日本弁護士国民年金基金


目次
第1 総論
1 制度趣旨
2 国民年金基金の種類
3 国民年金基金の基本ポートフォリオ
4 国民年金基金の積立度合い
5 その他
第2 日本弁護士国民年金基金
1 当初の予定利率は5.5%であったこと
2 加入資格
3 役員及び所在地
4 平成8年当時,日本弁護士国民年金基金の年金財政は安泰であると予想されていたこと
5 日弁連との間における,個人情報の共同利用
第3 新規加入者の予定利率の切り下げだけが続いていること
1 掛金月額表
2 掛金月額表の改正経緯
3 コラム「陽だまり」の執筆者に適用されている予定利率
4 老齢基礎年金等の年金額の特例水準解消は憲法に違反しないとした最高裁令和5年12月15日判決
第4 国民年金基金制度の問題点
1 予定利率が低いこと
2 原則として脱退できないこと
3 物価スライド制を採用していないこと
4 繰越不足金の割合が高いこと
第5 予定利率を低く抑えられている新規の弁護士加入者が増えれば増えるほど助かること等
1 公式の説明
2 日本弁護士国民年金基金の資産運用委員長を6年間していた,32期の山岸良太弁護士の解説記事の抜粋
3 東京高裁平成20年7月9日判決の裁判要旨
4 その他
第6 平成31年4月1日以降に加入した場合の掛金合計及び受給額合計等の試算
第7 国民年金基金制度の予定利率を過去の加入者も含めて引き下げた上で,加入者ごとの個別勘定とすることが必要であるとする意見があること
第8 日本弁護士国民年金基金からの脱退
1 資格喪失事由及び移行手続
2 解約返戻金制度はないこと
第9 平成31年4月の,全国国民年金基金の発足
1 発足経緯
2 平成31年4月以降の,国民年金基金の種類
3 「陽だまり」の記載
第10 個人型確定拠出年金(愛称は「iDeCo(イデコ)」です。)との比較
1 国民年金基金と共通するメリット
2 国民年金基金にはないメリット
3 国民年金基金にだけあるメリット
第11 財政再計算
第12 掲載資料
1 日本弁護士国民年金基金の業務報告書
2 その他
第13 関連記事その他

第1 総論
1 制度趣旨
 国民年金基金制度は,平成3年4月施行の改正国民年金法に基づく公的な年金制度であり,自営業者など国民年金第1号被保険者のため,国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして,より豊かな老後を保障するためのものです。
2 国民年金基金の種類
(1) 国民年金基金は厚生大臣(当時)の認可を受けた公的な法人であり,平成31年3月31日までは,47都道府県ごとに設立された「地域型基金」47個と職種別に設立された「職能型基金」25個の2種類がありました(国民年金法115条の2)。
(2) 平成31年4月1日の全国国民年金基金の設立(国民年金法137条の3参照)により,地域型基金は全国国民年金基金だけとなり,職能型基金は日本弁護士国民年金基金,歯科医師国民年金基金及び司法書士国民年金基金の3個だけになりました。
(3) 国民年金基金HPに「 「知ってると得する、国民年金基金」 〜自営業・フリーランスのための公的な年金制度〜」と題する漫画が載っています。
3 国民年金基金の基本ポートフォリオ
 国民年金基金の平成31年4月改定の基本ポートフォリオは,グローバル債券(国内外の債券)が52%であり,グローバル株式(国内外の株式)が48%です(国民年金基金HP「資産運用状況」参照)。
 そのため,株価が上昇した場合,繰越不足金の割合が減少するものの,株価が下落した場合,繰越不足金の割合が増加することとなります。
4 国民年金基金の積立度合い
(1)ア 日本弁護士国民年金基金の「代議員会・理事会の審議結果等のご報告」(令和元年11月)6頁には以下の記載がありますから,平成30年度末時点における同基金の積立不足の割合は13.17%となります。
 国民年金基金連合会のまとめによると、平成30年度の責任準備金に対する積立度合いは、当基金は86.83%ですが、当基金を含む25の職能型基金の平均が76.5%、地域型基金の平均が77.0%、全体では76.9%とのことです。
イ 日本弁護士国民年金基金の「代議員会・理事会の審議結果等のご報告」(令和3年11月)6頁には以下の記載がありますから,令和2年度末時点における同基金の積立不足の割合は4.4%となります。
 国民年金基金連合会のまとめによると、令和2年度の責任準備金に対する積立度合いは、1口目が共通で85.3%,2口目以降については全基金計81.6%,当基金は95.6%、当基金を含む3つの職能型基金では95.3%とのことです。
(2) ちなみに,厚生年金基金及び確定給付企業年金の場合,繰越不足金の割合は15%以下である必要があります(企業年金連合会HP「許容繰越不足金」参照)。
 その他
(1) 国民年金基金の加入対象年齢は60歳未満でしたが,平成25年4月から特定加入員制度が創設され,60歳以上65歳未満の人も一定の条件の下に加入できるようになりました。
(2) 国民年金基金にいったん加入した場合,自分の都合で任意に脱退及び中途解約をすることはできません(厚生労働省HPの「国民年金基金制度」参照)。


