第1 この記事が扱うTreeeSと結論
1 TreeeSは令和9年1月から先行導入される予定の裁判所システムである
TreeeS(ツリーズ)は,民事裁判手続の電子提出,電子記録の管理及び裁判所とのオンライン上のやり取りを担うため,最高裁判所が開発しているシステムである。
令和8年9月1日現在,民事訴訟の電子申立て等に用いられているのはmintsであり,TreeeSの先行導入は令和9年1月から名古屋高等裁判所本庁,名古屋地方裁判所本庁・支部及び同地裁管内の各簡易裁判所で実施される予定である。
最高裁判所は,その後の全庁導入について令和9年度中を目指しているが,これは目標時期であり,全国一斉の確定日を示すものではない。
したがって,法律事務所が現時点で行うべきことは,TreeeSを既に使えるシステムとして操作し始めることではなく,現在のmints運用を維持しながら,①事件ごとに利用すべき提出経路を判定できる台帳,②弁護士・事務職員のアカウントとメールアドレスの棚卸し,③GビズIDを利用するかどうかの意思決定手順,④公開される正式なTreeeSマニュアルを確認する担当者を準備することである。
2 本記事の基準日と資料の限界
本記事は,令和8年9月1日を調査基準日として,公開された法令,裁判所ウェブサイト,最高裁判所の調達仕様書及び最高裁判所から日弁連事務総長宛ての通知をAIで照合して作成したものである。
調達仕様書は,システムの設計,要件又は改修予定を確認する一次資料であるが,完成後の画面,実際の運用又は最終マニュアルを確認する資料ではない。
以下では,現行法と現在のmints運用,TreeeSについて公表済みの予定,及び今後の確認を要する事項を区別して記載する。
第2 TreeeS,RoootS及びmintsの違い
1 TreeeSには狭い意味と広い意味がある
令和8年6月9日付の最高裁判所調達仕様書は,TreeeSを「e提出・e記録管理システム」,RoootSを「e事件管理システム」と定義している。
同仕様書によれば,TreeeSのe提出は,利用者が最初にアクセスするユーザポータル,裁判資料の電子提出,手数料の電子納付及び外部システムとの連携等を担い,e記録管理は,電子記録の整理・保管,アクセス権限の管理並びに利用者による検索・閲覧・複写を担う。
これに対し,RoootSは,事件番号,事件名,担当部,担当裁判官・書記官,当事者及び期日等の事件情報を裁判所職員が管理するシステムである。
もっとも,令和7年7月2日付の最高裁判所調達仕様書は,TreeeSを,RoootS,e提出・e記録管理システム及びe法廷のウェブ会議アプリケーションとの連携機能等を含む「3つのe」を実現するシステム群の総称とも定義している。
このため,資料によって,TreeeSが利用者向けのe提出・e記録管理部分を指す場合と,RoootS等まで含むシステム群全体を指す場合がある。
個別資料を読むときは,資料中の定義を確認しなければならない。
2 mintsとTreeeSの比較
| 項目 | mints | TreeeS |
|---|---|---|
| 令和8年9月1日現在の状態 | 民事訴訟の電子申立て,書類の受領,電子記録の閲覧等に現に使用されている | 令和9年1月からの限定地域での先行導入が予定されている |
| 利用者向けの位置付け | 裁判所が現在案内している電子提出システム | ユーザポータル,e提出及びe記録管理を備える次期システムとして開発されている |
| 裁判所内部の事件管理 | mintsとは別にRoootSが用いられる | RoootSと機能的に連携する設計である |
| アカウント | 現行の裁判所案内とmintsマニュアルに従う | 独自のTreeeSユーザIDの取得画面が調達資料に示されているが,最終的な公開手順は確認を要する |
| 今後の時期 | TreeeSへの切替えが行われるまでは対象事件で使用される | 名古屋地区で令和9年1月に先行導入し,全庁導入は令和9年度中を目指す |
現在のmintsは,単なるファイル転送の仕組みではない。
裁判所の現行案内は,mintsについて,書類の提出,裁判所からの書類の受領,システム送達及び電子記録の閲覧等に使用するシステムとして説明している。
