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取調べのための呼出しへの不出頭と逮捕の必要性(AI作成)

第1 記事の対象と結論

1 記事の対象

本記事は,在宅の被疑者が取調べのための呼出しに応じないことが,通常逮捕の必要性の判断にどのような影響を与えるかについて,現行の刑事訴訟法,刑事訴訟規則,裁判例及び令状実務の文献を生成AIで照合して整理するものである。中心となる資料は,最高裁判所事務総局刑事局が取りまとめた『刑事裁判資料第268号 逮捕・勾留に関する解釈と運用』(平成7年3月)4頁~5頁である。

以下は一般的な制度の説明であり,個別事件について逮捕の可能性を判定するものではない。実際の判断は,被疑事実,証拠の収集状況,呼出しの経緯,生活状況及び捜査機関との連絡内容等によって異なる。

2 結論

逮捕又は勾留されていない被疑者は,刑事訴訟法198条1項ただし書により,取調べのための出頭を拒み,出頭後いつでも退去することができる。したがって,呼出しに応じないこと自体は違法ではなく,それだけで通常逮捕の必要性が当然に認められるものでもない。

もっとも,正当な理由のない不出頭が繰り返された場合には,その経緯が逃亡又は罪証隠滅のおそれを推認させる一事情となり得る。回数だけで結論を決める法的な基準はなく,有効な呼出しを本人が受けたか,不出頭の理由が伝えられたか,連絡が継続しているか,住居・職業・家族関係が安定しているか,証拠がどこまで収集されているか等を総合して判断する必要がある。

第2 現行法における出頭拒否と通常逮捕

1 在宅被疑者の出頭拒否及び退去の自由

刑事訴訟法198条1項は,検察官,検察事務官又は司法警察職員が,捜査に必要があるときに被疑者の出頭を求めて取り調べることができると定める一方,逮捕又は勾留されていない被疑者は,出頭を拒み,又は出頭後いつでも退去できると定めている。在宅被疑者に対する取調べは,この意味で任意の手続である。

この出頭拒否の自由と,逮捕の必要性の判断とは別の問題である。出頭拒否が適法であることから常に逮捕の必要性が否定されるわけではないが,取調べを実現すること自体を目的として逮捕することも許されず,逃亡又は罪証隠滅のおそれ等を個別に審査しなければならない。

2 通常逮捕の理由及び必要性

刑事訴訟法199条1項本文は,被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由と,裁判官があらかじめ発する逮捕状を通常逮捕の要件とする。同条2項ただし書は,裁判官が明らかに逮捕の必要がないと認めるときは,逮捕状を発しないと定めている。

刑事訴訟規則142条1項3号,143条及び143条の3によれば,逮捕状請求書には被疑者の逮捕を必要とする事由を記載し,逮捕の理由及び必要性を認めるべき資料を提供しなければならない。裁判官は,被疑者の年齢及び境遇,犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし,逃亡及び罪証隠滅のおそれがない等,明らかに逮捕の必要がないと認めるときは,請求を却下しなければならない。呼出しへの対応は,この総合判断に用いられる事情の一つである。

3 軽微犯罪に関する追加要件

刑事訴訟法199条1項ただし書は,30万円以下の罰金,拘留又は科料に当たる罪については,被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由なく取調べのための出頭の求めに応じない場合に限り,通常逮捕を認める。ただし,刑法,暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律以外の法令の罪については,当分の間,罰金額の基準は2万円である。

このただし書は,軽微犯罪について一般の事件よりも逮捕を制限する追加要件である。したがって,軽微犯罪以外の事件について,不出頭それ自体を逃亡又は罪証隠滅のおそれとは別個の独立した逮捕理由とする根拠には直ちにならない。犯罪捜査規範122条も,軽微犯罪の逮捕状を請求するときは,住居不定又は正当な理由のない不出頭を疎明する資料を追加するよう求めている。

第3 最高裁判所事務総局資料の記載

1 資料の正式名称及び性格

本件資料の正式な書誌は,最高裁判所事務総局編『刑事裁判資料第268号 逮捕・勾留に関する解釈と運用』(平成7年3月)である。その前書きによれば,最高裁判所事務総局刑事局が,昭和48年度以降に実施された裁判官協議会等の協議結果を取りまとめたものである。