第2 日本弁護士国民年金基金
1 当初の予定利率は5.5%であったこと
(1) 
日本弁護士国民年金基金は職能型基金として平成3年8月1日に成立しましたところ,基本A型(遺族一時金あり)及び基本B型(遺族一時金なし)の当初の予定利率は5.5%でした。
(2) 基本A型の場合,加入者本人が死亡した時点でまとまった金額の遺族一時金を支給されるのに対し,基本B型の場合,遺族一時金がないため,加入者本人が死亡した時点で年金の支給が止まりますし,加入者本人が年金受給前に死亡した場合,1万円の遺族一時金を支給されるだけです(国民年金基金HPの「重要のお知らせ」参照)。
2 加入資格
(2)ア   弁護士登録をした場合,
日本弁護士国民年金基金に加入できるようになります。
イ 弁護士のほか,弁護士業務を補助する人(例えば,専従配偶者及び法律事務所の事務員)も加入できます(日本弁護士国民年金基金HP「制度のポイント」)。
3 役員及び所在地
(1)ア 日本弁護士国民年金基金の理事12人(うち,理事長が1人,常務理事が1人),監事2人及び代議員24人の任期は3年です。
イ 直近では,平成21年4月,平成24年4月,平成27年4月及び平成30年4月に選任されています。
(2) 日本弁護士国民年金基金弁護士会館14階にあります。
4 平成8年当時,日本弁護士国民年金基金の年金財政は安泰であると予想されていたこと
(1) 自由と正義1996年10月号128頁には以下の記載があります。
 同連合会(山中注:国民年金基金連合会のこと。)では、高齢化時代の到来により既存の厚生年金がどのような苦境に陥っているかを参考として、国民年金基金の将来の不安を最大限排除すべく、二重三重に保全策を検討してくれています。既存の厚生年金基金等の将来が危ないと言われるのは、保有資産中にバブル前の含み損があり、企業単位のグループ保険なのに人員削減等でバランスが崩れ、また企業負担金が予定通り実行されていないことが主たる理由です。国民年金基金の場合には、厚生年金基金などの掛金設定と異なり、加入者一名単位で掛金総額とその運用益が支給総額と見合う設計となっているので、理論上は財政危機を起こすことがありませんし、現実論としても、当基金の場合には、バブル前の含み損などなく、法曹人口増加傾向により加入員の増加が予想されておりますので、若年層人口の減少による基金消滅ということも想定できません。
 問題は、運用益が安定的に継続できるかの点にかかっております。これについても、短期的には経済不況等で定理の運用実績しかあげられないこともあるでしょうが、長期的に見た場合には、民事法定利率程度の安定的運用益が生み出され、予定通りの年金給付が支障なく実行されることを確信しております。
(2) 陽だまり40号(平成24年6月13日発行)の「日本弁護士国民年金基金を「卒業」するにあたって 平成12年(2000年)から平成24年(2012年)までの年金運用を振り返る」には,「当基金の運用は、開設以来平成22年度末までの運用実績の平均は概ね2%内外の運用実績となっています。」と書いてあります。
5 日弁連との間における,個人情報の共同利用
 日本弁護士国民年金基金は,日弁連との間で,日弁連の会員(登録取消会員を含む。)に関する以下の個人情報を共同利用しています(日本弁護士国民年金基金HPの「弁護士の個人情報に関する日本弁護士連合会と日本弁護士国民年金基金との共同利用について」参照)。
登録番号・氏名・事務所住所電話・自宅住所電話・修習期・所属会・登録年月日・登録取消年月日・取消事由コード・会員区分・通称氏名・性別


第3 新規加入者の予定利率だけの切り下げが続いていること
1 掛金月額表
 日本弁護士国民年金基金HP平成31年4月1日以降の掛金月額表が載っていて,平成31年3月31日までに加入した人の掛金月額表は,日本弁護士国民年金基金規約別表第9の1(第71条第2項関係)に載っています。
2 掛金月額表の改正経緯
(1)ア 国民年金基金の掛金月額表については以下の日付で改正されています(国民年金基金連合会HP
「制度のあゆみ」参照)ところ,いずれも給付水準を切り下げるものでしたし,新規加入者の予定利率だけを切り下げるものでした
① 平成 7年4月1日の改正
・ 予定利率が5.5%から4.75%になりました。
② 平成12年4月1日の改正
・ 予定利率が4.0%になったり,男女別掛金が設定されたりしました。
③ 平成14年4月1日の改正
・ 予定利率が3.0%になりました。
④ 平成16年4月1日の改正
・ 予定利率が1.75%になりました。
⑤ 平成21年4月1日の改正
・ 予定死亡率が見直されたり,給付額及び受給期間が小口化されたりしました。
⑥ 平成26年4月1日の改正
・ 予定利率が1.5%になったり,予定死亡率が見直されたりしました。
⑦ 平成31年4月1日の改正
・ 予定死亡率が見直されました。
イ 自由と正義2024年2月号22頁(筆者は日本弁護士国民年金基金参与(前常務理事))に以下の記載があります。
    当基金でも他の国民年金基金でも、設立以来、既加入者の掛金額を変更したことは一度もなく、財政再計算で影響を受けるのは、財政再計算の翌年度以降に新規加入・増口する場合の掛金額と考えてよい。
(中略)

