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親族間で土地を使わせる場合の課税-使用貸借と相当の地代(AI作成)

第1 親の土地を無償で借りても,借地権の贈与税は原則としてかからない

親の所有する土地に子が自分の家を建て,権利金も地代も支払わずに使用する場合,国税庁は,土地を使用する権利の価額を零として取り扱っている。
そのため,子に借地権相当額の贈与税は課されない一方,後に親の土地を相続するときは,原則として自用地の価額で評価する(国税庁「親の土地に子供が家を建てたとき」)。

本記事は,令和8年9月4日を基準に,親子その他の個人間で,建物の所有を目的として土地を使わせる場合を中心に説明する。
次の表は,権利金その他の特別な経済的利益の授受がない場合の基本的な違いである。

土地の使わせ方借りる側の取扱い貸す側の土地評価
使用貸借使用権は零評価原則として自用地価額
通常の地代による賃貸借権利金授受の慣行がある地域では,借地権の贈与が問題となる通常の貸宅地の評価
相当の地代による賃貸借借地権設定による利益はないものとして扱う原則として自用地価額の80%

表の賃貸借に関する取扱いは,国税庁の相当の地代に関する通達の趣旨,1項,2項注及び6項による。
法人が当事者となる場合,既存の借地権がある場合及び小規模宅地等の特例については,それぞれ別の条件を確認する必要がある。

第2 固定資産税相当額を負担する場合も使用貸借に含まれる

民法593条及び601条は,無償で使用・収益して契約終了時に返還する使用貸借と,賃料を支払う賃貸借を区別している。
親族間でも,契約書の表題だけでなく,地代,権利金及びその他の利益の授受を確かめることになる。

国税庁の「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」1項は,土地の公租公課に相当する金額以下の授受があるにすぎない場合も,使用貸借に該当するとしている。
したがって,子が親にその土地の固定資産税・都市計画税相当額だけを支払っても,そのことだけで借地権の贈与税が生じるわけではない。
以下,この通達を「使用貸借通達」という。

反対に,毎月の地代がなくても,権利金や地代に代わる経済的利益を与えている場合は,同項の使用貸借には該当しない。
税額を少し超えたという数字だけで結論を出すのではなく,土地の使用の対価として何を約束し,何を支払っているかを検討する必要がある。

零評価になるのは,この土地使用権である。
親から土地の所有権そのものや建築資金の贈与を受ける場合まで,贈与税がかからないという意味ではない(相続税法,使用貸借通達1項)。

第3 通常の地代と相当の地代の違い

1 相場の地代を払うだけでは権利金の問題が残る

通常の地代とは,その地域の通常の賃貸借契約で支払われる地代である。
借地権設定時に権利金を授受する慣行がある地域で,権利金を払わず,通常の地代だけで借地権を設定すると,借地人が借地権相当の利益を受けたものとして,贈与税が問題となる。

これは,使用貸借の使用権を零評価とする取扱いとは異なる。
「無償では申し訳ないから相場の地代を払う」と決める前に,権利金の取扱いも含めて確認する必要がある(相当の地代に関する通達の趣旨及び2項注)。

2 相当の地代はおおむね年6%を基準とする

「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」1項は,権利金に代えて土地の自用地価額に対しおおむね年6%程度の地代を支払う場合,借地権設定による利益はないものとして取り扱う。
以下,この通達を「相当地代通達」という。
ここでいう6%は税務上の基準であり,民事上の地代の最低額を法律が定めたものではない。
民事上の地代や借地権価格との違いについては,借地権の地代・権利金・評価方法も参照されたい。

個人間の相続税・贈与税の取扱いでは,相当の地代の計算に限り,借地権を設定した年,又は相続・贈与があった年を含む過去3年間の自用地価額の平均額を用いる(同項注1)。
土地自体の相続税評価まで,この3年間の平均額にするわけではない。

独自の計算例として,権利金その他の経済的利益がなく,計算対象となる3年間の自用地価額が毎年5000万円であるとする。
年6%で計算すると,5000万円×6%=年300万円,月額では25万円となる。
使用貸借と比較すると継続的な支払額が大きくなるため,借地権の贈与税だけで選択を決めるのは適切でない。

3 相当の地代に満たない場合と地代を引き下げる場合

相当の地代に満たない地代による賃貸借では,権利金,通常の地代及び実際の地代の額などに応じて,借地人が受ける利益を計算する(相当地代通達2項及び4項)。
「6%に届かなければ常に土地価額の全額が贈与になる」という取扱いではなく,通常の地代を払う場合と,通常の地代を超えて相当の地代に満たない場合でも計算が異なる。

