第1 この記事が扱う静岡修習の範囲
1 第79期を中心とする公開情報
静岡修習は,静岡地方裁判所,静岡地方検察庁及び静岡県弁護士会を配属庁会として行われる実務修習である。本記事は,第79期の日程,第74期から第78期までの静岡配属人数,県内の司法機関,過去の地区別弁護修習及び第78期の選択型実務修習を,公開された原資料に基づいて整理する。
静岡修習では,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野を履修するという全国共通の枠組みに加え,東西に長い静岡県の本庁・支部配置を考える必要がある。静岡地裁本庁だけを前提として住居や移動を決めるのではなく,弁護修習の担当事務所所在地その他の個別通知を確認することが重要である。
2 公開資料から確定できることとできないこと
公開資料から確定できるのは,①第79期の全体日程,②第78期までの静岡配属人数,③静岡地裁・静岡地検・静岡県弁護士会の所在地及び組織,④第78期に静岡県内で実施された全国プログラムの内容である。これに対し,第79期の静岡配属人数,班編成,4分野の履修順序,地区別の弁護修習先及び第79期の選択型プログラムは,公開原資料で確認できない。
したがって,過去の体験記にある班編成や担当地区を,第79期の現行運用として扱うことはできない。本記事では,原資料で確定した事実と,過去の運用を示す補助資料とを区別する。
第2 第79期の日程と実務修習の構成
1 静岡修習の日程
第79期は,令和8年3月19日から同年4月10日まで導入修習を行い,同月14日から同年11月20日まで分野別実務修習を行う。静岡は東京,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,奈良,大津及び和歌山以外の実務修習地に当たるため,選択型実務修習を先に,集合修習を後に行う日程区分である。
| 段階 | 第79期の日程 |
|---|---|
| 導入修習 | 令和8年3月19日~同年4月10日 |
| 第1クール | 令和8年4月14日~同年6月9日 |
| 第2クール | 令和8年6月10日~同年8月2日 |
| 第3クール | 令和8年8月3日~同年9月28日 |
| 第4クール | 令和8年9月29日~同年11月20日 |
| 選択型実務修習 | 令和8年11月24日~令和9年1月8日 |
| 集合修習 | 令和9年1月13日~同年2月25日 |
第79期の全体日程と各段階の関連資料は,第79期司法修習の日程にも掲載している。個々の修習生が民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護をどのクールで履修するかは,配属後の班編成によって決まる。
2 4分野と選択型実務修習
最高裁判所の「司法修習の概要」によれば,分野別実務修習では,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護をそれぞれ約2か月履修する。裁判修習では係属事件の記録及び法廷でのやり取りを検討し,検察修習では捜査,証拠評価及び終局処分等を学び,弁護修習では指導担当弁護士の下で法律相談,法廷,起案その他の弁護士実務を体験する。
分野別実務修習の後には,配属地を拠点として自らプログラムを選ぶ選択型実務修習と,司法研修所で体系的な実務教育を受ける集合修習が続く。静岡修習に固有の事件数,起案数,見学先及び課外行事は,公開された全国共通資料からは分からない。
第3 静岡の配属人数と配属決定
1 第74期から第78期までの人数
各期の司法修習生配属現員表によれば,静岡の配属人数は19人から24人の範囲で推移している。直近5期の平均は21・4人であるが,これは過去の実績を算術平均した数値にすぎず,将来の定員又は配属可能性を示すものではない。
| 期 | 現員表の基準日 | 静岡 | 全国総数 |
|---|---|---|---|
| 第74期 | 令和3年3月31日 | 22人 | 1456人 |
| 第75期 | 令和3年11月12日 | 19人 | 1329人 |
| 第76期 | 令和4年11月27日 | 20人 | 1394人 |
| 第77期 | 令和6年3月21日 | 24人 | 1830人 |
| 第78期 | 令和7年3月19日 | 22人 | 1556人 |
各期の原票は,司法修習生配属現員表(48期以降)にまとめて掲載している。第79期の静岡配属現員表は確認できないため,本記事では過年度の平均から人数を推定しない。
2 新63期から69期までの希望倍率
