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税務調査に関するメモ書き-事前通知,帳簿データ,質問応答記録書及びAI活用(AI作成)

第1 この記事の対象

本記事は,令和8年9月6日を調査基準日として,所得税,法人税,地方法人税及び消費税に関する通常の税務調査を中心に整理するものである。
国税犯則調査の強制処分,個別の税額計算及び不服申立ての具体的な期限は扱わない。

本文は,e-Gov法令検索,裁判所ウェブサイト,国税不服審判所及び国税庁の公表資料を照合し,その探索・整理と文章作成にAIを利用したものである。
予定納税,国税の納付方法,電子帳簿保存制度そのもの,記帳代行及び給与計算は税務調査と検索意図が異なるため,本記事では説明しない。

第2 税務調査と行政指導の区別

1 連絡の法的な位置付けを先に確認する

国税庁の税務調査手続に関するFAQ問2は,特定の納税者の税額等を認定する目的で質問検査等を行って申告内容を確認する「調査」と,自発的な見直しや修正申告を求める行政指導を区別している。
同FAQによれば,担当者は具体的な手続に入る前に,調査と行政指導のいずれに当たるかを明示する運用である。

連絡を受けたときは,①担当官署・部署・氏名・連絡先,②調査か行政指導か,③対象税目・期間・目的,④求められた資料・データ・期限・提出方法,⑤税務代理人への連絡の有無を記録するのがよい。
これは国税庁が列挙した法定様式ではなく,本記事が事実関係の取り違えを避けるために示す初動の整理である。

2 帳簿と申告の元の状態を保全する

事前通知又は行政指導を受けた後に,実在しない取引資料を作り,帳簿を事実と異なる内容に書き換え,又は応答対象の記録を削除してはならない。
申告又は記帳の誤りに気付いた場合は,元データを保全した上で,誤りの内容,発見日,根拠資料及び修正内容を別に記録するのが安全である。

第3 事前通知と無予告調査

1 実地調査の事前通知

国税通則法74条の9第1項は,実地調査で質問検査等を行う場合,原則として,あらかじめ納税義務者と税務代理人に次の事項を通知するものとしている。
①調査開始日時,②調査場所,③調査目的,④対象税目,⑤対象期間,⑥対象となる帳簿書類その他の物件,⑦そのほか調査の適正かつ円滑な実施に必要な政令事項である。

国税庁FAQ問12・問13によれば,通知は原則として電話による口頭通知であり,何日前という一律の法定期間はない。
同法74条の9第2項とFAQ問16・問17によれば,日時又は場所について合理的な理由があるときは協議の対象となり,申出は口頭でも差し支えない。

2 事前通知をしない場合

国税通則法74条の10は,申告内容,過去の調査結果,事業内容その他の保有情報に照らし,事前通知によって違法又は不当な行為が容易になり,正確な税額把握が困難になるおそれ,又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合,事前通知を要しないと定める。
無予告であることと,国税犯則調査として令状に基づく強制処分が行われることは同じではない。

国税庁FAQ問20・問21は,事前通知がない場合でも,運用上は臨場後速やかに対象税目・期間・目的等を説明するとしている。
事前通知をしなかったこと自体は不服申立ての対象となる処分ではない,というのが同FAQの説明である。

3 通知範囲以外の確認と反面調査

国税通則法74条の9第4項は,調査により通知事項以外の非違が疑われた場合に,その事項について質問検査等を行うことを妨げない。
国税庁FAQ問9も,通知対象年度の申告内容を確認するために必要であれば,資産の取得年度等の帳簿書類を求める場合があると説明している。

国税庁FAQ問23によれば,取引先等を調べなければ正確な事実把握が困難な場合,反面調査が行われることがある。
資料不足又は回答の不整合があるから直ちに反面調査になると断定することはできないが,取引の相手方,時期,金額及び証憑の対応関係を確認できる状態にしておくことは事実確認に資する。

第4 質問検査権とその限界

1 質問,検査及び提示・提出要求

国税通則法74条の2第1項は,所得税,法人税,地方法人税又は消費税の調査について必要があるときに,対象者への質問,事業に関する帳簿書類その他の物件の検査及び当該物件の提示・提出要求を認めている。
提示・提出の対象となる物件には写しも含まれる。