当初は相当の地代を支払っていても,後に相当の理由なく地代を引き下げると,その時点で借地人に生じる利益が贈与税の対象となり得る(同通達9項)。
契約当初の金額だけでなく,減額の理由とその時点の評価も残しておくことが考えられる。

第4 相続時の土地評価と小規模宅地等の特例

1 子の家や貸家があっても,使用貸借地は原則として自用地評価となる

使用貸借通達3項は,使用貸借に係る土地を相続又は贈与により取得した場合,自用地であるとした価額を課税価格に算入するとしている。
子が長年住んでいるというだけで,通常の借地権割合を控除することはできない。

子がその土地にアパートを建てて第三者に貸していても,親の土地を使用貸借している場合の土地評価は同じである。
親が貸家と土地の双方を所有している場合と異なり,親の土地が当然に貸家建付地になるわけではない(国税庁「使用貸借に係る土地を贈与により取得したとき」)。

2 相当の地代を収受する土地の80%評価

権利金等を受け取らず,相当の地代を収受している貸宅地は,相当地代通達6項により,自用地価額の80%で評価する。
相続時の自用地価額が5000万円なら,5000万円×80%=4000万円である。
これは土地の評価額を20%減らす計算であり,相続税額が80%減るという意味ではない。

他方,地代として受け取って残った金銭は,土地とは別の財産となる。
毎年の地代負担や貸主の所得税も含めた比較が必要であり,土地の評価割合だけで家族全体の負担が軽くなるとは限らない。

3 使用貸借でも居住用の特例を検討できる場合がある

自用地評価となることと,小規模宅地等の特例が使えないことは同じではない。
租税特別措置法69条の4及び国税庁「小規模宅地等の特例」は,被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地等も,一定の要件の下で対象としている。
土地を無償で貸していたとしても,用途,取得者,居住及び保有の継続などを確認する余地がある。

貸付事業用宅地等では,不動産貸付業又はこれに準ずる事業への該当性など,別の要件が問題となる。
この「準ずる事業」の説明に用いられる「相当の対価」と,借地権課税における年6%の「相当の地代」は別の概念であり,有償の契約に変えただけで特例が使えるとはいえない。

第5 同族会社など法人が関係する土地貸借

1 個人間の取扱いをそのまま当てはめない

使用貸借通達の前文は,当事者の一方が法人である場合の個人について,原則として法人税の取扱いに準拠するとしている。
したがって,親が子の会社に土地を貸す場合と,会社が役員個人に土地を貸す場合は,貸主・借主と課税される主体を分けて検討することになる。

法人税で用いる相当の地代は,土地の更地としての時価を基礎とするのが原則であり,一定の条件で公示価格,相続税評価額又は過去3年間の平均額なども認められる。
年6%の取扱いは,法人税基本通達13-1-2と,その割合を読み替える平成元年3月30日付通達によるもので,個人間の相続税・贈与税における計算の基礎と同一ではない。

法人税上の地代の改訂方法には,土地価額の上昇に応じて見直す方式と,それ以外の方式がある。
前者を選ぶ場合はおおむね3年以下の期間ごとに改訂する取扱いであり,すべての土地貸借に一律の3年ごとの改訂義務があるわけではない(国税庁「相当の地代及び相当の地代の改訂」)。
同案内は,改訂方法を契約で定め,借地人と連名で遅滞なく届け出ることを求め,届出がない場合は後者の方式を選んだものとして扱うとしている。

2 土地の無償返還に関する届出書の役割

国税庁の手続案内「土地の無償返還に関する届出」は,権利金を授受せず,相当の地代に満たない地代で土地を貸し,将来土地を無償で返還する旨を定めた場合の届出を案内している。
法人が借主であれば,個人地主との連名による提出も対象となる。
提出時期はその定めをした後遅滞なくとされ,契約書の写し等を添付する。

法人が土地を貸す側である場合,法人税基本通達13-1-7は,所定の届出により借地権の設定に伴う権利金の認定課税を行わない一方,相当の地代と実際の地代の差額を借地人への贈与として取り扱うとしている。
権利金の問題を処理しても,毎年の地代差額の問題までなくなるわけではなく,この法人地主の取扱いを個人地主の収入計算にそのまま当てはめることもできない。

また,相当地代通達8項は,無償返還届のある貸宅地を原則80%で評価する一方,同項の注は,使用貸借に係る土地については自用地価額で評価すると明記している。
届出書がある土地を,すべて80%評価にする取扱いではない。

3 土地と同族会社株式の評価,裁判例の示す範囲

被相続人が同族関係者である会社に土地を貸している場合は,土地だけでなく会社の株式評価も確認する必要がある。
相当地代通達6項注及び8項が参照する「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」は,該当する同族会社株式の純資産価額の計算で,土地の自用地価額の20%相当額を加算する取扱いを定めている。
土地の20%減額だけを取り出して,相続財産全体が同額減ると考えることはできない。

