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米国チャプター11の§363売却とは-日本企業が売掛金・契約承継・後継者責任を確認する方法(AI作成)

米国チャプター11で取引先の事業が第三者へ売却されても,日本企業の売掛金,契約及び請求権が一括して買主へ移るわけではない。
最初に確認すべきものは,売却を伝えるニュースではなく,売主・買主の法人名,Asset Purchase Agreement(APA),Sale Order,Assumed Contractsの一覧,Assumed Liabilitiesの定義及び各種通知である。

本記事では,日本企業が§363売却の場面で,誰に売掛金を請求するか,契約が買主へ承継されるか,後継者責任を主張できるか,いつまでに異議又は上訴対応を要するかを,公開された裁判記録から確認する方法を説明する。
本記事は,2026年9月6日現在の米国連邦倒産法及び連邦倒産手続規則を前提とし,具体的な事件では係属裁判所のローカルルール,最新の命令,適用される巡回区判例及び契約準拠法を別途確認する必要がある。

第1 §363売却を知ったときの結論

1 売掛金・契約・責任を別々に確認する

§363売却は資産の売却であり,法人そのものの株式取得とは異なる。
そのため,買主が取得する資産,承継する契約及び引き受ける債務は,APAとSale Orderで画されるのが基本である。

日本企業が確認する対象は,①日本企業が米国債務者に対して有する申立前の売掛金,②米国債務者が日本企業に対して有する売掛金又は支払請求権,③継続中の供給契約・販売店契約・ライセンス等,④製品事故その他の後継者責任に関する請求の四つである。
同じ「売掛金」でも債権者がどちらかによって結論が逆になるため,債権の向きを明記して整理する必要がある。

一般的な申立直後の対応は,取引先が米国チャプター11を申し立てた場合の初動対応-自動停止・債権届出・20日商品・重要取引先(AI作成)にまとめている。
また,日本の民事再生との制度上の違いは,米国のチャプター11と日本の民事再生手続の徹底比較(AI作成)を参照されたい。

2 最初に固定する事件座標

売却文書を読む前に,①裁判所名,②事件番号,③申立法人の正式名称,④自社契約の相手方,⑤売却対象法人,⑥買主の正式名称及び⑦売却完了日を一枚にまとめる。
企業グループの一部だけが申立てをし,又は一部の事業だけが売却されることがあるため,ブランド名だけで債務者又は買主を特定してはならない。

次に,裁判所のDocketから,①Bidding Procedures Motion,②Bidding Procedures Order,③Sale Motion,④APAとそのSchedules,⑤Sale Notice,⑥Cure Notice又はAssumption and Assignment Notice,⑦Sale Order及び⑧Closing Noticeを時系列に並べる。
申立書又はプレスリリースは入口にすぎず,最終的な権利関係は,修正後のAPA,最終の契約一覧,Sale Order及び実際のClosingの有無まで確認して判断する。

第2 §363売却の仕組みと文書の読み方

1 通常の事業外の売却と裁判所の承認

米国連邦倒産法§363(b)(1)は,通常の事業過程外で財団財産を使用し,売却し,又は賃貸する場合,通知と審理を要求している。
チャプター11では,債務者が再建計画の成立前に主要事業を売却する手段として用いられることがある。

実務では,債務者がストーキング・ホースと呼ばれる最初の買主候補とのAPAを示し,入札資格,入札期限,オークション,違約金等を定めるBidding Procedures Orderを先に求めることが多い。
入札手続後に,裁判所は落札者,対価,売却対象及びSale Orderの条項を審査するため,Bidding Procedures Orderだけを見て最終結果と考えてはならない。

2 APAとSale Orderは役割が異なる

APAは売主と買主の契約であり,Purchased Assets,Excluded Assets,Assumed Liabilities,Excluded Liabilities,Assumed Contracts,Closing条件等を定める。
他方,Sale Orderは裁判所の命令であり,売却の承認,free and clearの範囲,通知の適否,買主のgood faith,後継者責任に関する条項,契約承継等を定める。

したがって,APAに責任を引き受けない旨があるだけで第三者の請求権が消えるとは限らず,Sale Orderの文言だけで買主の契約上の引受範囲が確定するとも限らない。
両文書及びSchedulesを相互参照し,後日の修正,補足書面又はClosing時の選択変更がないかを確認する必要がある。