    新規加入者の予定利率(現在1.5%)は、既加入者の予定利率(5.5%~1.5%)と同じかより低いため、新規加入者が増えるほど予定利率の平均値は下がる。つまり、新規加入者が増えるほど、資産運用における目標値を引き下げることができ、より安全確実な資産運用が可能になるというメリットが認められる。
(2) りそな銀行HPの「企業年金ノート・レポート」に載ってある「企業年金の平成史~30年間の歩みを振り返る~」(平成31年4月発行)
には,「90 年代後半になると、バブル崩壊による景気低迷に加え、株価・金利の急激な低下により予定利率(当時は一律5.5%)を恒常的に維持することが厳しい環境となったことから、一転して企業年金の解散・廃止が相次ぐようになりました。」と書いてあります。
(3) 独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称は「中小機構」です。)が運営している小規模企業共済の場合,予定利率が1%である(中小機構HP「共済金の額の算定方法」参照)ものの,従前の加入者も含めた予定利率の改定が行われていますモーニングスターHP「国民年金基金vs小規模企業共済」(平成28年8月12日付)参照)。
3 コラム「陽だまり」の執筆者に適用されている予定利率
・ コラム「陽だまり」には,日本弁護士国民年金基金受給者等の感想が載っていますところ,平成12年3月31日までに加入した人の場合,これから加入する人の3倍以上の予定利率の複利運用で国民年金基金からの年金を支給してもらっていることになります。
4 老齢基礎年金等の年金額の特例水準解消は憲法に違反しないとした最高裁令和5年12月15日判決
(1) 厚生労働省HPの「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成24年11月16日成立・26日公布 平成24年法律第99号)」には以下の記載があります。
・ 
世代間公平の観点から、老齢基礎年金等の年金額の特例水準(2.5%)について、平成25年度から平成27年度までの3年間で解消する。
※ 現在支給されている年金額は、平成11年から13年までの間に、物価が下落したにもかかわらず、年金額を特例的に
据え置いた影響で、法律が本来想定している水準(本来水準)よりも、2.5%高い水準(特例水準)となっている。
※ 解消のスケジュールは、H25.10.▲1.0%、H26.4.▲1.0%、H27.4.▲0.5%
(2) 最高裁令和5年12月15日判決は以下の判示をしています。
    平成24年改正法1条は特例水準を3年度にわたって段階的に解消するものであるところ、特例水準は、それが生じた経緯に照らし、当初から、将来的に解消されることが予定されていたものといえる。このような特例水準による年金額の給付を維持することは、賦課方式(現在の年金受給権者に対して支給される年金給付の財源を、主に現役世代が負担する保険料によって賄う方式)を基本とする制度の下で現役世代に本来の負担を超える負担を強いることとなり、また、現役世代が年金の給付を受けるようになった際の財源を圧迫することにもつながるものと考えられる。そして、平成24年改正法の制定時には、今後、我が国の少子高齢化の進展に伴い、現役世代の保険料や税の負担能力が更に減少する一方で、支給すべき老齢年金の総額が更に増加することが合理的に予測されていたものである。
    これらの点に加え、特例水準の解消が、我が国における少子高齢化の進展が見込まれる中で、世代間の公平に配慮しながら前記の財政の均衡を図りつつ年金制度を存続させていくための制度として合理性を有するものとして構築されたマクロ経済スライド制の適用の実現につながるものであることをも踏まえれば、特例水準によって給付の一時的な増額を受けた者について一律に特例水準を解消することは、賦課方式を基本とする我が国の年金制度における世代間の公平を図り、年金制度に対する信頼の低下を防止し、また、年金の財政的基盤の悪化を防ぎ、もって年金制度の持続可能性を確保するとの観点から不合理なものとはいえない。
    以上によれば、立法府において上記のような措置をとったことが、著しく合理性を欠き、明らかに裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるということはできず、年金受給権に対する不合理な制約であるともいえない。

日本弁護士国民年金基金の総括表(平成31年3月22日の第6回財政再計算報告書からの抜粋)

第4 国民年金基金制度の問題点
1 予定利率が低いこと
(1) 予定利率が1.5%の場合,年金受取額が掛金全額と同額になる年数は,加入年齢が30歳の場合,約15年であり,加入年齢が40歳の場合,約17年であり,加入年齢が50歳の場合,約18年です。
   終身年金A型は15年間保証ですから年金受取人が死亡した場合でも年金受取後15年以内であれば一時金として遺族が受取れますものの,15年間受取金額は支払った掛金全額を下回ります(モーニングスターHPの「国民年金基金vs小規模企業共済」(平成28年8月12日付)参照)。
(2) 平成31年4月以降に国民年金基金に加入した場合,年金受取額が掛金全額と同額になる年数はこれよりも伸びることとなります。
2 原則として脱退できないこと
(1) 60歳になったり,会社員になるなど国民年金の第1号被保険者でなくなったり,弁護士登録を抹消したりした場合,加入員資格の喪失により日本弁護士国民年金基金を脱退できます(国民年金基金HPの「重要なお知らせ」参照)。
 しかし,当初の加入者が今でも予定利率が5.5%であるのに対し,新規加入者が1.5%であるなど加入者間の不公平が著しいことに気づいたとか,繰越不足金が10%ぐらいあることに不安を感じるといった理由により脱退することはできないのであって,2口目以降の掛金をなくすことしかできません(1口目の掛金までなくすことはできないということです。)。
(2) 日本弁護士国民年金基金HP「制度のポイント」に以下の記載があります。
●加入後に、2口目以降の口数の変更(増減口)をすることができます。ただし、1口目をとりやめたり変更することは、できません。
●増口は、回数に制限なく、いつでもできます。
 増口する場合、増口分の掛金は、増口する月現在の年齢に対応する金額となります。
●減口は、回数に制限なくいつでもできます。
●増減口にあたり、確定年金(Ⅰ~Ⅴ型)を選ぶ場合は制限がありあます。確定年金の年金額が終身年金(A.B型)の年金額(1口目を含めた合計額)を超えることはできません。
 終身年金の年金額≧確定年金の年金額となるように組み合わせてください。
●国民年金法所定の加入員資格喪失事由に該当しない限り、任意の「解約脱退」はできません。
(3) 外部ブログの「お金の価値は下がっていくよ」には以下の記載があります。
 80歳で100億持ってたらすごい?なにができるの?
 60歳で1億円、うんたしかにすごいけど、どう?20歳の1000万と比べてどう?
 経済がインフレしてなかったとしても、デフレだったとしても、その人にとってのお金の価値はさがっていく。
 お金の価値は、時間と共に減価する。
3 物価スライド制を採用していないこと
(1) 国民年金基金は,予め定められた名目の掛金を支払えれば,予め定められた名目の年金額を支給してもらうこととなっているものの,物価スライド制を採用していないため,仮に年金をもらうまでの間に物価が大きく上昇してしまった場合,実質的な年金額がその分,減少することとなります。
(2) 物価スライド制とは,年金額の実質価値を維持するため,物価の変動に応じて年金額を改定することをいい,国民年金制度では採用されています(日本年金機構HP「は行 物価スライド」参照)。
(3) 平成10年ないし平成30年のインフレ率は1%以下ですが,平成31年のインフレ率は1%を超える可能性があります(世界経済のネタ帳HP「日本のインフレ率の推移」参照)。
(4) 企業年金・個人年金教育者協会HPに載ってある「公的年金保険が「積立方式」ではなく、「賦課方式」を採用していること その歴史的・社会的意義からの理由」には「積立方式は、運用収入を活用できるメリットがある一方、急激なイ
ンフレが生じると積立金が目減りし、年金の実質価値を保障することが難しくなる。」と書いてあります。
4 繰越不足金の割合が高いこと