TreeeSとの差は,現在のmintsに何もできないという点ではなく,TreeeSがRoootSと連携する利用者向けのユーザポータル及び電子記録管理を含む目標システムとして設計されている点にある。
3 mintsのアカウントや事件データが自動移行するとは限らない
令和8年4月3日付の調達仕様書には,mintsアカウントと同じメールアドレスを用いてTreeeSのユーザIDを取得するための画面文言の改修案が記載されている。
この記載は,mintsとTreeeSが別のユーザID取得手続を前提としていることを示す一方,mintsのID,パスワード,事件データ又は設定がそのまま自動移行することまで示していない。
今回確認した公開資料では,移行対象データ,移行単位,並行運用期間及びmintsの終了時期を確定できないため,法律事務所は自動移行を前提としない方が安全である。
第3 TreeeSの導入時期と対象裁判所
1 令和8年5月21日の全面施行はmintsで始まった
民事訴訟法等の一部を改正する法律の全面施行日は,令和8年5月21日である。
同日以後,弁護士等の所定の訴訟代理人には電子申立てが義務付けられ,裁判所は電子申立てに用いるシステムとしてmintsを案内している。
現行mintsの対象事件,旧法事件,対象外手続及び具体的な操作は,別稿の「mintsを利用できる裁判所と対象事件」及び「mintsの実務解説 弁護士向けQ&A」を参照されたい。
2 令和9年1月の先行導入地域
最高裁判所事務総局の令和8年2月27日付通知は,TreeeSを令和9年1月から次の裁判所に先行導入するとしている。
①名古屋高等裁判所本庁
②名古屋地方裁判所本庁及び同地裁の支部
③名古屋地方裁判所管内所在の各簡易裁判所
この通知は「令和9年1月」としており,月内の具体的な稼働日,受付時間,対象となる事件の開始時点及び既係属事件の扱いまでは記載していない。
先行導入地域で事件を扱う場合は,提出直前に裁判所の公式案内を確認する必要がある。
3 全庁導入は令和9年度中の目標である
同通知は,全庁導入について令和9年度中を目指す方針に変更はないとしている。
令和8年6月9日付の調達仕様書も,令和8年度中に一部の裁判所で運用を開始し,令和9年度中に全国の裁判所で運用を開始する予定であると記載する。
もっとも,裁判所ごとの導入順序及び全国一斉切替日を示す公開日程表は,今回確認した資料には含まれていない。
4 民事訴訟以外への拡張は別の日程である
TreeeS及びRoootSについては,家事事件,人事訴訟その他の手続に対応するための第3次開発も進められている。
令和8年6月9日付の調達仕様書は,家事事件等の機能改修や法人ベース・レジストリ連携の本番反映を令和10年3月に想定している。
ただし,これは調達上の開発・リリース想定であり,個々の手続の法施行日,利用開始日及び対象事件を一律に確定するものではない。
第4 TreeeSに変わっても適用される現行法の基本
1 法律が定めるのは電子情報処理組織であり,TreeeSという製品名ではない
民事訴訟法は,電子申立て,電子記録の閲覧等及び電子情報処理組織による送達の要件と効果を定めているが,「TreeeS」という名称を法定しているわけではない。
TreeeS又はmintsは,法令上の電子情報処理組織を実装するシステムの名称である。
したがって,システムが切り替わっても,提出の到達時期,電子申立て義務及び送達の効力は,その時点で適用される法令によって判断することになる。
2 電子申立ての到達時期と弁護士の義務
民事訴訟法132条の10第3項は,電子情報処理組織を使用する申立て等について,申立て等に係る事項が裁判所のファイルに記録された時に到達したものとみなす。
送信ボタンを押した時刻,事務所内でPDFを完成した時刻又はメール通知を受けた時刻が,当然に法定の到達時期になるわけではない。
提出期限がある場合は,システム上の受付結果を確認し,事務所の事件記録へ保存する運用が必要である。