3 free and clearの五つの条件

米国連邦倒産法§363(f)は,財団財産を他者のinterestから解放して売却できる場合として,①適用される倒産法以外の法律が認める場合,②権利者が同意する場合,③担保権等の価値を上回る価格で売却する場合,④権利が真正な争いの対象である場合,⑤権利者に金銭給付の受領を強制できる手続がある場合を定めている。
いずれの条件に依拠するかは,Sale MotionとSale Orderで確認する。

権利者は,同条(e)に基づきadequate protectionを求めることができる。
そのため,free and clearは無条件に権利を消す合言葉ではなく,対象となる財産,interest,法定要件,通知,異議及び命令文言の組合せとして読む必要がある。

第3 売掛金は誰が支払うか

1 日本企業が債務者に対して有する売掛金

日本企業が米国債務者に対して有する申立前の売掛金は,原則として債務者に対するclaimであり,債務者が事業資産を売っただけで買主の債務へ自動的に変わるものではない。
買主がAPAのAssumed Liabilitiesとして当該債務を特定して引き受けたか,Sale Orderがその引受けをどのように扱うかを確認し,引受けがなければProof of Claimその他の債権回収手続を別に進める。

請求書の宛先,契約相手方,納品日,検収日,申立日及び売却完了日を照合し,申立前と申立後を分ける。
申立後の取引であっても,買主への承継前に債務者との間で発生した債権と,Closing後に買主との間で発生した債権とを混同してはならない。

2 債務者が日本企業に対して有する売掛金

反対に,米国債務者が日本企業に対して有する売掛金又は支払請求権は,米国連邦倒産法§541(a)(1)の財団財産に含まれ,Purchased Assetsとして買主へ譲渡されることがある。
この場合,日本企業は,旧振込先,新振込先及び支払日だけでなく,売掛金がPurchased Assetsに含まれるか,Closingが完了したか,債権譲渡通知の発信者に権限があるかを確認する。

支払先変更のメールだけで送金先を変えると,詐欺又は二重払いの危険がある。
裁判記録上のClosing Notice,売主又は買主の正式な通知,既知の連絡先を用いた折返し確認及びAPAの対象範囲を突き合わせてから支払うべきである。

3 売掛金確認のための対照表

売掛金ごとに,①請求書番号,②契約当事者,③債権者,④債務者,⑤発生日,⑥申立前又は申立後,⑦Closing前又はClosing後,⑧APA上の分類,⑨Proof of Claimの要否及び⑩現在の支払先を一行で記録する。
この対照表を作れば,同じ取引先ブランドに対する複数法人の債権又は債務を取り違える危険を減らすことができる。

第4 契約は買主へ承継されるか

1 assumption and assignmentを確認する

継続中の契約が買主へ移るためには,一般に,債務者が契約をassumeし,買主へassignする手続が用いられる。
判断資料は,APAのAssumed Contracts Schedule,Cure Notice,Assumption and Assignment Notice,Sale Order及び最終の契約指定通知である。

一覧に自社名があっても,契約番号,対象製品,法人名及び契約日が一致するかを確認する。
契約一覧から後に除外されることもあるため,最初のScheduleだけで承継を確定してはならない。

2 cure額と将来履行の十分な保証

米国連邦倒産法§365(b)(1)は,契約違反がある契約のassumptionについて,原則として,defaultのcure又は迅速なcureの十分な保証,実際の金銭的損失の補償又はその十分な保証及び将来履行の十分な保証を要求している。
また,同条(f)(2)は,assignmentについて,契約のassumptionと,買主による将来履行の十分な保証を要求している。

Cure Noticeの金額が自社帳簿より少ない場合,未払請求書,遅延損害,返品又は相殺等の内訳を確認し,通知記載の期限までに異議を検討する。
金額だけでなく,買主の資力,許認可,供給能力,保証体制及び履行拠点が契約上の義務を満たすかも検討対象となる。

3 譲渡禁止条項だけでは結論が出ない

米国連邦倒産法§365(f)(1)は,契約上の譲渡禁止又は制限条項があっても,原則としてassignmentを認める。
もっとも,同条(c)(1)は,適用される法律が相手方に第三者からの履行受領を拒むことを認め,相手方が同意しない場合等の例外を定めている。

