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国家緊急権に関する内閣法制局長官の国会答弁

目次
1 総論
2 内閣法制局長官の国会答弁
○秋山収内閣法制局長官の,平成16年5月11日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における答弁
○秋山収内閣法制局長官の,平成16年4月20日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における答弁
○津野修内閣法制局長官の,平成14年5月8日の衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会における答弁
○吉國一郎内閣法制局長官の,昭和50年5月14日の衆議院法務委員会における答弁
○高辻正己内閣法制局長官の,昭和44年3月15日の参議院予算委員会における答弁
3 関連記事その他

1 総論
(1) 国家緊急権とは,戦争,内乱,恐慌又は大規模な自然災害その他平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において,国家の存立を維持するために,国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を採る権限をいいます。ところ,を以下のとおり掲載しています。
(2) 国家緊急権に関する内閣法制局長官の答弁の結論としては,国家緊急権というものは日本国憲法において認められないものの,大規模な災害や経済上の混乱などの非常な事態に対応すべく,公共の福祉の観点から,合理的な範囲内で国民の権利を制限し,国民に義務を課す法律を制定することは可能であり,例としては,災害対策基本法,国民生活安定緊急措置法及び武力攻撃事態対処法があります。

2 内閣法制局長官の国会答弁
◯秋山収内閣法制局長官の,平成16年5月11日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における答弁

1 (山中注:日本と同じように内閣制をとっている国で非常大権が元首にない国の例を質問されたことに対して)外国に関する法令を正確に把握することは難しい点がございますけれども、私どもが承知しております限りでは、ドイツ連邦共和国でございますが、これは憲法上に規定があるわけではございませんが、一応、国のトップとして大統領が元首であるというふうに解されていると思います。
   しかしながら、ドイツ連邦共和国におきましては、防衛事態などの国家の緊急事態におきましても、立憲的な憲法秩序を一時停止するような性格を有する国家緊急権のような権限は大統領にも与えられておりませんで、現行ドイツ基本法の規定に基づき制定されている、あるいは、新たに制定される法律の定めるところにより連邦政府がこれに対処するものとされているものと承知しております。
2 ただ、細部にわたってこれは正確かどうかちょっと自信がございませんけれども、大勢としてはそういう考え方でございます。

○秋山収内閣法制局長官の,平成16年4月20日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における答弁
1(1) お尋ねの大統領非常大権、これは法律学ではいわゆる国家緊急権という言葉で議論されるものでございます。
   すなわち、戦争とか内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処することが困難なような非常事態におきまして、国家の存立を維持するために国家権力が通常の立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限というふうに考えられております。
(2) それで、フランスでは、御指摘のとおり、フランス第五共和国憲法は第16条でそういう規定があるわけでございます。それから、大日本帝国憲法でも、先ほど御指摘のとおりのものがございます。
   日本国憲法においてはこのような規定は存在しておらず、したがって、先ほど申し上げたような国家緊急権というものは現行の憲法下では認められないものと考えております。
(3) ただ、現行憲法下でも、大規模な災害とか経済的混乱などのような非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から合理的な範囲内で国民の権利を制限し、あるいは義務を課す法律を制定することは可能でございまして、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法など、既に多くの立法がございます。
   今回提案しております有事関連の法律も、そのような系列のものに入るものと考えております。
2 累次、この国会に至る前にも政府側から答弁しておりますけれども、今回の法案は、現行憲法のもとで、基本的な人権の尊重に十分配慮しつつ、事態の特性に応じて必要な制約を加えるというものでありまして、これは、冒頭申し上げましたような国家緊急権の発動というものではないというふうに考えております。

○津野修内閣法制局長官の,平成14年5月8日の衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会における答弁
1 事務的に、経緯でございますので事実関係をお答えさせていただきますが、国家緊急権と申しますのは、これは講学上の概念でございまして、戦争とか内乱とか、あるいは恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない、そういった非常事態におきまして、国家の存立を維持するために、国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限をいうものと解されているわけでございます。これは、一般的に、学説上、大体このような概念でございます。
   このような国家緊急権につきましては、大日本帝国憲法におきましては、戦争、内乱等の非常事態において、天皇による戒厳、それから非常大権などとして憲法に規定されておりまして、制度化が図られているところでございますが、日本国憲法においては、そういった規定はないわけであります。
2 この点につきましては、要するに規定されていないということにつきましては、その具体的な経緯は明らかではありませんが、憲法制定議会におきまして、第90回帝国議会の衆議院帝国憲法改正案委員会におきまして、金森国務大臣は、非常事態の際に、大日本帝国憲法第31条、非常大権のような制度が必要ではないかという質問に対しまして、
   民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス
言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、
随テ此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、
随テ特殊ノ必要ガ起リマスレバ、臨時議会ヲ召集シテ之ニ応ズル処置ヲスル、又衆議院ガ解散後デアツテ処置ノ出来ナイ時ハ、参議院ノ緊急集会ヲ促シテ暫定ノ処置ヲスル、同時ニ他ノ一面ニ於テ、実際ノ特殊ナ場合ニ応ズル具体的ナ必要ナ規定ハ、平素カラ濫用ノ虞ナキ姿ニ於テ準備スルヤウニ規定ヲ完備シテ置クコトガ適当デアラウト思フ訳デアリマス、
と答弁しているわけであります。
3 こういったことでございまして、いわゆる国家緊急権が設けられなかった理由が答弁として残されているわけでありますが、ただ、日本国憲法のもとにおきましては、例えば、大規模な災害や経済上の混乱などの非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から、合理的な範囲内で国民の権利を制限し、国民に義務を課す法律を制定することは可能であり、これまでにも、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法などの多くの立法がなされているところでございます。
   また、今回のいわゆる武力攻撃事態対処関連三法案につきましては、申すまでもありませんが、日本国憲法の範囲内で立法化をしようとするものでありますから、これまで述べてきました立憲的な憲法秩序を一時停止する性格を有する講学上の国家緊急権の制度を図るといったような法律ではないということでございます。

○吉國一郎内閣法制局長官の,昭和50年5月14日の衆議院法務委員会における答弁
1(1) 現行憲法のもとにおいて非常時立法ができるかというお尋ねでございますが、非常時立法というものにつきまして、もともとこれは法令上の用語ではございませんから明確な定義があるわけではございませんけれども、まあわが国に大規模な災害が起こった、あるいは外国から侵略を受けた、あるいは大規模な擾乱が起こった、経済上の重要な混乱が起こったというような、非常な事態に対応いたしますための法制として考えますと、それはあくまでも憲法に規定しております公共の福祉を確保する必要上の合理的な範囲内におきまして、国民の権利を制限したり、特定の義務を課したり、また場合によりましては個々の臨機の措置を、具体的な条件のもとに法律から授権をいたしまして、あるいは政令によりあるいは省令によって行政府の処断にゆだねるというようなことは現行憲法のもとにおいても考えられることでございまして、現に一昨年の11月に国会で非常に多大の御労苦を願いまして御審議いただきました国民生活安定緊急措置法というものがございます。
(2) これはその当時の緊急経済事態に対応いたしまして諸般の措置を定めたものでございますが、その中には、割り当てまたは配給につきまして全面的に政令以下に権限をゆだねていただいておるような法令もございます。
(3) これも、一定の限られた範囲ではございますけれども非常時立法の一例でございましょうし、また古くは、災害対策基本法の中で、非常災害が起こりました場合に、財政上、金融上の相当思い切った措置を講じ得るようになっておりますが、これもそのたびごとに政令をもって具体的な内容を規定いたすことになっております。
2 このように、現憲法のもとにおきましても特定の条件のもとにおいてはこのような立法ができることは、すでに現在先例を見ていることから言っても明らかでございまして、いわゆる非常時立法と申すものにつきまして、一定の範囲内においてこれを制定することができることは申すまでもないと思います。
   もちろん、旧憲法において認められておりましたような戒厳の制度でございますとか、あるいは非常大権の制度というようなものがとれないことは当然のことでございますし、また、現段階において全面的な広範な非常時立法を考えているというような事態はございませんことを申し上げておきます。

○高辻正己内閣法制局長官の,昭和44年3月15日の参議院予算委員会における答弁
1 私に対する御質疑は、いまやるかどうかという問題を離れて、憲法上可能かどうかという問題のようでございます。憲法にはこの非常事態に関する特別の規定は、御承知のとおり、政治機構に関して例の参議院緊急集会の制度があるくらいでございまして、そのほか一般的に非常事態に際してどうという規定はございません。
   しかしながら、御指摘のように、人権の保障も、常に公共の福祉のために利用する責任を負うということになっておりまして、公共の福祉に反する利用ということになりますと、まあいまのいろんな法律にもありますような、いろんな制限をこうむる場合がございます。
2 したがって非常事態というような場合になりますれば、それほど、相関関係における公共の福祉というものが当然問題になりますから、それと厳密に均衡のとれた制限であれば不可能とは言えない。
   むろん公共の人権の制限に関するものでありますから、立法にあたりましては慎重を期する必要がありますけれども、理論的には不可能であるということは申すわけにはまいらないと思います。

