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日本弁護士国民年金基金(AIリライト)

 

第1 日本弁護士国民年金基金の概要

1 制度の位置付け

日本弁護士国民年金基金は,国民年金法に基づき,老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する公的な年金制度である。
会社員や公務員には老齢厚生年金があるのに対し,国民年金第1号被保険者には原則として老齢基礎年金しかないため,その上乗せ部分を自ら準備する制度の一つが国民年金基金である。

制度の根拠については,e-Gov法令検索の「国民年金法」及び国民年金基金連合会HPの「国民年金基金制度とは?」参照。

2 加入できる人

日本弁護士国民年金基金に加入できるのは,弁護士又は弁護士業務を補助する者であり,次のいずれかに該当する人である。

① 20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者

② 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の国民年金任意加入被保険者

③ 海外に居住する日本国籍の国民年金任意加入被保険者で,日本弁護士国民年金基金への加入履歴がある人

弁護士の専従配偶者や法律事務職員も,弁護士業務を補助する者として加入できる場合がある。
他方,弁護士法人の社員・使用人,企業・法人等の役員・使用人など,厚生年金保険の被保険者となる人は加入できない。
また,国民年金保険料の免除を受けている人も原則として加入できない。ただし,産前産後期間の免除,令和8年10月1日からの子を養育する第1号被保険者の免除及び一定の法定免除については,基金の加入員資格を喪失しない例外がある。国民年金保険料の免除,基金掛金の払込停止及び基金の資格喪失は別の手続として確認する必要がある。

以上については,日本弁護士国民年金基金の「加入のご案内」2頁参照。

3 年金の型

1口目は,65歳から支給される終身年金であるA型又はB型から選択する。
A型には15年間の保証期間があり,保証期間内に死亡した場合には遺族一時金が支給されるのに対し,B型には保証期間がない。

2口目以降は任意であり,終身年金であるA型・B型のほか,支給期間が定められたⅠ型ないしⅤ型の確定年金を選択できる。
1口目は加入後に型を変更したり,減口したりすることができない。
2口目以降は,所定の条件の下で増口又は減口が可能である。

各型の支給開始年齢,保証期間及び年金額については,日本弁護士国民年金基金の「加入のご案内」3頁ないし9頁参照。

第2 掛金額と加入時期による条件差

1 現在の掛金表を確認する

新規加入及び増口の掛金は,年齢,性別,型,口数及び適用される掛金表によって決まる。
過去の加入者の掛金を,現在の新規加入者にも適用できると考えてはならない。

最新の掛金額は,日本弁護士国民年金基金の公式案内で確認する必要がある。
加入時期別・年齢別・男女別の比較は,年金月額3万円とするための掛金額の推移で説明している。

2 掛金上限と引落時期

国民年金第1号被保険者が国民年金基金とiDeCoを併用する場合,通常の共通拠出限度額は,令和8年11月分までは月額6万8000円,令和8年12月分からは月額7万5000円となる。
基金とiDeCoにそれぞれ上限額を拠出できるという意味ではなく,基金には追納等に関する上限特例もある。

国民年金基金連合会の上限改定案内は,令和8年12月分の基金掛金を令和9年2月月初に引き落とすと説明している。
掛金対象月,引落日及び所得控除年を分け,控除証明書と実際の支払日を照合する必要がある。

3 予定利率と加入判断を区別する

予定利率は掛金・給付の計算基礎であり,加入者が受け取る運用利回りそのものではない。
加入時期による条件差を検討するときは,型,加入年齢,納付期間,受給期間,死亡時給付及び税効果も確認する必要がある。

予定利率の差だけで基金とiDeCoの有利・不利又は加入者間の公平性を確定することはできない。
制度の比較は,弁護士国民年金基金とiDeCoの比較,基金財政の読み方は,日本弁護士国民年金基金の財政状態で説明している。

第3 加入後の変更,資格喪失及び納付方法

1 任意脱退はできないこと

国民年金基金には,民間の個人年金保険の解約返戻金に相当する制度はない。
加入資格を喪失する事情がない限り,加入者の都合だけで任意に脱退し,納付済みの掛金を一時金として受け取ることはできない。
資金繰りが悪化した場合でも1口目を減口することはできないため,掛金額は長期間継続して納付できる範囲で設定すべきである。

2口目以降は減口できるが,前納した年度については減口できないなどの制限がある。

資格喪失事由がない場合でも,経済的理由等により基金へ申し出て掛金の払込みを停止できる。ただし,払込停止は任意脱退ではなく,加入員資格を維持したまま将来の年金額が減少する手続である。払込停止,減口,資格喪失及び任意脱退の違いは,「国民年金基金の掛金を支払えないとき」で説明している。

2 資格喪失後の取扱い

厚生年金保険の被保険者となった場合,国民年金保険料の免除を受けることとなった場合又は弁護士等の職能要件を満たさなくなった場合には,基金の加入資格を喪失することがある。
資格喪失までに納付した掛金は,原則として将来の年金給付に結び付くため,資格喪失時に返還されるものではない。
弁護士業務に従事しなくなった後も国民年金第1号被保険者として保険料を納付する場合には,資格喪失日から3か月以内に全国国民年金基金への特例加入を申し込むことにより,従前と同じ掛金で加入できる場合がある。