知的財産ライセンス,人的な役務又は政府契約等では,契約準拠法と非倒産法上の制限が重要になることがある。
契約書の譲渡禁止条項だけを読んで承継不可と即断せず,契約類型,適用法,法域の判例及びSale Orderを個別に確認する必要がある。

第5 後継者責任とfree and clearの限界

1 責任の遮断は一律ではない

後継者責任を検討するときは,①請求原因となる行為又は製品の時期,②請求と売却資産との関係,③APA上のAssumed Liabilities又はExcluded Liabilities,④Sale Orderの定義と差止条項,⑤権利者への通知,⑥異議又は上訴の有無及び⑦適用される非倒産法を確認する。
「asset saleだから責任はない」又は「free and clearだから全請求が消える」という結論は早すぎる。

売却前の行為に由来する請求でも,§363(f)のinterestとしてSale Orderの対象になる場合がある一方,適正手続上必要な通知を欠く場合,買主自身の売却後の行為に基づく独立請求又は売却資産との結び付きが弱い請求まで当然に遮断されるとは限らない。
責任の有無は,売却命令の一般条項ではなく,具体的な請求の発生時期と内容を当てはめて判断する。

2 TWA事件が示す資産との結び付き

米国連邦第3巡回区控訴裁判所平成15年3月13日判決(In re Trans World Airlines, Inc., Nos. 01-1788ほか,322 F.3d 283)は,売却資産に結び付き,又はそこから生じる雇用差別請求等を§363(f)のinterestに含め,Sale Orderによるfree and clearの対象とした。
同判決は,非倒産法上の後継者責任が成立するか自体を判断せず,Sale Orderがなければ主張可能であるとの前提で検討した点にも注意を要する。

したがって,同判決は,後継者責任が常に遮断されるとの一般命題ではない。
請求と譲渡資産との結び付き,§363(f)の要件,通知及びSale Orderの射程を確認する必要性を示す裁判例である。

3 Motors事件が示す通知と買主自身の行為

米国連邦第2巡回区控訴裁判所平成28年7月13日判決(In re Motors Liquidation Co., No. 15-2844,829 F.3d 135)は,債務者が知り,又は合理的に把握できた請求権者に対しては直接通知が必要であり,公告だけでは足りないとした。
また,買主自身の売却後の行為に基づく独立請求までSale Orderが当然に遮断するものではないとした。

自社の請求がSale Orderの文言上含まれるように見えても,いつ,誰に,どの通知が届いたかを確認する。
通知を受けていない場合も自動的に勝訴するわけではなく,請求の性質,債務者による把握可能性,具体的な不利益及び利用可能な救済を現地弁護士と検討する必要がある。

第6 期限を逆算する

1 連邦規則上の基準日数

連邦倒産手続規則2002(a)(2)は,通常の事業過程外の売却について,裁判所が短縮その他の方法を命じない限り,原則として少なくとも21日前の通知を定めている。
同規則6004(b)は,売却への異議を,原則として提案された行為の少なくとも7日前又は裁判所が定める期限までに提出・送達するものとしている。

同規則6004(h)は§363(b)又は(c)の売却許可命令について,同規則6006(d)は契約のassignment許可命令について,裁判所が別段の命令をしない限り,命令登録後14日間の効力停止を定めている。
同規則8002(a)による上訴通知の期限も,原則として命令登録後14日である。

2 事件ごとの命令が日数を変える

実際の大型事件では,裁判所が通知期間を短縮し,異議期限を個別に設定し,又は14日間の効力停止を免除することがある。
例えば,デラウェア地区連邦倒産裁判所ローカルルール6004-1は,Sale Motionに,Closing期限,記録保存,後継者責任,free and clear,credit bid及び規則6004(h)の効力停止免除等の重要条項を明示するよう求めている。

したがって,21日,7日又は14日という一般規則だけで予定表を作ってはならない。
各Notice,Scheduling Order,Bidding Procedures Order,Sale Order及びDocket登録日時から,異議,審理,上訴,stay申立て及びClosingの各期限を現地時間で逆算する。

