判検交流に関する内閣等の答弁


目次
第1 国会答弁
第2 内閣答弁書
第3 閣議後記者会見
第4 関連記事

第1 国会答弁
1 21期の金築誠志最高裁判所人事局長は,平成13年3月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
     御指摘ありましたように、訟務検事のときに担当した事件を裁判官になってやるということはございません。同一事件で裁判官と国側の代理で行っている検事が会うということは、これは個々の事件でその種のデータをちょっと集めておりませんのでお答えできないわけでございます。
     訟務検事への出向をやめるべきではないかという御指摘なんですが、これは前からいろいろな機会に申し上げておりますけれども、法律家というのは、現在自分が役割として担っている仕事をその立場で全力を尽くす。代理人になれば代理人の立場でその職務を尽くす、裁判官になった場合は、それはもとはどういう立場からなったにせよ、公正中立という立場を堅持して裁判に当たる。これはひとり検事から裁判官になった場合に限りませんで、弁護士からなった場合でも、その他の立場からなった場合でも、これは同じでございます。
    その辺、今後、法律家の間で、法曹の間で相互交流を進めるべきだという御議論が今改革審議会等でもなされておりまして、裁判所の方でもそういう方向に努力したいと考えておりますけれども、その基本にあるのは、先ほど申し上げましたような法律家の責務といいますか、あるべき姿を基本にしているということでございますので、この辺を御理解賜ればと考えております。
2 高嶋智光法務省大臣官房審議官(総括担当)は,平成28年11月22日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 法務本省勤務の国家公務員総合職、旧Ⅰ種試験を含みますが、この試験の合格者と検察官出身者、それから裁判官出身者につきまして、その合計数に対するそれぞれの割合は、国家公務員総合職試験合格者が約六一%、それから検察官出身者が約二三%、裁判官出身者が約一六%でございます。
② まず、課長相当職でございますが、この職員の割合は、国家公務員総合職試験合格者が約二〇%、検察官出身者が約三八%、裁判官出身者が約三四%でございます。
   また、局長相当職に占める各職員の割合ですが、国家公務員総合職試験合格者が約一二・五%、検察官出身者が約五〇%、裁判官出身者が約三七・五%でございます。
3(1) 45期の竹内努法務省大臣官房政策立案総括審議官は,令和3年3月12日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 法務省に勤務しております裁判官出身の検事の数でございますが、令和三年二月一日現在で百三名と承知をしております。また、委員御指摘の法務省に勤務する裁判官出身の検事のうち国の指定代理人として活動する訟務検事の数でございますが、令和二年四月現在で四十二名と承知をしております。
(2) 上川陽子法務大臣は,令和3年3月12日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① いわゆる訟務検事に係る判検交流につきましては、国の代理人として活動する検察官の数に占める裁判官出身者の数の割合が余り多くなるということは問題ではないか、こうした御指摘を受けまして、法務省としては、その人数、割合を次第に少なくする見直しを継続的に行ってまいりました。
 もとより法曹間の人材交流でありますが、それ自体が直ちに裁判の公正中立性を害するものとは考えておらず、むしろ、法務省の所掌事務の適正な処理のためや、また、国民の期待と信頼に応え得る多様で豊かな知識経験等を備えた法曹の育成、確保のために意義のあるものというふうに考えております。このような観点から、いわゆる民事裁判分野での法曹間の人材交流におきましても、また国の代理人として活動する裁判官出身者の割合を少なくするとの方針を念頭に置きつつ、まさに適材適所の配置として裁判官出身者を訟務検事に配置してきたところでございます。
② 委員の御指摘でございますが、このような民事裁判分野におきまして判検交流を廃止すべきという内容でございますが、訟務検事に占める国の指定代理人としての活動をする裁判官出身者につきましては、今後も、法曹間のこの種の人事交流が持つ意義、また国の代理人となる裁判官出身者の縮小の方針を念頭に置きながら、引き続き人員配置を適切に行ってまいりたいというふうに考えております。


