メインコンテンツへスキップ
       

弁護士法人の懲戒事例(AIリライト)

第1 本記事の対象と一覧の読み方

本記事は,弁護士法人に対する懲戒処分について,法人名,処分の効力発生日,処分内容及び理由の要旨を整理するものである。
『自由と正義』の懲戒公告を中心に,令和8年8月31日までに確認できた資料を用い,日弁連の裁決による変更・取消しや裁判の結果が確認できるものは,原処分と区別して示す。

以下は確認した事例を選んだ一覧であり,全国の全処分を網羅した統計ではない。
法人名・事務所の構成は原則として公告当時のものであり,過去の業務停止処分の掲載は,その法人が現在も業務停止中であることを意味しない。

法人名・詳細へのリンク原処分の効力発生日原処分の内容
アディーレ法律事務所平成22年10月5日戒告
かすが総合平成23年1月12日業務停止1月
協立法律事務所平成23年3月7日戒告
片山会平成23年7月6日業務停止1年
公尽会平成23年11月8日除名
ひいらぎ綜合法律事務所平成28年12月7日戒告
十枝内総合法律事務所平成29年2月10日戒告
美咲総合法律税務事務所平成29年3月28日戒告
北斗平成29年8月31日業務停止1年6月
菅谷法律事務所平成29年10月11日除名
アディーレ法律事務所平成29年10月11日業務停止2月
クローザー法律事務所平成29年12月26日業務停止1年
ベリーベスト法律事務所令和2年3月12日業務停止6月。裁決で3月に変更
清源法律事務所令和2年9月17日業務停止6月
あゆみ共同法律事務所令和3年2月26日東京弁護士会による除名
あゆみ共同法律事務所令和3年3月30日大阪弁護士会による除名
東京ミネルヴァ法律事務所令和6年2月17日除名
フィード令和6年7月17日戒告
日本橋さくら法律事務所令和7年8月7日業務停止1月
フェニックス令和8年7月9日業務停止2月

表の法人名はいずれも「弁護士法人」を省略している。
日付は雑誌の発行月や官報の掲載日ではなく,公告に記載された原処分の効力発生日であり,取消しとなった別処分などは各事例の本文で説明する。

第2 弁護士法人に対する懲戒の制度

1 法人と個人は別の懲戒対象である

弁護士法56条は,弁護士と弁護士法人の双方を懲戒の対象とし,原則として所属弁護士会が懲戒を行うと定めている。
したがって,代表弁護士個人の処分を確認しただけでは,法人に対する処分の有無や内容まで確認したことにはならない。

また,法人に対する懲戒と,社員である弁護士個人に対する懲戒では,法人への影響も異なる。
社員が業務停止・退会命令・除名の処分を受けた場合は法定脱退の事由となり,法人自身の除名や社員の欠亡は法人の解散事由となる(弁護士法30条の22第6号,30条の23第1項6号・7号)。

2 処分の種類と支店への処分

弁護士法人に対する懲戒は,次の4種類である(弁護士法57条2項)。
同じ「業務停止」という表示でも,法人全体の業務を停止する処分か,特定の法律事務所の業務を停止する処分かを確認する必要がある。

種類法人についての内容・範囲
戒告戒告の処分
業務停止2年以内の法人の業務停止又はその法律事務所の業務停止
退会命令処分する弁護士会の地域内に従たる法律事務所のみを有する法人が対象
除名処分する弁護士会の地域内に主たる法律事務所を有する法人が対象

従たる法律事務所のみが所在する地域の弁護士会が行う懲戒は,その地域内の従たる法律事務所に係る事由に限られる。
その弁護士会が業務停止処分をする場合も,その地域内にある法律事務所の業務停止に限られる(弁護士法56条3項・57条3項)。

3 移転・解散と懲戒手続の関係

懲戒手続中の法人が事務所を移転・廃止しても,手続が終わるまで所属弁護士会を退会しないものとされる。
主たる法律事務所を地域外に移転した場合は,懲戒に関する規定の適用上,旧所在地にも主たる法律事務所があるものとみなされ,清算が結了しても,懲戒手続のためには法人が存続するものとみなされる(弁護士法62条2項・4項・5項)。

また,特定の弁護士会の地域内にある全事務所が業務停止処分を受けた法人には,停止期間中,その地域内での事務所の設置・移転が禁止される。
退会命令を受けた場合の禁止期間は処分の日から3年間であり,手続中の所属関係を維持する規定とは区別される(弁護士法57条の2)。

