第1 第77期日程表から分かる大阪の裁判修習
1 本記事の対象と資料の時点
本記事は,令和6年に実施された第77期大阪修習の裁判修習について,大阪地方裁判所の「第77期大阪修習の実務修習日程」及び「第77期大阪修習の指導担当裁判官の名簿」から確認できる範囲を整理するものである。
基準日は令和8年8月29日であり,第77期の日付,人数,班分け及び庁内の実施場所を現在の大阪修習にそのまま当てはめるものではない。
最高裁判所の「司法修習の概要」によれば,分野別実務修習は民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野をそれぞれ約2か月ずつ行う課程である。
裁判修習では,法廷傍聴,記録及び法廷でのやり取りの検討,判決内容についての意見交換並びに問題点の検討結果に関する文書報告及び講評が例示されている。
2 四つのクールと裁判修習の班
第77期大阪修習の分野別実務修習は,次の四つのクールに分けて実施された。
日程表で民事裁判又は刑事裁判の対象として明示された班は次のとおりである。
| クール | 期間 | 民事裁判修習 | 刑事裁判修習 |
|---|---|---|---|
| 第1クール | 令和6年4月16日~6月10日 | 4班 | 2班 |
| 第2クール | 令和6年6月11日~8月1日 | 1班 | 3班 |
| 第3クール | 令和6年8月2日~9月26日 | 2班 | 4班 |
| 第4クール | 令和6年9月27日~11月20日 | 3班 | 1班 |
各班は,クールを替えながら民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護を順次修習する構造である。
ただし,本記事が参照した裁判所の日程表は民事裁判修習及び刑事裁判修習の固定行事を中心とする資料であり,空欄日の具体的な修習内容までは確認できない。
3 部単位の配属と個別指導
第77期の配属表は,民事部又は刑事部ごとに司法修習生を割り当て,個別指導を担当する裁判官を対応させる形式で作成されている。
日程表の講義,起案,面談及び専門部修習はこの部単位の個別修習に組み込まれており,裁判所全体で一斉に同じ行事だけを行う構成ではない。
本記事では配属構造を説明するために名簿を参照したが,指導担当裁判官及び司法修習生の氏名は掲載しない。
個々の配属先又は担当者を知る必要がある場合は,原資料を確認する必要がある。
第2 民事裁判修習
1 民裁問研起案,講評及び面談
民事裁判修習の日程表には,開始時のオリエンテーションに続き,「民事訴訟における争点整理」の講義及び民裁問研起案が置かれている。
起案後には司法研修所教官によるオンライン講評及び面談があり,所属部の指導官との個人面談も複数日に分けて行われている。
また,「民事裁判実務ゼミ」は①及び②に分けて実施され,各回についてレポート提出期限が設定されている。
日程表からは,所属部での事件修習に加え,起案,講評,面談及びゼミを組み合わせて理解を確認する設計であったことが分かる。
2 保全部修習
民事裁判修習では,「保全事件講義」の後に保全部修習が組み込まれている。
第77期日程表では,司法修習生をおおむね6人又は7人の組に分け,第1民事部で日を替えて実施する形が四つのクールに共通している。
したがって,保全部修習は民事裁判修習生全員が同じ日に一斉参加する行事ではなく,少人数の交替制として読む必要がある。
もっとも,日程表には個別事件の内容又は修習生が担当した作業までは記載されていない。
3 執行部修習
執行部修習の前には事前講義が置かれ,その後,おおむね8人又は9人の組に分かれて民事執行センターへ直接登庁する日程が設定されている。
第1クールでは令和6年5月31日に事前講義,6月3日から7日まで執行部修習があり,第2クール以降にも同じ構造の行事が確認できる。
保全部修習と執行部修習は,いずれも通常の所属部での修習とは別に専門部門へ移動する日が明示されている点に特色がある。
ただし,具体的な見学先,記録の範囲及び作業内容は別途連絡とされている部分があり,日程表だけから詳細を補うことはできない。
4 家庭裁判所修習
第1クールでは,民事裁判修習の4班が令和6年5月20日から24日まで,刑事裁判修習の2班が同月27日から31日まで大阪家庭裁判所で家裁修習を行う日程である。
第2クールでも,民事裁判修習の1班が同年7月8日から12日まで,刑事裁判修習の3班が同月16日から22日までの平日に家裁修習を行う記載がある。
これに対し,第3クール及び第4クールの掲載日程表では,同じ形式の家裁修習の記載を確認できない。
そのため,第77期の全班について家裁修習が同一期間又は同一方式で実施されたと断定せず,確認できる第1・第2クールの事実に限って整理する。
第3 刑事裁判修習
1 刑裁問研起案,講評及び面談
刑事裁判修習は,オリエンテーション及び「刑事裁判に携わること」と題する講義に続き,刑裁問研起案を行う日程で始まる。
起案後には司法研修所教官によるオンライン講評及び面談が設定され,その前後に所属する刑事部での修習が続く。
日程表の最終日には,起案要領,刑事修習記録,実務修習結果票及びアンケート等の提出又は回収が記載されている。
このため,起案だけで完結するのではなく,記録作成及び修習結果の確認までが一つのクールに含まれている。
