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準自己破産とは-破産法19条の申立権者・疎明・費用(AIリライト)

第1 準自己破産とは

本記事は,令和8年9月6日現在の破産法,破産規則及び裁判所の公開資料に基づき,法人の準自己破産を説明するものである。
準自己破産とは,法人の取締役等が,破産法19条によりその法人について破産手続開始を申し立てることをいう実務上の呼称である。
破産する債務者は法人であり,申立人となる取締役等が個人として自己破産する制度ではない。

1 破産法19条による役員等の申立て

破産法18条1項は,債権者又は債務者に破産手続開始の申立権を認めている。
これとは別に,同法19条は,法人の理事,取締役,業務を執行する社員又は清算人に,その法人について固有の申立権を認めている。
条文は「準自己破産」という名称を用いていないため,実際の手続を確認するときは,申立人が誰であり,18条又は19条のいずれに基づくのかを区別する必要がある。

2 法人の自己破産及び債権者申立てとの違い

三つの申立ては,いずれも法人を債務者とする破産手続であるが,申立人と申立時の疎明事項が異なる。

区分申立人申立時に問題となる疎明根拠
法人の自己破産法人破産原因と財産状態を示す資料が必要であるが,破産法19条3項の対象ではない破産法18条1項
準自己破産取締役等一部の取締役等による申立てでは破産原因となる事実の疎明が必要である破産法19条3項
債権者申立て法人に対する債権者自己の債権と破産原因となる事実の双方の疎明が必要である破産法18条2項

債権者申立ての要件,予納金及び回収上の限界は,債権者による法人破産申立て―要件・予納金・回収リスク(AI作成)で説明している。

第2 準自己破産の申立権者

1 法人の種類ごとの申立権者

破産法19条1項が明示する申立権者は,次のとおりである。
①一般社団法人又は一般財団法人については理事
②株式会社又は相互会社については取締役
③合名会社,合資会社又は合同会社については業務を執行する社員

法人が清算中である場合には,清算人も申立てをすることができる。
同条4項は同条1項に明示された法人以外の法人にも規定を準用し,同条5項は解散した法人について残余財産の引渡し又は分配が終了するまで適用すると定めている。

2 一人の取締役による申立てと機関決定

株式会社の取締役は,一人でも破産法19条1項2号の申立権を行使できる。
これは法人の機関決定に基づいて法人自身を申立人とする破産法18条1項の申立てとは異なるため,19条による申立ての要件として取締役会決議を得る必要はない。
代表取締役が不在である場合又は取締役間の意見が一致しない場合にも,取締役自身の申立権を検討できる点に制度上の意味がある。

もっとも,申立時に破産法19条所定の地位を有することは必要である。
登記事項証明書のほか,就任,辞任,解任その他の役員地位に関する資料を確認し,登記と実際の地位に食い違いがあるときはその経過を説明できるようにする必要がある。

3 監査役,株主及び従業員

監査役,株主又は従業員であるというだけでは,破産法19条に基づく申立権はない。
法人に対する貸付金,未払賃金その他の債権を有する者は,その債権に基づく破産法18条2項の債権者申立てを別途検討することになる。

第3 破産原因と疎明

1 支払不能又は債務超過

法人の破産手続開始原因は,原則として支払不能又は債務超過である。
支払不能とは,支払能力を欠くために弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態をいい,支払停止があるときは支払不能が推定される。
債務超過とは,法人がその債務についてその財産をもって完済できない状態をいうが,合名会社及び合資会社については債務超過だけを理由とする開始原因に例外がある。

支払不能と債務超過の判断対象及び確認資料の違いは,支払不能と債務超過の違い―破産法上の意味と判断方法(AI作成)で詳しく説明している。

2 一部の役員等が申し立てる場合の疎明

破産法19条3項は,同条所定の理事,取締役,業務執行社員又は清算人の全員が申立てをする場合を除き,申立人に破産手続開始原因となる事実の疎明を求めている。
したがって,一人又は一部の取締役等が申し立てる場合には,経営上の対立又は倒産への懸念だけでは足りず,支払不能又は債務超過を一応確からしいと認めさせる資料を提出する必要がある。

全員が申し立てるため同項の疎明義務が除かれる場合にも,破産原因そのものが不要になるわけではない。
裁判所は破産手続開始原因があると認めるときに開始決定をするのであり,申立書には法人の収支,資産及び負債等を記載し,財産状態を示す資料を提出することになる。

3 裁判所の調査と不誠実な申立て

裁判所は,破産事件について職権で調査することができ,裁判所書記官に破産手続開始原因その他の事情を調査させることもできる。
もっとも,この調査は申立人の資料不足を当然に補う制度ではない。