3 関連記事その他
(1) 衆議院HPに「緊急事態」に関する資料(平成25年5月の衆議院憲法審査会事務局)が載っています。
(2) 国が,積極的に,国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し,社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るため,その社会経済政策の実施の一手段として,立法により,個人の経済活動に対し,一定の規則措置を講ずることは,それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り,憲法の禁ずるところではありません(最高裁大法廷昭和47年11月22日判決)。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 新型コロナウイルス感染症への対応に関する最高裁判所作成の文書
・ 新型コロナウィルス感染症に準用されている感染症法,感染症法施行令及び感染症法施行規則の条文
・ 新型コロナウイルス感染症に準用されている検疫法の条文
・ 国内感染期において緊急事態宣言がされた場合の政府行動計画(新型インフルエンザの場合)

秘匿情報の管理に関する裁判所の文書

目次
第0 はじめに
第1 秘匿情報の管理に関する裁判所の文書
第2 関連記事その他

第0 はじめに
1 令和5年2月20日以降については原則として,新たな秘匿制度が適用されます(当事者に対する住所,氏名等の秘匿の制度に関する改正民事訴訟法等に関する運用方法が書いてある文書1/2及び2/2当事者に対する住所,氏名等の秘匿の制度に関する改正民事訴訟法等に関する運用方法が書いてある文書によって開示された文書)に含まれる,新たな秘匿制度を踏まえた秘匿情報の適切な管理について(令和5年1月26日付の最高裁総務局第一課長等の事務連絡)参照)。
2 「秘匿制度に係る改正通達に関する事務処理のポイントとQA」の発出について(令和5年2月3日付の最高裁総務局第三課長の事務連絡)が分かりやすいです。

第1 秘匿情報の管理に関する裁判所の文書
・ 秘匿情報の適切な管理について(平成27年2月19日付の最高裁判所総務局,民事局,刑事局及び家庭局の課長の事務連絡)別紙1ないし3は以下のとおりです。

秘匿情報の適切な管理について(別紙1)

1 はじめに
    裁判所は,記録上に表れている情報のうち,当事者や被害者等の利害関係人(以下「当事者等」という。)からの秘匿を希望する旨の申出等を踏まえて,秘匿すべきであると判断した情報(以下「秘匿情報」という。)については,裁判所の意図に反して流出させることのないように適切に管理しなければならない。仮に,裁判所として行うべき管理を怠って秘匿情報を流出させるといった事態を発生させた場合には,秘匿を希望した当事者等の名誉や社会生活の平穏が著しく害されたり,身体や財産への危害が加えられたりするおそれを生じさせることになり,ひいては,あらゆる裁判の基盤となっている裁判所に対する信頼を大きく揺るがすことになりかねない。したがって,秘匿情報の適切な管理の重要性についての意識を,裁判官を含めた関係職員間で共有し,共通の視点を持って日々の事務処理を行っていく必要がある。
2 秘匿情報の適切な管理に向けて
(1) 事務処理態勢の構築
    秘匿情報の適切な管理は,事件受理時における教示の段階から事件終局後の関係機関等への引継ぎの段階までといった,裁判所が関わる手続の流れを意識しながら,関係職員が互いに有機的な連携を図りつつ,実現されなければならない。これに向けて,個々の職員が秘匿情報の管理について高い問題意識を有することも重要ではあるが,それのみに依存するのでは不十分である。秘匿情報の管理が必要となる事件が常に係属し得ることを前提に,あらかじめ万全な事務処理態勢を組織として検討し, これを構築した上で,関係職員間で適切に認識を共有しておく必要がある。
(2) 検討すべき事項の整理
    事務処理態勢を検討するに当たっては,秘匿情報の適切な管理の重要性を踏まえた上で,事務を行う根拠・目的に照らして合理的な対策を検討する必要があるが, どのような視点で何をどこまで検討すればよいのか,考えられる対策の中からどのような対策を選択し実践すべきかについては,悩みが多いものと思われる。そのような検討を効果的に進めるためには,検討すべき事項を具体的に整理することが有用であり,その内容としては,次のようなものが考えられる。
① (当事者等がどのような情報について秘匿を希望しているかを把握し,それらを踏まえた上で)どの情報を秘匿情報として取り扱うかを具体的に判断し,その内容について秘匿情報を取り扱う可能性のある者との間で相互に共有すること(秘匿情報の確定)
② 事件処理上,当然に記録に表れるべき情報と必ずしも記録に表れなくてもよい情報とを整理し,不必要な秘匿情報が記録上に表れないような措置を講じること(記録上に不必要な秘匿情報が表れないようにするための措置)
③ ②の措置を講じたとしても,記録上に表れることとなった秘匿情報(秘匿情報として取り扱うことを決めた際には既に記録に表れていたものを含む。)について,裁判官を含めた関係職員間で相互に共有すること(記録上に表れることとなった秘匿情報の共有)
④ 記録上に表れている秘匿情報が裁判所の意図に反して流出しないように取り扱うこと(記録上に表れた秘匿情報の流出の防止)
    以上のことを十分に検討した上で,事務処理態勢が構築され,関係職員で認識が共有されれば,基本的には,秘匿情報の適切な管理を実現することができると考えられる。しかし,上記の各事項の中でも,①秘匿情報の確定の場面においては,例えば, どのような手順で秘匿情報を確定し,その内容をどの範囲で,どのように共有するのかといったことが問題となるし,④流出の防止の場面においては,秘匿情報がどのような契機で流出し得るのか,流出しないためにどのような措置がとれるのかなど,更に検討すべき事項を整理する必要が生じる。そのような事項を,上記の各事項に従って整理すると別紙第2のとおりになると考えられる。
(3) 工夫例の活用
    秘匿情報の適切な管理の問題は,あらゆる裁判所の,あらゆる事件分野において,検討されるべき問題で,実際に,各庁各部ごとに様々な工夫がされている。参考になると思われる工夫例については, これまでも事務連絡等(民事訴訟事件,人事訴訟事件の分野については別紙第3の番号7,刑事事件の分野については別紙第3の番号5,9の各事務連絡等)で紹介しており,今後とも,適宜紹介していきたいと考えている。事務処理態勢を構築するに当たっては, このような工夫例を活用することも有益であろう。
(4) 適時の連携・協働等
   各庁における検討の結果として,構築され,認識が共有された事務処理態勢は,一般的な事務処理の指針にすぎないのであるから,特別な事情が存在する場合には,適時に裁判官を含めた関係職員で問題状況を整理し,具体的な対応策を検討し,改めて認識を共有しなけれぱならない。
(5) その他留意すべき点
ア 職員の意識
    各庁における検討の結果として,事務処理態勢が構築され,認識が共有されたとしても,これに基づいて実際に事務を行う者が秘匿情報の適切な管理の重要性を理解していないと,その趣旨に従った事務処理が行われないおそれがある。したがって,関係職員に対する問題意識の喚起がされていること,そして,それが継続的に行われていることが不可欠となる。
イ 他部署との連携とこれを踏まえた当事者等への教示
    例えば訟廷と担当部,第一審担当部と第二審担当部との間のように,実際の事務処理は異なる部署で行われるものの,秘匿情報の管理に当たって必要な情報を共有すべきである部署間においては,情報の引継ぎが適切に行われるような事務処理態勢を構築しなければならない。他方で,保全事件担当部,本案事件担当部,執行事件担当部相互間のように,情報を引き継ぐことを前提にした事務処理態勢を構築しにくいところも現実にはある。そこで,裁判所としては, どのような場合にどのような情報をどのような方法で引き継ぐのかという点を整理した上で,その整理を踏まえた適切な教示方法を検討しておく必要がある。
    また,住所や氏名を秘匿することで,執行や登記の場面で問題が生じる場合もある。相手方が勝訴した場合に執行の場面で困ることは容易に想像がつくが,秘匿を希望した側が勝訴した場合でも,例えば,本人の住所を秘匿するために現住所に代えて代理人住所を記載していたが,本訴と執行で代理人が異なったために連続性を証明できない場合や,同様の事例で現住所に代えて記載した代理人住所に弁護士事務所名が入っているなどしていたため,単なる連絡先であるとして法務局において(仮)差押登記を受け付けてもらえない場合などがあり得る。裁判所としては,このような問題点が生じ得る可能性があることを,あらかじめ当事者等に教示しておく必要がある。
ウ 法の規律や記録の概念
     裁判所は,適正な手続に則って裁判手続を行っていく使命を負っており,たとえ,当事者等が秘匿を希望したとしても,常にそれをかなえられるわけではない。記録の作成や保管を適切に行い,かつ,法で規律されている当事者等の権利を適切に保護する必要があることを前提にした上で,裁判所として,秘匿情報を適切に管理するためにどのようなことができるのかを,手続の流れ全体を通して整理し,法律上の根拠を踏まえて検討していく必要がある。例えば,適法に送達がされたことを証明する送達報告書や,裁判所による調査嘱託決定に対する回答書は,裁判手続が適正に遂行されたことを明らかにするものであり,記録として構成されるべき書類であると考えられる。そうであるとすれば,秘匿の要否にかかわらず,本来は,記録につづり込まなければならないものであって,秘匿情報が記載されているからといって記録にしないことは許されない。
3 おわりに
    どのような情報について秘匿情報とする必要があるか,秘匿情報が何を契機として外部に流出し得るかは,記録に表れ得る情報の種別,記録に表れた情報へのアクセス権の範囲によって違いが生じるから,実際には,事件等の特性に応じた個別の検討をしていかなければ,秘匿情報の適切な管理のための事務処理態勢を構築することができない。また,執務態勢によっても,検討結果は異なってくる可能性がある。したがって,各裁判所の置かれた状況を前提にし,その実情に即した事務処理態勢を検討した上で, このようにして構築された事務の流れが実効的であり,かつ,無理のないものになっているかを実際の事務処理を通じて不断に検証して, より良い事務魑態勢の構築に努めていく必要がある。