第3 平成22年から平成29年までの事例

1 アディーレ法律事務所――破産申立事件の処理

東京弁護士会による戒告であり,公告当時は,立川・那覇・名古屋・札幌・仙台・大阪の各支店も記載されている。
理由の要旨は,複数の破産申立事件における財産保全の懈怠,申立ての遅延,利益相反に関わる事件処理である(『自由と正義』2011年1月号151頁~152頁)。

① 有限会社A及びその役員らの事件では,財産保全と速やかな申立てを怠り,破産財団を構成すべき約587万円の財産を消失させたとされる。
② 有限会社D及びその代表者の事件では,代表者に財産管理を任せて偏頗弁済を許し,約650万円を不当に消失させたとされる。
③ 同事件では,合理的な理由なく2年以上申立てをせず,管財人による偏頗弁済の否認権行使を妨げ,破産財団に損害を及ぼしたとされる。

④ D社の事件を受任中にその債権者であるF社の破産申立事件も受任し,債権者であることや偏頗弁済の事実を知った後も業務を続けたことが挙げられている。
⑤ F社及びその代表者ら合計4名の事件でも,財産保全を含む業務を怠り,約350万円の財産を消失させたとされる。

2 かすが総合――依頼者に対する別事件の受任

東京弁護士会による業務停止1月である。
損害賠償請求の示談交渉を受任していた依頼者について,その母からも依頼を受け,双方の同意を得ないまま,依頼者に対する遺留分減殺請求の通知,調停申立て及び訴訟提起などを行ったことが理由とされている(『自由と正義』2011年4月号156頁)。

3 協立法律事務所――広告と事務職員の監督

大阪弁護士会による戒告である。
民事再生手続を扱わない方針を示さずに多重債務問題の適切な解決を行う旨を広告したことと,監督を怠った結果,事務職員が弁護士の関与なく法律相談を行ったことが挙げられている(『自由と正義』2011年6月号140頁)。

4 片山会――事務職員への対応の委任と事件紹介

東京弁護士会による業務停止1年である。
任意整理事件で,契約前後の依頼者対応を専ら事務職員に行わせ,弁護士法72条違反が疑われる紹介者について,疑いの有無や紹介手続を調査しなかったことが理由とされている(『自由と正義』2011年10月号107頁)。

5 公尽会――事件放置と預り金の未清算

東京弁護士会による除名である。
1000万円の連帯保証債務の整理を受任し,少なくとも670万円を預かりながら事件を放置し,辞任に際して状況・結果の説明と預り金の清算を怠ったこと,事務職員が法律事務を取り仕切る状態を認識しながら黙認したことが理由とされている(『自由と正義』2012年2月号107頁)。

6 ひいらぎ綜合法律事務所――面談・説明・和解の協議

千葉県弁護士会による戒告である。
公告には,主たる法律事務所が千葉県から福岡県に移転していたこと,小倉支店があったこと及び弁護士法62条4項に基づく扱いが記載されている(『自由と正義』2017年4月号78頁~79頁)。

理由とされたのは,代表弁護士1名であった時期に電話で債務整理事件を受任し,面談を行わない特段の事情が認められないのに,面談による事情聴取や処理方針・不利益事項の説明をしなかったことである。
貸金業者との和解書に調印するまでに,過払金の計算結果を報告せず,和解することや条件について説明・協議をしなかった点も挙げられている。

7 十枝内総合法律事務所――上告期限の徒過

東京弁護士会による戒告であり,公告には十和田支所も記載されている。
離婚等の事件について,平成26年5月4日に上告及び上告受理申立てを受任したのに,同月7日の期限までに手続をしなかったことが理由とされている(『自由と正義』2017年6月号126頁)。

日弁連は平成29年10月17日に審査請求を棄却し,裁決は同月19日に効力を生じた(同誌2017年12月号104頁)。
事務所の案内については,十枝内総合法律事務所のウェブサイトを参照できる。

8 美咲総合法律税務事務所――職務上請求書の利用目的

新潟県弁護士会による戒告である。
業務の遂行に必要な場合とは認められないのに,平成25年5月15日に戸籍の附票の写し,平成26年1月14日に戸籍の附票の写し及び戸籍謄本を職務上請求し,利用目的欄に事実と異なる「売掛金請求」と記載したことが理由とされている(『自由と正義』2017年7月号87頁)。