破産法30条1項によれば,破産原因が認められても,必要な費用が予納されない場合又は不当な目的による申立てその他申立てが誠実にされたものでない場合には,開始決定はされない。
準自己破産は取締役間の紛争そのものを解決する制度ではないため,法人の財産状態と債権者全体に関わる倒産処理の必要性を資料に基づいて示すことが前提となる。

第4 申立書と準備資料

1 申立書及び債権者一覧表

破産手続開始の申立ては書面で行う。
申立書には,申立人及び債務者,申立ての趣旨,破産手続開始原因となる事実のほか,法人の収支,資産・負債,原因が生じるに至った事情,他の倒産手続等の状況その他の破産規則13条所定の事項を記載する。

債権者でない者が申し立てる場合には,原則として知れている債権者の氏名又は名称,住所,債権及び担保権の内容を記載した債権者一覧表を提出する。
申立てと同時に提出できないときは,破産法20条2項により申立て後遅滞なく提出しなければならない。

2 役員資格と破産原因を示す資料

準自己破産では,申立人の役員資格と法人の破産原因を分けて資料化する必要がある。
役員資格については登記事項証明書及び就任・退任関係資料を確認し,破産原因については次の資料を中心に整理する。
①貸借対照表,損益計算書,試算表,総勘定元帳及び資金繰り表
②預貯金通帳,残高証明書,現金出納資料及び借入関係資料
③売掛金,在庫,不動産,設備その他の資産明細及び評価資料
④金融債務,買掛金,公租公課,社会保険料及び賃金その他の債務一覧
⑤不渡り,差押え,支払遅滞,事業停止その他の支払不能を示す資料

破産規則14条3項は,法人の登記事項証明書,直近の貸借対照表及び損益計算書,財産目録その他の書類を添付資料として掲げている。
実際の必要書類及び書式は裁判所と事件の内容によって異なるため,申立先裁判所の最新案内を確認する必要がある。

3 会社の協力を得られず資料が不足する場合

代表者不在又は取締役間の対立がある事案では,通帳,会計データ,契約書又は印章を一部の関係者が管理し,申立人が十分な資料を取得できないことがある。
その場合は,本記事では,適法に取得できた資料,取得を試みた経過,不足資料とその理由及び代替する客観資料を整理し,判明している範囲を明らかにする。

裁判所は追加資料の提出を求め,裁判所書記官に調査をさせることができるが,破産原因の中核資料が存在しないまま申立てを進められることを意味しない。
資料不足が開始原因の判断又は管財業務に与える影響を見極めるため,申立て前に裁判所への確認又は弁護士による追加調査を行うことが考えられる。

第5 管轄,特別代理人及び取下げ

1 管轄裁判所

破産法5条1項によれば,法人の破産事件は,原則として主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
関連事件,営業所がない場合その他の管轄特則もあるため,登記事項証明書上の本店所在地だけで決めず,具体的事情を確認する必要がある。

2 特別代理人が問題となる場合

法人に代表者がなく,又は代表者が代理権を行うことができない場合には,破産法13条による民事訴訟法35条及び37条の準用を通じて,特別代理人の選任が問題となることがある。
ただし,破産法19条による申立てであるという理由だけで,常に特別代理人を選任するものではない。
法人の代表者の有無,利益相反の内容,法人に送達又は手続行為をさせる必要性等によって扱いが変わり得るため,申立前に申立先裁判所へ確認することが考えられる。

3 申立ての取下げと即時抗告

破産手続開始の申立ては,開始決定前であれば取り下げることができるのが原則である。
ただし,弁済禁止の保全処分,包括的禁止命令,保全管理命令等の決定後は,開始決定前でも取下げに裁判所の許可を要する。
開始申立てについての裁判及び費用の予納に関する決定に対しては,即時抗告をすることができる。

第6 申立費用と予納金

1 申立人の予納義務

破産法22条1項は,申立人が裁判所の定める破産手続の費用を予納しなければならないと定めている。
申立手数料,郵便料,官報公告費用及び破産管財人の業務に充てる予納金等は区別して確認する必要がある。

破産規則18条によれば,裁判所は,破産財団となるべき財産の額,負債の額,債権者の数その他の事情を考慮して予納額を定め,不足があれば追加予納を命じることができる。
準自己破産では資料不足,社内対立又は代表者不在によって調査負担が増えることがあるが,そのことだけから全国一律の金額又は通常事件との差額を示すことはできない。
具体額と納付方法は,裁判所の破産手続案内及び申立先裁判所の最新資料で確認する必要がある。

2 国庫仮支弁は例外である

破産法23条は,申立人の資力,破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮し,利害関係人の利益を保護するため特に必要があると認めるときは,裁判所が破産手続の費用を国庫から仮に支弁できると定めている。
これは予納準備の代わりに当然に利用できる制度ではなく,必要な予納がなく国庫仮支弁もされない場合には開始決定はされない。

