第1 給付請求の全体像
1 結論
日本弁護士国民年金基金の老齢年金は,受給年齢に達しただけで自動的に振り込まれるものではなく,裁定請求が必要である。
受給者又は加入員が死亡した場合は,死亡届,未支給年金の請求及び遺族一時金の請求を区別する必要がある。
未支給年金は死亡者に支払われるはずであった年金を一定の親族が請求する制度であるのに対し,遺族一時金は加入した給付の型,保証期間及び死亡時期等の要件を満たす場合に遺族へ支給される別の給付である。
そのため,同じ死亡について未支給年金と遺族一時金の双方が問題となる場合がある。
2025年12月23日以降は年金請求や死亡関係の一部手続をオンラインで行えるが,戸籍等の原本確認が必要な場合は郵送も必要である。
本記事は2026年8月29日現在の国民年金法,国民年金基金規則及び日本弁護士国民年金基金の規約・案内に基づく。
2 最初に区別する四つの手続
| 手続 | 主な目的 | 主な申請者 | 基本となる資料 | 電子申請 |
|---|---|---|---|---|
| 老齢年金の裁定請求 | 年金の受給を開始する | 受給権者本人 | 生年月日資料,口座資料 | 対象 |
| 死亡届 | 受給権者の死亡を基金へ届ける | 遺族等 | 死亡を明らかにする資料 | 対象 |
| 未支給年金の請求 | 死亡者に未払いの年金を請求する | 死亡時に生計を同じくした一定の親族 | 続柄資料,生計同一資料,口座資料 | 対象 |
| 遺族一時金の請求 | 保証期間等に応じた一時金を請求する | 死亡時に生計を同じくした一定の遺族 | 続柄資料,死亡日資料,口座資料 | 対象 |
第2 老齢年金の請求
1 基金から届く請求書
日本弁護士国民年金基金のQ&Aは,受給開始年月の約1か月前に手続書類を郵送すると説明している。
もっとも,登録住所が古い場合や郵便が届かない場合もあるため,受給開始時期が近いのに書類が届かなければ,基金へ登録住所と発送状況を確認するのが安全である。
国民年金基金規則14条によれば,請求書又は電子申請には,氏名,生年月日,住所,加入員番号,払渡希望金融機関及び口座番号等を記載する。
老齢基礎年金の受給権者は,基礎年金番号及び老齢基礎年金の年金コードも必要となる。
2 基本となる添付書類
国民年金基金規則14条2項が定める基本書類は,次のとおりである。
①生年月日に関する市区町村長の証明書又は戸籍抄本である。
②金融機関の証明書,預金通帳の写しその他の口座番号を明らかにする資料である。
住民基本台帳情報又は署名用電子証明書で生年月日を確認できた場合は,①を省略できる。
公金受取口座の情報をマイナポータル経由で提供し,その口座を年金の受取口座にする場合は,②を省略できる。
ただし,実際に届いた請求書に追加資料が指定されているときは,その案内に従う必要がある。
3 電子申請の準備と利用できない場合
国民年金基金オンライン手続サービスによれば,本人が年金請求をオンラインで行うには,マイナンバーカードを取得し,マイナポータルとe-私書箱を連携する必要がある。
年金の受取口座には,原則としてマイナポータルに登録した公金受取口座を使用する。
海外居住者,公金受取口座を利用しない人及び老齢基礎年金の一部繰上げ受給者等は,オンラインの年金請求を利用できないため,書面で手続をする。
基金から扶養親族等申告書又は個人番号提供依頼書が同封されている場合は,オンラインの年金請求とは別に,指定書類を郵送する必要がある。
第3 受給者又は加入員が死亡した場合
1 まず死亡連絡をする
国民年金基金規則20条は,年金受給権者の死亡届を原則として死亡日から14日以内に提出すると定めている。
死亡届では,届出人と受給権者との関係,受給権者の氏名・生年月日・住所,年金証書の記号番号及び死亡日等を知らせる。
死亡を明らかにする資料が基本的に必要であるが,電子情報や住民基本台帳情報等により基金が確認できる場合には,添付又は届出が省略されることがある。