詳細については,国民年金基金連合会HPの「加入資格・資格喪失に関するFAQ」参照。

弁護士法人・企業内弁護士・海外転居時の資格喪失日,再加入,既払掛金及び従前掛金については,「弁護士国民年金基金の資格喪失と再加入」で説明している。

3 国民年金保険料の納付方法

国民年金保険料にはクレジットカード納付制度があり,日本弁護士国民年金基金に加入しただけで利用できなくなるものではない。
ただし,希望により国民年金保険料を基金掛金と合わせて基金へ納付委託する場合には,国民年金保険料をクレジットカードで納付することはできない。
基金掛金は,原則として指定口座からの口座振替により納付する。

日本年金機構HPの「国民年金保険料のクレジットカード納付」及び日本弁護士国民年金基金の「加入のご案内」10頁参照。

第4 税務上の取扱い

1 掛金を納付したとき

国民年金基金の掛金は,その全額が社会保険料控除の対象となる。
自己の掛金だけでなく,自己と生計を一にする配偶者その他の親族が負担すべき掛金を実際に納付した場合には,その納付額も納付者の社会保険料控除の対象となる。

国税庁HPの「No.1130 社会保険料控除」参照。

もっとも,所得控除による実際の軽減額は,納税者の課税所得,所得税率及び住民税率によって異なる。
「掛金全額が所得控除になる」ことと,「掛金全額に相当する税金が戻る」ことは同じではない。
なお,後述のとおり,掛金全額が所得控除の対象となる点はiDeCoも同じであり,この点は基金に固有の優位ではない。

本人が負担すべき国民年金基金掛金を勤務先が負担した場合は,勤務先負担額が給与所得となり得る。東京地裁平成16年11月24日判決の判断と,給与所得算入・社会保険料控除・源泉徴収を分ける実務については,「勤務先が負担した国民年金基金掛金相当額は給与所得となるか」で説明している。

2 年金又は遺族一時金を受け取ったとき

国民年金基金から受け取る年金は,所得税法上,公的年金等に係る雑所得として扱われ,公的年金等控除の対象となる。
保証期間内の死亡等により遺族が受け取る遺族一時金は,基金の案内上,非課税とされている。

具体的な課税関係については,国税庁HPの「No.1600 公的年金等の課税関係」参照。

老齢年金,未支給年金及び遺族一時金の請求手続,必要書類,電子申請並びに給付ごとに確認すべき時効については,「弁護士国民年金基金の給付請求」で説明している。

3 海外居住中の掛金

海外居住中に国民年金任意加入被保険者として基金掛金を納付することはできるが,海外居住中の払込掛金は,日本の所得税における社会保険料控除の対象とならない。

日本弁護士国民年金基金の「加入のご案内」3頁参照。

第5 加入判断におけるメリットと注意点

1 主なメリット

1口目が終身年金であるため,長生きにより老後資金が不足するリスクに備えることができる。
加入者が運用商品を選ぶ必要がなく,型・口数等に基づく給付見込みを確認して年金を設計できることも特徴である。

掛金の社会保険料控除,A型等の保証期間に応じた遺族一時金も検討事項となる。
ただし,所得控除額と税額軽減は同じではなく,遺族一時金も掛金全額の返還を保証するものではない。

2 主な注意点

① 任意脱退によって掛金を現金化することはできない。
② 1口目は減口できず,2口目以降の減口にも前納等の条件がある。
③ 固定された年金額は,物価上昇により実質購買力が低下する。
④ 型・死亡時期により,本人と遺族の受取総額が掛金総額を下回る場合がある。

掛金を継続して負担できるかは,事業資金,納税資金及び生活予備資金を確保した上で判断する必要がある。
加入後の資金難への対応は,国民年金基金の掛金を支払えないときで説明している。

3 元本回収年数だけで判断しない

掛金総額を年金年額で割った単純な回収年数は,終身給付,受取時課税,時間価値,物価及び死亡時給付を含まない。
iDeCoと比較する場合も,同じ拠出額・評価時点・費用・受取条件を置く必要がある。

条件別の比較と併用は,弁護士国民年金基金とiDeCoの比較を参照されたい。

第6 基金財政を確認する

1 決算と加入員数を読む

基金財政を評価するときは,責任準備金,純資産額,積立状況,当年度損益及び繰越不足金を区別する必要がある。
加入員数だけで将来の給付の安全性を断定することもできない。

決算資料の数値と年度別の読み方は,日本弁護士国民年金基金の財政状態にまとめている。
同記事が対象とする年度と,各原資料の基準日を確認する必要がある。

2 合同運用と個人の資産配分を分ける

国民年金基金連合会の合同運用の実績又は基本ポートフォリオは,基金加入者本人の運用利回りや,個人に適した資産配分を示すものではない。
給付債務を負う制度運営者と個人では,運用の目的とリスク負担が異なる。