したがって,本件資料は,令状実務における検討内容を知る上で重要な公的資料であるが,法令でも最高裁判例でもなく,裁判官を法的に拘束する裁判規範ではない。資料の記載は,現行法及び個別の裁判例と区別して読む必要がある。

2 4頁~5頁の内容

本件資料4頁~5頁は,刑事訴訟法199条1項ただし書が適用される軽微犯罪はもちろん,その他の犯罪についても,明らかに逃亡又は罪証隠滅のおそれがなく,単に出頭要求に応じないという理由だけでは逮捕状を発付できないとする。他方,任意出頭の要求に正当な理由なく数回応じないことは,逃亡又は罪証隠滅のおそれを推認させる有力な事情になり得るとする。

この推認が働く前提として,本人が有効な呼出しを現に受けていること及び不出頭に正当な理由がないことが必要である。仕事や家庭の事情を伝えて日程変更を求めた場合,呼出しが本人に届いていない場合,又は捜査機関との連絡が継続している場合を,理由を告げずに呼出しを無視した場合と同じに扱うことはできない。

3 回数による機械的運用の否定

本件資料は,何回以上の不出頭があれば逮捕状を発付するという一律の基準を設けることについても検討した上で,回数だけを機械的な基準として逮捕の必要性を決めることは妥当でないとする。呼出しの回数は判断資料の一つにすぎず,具体的事情を総合しなければならないというのが資料の結論である。

実務文献には,3回,4回~5回又は5回~6回という目安の紹介も見られるが,これらは法令上の閾値ではない。最高裁判所事務総局資料自体が機械的な回数基準を否定している以上,一定回数に達すれば逮捕できると一般化することは正確でない。

第4 不出頭と逮捕の必要性をめぐる三つの見解

1 三説の内容

文献上の見解は,おおむね次の三つに整理できる。①独立要件説は,正当な理由のない不出頭を,逃亡又は罪証隠滅のおそれとは別個の逮捕必要性の根拠とする。②徴表説は,不出頭自体を独立の要件とはせず,反復した不出頭を逃亡又は罪証隠滅のおそれを推認させる一事情とする。③消極説は,不出頭から逃亡又は罪証隠滅のおそれが高まるという経験則を否定し,これらのおそれは不出頭とは別の具体的事情から認定すべきであるとする。

最高裁判所事務総局資料及び主要な令状実務文献は,基本的に徴表説に沿っている。もっとも,消極説からは,逃亡又は罪証隠滅を企図する者であれば,呼出しを何度も受けてからではなく,最初の呼出し以前又は直後に実行するはずであり,不出頭とこれらのおそれとの間に一般的な経験則はないとの批判がある。

2 三説に共通する判断の限界

三説の評価は分かれるものの,少なくとも,不出頭の事実又は回数だけで逮捕の必要性を決めるべきでないという点は,主要文献に共通する。徴表説に立つ場合であっても,不出頭が個別の事案で実際に逃亡又は罪証隠滅のおそれを示すのかを,経験則に即して説明する必要がある。

また,呼出しを無視する場合と,日程変更を提案する場合,弁護人を通じて連絡を続ける場合又は現に出頭した上で取調べの条件を提示する場合とは区別すべきである。いずれも取調べが実施されなかったという結果だけを見て,同程度の非協力と評価することはできない。

第5 最高裁平成10年9月7日判決

1 事案の経過

最高裁平成10年9月7日第二小法廷判決(平成7年(オ)第527号・第528号,裁判集民事189号613頁,判例時報1661号70頁,判例タイムズ990号112頁)は,旧外国人登録法上の指紋押なつ拒否事件に関する逮捕状の請求及び発付の適法性が争われた国家賠償請求事件である。

警察は,被疑者に対し,昭和61年2月24日,同年3月10日,3月24日,4月2日及び4月9日の5回にわたり任意出頭を求めたが,被疑者は正当な理由なく出頭しなかった。他方,被疑者の生活は安定し,弁護人は選任届,陳述書及び逃亡のおそれがない旨の保証書を提出していた。警察は指紋押なつ拒否の事実に関する証拠を相当程度収集しており,被疑者もその事実自体を認めていた。

2 最高裁の判断

最高裁は,逮捕状を請求された裁判官は,罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由と逮捕の必要性を審査し,明らかに逮捕の必要がないと認めるときは請求を却下しなければならないとした。また,罪証隠滅のおそれの対象は,被疑事実そのものに関する証拠に限られず,起訴・不起訴の判断又は量刑で考慮される事情に関する証拠も含むとした。

