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出産・育児を理由とする弁護士会費の免除(AIリライト)

第1 日弁連の会費免除制度

日本弁護士連合会(日弁連)は,出産と育児のそれぞれについて,会員(弁護士)の会費及び特別会費(以下「会費等」という。)を免除する制度を設けている。両制度とも申請主義であり,所属弁護士会を通じて日弁連へ申請書類を提出することによって免除を受けられる。以下では,出産を理由とする免除と育児を理由とする免除に分けて,対象者,免除期間,手続及び根拠条文を確認する。

1 出産時の会費免除

女性会員が出産した場合,所属弁護士会を通じて日弁連に対し,会費等免除申請書に母子健康手帳の表紙及び出産予定日が分かるページの写しを添付して提出すれば,会費等の免除を受けられる。免除期間は,出産月の前月から4か月間である。多胎妊娠の場合は,出産の前々月から6か月間となる。

根拠は,日弁連会則95条の4第2項,及び出産時の会費免除に関する規程(平成19年12月6日会規第84号)である。同規程は平成20年1月1日から施行され,平成19年9月1日以後の出産に適用される。同規程にいう「基準月」とは,出産前に行われる免除申請にあっては出産予定日の属する月,出産以後に行われる免除申請にあっては出産日(流産又は死産のときは,その日)の属する月をいう。

2 育児期間中の会費免除

弁護士が子の育児をする場合,性別を問わず,所属弁護士会を通じて日弁連に対し,会費等免除申請書に誓約書兼育児予定書及び戸籍謄本又は子との関係が明らかになる住民票を添付して提出すれば,会費等の免除を受けられる。

現行の免除期間は,子の出生日の属する月から当該子が2歳に達する日の属する月までの間における任意の連続する12か月以内の期間である(多胎妊娠により2人以上の子が出生した場合は,18か月以内の期間)。この期間は令和元年10月1日以降に出生した子に適用され,同日より前に出生した子については,改正前の規定である任意の連続する6か月以内の期間(多胎妊娠の場合は9か月以内の期間)が適用される。また,出産時における会費等の免除を既に受けている会員が同じ子について育児による免除を受ける場合,免除期間は10か月以内(多胎妊娠の場合は15か月以内)に短縮される。休業要件はなく,免除期間中は育児実績を記載した書類(育児実績書)を4か月に1回提出する必要がある。

根拠は,日弁連会則95条の4第3項,及び育児期間中の会費免除に関する規程(平成25年12月6日会規第98号)である。同規程は,平成26年9月18日の理事会決議により平成27年4月1日から施行された。その後,平成31年4月18日の理事会決議により,免除期間を12か月(多胎は18か月)へ伸長する改正が令和元年10月1日から施行され,同月以降に出生した子の育児に適用されている。同規程附則には,施行後3年を経過した場合の見直し検討条項(改正後の規定については施行後5年を経過した場合の見直し検討条項)が置かれているが,日弁連理事会の議事録を確認した限り,令和8年5月の理事会でも「見直しの議論はしておらず,現時点で見直しの予定もない」との説明がされており,令和元年の改正以降,実体的な制度改正は行われていない。

第2 各弁護士会の会費免除制度

日弁連の会費等免除とは別に,各弁護士会(単位会)も独自に一般会費等の免除・猶予制度を設けている。単位会ごとに要件・期間・手続が異なるため,日弁連の制度とあわせて確認する必要がある。以下では,山中弁護士の所属する大阪弁護士会の現行制度と旧制度,及び比較の参考として東京弁護士会・第二東京弁護士会の制度を確認する。

1 大阪弁護士会(現行制度)

令和4年10月1日以降に子が生まれた場合,大阪弁護士会の会費免除制度は次のとおりである。月刊大阪弁護士会2022年9月号78頁によれば,主な改正ポイントは次のとおりである。

出産を理由とする会費免除は,①申請があれば常議員会決議を経ずに免除される,②免除対象期間は日弁連の基準月方式に合わせる,③出産の定義も日弁連に合わせ「妊娠4か月(85日)以上の分娩,同時期以降の流産及び死産の場合を含む」とされる,④外国特別会員も対象となる,という内容に改められた。書類の提出先は大阪弁護士会事務局企画一課である。