加入時期別の条件差や新規加入者の増減を評価するときも,給付債務,掛金収入,死亡率及び運用条件を併せて確認する必要がある。

第7 iDeCoとの比較と併用

1 比較する目的をそろえる

基金は型・口数等に基づく年金を設計し,iDeCoは個人別管理資産を運用する制度である。
基金の年金年額とiDeCoの口座残高をそのまま比較したり,予定利率と株価指数の過去リターンだけで優劣を決めたりすることはできない。

終身収入,税引後の受取,死亡時給付,物価,価格変動,費用及び資金拘束を共通の項目として比較する必要がある。
比較表と加入前の確認順序は,弁護士国民年金基金とiDeCoの比較で説明している。

2 終身年金と資産形成の役割を分ける

基金の1口目は終身年金であるが,iDeCoでも金融機関によって終身年金の取扱いがある。
実際の給付条件を確認し,終身収入を確保する部分と,運用・受取方法を自ら選ぶ部分を分けて検討することになる。

両制度を併用する場合も,一律の優先順位や配分はなく,共通拠出枠と継続して負担できる掛金額を確認する必要がある。
iDeCo固有の受給条件,脱退一時金及び退職所得控除は,個人型確定拠出年金(iDeCo)で説明している。

3 投資の試算を読むときの注意

一定の投資利回りを仮定した試算は将来予測ではなく,設定した条件に応じた計算結果である。
基金の終身給付と比較する場合は,費用,税,受取開始時点,死亡時期及び取り崩し中の価格変動もそろえる必要がある。

口座残高の増加と追加入金を区別する方法は,証券口座の残高増加をどう検証するかで説明している。

第8 過去資料を読む際の注意

1 予定利率4.5%との記載

平成24年に発行された基金広報誌には,平成7年度に予定利率を5.5%から4.5%へ引き下げたとの記載がある。
しかし,日本弁護士国民年金基金の第7回財政再計算報告書3頁によれば,平成7年4月以降の新規加入者に適用された予定利率は4.75%である。
したがって,広報誌の記載を引用する場合には,引用文自体を改変せず,公式の財政再計算資料では4.75%とされている旨を注記する必要がある。

2 過去の安全性に関する説明

平成8年当時の資料には,加入者ごとに掛金と給付が見合う設計であるため,理論上は財政危機を起こさないという趣旨の説明があった。
もっとも,その後の運用環境,予定利率及び積立不足の推移に照らせば,この説明は当時の予測として読むべきであり,現在の財政状態を保証するものではない。
過去の運用実績や加入員増加に関する基金関係者の発言についても,発言時点を明記し,現在の制度説明と区別する必要がある。

3 過去の掛金試算

平成31年4月1日施行の掛金月額表に基づく掛金総額及び受給総額の試算は,当時の制度を記録する資料としては意味がある。
しかし,令和6年4月1日以降の新規加入者には新しい掛金月額表が適用されるため,現在の加入判断には使用できない。

第9 加入前の確認事項

加入前には,国民年金の被保険者区分,職能要件,現在の型・口数別掛金表,継続して負担できる掛金額及び受給条件を確認する必要がある。
制度の確認日は令和8年10月14日であり,令和8年12月の上限改定は施行前として区別する。

基金の終身年金とiDeCoの運用・受取方法には異なる役割がある。
どちらを優先するか又は併用するかは,弁護士国民年金基金とiDeCoの比較を参照し,年齢,税,既存の年金,家族への給付及び流動性を含めて判断することになる。

第10 出典

① e-Gov法令検索「国民年金法」

② 日本弁護士国民年金基金「加入のご案内」

③ 日本弁護士国民年金基金「第7回財政再計算報告書」(令和6年2月20日提出)3頁・13頁

④ 日本弁護士国民年金基金「貸借対照表,損益計算書及び業務報告書(令和6年度分)」1頁・6頁ないし7頁

⑤ 国民年金基金連合会「積立金の運用状況」及び「令和6年度資産運用状況」16頁

⑥ 厚生労働省「iDeCoの概要」及び「2025年の制度改正」

⑦ 国税庁「No.1130 社会保険料控除」,「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」及び「No.1600 公的年金等の課税関係」

⑧ 総務省統計局「消費者物価指数・全国・年平均」

⑨ 井村丈夫・佐竹康男『24訂版 年金相談標準ハンドブック』(日本法令,2024年)114頁・139頁・239頁・243頁

⑩ 三輪まどか・廣田久美子編『入門 社会保障法』(法律文化社,2025年)168頁

⑪ 松本哲泓『事例解説 離婚と財産分与』(青林書院,2024年)115頁

⑫ 武田守監修『すぐに役立つ 最新 図解とQ&Aでわかる 個人開業・青色申告のしくみと手続きマニュアル』(三修社,2025年)239頁

⑬ 月刊『自由と正義』令和6年2月号「特集・弁護士国民年金基金」21頁ないし36頁

⑭ S&P Dow Jones Indices「S&P 500」

⑮ 三菱UFJアセットマネジメント「S&P500指数が上昇しても基準価額が上昇しない場合」

⑯ 日本弁護士国民年金基金「Q&A」及び「加入員資格に関するQ&A」

⑰ 東京地裁平成16年11月24日判決(平成13年(行ウ)第359号)