その上で,最高裁は,逃亡のおそれ及び指紋押なつ拒否の事実に関する罪証隠滅のおそれが強かったとはいえないと認めつつ,5回の正当な理由のない不出頭,被疑者の行動に組織的な背景がうかがわれたこと等を考慮し,明らかに逮捕の必要がなかったとはいえないとして,逮捕状の請求及び発付を適法とした。

3 判決の射程

この判決は,不出頭が5回に達すれば逮捕の必要性が認められるという数的基準を示したものではない。安定した生活,相当程度の証拠収集及び弁護人による保証書という必要性を弱める事情と,5回の不出頭及び組織的背景等という反対方向の事情を総合した事例判断である。

また,最高裁が用いた判断枠組みは,「明らかに逮捕の必要がなかったとはいえない」という刑事訴訟法199条2項ただし書及び刑事訴訟規則143条の3に沿うものである。積極的に逮捕が不可欠であったと判示したものと読み替えるべきではない。

第6 名古屋高裁令和4年1月19日判決

1 不出頭ではなく7回出頭した事案

名古屋高裁令和4年1月19日判決(令和3年(ネ)第167号,損害賠償,国家賠償請求控訴事件,判例集未登載)は,裁判所HPに掲載されていない。以下の事実関係及び判決要旨は,黒川亨子「在宅被疑者が弁護人立会いなしの取調べを拒否したところ,逮捕された事例」新・判例解説Watch刑事訴訟法No.157,vol.32,1頁~4頁により確認できる範囲である。

同解説によれば,被疑者は電車内の迷惑防止条例違反被疑事件で現行犯逮捕された後,勾留請求を却下されて在宅となった。被疑者と弁護人は,約4か月の間に警察署へ5回,検察庁へ2回の合計7回出頭し,弁護人の立会いを求めたが,捜査機関がこれを認めなかったため取調べは実施されなかった。その後,同じ被疑事実について再逮捕され,逮捕当日に起訴されたが,裁判所は勾留せずに釈放を命じ,刑事裁判では無罪判決が確定したとされる。

2 判決要旨

判決要旨によれば,名古屋高裁は,在宅被疑者に出頭義務がないことを確認する一方,取調べへの弁護人立会権を明文で認める規定又は最高裁判例がなく,そのような権利があるとの解釈は確立していないとした。その上で,弁護人立会いを求めたため取調べが実施できない状態が繰り返された場合に,検察官が正当な理由のない不出頭を繰り返した場合に準じて逃亡又は罪証隠滅のおそれを評価することには合理的根拠がないとはいえないとした。

さらに,同判決は,明らかに逮捕の必要がなかったとはいえず,逮捕状の請求及び執行は刑事訴訟法及び刑事訴訟規則の要件を満たすとしたと紹介されている。従前の記事にあった「合理的根拠がないとはいえ(ない)」という記載は,判決要旨の「合理的根拠がないとはいえず」に訂正する必要がある。

3 不出頭事案と区別して読む必要性

この事案は,呼出しを無視した事案ではなく,被疑者と弁護人が7回出頭した事案である。弁護人の立会権が確立しているかという問題と,在宅被疑者が任意の取調べに応じる条件として弁護人立会いを求めることをどのように評価するかという問題は,同じではない。犯罪捜査規範180条2項も,取調べに弁護人その他適当と認められる者を立ち会わせた場合を予定しており,弁護人が立ち会う取調べ自体を違法としているわけではない。

同判決に対しては,①現に7回出頭したことを正当な理由のない不出頭と同視する根拠が明確でないこと,②捜査機関が立会いを認めなかった結果を被疑者側の不利益に評価していること,③勾留請求及び先行する逮捕状請求が却下された後に逮捕の必要性を基礎付ける新たな事情が何であったか不明確であること,④取調べの実現を目的とする逮捕を許す結果になり得ること等の批判がある。したがって,同判決を,弁護人立会いを求めれば逮捕できるという一般的な先例として扱うことはできない。

第7 個別の事情を評価するときの視点

1 呼出しの有効性及び不出頭の理由

不出頭を判断資料とする前提として,①呼出しの日時,場所及び方法が合理的であったか,②被疑者本人が呼出しを受けて内容を理解したか,③仕事,病気又は家庭事情等の理由が伝えられたか,④代替日時又は時間制限等が提案されたか,⑤被疑者又は弁護人との連絡が継続していたかを確認する必要がある。