事務所の案内については,弁護士法人美咲のウェブサイトを参照できる。
本項の法人名と処分内容は,懲戒公告当時の記載による。

9 北斗――預り金の管理と破産事件の遅延

福岡県弁護士会による業務停止1年6月である。
法人の公告は,報酬と預り金の区分が曖昧で依頼者への説明も不十分であったこと,破産申立てが1年ないし2年遅れたこと,口座から払い戻した1661万0664円の大半を法人の経費や個人的な用途に使用したことなどを挙げている(『自由と正義』2018年1月号91頁~92頁)。

日弁連は平成29年12月12日に法人の審査請求を棄却し,裁決は同月17日に効力を生じた(同誌2018年3月号123頁)。
ここで示しているのは法人の公告に記載された経過であり,代表弁護士個人の処分・裁決とは区別される。

10 菅谷法律事務所――遺産分割事件等の未清算

東京弁護士会による除名である。
遺産分割事件等で受領した5332万2042円について,平成26年10月22日の調停成立後も清算せず,1年以上依頼者に返還しなかったことなどが理由とされ,公告には社員欠亡により既に解散していたことも記載されている(『自由と正義』2018年1月号103頁)。

11 アディーレ法律事務所――広告表示と後続の裁決

東京弁護士会による業務停止2月である。
実際には継続していた着手金等に関する特典を期間限定であるかのように表示したことが理由とされ,公告には主たる事務所のほか85の法律事務所が記載されている(『自由と正義』2018年1月号96頁~103頁)。

法人の審査請求は平成30年3月13日に棄却され,同月16日に裁決の効力が生じた(同誌2018年4月号91頁)。
一方,代表弁護士個人については業務停止3月が2月に変更されており,法人の処分が同じように短縮されたわけではない(同誌2018年5月号108頁)。

別に,愛媛県弁護士会による平成30年5月21日付けの法人への戒告は,日弁連の同年8月22日裁決で取り消され,懲戒しないとされた。
その理由の要旨は,既に法人等に業務停止処分がされていた事情の下で,さらに戒告する必要性・相当性を認めなかったというものであり,東京弁護士会の業務停止処分を取り消した裁決ではない(同誌2018年10月号75頁)。

法人に係る東京弁護士会の処分の争訟については,同誌2020年4月号60頁に判決確定の公告がある。
広告表示や処分当時の経緯の詳細は,アディーレ法律事務所に対する懲戒処分の記事を参照されたい。

12 クローザー法律事務所――非弁提携

神奈川県弁護士会による業務停止1年である。
弁護士法72条に違反する者から事件の周旋を受けたことなどが理由とされ,公告では法人に準用される同法27条等との関係が示されている(『自由と正義』2018年4月号89頁)。

第4 令和2年以降の事例

1 ベリーベスト法律事務所――業務停止期間の変更と裁判

東京弁護士会の原処分は業務停止6月である。
司法書士法人から140万円を超える過払金返還請求事件の紹介を受け,1件につき税別19万8000円を支払っていたことなどが問題とされた(『自由と正義』2021年3月号78頁~80頁)。

日弁連は令和3年10月19日,業務停止期間を3月に変更し,裁決は同月25日に効力を生じた。
裁決の公告は,紹介元がいわゆる事件屋ではない司法書士法人であったことなどを考慮する一方,6月を維持すべきだとする意見もあったことを記載している(同誌2022年1月号89頁~91頁)。

東京高裁令和6年6月27日判決(令和4年(行ケ)第7号)は,法人らの請求を棄却した。
その後,最高裁第二小法廷令和6年12月13日決定(令和6年(行ツ)第281号・令和6年(行ヒ)第342号)で上告棄却・上告不受理となり,『自由と正義』2025年2月号91頁にも判決確定が公告されている。

これらの裁判書は裁判所ウェブサイトでの掲載を確認できず,当事者側が公開する裁判書の写しによって,主文及び本項に関係する記載を確認したものである。
当事者側ウェブサイトの評価・批判と裁判所の判断は区別する必要があり,本件の結果から,司法書士との業務委託一般が禁止されると読み取ることはできない。

2 清源法律事務所――職場のセクシュアル・ハラスメント

大分県弁護士会による業務停止6月である。
代表者が勤務者に対してセクシュアル・ハラスメントを行い,法人がこれを予防する措置を怠って看過していたことが理由とされている(『自由と正義』2021年1月号85頁)。

