第1 この記事が扱う大阪の弁護実務修習
1 分野別実務修習の弁護分野を扱うこと
本記事は,大阪修習における分野別実務修習のうち,弁護実務修習の指導体制及び修習内容を,令和8年8月29日現在の公開資料に基づいて整理するものである。
最高裁判所の「司法修習の概要」によれば,分野別実務修習は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野について,実務家の個別的指導の下で実際の事件の取扱いを体験的に学ぶ課程である。
大阪の弁護実務修習では,大阪弁護士会の司法修習委員会が司法修習生の配置,指導及び監督並びに指導弁護士の選定等を担当する。
同委員会の役割は,大阪弁護士会の委員会紹介にも掲載されている。
本記事では,指導弁護士の事務所で行われる個別修習を「個別事務所修習」と表記する。
第78期の実績は,大阪弁護士会「2025年度(令和7年度)会務報告書」の司法修習委員会欄58頁~63頁(PDF62頁~67頁)による。
2 選択型実務修習との違い
本記事が扱う弁護実務修習は,4分野を順番に回る分野別実務修習の一部である。
これに対し,選択型実務修習は,4分野の終了後に,司法修習生が関心等に応じて修習内容を選択し,分野別実務修習の成果を深め,又は補う別の課程である。
選択型実務修習では,弁護実務修習で配属された事務所がホームグラウンドとなるが,制度上は分野別実務修習の弁護分野と同じ課程ではない。
選択型実務修習の個別・全国・自己開拓プログラムは,選択型実務修習とは―ホームグラウンド,個別・全国・自己開拓プログラムの案内で別に整理している。
第2 指導弁護士への配属
1 第78期の配属数と第79期の予定数
2025年度会務報告書は,第78期の大阪配属司法修習生を153名,指導弁護士を78名と記載している。
大阪の司法修習生は4班に分かれ,各班が異なるクールに弁護実務修習を受けるため,この数字は153名全員が同時に78か所へ配属されたことを意味しない。
同報告書は,第79期の大阪配属を135名となる予定であるとしている。
ただし,これは同報告書の作成時点における予定数であり,第79期の配属実績を示す配属現員表ではない。
第79期全体の日程は,第79期司法修習の日程で確認できる。
2 第72期から第78期までの配属数
大阪弁護士会の2019年度から2025年度までの会務報告書で確認できる配属司法修習生数及び指導弁護士数は,次のとおりである。
| 修習期 | 大阪配属司法修習生 | 指導弁護士 | 根拠となる会務報告書 |
|---|---|---|---|
| 第72期 | 126名 | 65名 | 2019年度74頁(PDF78頁) |
| 第73期 | 123名 | 62名 | 2019年度75頁(PDF79頁) |
| 第74期 | 122名 | 61名又は62名 | 2020年度52頁(PDF56頁)及び2021年度61頁(PDF65頁) |
| 第75期 | 108名 | 56名 | 2021年度61頁(PDF65頁) |
| 第76期 | 120名 | 61名 | 2022年度68頁(PDF77頁) |
| 第77期 | 173名 | 87名 | 2023年度64頁(PDF68頁) |
| 第78期 | 153名 | 78名 | 2025年度60頁(PDF64頁) |
第74期の指導弁護士数は,2020年度会務報告書が61名,2021年度会務報告書が62名としており,資料間で一致しない。
どちらか一方へ推測で統一せず,表では両方の数字を掲げた。
3 取扱分野の希望を聞かずに行われるマッチング
2025年度会務報告書61頁(PDF65頁)によれば,指導弁護士は各会派からの推薦を得て選ばれ,司法修習生との組合せは,司法修習委員会の事務局が案を作り,正副委員長が決めている。
同報告書は,司法修習生が希望する取扱分野を聞かずにマッチングを行う一方,事務所内外の他の弁護士の協力等により,ある程度の分野を扱えるよう指導弁護士へ依頼していると説明する。
したがって,大阪の弁護実務修習では,希望する専門分野の事務所へ配属される仕組みであるとは確認できない。
配属先の取扱分野によって経験できる事件には差が生じ得るが,合同修習及び担任制が個別事務所修習を補完する構造となっている。