新63期から69期までの実務修習希望地順位調査表によれば,静岡の希望倍率は次のとおりである。第1希望の倍率は第1希望者数を配属人数で除した数値,第2希望までの倍率は第1希望者数と第2希望者数の合計を配属人数で除した数値である。
| 期 | 第1希望の倍率 | 第2希望までの倍率 |
|---|---|---|
| 新63期 | 1.14倍 | 2.93倍 |
| 新64期 | 0.85倍 | 2.70倍 |
| 新65期 | 1.11倍 | 2.93倍 |
| 66期 | 1.18倍 | 2.71倍 |
| 67期 | 1.58倍 | 3.88倍 |
| 68期 | 1.25倍 | 2.88倍 |
| 69期 | 1.65倍 | 3.04倍 |
この7期では,第1希望の倍率は0.85倍から1.65倍までで平均1.25倍,第2希望までの倍率は2.70倍から3.88倍までで平均3.01倍であった。各期の一覧表及び集計資料は,司法修習の場所を選ぶ際の基礎データに掲載している。
3 希望順位だけでは決まらない配属
平成29年度(最情)答申第1号及び令和元年度(最情)答申第40号によれば,実務修習地は,希望を基本としつつ,希望順位,健康状態,家族状況その他の事情を考慮して全体調整される。個々の申込者について,どの事情がどの程度作用したかを示す独立した検討資料は作成されていないと説明されている。
各実務修習地の希望状況を集計した資料は第69期まで作成されたが,第70期以降は作成されていない。そのため,現在の静岡修習について「倍率は何倍か」「第何希望なら配属されるか」を公開一次資料から算定することはできず,過去の倍率を現在の人気度として用いることもできない。配属決定資料の内容は,72期司法修習予定者の実務修習地を決定する際に作成した文書にも掲載している。
第4 静岡県内の司法機関と修習場所
1 静岡地方裁判所
静岡地方裁判所は東京高等裁判所管内にあり,本庁のほか,沼津,富士,下田,浜松及び掛川に支部を置く。合議事件を扱う支部は沼津支部及び浜松支部であり,裁判員裁判は本庁,沼津支部及び浜松支部,行政事件は本庁で扱われる。
本庁は静岡市葵区追手町10番80号にあり,裁判所の案内ではJR静岡駅北口から徒歩約20分,又はバス約5分の後に徒歩約5分である。ただし,第79期の裁判修習で各支部を訪問する範囲及び頻度は公表されていない。
2 静岡地方検察庁と静岡県弁護士会
静岡地方検察庁本庁は静岡市葵区追手町9番45号にあり,同庁の案内ではJR静岡駅から徒歩約15分である。県内には沼津,富士,下田,浜松及び掛川の各支部があるが,第79期の検察修習で本庁以外の庁を訪問する具体的な運用は確認できない。
静岡県弁護士会本会は静岡地裁本庁と同じ静岡市葵区追手町10番80号の裁判所構内にあり,浜松支部及び沼津支部を置く。この配置から,本庁中心の裁判・検察修習及び弁護士会行事については追手町周辺に司法機関が集積しているといえるが,弁護修習の担当事務所まで同地域に限られるわけではない。
3 過去の地区別弁護修習
令和5年7月に公開された静岡修習経験者の記事は,当時の説明として,修習生を5人又は6人程度の4班に分け,裁判修習及び検察修習は全班が静岡本庁,弁護修習は2班が静岡市,1班が浜松,1班が沼津を中心としていたと記載する。もっとも,これは過去の運用を述べた二次資料であり,第79期の地区別配属を示す原資料ではないため,住居を決める際は,本庁への通いやすさだけでなく,弁護修習の担当事務所所在地,鉄道移動,自動車利用及び交通費の取扱いを配属庁会の最新案内で確認する必要がある。
第5 静岡修習の住居と移動
1 住居は修習生が確保すること
第79期の採用選考申込手引は,指定された実務修習地における住居を各自で確保すると明記している。静岡地裁本庁,静岡地検本庁及び静岡県弁護士会本会は追手町に集積しているため,静岡駅北側から本庁周辺への交通は住居選びの一つの基準となる。
しかし,静岡県は東西に長く,過去の資料では弁護修習が沼津又は浜松を中心とする班も確認できる。第79期の地区別配属が公表されていない以上,特定の駅又は地域を静岡修習全体に最適な居住地と断定することはできない。
2 配属後に確認する移動条件
住居契約の前後には,①担当事務所の所在地,②裁判・検察修習で支部へ行く予定,③鉄道又は自動車の利用,④交通費及び駐車場の取扱い,⑤選択型実務修習中の拠点を確認する必要がある。これらは班及びプログラムによって異なり得るため,過去の体験記よりも第79期の個別通知を優先すべきである。
第6 選択型実務修習と静岡県内のプログラム
1 選択型実務修習の仕組み