(1) 日本弁護士国民年金基金の場合,平成29年度末の責任準備金は1178億3944万円であり,繰越不足金は115億983万円ですから,その割合は約9.7%です。
(2) 社員に信頼される退職金・企業年金のつくり方ブログ「積立不足から抜け出せない国民年金基金の財政 」(平成30年10月15日付)には,「積立比率は責任準備金に対する実際の積立金額の比率を表したものであり、本来は100%を確保していないといけないのですが、ずっと100%を下回ったままであり、直近では8割程度にとどまっています。」と書いてあります。
(3) 国民年金基金HPの「重要のお知らせ」には以下の記載があります。
基金が解散した場合の取り扱いについて
• 基金は公的な制度として、国民年金法に基づきその設立から運営について厚生労働省から指導、監督を受け、代議員会での議決を経て運営されております。また基金の財政状況を毎年チェックし、健全な運営に努めております。基金の財政状況は決算書に記載されていますので、随時閲覧できます。仮に当基金が解散した場合は国民年金法に基づき、基金の解散時点での残余財産額を加入員および受給者等で分配することとなっており、それまで支払われた掛金額を下回ることがあります。なお、分配される額を国民年金基金連合会へ移管して、将来年金として受け取ることができるような措置を講じております。
(4)ア 日本弁護士国民年金基金の機関紙である「陽だまり」47号(2019年6月25日発行)2頁及び3頁には以下の記載があります。
 連合会(山中注:国民年金基金連合会のことです。)の給付確保事業(1口目の掛金を連合会が預かり運用して1口目の年金を給付する事業。各基金は参加強制されている。)の存続問題です。連合会からは新しい国民年金基金制度の発足に併せて給付確保事業を廃止し、各基金に対して現存資産を責任準備金割合に応じて返還するという提案を受けました。この提案に従う場合、当基金には給付確保事業に預けて運用していた年金資産の81.91%(平成27年度末責任準備金基準)しか返還されないことになります。
 しかし、かかる提案は、従前から連合会が給付確保事業とは1口目の年金給付を保証するものと説明していたことと明らかに矛盾します。各基金からの反対を受け、連合会は給付確保事業を存続することにしました。当基金としては、連合会の給付確保事業のあり方を今後も慎重に検討していきたいと思います。
イ 給付確保事業は1口目の掛金が対象であり,共同運用事業は2口目以降の掛金が対象です(国民年金基金連合会HP「会員である各基金に対する事業」参照)。



5 予定利率を低く抑えられている新規の弁護士加入者が増えれば増えるほど助かること等
1 公式の説明

(1) 公式の説明としては以下のものがあります。
① 日本弁護士国民年金基金HPの「日本弁護士国民年金基金の勧奨方針について」
② 東京弁護士会HP「弁護士会の福利厚生第4回 日本弁護士国民年金基金のご案内」東弁リブラ2013年3月号
③ 第二東京弁護士会HP「続・ハッピーリタイアメント~幸せな弁護士人生のあり方」二弁フロンティア2015年4月号
④ 東京都弁護士協同組合HP「弁護士のための保険・年金ガイド」「第4章 豊かな人生へ(座談会 平成28年6月)」
(2) 公式の説明では,①予定利率の切り下げが続いていること,②物価スライド制を採用していないこと,③原則として脱退できないこと,及び④繰越不足金の割合が高いことについては記載されていないと思います。
(3) 予定利率を低く抑えられている新規の弁護士加入者が増えれば増えるほど,それ以前に日本弁護士国民年金基金に加入した弁護士(新規加入者よりも高い年金額を保証されている人)に対する支給を続けることができるという関係になっています。
2 日本弁護士国民年金基金の資産運用委員長を6年間していた,32期の山岸良太弁護士の解説記事の抜粋
(1)ア 陽だまり40号(平成24年6月13日発行)の「日本弁護士国民年金基金を「卒業」するにあたって 平成12年(2000年)から平成24年(2012年)までの年金運用を振り返る
」(筆者は,日本弁護士国民年金基金の資産運用委員長(平成18年度から平成23年度まで)をしていた32期の山岸良太弁護士です。)には以下の記載があります。
① 国民年金基金は、予定利率5.5%、即ちお預かりした掛金を5.5%で運用して年金をお支払いするという設定で出発していました。
 当時は、1年物の定期頂金が年利5~6%くらいあり、5.5%の予定利率は運用実績として達成が確実だと考えられていたのです。また、実際にも、平成12年までの運用実績も5.5%を余裕を持って超えていました。ところが、平成12年度から雲行きが怪しくなってきたわけです。
② 平成7年度に予定利率を年5.5%から年4.5%に下げていましたが、更に平成12年度には年4%に下げ、そして平成14年には年3.0%に下げ、最終的には平成16年度からは年1.75%にまで大幅に下げて、新規加入会員の募集を行うことととなりました。
 その後、現在まで1.75%の予定利率で募集した結果、この10年間に加入者は弁護士人口増も反映して5,900名増加し、当基金の年金団体としての安定性は更に増していると考えます。
③ りそな銀行の決算について、繰延税金資産の計上が会計監査人に認められず、(山中注:平成15年)5月に公的資金が注入されて国有化されるという事態になりました。しかし、このりそな・ショックは、我国の銀行の不良債権処理の促進と市場からは受け止められ、悪材料が出尽くして底を打った形となり、その後、平成15年度は+15.0%、平成16年度は+3.4%、平成17年度は+23%(最も成績の良い受託会社は+27.22%)を超える運用実績となり、当基金の運用成績も落ち着いた状況となり、大変喜ばしいことでした。
④ 平成18年度から沼尾資産運用委員長が当基金を卒業されることとなり、私が沼尾委員長から資産運用委員長を引き継ぐこととなりました。
 このときは、まさか、その後6年間も委員長を継続することになるとは思いもよりませんでした。
⑤ この10年余りの当基金の運用状況は、世界経済の大変動の影響を受けて、±20数%で上下するというものでした。このような状況にあって当基金の運用は、開設以来平成22年度末までの運用実績の平均は概ね2%内外の運用実績となっています。
イ 32期の山岸良太弁護士は,「頼りがいのある司法を築く日弁連の会」の代表世話人でした。
(2) 日本弁護士国民年金基金の「代議員会・理事会の審議結果等のご報告」(令和3年11月)1頁には,「令和2年度の国民年金基金全体の運用結果については,通期の修正総合利回りは24.44%,長期(1997年度以降)の運用実績は累積で年率4.24%となりました。」と書いてあります。
3 東京高裁平成20年7月9日判決の裁判要旨
・ NTTグループ企業の年金規約変更不承認処分に関する東京高裁平成20年7月9日判決の裁判要旨の一つは,受給権者等に対する給付額を減少させる規約変更に関して,確定給付企業年金法施行規則5条2号にいう経営状況の悪化という要件は,企業年金を廃止するという事態を避けるための次善の策として,「給付の額を減額することがやむを得ない」と認められる場合をいい,控訴人NTT東西が当期利益を計上し続けることができていることに照らすと,控訴人らの主張はつまるところ,企業の経営努力によって計上された利益を配当に充てることを優先すべきであるという主張であり,これをもって,上記要件に該当するほどに経営状況が悪化したとは認めがたいというものでした。
4 その他
(1) 陽だまり43号(平成27年5月25日発行)5頁には以下の記載があります。
 私が常務理事に就任したときは(山中注:菰田優弁護士が平成24年4月1日に日本弁護士国民年金基金常務理事に就任したときは)、未だリーマンショックの後遺症があり、運用資産額は責任準備金を約20%下回る状況でした。たまたま2年目の終わり頃から株価が上昇機運になり、平成26年12月の時点で年度末には90%ぐらいまで回復する見込みとなりました。
(2) 陽だまり46号(平成30年発行)の「まさしく「金言」」(筆者は,予定利率が4.75%であった平成10年末頃に加入した弁護士には,「説明によると,年金基金は破綻しない限り加入時の利率が約束され,しかも,弁護士年金基金は加入する弁護士の数が増えているから,かなり安全であること,一口だけ入ることも,万が一,支払いが苦しくなったときには減口することも可能とのこと。」と書いてありますから,日本弁護士国民年金基金が破綻しない限り以前の加入者の予定利率を引き下げることはできないのかもしれません。
(3) 平成31年1月1日現在,60歳未満の加入員は9173人,60歳以上の加入員は290人,受給者・受給待期者(60歳以上)は5055人であり,合計で1万4228人です(日本弁護士国民年金基金HPの「Q.現在どのくらいの加入者がいるのですか。」参照)。