3 法人財産からの支出と役員の立替え

破産法19条は取締役等に申立権を与える規定であり,それだけで申立人に法人財産を管理・処分する権限を与えるものではない。
法人の預金等を申立費用又は弁護士費用に充てることができるかは,支出時の代表権その他の権限,支出の必要性,金額及び法人・債権者への影響を個別に検討する必要がある。

取締役等が費用を立て替える場合にも,破産法19条の申立権があることだけから法人財産による全額償還が保証されるわけではない。
立替え前に,申立先裁判所の運用,法人財産の使用権限及び開始後の費用の扱いを確認することが相当である。

第7 申立てを検討する順序

1 初期確認と資料保全

最初に,①申立時の役員資格,②支払不能又は債務超過の具体的事実,③法人の主たる営業所と管轄,④財産・帳簿・電子データの所在,⑤申立費用の見通しを確認する。
本記事では,会社財産と記録の散逸を防ぎつつ,申立人が権限なく資料を持ち出し,会社財産を処分し,又は特定の債権者だけに弁済することを避けるのを初動の基本とする。

次に,いつからどの債務を支払えなくなったのか,短期間での資金調達又は資産換価が現実に可能か,資産評価と簿外債務に争いがあるかを,数字と時系列で整理する。
事業譲渡,民事再生その他の選択肢が具体的に残る場合には,破産申立てとの比較も検討対象に含める。

2 直ちに申し立てず追加確認をする場合

申立人が破産法19条所定の地位を有しない場合,破産原因を支える客観資料がなく適法な追加取得の見込みも立たない場合又は予納の見通しがない場合には,本記事では,直ちに申立てを進めず,申立資格,代替資料及び費用確保の可能性を再検討する段階とする。
取締役間の対立だけがあり,法人が支払不能又は債務超過であることを示せない場合にも,準自己破産を紛争解決手段として用いることはできない。

代表者不在,従業員への対応,賃借物件,許認可事業,事業継続中の在庫又は緊急の財産保全が問題となる事件では,申立て直前ではなく準備段階で申立先裁判所に相談することが考えられる。
何を確認できれば申立てへ進むかを定め,資料の追加取得が結論を変えないと判断できるときは,高負担の調査を重ねないことを本記事の基本とする。

3 公開裁判例で確認できる事実経過

東京地方裁判所平成28年4月18日判決(平成25年(ワ)第20031号)は,当時の取締役が債務超過を理由に準自己破産を申し立て,裁判所の審尋後に申立てを取り下げたという事実経過を認定している。
ただし,同判決は損害賠償等請求事件の判決であり,破産法19条の申立要件又は取締役の申立権を判断した裁判例ではない。

今回の裁判所ウェブサイトにおける公開裁判例検索では,破産法19条の解釈を正面から判断した判決本文を確認できなかった。
裁判所ウェブサイトに掲載されていない裁判例もあるため,これは該当裁判例が存在しないことを意味しない。

第8 特定非常災害による債務超過の特例

特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律5条は,特定非常災害によって債務超過となった法人について,政令で定める日まで,債務超過だけを理由とする破産手続開始決定を制限している。
法務省の公表資料によれば,令和8年熊本県熊本地方を震源とする地震について,その期限は令和10年7月27日である。

同条は,法人が清算中である場合,支払不能である場合又は法人が破産手続開始の申立てをした場合を例外としている。
取締役等が破産法19条により申し立てた場合が「法人が破産手続開始の申立てをした場合」に含まれるかは,今回確認した公開一次資料では明示されていない。
この地震に起因する債務超過だけを開始原因とする準自己破産では,特例の適用関係を申立先裁判所に確認する必要がある。

第9 出典・参考資料

1 法令・裁判所規則

e-Gov法令検索「破産法」(平成16年法律第75号)。2条11項,5条,8条,13条,15条,16条及び18条~33条
e-Gov法令検索「民事訴訟法」(平成8年法律第109号)。35条及び37条
e-Gov法令検索「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(平成8年法律第85号)。5条
最高裁判所規則「破産規則」(平成16年最高裁判所規則第14号)。13条~18条

2 裁判例

東京地方裁判所平成28年4月18日判決・平成25年(ワ)第20031号。破産法19条の解釈判断ではなく,準自己破産の申立て,審尋及び取下げという事実経過を参照した。

3 裁判所・行政機関の運用資料

①裁判所「破産」。破産手続の概要,申立手数料及び各裁判所の手続案内への入口
②法務省「令和8年熊本県熊本地方を震源とする地震により被害を受けた法人についての破産手続開始の決定の特例」。令和8年7月30日公表

4 文献

①小川秀樹編著『一問一答 新しい破産法』(商事法務,平成16年)43頁~48頁(PDF実頁77頁~82頁)。平成16年制定時の申立規制,予納及び国庫仮支弁の立法解説として参照し,現行法は別途e-Gov法令検索で確認した。

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