第1 保存場所と通信の役割を分ける
サーバー,NAS,クラウドストレージ及びDNSは,同じ種類の製品を四つ並べたものではない。
サーバーはサービスを提供する役割,NASはネットワーク経由でファイルを保存・共有する装置等,クラウドストレージは外部サービスとして提供される保存領域,DNSは名前に対応する情報を問い合わせる仕組みである。
法律事務所では,便利さだけでなく,誰がアクセスでき,誰が復旧できるかを確認して使い分ける必要がある。
第2 サーバーとNAS
1 サーバーは役割を示す言葉である
ウェブサーバーはウェブページを,メールサーバーはメールの送受信等を,ファイルサーバーはファイルの共有等を提供する。
同じ機器が複数の役割を担う場合もある。
高価な専用機器だけがサーバーなのではなく,機能・運用形態を見て区別する。
2 NASもファイルサービスを提供する
NASは,ネットワークに接続して利用するストレージであり,ファイルサーバーとしての機能を持つ。
したがって,「NASはサーバーではない」と一律に説明するのは適切ではない。
共有フォルダーの権限,管理者のアカウント,更新方法,ディスク故障時の交換手順を確認することが重要である。
複数ディスクを使うRAIDは,可用性の確保に役立つ構成であるが,独立したバックアップの代わりにはならない。
利用者による削除,ランサムウェアによる暗号化,装置全体の故障等は,別に備える必要がある。
第3 クラウドストレージと同期
1 クラウドとローカルファイルは同じ状態とは限らない
パソコン上にファイル名が見えても,中身はクラウドにあり,必要なときだけ取得する設定の場合がある。
オフラインの期日や出張先で必要な資料は,事前に端末へ保存されているかを確認する。
一方,端末にコピーすれば,その端末の紛失・盗難時の漏えい対策も必要になる。
同期は,変更を他の保存場所へ反映させる機能である。
誤削除まで反映されることがあるため,同期済みという表示だけでバックアップ済みと判断してはならない。
Googleの容量に関する案内でも,容量超過によりアップロードや同期等が停止する場合が示されている(出典②)。
2 共有は必要な相手と範囲に限定する
事件単位のフォルダーを分け,閲覧のみか編集も必要かを決める。
「リンクを知っている全員」と「指定した相手」の共有範囲を混同しない。
共同受任の終了,職員の退職,外部委託の終了時には,アクセス権とローカルコピーの取扱いを見直す。
個人用アカウントに事務所資料を集約すると,担当者の退職・死亡・認証不能が事業継続上の問題となり得る。
契約名義,管理者,回復手段,データの持出し方法を事務所として把握しておく。
第4 DNSとウェブ・メールの障害
DNSは,ドメイン名に対応するIPアドレスなどの情報を問い合わせる仕組みであり,ウェブ本文や事件ファイルの保管庫ではない(出典①)。
独自ドメインの更新失念,DNS設定の変更,ウェブサーバーの停止,メールの容量超過は別々の問題である。
① ドメインの契約先と更新期限を確認する。
② ウェブとメールの双方が止まっているかを確認する。
③ 直前に変更したDNS・メール・サーバー設定を確認する。
④ 管理担当者又は契約先に,障害発生時刻と影響範囲を伝える。
DNSの設定変更はメール配送にも影響し得る。
復旧を急ぐ場合でも,現状の記録と変更の目的を確認せずに値を置き換えない。
第5 事務所で作っておく管理表
| 対象 | 管理表に記録する事項 |
|---|---|
| NAS・ファイル共有 | 機種,管理者,共有範囲,更新・復旧担当 |
| クラウド | 契約名義,管理者,利用者,容量,データ移行方法 |
| バックアップ | 対象,世代,保存先,暗号化,復元テスト結果 |
| ドメイン・DNS | 契約先,更新期限,管理担当,変更履歴 |
パスワードや回復コードは,一般の管理表に平文で書くのではなく,アクセスを制限した別の方法で管理する。
復元テストでは,ファイルが存在することに加えて,開けること,必要な版であることを確認する。
第6 関連記事と出典
運用ルールは弁護士情報セキュリティ規程を,回線の問題はインターネット接続の基礎を参照されたい。
全体の入口はIT関係のメモ書きである。
① JPNIC「DNSとは」
https://www.nic.ad.jp/ja/basics/beginners/dns.html
② Google「既存の保存容量とGoogle Oneの仕組み」
https://support.google.com/googleone/answer/9004014?hl=ja