第2 内閣答弁書
1 「衆議院議員鈴木宗男君提出裁判官と検察官の人事交流に関する質問に対する答弁書」(平成21年6月16日付の内閣答弁書)には,以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 裁判官の職にあった者からの検察官への任命及び検察官の職にあった者からの裁判官への任命を始めとする法曹間の人材の相互交流は、国民の期待と信頼にこたえ得る多様で豊かな知識、経験等を備えた法曹を育成、確保するため、意義あるものと考えている。
   なお、このような法曹間の人材の相互交流が開始された経緯は、資料等が存在せず不明である。
② 平成二十年に、裁判官の職にあった者から検察官に任命された者は五十六人、検察官の職にあった者から裁判官に任命された者は五十五人である。
③ 法曹は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場に置かれても、その立場に応じて職責を全うするところに特色があり、一元的な法曹養成制度や弁護士の職にあった者からの裁判官及び検察官への任命等もこのことを前提にしている。したがって、法曹間の人材の相互交流により、裁判の公正、中立性が害され、「裁かれる者にとって不利な状況」が生まれるといった弊害が生じるとは考えていない。
2 「衆議院議員浅野貴博君提出いわゆる判検交流の存続に対する政府の認識等に対する質問に対する答弁書」(平成24年5月11日付の内閣答弁書)には,以下の記載があります。
    裁判官の職にあった者からの検察官への任命及び検察官の職にあった者からの裁判官への任命を始めとする法曹間の人材の相互交流については、先の答弁書(平成二十二年十二月七日内閣衆質一七六第二一〇号)二及び三についてで述べたとおり、裁判の公正、中立性を害するものではなく、国民の期待と信頼に応え得る多様で豊かな知識、経験等を備えた法曹を育成、確保するため、意義あるものと考えているが、国の利害に関係のある争訟において国の代理人として活動する検察官の数に占める裁判官の職にあった者の数の割合があまり多くなるのは問題ではないかとの指摘がなされたことなどから、この割合を次第に少なくする見直しを行うこととしたほか、裁判官の職にあった者を検察官に任命し検察庁において捜査・公判を担当させる交流及び検察官の職にあった者を裁判官に任命し裁判所において裁判を担当させる交流は行わないこととし、平成二十四年四月一日、これらの交流を解消するための人事異動を行った。
    この人事異動については、同日、報道機関に対し公表した。


3 「衆議院議員初鹿明博君提出生活保護に関する集団訴訟の担当裁判官に関する質問に対する答弁書」(平成28年2月12日付の内閣答弁書)には,以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)
① 裁判官が担当する事件については、裁判所において判断される事柄であり、政府としてその適否についてお答えする立場になく、また、御指摘のように「法務省と裁判所の間で取り決めをすべき」とも考えていない。
②   裁判官の職にあった者からの検察官への任命及び検察官の職にあった者からの裁判官への任命をはじめとする法曹間の人材の相互交流については、衆議院議員浅野貴博君提出いわゆる判検交流の存続に対する政府の認識等に関する質問に対する答弁書(平成二十四年五月十一日内閣衆質一八〇第二二〇号)一から四までについてで述べたとおり、裁判の公正、中立性を害するものではなく、国民の期待と信頼に応え得る多様で豊かな知識、経験等を備えた法曹を育成、確保するため、意義あるものと考えているが、国の利害に関係のある争訟において国の代理人として活動する御指摘の「訟務検事」の数に占める裁判官の職にあった者の数の割合があまり多くなるのは問題ではないかとの指摘がなされたことなどから、この割合を次第に少なくする見直しを行ってきたところである。いずれにしても、裁判官の職にあった者を「訟務検事」に任命することについては、昨年四月に法務省訟務局が新設され、「訟務検事」の担当する業務が変化したことも踏まえ、その必要性に応じて適切に行ってまいりたい。


第3 閣議後記者会見
・ 平成24年5月8日の法務大臣閣議後記者会見には,以下の記載があります。
   本日の閣議において法務省案件はございませんでした。
   法務省から一つの報告をさせていただきます。裁判官が一時検察官をやってまた裁判所に戻る,あるいは検察官が一時裁判官をやってまた検察官に戻るという,いわゆる判検交流という人事交流がありました。これについて,特に判検交流によって裁判の公正が害されたということではありませんが,裁判官と検事の間で少し癒着しているのではないかというような声もありました。特にそういった弊害が生じたわけではありませんが,そういった声があることや公正らしさというものを保つ必要があるという観点もございますので,今年4月の人事をもちまして検察官と裁判官とのいわゆる判検交流は廃止しました。また,判検交流につきましては,これまで民主党の「検察のあり方検討ワーキングチーム」での提案や法務委員会において指摘されてきたことでもございますので,そうした声も受け止めたわけでございます。


第4 関連記事その他
1 「言葉と経験」(筆者は56期の川尻恵理子弁護士)には,「法務省に出向中は、新規の法案立案を立て続けに担当したこともあり、人生で最も多忙な時期となりました。朝四時まで国会答弁を巡って外務省と喧嘩、朝五時にようやくソファーで仮眠に入ると、一時間後に厚労省からの電話で叩き起こされる、といった具合です。」と書いてあります(「日本女性法律家協会70周年のあゆみ~誕生から現在,そして未来へ~」(令和2年6月10日出版)225頁)。
2 以下の記事も参照してください。
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 行政官国内研究員制度(司法修習コース)
・ 裁判官の種類
→ 判事新任のタイミングについても説明しています。
・ 法務省の定員に関する訓令及び通達
・ 厚生労働省の内部組織に関する訓令及び細則
・ 閣議
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等



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