権限の範囲は「調査について必要があるとき」という要件に結び付いている。
したがって,要求内容が曖昧なときは,税目,期間,論点,帳簿の種類,対象フィールド,ファイル形式及び提出方法を確認し,何をどの根拠で提出したかを後から説明できるようにするのがよい。

2 罰則と理解・協力による運用

国税通則法128条2号・3号は,正当な理由のない不答弁,虚偽答弁,検査の拒否・妨害・忌避,提示・提出要求への不応答又は虚偽記録の提示・提出等について,1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金を定める。
通常の税務調査を「任意調査」と呼ぶことから,質問への答弁や帳簿書類の提示・提出をすべて自由に拒否できると理解するのは正確でない。

他方,国税庁FAQ問3は,罰則があることをもって強権的に権限を行使することは考えておらず,必要性を説明し,納税者の理解と協力の下で承諾を得て行うと説明している。
具体的な要求に疑問がある場合は,対象を黙って除外するのではなく,必要性と範囲を確認し,分離,マスキング,段階的な提示又は閲覧による確認が可能かを協議することになる。

3 職業上の秘密と帳簿書類の留置き

弁護士法23条は,弁護士又は弁護士であった者に職務上知り得た秘密を保持する権利と義務を定める。
国税庁FAQ問8は,職業上の守秘義務がある場合でも,調査に必要な範囲で業務上の秘密を含む帳簿書類等の提示・提出を求める場合があり,調査担当者にも守秘義務があると説明している。

守秘情報又は調査と無関係な個人情報を含むデータについては,対象フィールドと必要性を確認し,対象データの分離又は限定が可能かを検討する必要がある。
これは一律の拒否を意味せず,反対に,全データを目的・範囲の確認なく送信することを意味するものでもない。

国税庁FAQ問10によれば,帳簿書類等の留置きは必要性を説明し,納税者の理解と協力の下で承諾を得て行うものであり,承諾なく強制的に留め置くものではない。
調査担当者へ提出するために新たに作成したコピーと,業務用に従前から保有する原本又は写しとでは,返還を予定するかという点が異なるため,預り証と返還予定を確認するのがよい。

第5 帳簿・電子データの提示と提出

1 電磁的記録の提示・提出方法

国税庁FAQ問5は,電磁的記録の提示について,ディスプレイ上で調査担当者が確認できる状態にする方法を挙げている。
提出については,印刷物,調査担当者が持参した記録媒体へのコピー,e-Tax,オンラインストレージサービス又はメールを利用する場合があると説明している。

国税庁の「調査関係書類の提出について」(令和6年3月)は,税務調査,滞納整理又は行政指導で担当職員から求められた請求書等の写しや帳簿データを,PDF又はCSVでe-Tax提出できると案内している。
提出前に担当官署と提出先調査部門等番号を確認し,案内された経路以外へ機微な帳簿データを送らないことが必要である。

2 提出範囲と再現性

電子データの要求が「元帳データ一式」などと抽象的な場合,本記事では,①対象税目・期間・事業部門,②仕訳帳・総勘定元帳・補助元帳・各種マスター等の対象データ,③必要なフィールド,④CSV・PDF等の形式,⑤対象外情報とその理由を先に確認することを基本形とする。
応答対象の記録を黙って除外せず,範囲に争いがあるときは,提出するもの,保留するもの,理由及び解決案を明示するのがよい。

提出用データを作るときは,元データを読み取り専用で保全し,会計ソフトと版,出力日時・タイムゾーン,対象期間,抽出条件,項目,並び順,文字コード,件数,借方・貸方合計,除外条件及びファイルのSHA-256を記録するのがよい。
この記録は法令が一律に定める提出様式ではなく,後に提出集合の完全性と同一性を説明するための実務上の方法である。

3 摘要欄と消費税の帳簿記載事項

消費税法30条7項・8項によれば,通常の課税仕入れについて保存する帳簿の基本的な記載事項は,①相手方の氏名又は名称,②課税仕入れを行った年月日,③資産又は役務の内容,④支払対価の額である。
同条は,会計ソフト上の「摘要欄」という名称の一欄にすべてを記録することまでは定めていない。