同法132条の11第1項は,委任を受けた訴訟代理人である弁護士等について,担当事件の申立て等を電子情報処理組織により行うことを原則として義務付けている。
同条3項は,裁判所の電子計算機の故障その他その者の責めに帰することができない事由により電子申立てができない場合を例外としている。
TreeeSの画面に接続できない場合でも,直ちに自己判断で紙提出へ切り替えるのではなく,障害情報,発生時刻,エラー表示,裁判所への連絡及び代替提出の根拠を記録すべきである。
3 システム送達は通知メールを開かなければ効力が生じない制度ではない
民事訴訟法109条の3第1項によれば,電子情報処理組織による送達は,①送達すべき内容を表示したものを閲覧した時,②当該内容を端末のファイルに記録した時,又は③通知が発せられた日から1週間を経過した時のうち,最も早い時に効力を生ずる。
同条2項は,受送達者の責めに帰することができない事由によって閲覧又は記録ができない期間を,この1週間に算入しないとしている。
したがって,mintsからTreeeSへ変わっても,通知メールだけを期限管理の起点とせず,システム上の送達対象,閲覧・記録時刻及び法定期間を区別して管理する必要がある。
民事訴訟法109条の4は,電子情報処理組織による送達を受ける旨の届出義務がある者が届出をしていない場合でも,所定の方法による送達を可能とし,その場合には通常の通知を要しないと定めている。
届出を失念すれば送達されないという理解は危険である。
4 電子記録の閲覧等も法令に基づく
民事訴訟法91条の2は,訴訟記録等の閲覧,複写及び証明書の交付について,裁判所外の端末から電子情報処理組織を使用する方法を定めている。
ただし,誰がどの範囲を閲覧又は複写できるかは,当事者等の地位,閲覧等の対象及び裁判所の許可の要否によって異なる。
システム上で技術的に表示できることと,法令上の閲覧権限があることを同一視してはならない。
第5 公開仕様から分かるTreeeSの主な機能
1 利用者ポータル,電子提出及び電子納付
令和8年6月9日付の調達仕様書によれば,TreeeSのe提出部分には,利用者が最初にアクセスするユーザポータル,裁判資料の電子提出,手数料の電子納付並びに汎用受付システム及びインターネットバンキング等との外部連携が含まれる。
これはTreeeSが,単に完成済みのPDFを置く場所ではなく,利用者が申立てから納付までの操作を行う入口として設計されていることを示す。
もっとも,公開調達仕様書からは,最終画面の入力項目,添付可能なファイル形式・容量,保存時間,受付結果の表示方法及びエラー時の復旧手順を確定できない。
mintsの数値や操作をTreeeSへそのまま転記してはならない。
2 電子記録の整理,検索,閲覧及び複写
同仕様書によれば,e記録管理部分は,電子化された訴訟記録を整理して保管し,裁判所職員がアクセス権限を管理し,利用者が記録を検索,閲覧及び複写できるようにするサブシステムである。
これにより,提出と閲覧が一つの利用者向け基盤の中で結び付く設計であることが分かる。
ただし,検索項目,表示順序,一括ダウンロード,印刷,アクセス履歴及び閲覧制限資料の具体的な扱いは,正式な利用マニュアルで再確認する必要がある。
3 RoootSとの連携及びe法廷
RoootSは,裁判所職員が事件情報を管理する内部システムであり,TreeeSと機能的に連携する。
利用者がTreeeSへ入力した情報又は提出した資料が裁判所内部でどのように立件・登録されるかを理解するには,TreeeSの受付表示とRoootS上の事件処理を区別する必要がある。
送信,裁判所への到達,立件,事件への関連付け及び裁判官・書記官による確認は,同じ時点を指すとは限らない。
令和7年7月2日付の調達仕様書は,TreeeSを広い意味で用いる場合,e法廷のウェブ会議アプリケーションとの連携機能等を含むとしている。
もっとも,ウェブ会議への参加条件,招待方法及び利用アプリは,手続と時点により異なり得るため,TreeeSの名称だけから特定してはならない。
4 調達仕様書は操作マニュアルではない
調達仕様書には,画面文言,ボタン制御,テスト,改修完了目標及び将来機能が記載される。