家族向けオンライン手続では,最初に「死亡連絡」を行うと,給付の有無と申請者の資格が確認され,必要な請求書類が郵送される。
死亡連絡は請求書類を取り寄せる入口であり,それだけで未支給年金や遺族一時金の請求が完了するとは限らない。
2 未支給年金
国民年金法19条1項及び133条によれば,未支給年金を請求できるのは,死亡時に受給権者と生計を同じくしていた配偶者,子,父母,孫,祖父母,兄弟姉妹又はその他の三親等内の親族である。
国民年金法施行令4条の3の2は,請求順位を,配偶者,子,父母,孫,祖父母,兄弟姉妹,その他の三親等内の親族の順と定めている。
同順位者が2人以上いる場合は,その1人の請求が全員のために全額についてされたものと扱われ,その1人への支給が全員への支給と扱われる。
国民年金基金規則21条が定める基本書類は,次のとおりである。
①死亡者と請求者との関係を明らかにする戸籍,除籍,住民票その他の資料である。
②死亡時に生計を同じくしていたことを明らかにする資料である。
③請求者の受取口座を明らかにする資料である。
①の続柄資料は,電子情報を提供しただけで当然に省略できる書類ではない。
死亡者が生前に老齢年金の裁定請求をしていなかった場合は,未支給年金の請求に加えて,死亡者の年金裁定に必要な手続も行う。
3 遺族一時金
日本弁護士国民年金基金規約61条及び62条によれば,遺族一時金の有無と額は,加入した年金単位の種類,死亡時期,保証期間及び掛金納付状況等によって変わる。
したがって,基金へ死亡連絡をする際は,遺族一時金がないと自己判断せず,加入内容に基づく判定を求めるのが安全である。
同規約63条によれば,遺族一時金を受けられる遺族は,死亡時に死亡者と生計を同じくしていた配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹であり,その順序が受給順位となる。
未支給年金と異なり,兄弟姉妹以外の三親等内親族は遺族一時金の対象に含まれない。
国民年金基金規則22条が定める基本書類は,次のとおりである。
①請求者と死亡者との関係を明らかにする戸籍,除籍,住民票その他の資料である。
②死亡日を明らかにする戸籍,除籍その他の資料である。
③請求者の受取口座を明らかにする資料である。
④国民年金法上の死亡一時金を受けている場合は,その支給を明らかにする資料である。
①と②は,国民年金基金規則22条2項ただし書の添付省略対象から除外されている。
4 未支給年金と遺族一時金を同時に確認する
未支給年金は死亡者に未払いであった年金であり,遺族一時金は保証期間等に基づく別の給付である。
請求権者の範囲も同一ではないため,死亡連絡の際は「未支給年金」と「遺族一時金」の双方について該当可能性を確認する必要がある。
第4 家族による電子申請と原本郵送
1 家族向け手続の準備
家族がオンライン手続を始める際は,死亡者の基礎年金番号,氏名カナ及び生年月日,申請者のメールアドレス,マイナンバーカード並びに記入済みの申請書類等を準備する。
申請用URLはメールで送られ,1回だけ利用でき,有効期間は24時間であると案内されている。
2 画像アップロードだけで終わらない場合
日本弁護士国民年金基金の電子申請案内は,戸籍や住民票等の原本確認が必要な申請について,オンライン申請だけでは手続が完了しないと明記している。
日本弁護士国民年金基金の広報誌「陽だまり」54号11頁も,年金請求,死亡届,遺族一時金請求及び未支給年金請求を電子申請の対象として掲げ,原本確認が必要な場合は書類一式の郵送を求めている。
この場合は,戸籍だけを単独で送るのではなく,原本を含めた書類一式を基金又は連合会へ郵送する必要がある。
画像が不鮮明である場合や申請内容に不備がある場合は,申請が返却され,再申請又は郵送を求められることがある。