東京地裁令和5年1月26日判決(令和元年(行ウ)第490号)は,法人が利用する土地について,権利金の授受,実際の地代及び無償返還の合意等を検討し,その部分の価額が自用地価額の80%を下回るものではないと判断した。
判決は,無償返還届の提出を,借地人に経済的利益が移転していないことを推認させる事情として位置付けている(判決11頁~14頁)。
この事件の控訴は,東京高裁令和5年12月13日判決(令和5年(行コ)第62号)で棄却された。

この判断は,無償返還の合意等がある具体的な土地利用関係についてのものである。
届出の有無だけで,契約内容や経済的利益の移転を調べずにすべての土地の評価が決まると一般化することはできない。

第6 親族間の契約を決める前に確認する事項

1 親の所有地か借地か,従前の借地権があるか

親が土地所有者ではなく借地人であり,子がその借地を無償で使用する場合も,使用貸借通達2項は,その使用権を零として扱う。
同項では,子,親及び土地所有者の間で使用貸借の事実を確認するため,「借地権の使用貸借に関する確認書」を用いるとしている。
これは親の借地を子が使う場面の書類であり,親の所有地を子に無償で貸す場合すべてについて,同じ確認書の提出を求める規定ではない。

既存の借地権がある土地の底地を,借地人以外の者が取得して地代の授受をやめる場合は,別の問題が生じる。
使用貸借通達5項は,土地取得者が従前の借地人から借地権の贈与を受けたものとして取り扱い,借地人の地位を放棄していない旨を連署で申し出る場合の例外を定めている。
当初からの無償利用と,既存の権利関係を変更する場合を分け,過去の契約・申告も確かめる必要がある。

2 返還条件と毎年の税負担を契約に合わせて確認する

使用貸借の終了は,期間,使用・収益の目的及び借主の死亡等に関する民法597条と契約内容に従って判断する。
税務上の使用権が零評価であることだけで,貸主がいつでも直ちに土地を取り戻せるわけではない。

賃貸借とする場合も,無償返還届を出せば借地借家法の保護がすべて消えるわけではなく,借地借家法9条及び16条等との関係を別に検討する必要がある。
既存契約を定期借地へ変更する場合の民事上の確認事項は,貸主から定期借地契約への切替えを求められた借地人の注意事項で説明している。

個人地主の地代は,原則として所得税法26条及び36条による不動産所得の収入となり,必要経費を差し引いて所得を計算する。
生計を一にする親族の事業に関する対価には同法56条の特則があるため,家族間で実際に送金した金額が,そのまま受取人の所得・支払人の経費になるとは限らない。

実務上は,①土地と建物の登記事項,②契約書と権利金・地代の支払記録,③固定資産税等の明細,④過去の相続・贈与の申告書,⑤提出済みの届出書をそろえて,現在の関係を確認することが考えられる。
その上で,契約変更時の贈与課税,毎年の所得課税及び将来の相続評価を試算し,利用期間や返還条件と両立する方法を選ぶことになる。

第7 出典

1 法令

民法593条・597条・601条
相続税法9条・22条
所得税法26条・36条・56条
租税特別措置法69条の4
借地借家法2条・9条・13条・16条
法令は令和8年9月4日を基準とする。

2 国税庁の法令解釈通達

使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(国税庁長官,昭和48年11月1日付直資2-189ほか,令和8年8月31日改正)前文・1項~5項
相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて(国税庁長官,昭和60年6月5日付直資2-58・直評9,平成17年5月31日改正)趣旨・1項~9項

法人税基本通達第13章「借地権の設定等に伴う所得の計算」13-1-2・13-1-7・13-1-8
法人税の借地権課税における相当の地代の取扱いについて(国税庁長官,平成元年3月30日付直法2-2,平成3年12月25日改正)「記」及び注
相当の地代を収受している貸宅地の評価について(国税庁長官,昭和43年10月28日付直資3-22ほか)本文・別紙1(昭和42年12月5日付指示)

3 国税庁の制度説明・手続案内

No.4552「親の土地に子供が家を建てたとき」
No.4553「使用貸借に係る土地を贈与により取得したとき」
No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
No.5732「相当の地代及び相当の地代の改訂」
以上は各ページに令和7年4月1日現在の法令等との表示がある制度説明であり,本文では現行法令・通達と併せて参照した。

C1-63「土地の無償返還に関する届出」(国税庁,令和8年9月4日参照)手続対象者・提出時期・添付書類

4 裁判例

東京地裁令和5年1月26日判決(令和元年(行ウ)第490号)判決11頁~14頁
東京高裁令和5年12月13日判決(令和5年(行コ)第62号)判決1頁・14頁