そのため,仕様書で「修正する」「想定する」「要検討」とされる事項は,公開時点の設計・改修方針としては重要であるが,本番環境で実装済みであることの証明にはならない。
実際の申立て又は送達に用いるときは,稼働時点の裁判所公式ページ,利用規約,操作マニュアル及び画面表示を優先して確認する必要がある。
第6 TreeeSのアカウントとGビズID
1 TreeeSでは独自のユーザID取得手続が予定されている
令和8年4月3日付の調達仕様書は,法人・士業者向けの「TreeeSのユーザID」を取得する画面の改修を掲げている。
同資料には,GビズIDを利用する経路,mintsアカウントと同じメールアドレスを利用する経路及び資格証明書類をアップロードする経路が示されている。
ただし,資料中には代替案又は「要検討」とされた部分もあるため,これらを完成後の確定手順として扱うことはできない。
2 GビズIDを利用するかどうかはユーザID取得前に決める設計である
同調達仕様書の改修案は,法人又は士業者の登録画面に,「GビズIDを利用して新規登録するかどうかは,最初に決める必要がある」「GビズIDを使わずにユーザIDを取得した後,GビズIDを利用する方法へ切り替えることはできない」という趣旨の注意文言を表示するとしている。
したがって,公開された最終登録案内を確認しないまま,とりあえずGビズID非利用でTreeeS IDを作成することは避けるべきである。
この注意は,TreeeS側の登録経路についてのものであり,GビズIDアカウント自体の変更可否を一般的に説明するものではない。
事務所内では,TreeeSでGビズIDを使う主体,使用するメールアドレス,管理者及び更新担当者をユーザID取得前に決める必要がある。
3 mintsと同じメールアドレスを使う経路は改修案である
同調達仕様書は,士業者が「mintsアカウントと同一メールアドレスを利用してTreeeSのユーザIDを取得」するための画面文言を示している。
これは,資格情報の確認を円滑にするための改修方針を示すが,mintsアカウントそのものをTreeeSへ変換する手続ではない。
最終手順では,対象となるmintsアカウント,メールアドレスの一致条件,日弁連による資格確認の方法及び手続期限を改めて確認する必要がある。
4 GビズIDの種類,有効期限及びメンバー設定
GビズIDは,デジタル庁が提供する事業者向けの共通認証システムであり,プライム,メンバー及びエントリーの3種類がある。
GビズIDの公式案内によれば,プライムは法人代表者又は個人事業主が本人確認を経て作成し,メンバーはプライム等の管理者が従業員用に作成する。
各行政サービスで利用できるアカウント種別は異なるため,TreeeSが最終的に受け付ける種別はTreeeSの公式案内で確認しなければならない。
令和8年7月9日以後,GビズIDプライム及びメンバーには2年3か月の有効期間が設けられている。
プライムの有効期限が切れた場合は,その配下のメンバーが有効期限内でも行政サービスへのログイン等に制限が生じる。
また,メンバーを作成しただけでは足りず,管理者が当該メンバーの利用可能な行政サービスを選択して保存する手順がある。
5 アカウント登録前の確認表
TreeeSの本登録を行う前に,少なくとも次の事項を確認することになる。
①登録する者の区分が,個人,法人又は士業者のいずれであるか。
②TreeeSでGビズIDを利用するか,利用しない経路を選ぶか。
③mintsと同じメールアドレスを利用する公式経路が最終案内でも採用されているか。
④資格確認に必要な資料,提出先及び仮登録期間は何か。
⑤二要素認証に用いる端末と,端末の故障・機種変更時の復旧担当者は誰か。
⑥GビズIDを利用する場合,プライム及びメンバーの有効期限と利用可能サービスの設定が完了しているか。
第7 弁護士,事務職員及び送達受取人の役割
1 公開されたアクター表が示す役割の違い
令和7年7月2日付の第3次開発調達仕様書のアクター一覧表は,外部利用者を,当事者・代理人等,サポーター,送達受取人及び第三者等に分けている。
同表は,家事事件手続等への改修を含むシステム要件を整理した資料であり,現在の民事訴訟における最終的なTreeeS権限表ではないが,役割を同一視できないことを示す資料となる。