第2 関連記事その他
1 あおい法律事務所HP「7.訴えの提起における当事者の特定・住所地の記載されていない債務名義の強制執行の方法等」に載ってある東京高裁平成21年12月25日判決は以下の判示をしています。
     民事訴訟の当事者は,判決の名宛人として判決の効力を受ける者であるから,他の者と識別することができる程度に特定する必要がある。自然人である当事者は,氏名及び住所によって特定するのが通常であるが,氏名は,通称や芸名などでもよく,現住所が判明しないときは,居所又は最後の住所等によって特定することも許されるものと解される。
2 令和5年2月20日以降については,改正後の民事訴訟法133条に基づき,住所等又は氏名等が相手方当事者に知られることによって社会生活を営むのに著しい支障を生じるおそれがあることについて疎明があった場合,住所等又は氏名等を秘匿する旨の裁判をしてもらうことができるようになりました(法務省HPの「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」(令和5年1月11日付)に載ってある「住所、氏名等の秘匿制度の創設」参照)。
3(1) 以下の事務連絡等を掲載しています。
・ 訴状等における当事者の住所の記載の取扱いについて(平成17年11月8日付の事務連絡)
・ 犯罪被害者等の保護のための諸制度に関する参考事項について(平成19年12月25日付の事務連絡)
・ 刑事損害賠償命令手続から民事訴訟手続に移行した場合の犯罪被害者等の特定事項への配慮について(平成22年6月7日付の事務連絡)
・ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う留意点について(平成25年3月27日付の事務連絡)
・ 被害者特定事項の秘匿決定がされた事件における被害者等の住所等の取扱いについて(平成25年6月28日付の事務連絡)
・ 平成25年9月18日付の刑事局第二課長・家庭局第一課長書簡(平成25年度特別研究会の議論概要メモの送付)
・ 人事訴訟事件及び民事訴訟事件において秘匿の希望がされた住所等の取扱いについて(平成25年12月4日付の事務連絡)
・ 平成26年9月24日付の総務局第三課長・刑事局第二課長書簡(被害者匿名化事案において判決書等に実名を記載した場合の抄本等の作成及び交付等に関する東京地裁での取扱いについて)
・ 被害者特定事項の秘匿決定がされた事件における被害者等の住所等の取扱いについて(平成26年9月24日付の事務連絡)
・ 民事非訟手続における秘匿情報の適切な管理について(平成27年4月30日付の最高裁民事局第一課長及び総務局第三課長の事務連絡)
・ 
被害者特定事項の秘匿決定がされた事件及び当事者名を秘密記載部分として閲覧等制限の申立てがされた事件の報道機関等に対する期日情報の提供について(平成27年9月17日付)
・ 家事事件手続における非開示希望情報等の適切な管理について(平成28年4月26日付の最高裁判所家庭局第二課長及び総務局第三課長の事務連絡)
・ 
被害者特定事項の秘匿決定がなされた事件等における秘匿情報の適切な管理のための工夫例について(平成28年10月12日付の最高裁判所刑事局長及び総務局長の事務連絡)
・ 秘匿情報管理に関する事務処理態勢を維持・継続するための取組について(平成29年2月22日付の最高裁判所刑事局第二課長の事務連絡)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 訴訟提起に際して原告の住所等を秘匿したい場合の取扱い
・ 司法修習生の守秘義務違反が問題となった事例
 司法修習生に関する規則第3条の「秘密」の具体的内容が書いてある文書
・ 「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用
 司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
・ 司法修習生の逮捕及び実名報道

堀禎男裁判官(48期)の経歴

生年月日 S35.10.21
出身大学 不明
退官時の年齢 55 歳
H28.4.11 任期終了
H28.4.1 ~ H28.4.10 東京地裁9民判事(保全部)
H25.4.1 ~ H28.3.31 東京地裁37民判事
H22.4.1 ~ H25.3.31 さいたま家地裁熊谷支部判事
H19.4.1 ~ H22.3.31 名古屋高裁3民判事
H18.4.11 ~ H19.3.31 宇都宮地家裁足利支部判事
H16.6.21 ~ H18.4.10 宇都宮地家裁足利支部判事補
H13.4.1 ~ H16.6.20 大阪地家裁判事補
H10.4.1 ~ H13.3.31 前橋家地裁高崎支部判事補
H8.4.11 ~ H10.3.31 浦和地裁判事補

渡部雄策裁判官(18期)の経歴

生年月日 S16.1.3
出身大学 不明
退官時の年齢 49 歳
H2.4.1 依願退官
S61.4.1 ~ H2.3.31 大阪高裁5民判事
S58.4.1 ~ S61.3.31 神戸地家裁洲本支部判事
S55.4.1 ~ S58.3.31 神戸地裁判事
S52.4.1 ~ S55.3.31 大分地家裁日田支部判事
S51.4.8 ~ S52.3.31 大阪地裁判事
S49.4.1 ~ S51.4.7 大阪家裁判事補
S47.4.20 ~ S49.3.31 釧路家地裁判事補
S44.4.10 ~ S47.4.19 大阪地家裁判事補
S41.4.8 ~ S44.4.9 神戸地家裁尼崎支部判事補

平賀俊明裁判官(30期)の経歴

生年月日 S23.4.8
出身大学 早稲田大
退官時の年齢 65 歳
R1.5.30 瑞宝小綬章
H25.4.8 定年退官
H22.4.1 ~ H25.4.7 横浜家地裁川崎支部判事
H18.4.1 ~ H22.3.31 横浜家地裁相模原支部判事
H14.4.1 ~ H18.3.31 宇都宮地家裁真岡支部判事
H12.4.1 ~ H14.3.31 横浜地裁判事
H10.4.1 ~ H12.3.31 横浜家裁判事
H8.4.1 ~ H10.3.31 釧路地家裁帯広支部長
H5.4.1 ~ H8.3.31 横浜地裁判事
H2.4.1 ~ H5.3.31 旭川地家裁判事
S63.4.7 ~ H2.3.31 東京地裁判事
S59.4.1 ~ S63.4.6 法務省民事局付
S56.4.4 ~ S59.3.31 東京法務局訟務部付
S56.4.1 ~ S56.4.3 東京地裁判事補
S53.4.7 ~ S56.3.31 水戸地裁判事補

土屋靖之裁判官(32期)の経歴

生年月日 S27.11.27
出身大学 早稲田大
退官時の年齢 60 歳
R1.7.21 瑞宝中綬章
H25.8.25 依願退官
H22.4.1 ~ H25.8.24 東京高裁3刑判事
H17.4.1 ~ H22.3.31 長野地裁刑事部部総括
H14.4.1 ~ H17.3.31 千葉地家裁判事
H11.4.1 ~ H14.3.31 札幌家裁第1部部総括
H8.4.1 ~ H11.3.31 札幌高裁判事
H7.4.1 ~ H8.3.31 札幌地家裁判事
H5.4.1 ~ H7.3.31 釧路地裁刑事部部総括
H2.4.8 ~ H5.3.31 広島地裁判事
H2.4.1 ~ H2.4.7 広島地裁判事補
H1.4.1 ~ H2.3.31 トヨタ自動車(研修)
S62.4.1 ~ H1.3.31 東京地裁判事補
S58.4.1 ~ S62.3.31 東京地家裁八王子支部判事補
S57.4.1 ~ S58.3.31 札幌家地裁判事補
S55.4.8 ~ S57.3.31 札幌地裁判事補

大嶋惠裁判官(期外)の経歴

生年月日 S6.4.1
出身大学 不明
退官時の年齢 65 歳
R1.7.30 瑞宝小綬章
H8.4.1 定年退官
H1.4.1 ~ H8.3.31 福岡地家裁小倉支部判事
S60.4.1 ~ H1.3.31 長崎地家裁島原支部判事
S55.9.30 ~ S60.3.31 福岡地家裁直方支部判事
S53.4.1 ~ S55.9.29 福岡簡裁判事
S50.4.1 ~ S53.3.31 大分簡裁判事
S46.7.11 ~ S50.3.31 八女簡裁判事
S45.8.1 ~ S46.7.10 福岡簡裁判事