第6 平成31年4月1日以降に加入した場合の掛金合計及び受給額合計等の試算
1 年金月額3万円とするため,平成31年4月1日以降に加入した場合の取扱いにつき,加入時の年齢別に見ると以下のとおりになりますから,平均余命まで生きると仮定した場合,男性よりも女性の方が優遇されています。
(1) 25歳0月で加入した場合
・ 男性の場合,①掛金合計は533万6100円であり,②平均余命の81.65歳到達時の受給額合計は597万2400円であり,②から①を控除した額は63万6300円です。
・ 女性の場合,①掛金合計は621万1800円であり,②平均余命の87.62歳到達時の受給額合計は814万6800円であり,②から①を控除した額は193万5000円です。
(2) 30歳0月で加入した場合
・ 男性の場合,①掛金合計は556万2000円であり,②平均余命の81.73歳到達時の受給額合計は602万2800円であり,②から①を控除した額は46万800円です。
・ 女性の場合,①掛金合計は647万4600円であり,②平均余命の87.70歳到達時の受給額合計は817万2000円であり,②から①を控除した額は169万7400円です。
(3) 35歳0月で加入した場合
・ 男性の場合,①掛金合計は579万1500円であり,②平均余命の81.88歳到達時の受給額合計は607万6800円であり,②から①を控除した額は28万5300円です。
・ 女性の場合,①掛金合計は674万1000円であり,②平均余命の87.79歳到達時の受給額合計は820万4400円であり,②から①を控除した額は146万3400円です。
(4) 40歳0月で加入した場合
・ 男性の場合,①掛金合計は602万6400円であり,②平均余命の82.05歳到達時の受給額合計は613万8000円であり,②から①を控除した額は11万1600円です。
・ 女性の場合,①掛金合計は701万2800円であり,②平均余命の87.90歳到達時の受給額合計は824万4000円であり,②から①を控除した額は123万1200円です。
(5) 45歳0月で加入した場合
・ 男性の場合,①掛金合計は627万4800円であり,②平均余命の82.28歳到達時の受給額合計は622万800円であり,②から①を控除した額はマイナス5万4000円です。
・ 女性の場合,①掛金合計は703万0800円であり,②平均余命の88.06歳到達時の受給額合計は830万1600円であり,②から①を控除した額は100万800円です。
(6) 50歳0月で加入した場合
・ 男性の場合,①掛金合計は653万4000円であり,②平均余命の82.61歳到達時の受給額合計は633万9600円であり,②から①を控除した額はマイナス19万4400円です。
・ 女性の場合,①掛金合計は759万6000円であり,②平均余命の88.29歳到達時の受給額合計は838万4400円であり,②から①を控除した額は78万8400円です。
2 ちなみに,日弁連が定めている,性別による差別的取扱い等の防止に関する規則(平成24年3月15日規則第152号)2条1号は以下のとおりです。
 性別による差別的取扱い会員の事務所における活動、本会、弁護士会及び弁護士会連合会における会務活動その他の職務等に関する一切の活動において行われる生物学的又は社会的な性差を理由とする差別的取扱いをいう。