国税庁の「適格請求書等保存方式に関するQ&A」問109は,取引先コードや商品コードによる表示も,必要な判別が明らかになる範囲で差し支えないと説明している。
同Q&A問110は,帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引について,通常事項に加えて特例該当の旨や相手方の住所・所在地が必要となる場合を示しており,取引日と適用される特例を個別に確認する必要がある。

法定事項が総勘定元帳,補助元帳,取引先マスター又は法定の別帳簿に分かれている場合は,各記録を対応付けるコードとマスターを保存し,どの組合せで一件の取引を説明できるかを確認するのがよい。
情報を多く書けば常に安全であるとも,摘要を短くすれば調査対象にならないともいえず,事実に即した法定事項と説明可能な対応関係が基準となる。

第6 質問応答記録書への対応

1 署名・押印と質問への答弁を分ける

国税通則法128条2号・3号が罰則対象として列挙するのは,不答弁,虚偽答弁,検査拒否等及び正当な理由のない提示・提出要求への不応答等である。
調査担当者が作成した質問応答記録書への署名・押印に応じることと,法定の質問に事実を答え,又は帳簿書類を提示・提出することは,別の行為として確認する必要がある。

署名・押印を求められたときは,記録の目的,対象となる質問,回答者,作成日及び訂正方法を確認するのがよい。
内容を確認しないまま署名・押印することも,質問自体への回答を一律に拒むことも,いずれも適切な整理ではない。

2 記録内容を一文ずつ確認する

質問応答記録書は,①質問と回答が対応しているか,②回答者自身が知る事実と推測が分かれているか,③日時・金額・取引先が資料と一致するか,④留保又は訂正が反映されているかを一文ずつ確認するのがよい。
記憶が曖昧な事項は推測で断定せず,帳簿,契約書,請求書,メールその他の資料を確認してから回答する旨を伝える方法がある。

記載が回答の趣旨と異なる場合は,具体的な箇所と訂正文を示し,訂正又は追記を求めるのがよい。
訂正に至らない場合でも,いつ,誰に,どの箇所について,どのような申出をしたかを手元の記録に残すことが,後の事実確認に資する。

第7 国税庁によるAI利用の公表範囲

1 予測AIは調査選定を支援する

国税庁の「国税庁におけるAIの活用」(令和8年7月)4頁~5頁は,保有データを予測AIで分析し,各税目等の申告漏れリスクをスコア化する予測モデルを構築していると説明する。
その判定結果に申告書や各種資料情報を併せ,職員が調査の要否と優先度を最終判断する仕組みである。

同資料は,予測モデルの判定結果を全国の国税局・税務署で活用している一方,調査対象のすべてが予測モデルを活用した事案ではないと明記する。
したがって,「AIが自動的に税務調査を決める」又は「すべての調査がAIで選ばれる」と表現することは,公表資料の範囲を超える。

2 生成AIは令和8年度中の利用開始予定である

同資料8頁は,国税庁独自の生成AI利用環境を令和8年度中に構築し,業務利用を開始する予定であるとしている。
想定例は,データ加工,文書作成・要約,翻訳,情報収集・分析,アイデア検討及び法令・判例等の検索であり,出力の利用時には内容に問題がないか職員が確認するとされる。

令和8年9月6日現在,今回確認した公表資料からは,この独自環境の構築完了及びすべての想定例の本稼働までは確認できない。
計画と既に行われている予測AIの利用を区別する必要がある。

3 個別の判定語やモデル仕様は公表されていない

国税庁の公表資料は,個々の元帳摘要が常に予測モデルへ直接投入されること,又は特定の単語が調査選定の引き金になることを説明していない。
未公表の特徴量又は判定基準を推測して,摘要を曖昧にし,応答対象を減らし,又は帳簿相互の対応関係を分かりにくくする方法は採るべきでない。

AI利用の有無にかかわらず,申告と帳簿・証憑の整合,法定記載事項,税区分,重複・期間外仕訳,手入力仕訳及び各マスターとの対応を事実に即して点検することが基本となる。
異常値は確認の端緒になり得るが,それ自体が申告漏れ又は不正の証明になるわけではない。