* 昭和45年9月30日に司法試験に合格したことから,司法試験合格後の10年間,簡易裁判所判事をしていたことに基づき,昭和55年9月30日,判事に任命されたのだと思います(裁判所法42条1項2号参照)。

松田光正裁判官(14期)の経歴

生年月日 S7.7.6
出身大学 不明
退官時の年齢 65 歳
叙勲 R1.7.31瑞宝中綬章
H9.7.6 定年退官
H5.4.1 ~ H9.7.5 浦和家裁少年部部総括
H1.4.1 ~ H5.3.31 東京地家裁八王子支部判事
S60.4.1 ~ H1.3.31 浦和地家裁熊谷支部判事
S56.4.1 ~ S60.3.31 金沢地裁第3部部総括
S52.4.1 ~ S56.3.31 千葉地裁判事
S47.4.10 ~ S52.3.31 東京地家裁八王子支部判事
S46.4.15 ~ S47.4.9 東京地家裁八王子支部判事補
S43.7.1 ~ S46.4.14 浦和地家裁判事補
S40.4.16 ~ S43.6.30 横浜家地裁判事補
S37.4.10 ~ S40.4.15 山口地家裁下関支部判事補

樋上慎二裁判官(48期)の経歴

生年月日 S41.5.12
出身大学 不明
退官時の年齢 53 歳
R1.10.6 病死等・瑞宝小綬章
H28.4.1 ~ R1.10.5 大阪高裁2刑判事
H25.4.1 ~ H28.3.31 横浜地裁1刑判事
H22.4.1 ~ H25.3.31 札幌高裁刑事部判事
H19.4.1 ~ H22.3.31 千葉地家裁判事
H18.4.11 ~ H19.3.31 岡山家地裁倉敷支部判事
H16.4.1 ~ H18.4.10 岡山家地裁倉敷支部判事補
H13.4.1 ~ H16.3.31 大阪地家裁判事補
H10.4.1 ~ H13.3.31 新潟地家裁長岡支部判事補
H8.4.11 ~ H10.3.31 千葉地裁判事補

*1 他の裁判官と一緒に,判例タイムズ2019年4月号に「大阪刑事実務研究会 刑の一部執行猶予制度に関する実証的研究」を寄稿しています。
*2 「刑事控訴審における事実の取調べ」(判例タイムズ1370号65頁ないし74頁)を執筆しました。
*3 以下の記事も参照してください。
・ 叙位の対象となった裁判官(平成31年1月以降の分)
・ 裁判官の死亡退官
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

松井千鶴子裁判官(39期)の経歴

生年月日 S34.6.18
出身大学 一橋大
退官時の年齢 65歳
R6.6.18 定年退官
R4.8.22 ~ R6.6.17 松江地家裁所長
R3.7.9 ~ R4.8.21 神戸地家裁尼崎支部長
R2.2.6 ~ R3.7.8 大阪家裁家事第1部部総括
H27.9.5 ~ R2.2.5 大阪家裁家事第3部部総括(遺産分割・財産管理部)
H27.4.1 ~ H27.9.4 京都家裁家事部部総括
H25.4.1 ~ H27.3.31 神戸地裁1民部総括(交通部)
H22.4.1 ~ H25.3.31 広島地裁4民部総括
H20.4.1 ~ H22.3.31 大阪高裁3民判事
H17.4.1 ~ H20.3.31 神戸地家裁明石支部長
H15.4.1 ~ H17.3.31 広島高裁第2部判事
H13.6.1 ~ H15.3.31 広島地裁判事
H10.4.1 ~ H13.5.31 東京地裁判事
H9.4.10 ~ H10.3.31 徳島地家裁判事
H7.4.1 ~ H9.4.9 徳島地家裁判事補
H4.4.1 ~ H7.3.31 東京地裁判事補
H1.4.1 ~ H4.3.31 福井地家裁判事補
S62.4.10 ~ H1.3.31 神戸地裁判事補

*0 上越教育大学教職大学院の実務家教員である松井千鶴子教授とは別の人です。
*1 39期の松井千鶴子裁判官は,令和6年8月1日,40期の宮武康 元公証人(令和6年1月31日辞職)の後任として,大阪法務局所属の本町公証公証役場の公証人に任命されました。
*2 以下の記事も参照してください。
・ 毎年6月開催の長官所長会同
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
・ 地方裁判所の専門部及び集中部
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

村越一浩裁判官(43期)の経歴

生年月日 S40.8.31
出身大学 京大
定年退官発令予定日 R12.8.31
R6.4.3 ~ 大阪高裁4刑部総括
R4.9.16 ~ R6.4.2 広島地裁所長
R3.6.10 ~ R4.9.15 那覇地裁所長
H30.7.18 ~ R3.6.9 大阪地裁10刑部総括(刑事上席判事)(令状部)
H28.1.1 ~ H30.7.17 大阪地裁12刑部総括(租税部)
H25.4.1 ~ H27.12.31 大阪地裁11刑部総括
H24.4.1 ~ H25.3.31 大阪地裁11刑判事
H23.4.1 ~ H24.3.31 大阪高裁6刑判事
H19.4.1 ~ H23.3.31 松山地裁刑事部部総括
H16.4.1 ~ H19.3.31 大阪地裁判事
H13.4.9 ~ H16.3.31 宮崎地家裁判事
H12.9.4 ~ H13.4.8 宮崎地家裁判事補
H12.7.3 ~ H12.9.3 東京地裁判事補
H9.7.15 ~ H12.7.2 法務省刑事局付
H8.4.1 ~ H9.7.14 東京地裁判事補
H5.4.1 ~ H8.3.31 那覇地家裁判事補
H3.4.9 ~ H5.3.31 大阪地裁判事補

*1 以下の記事も参照して下さい。
・ 高裁の部総括判事の位置付け
・ 毎年6月開催の長官所長会同
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
・ 大阪地裁の所長代行者,上席裁判官等
・ 大阪地裁の歴代の所長代行者,上席裁判官,大阪簡裁司掌裁判官等
・ 地方裁判所の専門部及び集中部
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
・ 判事補の外部経験の概要
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 判検交流に関する内閣等の答弁


*2の1 大阪高裁令和6年8月8日決定(担当裁判官は43期の村越一浩48期の畑口泰成及び50期の赤坂宏一)は,大阪地検特捜部が捜査した学校法人を巡る業務上横領事件で無罪が確定した不動産会社元社長が,捜査に関わった担当検事を刑事裁判で裁くよう求めた付審判請求で,同検事を特別公務員暴行陵虐罪で審判に付す決定を出し,請求を棄却した大阪地裁決定を取り消しました(日経新聞HPの「取り調べで「なめんな」 特捜検事を刑事裁判に、高裁決定」のほか,後藤・しんゆう法律事務所HPの「田渕大輔検察官の付審判請求抗告認容決定の全文」参照)。


*2の2  付審判請求棄却決定に対しては刑訴法419条に基づく通常抗告ができる(最高裁大法廷昭和28年12月22日決定)ものの,いわゆる付審判の決定に対する特別抗告の申立ては不適法です(昭和51年秋に発覚した宮本身分帳事件(事件本人は19期の鬼頭史郎京都地裁判事補)関する最高裁昭和52年8月25日決定)。
*2の3 最高裁昭和52年8月25日決定に関する最高裁判所判例解説(執筆者は19期の堀籠幸男)には「検察官の起訴の場合においては、起訴相当かどうかは、最終的には最高検察庁によってチェックされ、全国的に一定の基準のもとに統一が取れている」と書いてあります。

内藤裕之裁判官(44期)の経歴

生年月日 S40.11.2
出身大学 関西学院大
定年退官発令予定日 R12.11.2
R6.4.3 ~ 広島地裁所長
R3.10.10 ~ R6.4.2 大阪地裁所長代行者
R2.2.5 ~ R3.10.9 大阪地裁1民部総括(民事上席判事)(保全部)
H31.4.1 ~ R2.2.4 大阪地裁18民部総括
H27.4.1 ~ H31.3.31 大阪地裁5民部総括(労働部)
H24.4.1 ~ H27.3.31 宮崎地裁1民部総括
H21.4.1 ~ H24.3.31 大阪地裁5民判事
H18.4.1 ~ H21.3.31 東京法務局訟務部副部長
H16.4.1 ~ H18.3.31 総研書研部教官
H15.3.25 ~ H16.3.31 書研教官
H14.4.7 ~ H15.3.24 東京地裁判事
H12.4.1 ~ H14.4.6 東京地裁判事補
H9.4.1 ~ H12.3.31 広島法務局訟務部付
H9.3.28 ~ H9.3.31 広島地裁判事補
H6.7.1 ~ H9.3.27 宮崎地家裁判事補
H4.4.7 ~ H6.6.30 大阪地裁判事補

* 以下の記事も参照してください。
・ 毎年6月開催の長官所長会同
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
・ 大阪地裁の歴代の所長代行者,上席裁判官,大阪簡裁司掌裁判官等
・ 大阪地裁の所長代行者,上席裁判官等
・ 下級裁判所の裁判官会議から権限を委任された機関
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
・ 地方裁判所の専門部及び集中部
・ 判事補の外部経験の概要
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 判検交流に関する内閣等の答弁