第3 個別事務所修習の内容
1 法律相談,法廷への立会い及び法律文書の起案
最高裁判所は,弁護修習について,個別指導弁護士の下で法律相談や法廷等に立ち会い,様々な法律文書を起案して講評を受け,弁護士会の活動を体験する課程であると説明している。
大阪の個別事務所修習も,この全国共通の枠組みの中で,指導弁護士が扱う具体的な事件及び弁護士業務を素材として行われる。
2025年度会務報告書60頁(PDF64頁)によれば,指導弁護士向け説明会では,個別指導の概要,合同修習,成績評価等に加え,刑事弁護ゼミまでに,可能な限り接見及び公判を経験させることが依頼された。
同報告書58頁~59頁(PDF62頁~63頁)は,司法修習委員会の刑事部門が,個別修習における接見同行の手配等に対応したことも記録している。
2 配属先による経験差と補完
個別事務所修習の内容は,指導弁護士が修習期間中に扱う事件,依頼者等の同席の可否及び事件の進行に左右される。
そのため,すべての司法修習生が同じ種類及び同じ数の法律相談,接見,公判又は起案を経験するとは限らない。
2025年度会務報告書は,特定分野を扱う弁護士の下で修習することにも意義があるという司法修習委員会の考えを示す一方,事務所内外の他の弁護士の協力を依頼している。
また,指導弁護士との間に問題が生じた場合には,弁護実務修習を実効的に行うため,指導弁護士を交代することがあると記載している。
全国共通の弁護修習の指導方法及び他の弁護士会の実例は,弁護修習の実際―指導担当弁護士による個別指導,合同修習及び成績評価で扱っている。
本記事では,大阪弁護士会の会務報告書から確認できる大阪の運用に対象を絞っている。
第4 司法修習委員会と担任制
1 司法修習委員会の4部門
2025年度会務報告書58頁~59頁(PDF62頁~63頁)によれば,大阪弁護士会の司法修習委員会は,総務,民事,刑事及び選択型実務修習の4部門を設けている。
弁護実務修習では,総務部門がガイダンス及び特定部門に属しない合同修習等を,民事部門が模擬法律相談,民事即日起案及び弁護士倫理講義等を,刑事部門が刑事弁護ゼミ及び接見同行の手配等を担当している。
選択型実務修習部門は,分野別実務修習後の別課程を担当する部門である。
同じ司法修習委員会の活動であっても,個別事務所修習及び合同修習と,選択型実務修習のプログラムを区別して読む必要がある。
2 指導弁護士向け説明会
司法修習委員会は,弁護実務修習の開始前に,指導弁護士へガイドライン,ファーストステップガイド及び各種指導要綱等を配付し,個別指導,合同修習,成績評価,欠席等の取扱いを説明している。
この説明会は,個々の指導弁護士による事務所修習と,司法修習委員会が行う合同修習及び評価を接続する機会となっている。
ただし,2025年度会務報告書60頁(PDF64頁)には,説明会の日付及び対象期の組合せに整合しない記載がある。
本記事では,確認できる制度内容だけを用い,その日付を第79期の確定日程として採用していない。
3 担任委員による面談及び相談対応
2025年度会務報告書61頁(PDF65頁)によれば,第78期の担任制では,副委員長又は指導弁護士を担当しない修習委員が,それぞれ5名から6名の司法修習生を担当した。
担任委員は,開講式後の顔合わせ,弁護実務修習の中間頃の個別面談及び修習機会に関する情報提供を行い,個別修習,合同修習又は指導弁護士との関係について相談を受ける。
担任委員は指導弁護士とは別の相談経路であり,個別事務所修習だけでは把握しにくい経験の偏り又は関係上の問題を司法修習委員会へつなぐ役割を持つ。
もっとも,担当人数は修習期によって変わっているため,第78期の5名から6名という数字を他の期へそのまま当てはめることはできない。
第5 合同修習の内容
1 個別事務所修習を補完する位置付け
2025年度会務報告書62頁(PDF66頁)は,合同修習を,指導弁護士事務所における個別修習を補完する等の目的で実施したと説明している。
配属先ごとに経験できる事件が異なることを前提として,民事及び刑事の共通課題並びに弁護士倫理等を学ぶ機会が組み込まれている。
2 民事の模擬法律相談及び即日起案