2 令状実務の講義と令状部修習
各クールには「令状実務について」の講義があり,その後,第10刑事部で令状部修習を行う日が複数設定されている。
令状部修習は所属部ごとにおおむね3人又は4人の少人数で実施され,日程を分けて順次参加する形式である。
日程表から確認できるのは講義日,参加組,実施部及び時間までであり,扱った令状の種類又は個別事件の内容ではない。
したがって,令状請求に対する判断方法の詳細まで日程表から推測することはできない。
3 犯罪被害者に関する制度の講義
刑事裁判修習の日程表には,「被害者に関する諸制度とその運用」と題する講義も置かれている。
この講義は第1クールの4月22日,第2クールの6月19日,第3クールの8月13日及び第4クールの10月7日に記載されており,四つのクールで共通する行事であったことを確認できる。
もっとも,日程表は講義名及び担当者を示すだけであり,配付資料又は講義内容は収録していない。
本記事では,講義名を超えて制度の説明内容を再現しない。
第4 第77期資料を現在の大阪修習に用いる際の注意点
1 固定行事と日常の個別修習を区別すること
第77期日程表で具体的に確認しやすいのは,講義,起案,面談,ゼミ,家裁修習並びに保全・執行・令状の専門部修習である。
他方,所属部で扱った事件,法廷傍聴の回数,記録検討の分担及び個別の講評内容は日程表に記載されていない。
したがって,日程表は裁判修習の全内容を逐日記録したものではなく,共通行事及び班別行事の配置を確認する資料として用いるのが相当である。
日程表にない体験を「実施されなかった」と評価することもできない。
2 第79期の日程と混同しないこと
第77期の分野別実務修習は令和6年11月20日までの日程であり,現在の期の実施日又は運用を示す資料ではない。
第79期司法修習の日程は別記事に整理しており,第79期の大阪修習については,その期の案内及び配付資料を優先して確認する必要がある。
大阪修習全体の配属人数,住居,就職活動及び各分野の概要は「大阪修習の情報」に集約している。
本記事は裁判修習の専門部修習及び固定行事に対象を絞り,弁護修習又は選択型実務修習のプログラム内容は扱わない。
第5 大阪修習の旧希望倍率
1 倍率の計算方法
司法研修所が第69期まで作成していた「司法修習の場所ごとの倍率等の一覧表」では,倍率Aを「第1希望者数÷配属人数」,倍率Bを「第1希望者数と第2希望者数の合計÷配属人数」としていた。
以下では,倍率Aを「第1希望の倍率」,倍率Bを「第2希望までの倍率」と表記する。
2 新63期から69期までの大阪の倍率
大阪について原表で確認できる全期間の数値は次のとおりである。
各期名及び第1希望の倍率は第1希望の推移表に,第2希望までの倍率は第2希望までの推移表にリンクしている。
| 期 | 第1希望の倍率 | 第2希望までの倍率 |
|---|---|---|
| 新63期 | 1.11 | 1.80 |
| 新64期 | 1.20 | 2.03 |
| 新65期 | 1.05 | 1.67 |
| 66期 | 0.84 | 1.42 |
| 67期 | 0.73 | 1.27 |
| 68期 | 0.70 | 1.18 |
| 69期 | 0.71 | 1.25 |
3 第70期以降の数値がない理由
最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の「実務修習希望地調査表の不開示判断(不存在)に関する件」(平成29年4月28日答申)によれば,第69期までは実務修習希望地調査表を作成していたが,事務の合理化の観点から第70期については作成しないこととされた。
したがって,第69期までの倍率は歴史的資料であり,これを用いて現在の大阪修習の人気度,第1希望での配属可能性又は第2希望で選ばれる可能性を推測することはできない。
第6 関連記事
大阪修習全体は「大阪修習の情報―第79期の日程,配属人数,実務修習,住居・就職情報」,第79期の全体日程は「第79期司法修習の日程」を参照されたい。
民事裁判修習で利用されるシステムについては「民事裁判書類電子提出システム(mints)における証拠説明書の提出方法」に整理している。
大阪の弁護実務修習については「大阪修習の弁護実務修習―指導弁護士への配属,個別事務所修習,合同修習及び成績評価(AI作成)」に整理している。
第7 出典
1 最高裁判所の制度説明
① 最高裁判所「司法修習の概要」(令和8年8月29日最終確認)。
② 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会「実務修習希望地調査表の不開示判断(不存在)に関する件」(平成29年4月28日答申,PDF2頁~4頁)。
2 大阪地方裁判所の第77期資料
① 大阪地方裁判所「第77期大阪修習の実務修習日程」(令和6年4月15日付け,同年6月10日付けほか,PDF1頁~22頁)。
② 大阪地方裁判所「第77期大阪修習の指導担当裁判官の名簿」(令和6年4月16日現在ほか,PDF1頁~23頁)。
3 旧希望倍率の資料
① 「司法修習の場所ごとの第1希望の倍率の推移表(新63期から69期まで)」(PDF1頁)。
② 「司法修習の場所ごとの第2希望までの倍率の推移表(新63期から69期まで)」(PDF1頁)。