永谷典雄裁判官(41期)の経歴

生年月日 S38.12.13
出身大学 名古屋大
定年退官発令予定日 R10.12.13
R4.9.16 ~ 東京高裁21民部総括
R2.3.30 ~ R4.9.15 広島地裁所長
H29.7.7 ~ R2.3.29 東京地裁20民部総括(破産再生部)
H26.10.27 ~ H29.7.6 東京地裁31民部総括
H26.4.1 ~ H26.10.26 東京高裁17民判事
H25.4.1 ~ H26.3.31 法務省大臣官房審議官(訟務担当)
H23.4.1 ~ H25.3.31 法務省大臣官房訟務企画課長
H22.4.1 ~ H23.3.31 法務省大臣官房民事訟務課長
H21.4.1 ~ H22.3.31 法務省大臣官房行政訟務課長
H20.4.1 ~ H21.3.31 法務省大臣官房財産訟務管理官
H18.4.1 ~ H20.3.31 法務省大臣官房参事官(訟務担当)
H15.4.1 ~ H18.3.31 東京法務局訟務部副部長
H12.9.1 ~ H15.3.31 東京地裁判事
H9.4.1 ~ H12.8.31 法務省訟務局付
H9.3.28 ~ H9.3.31 東京地裁判事補
H6.4.1 ~ H9.3.27 福島家地裁白河支部判事補
H3.4.1 ~ H6.3.31 新潟地家裁判事補
H1.4.11 ~ H3.3.31 大阪地裁判事補

*1 以下の記事も参照してください。
 高裁の部総括判事の位置付け
・ 毎年6月開催の長官所長会同
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
・ 地方裁判所の専門部及び集中部
 判事補の外部経験の概要
・ 判検交流に関する内閣等の答弁
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部
*2の1 広島大学法学部HPに「永谷典雄広島地方裁判所長による講演が行われました」(2020年7月8日開催分)が載っています。
*2の2 東京新聞HPに「東海第二原発の控訴審直前に裁判長が交代へ 国の代理人だった過去を原告側が問題視」(2023年1月25日付)が載っています。
*3 東京高裁令和6年9月26日判決(裁判長は41期の永谷典雄)は,千葉県四街道市立の保育所で平成29年,おやつのホットドッグを喉に詰まらせ,低酸素性脳症で寝たきりになったとして,当時3歳の男児と両親らが市に慰謝料など約1億2000万円を求めた訴訟において,請求を棄却した東京地裁判決を取り消し,合計約1億800万円の支払を命じました(産経新聞HPの「保育所でおやつのホットドッグ詰まらせ後遺症 千葉・四街道市に賠償命令 東京高裁」参照)。

修習給付金の課税関係に関する審査請求の理由書

   司法修習生の修習給付金は非課税所得であると主張した更正の請求に対し,とある税務署長から,令和元年12月20日付で,更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知を受けましたから,令和2年2月18日付で,国税不服審判所長に対する審査請求書を提出しました。
   その関係で,審査請求の理由書を以下のとおり貼り付けています(金額の明細を記載している別紙「審査請求人の収支の一覧表」は除いています。)。

第1 事案の概要
   本件は,審査請求人が,大阪地裁配属の第71期司法修習生であることに基づき平成30年中に支給された合計155万7000円の基本給付金(甲22参照)について,司法研修所の公式見解(甲2)に従い,その全額が雑所得の総収入金額に該当することを前提に平成30年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告(以下「本件確定申告」という。)を平成31年2月21日にした後,
   ①基本給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないこと,及び②仮に基本給付金が学資金に該当せずに非課税所得でなかったとしても,通勤交通費のほか,書籍代,名刺代,学習費及び衣服購入費等は基本給付金に係る雑所得の総収入金額から必要経費として控除すべきところ,本件確定申告に際して雑所得の計算上,通勤交通費しか必要経費として控除していなかった点で雑所得の金額が過大になっていることを主張して,◯◯税務署長に対し,平成31年3月20日に更正の請求をした(甲3)ところ,
   ◯◯税務署長から,令和元年12月20日付で,基本給付金は必要経費のない雑所得であることを主たる理由として,更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知を受けた(甲1)ため,これを不服として審査請求をしたという事案である。

第2 基本給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないこと
1 学資金としての性質を有すること
(1)ア 修習給付金は,基本給付金,住居給付金及び移転給付金からなるものである(裁判所法67条の2第2項)。
   そして,基本給付金とは,司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用をいい(裁判所法67条の2第3項),月額13万5000円とされている(司法修習生の修習給付金の給付に関する規則2条1項)。
イ ところで,法務省大臣官房司法法制部の説明によれば,基本給付金の月額は,日弁連が第68期司法修習生を対象に実施した修習実態アンケートにおいて,修習期間中における生活実費が月額9.4万円であり,学資金が月額4.0万円であり,合計の支出が月額約13.5万円であったという司法修習生の生活実態等の事情を総合考慮するなどして決定されたとのことである(甲5末尾1頁及び2頁,並びに甲6)。
   また,基本給付金は,司法修習生の通常の支出のうち,社会保険料,所得税・住民税等,勉強会参加費を除く交際費,奨学金返済費用,教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。),理美容・嗜好品等,自動車等関係費,仕送り金,家具家電・衣服購入費等まで満たすものとは考えられていない(甲5末尾2頁及び3頁参照)。
   そのため,基本給付金は,修習期間中の最低限の生活費及び教育費に充てるという趣旨で国から司法修習生に支給される金員であるといえる。
(2) 学資金(所得税法9条1項15号)とは,一般に,学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので,かつ,その目的に使用されるものをいうと国税庁は解釈している(甲4)のであって,学術又は技芸を習得するために直接必要な費用だけが学資金であると国税庁が解釈しているわけではない。
   そのため,学術又は技芸の習得に専念する目的で使用される生活費も学資金に含まれるといえる。
(3) 甲南大学法科大学院は,A種特待生(入学試験にきわめて優秀な成績で合格した者)に対し,学費(授業料及び施設設備費)の全額免除だけでなく,月額15万円もの給付金を支給している(甲7の1・3頁)ところ,その趣旨は生活費及び教育費であると思われる。
   また,令和2年度以降に入学した,住民税非課税世帯又はこれに準ずる世帯に属する国立大学の大学生の場合,一定の条件を満たすことで,授業料及び入学金の全額を免除された上で,日本学生支援機構から学資支給金(いわゆる給付型奨学金)を生活費として支給される予定である(甲7の2)。
   そして,これらのように学費の負担を前提としていない大学院生又は大学生に対して生活費等として支給される奨学金は,学資金として非課税所得であると思われる。
(4) 政府は,令和2年1月現在,今後の目標として,修士課程から博士課程に進学した大学院生のうち約5割が,学内奨学金などで月15万円から20万円の生活費相当額を受給できる状況の実現を目指しているところである(甲8)。
   そして,このような学内奨学金は学資金として非課税所得であると思われる。
(5) 法務省大臣官房司法法制部は,司法修習生の「罷免」は「退学」に対応し,「修習の停止」(司法修習生の身分は保有するが,一定期間修習をさせない処分)は「停学」に対応すると説明している(甲5末尾10頁及び11頁)ことからしても,司法修習生の身分は学生に類似するところがあるといえる。
(6) そのため,学費の負担を前提としていない司法修習生に対して最低限の生活費及び教育費として支給される基本給付金は,学資金としての性質を有するといえる。
2 金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないこと
(1) 司法研修所がある埼玉県の,平成29年10月1日改定の最低賃金である時給871円(甲9)で1週間当たり40時間(法定労働時間であることにつき労働基準法32条1項)働いた場合,871円×40時間×30日/7日=14万9314円となるから,月額13万5000円の基本給付金は埼玉県の最低賃金を下回る金額である。
   また,基本給付金の13万5000円という金額は,住居費の支出を伴わない第68期司法修習生の平均的な生活費(甲5末尾4頁)等を参考に設定された金額であるから,担税力がないといえる。
(2) 修習資金の貸与を受けなかった新65期ないし第70期司法修習生が家賃を払って一人暮らしをしていた場合,両親等の扶養義務者から生活費及び教育費という趣旨で月額17万円以上の仕送りを受けていた事案がごく普通にあったと思われる。
   そして,それらの仕送りについて,相続税法21条の3第1項2号の「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」を超えるとして贈与税が課税された事例があるとは思えないことからしても,3万5000円の住居給付金をあわせた月額17万円という修習給付金の金額規模は,「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」(所得税法9条1項15号所定の非課税所得)と比べて特に大きいわけではない。
(3) 平成28年度税制改正において所得税法9条1項15号が改正され,通常の給与に加算して受ける学資金が非課税とされた結果,医学生等に対する修学等資金の債務免除益は,通常の給与に加算して受ける学資金に該当するものとしてすべて非課税となった(甲10参照)。
   ところで,兵庫県養成医師制度を利用して兵庫医科大学に進学した場合,6年間で合計4480万円の貸付けを受けられるし,大学を卒業後,医師として9年間,兵庫県が指定する兵庫県内の医師不足地域等の医療機関で勤務した場合,貸与を受けた修学資金の返還を免除される(甲11参照)。
   そのため,4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税所得であると思われる。
(4) したがって,基本給付金は,金額規模等(甲5末尾6頁参照)を理由に学資金から除外される理由はないといえる。
3 職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,基本給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反すること
(1) 職業訓練受講給付金は,雇用保険を受給できない求職者がハローワークの支援指示により公的職業訓練を受講し,訓練期間中に訓練を受けやすくするための給付であり(甲14),租税その他の公課を課されない非課税所得である(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律10条)。
(2) 司法修習は,司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり,高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須な臨床教育課程として,実際の法律実務活動の中で実施されるものである(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁))。
   また,職業訓練受講給付金(平成21年当時の民主党のマニフェストにおいて,「求職者支援制度」の手当として記載されていたもの)が非課税所得とされた理由は,受給者の最低生活を保障するものであり,公課等を課して給付を減額することは,国の国民に対する最低生活保障の原則に照らして矛盾すると考えられたためであって(甲13),職業訓練の推進という政策的背景が理由とされているわけではない。
   さらに,職業訓練受講給付金及び基本給付金は,職業訓練期間中の生活を支援するという給付目的達成のために必要な最低限の給付である点で共通しているといえる(基本給付金だけでは司法修習生の通常の支出を賄えないことにつき甲5末尾2頁及び3頁参照)。
   そのため,職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,司法試験に合格しない限り採用されない司法修習生について,司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である基本給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反するといえる。
4 基本給付金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないこと
   所得税法上,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得で,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分される(最高裁平成29年12月15日判決(甲15))。
   しかし,基本給付金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではない。
5 結論
   したがって,大阪国税局課税部個人課税課審査指導係の見解(甲16)と異なり,基本給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないといえる。