第78期の模擬法律相談は,家族法及び財産法の問題を1問ずつ用い,若手会員が相談者役を担当した。
同じ日の午後には,約3時間の民事即日起案と講評が行われ,さらに各クール最終日に採点後の講評が行われた。
民事即日起案は成績評価の対象であり,希望する司法修習生には,起案の見直しのため,使用した問題及び資料を選択型実務修習終了時まで貸し出す取扱いが記録されている。
これは第78期の実施記録であり,第79期以後の問題,実施方式又は貸出方法が同一であることまで示すものではない。
3 捜査弁護,公判弁護及び少年事件のゼミ
刑事弁護の学びを補完する合同修習として,第78期には捜査弁護ゼミ,公判弁護ゼミ及び少年事件ゼミが実施された。
各班をさらに3グループに分け,捜査弁護及び公判弁護は刑事弁護委員会委員,少年事件は子どもの権利委員会委員が講師を担当したと記録されている。
捜査弁護ゼミ及び公判弁護ゼミは成績評価の対象である。
2025年度会務報告書62頁(PDF66頁)は,評価方法を見直し,第79期から見直し後の方法を用いる予定であるとしているが,公開資料から新しい評価方法の内容は確認できない。
4 ガイダンス,弁護士倫理及び閉講式
各クールの初日には,開講式に先立ってガイダンスが行われ,司法修習生の身分,諸手続及び弁護実務修習の内容等が説明された。
弁護実務修習の最終日には,弁護士倫理委員会推薦の講師による弁護士倫理講義,閉講式及び送別会が実施された。
これらの行事は,事件処理を素材とする個別事務所修習とは役割が異なる。
制度上の説明,共通して学ぶべき事項及び修習全体の振り返りを担当する合同修習として位置付けられる。
第6 成績評価と資料の限界
1 第78期の評価資料及び配点
2025年度会務報告書63頁(PDF67頁)によれば,第78期の成績評価委員会は,指導弁護士から提出された考査表と,合同修習の民事即日起案,捜査弁護ゼミ及び公判弁護ゼミの結果を基に成績を決定し,司法研修所へ報告した。
同報告書は,配点を,指導弁護士による個別修習4割,合同修習6割とし,合同修習の内訳を民事即日起案3割,捜査弁護ゼミ及び公判弁護ゼミの合計3割と記載している。
この配点は,大阪弁護士会司法修習委員会の第78期の会務報告に記載された運用である。
全国の弁護士会に共通する配点として扱うことはできず,大阪でも今後変更される可能性がある。
2 第79期以後について確認できる範囲
同報告書は,第79期以後も大枠として個別修習4割,合同修習6割とすることが適当であるとの考えを示す一方,捜査弁護ゼミ及び公判弁護ゼミの評価方法は第79期から見直す予定であるとしている。
したがって,第79期の最終的な評価方法及び細目は,当期に交付される説明資料によって確認する必要がある。
また,2019年度から2025年度までの会務報告書は,各年度の委員会活動を記録した資料である。
過去の修習期の人数,日程,担当人数又は実施方式を,現在又は将来の期へそのまま適用することはできない。
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第8 出典・参考資料
1 最高裁判所の制度説明
①最高裁判所「司法修習の概要」(令和8年8月29日確認)
2 職能団体の委員会紹介
①大阪弁護士会「法曹養成・法教育に関する活動―司法修習委員会」(令和8年8月29日確認)
3 職能団体の司法修習委員会による会務報告
①大阪弁護士会「令和元年度会務報告書」司法修習委員会73頁~82頁(PDF77頁~86頁)
②大阪弁護士会「2020年度(令和2年度)会務報告書」司法修習委員会50頁~64頁(PDF54頁~68頁)
③大阪弁護士会「2021年度(令和3年度)会務報告書」司法修習委員会59頁~72頁(PDF63頁~76頁)
④大阪弁護士会「2022年度(令和4年度)会務報告書」司法修習委員会66頁~81頁(PDF75頁~90頁)
⑤大阪弁護士会「2023年度(令和5年度)会務報告書」司法修習委員会62頁~76頁(PDF66頁~80頁)
⑥大阪弁護士会「2024年度(令和6年度)会務報告書」司法修習委員会62頁~75頁(PDF66頁~79頁)
⑦大阪弁護士会「2025年度(令和7年度)会務報告書」司法修習委員会58頁~71頁(PDF62頁~75頁)