第7 国民年金基金制度の予定利率を過去の加入者も含めて引き下げた上で,加入者ごとの個別勘定とすることが必要であるとする意見があること
 橘玲公式ブログ「国民年金基金についての私的提言」(2013年5月17日付)に以下の記載があります。
① 91年の設立当初の予定利率は厚生年金基金などと同じ年5.5%だった。その後、低金利と株価の下落で運用に苦しみ、95年に4.75%、00年に4%、02年に3%、04年に1.75%と予定利率は引き下げられてきた。その結果、同じ加入者でも運用利回りに最大で年率3.75%もの“格差”があるという異常な事態になっている。
② 基金が大幅な積立不足に陥ったのは、過去に約束した予定利率が高すぎるからだ。この予定利率を現在の1.75%まで引き下げてしまえば、積立不足のほとんどは解消して財務はたちまち健全化する。もちろん高い予定利率の加入者は激怒するだろうが、基金が破綻すれば元も子もないのだから、誰かが責任をとって納得してもらうしかない。
③ 国民年金基金の問題が顕在化しないのは、高い予定利率で年金を受給するひとがまだ少ないからだ。しかしあと5年もすれば、設立当初の予定利率5.5%で加入したひとたちが年金を受け取りはじめる。

 ところで、支払を約束した年金が月15万円で、分配できるお金が10万円しかないとすると、足りない5万円はどこから持ってくるのだろうか。
 恐ろしいことに、現在の基金の仕組みだと、この5万円は新しく加入したひとの掛金を充てるしかない。これは基金が加入者ごとの個別勘定になっていないからで、要はねずみ講と同じだ。
④ 基本になるのは、現在のどんぶり勘定から加入者ごとの個別勘定に変えることだ。どのような理由であれ、加入者の掛金を別の加入者の年金に流用するようなことが許されるはずはない。そのような可能性はあらかじめ制度的に封じておくべきで、運用に失敗したらねずみ講になってしまうようでは欠陥商品といわれても仕方がない。
 年金を個人勘定にするには、現在の確定給付から、将来の受給額が運用成績に応じて変動する確定拠出型に変える必要がある。これなら基金が運用リスクを負う必要はないから、どのような経済状況でも破綻することはない。
⑤ やるべきことは決まっており、残された時間は少ない。あとは決断するだけだ。

第8 日本弁護士国民年金基金からの脱退
1 資格喪失事由及び移行手続
(1)ア ①所属事務所が弁護士法人となる,②企業,官公庁に就職する,③海外留学する等して,国民年金第1号被保険者でなくなった場合,日本弁護士国民年金基金の資格喪失事由に該当するために脱退することとなります。
イ 弁護士法人を設立した場合,14日以内(平成28年3月31日までは5日以内)に,管轄の年金事務所に健康保険適用除外承認申請書を提出すれば,東京都弁護士国民健康保険組合に引き続き加入できます(東京都弁護士国民健康保険組合HP「弁護士法人を設立する場合」参照)。
ウ 海外に転居した場合,国民年金基金の加入員資格を喪失するものの,引き続き国民年金の任意加入の手続を行うとともに,3ヶ月以内に手続をすることで引き続き国民年金基金に加入する場合,従前の掛金で加入できる特例があります(国民年金基金HP「加入条件・資格」参照)。
(2) 弁護士業務に従事しなくなったため資格喪失となった人が,国民年金の第1号被保険者として保険料の納付を継続する場合,資格喪失日より3ヶ月以内に地域型国民年金基金に移行手続をすれば,従前の掛金のまま加入できます。
2 解約返戻金制度はないこと
 日本弁護士国民年金基金HPの「Q. 加入中に資格喪失事由に該当して基金を脱退した場合,それまで納めた掛金は返してもらえるのでしょうか。」には以下の記載があります。
 加入員が加入中に加入員資格を喪失した場合,加入時から納めて頂いた掛金は,そのままお預かりして,年金受給年齢に達したときに,当基金の年金として給付させて頂きます。民間の個人年金にみられる解約返戻金(一時金)のような制度はありません(規約第51条ご参照)。なお,この場合に支給されることになる年金の額,遺族一時金の額は,掛金納付実績に応じた額となります(規約第53条,第55条)。

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第9 平成31年4月の,全国国民年金基金の発足
1 発足経緯
(1) 確定拠出年金法等の一部を改正する法律(平成28年6月3日法律第66号)による国民年金法の改正により,国民年金基金の
合併が認められることとなりました。
(2) 
職能型国民年金基金は25基金ありましたところ,日本弁護士国民年金基金歯科医師国民年金基金及び司法書士国民年金基金を除く22基金,並びに全国47の地域型国民年金基金が統合して,平成31年4月1日に全国国民年金基金が発足しました国民年金基金連合会(NPFA)HP「合併契約締結に関するお知らせ」(平成29年10月5日付),及び「全国国⺠年⾦基⾦設⽴後のお問い合わせ窓⼝等について」参照)。
2 平成31年4月以降の,国民年金基金の種類
平成31年4月以降,国民年金基金は以下の3種類です(国民年金基金連合会HPの「資料請求」参照)。
① 全国国民年金基金
② 全国国民年金基金の職能型支部
→ 日本医師・従業員支部及び土地家屋調査士支部だけです(全国国民年金基金HPの「職能型支部」参照)。
③ 職能型国民年金基金
→ 日本弁護士国民年金基金歯科医師国民年金基金及び司法書士国民年金基金です。
3 「陽だまり」の記載
(1) 日本弁護士国民年金基金の機関紙である「陽だまり」47号(2019年6月25日発行)2頁及び3頁には以下の記載があります。

 全国基金は、今回の大合併の目的を、①加入員や受給者の皆さまの利便性の向上、②事業運営基盤の強化、③事業運営の効率化と説明しています。しかし、将来窮地に陥る可能性のあるいくつかの基金を事実上救済することも、今回の大合併の目的であったことは否めません。当基金では、合併のメリットとデメリットについて慎重に検討した結果、合併差損の回避と、当基金の会員である弁護士の独立性を従前どおり維持する観点から、平成28年9月の代議員会で全国基金への参加を見合わせる旨決議し、今回の大合併には参加しませんでした。
(中略)