第3 仮に基本給付金が非課税所得でないとしても,必要経費として控除していないものがある点で,本件確定申告で申告した雑所得の金額は過大であること
1 雑所得としての基本給付金について必要経費が認められること
(1) 司法修習生は,その修習期間中,その修習に専念しなければならないという修習専念義務を負っている(裁判所法67条2項)し,高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努める義務を負っている(司法修習生に関する規則4条)。
   そして,成績不良であったり,正当な理由なく欠席したりするなど,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由がある場合,司法修習生を罷免されたり,修習の停止を命じられたりすることとなる(裁判所法68条2項,司法修習生に関する規則17条及び18条)。
   また,司法修習生の罷免理由は公にされていないし,司法修習生のどのような行為が非違行為に該当するかについても公にされていない(甲17)ことからすれば,司法修習生という立場が安定しているとはいえない。
   そのため,司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は当然に存在するといえる。
(2) サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決(甲18)は,給与所得者において自ら負担する必要経費の額が一般に旧所得税法所定の給与所得控除の額を明らかに上回るものと認めることは困難であること等を理由として,給与所得者について必要経費の実額控除を認めず,給与所得控除による概算控除しか認めないことは,必要経費の実額控除が認められている事業所得者等との関係において憲法14条1項に違反しないと判示している。
   また,農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)は,生活費を支給する国の他の事業と重複受給できない点で(甲19の1・2頁及び3頁)生活費に充てることが予定されているところ,当該資金を受給した年に発生した交通費や授業料など研修に要した費用の額がある場合,雑所得の金額の計算上,必要経費として収入金額から控除することが認められている(甲19の2)。
   そのため,司法修習生において自ら負担する必要経費が存在するにもかかわらず,基本給付金について必要経費の控除を一切認めないことは,必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者等との関係において憲法14条1項に違反するといえる。
(3) したがって,大阪国税局課税部個人課税課審査指導係の見解(甲16)と異なり,雑所得としての基本給付金について必要経費が認められるといえる。

2 本件確定申告で申告した雑所得の金額は過大であること
(1) 通勤交通費は必要経費であること
ア 実務修習に出席するための通勤交通費について
(ア) 司法修習生は,埼玉県和光市の司法研修所で実施される導入修習が終了した後,実務修習地における分野別実務修習及び選択型実務修習,並びに司法研修所における集合修習を履修することとされている。
   そして,分野別実務修習は,民事裁判修習,刑事裁判修習,検察修習及び弁護修習からなるものであり(ただし,司法修習生ごとに順番は異なる。),それぞれ,配属地における裁判所,検察庁及び弁護修習先の法律事務所に赴いた上で実施される臨床教育過程である。
   また,選択型実務修習は,分野別実務修習において弁護修習をした法律事務所を拠点(ホームグラウンド)とした上で,裁判所,検察庁及び弁護士会で提供される個別修習プログラム等を自ら選択して履修することとされている。
(イ) 司法修習は,最高裁判所がその基本的内容を定め,司法修習生が司法修習を修了しないと法曹資格が与えられないものであるから,司法修習生は,修習過程で用意されているカリキュラムに出席し,その教育内容を全て履修することが本来要請されている(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁及び9頁))のであって,当該カリキュラムへの出席は修習専念義務の中核をなすものである。
   そのため,裁判所,検察庁,弁護修習先の法律事務所及び選択型実務修習の実施場所に出席するために必要となる通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
イ 二回試験の試験会場に出席するための通勤交通費について
   二回試験(正式名称は「司法修習生考試」である。)は裁判所法67条1項に基づく試験であって,二回試験に合格しない限り司法修習を終了できないため,司法修習生が必ず受験する必要がある試験である。
   そのため,二回試験の試験会場である新梅田研修センター(甲21・1頁)に出席するための通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
(2) 書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は必要経費であること
   審査請求人は,「高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない」司法修習生(司法修習生に関する規則4条)であった。
   そのため,法律書を購入し,これを熟読することで法律に関する理論と実務を身に付ける必要があった。
   また,実務法曹及び法科大学院同窓生との勉強会を含む交流,並びに社会人としての司法修習生にふさわしい服装を心がけることを通じて,弁護士にふさわしい品位と能力を備える必要があった。
   そのため,法律書購入に関する書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は,雑所得である基本給付金を生ずべき業務について生じた費用であるといえる。
(3) 審査請求人の雑所得の金額
   前述した事情を考慮すれば,別紙「審査請求人の収支の一覧表」(山中注;本ブログ記事では省略)にあるとおり,審査請求人が支給された基本給付金に係る必要経費は38万8394円であるといえる。
   そのため,仮に基本給付金が非課税所得でないとしても,必要経費として控除していないものがある点で,本件確定申告で申告した雑所得の金額148万2940円(甲3)は過大であって,審査請求人の雑所得の金額は116万8606円を上回らないといえる。

第4 修習専念資金の利息相当額は非課税所得であること
1(1) 修習専念資金とは,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう(裁判所法67条の3第1項)。
(2) 審査請求人の場合,司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則3条1項に基づき,毎月10万円を支給されていた(甲23)。
2 修習専念資金は,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用を補填する趣旨を有する金員である(甲5末尾2頁及び3頁参照)から,修習給付金と同様の性格を有するといえる。
   そのため,修習給付金が無利息であること(裁判所法67条の3第1項)に起因する,通常の利率により計算した利息の額に相当する利益(甲16・4頁)は学資金として非課税所得であるといえる。

第5 審査請求人が司法修習生として得たその余の収入は課税対象とはならないこと
1 審査請求人は,大阪地裁配属の第71期司法修習生として,最高裁判所から移転給付金(1回あたり10万8000円)及び旅費を支給されたことがあるし,大阪地裁及び大阪地検から旅費を支給されたことがある(甲24参照)。
2 移転給付金は,司法修習生がその修習に伴い住所又は居所を移転することが必要と認められる場合にその移転について支給されるものである(裁判所法67条の2第5項))から,修習を受けるために移転費用の実費相当額が支給されたものといえる。
   そのため,仮に移転給付金が所得税法9条1項4号の非課税所得に該当しなかったとしても,収入と経費が一致するため,結果として移転給付金は課税対象とはならない(甲16・2頁)。
3 旅費は,交通費,日当及び日額旅費として支給されるものである(国家公務員等の旅費に関する法律6条2項ないし6項及び15項)から,修習を受けるために交通費及び諸雑費の実費相当額が支給されたものといえる。
   そのため,仮に旅費が所得税法9条1項4号の非課税所得に該当しなかったとしても,収入と経費が一致するため,結果として旅費は課税対象とはならない(甲16・2頁)。
4 したがって,審査請求人が司法修習生として得たその余の収入は課税対象とはならないといえる。

第6 結論
   以上のとおり,審査請求人が司法修習生として得た収入はすべて非課税所得であり,又は課税対象とはならないといえるから,審査請求の趣旨記載のとおりの裁決を求める。
以  上

