通則法23条4項)と増額更正(国税通則法24条)が相前後して行われた場合,更正の請求の棄却処分の取消請求は訴えの利益を欠いて却下されます(東京高裁平成4年6月29日判決,及び大阪高裁平成8年8月29日判決(いずれも判例秘書に掲載)参照)。
*2 同種の理由で,同一の税務署長から同一の納税者が,複数年分にわたり課税処分を受けた場合,①事実に関する争点が相当程度共通し,かつ,②各請求の基礎となる社会的事実が同一ないし密接に関連する場合,行政事件訴訟法13条6号の関連請求に該当しますから,すべての年分を合計した上で訴額を算定し,これをベースに印紙額を算出する方式によることが可能となります(「税務訴訟の法律実務[第2版]」270頁及び271頁のほか,最高裁平成17年3月29日決定参照)。
*3 更正処分取消訴訟の訴額は,処分によって納付を命ぜられた税額(すでに異議決定又は審査裁決で一部取り消されている場合は一部取り消された後の額) と原告主張の税額との差額ですから,修習給付金に関する所得税更正処分取消請求事件の訴額は10万円未満であり,印紙代は1000円でした。
*4 仮に更正処分の取消訴訟と国税不服審判所の裁決取消訴訟を一緒に提起した場合,両者の訴えで主張する利益は各請求について共通となる(最高裁令和3年4月27日決定参照)結果,訴額の合算はしないと思います。
*5 以下の資料を掲載しています。
・ 課税関係訴訟事務処理要領(平成20年6月23日付の国税庁の事務運営指針(平成26年6月30日最終改正))
・ 国税庁課税部審理室の引継資料(令和元年7月頃の文書)
*6 以下の記事も参照してください。
(公式見解等)
 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
・ 修習給付金は必要経費のない雑所得であるとした国税不服審判所令和3年3月24日裁決
 修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解
・ 司法修習生に対する旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
 司法修習生の旅費に関する文書
 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,衆議院法務委員会における国会答弁資料
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,参議院法務委員会における国会答弁資料
 司法修習終了翌年の確定申告
(公式見解に反対する見解)
・ 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
→ 修習給付金は学資金(所得税法9条1項15号)に該当する可能性があります。
・ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等
 修習給付金の課税関係に関する審査請求の理由書
(その他)
 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明
→ 現行65期までの司法修習生に対する給費は,職務の対価ではなく,修習に専念させるための配慮に過ぎないとのことです。
 歴代の国税不服審判所長
 令和元年7月採用の国税審判官の研修資料
 国税庁長官及び東京国税局長の事務引継資料(令和元年7月頃の文書)

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