 連合会(山中注:国民年金基金連合会のことです。)は大合併に加わらない職能型3基金にも共同運用事業(2口目以降の掛金を連合会が預かり運用する事業。各基金の参加は任意)への参加を認めています。当基金は設立以来連合会の共同運用事業に加わらず、2口目以降の掛金を自主運用してきました。しかし、現在の市況状況、資産運用の専門性、共同運用の効率性等を踏まえ、平成29年4月から連合会の共同運用事業に参加しています。
従って、現在、当基金が自主運用している年金資産はありません。
(2) 「陽だまり」49号(2021年9月1日発行)22頁には以下の記載があります。
 平成31年4月から全国基金ができるということで、当基金は独立を維持するのか、あるいはそこへ加わってしまうのかということが一つ大問題になって、これは伊礼執行部から引き継いだ問題だったのですけれども、主として澤井執行部で問題となリました。
 議論する中でいろいろな資料を検討してみると、当基金は非常に財政内容がいいんですね。それが全国基金に入って一緒になってしまうと、合併差損が出て大変だということで,独立を維持しました。


第10 個人型確定拠出年金(愛称は「iDeCo(イデコ)」です。)との比較
1 国民年金基金と共通するメリット
 個人型確定拠出年金の場合,国民年金基金と同様に以下のメリットがあります。
① 毎月の掛金が所得控除の対象になります。
② 年金として受け取る場合,公的年金等控除の対象となります(一時金として受け取る場合,退職所得控除の対象となります。)。
2 国民年金基金にはないメリット
(1) 個人型確定拠出年金の場合,国民年金基金と異なり以下のメリットがあります。
① 個人単位の運用であるため,新規加入者であることを理由に不利に取り扱われることはありません。
② 自分以外の加入者の運用失敗等に起因する繰越不足金の問題はありません。
③ 自分の運用次第で年金受取金額を増やすことができますし,インフレリスクに対応することができます。
④ 10年以上加入した後に60歳になれば,一時金としてまとめて引き出すことができます(年金として分割払いで受け取ることもできます。)。
(2) 自分の運用次第では年金受取金額が掛金全額を下回ることがあります。
 ただし,国民年金基金の平成31年4月改定の基本ポートフォリオは,グローバル債券が52%であり,グローバル株式が48%です(国民年金基金HP「資産運用状況」参照)から,国民年金基金も結構,ハイリスクハイリターンな運用をしていると思います。
(3) 通算拠出期間が3年を超えるか,又は個人別管理資産が25万円を超えた場合,それだけで60歳未満で脱退一時金を請求することはできなくなります(iDeCo公式サイト「加入者の方へ」参照)。
(4) noteの「【厳選2銘柄】オススメ投資信託」によれば,令和2年10月現在,eMAXIS Slim 先進国株式インデックスのベンチマークであるMSCIコクサイ・インデックスの過去5年のパフォーマンスは年率平均+6.1%であり,過去30年のパフォーマンスは年率平均+8.5%です。
  また,eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のベンチマークであるMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの過去5年のパフォーマンスは年率平均+8.7%であり,過去30年のパフォーマンスは年率平均+7.9%です。
3 国民年金基金にだけあるメリット
(1)ア 国民年金基金の掛金の場合,終身年金ですし,国民健康保険料と同様に社会保険料控除として,生計を同一にする配偶者やその他親族の分の掛金も所得控除の対象となります(国税庁HPの「No.1130 社会保険料控除」参照)。
イ 国民年金基金の節税効果については,日本弁護士国民年金基金HPの「所得税・復興特別所得税・住民税 軽減額速算表」が分かりやすいです。
(2) 個人型確定拠出年金の掛金の場合,有期年金ですし,小規模企業共済等掛金控除として,自分の分の掛金しか所得控除の対象となりません(iDeCo公式サイト「加入者の方へ」参照)。

 



第11 財政再計算
1 国民年金基金令32条は以下のとおりです。
  掛金の額は、年金及び一時金に要する費用の予想額並びに予定運用収入の額に照らし、厚生労働省令の定めるところにより、将来にわたって、財政の均衡を保つことができるように計算されるものでなければならず、かつ、少なくとも五年ごとにこの基準に従って再計算されなければならない。
2 自由と正義2024年2月号21頁ないし28頁に「日本弁護士国民年金基金の事業と特徴~5年に一度の財政再計算時期」が載っています(筆者は日本弁護士国民年金基金参与(前常務理事)です。)。
3 以下の資料を掲載しています。
・ 国民年金基金における財政再計算に伴う掛金の計算に関する取扱いについて(平成6年12月22日付の厚生省年金局長から都道府県知事あて通知)
→ 国民年金基金令32条を受けた文書です。
・ 日本弁護士国民年金基金の第6回財政再計算報告書(平成31年3月22日提出)
・ 日本弁護士国民年金基金の第7回財政再計算報告書(令和6年2月20日提出)