*1 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金も参照してください。
*2 審査請求書を提出した後に気づきましたが,「県から奨学金の貸与を受けた医学生が医師免許取得後県内の医療機関に一定期間従事することによりその返還及び利息の支払に係る債務を免除された場合の課税関係について」(平成24年3月9日付の名古屋国税局の文書回答事例)には,事前照会者の以下の見解が名古屋国税局によって是認されています(司法修習生の場合,基本給付金13万5000円及び下宿代に相当する住居給付金3万5000円の合計は17万円となります。)。
   本件奨学金1(山中注:9年間,県内医療機関で勤務すれば返還免除となる奨学金)では、入学金及び授業料とは別に毎月10万円の奨学金を貸与することとしていますが、これは、下宿代や通学費用、食費、教科書や医学書の購入費用など、医学生が修学する上で必要と認められる範囲で貸与するものであり、学資金として相当なものと考えています。
*3 以下の情報公開文書を掲載しています。
① 給付型奨学金の非課税措置に関する文部科学省の開示文書(平成28年度及び平成30年度の文書)
② 令和2年4月開始の給付型奨学金は非課税所得であることに関する国税庁の開示文書
→ 文部科学省が開示した,平成30年度の文書と重複しています。

給付型奨学金の非課税措置に関する文部科学省の開示文書(平成28年度及び平成30年度の文書)に含まれている文書です。

検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書

目次
1 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
2 検事正経験者の弁護活動に関する懲戒処分の実例
3 検事長経験者が起こした自分の交通事故への対応例
4 関連記事その他

* 「各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書」も参照してください。

1 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
(1) 首相官邸HPの「閣議」に基づいて内閣官房内閣総務官に開示請求をした上で,以下のとおり閣議書を掲載しています。
・ 小弓場文彦 仙台高検検事長任命の閣議書(令和7年11月21日付)
・ 川原隆司 東京高検検事長,菊池浩 大阪高検検事長,松本裕 名古屋高検検事長,山本真千子 福岡高検検事長及び山田利行 札幌高検検事長任命の閣議書(令和7年6月24日付)
・ 浦田啓一 広島高検検事長及び瀬戸毅 高松高検検事長任命の閣議書(令和6年11月22日付)
・ 鈴木眞理子 仙台高検検事長任命の閣議書(令和6年9月3日付)
(令和6年8月13日に上冨敏伸大阪高検検事長が死亡退官したため,同月30日に中村孝仙台高検検事長が大阪高検検事長に任命された。)
・ 畝本直美 検事総長,齊藤隆博 東京高検検事長,山元裕史 次長検事,菊池浩 名古屋高検検事長及び松本裕 福岡高検検事長任命の閣議書(令和6年6月28日付)令和6年7月9日付の裁可書
・ 上冨敏伸 大阪高検検事長,中村孝 仙台高検検事長及び山本真千子  札幌高検検事長任命の閣議書(令和6年2月13日付)
・ 齋藤隆博 次長検事,久木元伸 福岡高検検事長,上冨敏伸 仙台高検検事長及び佐藤隆文 高松高検検事長任命の閣議書(令和5年6月30日付)
・ 畝本直美 東京高検検事長,小山太士 大阪高検検事長,高嶋智光 名古屋高検検事長,和田雅樹 広島高検検事長及び神村昌通 札幌高検検事長等任命の閣議書(令和4年12月23日付)
・ 甲斐行夫 検事総長,落合義和 東京高検検事長,山上秀明 次長検事,畝本毅 高松高検検事長,田辺泰弘 福岡高検検事長,小山太士 札幌高検検事長任命の閣議書(令和4年6月17日付)令和4年6月24日付の裁可書
・ 大塲亮太郎 名古屋高検検事長及び辻裕教 仙台高検検事長任命の閣議書(令和3年8月27日付)
・ 甲斐行夫 東京高検検事長,中原亮一 福岡高検検事長,畝本直美 広島高検検事長,曽木徹也 大阪高検検事長,山上秀明 高松高検検事長任命の閣議書(令和3年6月25日付)
・ 田辺泰弘 札幌高検検事長任命の閣議書(令和3年3月26日付)
・ 林眞琴 検事総長,堺徹 東京高検検事長,落合義和 次長検事任命の閣議書(令和2年7月14日付)令和2年7月17日付の裁可書
・ 曽木徹也 高松高検検事長任命の閣議書(令和2年6月5日付)
・ 林眞琴 東京高検検事長及び中川清明 名古屋高検検事長任命の閣議書(令和2年5月26日付)
・ 中原亮一 広島高検検事長及び大塲亮太郎 仙台高検検事長任命の閣議書(令和2年3月24日付)
・ 片岡弘 札幌高検検事長任命の閣議書(令和元年12月23日付)
・ 甲斐行夫 広島高検検事長任命の閣議書(令和元年8月22日付)
・ 黒川弘務 東京高検検事長任命の閣議書(平成31年1月8日付)平成31年1月18日付の裁可書
・ 稲田伸夫 検事総長,堺徹 次長検事,八木宏幸 東京高検検事長及び大谷晃大 仙台高検検事長任命の閣議書(平成30年7月10日付)平成30年7月25日付の裁可書
・ 榊原一夫 福岡高検検事長及び井上宏 札幌高検検事長任命の閣議書(平成30年2月16日付)
・ 林眞琴 名古屋高検検事長及び小川新二 高松高検検事長任命の閣議書(平成29年12月26日付)


(これ以前の閣議書は検事総長又は東京高検検事長任命を伴う閣議書だけです。)
・ 稲田伸夫 東京高検検事長及び堺徹 仙台高検検事長任命の閣議書(平成29年8月1日付)
・ 西川克行検事総長,田内正宏東京高検検事長,八木宏幸次長検事,寺脇一峰大阪高検検事長,青沼隆之名古屋高検検事長,野々上尚福岡高検検事長,酒井邦彦広島高検検事長,稲田伸夫仙台高検検事長及び田内正宏東京高検検事長任命の閣議書(平成28年8月15日付)平成28年9月5日付の裁可書
・ 西川克行東京高検検事長,伊丹俊彦大阪高検検事長,青沼隆行次長検事及び三浦守札幌高検検事長任命の閣議書(平成27年12月1日付)
・ 大野恒太郎検事総長,渡辺恵一東京高検検事長,伊丹俊彦次長検事,尾崎道明大阪高検検事長,田内正宏広島高検検事長及び酒井邦彦高松高検検事長任命の閣議書(平成26年7月4日付)平成26年7月18日付の裁可書
・ 小津博司検事総長,大野恒太郎東京高検検事長,北村道夫仙台高検検事長,池上政幸名古屋高検検事長及び渡辺恵一次長検事任命の閣議書(平成24年7月13日付)平成24年7月20日付の裁可書
・ 笠間治雄検事総長,小貫芳信東京高検検事長,小津博司次長検事,藤田昇三名古屋高検検事長,梶木壽広島高検検事長,北田幹直札幌高検検事長及び勝丸充啓高松高検検事長任命の閣議書(平成22年12月24日付)平成22年12月27日付の裁可書
・ 大林宏 検事総長,笠間治雄東京高検検事長,柳俊夫大阪高検検事長,藤田昇三広島高検検事長,岩村修二仙台高検検事長,梶木壽高松高検検事長任命の閣議書(平成22年6月11日付)平成22年6月17日付の裁可書
・ 樋渡利秋検事総長,大林宏東京高検検事長,渡邉一弘札幌高検検事長,有田知徳仙台高検検事長及び伊藤鉄男高松高検検事長任命の閣議書(平成20年6月24日付)平成20年7月1日付の裁可書
・ 樋渡利秋 東京高検検事長,鈴木芳夫 広島高検検事長及び大泉隆史 仙台高検検事長任命の履歴書(平成18年12月15日付)
・ 但木敬一検事総長,上田廣一東京高検検事長,横田尤孝次長検事,樋渡利秋広島高検検事長,櫻井正史名古屋高検検事長任命の閣議書(平成18年6月30日付)平成18年6月30日付の裁可書
・ 松尾邦弘検事総長,但木敬一東京高検検事長,書上由紀夫大阪高検検事長,坂井一郎福岡高検検事長,斉田国太郎広島高検検事長及び田上廣一高松高検検事長任命の閣議書(平成16年6月15日付)平成16年6月25日付の裁可書
・ 松尾邦弘東京高検検事長及び古田佑紀次長検事任命の閣議書(平成15年9月26日付)平成15年9月29日付の裁可書
・ 甲斐中辰夫最高裁判所判事,木藤繁夫東京高検検事長及び坂井一郎広島高検検事長他4名任命の閣議書(平成14年10月4日付)
・ 甲斐中辰夫東京高検検事長及び松尾邦弘次長検事任命の閣議書(平成14年1月18日付)平成14年1月18日付の裁可書
・ 原田明夫検事総長,松浦恂東京高検検事長,甲斐中辰夫次長検事及び宗像紀夫高松高検検事長任命の閣議書(平成13年6月26日付)平成13年7月2日付の裁可書
・ 原田明夫東京高検検事長,松浦恂次長検事及び河内悠紀仙台高検検事長任命の閣議書(平成11年12月21日付)平成11年12月22日付の裁可書
・ 村山弘義 東京高検検事長,吉村徳則 名古屋高検検事長及び石川達紘福岡高検検事長任命の閣議書(平成11年4月23日付)
・ 北島敬介検事総長,則定衛東京高検検事長及び東條伸一郎札幌高検検事長任命の閣議書(平成10年6月19日付)平成10年6月23日付の裁可書
・ 北島敬介東京高検検事長及び堀口勝正次長検事,並びに特命全権大使3名任命の閣議書(平成9年12月2日付)平成9年12月2日付の裁可書
・ 土肥孝治検事総長,濱邦久東京高検検事長及び中靏聳札幌高検検事長任命の閣議書(平成8年1月16日付)平成8年1月16日付の裁可書
・ 土肥孝治東京高検検事長,増井清彦大阪高検検事長,緒方重威仙台高検検事長及び山口悠介札幌高検検事長任命の閣議書(平成7年7月28日付)
・ 根来泰周東京高検検事長任命の閣議書(平成5年12月21日付)平成5年12月22日付の裁可書
・ 吉永祐介検事総長任命の閣議書(平成5年12月10日付)平成5年12月13日付の裁可書
・ 吉永祐介東京高検検事長,土肥孝治大阪高検検事長,井嶋一友次長検事,敷田稔名古屋高検検事長,栗田啓二広島高検検事長,増井清彦仙台高検検事長及び村田恒高松高検検事長他3人任命の閣議書(平成5年6月29日付)
・ 岡村泰孝検事総長,藤本幸治東京高検検事長及び土肥孝治次長検事任命の閣議書(平成4年5月26日付)
・ 岡村泰孝東京高検検事長,吉永祐介大阪高検検事長,藤永幸治次長検事,敷田稔広島高検検事長,当別当季正高松高検検事長等の任命の閣議書(平成3年12月10日付)
・ 筧栄一検事総長及び根岸重治東京高検検事長任命の閣議書(平成2年5月8日付)
(2)ア 閣議書には,検事総長等に任命される人の履歴書が含まれています。
イ すでに検事長の身分を有していて,所管の高等検察庁を変更するだけの場合,閣議決定の対象にはならず(検察庁法15条1項参照),法務大臣の補職(検察庁法16条1項)しかないものの,便宜上,ファイル名に含めています。