手続が完了すると,遺族一時金支給決定通知書又は未支給年金支給決定通知書が登録住所へ郵送される。
第5 5年時効と遺族一時金の注意点
1 日本弁護士基金規約95条の5年
日本弁護士国民年金基金規約95条は,年金たる給付及び一時金たる給付を受ける権利について,支給事由が生じた日から5年を経過すると時効によって消滅すると定めている。
また,年金の各支払期分についても,同条所定の支払期月に応じた起算点から5年と定めている。
老齢年金及び未支給の各期分は,長期間放置せず,受給権発生又は死亡を知った時点で請求するのが安全である。
2 遺族一時金は2年以内の請求が安全である
他方,国民年金法138条は基金の一時金について同法102条4項を準用し,同項は2年の消滅時効を定めている。
確認できた現行法令と基金規約だけでは,基金規約95条の5年と国民年金法102条4項・138条の2年との関係を一義的に解消できない。
したがって,遺族一時金について「5年間待ってもよい」と理解するのは危険であり,遅くとも支給事由発生日から2年以内に請求するのが安全である。
既に2年又は5年を経過している場合でも,時効の起算点,完成猶予,更新及び個別運用を本記事だけで判断して請求を断念せず,基金又は連合会へ直ちに照会すべきである。
なお,国民年金法上の死亡一時金と国民年金基金の遺族一時金は別制度であるため,名称と期限を混同してはならない。
第6 実務上の確認順序
1 老齢年金を請求する場合
①受給開始時期と請求書の発送状況を確認する。
②加入員番号,基礎年金番号,年金コード及び受取口座を準備する。
③オンライン利用条件を満たすかを確認する。
④書面又は電子申請を行い,別送を指定された書類を郵送する。
⑤受付・返却のメール又は決定通知を保存する。
2 死亡後に家族が手続する場合
①死亡者の加入員番号又は基礎年金番号と加入していた基金を確認する。
②日本弁護士国民年金基金又は国民年金基金連合会へ死亡連絡をする。
③未支給年金と遺族一時金の双方の該当可能性を確認する。
④請求者の順位,死亡時の生計同一関係及び必要な戸籍の範囲を確認する。
⑤電子申請を利用する場合も,原本を含む書類一式の郵送要否を確認する。
⑥時効の問題を避けるため,必要書類が全部そろう前でも基金へ期限と提出方法を相談する。
第7 関連記事
弁護士の国民年金基金に関するメモ書きでは,国民年金基金の制度,掛金及び給付の型等をまとめている。
未支給年金は相続財産ではない―請求権者,遺産分割及び税務の取扱いでは,未支給年金と相続財産の区別を説明している。
弁護士国民年金基金の資格喪失と再加入では,弁護士法人への加入,企業内弁護士,海外転居及び従前掛金の取扱いを説明している。
第8 出典
1 法令
e-Gov法令検索・国民年金法16条,19条,102条,133条及び138条。
e-Gov法令検索・国民年金法施行令4条の3の2。
e-Gov法令検索・国民年金基金規則14条及び20条から24条まで。
2 日本弁護士国民年金基金の規約・公式案内
日本弁護士国民年金基金規約60条から63条まで及び95条。
日本弁護士国民年金基金Q&AQ42,Q43及びQ45。
日本弁護士国民年金基金・電子申請案内。
日本弁護士国民年金基金「陽だまり」54号(2026年)11頁。
3 厚生労働省・国民年金基金連合会の解説・運用資料
厚生労働省・国民年金基金規約例95条。
国民年金基金オンライン手続サービス。
国民年金基金連合会「国民年金基金オンライン手続サービス 電子申請編」(2025年12月)PDF3頁~5頁・12頁~13頁・17頁。
国民年金基金連合会「国民年金基金オンライン手続サービス 電子申請(本人以外)編」(2025年12月)PDF3頁~4頁・7頁~8頁・11頁。
国民年金基金連合会・手続に関するFAQ。
国民年金基金連合会・遺族一時金。
国民年金基金連合会・年金給付及び一時金給付に関する公告。