同表では,当事者・代理人等はオンライン申立て・ファイル提出,システム送達の受領及び一定範囲の外部向け記録閲覧・ダウンロードを行う主体とされている。
サポーターは,司法書士又は法律事務所事務員等が例示され,オンライン提出はできるが事件記録の閲覧はできず,サポーターであるだけで当然に受送達者になるものではないとされている。
送達受取人はシステム送達を受領する別の役割として整理され,外部向け記録の閲覧・ダウンロード権限は付与されていない。
2 「提出できる」「記録を見られる」「送達を受ける」は別の権限である
法律事務所の事務職員が弁護士を補助する場合でも,ファイルを準備できること,システム上で提出操作を行えること,事件記録を常時閲覧できること及び送達を受領できることは別の権限である。
各人のアカウントについて,①事件への関与方法,②提出権限,③記録閲覧権限,④送達受領権限,⑤通知先を個別に確認する必要がある。
mintsにおける「補助者」の権限とTreeeSにおける「サポーター」の権限が同一であるとは限らない。
現行mintsの補助者については,「mintsマニュアルの読み方と目的別索引」で確認し,TreeeSについては稼働時の正式な権限表を別に確認する必要がある。
3 登録住所と事件上の連絡先住所を区別する
令和8年4月3日付の調達仕様書は,士業者アカウントについて,GビズIDで登録された本人確認上の住所が,申立フォームの当事者情報へ自動反映されないようにする改修を掲げている。
これは,本人確認のための登録住所と,事件で表示・使用する当事者又は代理人の住所を区別する必要性を示す。
もっとも,この資料は改修仕様であるため,本番画面で改修が完了したことを確認するまでは,住所の自動入力結果を提出前に必ず点検しなければならない。
第8 mintsからTreeeSへの移行に備える法律事務所の実務
1 事件単位の「提出経路台帳」を作る
TreeeSの限定先行導入後は,裁判所,事件の種類,申立日又は係属時点により,紙,mints又はTreeeSのいずれを使うかが異なる可能性がある。
少なくとも,①裁判所,②事件番号,③手続の種類,④適用法の区分,⑤現在の提出経路,⑥次回期限,⑦システム送達の届出状況,⑧担当弁護士,⑨担当事務職員,⑩根拠とした公式案内の確認日を事件ごとに記録することが考えられる。
TreeeSの切替えを事務所全体の一日だけで管理せず,事件単位で判定することが過誤防止につながる。
2 アカウント台帳を事件台帳と分ける
アカウント台帳には,弁護士・事務職員ごとに,mintsの登録メールアドレス,TreeeSで予定するメールアドレス,GビズIDの利用方針,GビズIDの種別・管理者・有効期限,二要素認証端末及び復旧担当者を記録することが考えられる。
事件の受任・終結と,人の入退所・権限変更は別の時点で生じるため,事件台帳とアカウント台帳を一つの表へ混在させない方が管理しやすい。
3 弁護士と事務職員の確認点を分ける
弁護士は,提出書面の内容,提出先,法的期限,電子申立て義務,送達の効力及び閲覧権限を確認する。
事務職員は,弁護士の指示の下で,ファイル名・添付順序,入力内容,アカウント,通知,受付結果及び記録保存を確認する。
最終提出操作を誰が行う場合でも,法律上の提出責任と事務所内の補助作業を曖昧にしない運用が必要である。
4 公開マニュアルの版と画面を保存する
TreeeSの正式な操作資料が公開されたときは,資料名,版番号,公表日,取得URL及び取得日を記録する。
提出又は送達に関係する画面が更新された場合は,旧版との変更点を確認し,事務所内手順書の根拠となる画面又は該当頁を保存することが考えられる。
調達資料に記載された予定だけで手順書を完成させず,本番画面で確認した事実と区別して管理する必要がある。
5 先行導入前後の確認手順
先行導入地域で新たな事件を扱うときは,提出前に次の順序で確認することになる。
①裁判所公式ページでTreeeSの稼働開始日,対象事件及び利用時間を確認する。
②当該事件がTreeeS,mints又は紙のいずれの経路に該当するかを確認する。