3 上訴とstayは別問題である

米国連邦倒産法§363(m)は,good faithの買主に対する売却について,上訴中のstayがない場合,許可命令の取消し又は変更が売却の効力に影響しないことを定めている。
米国連邦最高裁令和5年4月19日判決(MOAC Mall Holdings LLC v. Transform Holdco LLC, No. 21-1270,598 U.S. 288)は,§363(m)は裁判所の管轄を奪う規定ではなく,特定の保護を与える法定上の制限であるとした。

もっとも,同判決によって期限管理又はstayの検討が不要になったわけではない。
売却完了後の救済が著しく制限され得るため,異議を出すだけでなく,上訴通知とstay申立ての要否をClosing前に検討する。

第7 日本企業の実務確認表

1 売掛金

①自社の債権と自社の債務を別表にする。
②契約当事者の法人名,請求書,納品日,申立日及びClosing日を照合する。
③Assumed LiabilitiesとExcluded Liabilitiesを検索する。
④Proof of Claim,administrative expenseその他の手続を混同しない。
⑤支払先変更は,裁判記録と既知の連絡先で二重確認する。

2 契約承継

①Assumed Contracts Scheduleの最新版を保存する。
②Cure Noticeの契約番号とcure額を自社帳簿に照合する。
③買主の将来履行能力,許認可及び保証体制を確認する。
④譲渡禁止条項だけでなく,§365(c)及び(f)と適用法を確認する。
⑤異議期限,審理日,assignmentの効力発生日及びClosing日を記録する。

3 後継者責任と通知

①請求原因となる行為,製品,損害及び認識時期を整理する。
②APAの責任配分とSale Orderの遮断条項を分けて読む。
③自社又は関係者が受けた通知の宛先,方法,内容及び到達日を保存する。
④買主の売却後の独立した行為があるかを分ける。
⑤異議,上訴及びstayの各期限を別々に管理する。

4 現地弁護士へ渡す資料

現地弁護士には,①事件座標,②契約書と変更契約,③未払請求書一覧,④APAと関係Schedules,⑤Sale Order,⑥Cure Noticeその他の受領通知,⑦社内帳簿との不一致表,⑧請求原因と時系列及び⑨希望する事業上の結論を渡す。
「契約を継続したい」,「cure額だけを争いたい」,「売掛金を回収したい」,「買主への請求可能性を残したい」など,目的を先に示すと,短い期限内でも論点を絞りやすい。

第8 関連記事

1 チャプター11申立直後の対応

取引先が米国チャプター11を申し立てた場合の初動対応-自動停止・債権届出・20日商品・重要取引先(AI作成)では,債務者法人の特定,automatic stay,Proof of Claim,First Day Motion及び申立後取引を説明している。

2 日本の民事再生との比較

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3 公開事件記録の読み方

自動車部品大手マレリのチャプター11手続状況――再建計画案と取引先への影響(AI作成)では,公開Docketを用いて,申立法人,提案書面,裁判所命令,債権区分及び期限を区別している。

第9 出典

1 法令

Office of the Law Revision Counsel, 11 U.S.C. §363
Office of the Law Revision Counsel, 11 U.S.C. §365
Office of the Law Revision Counsel, 11 U.S.C. §541

2 裁判所規則・地方規則

United States Courts, Federal Rules of Bankruptcy Procedure, 令和7年12月1日施行版17頁~18頁,81頁~83頁及び97頁(PDFビューア36頁~37頁,100頁~102頁及び116頁)
United States Bankruptcy Court for the District of Delaware, Local Rule 6004-164頁~66頁(PDFビューア1頁~3頁)

3 裁判例

米国連邦第3巡回区控訴裁判所平成15年3月13日判決,In re Trans World Airlines, Inc., Nos. 01-1788ほか,322 F.3d 283判決印刷頁3頁,8頁及び15頁~16頁(PDFビューア4頁,9頁及び16頁~17頁)
米国連邦第2巡回区控訴裁判所平成28年7月13日判決,In re Motors Liquidation Co., No. 15-2844,829 F.3d 135(判決文転載)
米国連邦最高裁令和5年4月19日判決,MOAC Mall Holdings LLC v. Transform Holdco LLC, No. 21-1270,598 U.S. 288判決印刷頁1頁~2頁及び10頁(PDFビューア5頁~6頁及び14頁)

4 実務解説

大江橋法律事務所「米国倒産手続④-スポンサー支援(363条セール)」令和7年8月5日1頁~5頁