選択型実務修習は,分野別実務修習の成果を深め,又は同修習で十分に扱えない分野を学ぶため,修習生がプログラムを選択する段階である。配属地の裁判所,検察庁及び弁護士会が提供するプログラムのほか,全国の修習生を対象とする全国プログラムや,承認を得て自ら修習先を開拓する仕組みがある。
期ごとの留意点及び事務手続は,選択型実務修習に関する資料にまとめて掲載している。プログラムの名称,内容,募集人数及び日程は毎期同一とは限らない。
2 第78期に確認できた静岡県内の全国プログラム
最高裁判所開示の第78期全国プログラム案内では,静岡県内について次の3件を確認できる。いずれも実施期間は1週間,募集人数は1人であった。
| コード | プログラム名 | 修習場所 | 期間 | 募集人数 |
|---|---|---|---|---|
| 2627 | 法テラス中規模型事務所修習 | 法テラス静岡法律事務所 | 1週間 | 1人 |
| 2628 | 法テラス小規模型事務所修習 | 法テラス浜松法律事務所 | 1週間 | 1人 |
| 2629 | 法テラス過疎型事務所修習 | 法テラス下田法律事務所 | 1週間 | 1人 |
下田の案内は,成年後見を含む事件のほか,福祉機関,地域包括支援センター及び社会福祉協議会等との連携を修習内容として挙げる。この3件は,県庁所在地,浜松地域及び伊豆地域で異なる法律実務に接する機会が設けられたことを示すが,第79期にも同じプログラムが同じ条件で実施されることまでは示さない。
第7 第79期について今後確認すべき事項
1 配属後の確認事項
第79期の静岡修習について,公開資料だけでは生活設計及び具体的な修習内容を確定できない。配属庁会からの案内を受けた後,少なくとも次の事項を確認する必要がある。
- ①静岡の配属人数,班数及び班編成
- ②各班の4分野の履修順序
- ③裁判修習及び検察修習における支部訪問の有無
- ④弁護修習の担当事務所所在地及び地区別配属
- ⑤住居,通勤,自動車利用,交通費及び駐車場の取扱い
- ⑥第79期の個別プログラム及び全国プログラム
- ⑦始業・終業時刻,夜間又は休日の修習及び任意行事の扱い
- ⑧電子記録,端末及び修習関連情報の取扱いに関する最新指示
2 静岡修習に直接関する裁判例の検索結果
裁判所ウェブサイトの裁判例検索で「静岡修習」,「司法修習生」かつ「静岡」及び「実務修習地」を検索し,静岡への配属,静岡での班・支部・弁護配属又は静岡修習中の指導を直接の争点とする掲載裁判例は確認できなかった。裁判所ウェブサイトには全ての判決等が掲載されているわけではないため,この結果は裁判例が存在しないことを意味せず,商用データベースのみの収録例は未確認である。
第8 出典・参考資料
1 法令・最高裁判所資料
①e-Gov法令検索「裁判所法(昭和22年法律第59号)」66条及び67条
②司法研修所「第79期修習日程」(「司法研修所の教官会議議題等及び議事録(令和7年4月25日開催分)」所収)。原資料は第79期司法修習の日程に掲載
③最高裁判所「第79期司法修習生採用選考申込者の方へ」2頁~4頁(PDF2頁~4頁)
④最高裁判所「司法修習の概要」
⑤最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会「平成29年度(最情)答申第1号」(平成29年4月28日)及び「令和元年度(最情)答申第40号」(令和元年8月23日)
⑥最高裁判所開示「司法修習生配属現員表」第74期(令和3年3月31日現在),第75期(同年11月12日現在),第76期(令和4年11月27日現在),第77期(令和6年3月21日現在)及び第78期(令和7年3月19日現在)。各原票は司法修習生配属現員表(48期以降)に掲載
⑦司法研修所「実務修習希望地順位調査表等(人気調査)(56期~69期)」及びこれを基に作成した「司法修習の場所ごとの倍率等の一覧表」新63期,新64期,新65期,66期,67期,68期及び69期(各1頁)。各期PDF及び集計資料は司法修習の場所を選ぶ際の基礎データに掲載
⑧最高裁判所開示「選択型実務修習全国プログラムの内容が書いてある文書(第78期)」A-27頁~A-28頁
2 静岡県内の公的資料
①静岡地方裁判所「静岡地方裁判所・静岡家庭裁判所について」
②裁判所「静岡県内の管轄区域表」
③静岡地方裁判所「静岡地方・家庭裁判所,静岡簡易裁判所」
④静岡地方検察庁「所在地・交通アクセス」(令和7年6月18日更新)
⑤静岡県弁護士会「弁護士を探す」
3 過去の運用を示す補助資料
①石川アトム法律事務所「司法修習のお話~その3 『静岡』での実務修習」(令和5年7月31日)
4 裁判例検索
①裁判所「裁判例を調べる」。令和8年8月15日に「静岡修習」,「司法修習生」かつ「静岡」及び「実務修習地」を検索