日弁連は令和4年4月12日に審査請求を棄却し,同月18日に裁決の効力が生じた(同誌2022年6月号92頁)。
さらに,同誌2024年6月号100頁には法人に係る判決確定の公告があるが,ここでは公告で確認した経過にとどめ,判決理由自体の紹介はしない。

3 あゆみ共同法律事務所――2件の除名公告

東京弁護士会による令和3年2月26日付けの除名と,大阪弁護士会による同年3月30日付けの除名が,別々に公告されている。
東京の公告には主たる法律事務所の移転と弁護士法62条4項の扱いが記載され,弁護士でない者に事件処理を行わせたことなどが理由とされている(『自由と正義』2021年8月号55頁~56頁・61頁)。

これらは,同じ法人について処分会と効力発生日の異なる公告である。
同じ号に掲載された弁護士個人の処分と混同したり,一方を単なる重複掲載として除外したりしないよう注意を要する。

4 東京ミネルヴァ法律事務所――預り金の不正流用等

第一東京弁護士会による除名である。
公告は,弁護士でない者からの事件紹介や事件処理への関与に加え,依頼者からの預り金30億2020万5238円に対し,現預金が4億8144万2874円しかなく,差額25億3876万2364円を不正に流用したことを挙げている(『自由と正義』2024年7月号135頁)。

5 フィード――動産の誤廃棄

東京弁護士会による戒告である。
廃棄対象の建物を取り違えたまま,写真やチャットを通じた確認と関係者への連絡・調整を十分に行わず,第三者の動産を業者に廃棄させたことが理由とされている(『自由と正義』2025年1月号90頁)。

6 日本橋さくら法律事務所――事件紹介の対価

東京弁護士会による業務停止1月である。
紹介会社から受けた3件の相続事件について,着手金の20%に相当する金銭を紹介の対価として支払ったことが理由とされ,公告は,法人に準用される弁護士職務基本規程の紹介対価に関する規定との関係を示している(『自由と正義』2025年12月号70頁~71頁)。

7 フェニックス――官報で確認できる処分内容

東京弁護士会による業務停止2月であり,効力発生日は令和8年7月9日である。
この処分は,令和8年7月28日付け官報号外第168号44頁の公告で確認できる。

当該官報公告には処分理由の記載がないため,本項では法人名・処分会・処分内容・効力発生日に限って示している。
同頁に掲載された弁護士個人の処分から,法人の処分理由や期間を補って読むことはできない。

第5 処分情報を確認するときの留意点

処分を調べる際は,①法人名と届出番号,②処分した弁護士会,③効力発生日,④法人全体か事務所単位か,⑤審査請求や裁判による変更・取消しの有無を確認する必要がある。
懲戒請求がされたことや審査に付されたことの公表と,懲戒処分がされたことの公告は異なり,官報の掲載日と処分の効力発生日も一致するとは限らない。

官報による懲戒処分の公告は弁護士法64条の6第3項に定められており,本記事で用いた『自由と正義』の公告には,処分理由の要旨や裁決等の経過を確認できるものがある。
もっとも,後続の裁決等を本記事に記載していない事例について,審査請求がなかったことや原処分が確定したことまで意味するものではない。

懲戒手続全般は弁護士会の懲戒手続,依頼事件への影響は弁護士の業務停止処分に関する取扱いで扱っている。
本記事の一覧は処分事例の比較と原典への手掛かりを示すものであり,現在依頼している事件の期限や引継ぎの状況は,個別に確認する必要がある。

第6 出典

1 法令

弁護士法(昭和24年法律第205号)30条の22,30条の23,56条,57条,57条の2,62条,64条の6。
制度の説明には,令和8年8月31日にe-Gov法令検索で確認した条文を用いている。

2 懲戒処分・裁決・判決確定の公告

① 日本弁護士連合会『自由と正義』所収の懲戒処分の公告,裁決の公告及び判決確定の公告。
使用した号と誌面の頁は,各事例の本文に示した。

官報令和8年7月28日号外第168号44頁。
フェニックスに対する処分内容及び効力発生日の確認に用いた。

3 裁判書

東京高裁令和6年6月27日判決(令和4年(行ケ)第7号)1頁~3頁・23頁~36頁。
裁判所HPでの掲載は確認できず,当事者側公開の写しを使用した。

最高裁第二小法廷令和6年12月13日決定(令和6年(行ツ)第281号・令和6年(行ヒ)第342号)1頁~2頁。
裁判所HPでの掲載は確認できず,当事者側公開の写しを使用した。