 検事正経験者の弁護活動に関する懲戒処分の実例
・ 自由と正義2015年10月号89頁には,札幌地検検事正及び最高検察庁総務部長を経験した後に弁護士となった人の弁護活動に関する「戒告」事例(カナロコHPの「容疑者妻連れ検事総長と面会 横浜弁護士会、検察出身弁護士を懲戒」(2015年11月12日付)参照)が載っていますところ,当該事例における「処分の理由の要旨」は以下のとおりです。
(1) 被懲戒者は、2013年6月30日に懲戒請求者に接見し、その強制わいせつ被疑事件を受任したが、その際委任契約書を作成せず、弁護士報酬についての説明も十分しなかった。
(2) 被懲戒者は、上記(1)の事件に関し、「自己の罪を認めて深く反省し」などと記戦した2013年7月18日付けの懲戒請求者名義の誓約書を担当検察官に提出したが、誓約書の提出に当たり懲戒請求者の意思を確認しなかった。
(3) 被懲戒者は、上記(1)の事件に関し、懲戒請求者が勾留されている間に懲戒請求者の妻を帯同して担当検察官やその上司である検察官、更に検事総長や検察幹部と面会し、被懲戒者の元検察官としてのキャリアや人脈等を強く印象付け、刑事処分の公正に対して疑惑を抱かせる行為を行った。
(4) 被懲戒者は、上記(1)の事件に関し、被害者との示談交渉の席に懲戒請求者の姉の内縁の夫であったAを同席させ、その後の示談交渉もAと共同して行っていたが、示談交渉及び書面の作成に関して、懲戒請求者の意思を確認し内容を確定して起案するなどの行為を中心となって行わなかった。
(5) 被懲戒者は、上記示談交渉に際し、Aが懲戒請求者から相当額の示談金を受領する可能性を予見できたにもかかわらずこれを回避する措置を採らず、結果として、被懲戒者が関与しないままAが懲戒請求者から示談金名目の700万円を受領し保管した。
(6) 被懲戒者は、2013年9月7日に上記(1)の事件の弁護人を辞任したが、懲戒請求者からの弁護士報酬の返還請求に対し、脅迫的な意味合いを有し、返還請求をちゅうちょさせるような文言が記載された同年10月11日付けの書面に署名押印した。
(7) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第29条及び第30条に、上記(2)、(4)及び(5)の行為は同規程第46条に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
・ 弁護士職務基本規程77条は,「弁護士は、その職務を行うに当たり、裁判官、検察官その他裁判手続に関わる公職にある者との縁故その他の私的関係があることを不当に利用してはならない。」と定めていますものの,なぜか同条への言及がありません。


3 検事長経験者が起こした自分の交通事故への対応例
(1) 平成21年春の叙勲で瑞宝重光章を受賞した石川達紘 元名古屋高検検事長(17期。令和3年4月現在,光和総合法律事務所所属の弁護士です。)は,平成30年2月18日,一緒にゴルフに行く予定であった20代半ばの女性がトランクに荷物を積み込もうとした際にレクサス(トヨタの高級車)が急発進した結果,対向車線の歩道を歩いていた男性をはねて死亡させ,そのまま通り沿いの店に突っ込むという交通事故を起こしました(現代ビジネスHPの「20代女性と早朝ゴルフで「暴走ひき殺し」超有名弁護士・78歳の転落」(2018年3月15日付)参照)。
(2)ア 石川達紘は無罪を主張していましたし,令和2年11月26日の最終意見陳述では,被害者への謝罪を早口で述べた後、ロッキード事件で関係者から聞いた話として「「『新しい飛行機は不具合が生じる』『コンピューターは絶対ではない。最後は人が操作するのだ』と聞いた。釈迦に説法ですが、そのことを申し上げたい」」と述べたそうです(ヤフーニュースの「「私も被害者」レクサス急発進事故 元特捜部長の“放言”に裁判官もあぜん」(2020年12月5日付)参照)。
イ 東京地裁の三上潤裁判長(52期)は,令和3年2月15日,アクセルペダルの踏み間違いによる暴走事故だったと認定した上で,遺族との間で示談が成立していること,前科が存在しないこと等を考慮して,懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しました。
ウ 石川達紘は即日,東京高裁に控訴した他,主任弁護人は,「電子制御技術が発達した現代の自動車に対する知見に乏しい証人らの証言を基にした検察官の主張をそのまま鵜呑みにしたものであり、かつ、被告人の運転体勢に関する弁護人らの検証請求を却下するなど、およそ真実解明の姿勢に欠けた裁判体による極めて不当な判決であって、到底受け入れることはできない」というコメントを発表したみたいです(ヤフーニュースの「《レクサス暴走裁判》「罪と向き合え」「不当な判決だ」元事件捜査のプロと巨大組織はなぜ法廷で争ったのか」(2021年2月26日付)参照)。

4 関連記事その他
(1) 野村二郎 朝日新聞社会部 元記者は,平成6年11月29日の衆議院法務委員会において,参考人として以下の発言をしています(改行を追加しています。)。
     人事でしばしば指摘されるのは、特捜部出身の検事は大阪高検検事長にしかなれないという言い方があります。
    しかし、これは見方によって、大阪高検検事長にもなれるんだという見方もできると思います。官庁の組織については、行政官として適切な人と、いわば現場の専門職として適切な人と両方あると思います。そういうものを一緒くたにして、大阪高検検事長しかなれないんだというふうな見方をするのは間違いだと思います。
     ですから、私は特捜部に配置する検事の適性ということを見きわめながら、また特捜部に配置された後の検事の力量、資質というものを見きわめながら人事をすることが一番いいんではないかというふうに思います。
(2) 永年保存文書は,現用のものを除き,作成・取得後30年が経過するまでに国立公文書館に移管することになっています(公文書等の移管の仕組み(平成16年1月26日付の内閣府の文書)参照)。
(3)ア 朝日新聞デジタルの「(ひと)畝本直美さん 全国初の女性検事長として広島高検に着任した」(2021年9月8日付)には「夫は大阪地検の検事正だ。」と書いてありますところ,41期の畝本毅は2021年4月8日に大阪地検検事正に任命されています。
イ 畝本直美は40期です。
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 検事総長任命に関する閣議書(平成5年12月13日から令和6年7月9日まで)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 検事総長,次長検事及び検事長が認証官となった経緯
・ 法務・検察幹部名簿(平成24年4月以降)
・ 法務省作成の検事期別名簿
・ 親任式及び認証官任命式
・ 東京高検検事長の勤務延長問題
・ 黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀問題
・ 百日裁判事件(公職選挙法違反)
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所判事任命の閣議書
・ 高等裁判所長官任命の閣議書
・ 内閣法制局長官任命の閣議書
・ 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
・ 各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書
・ 令和への改元に関する閣議書等

・ 動画の6分54秒から7分7秒にかけて,「官記を受け取ったら,本当は頭より上に掲げて降ろさないようにお辞儀をすることになっています。検事総長は恐らく初めての認証式ではないので上に掲げていたから中身が見えるんです。」というナレーションが流れます。