育児を理由とする会費免除は,①休業要件が廃止された,②全部免除のみとなり,減額(一部免除)はなくなった,③免除対象は一般会費のみに限定された(旧制度は一般会費及び会館特別会費が対象であった),④申請があれば常議員会決議を経ずに免除される,⑤多胎の子の免除期間並びに新たな出産及び育児の免除期間・申請期間は日弁連に合わせる,⑥育児実績レポートの提出が必要となり,会報誌等での公開及び不提出の場合の取消しの定めが置かれた,⑦外国特別会員も対象となる,という内容に改められた。書類の提出先は大阪弁護士会事務局人権課である。

なお,大阪弁護士会の公式サイトには,会費免除・猶予の具体的な基準を明示した頁は公開されておらず,弁護士のワーク・ライフ・バランス支援の一環として出産・育児による会費減免制度を設けていること,及び参考情報として「弁護士のための出産・育児・介護ハンドブック」を作成し会員に配布していることが,同会の男女共同参画への取組の紹介頁で説明されているにとどまる。令和4年10月の改正以降,この制度をさらに改める動きは確認できなかった。

2 大阪弁護士会(旧制度の概要)

令和4年9月30日以前に子が生まれた場合には,旧制度が適用される。出産を理由とする会費免除は,出産月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は前々月から6か月間),一般会費及び会館特別会計を免除するものであった。

育児を理由とする免除は,休業を要件とする点で現行制度と異なっていた。すなわち,1歳に満たない子の育児のために休業する場合に会費の納入を猶予し,育児期間終了後の常議員会決議により,猶予されていた会費の免除が確定するという仕組みであった。子の出生から1年6月以内に申請することを要し,全く執務をしなかった場合は会費全額,執務時間が100時間を下回る場合は会費の半分が免除された。

根拠は,大阪弁護士会会則161条及び同条の運営準則(昭和52年2月7日常議員会承認)であるが,免除・猶予の具体的基準自体は会規の条文上に明記されておらず,この点は現行制度でも変わっていない。

3 東京弁護士会・第二東京弁護士会の会費免除

東京弁護士会と第二東京弁護士会も,それぞれ独自の会費免除制度を設けている。

(1) 東京弁護士会

東京弁護士会は,女性会員の産前産後4か月の会費免除に加え,育児と業務の両立を支援するため,育児従事期間の会費免除として連続する8か月間(多胎妊娠の場合は9か月間)の制度を設けている。根拠は会則27条8項である。対象は出産した本人に限られず,出生後2年以内の子を持つ会員であれば申請できる(同性婚を含む事実婚の相手方の子等も対象に含まれる)。平成27年の改正までは執務時間が週20時間未満であることが要件とされていたが,主たる育児担当者でない会員の育児参加を促す観点から,現在は執務時間要件が撤廃されている。

(2) 第二東京弁護士会

第二東京弁護士会は,性別を問わず,育児期間中の一般会費免除を申請できる制度を設けている。申請には400字程度の育児報告書の提出が必要であり,会員の承諾を得た上で機関誌「二弁フロンティア」の「私の育休報告」に掲載される取扱いとなっている。育児期間中の一般会費免除の申請数は,毎年度100名を超えるとされる。あわせて,保育サービス費用の補助制度(平成20年開始,平成29年4月に補助内容を拡大し,1回上限5000円・年度上限1万5000円)も設けられている。

第3 出産・育児に伴う経済的支援制度

弁護士会費等の免除のほかにも,出産・育児に伴う経済的支援として,健康保険・国民健康保険・雇用保険からの給付,国民年金保険料の免除,日本弁護士国民年金基金の取扱い,及び児童扶養手当の各制度がある。弁護士は独立開業か勤務かによって適用される制度が異なるため,その違いにも留意する必要がある。

1 健康保険・国民健康保険・雇用保険からの給付

出産育児一時金は,健康保険(健康保険法101条)及び国民健康保険(国民健康保険法58条)のいずれの被保険者にも支給され,独立開業の弁護士(国民健康保険加入者)も対象となる。支給額は,令和5年4月1日から,従来の原則42万円から原則50万円に13年ぶりに引き上げられた(内訳は48万8000円に,産科医療補償制度の加算金〔上限3万円の範囲内で保険者が定める額〕を加えた額)。根拠は健康保険法施行令36条である。

これに対し,出産手当金(健康保険法102条,産前産後休業により給与の支払を受けられない場合に標準報酬日額の3分の2相当額を支給する制度)及び育児休業給付(雇用保険法に基づく給付)は,健康保険及び雇用保険の被保険者,すなわち被用者保険に加入する勤務弁護士等に限られた制度であり,国民健康保険・国民年金に加入する独立開業の弁護士は対象とならない。この点は,弁護士会費の免除制度が独立開業・勤務の別を問わず利用できるのと異なる。