第8 調査終了時の手続

1 更正等を要しない場合と要する場合

国税通則法74条の11第1項は,実地調査の結果,更正決定等をすべきと認められない場合,その旨を納税義務者へ書面で通知するものとしている。
更正決定等をすべきと認める場合は,同条2項により,調査結果の内容として認める額と理由を説明するものとされる。

同条3項は,調査担当者が修正申告又は期限後申告を勧奨できるとし,申告を提出するとその調査結果について不服申立てはできないが,更正の請求はできる旨を説明し,その旨を記載した書面を交付しなければならないと定める。
指摘を受けたときは,税目・期間・取引・金額・法的根拠及び証拠を分けて確認し,修正申告に応じるかを判断する必要がある。

2 新たな情報による再度の質問検査

同条5項は,更正等を要しない旨の通知後,修正申告等の後又は更正決定等の後でも,新たな情報に照らして非違があると認めるときは,再度質問検査等を行うことができると定める。
終了通知を受けたことは,その時点で更正等を要しないという意味であり,その後に得られた新情報に基づく確認まで一律に排除するものではない。

第9 調査手続と後の争い

1 質問検査で得た資料の刑事手続での利用

国税通則法74条の8は,質問検査等の権限を犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定める。
通常の税務調査と犯則調査・刑事捜査は,目的と権限を区別しなければならない。

最高裁平成16年1月20日第二小法廷決定(平成15年(あ)第884号,刑集58巻1号26頁)は,旧法人税法の質問検査権について,取得資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたというだけでは,直ちに犯則調査又は捜査のための権限行使に当たることにはならないとした。
後の証拠利用の可能性だけでなく,調査の目的,経過及び実際の権限行使を確認する必要がある。

2 調査手続の瑕疵と課税処分の取消し

国税不服審判所平成27年5月26日裁決は,単なる調査手続の違法だけでは課税処分の取消事由とならず,調査を全く欠く場合又は証拠収集手続に重大な違法があり調査を全く欠くのに等しい場合は別である,という枠組みを示した。
当該裁決は,相続税の個別事案に関する行政裁決であり,あらゆる手続違反について裁判所の判断を一般化したものではない。

理由附記の不備は別に検討を要する。
最高裁昭和47年12月5日第三小法廷判決(昭和43年(行ツ)第61号,民集26巻10号1795頁)は,旧法人税法下の青色申告に係る更正理由の記載が不十分であるとして更正処分を違法とし,後の審査裁決で処分理由が明らかにされても瑕疵は治癒されないとした。

第10 関連記事

国税庁の法令解釈通達,事務運営指針,文書回答事例及び質疑応答事例の違いは,「国税庁の法令解釈通達・事務運営指針・文書回答事例・質疑応答事例(AIリライト)」で説明している。

第11 出典・参考資料

1 法令

e-Gov法令検索・国税通則法(昭和37年法律第66号)74条の2,74条の8~74条の11及び128条。
e-Gov法令検索・消費税法(昭和63年法律第108号)30条7項・8項。
e-Gov法令検索・弁護士法(昭和24年法律第205号)23条。

2 裁判例・行政裁決

最高裁平成16年1月20日第二小法廷決定・平成15年(あ)第884号・法人税法違反被告事件・刑集58巻1号26頁。
最高裁昭和47年12月5日第三小法廷判決・昭和43年(行ツ)第61号・法人税課税処分取消請求・民集26巻10号1795頁。
国税不服審判所平成27年5月26日裁決・公表裁決事例集第99集・相続税の更正処分等に関する裁決。

3 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料

①国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2~問26及び問28(令和8年7月一部改訂を含む。)。
②国税庁「国税庁におけるAIの活用」(令和8年7月)4頁~5頁及び8頁(PDF4頁~5頁及び8頁)。
③国税庁「調査関係書類の提出について」(令和6年3月)1頁~2頁(PDF1頁~2頁)。
④国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問109・問110(令和8年5月改訂)183頁~185頁(PDF1頁~3頁)。