捜査機関が不出頭を逮捕の必要性の資料とする場合には,各回の呼出しの方法,受領状況,回答及び理由を具体的な資料で示す必要がある。被疑者側でも,呼出しの日時,回答,不出頭の理由,代替日の提案及び出頭実績を記録化することにより,単なる無視ではないことを後から確認しやすくなる。

2 逃亡及び罪証隠滅のおそれ

逃亡のおそれについては,住居,職業及び家族関係の安定性,連絡先及び所在の明確性,国外又は遠隔地への移動準備,予想される処分の重さ等が関係する。罪証隠滅のおそれについては,客観証拠及び供述証拠の収集状況,証拠又は関係者に接触できる現実的可能性,共犯者又は組織的背景,証拠隠滅の働きかけの有無等が関係する。

最高裁平成10年判決が示したとおり,罪証隠滅のおそれは,被疑事実そのものの証拠に限らず,起訴・不起訴又は量刑に関する事情の証拠にも及ぶ。他方,抽象的な可能性だけではなく,その事件でどの証拠にどのような働きかけが可能なのかを具体的に検討する必要がある。

3 回数ではなく経過全体を記録すること

不出頭の回数は,同じ回数でも意味が異なる。理由を告げず連絡を絶っている場合と,日程変更を提案している場合,弁護人を通じて連絡している場合,現に出頭して弁護人立会いを求めている場合又は取調べ以外の証拠提出に協力している場合とでは,逃亡又は罪証隠滅のおそれを推認する力が異なる。

したがって,逮捕の必要性は,「何回応じなかったか」だけではなく,「どのような呼出しに対し,どのような理由と代替案を示し,その後もどのような連絡及び行動を続けたか」という経過全体から判断すべきである。これは,最高裁判所事務総局資料が回数による機械的運用を否定した趣旨にも合致する。

第8 関連記事

通常逮捕・緊急逮捕・現行犯逮捕の要件及び逮捕後の手続については,被疑者の逮捕(AIリライト)に整理している。

取調べの録音・録画,苦情申入れ,黙秘権,犯罪捜査規範の取調べ関係条文及び弁護人立会いに関する資料については,警察及び検察の取調べ(AIリライト)を参照されたい。

出典・参考資料

1 法令・規則

刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)198条・199条(e-Gov法令検索)

刑事訴訟規則(昭和23年最高裁判所規則第32号)142条・143条・143条の3(裁判所ウェブサイト)

犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)122条・180条2項(e-Gov法令検索)

2 裁判例

最高裁判所第二小法廷平成10年9月7日判決(平成7年(オ)第527号・第528号,裁判集民事189号613頁,判例時報1661号70頁,判例タイムズ990号112頁)

②名古屋高等裁判所令和4年1月19日判決(令和3年(ネ)第167号,損害賠償,国家賠償請求控訴事件,判例集未登載,裁判所HP未掲載,LEX/DB文献番号25593187。判決全文は未取得であり,判決要旨及び事実関係は黒川亨子論文1頁~4頁により確認)

3 公文書・実務資料

①最高裁判所事務総局編『刑事裁判資料第268号 逮捕・勾留に関する解釈と運用』(平成7年3月)4頁~5頁(PDF14頁)

4 文献

①小松京子「逮捕の必要性」高麗邦彦・芦澤政治編『令状に関する理論と実務Ⅰ』(別冊判例タイムズ34号,判例タイムズ社,平成24年)94頁~95頁

②梅本友美「被疑者が捜査機関の呼び出しに応じない場合と逮捕の可否」高麗邦彦・芦澤政治編『令状に関する理論と実務Ⅰ』(別冊判例タイムズ34号,判例タイムズ社,平成24年)96頁~97頁

③恩田剛『逮捕勾留プラクティス』(司法協会,平成30年)68頁~71頁

濵田毅「『新たな取調べ受忍義務肯定説』について」同志社法学74巻1号25頁~142頁(令和4年),本件関連箇所40頁・49頁~53頁

黒川亨子「在宅被疑者が弁護人立会いなしの取調べを拒否したところ,逮捕された事例」新・判例解説Watch刑事訴訟法No.157,vol.32,1頁~4頁(令和5年)

⑥川崎拓也・黒田学「弁護実践としての到達点」自由と正義75巻5号27頁以下(令和6年5月)