2 国民年金保険料の免除

国民年金の第1号被保険者(独立開業の弁護士の多くが該当する。)については,産前産後期間の保険料免除制度が平成31年4月から実施されている。市区町村への届出により,出産予定日又は出産日が属する月の前月(多胎妊娠の場合は3か月前)から出産予定月の翌々月までの4か月間,国民年金保険料が免除される。根拠は国民年金法88条の2である。

これとは別に,令和8年(2026年)10月1日から,育児休業期間中の国民年金保険料免除制度が新設される。第1号被保険者である実父母又は養父母が1歳未満の子を養育する場合,所得要件なしで保険料が免除される制度であり,実母(産前産後免除を受けた者)については産前産後免除に続く9か月間(合計最大13か月間),実父・養父母については養育を開始した月から子が1歳になる誕生日の前月まで最大12か月間が免除の対象となる。根拠は,令和6年法律第47号「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」による国民年金法88条の3の新設であり,施行日は同法附則に令和8年10月1日と明記されている。

3 日本弁護士国民年金基金の取扱い

日本年金機構の産前産後期間の国民年金保険料免除制度により保険料の納付を免除された場合であっても,日本弁護士国民年金基金の加入員資格は喪失しない。この場合,国民年金保険料の免除期間中も,日本弁護士国民年金基金の掛金は引き続き納付対象となる。掛金の納付を希望しない場合は,同基金に連絡することにより掛金の引落しを停止することができる。

4 児童扶養手当

児童扶養手当は,平成22年8月1日から,父子家庭に対しても支給されるようになった。

児童扶養手当と障害基礎年金等との併給調整については,最高裁大法廷昭和57年7月7日判決(裁判所ウェブサイト,民集36巻7号1235頁)が,児童扶養手当法上の併給調整条項が憲法25条,14条及び13条に違反しないと判示している(いわゆる堀木訴訟)。もっとも,令和3年3月分の児童扶養手当(令和3年5月支払分)以降は取扱いが変更され,障害基礎年金等を受給している場合であっても,児童扶養手当の額が障害基礎年金等の子の加算部分の額を上回るときは,その差額を児童扶養手当として受給できるようになった。

さらに,令和6年11月1日からは,児童扶養手当法等の改正により,所得限度額が引き上げられるとともに,第3子以降の加算額が第2子と同額の月額1万750円に統一された。この改正も,前記の育児休業期間中の国民年金保険料免除と同じく,令和6年法律第47号「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」による児童扶養手当法5条2項の改正に基づくものである。

第4 法律事務所における育児・介護休業法上の対応

勤務弁護士や事務職員を雇用する法律事務所は,会員個人が会費免除を受けられるかという問題とは別に,育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)上の事業主として,一定の義務を負う。

現行制度では,令和3年改正(令和4年4月以降段階的に施行)により,出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)が導入されている。育児・介護休業法9条の2に基づき,労働者は,子の出生後8週間以内に,4週間以内の期間を定めて,分割して2回まで出生時育児休業を取得できる。従前の「パパ休暇」制度は,この出生時育児休業の導入に伴って廃止されている。

さらに,令和6年法律第42号による育児・介護休業法の改正が,令和7年4月1日と同年10月1日の2段階で施行された。主な改正内容として,子の看護休暇の対象となる子の年齢が小学校第3学年修了前までに拡大され休暇の名称も「子の看護等休暇」に改められたこと,所定外労働の制限(残業免除)の対象が小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大されたこと,令和7年10月1日からは3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対し柔軟な働き方を実現するための措置(始業終業時刻の変更,テレワーク,短時間勤務,養育両立支援休暇,保育施設の設置運営等のうち2以上の措置を事業主が講じ,労働者が選択できるようにするもの)の導入が義務付けられたことなどが挙げられる。事業主がこれらの措置義務に違反した場合,厚生労働大臣による是正勧告の対象となり,勧告に従わないときは企業名が公表されることがある(同法56条,56条の2)。

第5 関連記事

出典

法令

裁判例

文献

  • 東弁リブラ2021年3月号「育児従事の期間における会費免除について 制度紹介と利用者の声」
  • 二弁フロンティア2021年11月号「私の育休報告」
  • 月刊大阪弁護士会2022年9月号

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