③使用するアカウント,代理人・サポーター・送達受取人等の役割及び事件への関連付け方法を確認する。
④提出ファイル,入力項目,手数料,受付結果及び送達設定を公式マニュアルで確認する。
⑤提出後は,裁判所への到達を示す表示,受付番号,時刻及び提出物を事件記録へ保存する。
第9 現時点で確認できる事項と確認できない事項
1 公開一次資料で確認できる事項
令和8年9月1日現在,公開一次資料で確認できる主な事項は次のとおりである。
①現在の民事訴訟の電子申立て等にはmintsが用いられていること。
②TreeeSは,利用者向けのe提出・e記録管理を中心とし,RoootSと機能的に連携するシステムとして開発されていること。
③TreeeSを広い意味で用いる資料では,RoootS及びe法廷との連携を含むシステム群の総称とされること。
④令和9年1月に名古屋高裁本庁,名古屋地裁本庁・支部及び同地裁管内の各簡裁で先行導入する方針であること。
⑤全庁導入は令和9年度中を目指していること。
⑥公開調達資料上,TreeeSの独自ユーザID,GビズID利用の選択及びmintsと同じメールアドレスを用いる資格確認経路が設計・改修対象となっていること。
⑦サポーター,送達受取人及び当事者・代理人等は,公開された将来システム要件上,異なる権限の主体として整理されていること。
2 正式な追加資料を待つ事項
今回確認した公開資料だけでは,次の事項を確定できない。
①一般利用者向けTreeeSポータルの確定URL,利用時間及び動作環境。
②先行導入の具体的な稼働日,対象事件,既係属事件及び上訴時の切替基準。
③全国の裁判所ごとの導入順序及び確定日。
④mintsの終了時期並びにmintsからTreeeSへ移行するアカウント,事件及びデータの範囲。
⑤弁護士,弁護士法人,事務職員,サポーター及び送達受取人の最終的な登録・権限設定手順。
⑥最終的な添付可能ファイル形式,容量,ファイル数,保存時間,ダウンロード及び印刷方法。
⑦GビズIDを利用する場合の最終的な対象アカウント種別及び資格確認手順。
TreeeSについて実務判断を行う際は,この記事の基準日後に公開された裁判所の案内,利用規約及び操作マニュアルを確認する必要がある。
制度史及びシステム開発の経緯は,別稿「最高裁判所が開発しているmints,RoootS及びTreeeS」を参照されたい。
第10 出典・参考資料
1 法令
①民事訴訟法91条の2,109条の2から109条の4まで及び132条の10から132条の13まで(e-Gov法令検索,令和8年9月1日現在)。
2 裁判所及び最高裁判所事務総局の資料
①裁判所「民事訴訟」(令和8年9月1日確認)。
②裁判所「民事裁判手続のデジタル化」(令和8年9月1日確認)。
③最高裁判所事務総局経理局長「家事事件手続等のデジタル化に伴うe事件管理システム・e提出・e記録管理システムの改修等業務一式 公募公告及び調達仕様書」(令和7年7月2日付),資料上1頁~3頁・8頁・別紙6「アクタ一覧表」(PDF20頁~22頁・27頁・62頁)。
④最高裁判所事務総局経理局長「e提出・e記録管理システム及びe事件管理システムの追加機能改修業務 公募公告及び調達仕様書」(令和8年4月3日付),資料上2頁・別紙「改修作業一覧」・改修作業一覧補足スライド1~6(PDF19頁・30頁・35頁~40頁)。
⑤最高裁判所事務総局経理局長「後見法改正等に伴うe提出・e記録管理システム及びe事件管理システムの改修業務 公募公告及び調達仕様書」(令和8年6月9日付),資料上2頁~4頁(PDF19頁~21頁)。
⑥最高裁判所事務総局民事局長・行政局長・総務局長及び最高裁判所事務総局デジタル審議官「民事裁判手続等のデジタル化に伴い利用する最高裁判所の新システムTreeeSの先行導入に関する通知」(令和8年2月27日付)。
3 デジタル庁のGビズID資料
①デジタル庁「GビズID」(令和8年9月1日確認)。
②デジタル庁「アカウントの有効期限」(令和8年9月1日確認)。
③デジタル庁「GビズIDクイックマニュアル GビズIDメンバー編」5頁~6頁・10頁(令和8年9月1日確認)。