12 掲載資料
1 日本弁護士国民年金基金の業務報告書
(1) 国民年金基金規則44条(業務報告書の提出)2項に基づく文書は以下のとおりです。
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(平成25年度)
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(平成26年度)
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(平成27年度)
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(平成28年度)
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(平成29年度)
→ 平成29年度末の責任準備金は1178億3944万円であり,繰越不足金は115億983万円です(1頁目の繰越不足金及び当年度不足金の合計)から,その割合は約9.7%です。
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(平成30年度)
→ 平成30年度末の責任準備金は1238億2619万円であり,繰越不足金は124億9122万円です(1頁目の繰越不足金及び当年度不足金の合計)から,その割合は約10.1%です
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(令和元年度)
→ 令和元年度末の責任準備金は1292億5526万円であり,繰越不足金は198億8106万円です(1頁目の繰越不足金及び当年度不足金の合計)から,その割合は約15.4%です。
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(令和2年度)
→ 令和2年度末の責任準備金は1340億7785万円であり,繰越不足金は198億8106万円です(1頁目の繰越不足金及び当年度不足金の合計)から,その割合は約14.8%です。
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(令和3年度)
→ 令和3年度末の責任準備金は1389億7370万円であり,繰越不足金は46億3985万円です(1頁目の繰越不足金及び当年度不足金の合計)から,その割合は約3.3%です。
・ 日本弁護士国民年金基金の貸借対照表,損益計算書及び業務報告書令和4年度分)
→ 令和4年度末の責任準備金は1432億2490万円であり,繰越不足金は70億9903万円です(1頁目の繰越不足金及び当年度不足金の合計)から,その割合は約5.0%です。
(2) 国民年金基金規則44条(業務報告書の提出)2項は「前項の規定にかかわらず、基金は、毎事業年度、令第三十条第一項の規定による積立金の運用に係る法第百二十五条第三項に規定する業務についての報告書二通を作成し、令第三十条の二第一項に規定する基本方針を添えて、翌事業年度九月三十日までに、厚生労働大臣に提出しなければならない。」と定めています。
2 その他
① 保証期間15年・年金月額3万円(年額36万円)の給付(平成21年3月31日までの基本A型参照)に必要な,日本弁護士国民年金基金の掛金の推移


第13 関連記事その他
1 各年度の業務報告書3頁の「(1)年齢階級別加入者数及び平均掛金額」によれば,20歳ないし29歳で日本弁護士国民年金基金に加入している人数の推移は以下のとおりです。
338人(平成25年度),264人(平成26年度)
225人(平成27年度),173人(平成28年度)
156人(平成29年度),186人(平成30年度)
156人(令和 元年度),136人(令和 2年度)
103人(令和 3年度), 80人(令和 4年度)
2(1) 各年度の業務報告書3頁の「(2)加入者の増減」によれば,日本弁護士国民年金基金への新規加入の推移は以下のとおりでありますところ,平成30年度ないし令和2年度につき,令和3年9月1日発行の陽だまり49号(設立30周年特集)記載の数字と一致しません。
令和3年度:454人(うち,男子は254人,女子は200人)
令和2年度:485人(うち,男子は292人,女子は193人)
令和 元年度:471人(うち,男子は280人,女子は191人)
平成30年度:859人(うち,男子は549人,女子は310人)
平成29年度:563人(うち,男子は353人,女子は210人)
平成28年度:623人(うち,男子は404人,女子は219人)
平成27年度:600人(うち,男子は392人,女子は208人)
平成26年度:490人(うち,男子は317人,女子は173人)
平成25年度:1198人(うち,男子は755人,女子は443人)
(2) 令和3年9月1日発行の陽だまり49号(設立30周年特集)には以下の記載があります。
(5頁の記載)
  平成30年度は5年に一度の財政再計算に当たったため、新規加入者数は840名と大幅に増えました。しかし、令和元年度と令和2年度は新型コロナ蔓延の影響で484名、483名と低迷し、残念ながら目標は未達(令和3年3月末加入員9593名)となりました。
(25頁及び26頁の記載)
  当基金を取り巻く環境は、若手弁護士の加入控え、法人化や厚生年金加入拡大等による脱退者の増加、年金給付費の累増、個人型確定拠出年金(イデコ)の急拡大などによって大きく変化しています。しかし、当基金が扱う確定給付年金は、節税のメリットを享受しつつ確定した年金額を生涯受け取れる素晴らしい制度であることに変わりはありません。当基金が拡大・発展していくことを心から祈念しております。
3 関東信越厚生局では,管内の国民年金基金に係る規約変更認可申請書や規約変更届出書等の受理・認可,厚生労働大臣への提出書類の経由,国民年金基金に対する指導監督などの業務を行っています(関東信越厚生局HP「国民年金基金の認可、指導監督等」参照)ところ,管内の国民年金基金から提出した文書の所持者は厚生労働省です。
4(1) 国民年金基金の掛金をクレジットカードで支払うことはできません(日本弁護士国民年金基金HPの「加入員の皆さまへ」参照)。
(2) 国民年金保険料はクレジットカードで支払うことができる(日本年金機構HPの「国民年金保険料に関する手続き」参照)ものの,日本弁護士国民年金基金に加入した場合,国民年金保険料についてもクレジットカードで支払うことができなくなります。
5(1) Mylife Money Online「国民年金基金をやめたい場合の対処方法(減額・一時停止・解約)」には「一時停止・中断」として以下の記載があります。
    減額でも難しい場合には、一時停止・中断ということも可能です。
    一時停止をした場合、本来の掛金の納付よりも未納が発生するため、その未納期間に合わせて将来受け取れる見込みの年金が減るかたちになります。
    解約とは違いますし返金もありませんが、事実上、国民年金基金の掛金の支払いをやめることができます。
(2) 59期の私は弁護士登録直後となる平成18年11月に日本弁護士国民年金基金に2口目以降も含めて加入し,平成24年4月に2口目以降を解約したものの,1口目の掛金の支払は続けざるを得ない状況が続いています。
6 以下の記事も参照してください。
① 日本弁護士国民年金基金の年金月額を3万円とするための掛金額の推移
② 国民年金基金及び確定拠出年金に関する国会答弁
③ 個人型確定拠出年金(iDeCo)
④ 弁護士の社会保険

保証期間15年・年金月額3万円(年額36万円)の給付(平成21年3月31日までの基本A型参照)に必要な,日本弁護士国民年金基金の掛金の推移

日本弁護士国民年金基金の貸借対照表(平成30年3月期)

日本弁護士国民年金基金の損益計算書(平成30年3月期)

日本弁護士国民年金基金の収入支出計算書(平成30年3月期)

日本弁護士国民年金基金の年齢階級別加入者数及び平均掛金額(平成30年3月期)

資産運用をする場合,手数料を気にすることが非常に大事であることが分かります。


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